(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139179
(43)【公開日】2023-10-03
(54)【発明の名称】癌の組合せ治療
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20230926BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230926BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230926BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230926BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230926BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20230926BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20230926BHJP
A61K 31/4035 20060101ALI20230926BHJP
A61K 31/454 20060101ALI20230926BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20230926BHJP
【FI】
A61K39/395 T
A61K45/00 ZNA
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
A61K47/68
A61K39/395 L
A61K39/395 N
A61K31/573
A61K31/4035
A61K31/454
C07K16/28
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023120208
(22)【出願日】2023-07-24
(62)【分割の表示】P 2020515148の分割
【原出願日】2018-09-12
(31)【優先権主張番号】62/558,593
(32)【優先日】2017-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513032275
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン、インテレクチュアル、プロパティー、ディベロップメント、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GLAXOSMITHKLINE INTELLECTUAL PROPERTY DEVELOPMENT LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】サンジェイ、カンデーカル
(72)【発明者】
【氏名】パトリック、メイズ
(72)【発明者】
【氏名】ジョアンナ、オパリンスカ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】多発性骨髄腫などの癌を治療する方法を提供する。
【解決手段】抗BCMA抗原結合タンパク質(例えば、抗BCMA抗体)と免疫調節薬(例えば、ポマリドミドまたはレナリドミド)の組合せを含む、多発性骨髄腫などの癌を治療する方法が開示される。これらの組合せはまた、抗炎症化合物(例えば、デキサメタゾン)も含み得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする対象において癌を治療する方法であって、抗BCMA抗原結合タンパク質と免疫調節イミド薬(IMiD)とを含んでなる治療上有効な用量の組合せを投与することを含んでなる、方法。
【請求項2】
前記組合せが抗炎症化合物をさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗BCMA抗原結合タンパク質が、配列番号1に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDRH1;配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDRH2;配列番号3に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDRH3;配列番号4に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDRL1;配列番号5に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDRL2;および配列番号6に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDRL3を含んでなる、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記抗BCMA抗原結合タンパク質が、配列番号7に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる重鎖可変領域(VH);および配列番号8に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる軽鎖可変領域(VL)を含んでなる抗体である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記抗炎症化合物がデキサメタゾンである、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記IMiDがサリドマイド類似体である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記IMiDがポマリドミドである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記IMiDがレナリドミドである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記抗BCMA抗原結合タンパク質が、細胞毒素に結合された抗体を含んでなる免疫複合体である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞毒素がMMAEまたはMMAFから選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記癌が多発性骨髄腫、慢性リンパ球性白血病および非ホジキンリンパ腫から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
1.9mg/kg、2.5mg/kgまたは3.4mg/kgの抗BCMA抗原結合タンパク質が28日周期の1日目に投与される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記IMiDがポマリドミドであり、4mgのポマリドミドが28日周期の1~21日目に投与される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記IMiDがレナリドミドであり、10mgまたは25mgのレナリドミドが28日周期の1~21日目に投与される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記抗炎症化合物がデキサメタゾンであり、20mgまたは40mgのデキサメタゾンが28日周期の1~4、9~12および17~20日目、または28日周期の1、8、15および22日目に投与される、請求項2~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
抗BCMA抗原結合タンパク質、IMiD、および場合により抗炎症化合物を含んでなる、癌の治療において使用するための組合せ。
【請求項17】
癌の治療において使用するための医薬の製造における、前記組合せが抗BCMA抗原結合タンパク質、IMiD、および場合により抗炎症化合物を含んでなる組合せの使用。
【請求項18】
(i)抗BCMA抗原結合タンパク質;
(ii)IMiDおよび場合により抗炎症化合物と組み合わせた場合に癌の治療において使用するための説明書
を含んでなる、癌の治療において使用するためのキット。
【請求項19】
抗BCMA抗体薬物結合体およびサリドマイド類似体を投与することを含んでなる、それを必要とするヒトにおいて癌を治療する方法。
【請求項20】
抗炎症化合物を投与することをさらに含んでなる、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本願は、ASCIIフォーマットで電子提出された配列表を含み、引用することによりその全内容が本明細書の一部とされる。2018年9月10日に作成された前記ASCIIコピーはPU66429_WO_SL.txtの名称で10,130バイトのサイズである。
【0002】
発明の分野
本発明は、対象において癌を治療する方法に関する。特に、本発明は、癌を治療するための抗BCMA抗原結合タンパク質と免疫調節イミド薬(IMiD)の組合せに関する。組合せは、デキサメタゾンなどの抗炎症化合物をさらに含んでよい。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
多発性骨髄腫(MM)は、不治の悪性腫瘍であり、総ての癌の1%、総ての血液系悪性腫瘍の10%を占める。多発性骨髄腫の治療において、様々な薬物および組合せ治療が評価され、有効であることが判明している(National Comprehensive Cancer Network, 2016; Moreau, San Miguel et al., 2017)。しかしながら、これらの患者の総てではなくともほとんどが必ず再発する(Richardson, Barlogie et al., 2003; Richardson, Barlogie et al., 2006; Jagannath, Barlogie et al., 2008)。
【0004】
MMの治療歴のある患者に対して三剤および四剤の組合せが浮上しているが、これらの治療計画は毒性作用により限定される可能性がある(National Comprehensive Cancer Network, 2016)。重篤な毒性の増加無く、既存の両方と組み合わせることができる新しい作用機序の薬剤が必要とされる。よって、作用機序が重複せず、事前の処置との交差耐性が最小となり得る治療組合せを開発する差し迫った必要がある。
【発明の概要】
【0005】
発明の概要
本開示は、対象、例えば、ヒトにおいて癌を治療する方法に関する。特に、本発明は、癌を治療するための、抗体などの抗BCMA抗原結合タンパク質と免疫調節イミド薬(IMiD)の組合せに関する。組合せは、デキサメタゾンなどの抗炎症化合物をさらに含んでよい。一実施形態において、癌は、多発性骨髄腫、慢性リンパ球性白血病、および非ホジキンリンパ腫から選択される。
【0006】
本明細書では、それを必要とする対象において癌を治療する方法であって、抗BCMA抗原結合タンパク質とIMiDを含んでなる治療上有効な用量の組合せを投与することを含んでなる方法が提供される。一実施形態において、この組合せは、抗炎症化合物をさらに含んでなる。
【0007】
