(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139184
(43)【公開日】2023-10-03
(54)【発明の名称】ガス試験装置及び方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/06 20060101AFI20230926BHJP
C12Q 1/04 20060101ALI20230926BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20230926BHJP
C12M 1/04 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
C12Q1/06
C12Q1/04
C12M1/34 D
C12M1/04
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023120357
(22)【出願日】2023-07-25
(62)【分割の表示】P 2022024639の分割
【原出願日】2015-10-21
(31)【優先権主張番号】62/067,392
(32)【優先日】2014-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】510119555
【氏名又は名称】ランザテク エヌゼット,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ヘイジストラ,ビョーク ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】シンプトン,シーン デニス
(72)【発明者】
【氏名】バーダコス,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ブロムリー,ジェイソン カール
(72)【発明者】
【氏名】ヤップ,カイーミン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】C1含有基質の効率的な評価のため、及び、特に、C1炭素源を使用する所望される最終生成物のための生物学的変換プロセスの実施用の予想される設備での、その場で、または現場で行われるこのような評価のための装置及び関連方法を提供する。
【解決手段】試験CO含有基質と基準CO含有基質との間で比較性能を評価するための別々のバイオリアクタステージを含む装置を提供する。有利なことに、このような装置は、(例えば、工業用CO含有排ガスが生成される場所への)輸送に好適なコンテナ内に収容されてもよい。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的変換プロセスにおける使用のために、産業プロセスから得られた試験C1含有
基質の好適性を評価するための方法であって、当該方法は、
(a)ガス試験装置を提供する工程であって、前記ガス試験装置は、
(i)基準C1含有基質の性能を評価するための第1のバイオリアクタのステージと
、
(ii)前記試験C1含有基質の性能を評価するための第2のバイオリアクタのステ
ージと、
(iii)前記第1及び第2のバイオリアクタのガス及び液体生成物の両方の分析用
に構成された分析部と、を備え、
前記ガス試験装置は、6m3未満の体積を有し、複数の場所に輸送可能なコンテナ内に
収容されることが可能である、ガス試験装置を提供する工程と、
(b)前記ガス試験装置の第1のバイオリアクタに、基準C1含有基質を供給する工程
であって、前記第1のバイオリアクタはC1固定性微生物の第1の培養物を含み、前記第
1のバイオリアクタは一連の対象操作条件で操作される、基準C1含有基質を供給する工
程と、
(c)前記ガス試験装置の第2のバイオリアクタに、前記産業プロセスから得られる前
記試験C1含有基質を供給する工程であって、前記第2のバイオリアクタは前記C1固定
性微生物の第2の培養物を含み、前記第2のバイオリアクタは前記一連の対象操作条件と
同じに操作される、前記試験C1含有基質を供給する工程と、
(d)前記第1及び第2のバイオリアクタの性能を判断するために、前記ガス試験装置
の分析部を用いて、前記第1及び第2のバイオリアクタのガス及び液体生成物の両方を分
析する工程と、
(e)生物学的変換プロセスにおける使用のために、前記産業プロセスから得られた前
記試験C1含有基質の前記好適性を決定するために、前記第2のバイオリアクタの性能に
対する、前記第1のバイオリアクタの性能を比較する工程と、
(f)前記工程(e)において、前記第1のバイオリアクタに対する、前記第2のバイ
オリアクタの性能低下を得た場合、前記試験C1含有基質と比較して、より高い質の試験
C1含有基質を提供するために、前記試験C1含有基質の前処理をする工程、または前処
理を強化する工程であって、前記性能低下は、前記第1のバイオリアクタ及び前記第2の
バイオリアクの間における性能相違の閾値であり、前記性能低下は、(i)前記第2のバ
イオリアクタのものと比較した、前記第1のバイオリアクタにおいて測定されたC1炭素
源利用の平均値に基づく、または(ii)前記第2のバイオリアクタのものと比べた、前
記第1のバイオリアクタにおいて測定されたC1炭素源利用の変化の速度に基づく、工程
とを含み、
前記方法は、前記産業プロセスの現場で実行されることを特徴とし、
前記基準C1含有基質の組成は既知であり、前記産業プロセスから得られる前記試験C
1含有基質の組成は試験期間中に変動する、方法。
【請求項2】
工程(b)及び工程(c)の少なくとも一部が同時に実行される、請求項1に記載の方
法。
【請求項3】
工程(b)で前記試験C1含有基質を前記第2のバイオリアクタに供給する前に、前記
基準C1含有基質を前記第2のバイオリアクタに供給する工程を含む、請求項1に記載の
方法。
【請求項4】
前記産業プロセスから得られた前記試験C1含有基質が、汚染物質を除去するために前
処理された工業用C1含有排ガス流である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
分析する工程(d)が、前記第1及び第2のバイオリアクタの前記ガス生成物における
C1炭素源の濃度を測定する工程と、前記第1及び第2のバイオリアクタの前記液体生成
物におけるエタノール及び少なくとも1つのさらなる代謝物質の濃度を測定する工程とを
含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記C1固定性微生物の前記第1及び第2の培養物のうちの少なくとも1つは、現地の
水源で調製された、または現地の水源が補われた、培地を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記C1含有基質が、CO、CO2、及びCH4からなる群から選択される少なくとも
1つのC1炭素源を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記C1固定性微生物が、クロストリジウム属からの酸化炭素資化微生物である、請求
項1に記載の方法。
【請求項9】
前記C1固定性微生物が、クロストリジウムオートエタノゲナム、クロストリジウムリ
ュングダリイ、及びクロストリジウムラグスダレイからなる群から選択される、請求項8
に記載の方法。
【請求項10】
前記ガス試験装置が、1.8メートル未満の長さ、幅、及び高さ寸法をそれぞれ有する
箱内に収容されることが可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ガス試験装置の前記分析部が、前記ガス及び前記液体生成物の分析用にそれぞれ構
成された第1及び第2のクロマトグラフィーカラムを有する、ガスクロマトグラフィー(
GC)分析装置を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第1及び第2のバイオリアクタのステージが、循環ループバイオリアクタをそれぞ
れ備える、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ガス試験装置が、新鮮培地の付加速度、ガスC1含有基質供給速度、リアクタ温度
、及びリアクタpHからなる群から選択される1つ以上の操作パラメータを制御するため
