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特開2023-139175免疫系の変化及びアレルギー疾患の治療又は予防のための血漿免疫グロブリンと抗原特異的免疫グロブリンとの組み合わせ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139175
(43)【公開日】2023-10-03
(54)【発明の名称】免疫系の変化及びアレルギー疾患の治療又は予防のための血漿免疫グロブリンと抗原特異的免疫グロブリンとの組み合わせ
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20230926BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
A61K39/395 V
A61P37/08
A61K39/395 Y
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023120067
(22)【出願日】2023-07-24
(62)【分割の表示】P 2020557367の分割
【原出願日】2019-01-04
(31)【優先権主張番号】62/614,131
(32)【優先日】2018-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520245194
【氏名又は名称】ネットワーク イミュノロジー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NETWORK IMMUNOLOGY INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン, ジェフリー ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】グルチンスキー レジナルド エム.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】アレルギー疾患を治療又は予防するための改良型医薬組成物及び方法を提供する。
【解決手段】ポリクローナル抗原特異的免疫グロブリンと組み合わせた、筋注用免疫グロブリン等の血漿免疫グロブリンの使用、及びポリクローナル抗原特異的免疫グロブリンと組み合わせた血漿免疫グロブリンからなる医薬組成物を提供する。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非ヒト動物におけるアレルギー疾患の治療又は予防のための血漿免疫グロブリンと抗原特異的免疫グロブリンとの組み合わせの使用であって、
前記血漿免疫グロブリンは毎週約2~10mg/kg(体重)の用量で用いられ、前記抗原特異的免疫グロブリンは毎週約0.4~10mg/kg(体重)の用量で用いられる、使用。
【請求項2】
前記血漿免疫グロブリンは、筋注用免疫グロブリンである請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記筋注用免疫グロブリンは、ヒト筋注用免疫グロブリンである請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記血漿免疫グロブリンは、ヒト血漿免疫グロブリンである請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記血漿免疫グロブリンは、非ヒト種由来のものである請求項1に記載の使用。
【請求項6】
前記血漿免疫グロブリン及び抗原特異的免疫グロブリンは、同一種由来のものである請求項1に記載の使用。
【請求項7】
前記抗原特異的免疫グロブリンは、ポリクローナル抗破傷風トキソイド免疫グロブリンと、ポリクローナル抗Rh免疫グロブリンと、ポリクローナル抗B型肝炎免疫グロブリンと、ポリクローナル抗狂犬病免疫グロブリンと、ポリクローナル抗水痘免疫グロブリンとからなる群から選択される請求項1に記載の使用。
【請求項8】
前記血漿免疫グロブリンは、体重1kgあたり50mgを超える請求項1に記載の使用。
【請求項9】
アレルギー疾患の治療又は予防のための医薬組成物であって、当該医薬組成物は、
約2~10mg/kg(体重)の用量で投与されるように製剤化された血漿免疫グロブリンと、