本明細書ではまた、それを必要とする対象において癌を治療する方法であって、抗BCMA抗原結合タンパク質とIMiDを含んでなる治療上有効な用量の組合せを投与することを含んでなり、前記抗体が、配列番号1に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDRH1;配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDRH2;配列番号3に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDRH3;配列番号4に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDRL1;配列番号5に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDRL2;および配列番号6に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDRL3を含んでなる方法が提供される。
【0008】
さらに本明細書では、それを必要とする対象において癌を治療する方法であって、抗BCMA抗原結合タンパク質とIMiDを含んでなり、前記抗BCMA抗原結合タンパク質が、配列番号7に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるVH;および配列番号8に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるVLを含んでなる抗体である、治療上有効な用量の組合せを投与することを含んでなる方法が提供される。
【0009】
本明細書では、それを必要とする対象において癌を治療する方法であって、抗BCMA抗原結合タンパク質、IMiD、および抗炎症化合物を含んでなり、前記抗炎症化合物がデキサメタゾンである、治療上有効な用量の組合せを投与することを含んでなる方法が提供される。
【0010】
本明細書ではまた、それを必要とする対象において癌を治療する方法であって、抗BCMA抗原結合タンパク質とIMiDを含んでなり、前記IMiDサリドマイド類似体である、治療上有効な用量の組合せを投与することを含んでなる方法が提供される。一実施形態において、サリドマイド類似体は、レナリドミドまたはポマリドミドである。
【0011】
さらに本明細書では、それを必要とする対象において癌を治療する方法であって、抗BCMA抗原結合タンパク質とIMiDを含んでなり、前記抗BCMA抗原結合タンパク質が、細胞毒素に結合された抗体を含んでなる免疫複合体である、治療上有効な用量の組合せを投与することを含んでなる方法が提供される。一実施形態において、前記細胞毒素は、MMAEまたはMMAFである。
【0012】
本明細書では、癌を治療する方法であって、1.9mg/kg、2.5mg/kg、または3.4mg/kgの抗BCMA抗原結合タンパク質が28日周期の1日目に投与される方法が提供される。
【0013】
また、本明細書では、癌を治療する方法であって、IMiDがポマリドミドであり、4mgのポマリドミドが28日周期の1~21日目に投与される方法も提供される。
【0014】
さらに本明細書では、癌を治療する方法であって、IMiDがレナリドミドであり、10mgまたは25mgのレナリドミドが28日周期の1~21日目に投与される方法が提供される。
【0015】
また、癌を治療する方法であって、抗炎症化合物がデキサメタゾンであり、20mgまたは40mgのデキサメタゾンが28日周期の1~4、9~12、および17~20日目、または28日周期の1、8、15、および22日目に投与される方法も提供される。
【0016】
本明細書では、抗BCMA抗原結合タンパク質、IMiD、および場合により抗炎症化合物を含んでなる、癌の治療において使用するための組合せが提供される。
【0017】
また、癌の治療において使用するための医薬(medicament)の製造における組合せの使用であって、前記組合せが抗BCMA抗原結合タンパク質、IMiD、および場合により抗炎症化合物を含んでなる使用も提供される。
【0018】
本明細書では、
(i)抗BCMA抗原結合タンパク質;
(ii)IMiDおよび場合により抗炎症化合物と組み合わせた場合に癌の治療において使用するための説明書
を含んでなる、癌の治療において使用するためのキットが提供される。
【0019】
また、抗BCMA抗体薬物結合体、サリドマイド類似体、および場合により炎症化合物を投与することを含んでなる、それを必要とするヒトにおいて癌を治療する方法も提供される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な説明
本開示は、対象において癌を治療する方法に関する。特に、本発明は、癌を治療するための、抗BCMA抗原結合タンパク質とIMiDの組合せに関する。組合せは、デキサメタゾンなどの抗炎症化合物をさらに含んでよい。理論に縛られるものではないが、本明細書に記載される新規な組合せは、重複しない作用機序のために毒性の軽減をもたらすと考えられる。
【0021】
組合せおよび医薬組成物
本明細書に記載される用語「組合せ」は、少なくとも2つの治療薬を指す。本明細書で使用する場合、用語「治療薬」は、組織、系、動物、哺乳動物、ヒト、または他の対象において所望の効果を生じる物質を意味すると理解される。一実施形態において、この組合せは、抗BCMA抗原結合タンパク質、好適には、抗BCMA抗体と少なくとも1つの付加的治療薬である。一実施形態において、この組合せは、抗BCMA抗原結合タンパク質とIMiDである。別の実施形態において、この組合せは、抗BCMA抗原結合タンパク質、IMiD、および抗炎症化合物である。本明細書に記載される組合せは、癌の治療に有効であり得る。
【0022】
一実施形態において、これらの組合せは、付加的治療薬、例えば、付加的癌治療薬を含み得る。一実施形態において、付加的癌治療薬は、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、イキサゾミブ、またはオプロゾミブなどのプロテアソーム阻害剤である。
【0023】
本発明の組合せの投与は、それらの組合せが単剤治療薬の個々の投与と比較した場合に下記の特性の改善のうち1以上を提供するという点で個々の治療薬よりも有利であり得る:i)最も有効な単剤よりも大きい抗癌効果、ii)相乗作用的または極めて相乗作用的な抗癌活性、iii)副作用プロファイルの軽減を伴って抗癌活性の増強を提供する投与プロトコール、iv)毒性作用プロファイルの軽減、v)治療域の増大、またはvi)一方もしくは両方の治療薬のバイオアベイラビリティの増大。
【0024】
本明細書に記載される組合せは、医薬組成物の形態であり得る。「医薬組成物」は、本明細書に記載される組合せ、および1種類以上の薬学上許容可能な担体、希釈剤、または賦形剤を含有する。これらの担体、希釈剤または賦形剤は、その処方物の他の成分と適合し、医薬調剤が可能性であり、そのレシピエントに有害でないという意味で許容可能でなければならない。
【0025】
一実施形態において、組合せ中の各治療薬は、その固有の医薬組成物として個々に処方され、これらの医薬組成物のそれぞれが癌を治療するために投与される。本実施形態において、これらの医薬組成物のそれぞれは、同じまたは異なる担体、希釈剤または賦形剤を含み得る。例えば、一実施形態において、第1の医薬組成物は、抗BCMA抗原結合タンパク質を含有し、第2の医薬組成物は、IMiDを含有し、第1および第2の医薬組成物は両方とも癌を治療するために投与される。別の実施形態において、第1の医薬組成物は、抗BCMA抗原結合タンパク質を含有し、第2の医薬組成物は、IMiDを含有し、第3の医薬組成物は、抗炎症化合物を含有し、第1、第2、および第3の医薬組成物はそれぞれ癌を治療するために投与される。
【0026】
一実施形態において、組合せ中の各治療薬は、単一の医薬組成物中に一緒に処方され、癌を治療するために投与される。例えば、一実施形態において、単一の医薬組成物は、抗BCMA抗原結合タンパク質とIMiDの両方を含有し、癌を治療するために単一の医薬組成物として投与される。別の実施形態において、単一の医薬組成物は、抗BCMA抗原結合タンパク質、IMiD、および抗炎症化合物を含有し、単一の医薬組成物として投与される。
【0027】
本明細書においてIMiDおよび抗炎症化合物という場合には、遊離塩基としての、または塩、例えば、薬学上許容可能な塩としてのIMiDおよび抗炎症化合物を意味すると理解されるべきである。薬学上許容可能な塩としては、酸付加塩が含まれる。好適な塩に関する総説としては、Berge et al., J. Pharm. Sci., 66:1-19 (1977)を参照。
【0028】
本発明は、その範囲内にIMiDおよび抗炎症化合物の塩の総ての可能性のある化学量論および非化学量論的形態を含む。
【0029】
多くの有機化合物は、その中でそれらが反応する、またはそれから沈澱もしくは結晶化する溶媒と複合体を形成することが認識されるであろう。これらの複合体は、「溶媒和物」として知られる。例えば、水との複合体は、「水和物」として知られる。水、エタノール、イソプロピルアルコール、およびN-メチルピロリジノンなどの、沸点の高い溶媒および/または水素結合を形成する傾向が大きい溶媒は、溶媒和物を形成するために使用可能である。溶媒和の同定方法としては、限定されるものではないが、NMRおよび微量分析が含まれる。IMiDおよび抗炎症化合物の溶媒和物は本発明の範囲内にある。本明細書で使用する場合、溶媒和物という用語は、遊離塩基としてのIMiDおよび抗炎症化合物ならびにその任意の塩の両方の溶媒和物を包含する。
【0030】
本発明の特定のIMiDおよび抗炎症化合物は、キラル原子を含み得るので、1以上の立体異性形で存在し得る。本発明は、個々の立体異性体としてであれ、またはラセミ体およびラセミ混合物を含むその混合物としてであれ、光学異性体を含む、本発明のIMiDおよび抗炎症化合物の立体異性体の総てを包含する。いずれかの立体異性体は、10重量%未満、例えば、5重量%未満、または0.5重量%未満の他の立体異性体を含有し得る。例えば、いずれかの光学異性体は、10重量%未満、例えば、5重量%未満、または0.5重量%未満のその対掌体を含有し得る。
【0031】
本発明の特定のIMiDおよび抗炎症化合物は、互変異性形で存在し得る。本発明は個々の互変異性体としてであれ、またはその混合物としてであれ、本発明のIMiD剤および抗炎症化合物の互変異性体の総てを包含すると理解される。
【0032】
本発明のIMiDおよび抗炎症化合物は、結晶形または非結晶形で存在し得る。さらに、本発明のIMiDおよび抗炎症化合物の結晶形のいくつかは多形体として存在してもよく、それらは総て本発明の範囲内含まれる。本発明のIMiDおよび抗炎症化合物の最も熱力学的に安定な1または複数の多形形態が特に注目される。
【0033】
本発明のIMiDおよび抗炎症化合物の多形形態は、限定されるものではないが、X線粉末回折(XRPD)、赤外線分光法(IR)、ラマン分光法、示差走査熱量測定法(DSC)、熱重量分析(TGA)および固体核磁気共鳴(ssNMR)を含む、いくつかの従来の分析技術を用いて特性決定および識別を行うことができる。
【0034】
本発明はまた、IMiDおよび抗炎症化合物またはそれらの薬学上許容可能な塩の総ての好適な同位体変種を含む。IMiDおよび抗炎症化合物、またはそれらの薬学上許容可能な塩の同位体変種は、少なくとも1つの原子が、同じ原子番号であるが自然界に通常見られる原子質量とは異なる原子質量を有する原子に置き換えられたものと定義される。本発明のIMiDおよび抗炎症化合物に組み込まれ得る同位体の例としては、水素、炭素、窒素、酸素、フッ素および塩素の同位体、例えば、それぞれ2H、3H、13C、14C、15N、17O、18O、18Fおよび36Clが含まれる。IMiDおよび抗炎症化合物またはそれらの塩もしくは溶媒和物の特定の同位体変種、例えば、3Hまたは14Cなどの放射性同位体が組み込まれたものは、薬物および/または基質組織分布研究に有用である。トリチウム化、すなわち、3H同位体、および炭素-14、すなわち、14C同位体は、調製の容易さおよび検出能のために特に好ましい。さらに、重水素、すなわち、2Hなどの同位体での置換は、より大きな代謝安定性、例えば、in vivo半減期の延長または用量要求の低減から得られる特定の治療的利点を与え得るので、いくつかの状況において好ましいものであり得る。IMiD、またはそれらの薬学上の塩の同位体変種は、一般に、従来の手順によって調製することができる。