の操作制御システムをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記1つ以上の操作パラメータが、リアクタpHを含み、前記制御システムが、測定さ
れたリアクタpHに基づいて、前記バイオリアクタへの塩基性中和剤の流れを制御するた
めの器具を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ガス試験装置が、閾値濃度を上回る環境C1炭素源濃度の測定に応じて、少なくと
も前記試験C1含有基質または前記基準C1含有基質の流れを一時停止するための安全制
御システムをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、試験CO含有基質と基準CO含有基質との間で比較性能を評価するた
めの別々のバイオリアクタステージを含む装置に関する。有利なことに、このような装置
は、(例えば、工業用CO含有排ガスが生成される場所への)輸送に好適なコンテナ内に
収容されてもよい。
【背景技術】
【0002】
化石燃料温室効果ガス(GHG)排出の環境への懸念は、再生可能なエネルギー源への
増加する重要性につながっている。結果的に、エタノールが急速に、世界中で、水素に富
む主要な液体輸送燃料となっている。燃料エタノール産業に対する世界市場における継続
した成長が、欧州、日本、及び米国、ならびにいくつかの発展途上国におけるエタノール
生成への増加した重要性に基づいて、近い将来に予測される。例えば、米国では、エタノ
ールは、ガソリン中のエタノールの10%混合物である、E10を生成するために使用さ
れる。E10混合物では、エタノール成分は、酸素化剤として働き、燃焼の効率を改善し
、大気汚染物質の生成を減少させる。ブラジルでは、エタノールは、ガソリンに混ぜられ
る酸素化剤として、及びそれ自体で純燃料としての両方で、輸送燃料の需要の約30%を
満たす。また、欧州連合(EU)は、バイオマス由来のエタノールなどの持続可能な輸送
燃料の消費について、加盟国の各々に対し、定められた目標値を有する。
【0003】
燃料エタノールの大半は、サトウキビから抽出されたスクロース、または穀類作物から
抽出されたスターチなどの、作物由来の炭水化物を、主要な炭素源として使用する、従来
の酵母による発酵プロセスを介して生成される。しかしながら、これらの炭水化物供給原
料の費用は、競合する使用のため、即ち、人間及び動物の両方用の食糧源として、市場で
の価値による影響を受ける。また、エタノール生成のためのスターチまたはスクロースを
生成する作物の栽培は、これが現地の土地価格及び気候の両方の関数であるため、あらゆ
る地理において経済的に持続可能ではない。これらの理由のため、低費用の、及び/また
はより豊富な炭素源を燃料エタノールに変換するための技術を開発することは特に興味深
い。これについて、一酸化炭素(CO)は、石炭、油、及び油由来の生成物などの有機材
料の不完全燃焼の、エネルギーに富む主要な副産物である。COが豊富な排ガスは、様々
な産業プロセスから生じる。例えば、オーストラリアにおける鋼産業は、毎年、500,
000メートルトンを超えるCOを生成し、大気に放出していると報告されている。
【0004】
さらに近年、産業規模でCOからエタノールを生成するための、微生物(バクテリア)
ベースのプロセスの代替手段は、商業的な利益及び投資の対象となってきた。COを唯一
の炭素源として用いて増殖する、微生物培養物の能力は、1903年に最初に発見された
。この特徴は、独立栄養増殖(Woods-Ljungdahl pathway及び一
酸化炭素デヒドロゲナーゼ/アセチルCoAシンターゼ(CODH/ACS)経路として
も知られる)のアセチル補酵素A(アセチルCoA)生化学的経路の有機物の使用にある
ことが、後に決定された。カルボキシド栄養性生物、光合成生物、メタン生成生物、及び
酢酸生成生物を含む多数の嫌気性生物は、COを代謝することがすでに示されている。ク
ロストリジウム属からのものなどの嫌気性細菌は、アセチルCoA生化学的経路を介して
CO、CO2、及びH2からエタノールを生成することが知られている。例えば、ガスか
らエタノールを生成するクロストリジウムリュングダリイの様々な株は、WO00/68
407号、EP1117309号、US5,173,429号、US5,593,886
号、US6,368,819号、WO98/00558号、及びWO02/08438号
において説明される。細菌クロストリジウムオートエタノゲナム菌種は、ガスからエタノ
ールを生成するということも知られる(Abriniら、ARCHIVES OF MI
CROBIOLOGY 161:345-351(1994))。
【0005】
有機物の各酵素は、本質的に完璧な選択性でその指定された生物学的変換を促進し、微
生物合成ルートは、従来の触媒ルートに比べてより低いエネルギー費用で、より高い収量
を達成することができる。例えば、所望される生成物から、非選択性の副反応によって生
じる副産物を分離するためのエネルギー要件が減少され得る。また、反応培地における不
純物による、触媒の中毒への懸念が減少する。これらは明らかに利点であるが、本技術は
、COからのエタノールの微生物合成に関連する現在の特定の課題、特に、生成率が他の
技術との競争力をもつことを確実にすることに関する課題に、取り組まなければならない
。COを炭素源として使用する場合、上述の嫌気性細菌は、発酵によってエタノールを生
成するが、例えば、CO2、メタン、n-ブタノール、及び/または酢酸など、少なくと
も1つの代謝物質も生成する。これらの代謝物質のうちのいずれかの形成は、利用可能な
炭素が代謝物質へと失われ、所望される最終生成物の生産効率性が落ちるため、所与のプ
ロセスの生産性及び経済的な実現可能性全体に、大きな影響を与える可能性を有する。ま
た、代謝物質(例えば、酢酸)自体が、微生物発酵プロセスの時及び場所において、価値
を有さない限り、廃棄問題を引き起こし得る。エタノールを作るためのCO含有ガスの嫌
気性発酵における所望される最終生成物以外の生成物の形成に取り組むための様々な提案
が、国際特許出願公開第2007/117157号、国際特許出願公開第2008/11
5080、及び国際特許出願公開第2009/022825号において述べられる。
【0006】
所与の発酵プロセスが経済的に魅力的であるかについての重要な決定要因である、エタ
ノール生成率は、細菌増殖のための適切な条件を管理することに大きく依存する。例えば
、CO含有基質が、最適な細菌増殖及び/または所望される代謝物質生成をもたらす速度
で、微生物培養に提供されなければならないことが、国際特許出願公開第2010/09
3262から知られている。不十分な基質が提供される場合、細菌増殖は遅くなり、発酵
生成物の収量は、エタノールを使って、酢酸へと変化する。過剰な基質が提供される場合
、不良な細菌増殖、及び/または細胞死をもたらし得る。これらのプロセスにおける操作
パラメータ間の関係に関するさらなる情報が、国際特許出願公開第2011/00231
8号で見られる。
【0007】
COからエタノールを生成するための生物学的プロセスに関する技術、特に、鋼製造に
おいて及び一般的に化学産業において放出されるガス排出物などの、COを含有する排流
に関する技術は、プロセス経済性全体(及び、したがって産業上の競争力)を改善する、
及び/または産業規模での比較的新しい技術の採用におけるより高い確実性をもたらす、
解決策を継続的に求めている。これに関して、所与の細菌培養物の商業的性能は、CO含
有基質の特定の源に、より詳細には、ガスの組成の種類に加えて、特定の産業の運用者(
例えば、鋼の製造者)のガス排流にあり得る不純物の種類及び量、に感応性があり得る。
商業用の生物学的変換プロセスに対する多額の投資は、未試験の、現地のCO含有基質及
びユーティリティ(例えば、水源)に関連して認識されるリスクが過剰である考えられる
場合、請け負うことが難しい資金投入である。そのため、所与の技術における顧客/投資
家の信用を達成する効率的な手段は、エタノール生成用の生物学的変換プロセスを商業的
な実現へと進めることにおいて非常に重要である。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、C1含有基質の効率的な評価のための、特に、C1炭素源からのエタノール
