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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139182
(43)【公開日】2023-10-03
(54)【発明の名称】二次電池パック
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/204 20210101AFI20230926BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20230926BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20230926BHJP
   H01M 10/6563 20140101ALI20230926BHJP
   H01M 50/342 20210101ALI20230926BHJP
【FI】
H01M50/204 401H
H01M10/613
H01M10/6556
H01M10/6563
H01M50/342 201
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023120323
(22)【出願日】2023-07-24
(62)【分割の表示】P 2021524905の分割
【原出願日】2020-06-04
(31)【優先権主張番号】P 2019107481
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】505083999
【氏名又は名称】ビークルエナジージャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤本 貴行
(72)【発明者】
【氏名】西森 独志
(72)【発明者】
【氏名】坂部 啓
(72)【発明者】
【氏名】仲元 正至
(57)【要約】
【課題】筐体内の電子基板を効果的に冷却でき、その結果、充放電性能を向上できる二次電池パックを提供する。
【解決手段】筐体と、複数の二次電池セルの集合体と、集合体のための電子基板と、を備え、筐体内は密閉され、集合体と前記電子基板とは前記筐体内に配置され、前記筐体は開口を備え、前記筐体内の密閉を維持しながら、電子基板が前記開口を覆うように、筐体に取り付けられ、電子基板の背面が前記筐体外に臨んでいる。
【選択図】図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
複数の二次電池セルの集合体と、
前記集合体のための電子基板と、
を備え、
前記筐体内は密閉され、
前記集合体と前記電子基板とは前記筐体内に配置され、
前記筐体は開口を備え、
前記筐体内の密閉を維持しながら、前記電子基板が前記開口を覆うように、当該筐体に取り付けられ、
前記電子基板の背面が前記筐体外に臨んでいる、
二次電池パック。
【請求項2】
前記電子基板の背面側に複数の放熱用伝熱体が形成されている、
請求項1記載の二次電池パック。
【請求項3】
前記複数の放熱用伝熱体に向けて冷却風を送出する流路を備える、
請求項2記載の二次電池パック。
【請求項4】
前記筐体内の内圧が所定以上になると、前記筐体に前記開口を覆うように取り付けられた前記電子回路基板を前記筐体から離間させるアクチュエータを備える、
請求項1記載の二次電池パック。
【請求項5】
前記アクチュエータは、
前記電子基板を前記開口部に位置決めする固定部に設けられた弾性体を備え、
当該弾性体は、前記筐体内が所定圧以下では、前記電子基板を前記筐体に押接させて前記開口が当該電子基板によって塞がれるようにし、
前記筐体内が所定圧を越えると、前記電子基板は前記弾性体に抗して、前記筐体から離間するように押圧され、前記電子基板と前記筐体との間に、前記開口に繋がるパスが形成され、当該パスを介して前記筐体内の発生ガスが当該筐体外に排出されるようにした、
請求項4記載の二次電池パック。
【請求項6】
前記アクチュエータは、前記電子基板と前記筐体との間に、前記開口に繋がるパスを形成され、当該パスを介して前記筐体内で発生したガスが当該筐体外に排出されるようにし、
前記二次電池パックは、前記筐体外に排出される前記ガスに向けて、冷却風を送出する流路を備え、
当該ガスが前記冷却風に誘導されて系外に排出される、
請求項4記載の二次電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池パックに係り、特に、車載用の二次電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池パックは、複数の二次電セルが組付けられた電池セル集合体を筐体内に配置したものとして知られている。筐体には、リリーフ弁や安全弁が備え付けられ、二次電池パックは、筐体の内圧が高くなると、これら弁を開放して、電池セル集合体から発生したガスを、筐体外に排出できるようしている。そして、電池セル集合体を制御するためのリレー等の電子部品や電子回路を備える電子基板は、電池セル集合体と共に筐体内に収容されていて、筐体外の環境から保護されている。