【0035】
以上から、本発明の範囲内にはIMiDおよび抗炎症化合物ならびにそれらの塩および溶媒和物の溶媒和物、水和物、異性体および多形形態が含まれることが認識されるであろう。
【0036】
当業者には、IMiDおよび抗炎症化合物の特定の誘導体は、それ自体は必ずしも薬理活性を有する必要はなく、投与され、その後、体内で代謝されて薬理学的に有効なIMiDおよび抗炎症化合物を形成してもよいことが認識されるであろう。このような誘導体は、本明細書では、「プロドラッグ」と呼ばれる。よって、本明細書に記載されるIMiDおよび抗炎症化合物は、プロドラッグの形態で存在し得る。好適な誘導体の例は、Drugs of Today, Volume 19, Number 9, 1983, pp 499 - 538およびTopics in Chemistry, Chapter 31, pp 306 - 316および“Design of Prodrugs” by H. Bundgaard, Elsevier, 1985, Chapter 1に記載されている。
【0037】
抗BCMA抗原結合タンパク質
本明細書に記載される組合せ中の抗BCMA抗原結合タンパク質は、癌の治療または予防に有用である。本明細書に開示される抗BCMA抗原結合タンパク質はいずれも、癌を治療するために、IMiDと組み合わせて、またはIMiDおよび抗炎症化合物と組み合わせて使用され得る。本明細書に記載される抗BCMA抗原結合タンパク質は、例えば、GenBank受託番号Q02223.2のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも90パーセントの相同性または少なくとも90パーセントの同一性を有するヒトBCMAをコードする遺伝子を含有するヒトBCMAを含む、ヒトBCMAと結合し得る。
【0038】
用語「抗原結合タンパク質」は、本明細書で使用する場合、ヒトBCMAと結合し得る抗体、抗体フラグメントおよび他のタンパク質構築物を指す。本発明の抗原結合タンパク質は、天然抗体または機能的フラグメントもしくはその等価物の構造の形式を採り得る本発明の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含んでなり得る。よって、本発明の抗原結合タンパク質は、適当な軽鎖と対をなした際に、全長抗体、(Fab’)2フラグメント、Fabフラグメント、またはその等価物(例えば、scFV、ビボディ、トリボディまたはテトラボディ、Tandabsなど)の形式を採る本発明のVH領域を含んでなり得る。抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4;またはIgM;IgA、IgEもしくはIgDまたはその修飾変異体であり得る。抗体重鎖の定常ドメインも相応に選択され得る。軽鎖定常ドメインはκまたはλ定常ドメインであり得る。さらに、抗原結合タンパク質は、あらゆるクラスの修飾、例えば、IgG二量体、もはやFc受容体と結合しないかまたはC1q結合を媒介しないFc変異株を含んでなり得る。抗原結合タンパク質はまた、抗原結合領域および非免疫グロブリン領域を含んでなる、WO86/01533に記載されているタイプのキメラ抗体であってもよい。
【0039】
別の側面において、抗原結合タンパク質は、dAb、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニ抗体、およびミニボディからなる群から選択される。本発明の一側面において、抗原結合タンパク質は、ヒト化抗体またはキメラ抗体であり、さらなる側面において、抗体はヒト化されている。一側面において、抗体は、モノクローナル抗体である。
【0040】
キメラ抗原受容体(CAR)は、MHC-抗原ペプチド複合体と結合する必要なくT細胞において新規な特異性を作り出すために、人工T細胞受容体として開発された。これらの合成受容体は、単一融合分子としてフレキシブルリンカーを介して1以上のシグナル伝達ドメインと結合された標的結合ドメインを含有する。この標的結合ドメインは、T細胞を罹患細胞の表面上の特異的標的に標的化するために使用され、シグナル伝達ドメインは、T細胞の活性化および拡大増殖のための分子装置を含有する。T細胞膜を貫通する(すなわち、膜貫通ドメインを形成する)フレキシブルリンカーは、CARの標的結合ドメインの細胞膜ディスプレーを可能とする。CARは、リンパ腫および固形腫瘍を含む種々の悪性腫瘍由来の腫瘍細胞の表面に発現される抗原にT細胞を向け直すことを上手く可能にした(Jena et al. (2010) Blood, 116(7):1035-44)。
【0041】
CARの開発は、これまでに3世代を含んだ。第1世代のCARは、CD3ζ鎖またはFc受容体γ鎖の細胞質領域に由来するシグナル伝達ドメインに結合された標的結合ドメインを含んでなるものであった。第1世代CARは、選択された標的にT細胞を上手く向け直すことが示されたが、それらはin vivoで長期の拡大増殖および抗腫瘍活性を提供できなかった。第2世代および第3世代のCARは、CD28、OX-40(CD134)および4-1BB(CD137)などの補助刺激分子を含めることによって改善されたT細胞の生存の増進および拡大増殖の増大に注力された。
【0042】
CARを有するT細胞は、疾患状態で、罹患細胞を除去するために使用できた。一つの臨床目的は、アフェレーシスおよびT細胞単離の後に、患者細胞を、ベクター(例えば、レンチウイルスベクター)を介してCAR用の発現構築物を含有する組換えDNAで形質転換することであろう。T細胞の拡大増殖の後、それらのT細胞は、罹患標的細胞を標的化し、死滅させる目的で、患者に再導入される。
【0043】
本発明の一側面において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、キメラ抗原受容体である。さらなる側面において、CARは、結合ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内エフェクタードメインを含んでなる。
【0044】
一側面において、膜貫通ドメインは、天然源または合成源のいずれに由来してもよい。一側面において、膜貫通ドメインは、いずれの膜結合タンパク質または膜貫通タンパク質に由来してもよい。あるいは、膜貫通ドメインは、合成することもでき、主として、ロイシンおよびバリンなどの疎水性残基を含んでなる。例えば、膜貫通ドメインは、CD4、CD8、CD3もしくはCD28などのCDタンパク質の膜貫通ドメイン、α、β、γもしくはδなどのT細胞受容体のサブユニット、IL-2受容体(α鎖)のサブユニット、低親和性神経成長因子受容体(LNGFRもしくはp75)のサブユニット(submit)(β鎖もしくはγ鎖)、またはFc受容体のサブユニット鎖であり得る。
【0045】
一側面において、膜貫通ドメインは、CD4、CD8またはCD28の膜貫通ドメインを含んでなる。さらなる側面において、膜貫通ドメインは、CD4またはCD8の膜貫通ドメイン(例えば、引用することにより本明細書の一部とされるNCBI参照配列:NP_001139345.1に記載されるようなCD8α鎖)を含んでなる。なおさらなる側面において、膜貫通ドメインは、CD4の膜貫通ドメインを含んでなる。
【0046】
細胞内エフェクタードメインまたは「シグナル伝達ドメイン」は、標的結合ドメインの標的への結合の後に、細胞内シグナル伝達を担う。細胞内エフェクタードメインは、CARが発現される免疫細胞の通常のエフェクター機能のうちの少なくとも1つの活性化を担う。例えば、T細胞のエフェクター機能は、細胞溶解活性、またはサイトカインの分泌を含むヘルパー活性であり得る。CAR足場において使用するためのエフェクタードメインの好ましい例は、抗原結合後にシグナル伝達を開始させるとともに働く天然T細胞受容体および補助受容体の細胞質配列、ならびにこれらの配列の任意の誘導体または変異体および同じ機能的能力を有する任意の合成配列であり得る。
【0047】
エフェクタードメインは、抗原依存的一次活性化を開始させるものと、二次シグナルまたは補助刺激シグナルを提供するために抗原非依存性様式で働くものの、2つのクラスに分けることができる。一次活性化エフェクタードメインは、immunoreceptor tyrosine-based activation motifs(ITAM)として知られるシグナル伝達モチーフを含んでなる。ITAMは、様々な受容体の細胞質内テールに共通に見られ、syk/zap70クラスチロシンキナーゼの結合部位として働く十分に定義されたシグナル伝達モチーフである。本発明において使用されるITAMの例は、限定されない例として、CD3ζ、FcRγ、FcRβ、FcRε、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD5、CD22、CD79a、CD79bおよびCD66dに由来するものを含み得る。一側面において、細胞内エフェクタードメインは、CD3ζシグナル伝達ドメイン(CD247としても知られる)を含んでなる。天然TCRはCD3ζシグナル伝達分子を含有するので、このエフェクタードメインの使用は、天然に存在するTCR構築物に最も近い。
【0048】
本発明の一側面において、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζエフェクタードメインである。エフェクタードメインはまた、二次シグナルまたは補助刺激シグナルも提供し得る。T細胞は、例えば、増殖の活性化および分化などを増強することによってT細胞応答を増強するために、抗原提示細胞上の同族補助刺激リガンドと結合する補助刺激分子をさらに含んでなる。よって、一側面において、細胞内エフェクタードメインは、補助刺激ドメインをさらに含んでなる。さらなる側面において、補助刺激ドメインは、CD28、CD27、4-1BB(CD137)、OX40(CD134)、ICOS(CD278)、CD30、CD40、PD-1(CD279)、CD2、CD7、NKG2C(CD94)、B7-H3(CD276)またはそれらの任意の組合せから選択される補助刺激分子の細胞内ドメインを含んでなる。なおさらなる側面において、補助刺激ドメインは、CD28、CD27、4-1BB、OX40、ICOSまたはそれらの任意の組合せから選択される補助刺激分子の細胞内ドメインを含んでなる。
【0049】
例示的抗BCMA抗原結合タンパク質およびそれを作製する方法は、引用することによりその全内容が本明細書の一部とされる国際公開第WO2012/163805号に開示されている。さらなる例示的抗BCMA抗原結合タンパク質としては、それぞれ引用することによりその全内容が本明細書の一部とされるWO2016/014789、WO2016/090320、WO2016/090327、WO2016/020332、WO2016/079177、WO2014/122143、WO2014/122144、WO2017/021450、WO2016/014565、WO2014/068079、WO2015/166649、WO2015/158671、WO2015/052536、WO2014/140248、WO2013/072415、WO2013/072406、WO2014/089335、US2017/165373、WO2013/154760、およびWO2017/051068に記載されているものが含まれる。
【0050】