生成用の生物学的変換プロセスの実施用の予想される設備での、現地で、または現場で行
われる評価のための、装置及び関連する方法の発見に関連する。典型的に、C1含有基質
は、CO、CO2、及びCH4からなる群から選択される、少なくとも1つのC1炭素源
を含む。重要なことに、所与の産業用C1含有基質の正確な組成は、少なくとも商業的な
成果の正確な予測に必要とされる程度まで、遠隔の設備(例えば、研究所またはパイロッ
ト規模もしくはデモンストレーション規模のプロセス)で再現することがしばしば難しい
ことが知られている。重要なことに、所与のプロセスが成果目標を達成することができる
という十分な信用がなければ、スケールアップ(例えば、プロセス設計及び工学)に必要
とされる多額の資本支出は、正当化されることができない。これについて、特定の汚染物
質(例えば、炭水化物またはヘテロ原子を含有する炭水化物)のわずかな量でも、このよ
うなより重い分子をC1含有基質から抽出しがちな液体ベースのシステムである、細菌培
養物に悪影響を与え得、このような分子がバイオリアクタの内部及び外部の液体再生利用
ループに蓄積させる。さらに、現地のガス組成における変動は、同様に、現場以外の試験
設備において再現することが難しく、多くの場合では、このような変動の程度は、直接C
1含有基質に現地でアクセスしなければ知ることができない、または理解することができ
ない。さらに、予想される、商業的な生物学的変換設備の現地性(例えば、細菌培養培地
において使用される現地の水源)に重要であり得る他の態様の好適性が、大きな投資判断
の前に、さらに評価され、確認されるべきである。
【0009】
有利に、本明細書で説明される装置及び方法は、最適を下回る性能(例えば、代謝物質
生産性及び/または基質の利用)の要因を識別する、及び修正するために、使用されるこ
とができる。C1含有基質、及び/または他の、現地が源であるプロセスへの付加物の前
処理が実施されなければならない、または強化されなければならない度合いは、商業規模
の操作の前に有利に決定されることができ、商業設計及び関連する費用の見積りの正確さ
を向上させる。さらに、現場での有効性のデモンストレーションは、提供者及びユーザの
両方に同様に、C1含有基質及び可能性のある他の現地の付加物の現地での(即ち、実際
の、または産業用の)供給で操業する、予想される生物学的変換プロセスの再保証の重要
度を提供する。
【0010】
本発明の特定の実施形態は、2つのバイオリアクタステージを含むガス試験装置に向け
られ、多くの場合では、試験C1含有基質を比較評価するための、十分な器具、プロセス
用機器、及び分析能力を有する、及び重要には、輸送性を可能にする十分な大きさの制約
を有する、2つのみのバイオリアクタステージを使用する。
【0011】
1つの態様では、本開示は、(a)基準C1含有基質の性能を評価するための第1のバ
イオリアクタステージと、(b)試験C1含有基質の性能を評価するための第2のバイオ
リアクタステージと、(c)第1及び第2のバイオリアクタのガス及び液体の生成物の両
方の分析用に構成された分析部とを含む、ガス試験装置を提供し、ガス試験装置は、約6
m3未満の体積を有し、複数の位置に輸送可能な、コンテナ内に収容されることができる
。
【0012】
ガス試験装置は、各約1.8メートル未満、または各約1.6メートル未満、または各
1.3メートル未満の、長さ、幅、及び高さ寸法を有する箱内に収容されることができる
。特定の実施形態では、箱は、約1.6メートル未満の、長さ、幅、及び高さ寸法のうち
の1つ、及び、約1.3メートル未満の、長さ、幅、及び高さ寸法のうちの他の2つを有
する。
【0013】
ガス試験装置の分析部は、ガス及び液体生成物の分析用にそれぞれ構成された、第1及
び第2のクロマトグラフィーカラムを有する、ガスクロマトグラフィー(GC)分析装置
を含む。
【0014】
第1及び第2のバイオリアクタステージのバイオリアクタは、循環したループバイオリ
アクタをそれぞれ含む。第1及び第2のバイオリアクタステージは、バイオリアクタの下
端の近接から、バイオリアクタの反対の上端の近接に取り出された液体を再生利用するた
めの、外部の再生利用ループ及び再循環ポンプをそれぞれさらに含む。
【0015】
ガス試験装置は、新鮮な培養培地付加速度、ガスC1含有基質供給速度、リアクタ温度
、及びリアクタpHからなる群から選択される、1つ以上の操作パラメータを制御するた
めの操作制御システムをさらに含んでもよい。特定の実施形態では、1つ以上の操作パラ
メータは、リアクタpHを含み、制御システムは、測定されたリアクタpHに基づいて、
塩基性中和剤の流れをバイオリアクタに制御するための器具を含む。
【0016】
特定の実施形態では、ガス試験装置は、閾値濃度を上回る環境C1濃度の測定に応じて
、少なくとも試験C1含有基質または基準C1含有基質の流れを一時停止するための安全
制御システムを含む。
【0017】
第2の態様では、本開示は、生物学的変換プロセスにおける使用のための試験C1含有
基質の好適性を評価するための方法を提供し、本方法は、(a)基準C1含有基質をC1
固定性微生物の第1の培養物を含む第1のバイオリアクタに供給する工程と、(b)試験
C1含有基質をC1固定性微生物の第2の培養物を含む第2のバイオリアクタに供給する
工程と、(c)第1及び第2のバイオリアクタの性能を判断するために、第1及び第2の
バイオリアクタのガス及び液体生成物の両方を分析する工程とを含み、試験C1含有基質
の好適性は、第2のバイオリアクタの性能に対する、第1のバイオリアクタの性能の比較
から確立される。特定の実施形態では、工程(a)及び工程(b)の少なくとも一部は、
同時に実行される。
【0018】
特定の実施形態では、C1固定性微生物は、クロストリジウム属からの酸化炭素資化微
生物である。好ましくは、C1固定性微生物は、クロストリジウムオートエタノゲナム、
クロストリジウムリュングダリイ、及びクロストリジウムラグスダレイからなる群から選
択される。
【0019】
特定の実施形態では、本方法は、工程(b)で試験C1含有基質を第2のバイオリアク
タに供給する前に、基準C1含有基質を第2のバイオリアクタに供給することを含む。
【0020】
試験C1含有基質は、汚染物質を除去するように前処理された産業用C1含有排ガス流
である。特定の実施形態では、試験C1含有基質は、原料産業用ガス流である。特定の実
施形態では、本方法は、生物学的プロセスが未処理の排ガス流で実行可能であることを判
断するために、原料C1含有基質を試験することを含む。
【0021】
1つの実施形態では、分析工程(c)は、第1及び第2のバイオリアクタのガス生成物
におけるC1の濃度を測定する工程と、第1及び第2のバイオリアクタの液体生成物にお
けるエタノール及び少なくとも1つのさらなる代謝物質の濃度を測定する工程と、を含む
。さらに、本発明によると、C1固定性微生物の第1及び第2の培養物のうちの少なくと
も1つは、現地の水源で調製された、または現地の水源が補われた、培地を含んでもよい
。いくつかの実施形態では、第1及び第2の培養物の性能が少なくとも約7日の試験期間
にわたって同時に評価される。
【0022】
さらなる態様では、本開示は、試験C1含有基質が生物学的変換プロセスを補助するか
どうかを判断するための方法を提供する。本方法は、(a)基準C1含有基質を、エタノ
ール及び少なくとも1つのさらなる代謝物質を生成するための栄養として利用し、C1固
定性微生物の別々の第1及び第2の培養物を維持する工程と、(b)基準C1含有基質か
ら、第2の培養物への栄養として、試験C1含有基質へと変える工程と、(c)同じ一連
の対象操作条件下であるが、異なる基準及び試験C1含有基質を使用して、第2の培養物
の性能と比較して、第1の培養物の性能を評価する工程と、(d)工程(c)において第
2の培養物の最小限の性能低下を得ない場合、試験C1含有基質が生物学的変換プロセス
を補助すると確認する工程と、(e)工程(c)において最小限の性能低下を得る場合、
工程(c)において性能を評価するために使用される試験C1含有基質と比較して、より
高い質の試験C1含有基質を提供するために、試験C1含有基質の前処理をする、または
前処理を強化する工程と、を含む。