約0.4~10mg/kg(体重)の用量で投与されるように製剤化された抗原特異的免疫グロブリンと、を含む医薬組成物。
【請求項10】
前記血漿免疫グロブリンは、筋注用免疫グロブリンである請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記筋注用免疫グロブリンは、ヒト筋注用免疫グロブリンである請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記血漿免疫グロブリンは、ヒト血漿免疫グロブリンである請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記血漿免疫グロブリンは、非ヒト種由来のものである請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記血漿免疫グロブリン及び前記抗原特異的免疫グロブリンは、同一種由来のものである請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記抗原特異的免疫グロブリンは、ポリクローナル抗破傷風トキソイド免疫グロブリンと、ポリクローナル抗Rh免疫グロブリンと、ポリクローナル抗B型肝炎免疫グロブリンと、ポリクローナル抗狂犬病免疫グロブリンと、ポリクローナル抗水痘免疫グロブリンと、からなる群から選択される請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記血漿免疫グロブリンは、体重1kgあたり50mgを超える請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項17】
血漿免疫グロブリン及び抗原特異的免疫グロブリンを注射することを含む、非ヒト動物のアレルギー疾患を治療又は予防する方法であって、
前記血漿免疫グロブリンは毎週約2~10mg/kg(体重)の用量で用いられ、前記抗原特異的免疫グロブリンは毎週約0.4~10mg/kg(体重)の用量で用いられる、使用。
【請求項18】
一定分量の血漿免疫グロブリンと、一定分量の抗原特異的免疫グロブリンと、取扱説明書とを含むキットであって、前記取扱説明書は、アレルギー疾患の治療又は予防のための前記一定分量の血漿免疫グロブリンと前記一定分量の抗原特異的免疫グロブリンとの使用向けの前記キットに関連付けられており、
前記血漿免疫グロブリンは毎週約2~10mg/kg(体重)の用量で投与されるように製剤化されており、前記抗原特異的免疫グロブリンは毎週約0.4~10mg/kg(体重)の用量で投与されるように製剤化されているキット。
【請求項19】
血漿免疫グロブリンと抗原特異的免疫グロブリンとの一定分量の混合物と、取扱説明書とを含むキットであって、前記取扱説明書は、アレルギー疾患の治療又は予防のための血漿免疫グロブリンと抗原特異的免疫グロブリンとの前記一定分量の混合物の使用向けの前記キットに関連付けられており、
前記血漿免疫グロブリンは毎週約2~10mg/kg(体重)の用量で投与されるように製剤化されており、前記抗原特異的免疫グロブリンは毎週約0.4~10mg/kg(体重)の用量で投与されるように製剤化されているキット。
【請求項20】
約2~10mg/kg(体重)の用量で投与されるように製剤化された血漿免疫グロブリンと、
約0.4~10mg/kg(体重)の用量で投与されるように製剤化された抗原特異的免疫グロブリンと、を含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレルギー疾患の治療に関する。特に、本発明は、アレルギー疾患の予防又
は治療において、プールされた免疫グロブリンと抗原特異的ポリクローナル免疫グロブリ
ンとの組み合わせの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アレルギー疾患は、人口のかなりの部分及びペット数のかなりの部分を悩ませている。
アレルゲン免疫療法が、アレルゲンに対する各自の耐性を増強させるために用いられる場
合が時にある。その療法では、アレルゲン注入を増量段階と維持段階の2つの段階で行う
。増量段階は、1週間に約1回から3回、3か月から6か月の間、アレルゲンの量を増や
しながら注入することを必要とする場合がある。一旦、有効投与量に達すると、維持段階
が、2週間から4週間ごとに約1回数年間さらに注入することから始まる。従って、増量