一実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、抗体依存性細胞媒介細胞傷害性(ADCC)エフェクター機能が増強されている。用語「エフェクター機能」は、本明細書で使用する場合、抗体依存性細胞媒介細胞傷害性(ADCC)、補体依存性細胞傷害性(CDC)媒介応答、Fc媒介貪食作用およびFcRn受容体を介した抗体リサイクルのうち1以上を指すことを意味する。IgG抗体において、ADCCおよびADCPを含むエフェクター機能は、重鎖定常領域と免疫細胞の表面に存在するFcγ受容体のファミリーとの間の相互作用により媒介される。ヒトでは、これらはFcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)およびFcγRIII(CD16)が含まれる。抗原に結合した抗原結合タンパク質とFc/Fcγ複合体の形成との間の相互作用は、細胞傷害性、免疫細胞活性化、貪食作用および炎症性サイトカインの放出を誘導する。
【0051】
別の実施形態において、本明細書に記載される抗BCMA抗原結合タンパク質は、BAFFおよび/またはAPRILの、BCMA受容体への結合を阻害する。別の実施形態において、本明細書に記載される抗BCMA抗原結合タンパク質は、FcγRIIIAに結合することができるか、またはFcγRIIIAにより媒介されるエフェクター機能の能力がある。
【0052】
一実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、配列番号1に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる重鎖可変領域CDR1(「CDRH1」)を含んでなる抗体である。一実施形態において、重鎖可変領域CDR1(「CDRH1」)は、配列番号1に示されるアミノ酸配列に1個のアミノ酸変異を有するアミノ酸配列(変異体)を含んでなる。
【0053】
一実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる重鎖可変領域CDR2(「CDRH2」)を含んでなる抗体である。一実施形態において、重鎖可変領域CDR2(「CDRH2」)は、配列番号2に示されるアミノ酸配列に1個のアミノ酸変異を有するアミノ酸配列(変異体)を含んでなる。
【0054】
一実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、配列番号3に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる重鎖可変領域CDR3(「CDRH3」)を含んでなる抗体である。一実施形態において、重鎖可変領域CDR3(「CDRH3」)は、配列番号3に示されるアミノ酸配列に1個のアミノ酸変異を有するアミノ酸配列(変異体)を含んでなる。
【0055】
一実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、配列番号4に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる軽鎖可変領域CDR1(「CDRL1」)を含んでなる抗体である。一実施形態において、軽鎖可変領域CDL1(「CDR1」)は、配列番号4に示されるアミノ酸配列に1個のアミノ酸変異を有するアミノ酸配列(変異体)を含んでなる。
【0056】
一実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、配列番号5に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる軽鎖可変領域CDR2(「CDRL2」)を含んでなる抗体である。一実施形態において、軽鎖可変領域CDL2(「CDR2」)は、配列番号5に示されるアミノ酸配列に1個のアミノ酸変異を有するアミノ酸配列(変異体)を含んでなる。
【0057】
一実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、配列番号6に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる軽鎖可変領域CDR3(「CDRL3」)を含んでなる抗体である。一実施形態において、軽鎖可変領域CDL3(「CDR3」)は、配列番号6に示されるアミノ酸配列に1個のアミノ酸変異を有するアミノ酸配列(変異体)を含んでなる。
【0058】
一実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、配列番号1に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDRH1;配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDRH2;配列番号3に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDRH3;配列番号4に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDRL1;配列番号5に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDRL2;および/または配列番号6に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDRL3を含んでなる抗体である。
【0059】
一実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、配列番号7に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる重鎖可変領域(「VH」)を含んでなる抗体である。
【0060】
一実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、配列番号8に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる軽鎖可変領域(「VL」)を含んでなる抗体である。
【0061】
一実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、配列番号7に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるVH;および配列番号8に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるVLを含んでなる抗体である。
【0062】
一実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、配列番号9に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる重鎖領域(「HC」)を含んでなる抗体である。
【0063】
一実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、配列番号10に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる軽鎖領域(「LC」)を含んでなる抗体である。
【0064】
一実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、配列番号9に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるHC;および配列番号10に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるLCを含んでなる抗体である。
【0065】
一実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、限定されるものではないが、化学療法薬、薬物、増殖阻害薬、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌、真菌、植物、もしくは動物起源の酵素活性のある毒素、またはそのフラグメント)、または放射性同位体(すなわち、放射性複合体)などの1以上の細胞傷害性薬剤と結合した抗体を含め、本明細書に記載されるように本発明による抗原結合タンパク質を含んでなる免疫複合体である。さらなる実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、アウリスタチン、例えば、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)またはモノメチルアウリスタチンF(MMAF)などの毒素と結合される。
【0066】
一実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、下記の一般構造:
ABP-((リンカー)n-Ctx)m
を有する免疫複合体であり、ここで、
ABPは、抗原結合タンパク質であり、
リンカーは、不在であるか、または任意の切断可能または非切断可能リンカーであり、
Ctxは、本明細書に記載される任意の細胞傷害性薬剤であり、
nは、0、1、2、または3であり、かつ
mは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10である。
【0067】
例示的リンカーとしては、6-マレイミドカプロイル(MC)、マレイミドプロパノイル(MP)、バリン-シトルリン(val-cit)、アラニン-フェニルアラニン(ala-phe)、p-アミノベンジルオキシカルボニル(PAB)、N-スクシンイミジル4-(2-ピリジルチオ)ペンタノアート(SPP)、N-スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1カルボキシラート(SMCC)、およびN-スクシンイミジル(4-ヨード-アセチル)アミノベンゾアート(SIAB)が挙げられる。
【0068】
一実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、MMAEまたはMMAFに連結されたモノクローナル抗体を含有する免疫複合体である。別の実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、下記の構造で示されるようなMCリンカーによってMMAEまたはMMAFに連結されたモノクローナル抗体を含有する免疫複合体である。
【0069】
【0070】
抗BCMA抗原結合タンパク質の適当な治療上有効な用量は、当業者により容易に決定される。本明細書で使用する場合、用語「有効な用量」は、例えば、研究者または臨床家に求められる組織、系、動物またはヒトの生物学的または医学的応答を惹起する薬物または医薬の用量を意味する。さらに、用語「治療上有効な用量」は、そのような用量を受容していない対応する対象に比べて疾患、障害、もしくは副作用の治療、治癒、予防、もしくは改善の向上、または疾患もしくは障害の進行測度の低減をもたらすいずれの用量も意味する。この用語はまた、その範囲内に、通常の生理学的機能を増進するために有効な用量も含む。
【0071】
本明細書に記載される抗BCMA抗原結合タンパク質の好適な用量は、患者に関して、患者の体重に応じて計算されてよく、例えば、好適な用量は、約0.1~約20mg/kg、例えば、約1~約20mg/kg、例えば、約10~約20mg/kgまたは例えば、約1~約15mg/kg、例えば、約10~約15mg/kgの範囲であり得る。
【0072】
一実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質の治療上有効な用量は、約0.03mg/kg~約4.6mg/kgの範囲である。さらに別の実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質の治療上有効な用量は、0.03mg/kg、0.06mg/kg、0.12mg/kg、0.24mg/kg、0.48mg/kg、0.96mg/kg、1.92mg/kg、3.4mg/kg、または4.6mg/kgである。さらに別の実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質の治療上有効な用量は、1.9mg/kg、2.5mg/kgまたは3.4mg/kgである。
【0073】