【0023】
1つの実施形態では、本方法は、(f)同じ一連の対象操作条件下であるが、異なる基
準及びより高い質の試験C1含有基質を使用して、第3の培養物の性能と比較して、第1
の培養物の性能を評価する工程と、(g)工程(f)における第3の培養物の最小限の性
能低下を得ない場合、より高い質の試験C1含有基質が生物学的変換プロセスを補助する
と確認する工程とをさらに含む。
【0024】
特定の実施形態では、第1及び第2の培養物を調製するため、または第1及び第2の培
養物を補うために、異なる水源が使用される。
【0025】
本発明に関係する、これらの、及び他の実施形態、態様、及び利点は、次の詳細な説明
から明らかである。
【0026】
本発明の例示の実施形態、及びその利点のより完全な理解は、添付の図面を考慮して下
記の説明を参照することによって得ることができ、これらの図面において、同様の特徴は
同様の参照符号によって識別される(例えば、
図1Aのバイオリアクタ100及び
図2の
バイオリアクタ100a、100b)。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1A】本明細書で説明されるような代表的な、輸送可能なガス試験装置の、断面側面図を示す。
【
図1B】本明細書で説明されるような代表的な、輸送可能なガス試験装置の、背面図を示す。
【
図2】本明細書で説明されるようなガス試験装置における使用のための代表的なバイオリアクタの拡大図を示し、その操作に関係する追加の詳細を提供する。
【
図3】本明細書で説明されるような1つ以上の修正方法(例えば、純度を上げる)に選択的に従う試験C1含有基質が、生物学的変換プロセス用に好適であるかどうかを判断するために、本明細書で説明されるようなガス試験装置で実行され得る、代表的な方法論を例証するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1~3は、本開示、及び/または含まれる原理の例証を表すことが理解されるべきで
ある。説明及び理解を容易にするために、単純化された機器及びプロセスフローが
図1及
び2に示され、異なる機器の相対的な寸法は、必ずしも正寸ではない。本開示の理解に不
可欠ではない、いくつかの弁、器具、及び他の機器及びシステムを含む詳細は、示されな
い。本開示の知識を有する当業者には容易に明らかであるように、所与のC1含有基質及
び/または現地の付加物が生物学的変換プロセスを補助するかどうかの試験を行うための
装置、及び方法は、特定の使用によって、一部が、決定される構成及び構成要素を有する
。
【0029】
本発明は、所望の生成物の最大の生産性及び収量を伴う生物学的C1変換プロセスを実
施するために別途使用される機器の選択される部分のみを使用して、上記で明らかにされ
た目的のために、試験(または現地)C1含有基質が有効に評価され得るという重要な認
識に関連する。C1含有基質は、典型的に、CO、CO2、及びCH4からなる群から選
択される少なくとも1つのC1炭素源を含む。例えば、C1含有基質は、COを含有する
ガス状の基質であってもよい。C1含有基質はまた、H2及び/またはN2を含んでもよ
い。例えば、別々の、試験ガス及び基準ガスの比較試験用の第1及び第2のバイオリアク
タを有する平行バイオリアクタステージシステムは、現地で利用可能なガス供給及び/ま
たは付加物が、性能の商業的な度合いに達していないとしても(例えば、液体生成物のエ
タノール力価について)、商業的なプロセスを補助することを確認するために必要な情報
を提供することができる。実際のバイオリアクタ構成成分、プロセス容器、器具、及び分
析器のサブセットのみが必要とされ、代表的なガス試験装置が、収容され、予想される設
備に輸送される(例えば、747ジェット旅客機の貨物室で)ことを可能にする。例えば
、液体を外部の再生利用ループからバイオリアクタの上部に供給するための選択的な液体
分配装置(例えば、シャワーヘッド)を除いて、リアクタ内部分配装置を有さない、試験
及び基準ガスをそれぞれ評価するための2つのみのバイオリアクタを有することによって
、特定の効率性が得られ得る。ガス生成物及び液体生成物の両方の分析用のガスクロマト
グラフィー(GC)を使用することによって、他の効率性が得られ得る。C1固定性微生
物の分離、及び再生利用を各バイオリアクタステージで避けることによって、さらなる効
率性が得られ得る。これら、及び他の効率性を活用することによって、ガス試験装置は、
有利に、エタノールをC1含有基質から生成するために、生物学的変換プロセスの予想さ
れる商業規模の設置の遠隔地へ、輸送可能(例えば、空路、海路、または陸路で)にされ
てもよい。ガス試験装置は、現地で利用可能なC1含有基質、及び水などのプロセス付加
物の、現場での評価用の十分な機器を含むが、(i)生産性の最大化のために必要とされ
るリアクタシステム、及び/または(ii)包括的な監視、及びすべてのプロセス変数の
制御のための、分析システム及び器具の、要件のうちのすべてを有さない。このような要
件は、一般的に、輸送可能性の目的に合わせられない、有利に、定量的結果に対して、定
性的結果(例えば、基準試験との比較で)が、ガスの質の確認目的の、及び/または修正
測定が性能低下に対処するために必要な領域の識別のための、意義のある評価を提供する
ことができることが分かっている。
【0030】
本発明は、ガスC1含有基質におけるC1炭素源の生物学的変換による、エタノールな
どの、所望される最終生成物の生成によって動作するガス試験装置、及び、一方で、その
所望される最終生成物の生成を含む関連する方法に関する。ガス試験装置の第1及び第2
のバイオリアクタステージには、特定の、試験C1含有基質が所与のプロセスにおいて好
適であることを確立することに関する有益な情報を提供する比較を確立するために、例え
ば、並行、または同時の性能評価のための、基準(または制御)C1含有基質、及び試験
(または産業上利用可能な)C1含有基質が、供給され得る。バイオリアクタステージの
各々は、動作において、C1固定性微生物(細菌培養)を含有する液体培地を含むバイオ
リアクタを含む。所望される最終生成物に加えて、バイオリアクタステージの各々におい
て生じる生物学的変換プロセスは、所望されない、または、より望ましくない代謝物質を
さらに生成し、これは、所望される生成物(例えば、エタノール)のように、これらのス
テージから引き出された液体生成物において検出され得る。このような代謝物質の例は、
アセテート(例えば、酢酸の形状で)及び2,3ブタンジオールである。「アセテート」
または「酢酸塩」という用語は、陰イオン(解離された)形状(即ち、アセテートイオン
またはCH3COO-)か、自由な、システムのpHに依存する形状の比を有する分子酢
酸(CH3COOH)の形状のいずれかで、培地に存在するアセテートの合計を指す。下
記に述べられるように、含水水酸化アンモニウム(NH4OH)または水酸化ナトリウム
水溶液(NaOH)などの塩基性中和剤は、形成された酢酸を中和することによって、所
与のバイオリアクタ(例えば、pH=4.5~pH=8.0の任意の特定のpH値であり
得るpH設定点値まで)において、培地のpHを制御するために使用されてもよい。バイ
オリアクタが本明細書で説明されるプロセスを実行するために維持される(または制御さ
れる)代表的なpH範囲は、約5.0~約6.5(例えば、pH=5.0、5.5、また
は6.0)など、一般的に約4.0~約8.0の範囲内の任意のpH値(設定点)である
。
【0031】
代表的なC1固定性細菌は、ムーレラ、クロストリジウム、ルミノコッカス、アセトバ
クテリウム、ユウバクテリウム、ブチリバクテリウム、オキソバクター、メタノサルキナ
、メタノサルキナ、及びデスルホトマクルムの属からのC1固定性細菌である。
【0032】
「微生物」は、特に、細菌、古細菌、ウイルス、または真菌である、微生物である。本
発明の微生物は、典型的に、細菌である。本明細書で使用されるように、「微生物」の記
述は、「細菌」を包括するとされるべきである。
【0033】
本発明の微生物は、機能特性に基づいてさらに分類されてもよい。例えば、本発明の微
生物は、C1固定性細菌、嫌気性菌、酢酸生成菌、エタノロジェン、カルボキシド栄養細