段階も維持段階も、かなりの負担である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、アレルギー疾患を治療又は予防するための改良型医薬組成物及び方法
を提供することである。
【0004】
本発明のこの目的及び他の目的は、以下に続く好ましい実施形態の詳細な説明を参照す
ることにより、さらによく理解してもらえるだろう。上に述べた目的は、確約というより
は本発明の動機となるものを述べたものであることに留意されたい。その目的は、必ずし
も、以下に記載する本発明の全ての実施形態、又は請求項のそれぞれにより規定される本
発明により果たされるとは限らない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、血漿免疫グロブリンと抗原特異的免疫グロブリンとの組み合
わせを、アレルギー疾患の治療又は予防に用い得る。
【0006】
別の態様において、本発明は、アレルギー疾患の治療又は予防のための血漿免疫グロブ
リンと抗原特異的免疫グロブリンとの組み合わせの使用を含む。
【0007】
別の態様において、本発明は、アレルギー疾患の治療又は予防のための医薬組成物であ
る。医薬組成物は、血漿免疫グロブリン及び抗原特異的免疫グロブリンを含む。
【0008】
他の態様において、血漿免疫グロブリンは、筋注用免疫グロブリンである。
【0009】
他の態様において、筋注用免疫グロブリンは、ヒト筋注用免疫グロブリンである。
【0010】
他の態様において、血漿免疫グロブリンは、ヒト血漿免疫グロブリンである。
【0011】
他の態様において、血漿免疫グロブリンは、非ヒト種由来のものである。
【0012】
他の態様において、血漿免疫グロブリン及び抗原特異的免疫グロブリンは、同一種由来
のものである。
【0013】
別の態様において、抗原特異的免疫グロブリンは、ポリクローナル抗破傷風トキソド免
疫グロブリン、ポリクローナル抗Rh免疫グロブリン、ポリクローナル抗B型肝炎免疫グ
ロブリン、ポリクローナル抗狂犬病免疫グロブリン、及びポリクローナル抗水痘免疫グロ
ブリンからなる群から選択される。
【0014】
別の態様において、血漿免疫グロブリンは、体重1kgあたり50mgを超える。
【0015】
他の態様において、本発明は、血漿免疫グロブリン及び抗原特異的免疫グロブリンを注
入投与することを含む、アレルギー疾患を治療又は予防する方法である。
【0016】
他の態様において、本発明は、一定分量の血漿免疫グロブリンと、一定分量の抗原特異
的免疫グロブリンと、取扱説明書とを含むキットであって、取扱説明書は、アレルギー疾
患の治療又は予防のための一定分量の血漿免疫グロブリンと一定分量の抗原特異的免疫グ
ロブリンとの使用向けのキットに関連付けられている、キットである。
【0017】
他の態様において、本発明は、血漿免疫グロブリンと抗原特異的免疫グロブリンとの一
定分量の混合物と、取扱説明書とを含むキットであって、取扱説明書は、アレルギー疾患
の治療又は予防のための血漿免疫グロブリンと抗原特異的免疫グロブリンとの一定分量の
混合物の使用向けのキットに関連付けられている、キットである。
【0018】
前記は、本発明の態様のいくつかのみをカバーし得る。本発明の他の態様は、1つ以上
の実施例に関連して本発明を実施するための少なくとも1つの好ましい態様の以下の説明
を参照することにより、理解することができる。本発明を実施するための以下の態様は、
本発明自体を規定するものではなく、本発明の発明上の特徴を実施する例に過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
いくつかの実施例に関連して本発明を実施する少なくとも1つの態様を、以下の図面を
参照することにより説明する。
【0020】
図1A】IMIGとポリクローナル抗破傷風トキソイドIgとを組み合わせて注射することにより抗OVA IgE応答が減弱したことを示すグラフである。
図1B】IMIGとポリクローナル抗破傷風トキソイドIgとを組み合わせて注射しても抗OVA IgG応答に変化がないことを示すグラフである。
図1C】IMIGとポリクローナル抗破傷風Igとを組み合わせた注射を受けたOVA免疫化マウスの脾細胞におけるOVA誘発IL-4を示すグラフである。
図1D】IMIGとポリクローナル抗破傷風Igとを組み合わせた注射を受けたOVA免疫化マウスの脾細胞におけるOVA誘発IL-2を示すグラフである。