免疫調節イミン薬(Immunomodulatory Imine Drug)(IMiD)
用語「免疫調節イミン薬(IMiD)」は、本明細書で使用する場合、イミド基を含有する薬物種を指す。理論に縛られるものではないが、IMiDは、免疫調節特性、抗血管新生特性、および抗悪性腫瘍特性のために癌の治療に有用であると考えられる。IMiD種の薬物としては、限定されるものではないが、サリドマイドおよびその類似体が含まれる。用語「類似体」は、本明細書で使用する場合、互いの構造に類似する構造を有するが特定の成分に関して異なる化合物であり、例えば、類似体は、1以上の原子、官能基、または部分構造が異なり、それらが他の原子、基、または部分構造に置き換わっている。このような構造の違いは、当業者ならば他の化合物から少なくとも理論上は想像することができる。
【0074】
例えば、サリドマイド、レナリドミド、ポマリドミド、アプレミラスト、およびその類似体を含む種々のIMiDが当業者に知られている。
【0075】
一実施形態において、IMiDとしては、サリドマイドまたはその類似体が含まれる。サリドマイドは、商標サリドマイド(Thalidomid)(登録商標)(Celgene Corp)として登録され、下記の化学構造を有する。
【0076】
【0077】
サリドマイドおよびその類似体、ならびにその製造方法は、例えば、米国特許第6,045,501号;同第7,230,012号;同第7,435,745号に記載されているものが当業者に知られ、これらの開示は引用することによりその全内容が本明細書の一部とされる。
【0078】
別の実施形態において、IMiDとしては、ポマリドミドまたはその類似体が含まれる。ポマリドミドは、商標ポマリスト(登録商標)(Celgene Corp)として登録され、下記の化学構造を有する。
【0079】
【0080】
ポマリドミドおよびその類似体、ならびにその製造方法は、例えば、米国特許第5,635,517号;同第6,316,471号;同第6,476,052号;同第8,158,653号;同第8,198,262号;同第8,673,939号;同第8,735,428号;および同第8,828,427号に記載されているものが当業者に知られ、これらの開示は引用することによりその全内容が本明細書の一部とされる。
【0081】
別の実施形態において、IMiDとしては、レナリドミドまたはその類似体が含まれる。レナリドミドは、商標レブリミド(登録商標)(Celgene Corp)として登録され、化学構造:
【化4】
を有する。レナリドミドおよびその類似体、ならびにその製造方法は、例えば、米国特許第5,635,517号;同第6,555,554号;同第7,119,106号;同第7,465,800号;同第7,855,217号;同第8,288,415号;および同第8,530,498号に記載されているものが当業者に知られ、これらの開示は引用することによりその全内容が本明細書の一部とされる。
【0082】
別の実施形態において、IMiDとしては、アプレミラストまたはその類似体が含まれる。アプレミラストは、商標オテズラ(登録商標)(Celgene Corp)として登録され下記の化学構造を有する。
【0083】
【0084】
アプレミラストおよびその類似体、ならびにその製造方法は、米国特許第6,020,358号;同第7,427,638号;同第7,893,101号に記載されているものが当業者に知られ、これらの開示は引用することによりその全内容が本明細書の一部とされる。
【0085】
IMiDの適当な治療上有効な用量は、当業者により容易に決定される。本明細書に記載されるIMiDの好適な用量は、患者に関して、患者の体重に応じて計算されてよい。治療上有効な用量は一般に、約1~2000mg、5~2000mg、10~2000mg、好適には、約30~1500mgである。例えば、50~500mg、50~300mg、50~100mg、100~200mg、5~100mg、5~50mgを含む他の範囲も使用可能である。治療上有効な用量は、急性または慢性のヒト処置に使用される場合、0.01~250mg/体重kg、好適には、0.1~5mg/体重kg、好適には、0.1~10mg/体重kg、好適には、2~100mg/体重kg、または好適には、5~60mg/体重kgの範囲であり、それは例えば、投与経路および対象の状態に応じて1~4回の一日用量で投与され得る。
【0086】
一実施形態において、IMiDはサリドマイドであり、治療上有効な用量は約25mg~約300mgの範囲である。別の実施形態において、IMiDはサリドマイドであり、治療上有効な用量は50mg、100mg、150mg、または200mgである。さらに別の実施形態において、IMiDはサリドマイドであり、治療上有効な用量は200mgである。
【0087】
一実施形態において、IMiDはポマリドミドであり、治療上有効な用量は約0.5mg~約5mgの範囲である。別の実施形態において、IMiDはポマリドミドであり、治療上有効な用量は1mg、2mg、3mg、または4mgから選択される。さらに別の実施形態において、IMiDはポマリドミドであり、治療上有効な用量は4mgである。
【0088】
一実施形態において、IMiDはレナリドミドであり、治療上有効な用量は約1mg~約50mgの範囲である。別の実施形態において、IMiDはレナリドミドであり、治療上有効な用量は2.5mg、5mg、10mg、15mg、20mg、または25mgである。さらに別の実施形態において、IMiDはレナリドミドであり、治療上有効な用量は10mgまたは25mgである。
【0089】
一実施形態において、IMiDはアプレミラストであり、治療上有効な用量は約1mg~約100mgの範囲である。別の実施形態において、IMiDはアプレミラストであり、治療上有効な用量は10mg、20mg、または30mgである。
【0090】
抗炎症化合物
デキサメタゾンなどの抗炎症化合物は、身体の様々な部分の炎症または腫脹を軽減する化合物である。抗炎症化合物は、脊椎および脳の腫瘍に関連する腫脹(浮腫)を低減するため、および眼の炎症を治療するため、ならびに白血病、リンパ腫、および多発性骨髄腫などの様々な癌を治療するために使用されてきた。様々な抗炎症化合物、および製造方法が当業者に知られている。
【0091】
抗炎症化合物としては、ステロイド系化合物と非ステロイド系化合物(NSAID)の両方を含み得る。
【0092】
一実施形態において、抗炎症化合物はステロイドである。ステロイドの例としては、限定されるものではないが、コルチゾン、コルチゾール、コルチコステロン、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾール、プレドニゾン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、モメタゾン、フロ酸モメタゾン、ブデソニド、トリアムシノロンアセトニド、およびフルチカゾンが挙げられる。一実施形態において、抗炎症化合物は、デキサメタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾン、およびメチルプレドニゾロンから選択される副腎皮質ステロイドである。
【0093】
別の実施形態において、抗炎症化合物はデキサメタゾンである。デキサメタゾンは、下記の化学構造を有し、商標デカドロン(登録商標)(Merck & Co.,Inc.)として登録されている。
【0094】
【0095】
別の実施形態において、抗炎症化合物はNSAIDである。本発明で使用可能なNSAIDの例としては、限定されるものではないが、アスピリン、アセトミノフェン(acetaminophen)、イブプロフェン、エスクレチン、フェニドン、ケルセチン、ケトプロフェン、ノルジヒドログアイアレチン酸(NDGA)、スリンダック、スリンダックスルホン、硫化スリンダック、インドメタシン、NS-398(シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤)、シクロオキシゲナーゼ-1阻害剤、メチルヘプチルイミダゾール、フレグレラートナトリウム、SKF525AHCL、トロンボキサン阻害剤、トラドール、ecasa、サルサレート、ジフルニサル、メフェナム酸、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、フロクタフェニン、メクロフェナム酸塩、フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、ジクロフェナク、エトドラク、フェノプロフェン、フルフェナム酸、フルルビプロフェン、ピルプロフェン、トルメチン、アパゾン、フェンブフェン、ナブメトン、オキサプロジン、ピロキシカム、サリチル酸塩、およびテノキシカムが挙げられる。好ましいNSAIDは、スリンダック、スリンダックスルホン、硫化スリンダック、インドメタシン、NS-398、メチルヘプチルイミダゾール、フレグレラートナトリウム、およびSKF525AHCLである。特に好ましいNSAIDは、インドメタシンおよびスリンダックである。
【0096】
抗炎症化合物の適当な治療上有効な用量は、当業者により容易に決定することができる。本明細書に記載される抗炎症化合物の好適な用量は、患者に関して患者の体重に従って計算されてよい。治療上有効な用量は一般に、約1~2000mg、5~2000mg、10~2000mg、好適には、約30~1500mgである。例えば、50~500mg、50~300mg、50~100mg、100~200mg、5~100mg、5~50mgを含む他の範囲も使用可能である。一日用量は、急性または慢性ヒト知慮に使用する場合、0.01~250mg/体重kg、好適には、0.1~5mg/体重kg、好適には、0.1~10mg/体重kg、好適には、2~100mg/体重kg、または好適には、5~60mg/体重kgであり、これは例えば、投与経路および対象の状態に応じて1~4回の一日用量で投与され得る。
【0097】
一実施形態において、抗炎症化合物はデキサメタゾンであり、治療上有効な用量は約5mg~約100mgである。別の実施形態において、抗炎症化合物はデキサメタゾンであり、治療上有効な用量は20mgまたは40mgである。
【0098】
治療方法
本明細書には、対象における癌を本明細書に記載される組合せで治療するための方法が記載される。本明細書で使用する場合、用語「癌」、および「腫瘍」は、単数形または複数形のいずれかで互換的に使用され、細胞を宿主生物に病的とする悪性化を受けた細胞を指す。原発性癌細胞は、十分に確立された技術、特に組織学的検査によって非癌細胞から容易に識別することができる。癌細胞の定義は、本明細書で使用する場合、原発性癌細胞だけでなく、癌細胞原型に由来するいずれの細胞も含む。これには転移した癌細胞、ならびに癌細胞に由来するin vitro培養物および細胞株が含まれる。固形腫瘍として通常顕在化する癌の一種に言及する場合、「臨床的に検出可能な」腫瘍は、例えば、身体検査でのコンピューター断層撮影(CT)スキャン、磁気共鳴画像法(MRI)、X線、超音波もしくは触診などの手法によって腫瘍塊に基づいて検出可能なもの、および/または患者から取得可能なサンプルにおける1以上の癌特異的抗原の発現のために検出可能なものである。腫瘍は、「液性腫瘍」と呼ぶことができる、造血系(または血液系または血液学的または血液関連)癌、例えば、血液細胞または免疫細胞に由来する癌であり得る。血液系腫瘍に基づく病態の具体例としては、慢性骨髄球性白血病、急性骨髄球性白血病、慢性リンパ球性白血病および急性リンパ球性白血病などの白血病;多発性骨髄腫、MGUSおよびワルデンストロームマクログロブリン血症などの形質細胞悪性腫瘍;非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫などのリンパ腫などが挙げられる。
【0099】