【0003】
この種の二次電池パックとして、例えば、特開2014-49427号公報に記載されたものが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-49427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の二次電池パックでは、筐体内の電子基板が過熱することへの対策が十分ではない、という課題があった。そこで、本発明は、筐体内の電子基板を効果的に冷却でき、その結果、充放電性能を向上できる二次電池パックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明は、筐体と、複数の二次電池セルの集合体と、前記集合体のための電子基板と、を備え、前記筐体内は密閉され、前記集合体と前記電子基板とは前記筐体内に配置され、前記筐体は開口を備え、前記筐体内の密閉を維持しながら、前記電子基板が前記開口を覆うように、当該筐体に取り付けられ、前記電子基板の背面が前記筐体外に臨んでいる、二次電池パックである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、筐体内の電子基板を効果的に冷却でき、その結果、充放電性能を向上できる二次電池パックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る二次電池パックをy方向から描いた、その内部構成を示す正面図である。
図2図1に係る二次電池パックの二次電池セルの外観を俯瞰した斜視図である。
図3A図1に係る二次電池パックの電子基板と、その周りの構造をy方向から描いた拡大図である。
図3B図1に係る二次電池パックの電子基板と、その周りの構造をz方向から描いた平面図である。
図4図4は、図3Aに於ける、電子基板を筐体に位置決めする固定部の拡大図である。
図5図1に係る二次電池パックの電子基板と、その周りの構造をy方向から描いた拡大図である。
図6】電子基板が筐体内の圧力上昇により開放されたときの、電子基板の固定部の状態を示す部分拡大図である。
図7】電子基板および送風手段を筐体のy方向から描いた正面図である。
図8】電子基板が筐体の側面に搭載される状態を示す、電池パックの概略構成図である。
図9】電子基板の概略構成図である。
図10】電子基板の他の概略構成図である。
図11】電子基板のさらに他の概略構成図である。
図12】電子基板の変形例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明に係る二次電池パックの実施形態について説明する。二次電池パックは、筐体内の密閉空間内に、電池セル集合体と、電池セルの半導体リレー等が実装された電子基板と、BMS(Battery Management System)等の制御装置とを収容している。
【0010】
二次電池パックの充放電性能を向上させるために、電池セルの実装数は増加する傾向にあるが、電池セルの実装数が増加すると、電子基板に流れる電流が大電流化して基板を過熱させてしまうため、基板を冷却することが望まれている。
【0011】
しかしながら、密閉された筐体内にある基板を冷却すること自体、そもそも容易ではなかったことと、一方で、基板の過熱を防ぐために、基板に流れる電流を制限しようとすると、充放電性能を抑制してしまうおそれがある。以下に説明する二次電池パックは、電子基板がシールされた筐体内にあっても、複雑な構造を要することなく、電子基板を効果的に冷却できるようにしたものである。
【0012】
二次電池パックの二次電池セルは、リチウムイオン二次電池セルの他、ナトリウムイオン二次電池、マグネシウムイオン二次電池、カルシウムイオン二次電池、アルミニウムイオン二次電池、亜鉛二次電池等、特に制限されない。
【0013】
先ず、この二次電池パックの全体構成を、図1図4を用いて説明する。ある要素と同一の機能を有する要素には、同一の符号を付け(図面)、その説明を省略することがある。
【0014】
図1は、二次電池パックをy方向から描いた、その内部構成を示す正面図である。図2は、図1に係る二次電池パックの二次電池セルの外観を俯瞰した斜視図である。図3Aは、図1に係る二次電池パックの電子基板と、その周りの構造をy方向から描いた拡大図である。図3Bは、図1に係る二次電池パックの電子基板と、その周りの構造をz方向から描いた平面図である。図4は、図3Aに於ける、電子基板を筐体に位置決めする固定部の拡大図である。なお、後述のとおり、図2の説明の際、座標軸の方向について解説する。
【0015】