図2A】IMIGと抗水痘Igとを注射したOVA免疫化マウスの脾細胞におけるOVA誘発IL-2を示すグラフである。
図2B】IMIGと抗水痘Igとを注射したOVA免疫化マウスの脾細胞におけるOVA誘発IL-4を示すグラフである。
図3A】ピーナツバターで感作し、イヌIMIG及びイヌ抗狂犬病免疫Igで治療する前又はヒトIMIG及びヒト抗破傷風Igで治療する前の犬の血液中の血清IgGのレベル全体を示すグラフである。
図3B】ピーナツバターで感作し、イヌIMIG及びイヌ抗狂犬病免疫Igで治療した後又はヒトIMIG及びヒト抗破傷風Igで治療した後の犬の血液中の血清IgGのレベル全体を示すグラフである。
図3C】ピーナツバターで感作し、イヌIMIG及びイヌ抗狂犬病免疫Igで治療する前又はヒトIMIG及びヒト抗破傷風Igで治療する前の犬の血液中の血清IgEのレベル全体を示すグラフである。
図3D】ピーナツバターで感作し、イヌIMIG及びイヌ抗狂犬病免疫Igで治療した後又はヒトIMIG及びヒト抗破傷風Igで治療した後の犬の血液中の血清IgEのレベル全体を示すグラフである。
図3E】ピーナツバターによる感作と、イヌIMIG及びイヌ抗狂犬病免疫Igによる治療又はヒトIMIG及びヒト抗破傷風Igによる治療との前における、Con-Aが犬の末梢血リンパ球を刺激したことによるIL-2の産生を示すグラフである。
図3F】ピーナツバターによる感作と、イヌIMIG及びイヌ抗狂犬病免疫Igによる治療又はヒトIMIG及びヒト抗破傷風Igによる治療との後における、Con-Aが犬の末梢血リンパ球を刺激したことによるIL-2の産生を示すグラフである。
図3G】ピーナツバターによる感作と、イヌIMIG及びイヌ抗狂犬病免疫Igによる治療又はヒトIMIG及びヒト抗破傷風Igによる治療との前における、Con-Aが犬の末梢血リンパ球を刺激したことによるIL-4の産生を示すグラフである。
図3H】ピーナツバターによる感作と、イヌIMIG及びイヌ抗狂犬病免疫Igによる治療又はヒトIMIG及びヒト抗破傷風Igによる治療との後における、Con-Aが犬の末梢血リンパ球を刺激したことによるIL-4の産生を示すグラフである。
図3I】ピーナツバターによる感作と、イヌIMIG及びイヌ抗狂犬病免疫Igによる治療又はヒトIMIG及びヒト抗破傷風Igによる治療との前後における、Con-Aが犬の末梢血リンパ球を刺激したことによるIL-2の産生レベル/IL-4の産生レベルの比を示すグラフである。
図3J】ピーナツバターによる感作と、イヌIMIG及びイヌ抗狂犬病免疫Igによる治療又はヒトIMIG及びヒト抗破傷風Igによる治療との後における、ピーナツバターAgが犬の末梢血リンパ球を刺激したことによるIL-2の産生及びIL-4の産生を示すグラフである。
図3K】ピーナツバターによる感作と、イヌIMIG及びイヌ抗狂犬病免疫Igによる治療又はヒトIMIG及びヒト抗破傷風Igによる治療との後における、ピーナツバターAgが犬の末梢血リンパ球を刺激したことによるIL-2産生レベル/IL-4産生レベルの比を示すグラフである。
図4A】IMIG及び抗破傷風Igの種々の投与量の注入を組み合わせた後のOVA免疫化マウスにおけるOVA特異的IgE血清レベルを示すグラフである。
図4B】IMIG及び抗破傷風Igの種々の投与量の注入を組み合わせた後のOVA免疫化マウスにおけるOVA特異的IgG血清レベルを示すグラフである。
図4C】IMIG及び抗破傷風Igの種々の投与量の注入を組み合わせた後のOVA免疫化マウスにおいてOVAが脾細胞を刺激したことによるIL-4産生を示すグラフである。
図4D】IMIG及び抗破傷風Igの種々の投与量の注入を組み合わせた後のOVA免疫化マウスにおいてOVAが脾細胞を刺激したことによるIL-2産生を示すグラフである。
図4E】IMIG及び抗破傷風Igの種々の投与量の注入を組み合わせた後のOVA免疫化マウスにおいてOVAが脾細胞を刺激したことによるIL-2産生レベル/IL-4産生レベルの比を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の医薬組成物は、プール血漿免疫グロブリンと抗原特異的ポリクローナル免疫グ
ロブリンとの組み合わせである。
【0022】
血漿免疫グロブリンは、一般に、少なくとも1000ドナーの血清から調製され、原発
性免疫不全症の患者を治療することに用いられてきた。血漿免疫グロブリンをいかに製剤