癌は、異常な数の芽球細胞もしくは望ましくない細胞増殖が存在するか、またはリンパ系および骨髄系両方の悪性腫瘍を含む血液学的癌と診断されるもののいずれであってもよい。骨髄系悪性腫瘍としては、限定されるものではないが、急性骨髄性(myeloid)(または骨髄球性または骨髄性(myelogenous)または骨髄芽球性)白血病(未分化型または分化型)、急性前骨髄性(promyeloid)(または前骨髄球性または前骨髄性(promyelogenous)または前骨髄芽球性)白血病、急性骨髄単球性(または骨髄単芽球性)白血病、急性単球性(または単芽球性)白血病、赤白血病および巨核球性(または巨核芽球性)白血病が挙げられる。これらの白血病は、急性骨髄性(myeloid)(または骨髄球性または骨髄性(myelogenous))白血病(AML)と総称され得る。骨髄性悪性腫瘍としてはまた、骨髄増殖性疾患(MPD)も含み、これには限定されるものではないが、慢性骨髄性(myelogenous)(または骨髄性(myeloid))白血病(CML)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、本態性血小板血症(または血小板増多症)、および真性多血症(PCV)が含まれる。骨髄系悪性腫瘍はまた、骨髄異形成(または骨髄異形成症候群またはMDS)(これは不応性貧血(RA)、芽球増加を伴う不応性貧血(RAEB)、および移行期の芽球増加を伴う不応性貧血(RAEBT)と呼ばれることもある);ならびに特発性骨髄化生を伴うまたは伴わない骨髄線維症(MFS)も含む。
【0100】
造血系癌はまた、リンパ節、脾臓、骨髄、末梢血、および/または節外部位に影響を及ぼし得るリンパ系悪性腫瘍も含む。リンパ系癌としては、B細胞悪性腫瘍が含まれ、これには、限定されるものではないが、B細胞非ホジキンリンパ腫(B-NHL)が含まれる。B-NHLは、緩徐進行性(もしくは低悪性度)、中悪性度(もしくは急速進行性)または高悪性度(超急速進行性)であり得る。緩徐進行性B細胞リンパ腫としては、濾胞性リンパ腫(FL);小型リンパ球性リンパ腫(SLL);節性MZL、節外性MZL、脾MZLおよび有毛リンパ球を伴う脾MZLを含む辺縁帯リンパ腫(MZL);リンパ形質細胞性リンパ腫(LPL);および粘膜随伴リンパ系組織(MALTまたは節外辺縁帯)リンパ腫が含まれる。中悪性度B-NHLとしては、白血病細胞浸潤を伴うまたは伴わないマントル細胞リンパ腫(MCL)、びまん性大細胞型リンパ腫(DLBCL)、濾胞性大細胞(またはグレード3またはグレード3B)リンパ腫、および原発性縦隔リンパ腫(PML)が含まれる。高悪性度B-NHLとしては、バーキットリンパ腫(BL)、バーキット様リンパ腫、小型非切れ込み核細胞性リンパ腫(SNCCL)およびリンパ芽球性リンパ腫が含まれる。その他のB-NHLとしては、免疫芽球性リンパ腫(または免疫細胞腫)、原発性滲出液リンパ腫、HIV関連(またはAIDS関連)リンパ腫、および移植後リンパ増殖性障害(PTLD)またはリンパ腫が含まれる。B細胞悪性腫瘍としてはまた、限定されるものではないが、慢性リンパ球性白血病(CLL)、前リンパ球性白血病(PLL)、ワルデンストロームマクログロブリン血症(WM)、有毛細胞白血病(HCL)、大顆粒リンパ球(LGL)白血病、急性リンパ性(またはリンパ球性またはリンパ芽球性)白血病、およびキャッスルマン病が含まれる。NHLとしてはまたT細胞非ホジキンリンパ腫(T-NHL)を含み得るが、これには、限定されるものではないが、非特定型T細胞非ホジキンリンパ腫(NOS)、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、血管免疫芽球性リンパ系障害(AILD)、鼻性ナチュラルキラー(NK)細胞/T細胞リンパ腫、γ/δリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、菌状息肉腫、およびセザリー症候群が含まれる。
【0101】
造血系癌としてはまた、古典型ホジキンリンパ腫、結節性硬化型ホジキンリンパ腫、混合細胞型ホジキンリンパ腫、リンパ球優位型(LP)ホジキンリンパ腫、結節性LPホジキンリンパ腫、およびリンパ球減少型ホジキンリンパ腫を含むホジキンリンパ腫(またはホジキン病)が含まれる。造血系癌としてはまた、くすぶり型MM、意義不明の(または未知または不明の)単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS)、形質細胞腫(骨、髄外)、リンパ形質細胞性リンパ腫(LPL)、ワルデンストロームマクログロブリン血症、形質細胞白血病、および原発性アミロイド症(AL)を含む多発性骨髄腫(MM)などの形質細胞疾患または癌が含まれる。造血系癌としてはまた、多形核白血球(または好中球)、好塩基球、好酸球、樹状細胞、血小板、赤血球およびナチュラルキラー細胞を含むさらなる造血系細胞のその他の癌も含み得る。本明細書で「造血系細胞組織」と呼ばれる造血細胞を含む組織としては、骨髄;末梢血;胸腺;ならびに脾臓、リンパ節、粘膜関連リンパ系組織(例えば、消化管関連リンパ系組織)、扁桃腺、パイエル板および虫垂、およびその他の粘膜、例えば、気管支内層に関連するリンパ系組織などの末梢リンパ系組織が含まれる。
【0102】
用語「治療する」およびその派生語は、本明細書で使用する場合、治療的療法を含むことを意味する。特定の病態に関して、治療は、(1)その病態もしくはその病態の生物学的兆候のうち1以上を改善すること;(2)(a)その病態に至るもしくはその病態の原因となる生体カスケードの1以上の点、または(b)その病態の生物学的兆候のうち1以上に干渉すること;(3)その病態に関連する症状、影響もしくは副作用のうち1以上またはその病態もしくはその処置に関連する症状、影響もしくは副作用のうち1以上を緩和すること;(4)その病態もしくはその病態の生物学的兆候のうち1以上を遅延させること、および/あるいは(5)その病態の生物学的兆候のうち1以上を除去するもしくは検出不能のレベルにまで軽減することによって前記病態もしくは前記病態の生物学的兆候のうち1以上を、その兆候に関して寛解状態であると見なされる期間、その寛解期間にわたって付加的な処置なく治癒させることを意味する。当業者ならば、特定の疾患または病態に関して寛解であると見なされる期間を理解するであろう。
【0103】
予防的療法もまた企図される。当業者ならば、「予防」が絶対的な用語ではないことを認識するであろう。医学では、「予防」は、ある病態もしくはその生物学的兆候の見込みもしくは重篤度を実質的に低減するため、またはそのような病態もしくはその生物学的兆候の発症を遅延させるための薬物の予防的投与を指すと理解される。予防的療法は、例えば、対象が癌を発症するリスクが高いと見なされる場合、例えば、対象が癌の強い家族歴を有する場合または対象が発癌物質に曝露されていた場合に適当である。
【0104】
「対象」は、処置、例えば癌治療を必要とする患者など、治療を必要とするいずれの患者も含んで広く定義される。対象としては哺乳動物を含み得る。一実施形態において、対象はヒト患者である。癌治療を必要とする対象としては、新たに診断された、再発した、難治性の、進行性の疾患、寛解、およびその他を含む様々な病期の患者を含み得る。癌治療を必要とする対象としてはまた、幹細胞移植を受けた患者または移植不適格と見なされる患者も含み得る。
【0105】
対象は、本明細書に記載される組合せによる治療に関して選択するためにプレスクリーニングを受けてもよい。一実施形態では、対象由来のサンプルが、本明細書に記載される組合せによる治療の前にBCMAの発現に関して検査される。
【0106】
対象は、本発明の組合せで治療される前に少なくとも1つの事前癌治療を受けていてもよい。一実施形態において、対象は、本発明の組合せで治療される前に少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、または少なくとも7回の事前癌治療で処置されている。
【0107】
別の実施形態において、対象は、新たに診断された癌を有し、本発明の組合せで治療される前に事前治療を受けていない。
【0108】
本発明の組合せの個々の治療薬、およびそのような治療薬を含んでなる医薬組成物は、一緒に投与されてもよいし、または個別に投与されてもよい。個別に投与される場合には、これは同時に行ってもよいし、またはいずれの順序で(同じ投与経路により、または異なる投与経路により)逐次に行ってもよい。このような逐次投与は時間的に接近していても、または時間的に離れていてもよい。本発明の治療薬またはその薬学上許容可能な塩およびさらなる治療上活性な薬剤の用量および相対的投与時機は、所望の複合治療効果を達成するために選択される。
【0109】
本発明の治療薬は適当ないずれの投与経路によって投与されてもよい。いくつかの治療薬では、好適な経路としては、経口、直腸、鼻腔、局所(口内および舌下を含む)、膣、および非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、くも膜下腔内、および硬膜外を含む)を含む。好ましい経路は、例えば、その組合せのレシピエントの状態および治療される癌によって異なり得ることが認識されるであろう。また、投与される薬剤のそれぞれは同じ経路で投与されても異なる経路で投与されてもよいこと、およびそれらの治療薬は一緒に処方されても、別個の医薬組成物中に処方されてもよいことも認識されるであろう。
【0110】
一実施形態において、本発明の組合せの1以上の治療薬は静脈内に投与される。別の実施形態において、本発明の組合せの1以上の治療薬は腫瘍内に投与される。別の実施形態において、本発明の組合せの1以上の治療薬は経口投与される。別の実施形態において、本発明の組合せの1以上の治療薬は全身投与、例えば、静脈内投与され、本発明の組合せの1以上の他の治療薬は腫瘍内に投与される。別の実施形態において、本発明の組合せの総ての治療薬は全身投与、例えば、静脈内投与される。別の実施形態において、本発明の組合せの総ての治療薬は腫瘍内に投与される。いずれかの実施形態、例えば、本段落では、本発明の治療薬は、1以上の医薬組成物として投与される。
【0111】
一実施形態において、本発明は、本明細書に記載される治療上有効な用量の組合せを投与することにより、それを必要とする対象において癌を治療する方法を提供する。
【0112】
一実施形態において、本発明は、抗BCMA抗原結合タンパク質とIMiDを含んでなる治療上有効な用量の組合せを投与することにより、それを必要とする対象において癌を治療する方法を提供する。
【0113】
一実施形態において、本発明は、抗BCMA抗原結合タンパク質、IMiD、および抗炎症化合物を含んでなる治療上有効な用量の組合せを投与することにより、それを必要とする対象において癌を治療する方法を提供する。
【0114】
一実施形態において、本発明は、抗BCMA抗体とIMiDを含んでなり、前記抗BCMA抗体が、配列番号1に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDRH1;配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDRH2;配列番号3に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDRH3;配列番号4に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDRL1;配列番号5に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDRL2;および/または配列番号6に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDRL3を含んでなる、治療上有効な用量の組合せを投与することにより、それを必要とする対象において癌を治療する方法を提供する。
【0115】