菌、及び/またはメタン資化細菌であってもよく、またはこれらから由来してもよい。表
1は、微生物の代表の一覧を提供し、その機能特性を明らかにする。
【表1】
1 アセトバクテリウムウッディは、フルクトースからエタノールを生成することがで
きるが、ガスからはできない。
2 アセトバクテリウムウッディは、CO上で増殖できることが報告されているが、方
法は疑わしい。
3 クロストリジウムマグナムがCO上で増殖できるかどうかは調査されていない。
4 モーレラサーモアセティカ、モーレラ菌種HUC22-1の1つの株が、ガスから
エタノールを生成することが報告されている。
5 スポロミュサオバータがCO上で増殖できるかどうかは調査されていない。
6 スポロミュサシルバセティカがCO上で増殖できるかどうかは調査されていない。
7スポロミュサスフェロイデスがCO上で増殖できるかどうかは調査されていない。
【0034】
「C1」は、例えば、CO、CO2、CH4、CH3OHなどの1つの炭素分子を指す
。「C1酸化」は、例えば、CO、CO2、またはCH3OHなどの、少なくとも1つの
酸素原子をさらに含む1つの炭素分子を指す。「C1炭素源」は、部分的に、または単一
で、本発明の微生物用の炭素源としての役割をする1つの炭素分子を指す。例えば、C1
炭素源は、CO、CO2、CH4のうちの1つ以上を含んでもよい。好ましくは、C1炭
素源は、COとCO2のうちの1つまたは両方を含む。「C1固定性微生物」は、C1炭
素源から1つ以上の生成物を生成することができる能力を有する微生物である。典型的に
、本発明の微生物は、C1固定性細菌である。好ましい実施形態では、本発明の微生物は
、表1で明らかにされたC1固定性微生物由来の微生物である。
【0035】
「嫌気性菌」は、増殖するために酸素を必要としない微生物である。嫌気性菌は、酸素
が特定の閾値を超えて存在する場合、負の反応をし得る、または、さらには死に得る。典
型的に、本発明の微生物は、嫌気性菌である。好ましい実施形態では、本発明の微生物は
、表1に明らかにされた嫌気性菌に由来する。
【0036】
「酢酸生成菌」は、アセテート(または酢酸)を嫌気呼吸の生成物として、生成する、
または生成することができる、微生物である。典型的に、酢酸生成菌は、ウッドリュング
ダリイ経路を、エネルギー保存用の、及びアセチルCoA、及びアセテート(Ragsd
ale,Biochim Biophys Acta, 1784:1873-1898
,2008)などのアセチルCoA由来の生成物の合成用の、主な機構として使用する、
絶対的嫌気細菌である。酢酸生成菌は、アセチルCoA経路を、(1)CO2からのアセ
チルCoAの還元的合成のための機構として、(2)最終電子受容、エネルギー保存プロ
セスとして、(3)セル炭素の合成におけるCO2の固定(同化)のための機構(Dra
ke、Acetogenic Prokaryotes,The Prokaryote
s内、第3判、p.354、New York、NY、2006)として、使用する。す
べての自然に生じる酢酸生成菌は、C1固定性、嫌気性、独立栄養性、及びメタン資化性
である。典型的に、本発明の微生物は、酢酸生成菌である。好ましい実施形態では、本発
明の微生物は、表1において明らかにされた酢酸生成菌に由来する。
【0037】
「エタノロジェン」は、エタノールを生成する、または生成できる微生物である。典型
的に、本発明の微生物は、エタノロジェンである。好ましい実施形態では、本発明の微生
物は、表1において明らかにされたエタノロジェンに由来する。
【0038】
「独立栄養生物」は、有機炭素がなくても増殖できる微生物である。その代わり、独立
栄養生物は、CO及び/またはCO2などの無機炭素源を使用する。典型的に、本発明の
微生物は、独立栄養生物である。好ましい実施形態では、本発明の微生物は、表1におい
て明らかにされた独立栄養生物に由来する。
【0039】
「カルボキシド栄養細菌」は、炭素の単一源としてCOを利用することができる微生物
である。典型的に、本発明の微生物は、カルボキシド栄養細菌である。好ましい実施形態
では、本発明の微生物は、表1において明らかにされたカルボキシド栄養細菌に由来する
。
【0040】
「メタン資化細菌」は、炭素の単一源及びエネルギーとしてメタンを利用することがで
きる微生物である。特定の実施形態では、本発明の微生物は、メタン資化細菌に由来する
。
【0041】
さらに広く、本発明の微生物は、表1に明らかにされた任意の属、または種に由来して
もよい。
【0042】
好ましい実施形態では、本発明の微生物は、クロストリジウムオートエタノゲナム、ク
ロストリジウムリュングダリイ、及びクロストリジウムラグスダレイの種を含む、クロス
トリジウムのクラスタに由来する。これらの種は、最初に、Abrini,Arch M
icrobiol,161:345-351,1994(クロストリジウムオートエタノ
ゲナム)、Tanner,Int J System Bacteriol,43:23
2-236,1993(クロストリジウムリュングダリイ)、及びHuhnke,WO2
008/028055(クロストリジウムラグスダレイ)によって報告され、特徴付けら
れた。
【0043】
これらの3つの種は、多くの類似性を有している。詳細には、これらの種は、すべて、
クロストリジウム属の、C1固定性、嫌気性、酢酸生成菌、エタノール生成菌、及びー酸
化炭素資化性菌の、成分である。これらの種は、同様の、遺伝子型及び表現型、ならびに
エネルギー保存及び発酵代謝の態様を有する。さらに、これらの種は、99%以上同一で
ある16S rRNA DNAを有するクロストリジウムrRNAホモロジー群Iにおい
てクラスタ化され、約22~30モル%のDNA G+C含有量を有し、グラム陽性であ
り、同様の形態及びサイズ(0.5~0.7×3~5μmの対数増殖セル)を有し、中温
性であり(30~37℃で最適に増殖する)、約4~7.5の同様のpH範囲を有し(約
5.5~6の最適pHを有する)、シトクロムを欠いており、Rnf複合体を介してエネ
ルギーを保存する。また、カルボン酸の対応するアルコールへの還元が、これらの種にお
いて示された(Perez,Biotechnol Bioeng,110:1066-
1077,2012)。重要なことには、これらの種はまた、すべてが、CO含有ガス上
での強い独立栄養生物の増殖を示し、主な発酵生成物としてエタノール及びアセテート(
または酢酸)を生成し、特定の条件下で少量の2,3-ブタンジオール及び乳酸を生成す
る。
【0044】
しかしながら、これらの3つの種はまた、多数の相違点を有する。これらの種は、異な
る源、即ち、ウサギの腸からのクロストリジウムオートエタノゲナム、養鶏場の廃棄物か
らのクロストリジウムリュングダリイ、淡水底質からのクロストリジウムラグスダレイか
ら分離された。これらの種は、様々な糖(例えば、ラムノース、アラビノース)、酸(例
えば、グルコネート、シトレート)、アミノ酸(例えば、アルギニン、ヒスチジン)、及
び他の基質(例えば、ベタイン、ブタノール)の利用において異なる。さらに、これらの
種は、特定のビタミン(例えば、チアミン、ビオチン)への栄養要求性において異なる。
これらの種は、ウッドリュングダリイ経路遺伝子及びタンパク質の核及びアミノ酸配列に
おいて相違点を有するが、これらの遺伝子及びタンパク質の一般的な組織及び数は、すべ
ての種において同じであることが発見されている(Kopke,CurrOpinBio
technol,22:320-325,2011)。
【0045】
したがって、要するに、クロストリジウムオートエタノゲナム、クロストリジウムリュ
ングダリイ、またはクロストリジウムラグスダレイの特徴の多くは、その種に特化しない
が、むしろ、クロストリジウム属の、C1固定性、嫌気性、酢酸生成菌、エタノール生成
菌、及びー酸化炭素資化性菌の、成分のクラスタに関する一般的な特徴である。しかしな
がら、これらの種は、実際、明確に異なるため、これらの種のうちの1つの遺伝子組み換
え、または操作は、これらの種のうちの別の種と同一の効果を有さないかもしれない。例
えば、増殖、性能、または生成物生成における相違点が見られ得る。
【0046】
本発明の微生物はまた、クロストリジウムオートエタノゲナム、クロストリジウムリュ
ングダリイ、またはクロストリジウムラグスダレイの分離体または変異体に由来してもよ