化し投与するかによって、筋注用免疫グロブリン(「IMIG」)、静注用免疫グロブリ
ン(「IVIG」)、皮下注用免疫グロブリン(「SCIG」)、腹腔内投与用免疫グロ
ブリン(「IPIG」)と呼ばれ得る。
【0023】
抗原特異的ポリクローナル免疫グロブリンは、水痘帯状疱疹ウイルス等の特定の病原体
に対して、又は破傷風トキソイド等の特定の抗原に対して、高い抗体数を伴って調製され
る免疫グロブリンである。
【0024】
プール血漿免疫グロブリンと、抗原特異的ポリクローナル免疫グロブリンとの組み合わ
せが、アレルギー疾患の治療又は予防に有用であることが、本発明者らに分かった。
【0025】
以下に詳細に述べていくように、本発明者らは、種々の抗原に対する種々の抗原特異的
免疫グロブリンを用いた実験を実施した。使用される抗原特異的免疫グロブリン(ポリク
ローナル抗破傷風免疫グロブリン、ポリクローナル抗狂犬病免疫グロブリン、ポリクロー
ナル抗水痘免疫グロブリン)の間の製剤及び化学組成における顕著な相違を考慮して、血
漿免疫グロブリンを任意の抗原特異的免疫グロブリン(ポリクローナル抗Rh免疫グロブ
リン及びポリクローナル抗B型肝炎免疫グロブリンを含むがそれらに限定されない)と組
み合わせることによって、治療対象の人間又は動物の免疫系が同様に変化する結果になり
、またアレルギー疾患が同様に予防されかつ/又は治療されることが、予測される。
【0026】
人間及びペットにおけるアレルギー疾患の治療及び予防のために、その組み合わせの血
漿免疫グロブリンの成分は、限定はされないが、Gamunex(登録商標)及びHiz
entra(登録商標)等、人間における使用が承認された血漿免疫グロブリンであり得
る。
【0027】
血漿免疫グロブリン及び抗原特異的ポリクローナル免疫グロブリンは、適切な任意の方
法で投与し得る。例えば、抗体は、非免疫原性方式で、すなわち、アジュバントなしに、
非免疫原性量、例えば、筋注、静注、皮下注、又は腹腔内投与式に、投与し得る。血漿免
疫グロブリンと、抗原特異的ポリクローナル免疫グロブリンとの組み合わせを含む医薬組
成物は、緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、又は中性PHのリン酸緩衝生理食塩水
等、製薬上許容される基剤を含み得る。
【0028】
本発明の別の態様は、一定分量の血漿免疫グロブリンと、一定分量のポリクローナル抗
原特異的免疫グロブリンと、アレルギー疾患の治療又は予防に対するこのような2つの異
なる一定分量の使用向けの取扱説明書とを含むキットである。
【0029】
本発明の別の態様は、血漿免疫グロブリンとポリクローナル抗原特異的免疫グロブリン
との混合物の一定分量と、アレルギー疾患の治療又は予防のためのこのような一定分量の
使用向けの取扱説明書とを含むキットである。
【0030】
抗体は、任意の適切な部位に、任意の適切な時間に、投与し得る。しかしながら、抗体
は、同時に又は実質的に同時に投与されることが好ましい。抗体は、別々の組成物で連続
して又は同時に、或いは混合物として一緒に投与してよい。
【実施例0031】
[実施例1]
ポリクローナルヒトIMIGとポリクローナルヒト抗破傷風Igを用いたアレルギー実験
プロトコル
5匹のBALB/cマウス(研究開始時点で8週齢)を群ごとに使用した。対照群以外
の全てのマウス(1群、以下参照)に、オボアルブミン(10μg OVA プラス A
l(OH))を0.3mlのリン酸緩衝生理食塩水(「PBS」)を溶媒として0日目
と14日目に腹腔内投与し、さらに56日目に追加免疫を与えた。全てのマウスに、14
日目から飲料水で卵白溶液(20%(w/v)をフィルターろ過 EWS)を与えた。
【0032】
筋注用免疫グロブリン(Gamunex(登録商標)25μg: Grifols社)
投与を受けるマウスに対して、2日目、7日目、14日目、21日目、28日目、35日
目、及び42日目に、0.05mlのPBSを溶媒として左臀筋に筋肉注射した。抗破傷
風免疫Ig(HyperTET 25μg: Grifols社)投与を受ける動物に対
して、2日目、7日目、14日目、21日目、28日目、35日目、及び42日目に、0
.05mlのPBSを溶媒として右三角筋に筋肉注射した。いくつかの事例では、IMI
G又は抗破傷風が、使用前に破傷風トキソイドにより吸着処理された(x3)。対照群に