一実施形態において、本発明は、抗BCMA抗体とIMiDを含んでなり、前記抗BCMA抗体が配列番号7に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるVH;および/または配列番号8に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるVLを含んでなる、治療上有効な用量の組合せを投与することにより、それを必要とする対象において癌を治療する方法を提供する。
【0116】
一実施形態において、本発明は、抗BCMA抗体とIMiDを含んでなり、前記抗BCMA抗体が配列番号9に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるHC;および/または配列番号10に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるLCを含んでなる、治療上有効な用量の組合せを投与することにより、それを必要とする対象において癌を治療する方法を提供する。
【0117】
一実施形態において、本発明は、抗BCMA抗体、IMiD、および抗炎症化合物を含んでなり、前記抗BCMA抗体が配列番号1に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDRH1;配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDRH2;配列番号3に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDRH3;配列番号4に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDRL1;配列番号5に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDRL2;および/または配列番号6に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDRL3を含んでなる、治療上有効な用量の組合せを投与することにより、それを必要とする対象において癌を治療する方法を提供する。
【0118】
一実施形態において、本発明は、抗BCMA抗体、IMiD、および抗炎症化合物を含んでなり、前記抗BCMA抗体が抗BCMA抗体とIMiDを含んでなり、前記抗BCMA抗体が配列番号7に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるVH;および/または配列番号8に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるVLを含んでなる、治療上有効な用量の組合せを投与することにより、それを必要とする対象において癌を治療する方法を提供する。
【0119】
一実施形態において、本発明は、抗BCMA抗体、IMiD、および抗炎症化合物を含んでなり、前記抗BCMA抗体が配列番号9に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるHC;および/または配列番号10に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるLCを含んでなる、治療上有効な用量の組合せを投与することにより、それを必要とする対象において癌を治療する方法を提供する。
【0120】
一実施形態において、本発明は、抗BCMA抗原結合タンパク質とサリドマイドを含んでなる治療上有効な用量の組合せを投与することにより、それを必要とする対象において癌を治療する方法を提供する。
【0121】
一実施形態において、本発明は、抗BCMA抗原結合タンパク質、サリドマイド、および抗炎症化合物を含んでなる治療上有効な用量の組合せを投与することにより、それを必要とする対象において癌を治療する方法を提供する。
【0122】
一実施形態において、本発明は、抗BCMA抗原結合タンパク質とポマリドミドを含んでなる治療上有効な用量の組合せを投与することにより、それを必要とする対象において癌を治療する方法を提供する。
【0123】
一実施形態において、本発明は、抗BCMA抗原結合タンパク質、ポマリドミド、および抗炎症化合物を含んでなる治療上有効な用量の組合せを投与することにより、それを必要とする対象において癌を治療する方法を提供する。
【0124】
一実施形態において、本発明は、抗BCMA抗原結合タンパク質とレナリドミドを含んでなる治療上有効な用量の組合せを投与することにより、それを必要とする対象において癌を治療する方法を提供する。
【0125】
一実施形態において、本発明は、抗BCMA抗原結合タンパク質、レナリドミド、および抗炎症化合物を含んでなる治療上有効な用量の組合せを投与することにより、それを必要とする対象において癌を治療する方法を提供する。
【0126】
一実施形態において、本発明は、抗BCMA抗原結合タンパク質とアプレミラストを含んでなる治療上有効な用量の組合せを投与することにより、それを必要とする対象において癌を治療する方法を提供する。
【0127】
一実施形態において、本発明は、抗BCMA抗原結合タンパク質、アプレミラスト、および抗炎症化合物を含んでなる治療上有効な用量の組合せを投与することにより、それを必要とする対象において癌を治療する方法を提供する。
【0128】
一実施形態において、本発明は、抗BCMA抗体、サリドマイド、およびデキサメタゾンを含んでなる治療上有効な用量の組合せを投与することにより、それを必要とする対象において多発性骨髄腫を治療する方法を提供する。別の実施形態において、本発明は、1.9mg/kg、2.5mg.kg、または3.4mg/kgの抗BCMA抗体、200mgのサリドマイド、および20mgまたは40mgのデキサメタゾンを投与することにより、それを必要とする対象において多発性骨髄腫を治療する方法を提供する。
【0129】
一実施形態において、本発明は、抗BCMA抗体、ポマリドミド、およびデキサメタゾンを含んでなる治療上有効な用量の組合せを投与することにより、それを必要とする対象において多発性骨髄腫を治療する方法を提供する。別の実施形態において、本発明は、1.9mg/kg、2.5mg.kg、または3.4mg/kgの抗BCMA抗体、4mgのポマリドミド、および20mgまたは40mgのデキサメタゾンを投与することにより、それを必要とする対象において多発性骨髄腫を治療する方法を提供する。
【0130】
一実施形態において、本発明は、抗BCMA抗体、レナリドミド、およびデキサメタゾンを含んでなる治療上有効な用量の組合せを投与することにより、それを必要とする対象において多発性骨髄腫を治療する方法を提供する。別の実施形態において、本発明は、1.9mg/kg、2.5mg.kg、または3.4mg/kgの抗BCMA抗体、10mgまたは25mgのレナリドミド、および20mgまたは40mgのデキサメタゾンを投与することにより、それを必要とする対象において多発性骨髄腫を治療する方法を提供する。
【0131】
一実施形態において、本発明は、抗BCMA抗体、アプレミラスト、およびデキサメタゾンを含んでなる治療上有効な用量の組合せを投与することにより、それを必要とする対象において多発性骨髄腫を治療する方法を提供する。
【0132】
一実施形態において、本発明は、療法において使用するための本明細書に記載されるような組合せを提供する。
【0133】
一実施形態において、本発明は、癌の治療において使用するための本明細書に記載されるような組合せを提供する。
【0134】
一実施形態において、本発明は、癌の治療において使用するための、抗BCMA抗原結合タンパク質とIMiDを含んでなる、本明細書に記載されるような組合せを提供する。
【0135】
一実施形態において、本発明は、癌の治療において使用するための、抗BCMA抗原結合タンパク質、IMiD、および抗炎症化合物を含んでなる、本明細書に記載されるような組合せを提供する。
【0136】
一実施形態において、本発明は、癌の治療において使用するための、抗BCMA抗体とIMiDを含んでなり、前記抗BCMA抗体が配列番号1に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDRH1;配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDRH2;配列番号3に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDRH3;配列番号4に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDRL1;配列番号5に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDRL2;および/または配列番号6に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDRL3を含んでなる、本明細書に記載されるような組合せを提供する。
【0137】
一実施形態において、本発明は、癌の治療において使用するための、抗BCMA抗体とIMiDを含んでなり、前記抗BCMA抗体が配列番号7に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるVH;および/または配列番号8に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるVLを含んでなる、本明細書に記載されるような組合せを提供する。
【0138】
一実施形態において、本発明は、癌の治療において使用するための、抗BCMA抗体とIMiDを含んでなり、前記抗BCMA抗体が配列番号9に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるHC;および/または配列番号10に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるLCを含んでなる、本明細書に記載されるような組合せを提供する。
【0139】
一実施形態において、本発明は、癌の治療において使用するための、抗BCMA抗体、IMiD、および抗炎症化合物を含んでなり、前記抗BCMA抗体が配列番号1に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDRH1;配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDRH2;配列番号3に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDRH3;配列番号4に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDRL1;配列番号5に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDRL2;および/または配列番号6に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDRL3を含んでなる、本明細書に記載されるような組合せを提供する。
【0140】
一実施形態において、本発明は、癌の治療において使用するための、抗BCMA抗体、IMiD、および抗炎症化合物を含んでなり、前記抗BCMA抗体が配列番号7に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるVH;および/または配列番号8に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるVLを含んでなる、本明細書に記載されるような組合せを提供する。
【0141】
一実施形態において、本発明は、癌の治療において使用するための、抗BCMA抗体、IMiD、および抗炎症化合物を含んでなり、前記抗BCMA抗体が配列番号9に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるHC;および/または配列番号10に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるLCを含んでなる、本明細書に記載されるような組合せを提供する。