二次電池パック100の主要構成は、複数の二次電池セル11を積層させた電池セル積層体(電池セル集合体)10、電池セル積層体10を冷却するための冷却部30、電子基板40、制御装置60、及び、これらを内部の密閉空間内に収容する筐体70である。
【0016】
電子基板40は、例えば、半導体リレー基板など、大電流が流れる回路や電子部品が基板に実装されたものでよい。電子基板40の基板部41の筐体70の内側に臨む面(平面)に、複数の半導体チップなどの電子部品42が実装されている。制御装置60は、既述のとおり、例えば、BMS(Battery Management System)である。
【0017】
基板部41の冷却のため、基板部41の背面(筐体70の外側の面)に、基板部41の平面の電子部品や電子回路42から伝わる熱を放熱するためのフィン(放熱用伝熱体)43が形成されている。フィン43の周りには、冷却用空気を流すためのダクト85(図7)が形成されている。なお、複数の二次電池セル11同士を電気的に接続するためのバスバーや電気配線、電池セル11と電子基板40、ならびに、制御装置60とを電気的に接続するためのバスバーや電気配線の図示は省略されている。
【0018】
図2に示す様に、二次電池セル11の主要構成は、正負極の複数の電極体(図示せず)を積層させたものを収容するための略直方体形状を有する電池セル缶17、正負極を有する電極端子16である。電池セル缶17は、例えば、アルミ材で略直方体形状に成形されており、幅広面12、および、幅狭面13、14、15を有している。電極体は、電池セル缶17の内部にて、幅広面12に略平行状に積層されている。
【0019】
そして、二次電池セル11の幅広面12同士を対向させて二次電池セル11を積層させることにより、電池セル積層体10が構成される。二次電池セル11の積層方向をx軸方向としている。x軸、y軸、z軸は、それぞれが直交する関係にあり、z軸方向が鉛直方向である。なお、二次電池セル11の幅狭面のうち、幅狭面13を「缶底面」、幅狭面14を「缶側面」と表記する。
【0020】
図1にも示す様に、電池セル積層体10を固縛保持するためのエンドプレート21は、二次電池セル11の幅広面12と接触するように配置され、また、サイドプレート(図示せず)は、電池セル11の幅狭面14(缶側面)と接触するように配置される。二つのエンドプレート21が、サイドプレートに例えばネジ止めにより締結されることにより、二つのエンドプレート21はサイドプレートに保持される。
【0021】
エンドプレート21とサイドプレートの締結方向が、二次電池セル11の積層方向(x軸方向)と同一であるため、複数の二次電池セル11の幅広面12の面内に、ほぼ均等に面圧が付加される。こうすることで、複数の二次電池セル11は、その積層方向(x軸方向)に固縛保持され、電池セル積層体10の剛性が高められる。エンドプレート21、および、サイドプレートは、例えば、鋼材、鉄、アルミなど金属材料で作製される。
【0022】
図1に示す様に、筐体70は、電池セル積層体10、電子基板40、及び、制御装置60等を収納する筐体底部71と、筐体底部71を覆う形状を有する筐体蓋部72を備える。筐体底部71を筐体蓋部72が覆うことにより、電池セル積層体10等を収容する内部は、外部から密閉されている。なお、筐体底部71は、例えば、鋼材、鉄、アルミなどの金属材料で作製され、筐体蓋部72は、例えば、プラスチックなどの樹脂材料で作製される。
【0023】
筐体底部71の底面であって、筐体70の内側には、電池セル積層体10の缶底側、つまり、二次電池セル11の幅狭面13(缶底面)が、例えば、放熱性グリースや放熱性接着剤など、熱伝導性を有する部材(図示せず)を介して固定されている。さらに、筐体底部71の底面の外側には、電池セル積層体10を冷却するための冷却部30が固定される。冷却部30は、一般的なヒートシンクでよく、複数のフィン(放熱用伝熱体)32がフィンベース板31に固定された形状を備えている。冷却部30の外側には、フィン32に冷却空気を流すためのダクト(流路)33が備わっている。なお、冷却部30は、例えば、アルミや銅など、熱伝導率が比較的高い金属であればよい。
【0024】
図3A、3Bに示す様に、筐体底部71の底面の一部分には、開口部73が設けられ、筐体70内の密閉を維持しながら、開口部73を覆うように、基板部41が筐体底部71に支持されている。基板部41の固定部50は、筐体70の外側から、基板部41を、開口部73に対して位置決めして、筐体底部71に支持させるようにしている。図3Bには、開口部73の形状を、例えば、矩形とし、固定部50を基板部41の四隅に設けることが示されている。開口部の形状は、円形、楕円形等、特に限定されるものではない。開口のサイズ、そして、面積の上限は、基板部41が開口を覆うことが出来れば、特に限定されない。その下限は、基板部41に実装された電子部品、電子回路、半導体素子が開口を介して、筐体70内に臨むことが出来る範囲で決められればよい。
【0025】