は、同一部位にのみPBSを投与した。
【0033】
以下の群を用いた。
1群: OVA/EWS
2群: OVA/EWS
3群: 2群について+IMIG(OVA/EWS+IMIG)
4群: 2群について+抗破傷風Ig(OVA/EWS+Anti-TetIg)
5群: 2群について+IMIG+抗破傷風Ig(OVA/EWS+IMIG+An
ti-TetIg)
6群: 2群について+IMIG(破傷風によりx3吸着処理される)+抗破傷風Ig(
OVA/EWS+IMIGAbs+Anti-Tet)
7群: 2群について+IMIG+抗破傷風Ig(破傷風により吸着処理されるx3)(
OVA/EWS+IMIG+Anti-Tetabs)
【0034】
全てのマウスは、研究の63日目に屠殺した。屠殺した時に、心臓穿刺により得たOV
Aに対する血清IgEを、OVAが100ng/wellコーティングされHRP-抗マ
ウスIgE及び適切な基板とともに開発されたプレートを使うELISA法により測定し
た。
【0035】
その上、個々の動物からの5x10の脾細胞を、インビトロで、OVA1μg/ml
との培養液2mlに72時間暴露し、IL-2/IL-4を、市販のELISAキット(
eBIOSciences)を使用して培養上清液中で測定した。
【0036】
結果
図1Aは、IMIGと、ポリクローナル抗破傷風Igとを組み合わせた結果、OVA特
異的IgEがかなり抑制されることを示し、図1Bは、OVA特異的IgGに有意な効果
がないことを示している。ここで図1Aを参照すると、破傷風によるIMIGの吸着処理
(6群)と、破傷風によるポリクローナル抗破傷風の吸着処理(7群)とには差違がない
。このことは、活性製薬成分が抗破傷風抗体ではないことを示唆している。
【0037】
図1Cは、IMIGと抗破傷風Igとを組み合わせた注射を受けた5群、6群及び7群
のマウスの脾細胞におけるOVA誘発IL-4のレベルの低下を示す。OVA誘発IL-
2レベルを示す図1Dとともに検討すると、IL-4対IL-2の比が、IMIGプラス
抗破傷風Igで治療された群(5群、6群及び7群)については、対照群の2、3及び4
よりも小さくなることは、明らかである。この結果は、図1A及び図1Bに示したアレル
ギーの抑制とその結果と一致している。
【0038】
[実施例2]
ポリクローナルヒトIMIGとポリクローナルヒト抗破傷風Igを使用したアレルギー実
験プロトコル
8匹のBALB/cマウス(研究開始時点で8週齢)を群ごとに使用した。対照群(群
1、以下参照)以外の全てのマウスが、オボアルブミン(10μg OVA プラス A
l(OH))を0.3mlのリン酸緩衝生理食塩水(「PBS」)を溶媒として0日目
と14日目と42日目に腹腔内投与した。全てのマウスに、14日目~42日目に飲料水
で卵白溶液(20%(w/v)EWSをフィルターろ過)を与えた。
【0039】
IMIG(Gamunex(登録商標) 25μg: Grifols社)及び抗水痘
Ig(25μg: Grifols社)を、7日目~35日目から毎週静脈内に注入した
【0040】
以下の群を用いた。
1群: OVA/EWS
2群: OVA/EWS
3群: 2群について+IMIG(OVA/EWS+IMIG)
4群: 2群について+抗水痘Ig(OVA/EWS+Anti-Varicell
aIg)
5群: 2群について+IMIG+抗水痘Ig(OVA/EWS+IMIG+Ant
i-VaricellaIg)
【0041】
全てのマウスは、研究の49日目に屠殺した。屠殺した時に、心臓穿刺により得たOV
Aに対する血清IgEを、OVAが100ng/wellコーティングされHRP-抗マ
ウスIgE及び適切な基板とともに開発されたプレートを使うELISA法により測定し
た。
【0042】
その上、個々の動物からの5x10の脾細胞を、インビトロで、OVA1μg/ml
との培養液2mlに72時間暴露し、IL-2/IL-4を、市販のELISAキット(
eBIOSciences)を使用して培養上清液中で測定した。
【0043】
結果
図2Aは、OVAがマウスの個別の脾細胞を刺激してもIL-2の産生が減弱しなかっ
たことを示す。一方で、図2Bは、IL-4の産生の明らかな減弱を示す。この結果は、
IMIGと抗破傷風Igとを組み合わせた注入を用いて実施例1において実施した本研究
と一致する(図1C及び図1Dを参照)。
【0044】