【0142】
一実施形態において、本発明は、癌の治療において使用するための、抗BCMA抗原結合タンパク質とサリドマイドを含んでなる、本明細書に記載されるような組合せを提供する。
【0143】
一実施形態において、本発明は、癌の治療において使用するための、抗BCMA抗原結合タンパク質、サリドマイド、および抗炎症化合物を含んでなる、本明細書に記載されるような組合せを提供する。
【0144】
一実施形態において、本発明は、癌の治療において使用するための、抗BCMA抗原結合タンパク質とポマリドミドを含んでなる、本明細書に記載されるような組合せを提供する。
【0145】
一実施形態において、本発明は、癌の治療において使用するための、抗BCMA抗原結合タンパク質、ポマリドミド、および抗炎症化合物を含んでなる、本明細書に記載されるような組合せを提供する。
【0146】
一実施形態において、本発明は、癌の治療において使用するための、抗BCMA抗原結合タンパク質とレナリドミドを含んでなる、本明細書に記載されるような組合せを提供する。
【0147】
一実施形態において、本発明は、癌の治療において使用するための、抗BCMA抗原結合タンパク質、レナリドミド、および抗炎症化合物を含んでなる、本明細書に記載されるような組合せを提供する。
【0148】
一実施形態において、本発明は、癌の治療において使用するための、抗BCMA抗原結合タンパク質とプレミラストを含んでなる、本明細書に記載されるような組合せを提供する。
【0149】
一実施形態において、本発明は、癌の治療において使用するための、抗BCMA抗原結合タンパク質、アプレミラスト、および抗炎症化合物を含んでなる、本明細書に記載されるような組合せを提供する。
【0150】
一実施形態において、本発明は、多発性骨髄腫の治療において使用するための、抗BCMA抗体、サリドマイド、およびデキサメタゾンを含んでなる、本明細書に記載されるような組合せを提供する。別の実施形態において、本発明は、多発性骨髄腫の治療において使用するための、1.9mg/kg、2.5mg/kg、または3.4mg/kgの抗BCMA抗体;200mgのサリドマイド;および20mgまたは40mgのデキサメタゾンを含んでなる、本明細書に記載されるような組合せを提供する。
【0151】
一実施形態において、本発明は、多発性骨髄腫の治療において使用するための、抗BCMA抗体、ポマリドミド、およびデキサメタゾンを含んでなる、本明細書に記載されるような組合せを提供する。別の実施形態において、本発明は、多発性骨髄腫の治療において使用するための、1.9mg/kg、2.5mg/kg、または3.4mg.kgの抗BCMA抗体;4mgのポマリドミド;および20mgまたは40mgのデキサメタゾンを含んでなる、本明細書に記載されるような組合せを提供する。
【0152】
一実施形態において、本発明は、多発性骨髄腫の治療において使用するための、抗BCMA抗体、レナリドミド、およびデキサメタゾンを含んでなる、本明細書に記載されるような組合せを提供する。別の実施形態において、本発明は、多発性骨髄腫の治療において使用するための、1.9mg/kg、2.5mg/kg、または3.4mg.kgの抗BCMA抗体;10mgまたは25mgのレナリドミド;および20mgまたは40mgのデキサメタゾンを含んでなる、本明細書に記載されるような組合せを提供する。
【0153】
一実施形態において、本発明は、多発性骨髄腫の治療において使用するための、抗BCMA抗体、アプレミラスト、およびデキサメタゾンを含んでなる、本明細書に記載されるような組合せを提供する。
【0154】
一実施形態において、癌の治療において使用するための医薬の製造における組合せの使用が提供される。別の実施形態において、癌の治療において使用するための医薬の製造における、抗BCMA抗原結合タンパク質およびIMiDを含んでなる組合せの使用が提供される。さらに別の実施形態において、癌の治療において使用するための医薬の製造における、抗BCMA抗原結合タンパク質、IMiD、および抗炎症化合物を含んでなる組合せの使用が提供される。
【0155】
治療計画
抗BCMA抗原結合タンパク質、IMiD、および抗炎症化合物の適当な治療計画は当業者により容易に決定される。
【0156】
一つの例示的治療計画では、1用量の抗BCMA抗原結合タンパク質が3週間ごとに(21日周期)最大16周期投与される。別の例示的治療計画では、1用量の抗BCMA抗原結合タンパク質が週1回、連続3週間の投与、その後の1週間の休薬(28日周期)が最大16周期行われる。さらに別の例示的治療計画では、1用量の抗BCMA抗原結合タンパク質が28日周期の1日目に投与される。
【0157】
例示的な一実施形態において、IMiDはサリドマイドであり、治療計画は、28日間毎日単回用量の、少なくとも1回の28日周期の投与を含む。別の実施形態において、IMiDはサリドマイドであり、治療計画は、28日周期の1~28日目の200mgの投与を含む。
【0158】
例示的な一実施形態において、IMiDはレナリドミドであり、治療計画は、28日周期の1~21日目の各日の単回用量の投与を含む。別の例示的実施形態において、IMiDはレナリドミドであり、治療計画は、28日周期の1~21日目の各日の25mgの投与を含む。さらに別の例示的実施形態において、IMiDはレナリドミドであり、治療計画は、28日周期の1~21日目の各日の10mgの投与を含む。
【0159】
例示的な一実施形態において、IMiDはポマリドミドであり、治療計画は、28日周期の1~21日目の各日の単回用量の投与を含む。別の例示的実施形態において、IMiDはポマリドミドであり、治療計画は、28日周期の1~21の各日の4mgの投与を含む。
【0160】
例示的な一実施形態において、抗炎症化合物はデキサメタゾンであり、治療計画は、28日周期の1~4、9~12、および17~20日目の1用量のデキサメタゾンの投与を含む。別の例示的実施形態において、抗炎症化合物はデキサメタゾンであり、治療計画は、28日周期の1、8、15、および22日目の1用量のデキサメタゾンの投与を含む。さらに別の実施形態において、抗炎症化合物はデキサメタゾンであり、治療計画は、21日周期の1、2、4、5、8、9、11、および12日目のデキサメタゾンの投与を含む。
【0161】
ある例示的治療計画では、治療計画は、28日周期の1日目の1.9mg/kg、2.5mg/kg、または3.4mg/kgの抗BCMA抗原結合タンパク質の投与;28日周期の1~21日目の4mgのポマリドミドの投与;および場合により、28日周期の1~4、9~12、および17~20日目または28日周期の1、8、15、および22日目の20mgまたは40mgのデキサメタゾンの投与を含む。
【0162】
別の例示的治療計画では、治療計画は、28日周期の1日目の1.9mg/kg、2.5mg/kg、または3.4mg/kgの抗BCMA抗原結合タンパク質の投与;28日周期の1~21日目の10mgまたは25mgのレナリドミドの投与;および場合により、28日周期の1~4、9~12、および17~20日目のまたは28日周期の1、8、15、および22日目の20mgまたは40mgのデキサメタゾンの投与を含む。
【0163】
キット
いくつかの側面において、本開示は、
(i)抗BCMA抗原結合タンパク質;
(ii)IMiD;および
(iii)癌の治療において使用するための説明書
を含んでなる、癌の治療において使用するためのキットを提供する。
【0164】
いくつかの実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質およびIMiDは、それらの固有の医薬組成物として1種類以上の薬学上許容可能な担体とともにそれぞれ個々に処方される。
【0165】
いくつかの側面において、本開示は、
(i)抗BCMA抗原結合タンパク質;
(ii)IMiD;
(iii)抗炎症化合物;および
(iii)癌の治療において使用するための説明書
を含んでなる、癌の治療において使用するためのキットを提供する。
【0166】
いくつかの実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質、IMiD、および抗炎症化合物は、それらの固有の医薬組成物として1種類以上の薬学上許容可能な担体とともにそれぞれ個々に処方される。
【0167】
いくつかの側面において、本開示は、
(i)抗BCMA抗原結合タンパク質;
(ii)IMiDと組み合わせた場合に癌の治療において使用するための説明書
を含んでなる、癌の治療において使用するためのキットを提供する。
【0168】
いくつかの側面において、本開示は、
(i)抗BCMA抗原結合タンパク質;
(ii)IMiDおよび抗炎症化合物と組み合わせた場合に癌の治療において使用するための説明書
を含んでなる、癌の治療において使用するためのキットを提供する。
【実施例0169】
実施例1:抗BCMA抗体薬物結合体、レナリドミド、およびデキサメタゾンによる多発性骨髄腫の治療
再発/不応性多発性骨髄腫(RRMM)を有する対象においてレナリドミドおよびデキサメタゾンと組み合わせて投与される抗BCMA抗原結合タンパク質の安全性、忍容性を決定するため、第II相試験推奨用量(RP2D)を決定するため、ならびにRRMMを有する参加者におけるRP2D組合せ処置の安全性および臨床活性を評価するために、ヒト対象において第I/II相試験を行う。
【0170】
抗BCMA抗原結合タンパク質は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含んでなるCDRH1;配列番号2に示されるアミノ酸配列を含んでなるCDRH2;配列番号3に示されるアミノ酸配列を含んでなるCDRH3;配列番号4に示されるアミノ酸配列を含んでなるCDRL1;配列番号5に示されるアミノ酸配列を含んでなるCDRL2;および配列番号6に示されるアミノ酸配列を含んでなるCDRL3を含んでなる抗BCMA抗体であり;Tai et al Blood. 2014 May 15; 123(20): 3128-3138に記載されるようにモノメチルアウリスタチンF(MMAF)に結合される。
【0171】
単回の処置周期は、28日からなる。用量制限または忍容できない有害事象を受けていない対象には最大12周期の抗BCMA抗原結合タンパク質処置、および最大14周期のレナリドミドおよびデキサメタゾン処置を継続し得る。
【0172】
試験は二部からなる:第1部は用量漸増試験であり、第2部は用量拡大試験である。
【0173】
試験の第1部は、組合せ用量レベルの安全性および忍容性を評価するための用量漸増相である。これはレナリドミドおよびデキサメタゾンと組み合わせた場合の抗BCMA抗原結合タンパク質の第II相試験推奨用量(RP2D)用量レベルを特定するために計画される。対象はまず、28日周期の1日目の25mgのレナリドミド;および28日周期の1、8、15、および22日目の40mgのデキサメタゾンで試験する。
【0174】
第1周期の終了後に、抗BCMA抗原結合タンパク質、レナリドミド、およびデキサメタゾン薬の用量を次のように調整することができる:抗BCMA抗原結合タンパク質は1.9mg/kgまたは3.4mg/kgに調整することができ;レナリドミドは10mgに調整することができ;かつ/またはデキサメタゾンは20mgに調整することができる。
【0175】
治療計画の概要を表1に示す。
【0176】
【0177】
第2部(用量拡大)では、さらなる対象を登録し、抗BCMA抗原結合タンパク質、レナリドミド、およびデキサメタゾンそれぞれのRP2Dで試験する。安全性(AE、ECG、MM症状、および臨床検査評価)、臨床応答および症状/生活の質の変化を第1周期および総ての後続周期の終了時に評価する。
【0178】
【0179】
【0180】
【0181】
【0182】
【0183】
【0184】
【0185】
【0186】
【0187】