基板部41は、例えば、アルミなど、熱伝導率が比較的高い金属であってよい。基板部41において、筐体70の内側に面した側には、絶縁層44が設けられ、絶縁層44に回路パターン45が形成されている。この回路パターン45を介して、複数の半導体チップなどの電子部品42が基板部41に搭載されている。
【0026】
回路パターン45には、バスバー46が備わっており、バスバー46には、フレキシブル性を有するバスバー49が端子47を介して固定されている。フレキシブル性を有するバスバー49は、一般的に使用されるシャントワイヤーなどである。
【0027】
バスバー49の他方の端子48は、筐体70内に固定される支持部材(図示せず)により固定される。金属製基板41において、電子部品42が搭載される面の反対側(筐体70の外側に面した側、即ち、背面)には、放熱用伝熱体としての、切り起しフィン43が直接成形されており、フィン43は筐体70の外側に配向されている。切り起しフィン43は、例えば、一般的に使用されるスカイブフィンなどである。フィン43の外側には、冷却空気をフィン43に向けて送出するためのダクト(冷却流路)85が装備されている。
【0028】
ダクト85には送風手段が接続されている。送風手段は、例えば、送風機であり、軸流式ファンや遠心式ブロワ等である。したがって、電子基板40の大電流によって、電子基板40が電子部品によって過熱されても、電子基板を効果的に放熱させることができる。それ故、電池セルの実装数を増加することもでき、二次電池パックの充放電性能を向上させることができる。
【0029】
図4に示す様に、基板部41は、ねじなどの締結部材51、52、および、バネ53により構成される固定部50により、開口部73を覆うように、開口部73に対して位置決めされ、筐体70の筐体底部71に支持される。締結部材51、52は、それぞれ、おねじ、めねじ、であり、筐体底部71に設けられたねじ部55により、締結部材51が筐体底部71に固定支持される。
【0030】
さらに、締結部材51に取り付けられた、アクチュエータとしてのバネ(弾性体)53の弾性応力により、基板部41は、筐体底部71に押圧されている。固定部50は、図3Bで説明したように、基板部41の外縁付近に複数設置されている。
【0031】
図3A図3Bに示す様に、基板部41と筐体底部71との間にガスケット54が介装されている。バネ(弾性体)53の弾性応力により、基板部41が筐体底部71に押圧されると、ガスケット54は、筐体開口部73をシールして筐体70内を密閉した環境に維持する。基板部41は幅方向の断面形状が矩形で、周回状の溝が刻設されており、この中に、幅方向の断面形状が円で、この溝から筐体底部71に向けて突出する、ガスケット54が嵌入されている。この溝は、固定部50を避けるようにして、構成されている。ガスケット54は、例えば、シール用部材として一般的に使用される、Oリングなどでよい。
【0032】
二次電池パックの正常動作時(充放電時)には、電子基板40が開口部73の蓋となることで、筐体70の密閉状態を保つことができる。一方、二次電池セル11の異常動作時では、万が一、ガスが発生し、筐体70内の圧力が上昇すると、筐体70内の圧力がある所定値よりも大きくなった際に、電子基板40が筐体70から離間するように外側に押される。この時、ガスケット54に依るシールが開放されて、電子基板40と筐体70との間に、筐体70内を大気圧に開放するパスができる。筐体70内で発生したガスは、パスを通して筐体外に放出される。つまり、基板自体が、二次電池パック100の安全弁として機能する。
【0033】
基板そのものを、リリース弁として機能させることにより、別途、弁を設ける必要が無いばかりか、パスが基板部41の周りの広い範囲に現れるために、筐体70内のガス圧を迅速かつ十分に低下させることができる。
【0034】
図5は、図1に係る二次電池パックの電子基板と、その周りの構造をy方向から描いた拡大図であり、二次電池セル11から筐体内にガスが発生した際の状態を示し、図6は、図5に示された電子基板40の固定部50の拡大図である。ガスの発生により筐体70内の圧力が上昇し、筐体70内の圧力(Pin)がある所定値(Pf)よりも大きくなると、電子基板40が筐体70の外側に向かって押されることにより、基板部41と、筐体底部71との間に隙間(パス)56が生じ、隙間56を介して、筐体70内に充満したガス91が開口部73から筐体70の外側に放出される。
【0035】
二次電池パックの正常稼働時において、筐体70をシールでき、二次電池パックの異常動作時に、ガスを筐体外に排出できるようにするためには、固定部50のバネ53のばね定数をPs、固定部50の個数をNとして、Pin≧Pf=Ps×Nが成立すればよい。
【0036】