[実施例3]
ピーナツバターに感作させたビーグル犬を用いた、ポリクローナルヒトIMIG及びポリ
クローナルヒト抗破傷風Ig、又はポリクローナルイヌIg及びイヌ抗狂犬病Igを用い
たアレルギー実験プロトコル
実施例1及び実施例2におけるプロトコルの変更において、本発明者らは、局所的に塗
布したピーナツバターに誘発されるアレルギー感作の有症率が高い(>80%)ことをこ
れまでの文献報告が示している大型動物(ビーグル犬)において、アレルギー感作を減弱
させ得るか否かを検討した。
【0045】
動物に、治療前に第1の暴露を1週間受けさせるとともに、毎週ピーナツバターへの局
所(腹)の暴露を受けさせた。ピーナツバターの次の5回の暴露は、組み合わせ型イヌI
g(IMIGとプールされたイヌ抗狂犬病Ig)又は組み合わせ型ヒトIg(IMIGと
抗破傷風Ig)による5週間の治療を伴った。5週間の治療後、全ての動物に、同一のI
g混合物を14日ごとに投与する治療をさらに3回受けさせた。最後に、全ての犬に、ピ
ーナツバターの経口負荷を受けさせ、血清IgG、血清IgE、及びピーナツバターの誘
発によるIL-2/IL-4の産生を測定した。
【0046】
イヌ筋注用免疫グロブリン(Innovative Research社、米国)を受
ける犬の臀筋に、PBS0.5mlを溶媒として1mg/kgの筋肉内注射を行い、プー
ルされたイヌ抗狂犬病免疫Ig(プールされた犬を狂犬病ワクチンで再免疫化することに
より調製)を受ける犬の反対側の臀筋に、PBS0.5mlを溶媒として1mg/kgの
筋肉内注射を行った。
【0047】
ヒト筋注用免疫グロブリン(Gamunex(登録商標)Grifols社)を受ける
犬の臀筋に、PBS0.5mlを溶媒として1mg/kgの筋肉内注射を行い、ヒト抗破
傷風Ig(HyperTET、Grifols社)を受ける犬の反対側の臀筋に、PBS
0.5mlを溶媒として1mg/kgの筋肉内注射を行った。
【0048】
結果
図3A及び図3Bは、本研究の開始時点(t0)における総血清IgGレベルと終了時
点(t1)における総血清IgGレベルとの比較をそれぞれ示す。図3C及び図3Dは、
本研究の開始時点(t0)における総血清IgEレベルと終了時点(t1)における総血
清IgEレベルとの比較をそれぞれ示す。IgGレベルに大きな変化はないが、IgEレ
ベルにおける減少が、イヌIMIG及びイヌ抗狂犬病Igによる治療と、ヒトIMIG及
びヒト抗破傷風Igによる治療との両方に、観察された。
【0049】
図3E及び図3Fは、治療前(t0)のイヌ末梢血リンパ球(PBL)におけるコンカ
ナバリンA(ConA)によるIL-2産生と、治療後(t1)のイヌ末梢血リンパ球(
PBL)におけるコンカナバリンA(ConA)によるIL-2産生との比較をそれぞれ
示す。
【0050】
図3G及び図3Hは、治療前(t0)のイヌPBLにおけるConAによるIL-4産
生と治療後(t1)のイヌPBLにおけるConAによるIL-4産生との比較をそれぞ
れ示す。
【0051】
図3Iは、Ig治療前後のイヌPBLにおけるConAによるIL-2/IL-4誘発
の比較を示す。このポリクローナル応答に対してさえ、IL-2/IL-4比は、イヌI
gG又はヒトIgGによる治療後の犬において高くなる(*、p<0.05)ことに留意
されたい。
【0052】
図3Jは、イヌIMIG及びイヌ抗狂犬病Igによる治療後と、ヒトIMIG及びヒト
抗破傷風Igによる治療後とにおける、ピーナツバターがイヌPBLを刺激することによ
るIL-2及びIL-4の産生を示す。図3Kは、治療後のIL-2:IL-4の比を示
す。他の実験と一致するが、IL-4産生は、Ig治療により減弱するが、IL-2産生
は、減弱しない。その上、IL-2:IL-4の比は、治療後高くなる(*、p<0.0
5)。
【0053】
[実施例4]
用量反応研究-免疫前マウスにおけるポリクローナルヒトIMIGとポリクローナルヒト
抗破傷風Ig
本発明者らは、免疫前マウスにおいてポリクローナルヒトIMIGとポリクローナルヒ
ト抗破傷風Igとを用いて、用量反応研究も行った。
【0054】
用量反応研究において、全群に、それぞれ5匹ずつBALB/cマウスがいた。マウス
は、約25グラムだった。全てのマウスに、0日目及び14日目にOVA(10μg O
VA プラス Al(OH))を与え、56日目に追加免疫をした。全てのマウスに、