い。クロストリジウムオートエタノゲナムの分離体及び変異体は、JA1-1(DSM1
0061)(Abrini,Arch Microbiol,161:345-351,
1994)、LBS1560(DSM19630)(WO2009/064200)及び
LZ1561(DSM23693)を含む。クロストリジウムリュングダリイの分離体及
び変異体は、ATCC49587(Tanner,Int J Syst Bacter
iol,43:232-236,1993),PETCT(DSM13528,ATCC
55383),ERI-2(ATCC55380)(US5,593,886),C-0
1(ATCC55988)(US6,368,819),O-52(ATCC55989
)(US6,368,819)、及びOTA-1(Tirado-Acevedo,Pr
oduction of bioethanol from synthesis ga
s using Clostridium ljungdahlii,PhD thes
is, North Carolina State University,2010
)を含む。クロストリジウムラグスダレイの分離体または変異体は、PI 1 (ATC
C BAA-622,ATCC PTA-7826)(WO2008/028055)を
含む。
【0047】
本発明の微生物は、1つ以上の生成物を生成するように培養されてもよい。例えば、ク
ロストリジウムオートエタノゲナムは、エタノール(WO2007/117157)、ア
セテート(WO2007/117157)、ブタノール(WO2008/115080及
びWO2012/053905)、ブチレート(WO2008/115080)、2,3
-ブタンジオール(WO2009/151342)、ラクテート(WO2011/112
103)、ブテン(WO2012/024522)、ブタジエン(WO2012/024
522)、メチルエチルケトン(2-ブタノン)(WO2012/024522及びWO
2013/185123)、エチレン(WO2012/026833)、アセトン(WO
2012/115527)、イソプロパノール(WO2012/115527)、脂質(
WO2013/036147)、3-ヒドロキシプロピオン酸(3-HP)(WO201
3/180581)、イソプレン(WO2013/180584)、脂肪酸(WO201
3/191567)、2-ブタノール(WO2013/185123)、1,2-プロパ
ンジオール(WO2014/0369152)、及び1-プロパノール(WO2014/
0369152)を生成する、または生成するように加工され得る。1つ以上の目標生成
物に加え、本発明の微生物はまた、エタノール、アセテート、及び/または2,3-ブタ
ンジオールを生成してもよい。特定の実施形態では、微生物バイオマス自体が、生成物と
見做されてもよい。
【0048】
一般的に、第1及び第2のバイオリアクタにおいて同じ微生物が使用されるが、いくつ
かの実施形態では、異なるバイオリアクタにおいて異なるC1固定微生物を使用すること
も可能である。
【0049】
代表的なC1含有基質、及び、詳細には、本明細書で説明されるような試験C1含有基
質は、幅広く、任意のC1炭素源を含む。C1炭素源は、本発明の微生物に対する部分的
な、または単一の炭素源としての役割をする1つの炭素分子を指す。例えば、C1炭素源
は、CO、CO2、またはCH4のうちの1つ以上を含んでもよい。好ましくは、C1炭
素源は、CO及びCO2のうちの1つまたは両方を含む。本基質は、H2、N2、または
電子などの他の非炭素成分をさらに含んでもよい。
C1含有基質は、大きな割合のCO、好ましくは、少なくとも約5容量%~約99.5容
量%のCOを含有してもよい。このような基質は、鋼製造プロセス、または非鉄製品製造
プロセスなどの、産業上のプロセスの廃棄物としてしばしば生成される。ガスCO含有基
質が生成される他のプロセスは、石油精製プロセス、バイオ燃料生成プロセス(例えば、
熱分解プロセス及び脂肪酸/トリグリセリド水素化変換プロセス)、石炭及びバイオマス
ガス化プロセス、電力生成プロセス、カーボンブラック生成プロセス、アンモニア生成プ
ロセス、メタノール生成プロセス、及びコークス製造プロセスを含む。多数の化学産業排
水、ならびに種々の基質から生成される合成ガス(CO及びH2の両方を含有する)は、
同様に、潜在的なCO含有基質としての役割をすることができる。特定の例は、リン酸及
びクロム酸塩の生成からの排水を含む。有利に、これらのプロセスからの廃棄物(例えば
、排気ガス)は、エタノールなどの利便性のある最終生成物の有益な生成のために、本明
細書で説明されるように使用されてもよい。基質、及び/またはC1炭素源は、産業上の
プロセスの副産物として、または、自動車の排気ガスまたはバイオマスガス化からなどの
、いくつかの他の源から得られる、廃棄物、またはオフガスであってもよく、またはそれ
らに由来してもよい。特定の実施形態では、産業上のプロセスは、製鋼工場での製造、非
鉄製品製造、石油精製プロセス、石炭ガス化、電力生成、カーボンブラック生成、アンモ
ニア生成、メタノール生成、及びコークス製造などの、鉄鋼製造からなる群から選択され
る。これらの実施形態では、基質、及び/またはC1炭素源は、任意の利便性のある方法
を使用して、大気中に放出する前に産業上のプロセスから得られてもよい。
【0050】
基質、及び/またはC1炭素源は、石炭または精製残油のガス化、バイオマスまたはリ
グノセルロース材料のガス化、または自然ガスの再形成によって得られた合成ガスなどの
、合成ガスであってもよく、合成ガスに由来してもよい。別の実施形態では、合成ガスは
、一般固形廃棄物または産業固形廃棄物のガス化から得られてもよい。
【0051】
基質、及び/またはC1炭素源に関して、「由来する」という用語は、何かしらの方法
で組み換えられた、または混合された、基質、及び/またはC1炭素源を指す。例えば、
基質、及び/またはC1炭素源は、特定の成分を追加する、または除去するように処理さ
れてもよく、他の基質、及び/またはC1炭素源流と混合されてもよい。
【0052】
基質の組成は、反応の効率及び/または費用への大きな影響を有し得る。例えば、酸素
(O2)の存在は、嫌気性の発酵プロセスの効率を減少させ得る。基質の組成によって、
毒素、所望されない成分、または塵粒子などのあらゆる所望されない不純物を除去するた
めに、及び/または所望される成分の濃度を増加させるために、基質を処理する、こすり
取る、またはフィルタすることが所望され得る。
【0053】
基質は、一般的に、約1、2、5、10、20、30、40、50、60、70、80
、90、または100モル%のCOなど、少なくともいくらかの量のCOを含む。基質は
、約20~80、30~70、または40~60モル%のCOなど、ある範囲のCOを含
んでもよい。好ましくは、基質は、約40~70モル%のCO(例えば、製鉄工場または
高炉ガス)、約20~30モル%のCO(例えば、塩基性酸素転炉ガス)、または約15
~45モル%のCO(例えば、合成ガス)を含む。いくつかの実施形態では、基質は、約
1~10または1~20モル%のCOなど、比較的低量のCOを含んでもよい。本発明の
微生物は、典型的に、基質におけるCOの少なくとも一部を生成物に変換する。いくつか
の実施形態では、基質は、COを全く、または実質的に全く含まない。
【0054】
基質は、いくらかの量のH2を含んでもよい。例えば、基質は、約1、2、5、10、
15、20、または30モル%のH2を含んでもよい。いくつかの実施形態では、基質は
、約60、70、80、または90モル%のH2など、比較的多い量のH2を含んでもよ
い。さらなる実施形態では、基質はH2を全く、または実質的に全く含まない。
【0055】
基質は、いくらかの量のCO2を含んでもよい。例えば、基質は、約1~80または1
~30モル%のCO2を含んでもよい。いくつかの実施形態では、基質は、約20、15
、10、または5モル%未満のCO2を含んでもよい。別の実施形態では、基質はCO2
を全く、または実質的に全く含まない。
【0056】
基質は典型的にガス状であるが、基質は代替の形状で提供されてもよい。例えば、基質
は、微小気泡分散体発生器を使用してCO含有ガスで飽和された液体に溶解されてもよい