所定値Pfが小さ過ぎると、例えば、車載された電池パック100が車両の走行時の振動などにより、ガスが発生していないにも拘わらず、基板部41が筐体70の外側に向けて押されて、電池パック100の密閉状態が失われてしまうことがあり、電池パックが劣化してしまうおそれがある。したがって、バネ53の反力Psは、電池セルからガスが生じていない、電池パックの正常稼働時では、基板部41が筐体70の外側に向けて移動することがないよう強さでなければならない。
【0037】
ガスが筐体外に排出されると、バネ53の応力により、基板部41とが筐体底部71に押接されて、両者の間の隙間(パス)56が閉じられて、筐体内が再び密閉される。
【0038】
図7は、電子基板40および送風手段83を筐体70のy方向から描いた正面図である。電池セル積層体10、制御装置60は図示が省略されている。送風手段は、送風機83、ダクト(流路)84、85、86から構成されている。二次電池パック100の正常動作時(充放電時)には、流路の上流側に設けられた送風機83を動作させることにより、冷却空気92が電子基板40のフィン43を通過することで、電子部品42からフィン43へ伝わった熱と熱交換し、暖められた空気(排気93)が排出される。
【0039】
一方、二次電池パック100の異常時には、二次電池セル11から発生したガスによる筐体70内の圧力上昇により、内圧Pinが所定値Pfより大きくなった場合、電子基板40が筐体70の外側に押されることで、電子基板40の基板部41と筐体底部71との間に生じた隙間56を介し、ガス91がダクト85内に放出される。このとき、流路の上流側に設けられた送風機83による冷却空気92に誘導されて、筐体70から放出されるガス91は冷却空気92と共に排気93として、最終的に系外(例えば、車外)へ効率よく排出される。
【0040】
以上説明した電池パックによれば、電子基板40の冷却と、筐体からのガス放出とを、電子基板40自体によって、共に実現することができる。さらに、冷却用空気の流路と、筐体からのガス排出のための流路を共通化することが可能となり、電池パックの高密度実装、部品数の低減による低コスト化が可能となる。
【0041】
図7は、送風機83を冷却空気92の流入側に配置し、冷却空気92を電子基板40のフィン43に押し込む形態について示したが、送風機83を冷却空気92の排出側に配置し、冷却空気92をフィン43から吸い出す形態であってもよい。
【0042】
電子基板40は、図8に示すように、筐体70の側面側の開口部に対して設けられたものでもよい。基板部41は、金属製だけでなく、樹脂製であってもよい。図9に示すように、樹脂製基板41の筐体外に臨む面に、金属製のフィンベース板81に複数のフィン43が備わった、一般的なヒートシンクを取り付ければよい。
【0043】
また、電子基板40を、図10および図11に示すように、電子基板40を筐体70の底部71に移動不能に固着させてもよい。図10は、電子基板40を、筐体70の外側から固定させる場合であり、図11は、電子基板40を、筐体70の内側から固定させる場合である。
【0044】
また、図12に示すように、電子基板40が実装される前に、電子基板40の代わりに簡易板82を開口部73に適用して、簡易板82を開口部を開閉する安全弁として利用してもよい。
【0045】
以上説明したように、開口部を利用して、基板に実装されている電子部品等を筐体内に臨ませることができ、同時に、基板の背面を筐体外に臨ませることができる。したがって、冷却風を電子基板の背面側に誘導するなどすれば、複雑な構成に依らずに、電子基板の冷却が可能になる。
【0046】
なお、本発明は、既述の実施形態に限定されるべきではないし、本発明の範囲に含まれるかぎり、当業者による変更および修正を妨げるものではない。例えば、電池パック100の異常時に、筐体70内のガスを放出させる形態を、電池パック100内に圧力センサを設け、筐体70内の圧力がある所定値よりも大きくなった場合に、ソレノイドアクチュエータによって、電子基板40を筐体70の外側に移動させて、電池パック100の密閉状態を解放する機構に変更してもよい。
【符号の説明】
【0047】
10 電池セル積層体、11 電池セル、12 電池セル幅広面、13 電池セル幅狭面(缶底面)、14 電池セル幅狭面(缶側面)、15 電池セル幅狭面、16 電極端子、17 電池セル缶、21 エンドプレート、30 冷却部、31 フィンベース板、32 フィン、33 ダクト(流路)、40 電子基板、41 基板部、42 電子部品、43 フィン、44 絶縁層、45 回路パターン、46 バスバー、47 端子、48 端子、49 バスバー、50 固定部、51 締結部材(おねじ)、52 締結部材(めねじ)、53 バネ、54 ガスケット、55 ねじ部、56 隙間、60 制御装置、70 筐体、71 筐体底部、72 筐体蓋部、73 筐体開口部、81 フィンベース板、82 板、83 送風機、84,85,86 ダクト(流路)、91 ガス、92 冷却空気、93 排気、100 二次電池パック。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12