14日目から飲料用容器でEWS(フィルターろ過した20%(w/v)の卵白溶液)を
与えた。
【0055】
マウスに、56日目、63日目、70日目、77日目及び84日目に免疫グロブリンを
注射する治療を開始した。
【0056】
以下の群を用いた。
1群(対照): OVA免疫化及びEWS(No IMIG or Anti-Tet)
2群: 1群について+IMIG(250μg/マウス)+抗破傷風Ig(10μg/マ
ウス)(IMIG250:Tet10
3群: 1群について+IMIG(250μg/マウス)+抗破傷風Ig(50μg/マ
ウス)(IMIG250:Tet50
4群: 1群について+IMIG(250μg/マウス)+抗破傷風Ig(250μg/
マウス)(IMIG250:Tet250
5群: 1群について+IMIG(50μg/マウス)+抗破傷風Ig(10μg/マウ
ス)(IMIG50:Tet10
6群: 1群について+IMIG(50μg/マウス)+抗破傷風Ig(50μg/マウ
ス)(IMIG50:Tet50
7群: 1群について+IMIG(50μg/マウス)+抗破傷風Ig(250μg/マ
ウス)(IMIG50:Tet250
8群: 1群について+IMIG(10μg/マウス)+抗破傷風Ig(10μg/マウ
ス)(IMIG10:Tet10
9群: 1群について+IMIG(10μg/マウス)+抗破傷風Ig(50μg/マウ
ス)(IMIG10:Tet50
10群: 1群について+IMIG(10μg/マウス)+抗破傷風Ig(250μg/
マウス)(IMIG10:Tet250
11群: 1群について+IMIG(50μg/マウス)+抗破傷風Ig(50μg/マ
ウス) + コエンザイムQ10 ip (100μg/マウス)56日目~90日目ま
で2日ごと(IMIG50:Tet50:Q10)
12群: 1群について+IMIG(250μg/マウス)(IMIG250
13群: 1群について+抗破傷風Ig(50μg/マウス)(Anti-Tet50
【0057】
OVAを用いた最終の追加免疫は90日目であり、マウスは97日目に屠殺した。
【0058】
血清OVA特異型IgG/IgEをELISA法により測定した。その上、2x10
の脾細胞を、インビトロで、OVA 1μg/mlの培養液2mlに72時間暴露し、I
L-2/IL-4を、市販のELISAキット(BioLegend社)を使用して培養
上清液中で測定した。
【0059】
結果
図4A及び図4Bは、IgE応答の最適な抑制が、IMIGを250μg/マウスと5
0μg/マウス投与することで、広範囲の抗破傷風投与(10~250μg/マウス)に
わたって起こることを示す。IMIG投与量が少なくなると(10μg/マウス)、抑制
が表れることが少なくなる。動物にコエンザイムQ10を抗酸化剤として2日ごとに(1
00μg/マウス)投与した場合、比較的少ないIMIG投与量(50)と抗破傷風投与
量(50)で抑制においてある程度相乗効果があった。IgG応答の減弱は、起こらなか
った(図4B)。
【0060】
図4C図4D及び図4Eは、IL-4及びIL-2の産生を測定値として用いた図4
A及び図4Bのデータを確認するものである。繰り返すが、IMIGを250μg/マウ
スと50μg/マウス投与した場合、広範囲の抗破傷風投与(10~250μg/マウス
)にわたって、IL-4産生の抑制は、見て取れるが、IL-2産生の抑制は見て取れな
い。IMIG投与量が少なくなると(10μg/マウス)、抑制が表れることが少なくな
る。動物に、コエンザイムQ10を抗酸化剤として2日ごとに(100μg/マウス)投
与した場合、比較的少ないIMIGの投与量(50)と抗破傷風の投与量(50)で抑制
において相乗効果があった。このデータは、図4Eに示すようにIL-2:IL-4比の
比較によって、さらに強調される。
【0061】
上の説明において、実施例に関連して本発明を実施する典型的な態様を説明してきた。
しかしながら、特許請求の範囲は、その実施例により限定すべきではなく、全体として本
説明と一致する最も広い解釈をすべきである。ゆえに、明細書及び図面は、限定的な意味
というよりは例示としてみなされるものである。

図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図3J
図3K
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E