。さらなる例として、基質は固形支持体上に吸着されてもよい。
【0057】
所与の産業上のC1含有基質の正確な組成は、少なくとも商業的な成果の正確な予測に
必要とされる程度まで、遠隔の設備(例えば、研究所またはパイロット規模もしくはデモ
ンストレーション規模のプロセス)で再現することがしばしば困難であることが決定され
ている。重要なことに、所与のプロセスが成果目標を達成することができるという十分な
信用がなければ、スケールアップ(例えば、プロセス設計及び工学)に必要とされる多額
の資本支出は、正当化されることができない。これについて、特定の汚染物質(例えば、
炭水化物またはヘテロ原子を含有する炭水化物)のわずかな量でも、このようなより重い
分子をC1含有基質から抽出しがちな液体ベースのシステムである細菌培養に悪影響を与
え得、このような分子がバイオリアクタの内部及び外部の液体再生利用ループに蓄積させ
る。さらに、現地のガス組成における変動は、同様に、現場ではない試験設備において再
現することが難しく、多くの場合では、このような変動の程度は、直接C1含有基質に現
地でアクセスしなければ知ることができない、または理解することができない。さらに、
現地性の、予想される、商業的な生物学的変換設備(例えば、細菌培養培地において使用
される現地の水源)に重要であり得る他の態様の好適性が、大きな投資判断の前に、さら
に評価され、確認されるべきである。
【0058】
生物学的変換プロセスにおける産業用C1含有基質の使用が、数々の課題を提示するた
めに示されてきた。主要なガス構成成分(CO、H2、N2、CO2など)以外の物質の
存在は、発酵プロセスに有害な影響を有し得る。さらに、産業プロセスからのガスの流量
は、そのプロセスの操作パラメータに依存し、下流の発酵プロセスへの一貫した体積のガ
ス供給量(例えば、Nm3/時間で)を提供するように合わせられない。構成する成分(
主要な成分及び汚染物質の両方)の各々の相対量に関するガスの化学的性質は、しばしば
急速に、操作パラメータに従って時間と共に変化し、上流の産業プロセスに入る。
【0059】
おそらく、生成物合成用のガス発酵プロセスへの単一炭素及びエネルギーフィードスト
ックとしての産業用オフガスの使用の、最も大きな課題は、広範囲の殺菌性または毒性の
汚染物質の存在である。微生物発酵における、産業上生成された、ガス化されたバイオマ
スの合成ガス生成物による汚染物質の負の影響は、十分に証明されている。これらのガス
は、特に、CO及びH2を炭素の単一源及びエネルギーとして使用するー酸化炭素資化性
生物内で、細菌増殖及び生産性を抑制することが一貫して立証された(Ahmed et
al.2006)、タール及び窒素化合物の両方を含有する。合成ガスに見られる一酸
化窒素は、40ppmもの低い濃度で、C.カルボキシディボランス及びC.ラグスダレ
イなどのー酸化炭素資化性生物を抑制することがいくつかの研究において示されている(
Datarら 2004、Lewisら 2006、Ahmed及びLewis 200
7、Kundiyanaら 2010)。他の研究は、ベンゼン、トルエンエチルベンゼ
ン、及びp-キシレン(表2に示された鋼製造からのオフガスにおいて見られるすべての
化合物)からなるタールも、一酸化炭素資化性生物の生産性及び生存能力を抑制すること
を証明した(Ahmedら 2006、Lewisら 2006)。
【0060】
例えば、鋼製造プロセスの不可避の結果として生成されたオフガスは、COと、いくつ
かの場合ではH2とを、含有し、上述されたような産業用オフガスを使用することに関連
する課題の典型となる。典型的に、鋼製造プロセスからの排気ガスは、少しの水素を含有
する、または全く含有しない。さらに、これらのオフガスに見られる複数の汚染化合物が
よく知られており、証明されている(表2を参照)。鋼オフガス流に見られる汚染物質の
数及び種類は、バイオマス由来の合成ガスなどの他の産業用ガスに存在すると報告されて
いるものよりも、確実に、かなり多い。汚染物質の数及び種類の両方におけるこの増加は
、発酵システムへの、より重大な課題を提示する。生物学的プロセスにおける汚染物質の
「付加」効果は正確に予測することが難しいが、有害効果はさらに深刻になることが予想
される。鋼製造プロセスからのオフガスの一部として、通気口または排気筒内を通る15
の最も多い汚染物質は、細菌に毒性があると考えられる、窒素酸化物、二酸化硫黄、ベン
ゼン、トルエン、シアン化物、及びフッ化物化合物などの化合物である。
【0061】
上述のように、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、及びp-キシレンからなるター
ルは、C.カルボキシディボランスの生存性及び生産性への大きな悪影響を有すると見ら
れている(Lewisら 2006)。ベンゼン及びトルエンならびにキシレンの嫌気性
細菌への相対的な毒性は、Payne及びSmith(1983)によって説明された。
しかしながら、上述のように、この化合物及び他の化合物が、様々な他の潜在的な毒性化
合物と共に製鋼工場ガスに存在する。カドミウム、ニッケル及び亜鉛などの重金属の、ト
ルエンの毒性への付加の影響は、(Amorら 2001)によって説明された。これら
のデータは、トルエンの存在における微生物の性能が、これらの重金属の付加によって、
個別に、多大な悪影響を受けることを明らかに立証する。製鋼工場オフガスにおいて、こ
れらの金属は共に存在し、細菌の性能及び生産性にさらに大きな課題をもたらすと予測す
るであろう。
【0062】
重大なことに、産業ガス流の適正な代表である、試験流を研究室のセットにおいて提供
することは難しい。重要なことに、同様の産業からのガス流においても、個別のガス流に
存在する汚染物質の種類及び量は、大きく異なる。単一の工場または設備内でも、排気ガ
スの組成は、上流の条件、及び産業プロセスに提供される源とされた原材料によって変化
し得る。さらに、圧縮ガスは、典型的に、ガスの組成を変える。特に、高圧では、汚染物
質は、気相から離脱しがちである。これは、現場での排ガスと、研究所に提供される試験
試料との間の差/変化を引き起こす。
【0063】
表2は、National Pollution Inventory(NPI)(h
ttp://www.npi.gov.au)で報告された、BlueScope St
eel Port Kembla Steelworks-Port Kembla、N
SW、Australiaから、すべての大気放出をキログラムで示す(点線源+漏洩1
)。これは、BlueScope Steel Port Kembla Steelw
orks-Port Kembla,NSW,Australiaからのオフガスの、典
型的な汚染を引き起こす成分の詳細を示す。
【表2】
1点線源放出は、通気口または排気筒内へ流れ、単一の点線源を通して大気に放出され
る。ボイラの排気システムまたは定置式燃焼エンジン動力機器が、例である。
漏洩排出は、通気口または排気筒を介して放出されない排出である。漏洩排出の例は、
車両からの排気物質、車両の燃料タンクからの蒸発ガス、バットからの蒸気の揮発、また
は燃料及び他の揮発性有機液体貯蔵タンク、開放容器、流出物及び材料の取り扱いを含む
。リッジラインルーフ通気口、ルーバー、建物の開き扉、機器の漏れ、弁の漏れ、及びフ
ランジからの排出が、漏洩排出の他の種類である。
【0064】
下記で説明されるように、本明細書で説明されるガス試験装置及び方法において特に便
利である、特定の種類のバイオリアクタは、ガスC1含有基質が、連続する液相における
細菌培地を含有するリアクタの下端で、またはその近くで、ライザー部の底内へ典型的に
分配される(例えば、散水される)循環ループリアクタである。上昇する気泡は、あらゆ
る消費されない、及び溶解されないガスが、液面の上方であり、リアクタの上端に延びる
、連続する気相に放出される(即ち、蒸気空間またはヘッドスペース)まで、連続する液
相を通して上向きの動き中にライザー部に留められる。ライザー部における連続する液相
の循環は、比較的低密度の中央部に、誘発されてもよく、少ないガスホールドアップを有
する、または全くガスホールドアップを有さない、比較的高密度の周辺(外)部との組み
合わせで、その中央部を通して上昇する気泡の大半が通る。したがって、内部の液体循環
は、中央部における液体の正味の上方移動、及び周辺部における正味の下方移動を通して
確立されることができる。下記でより詳細に説明されるように、循環ループリアクタを含
むバイオリアクタステージは、好ましくはリアクタの底端からの液体の取り出しと、リア
クタの上端への取り出された液体の導入とを通して、リアクタの外部に、強制的な液体循
環をさらに含み、それによって、リアクタヘッドスペースにおいてガス-液体の流れの逆
流を提供してもよい。
【0065】
「バイオリアクタ」という用語、ならびにガス試験装置の「バイオリアクタステージ」
の一部として含まれてもよい所与のバイオリアクタは、循環ループリアクタに限定されな
いが、より幅広く、本明細書で説明される生物学的プロセスを実行するために使用されて
もよい、C1固定性微生物を有する培地の液体の体積を維持するための、任意の好適な容
器、または容器内の部分を含み、これは、一般的に嫌気的に行われる程度まで、発酵プロ
セスと呼ばれてもよい。バイオリアクタの特定の種類は、2つの相(ガス-液体)の接触
、例えば、逆流フローリアクタ(例えば、上向きに流れる気相及び下向きに流れる液相を
有する)、または並流フローリアクタ(例えば、上向きに流れるガス及び液体の相を有す
る)に好適な任意の容器を含むことができる。このような2つの相の接触容器において、
液体の動いているカラムを通って流れる気泡の場合のように、液相が連続相になることが
可能である。そうでなければ、蒸気空間を通って流れる分散された液体(例えば、液滴の
形状で)の場合のように、気相が連続相になることが可能である。循環ループリアクタの
場合におけるように、バイオリアクタの異なる域は、連続液相及び連続気相を含有するよ
うに使用されてもよい。
【0066】
バイオリアクタの具体的な例は、連続撹はん槽反応器(CSTR)、固定化細胞リアク
タ(ICR)、トリクルベッドリアクタ(TBR)、移動床型生物膜リアクタ(MBBR
)、気泡塔、ガスリフト発酵槽、及び中空糸の膜バイオリアクタ(HFMBR)などの膜
リアクタを含む。好適なバイオリアクタは、ガス状CO含有基質を液体細菌培地(例えば
、生物学的変換を実行するために好ましい溶解及び大量輸送動力を有する)接触のために
構成された、静的ミキサ、または他の容器、及び/または装置(例えば、塔または配管配
置)を含んでもよい。「複数のバイオリアクタ」または「複数のバイオリアクタステージ
」に含まれてもよい、バイオリアクタという句は、いくつかの場合では、複数のバイオリ
アクタは1つの種類のものであり得るが、単一の種類以上のバイオリアクタを含むことを
意味する(例えば、循環ループリアクタ)。
【0067】
本明細書で説明される生物学的プロセスにおける使用のための、いくつかの好適なプロ
セス流、操作パラメータ、及び機器は、全体が参照によって本明細書に組み込まれる米国
特許出願公開番号2011/0212433で説明される。
【0068】
特定の実施形態は、試験C1含有基質の性能を評価するための第1のバイオリアクタス
テージと、基準C1含有基質の性能を評価するための第2のバイオリアクタステージとを
含むガス試験装置に関係する。分析部は、第1及び第2のバイオリアクタのガス及び液体
の両方の生成物の分析用に構成される。ガス試験装置は、約6m3未満(例えば、約0.
5m3~約6m3)、典型的に約3m3未満(例えば、約1m3~約3m3)、及び、し
ばしば2.5m3未満(例えば、約1.5m3~約2.5m3)の体積を一般的に有する
容器内に、収容される、または少なくとも収容されることができる。このようなサイズの
制約の観点から、ガス試験装置は、例えば、試験(または現地)C1含有基質及び、選択
的に、現地の水源などの他の現地付加物を評価するために、複数の位置に輸送可能である
。さらなる代表的な実施形態によると、ガス試験装置は、それぞれ約1.8メートル未満
の長さ、幅、及び高さ寸法を有する(例えば、これらの寸法の各々が約1.0メートル~
約1.8メートルの範囲内である)、または、それぞれ約1.6未満である(例えば、こ
れらの寸法の各々が約1.0メートル~約1.6メートルの範囲内である)、箱、または
他のコンテナ内に収容される、または収容されることができる。このような箱、または他
のコンテナは、約1.6メートル未満である長さ、幅、及び高さ寸法の1つ(例えば、約
1.0メートル~約1.6メートルの範囲内)、及び約1.3メートル未満であるこれら
の寸法の他の2つ(例えば、約0.8メートル~約1.6メートルの範囲内)を有しても
よい。
【0069】
他の実施形態は、生物学的プロセスにおける使用のための試験C1含有基質の好適性を
評価するための方法に関する。本方法は、(a)基準C1含有基質をC1固定性微生物の
第1の培養物を含有する第1の(基準)バイオリアクタに供給する工程と、(b)試験C
1含有基質をC1固定性微生物の第2の培養物を含有する第2の(試験)バイオリアクタ
に供給する工程とを含む。本方法は、(c)第1及び第2のバイオリアクタの性能を判断
するために、第1及び第2のバイオリアクタのガス及び液体生成物の両方を分析すること
をさらに含む。試験C1含有基質の好適性は、第2のバイオリアクタの性能に対する、第
1のバイオリアクタの性能の比較から確立される。好ましくは、上述の工程(a)及び(
b)の少なくとも一部は、同時に実行される(即ち、これらの工程の少なくとも一部の時
間が重なる)。典型的に、工程(a)及び(b)は、生物学的変換プロセスを実行するこ
とにおける微生物培養の性能を評価するために、数日(例えば、約3日~約21日など、
少なくとも約3日、約5日~約21日など、少なくとも約5日、または約7日~約14日
など、少なくとも約7日)の、同時の操作期間、または試験期間、同時に(または少なく
とも実質的に同時に)実行される。例えば、1つの実施形態によると、試験C1含有基質
が第2のバイオリアクタに供給される工程(b)の持続期間の全体は、基準C1含有基質
が第1のバイオリアクタに供給される工程(a)の持続期間によって包括されてもよい。
これは、例えば、基準C1含有基質を使用して第1と第2のバイオリアクタの両方の操作
を開始する場合に生じ、その後に、基準C1含有基質から第2のバイオリアクタへの供給
を、試験C1含有基質に変更することが続く。したがって、代表的な実施形態では、本方
法は、工程(b)の前に、基準C1含有基質を第2のバイオリアクタに供給することをさ
らに含んでもよい。
【0070】
試験C1含有基質を評価することに加えて、代表的な方法は、代替的に、または組み合
わせで、比較性能を決定する、または評価することによって、本明細書で説明される装置
及び方法を使用して、現地の水源などの現地付加物を評価する。例えば、水質を評価する
場合、異なる水源が、第1及び第2の細菌培養を、調製する、及び/または補う(例えば
、新鮮培地で)使用されてもよい。1つの実施形態によると、現地の条件は、試験C1含
有基質をこの培養に供給する工程と組み合わせて、第2のバイオリアクタの細菌培養を調
製する、及び補うために(例えば、追加された新鮮培地において)、現地の水源(例えば
、現地の処理水または現地の飲料水)を使用することによって評価されてもよい。別の実
施形態では、同じ現地の水源は、試験C1含有基質自体が同じ水源を使用し、基準値に対
して評価されることができるように、両方のバイオリアクタの細菌培養を作製する、及び
補うために使用されてもよい。さらに他の実施形態では、同じC1含有基質(例えば、基
準または試験C1含有基質のいずれか)は、異なる水源のみの効果を評価するために(例
えば、蒸留水などの精製された水源と比べられる、現地の処理水源または現地の飲料水源
)、両方のバイオリアクタに供給されてもよい。
【0071】
さらに他の実施形態は、試験C1含有基質が生物学的変換プロセスを補助するかを決定
するための方法に関する。代表的な方法は、(a)基準C1含有基質を、エタノール及び
少なくとも1つのさらなる代謝物質を生成するための栄養としてそれぞれ利用して、C1
固定性微生物の別々の第1及び第2の培養物を維持する工程と、(b)第2の培養物への
栄養として、基準C1含有基質から、試験C1含有基質へと変える工程とを含む。本方法
は、(c)同じ一連の対象操作条件下(例えば、自動的に、及び/または手動で制御され
た操作パラメータ、例えば、いくつかの場合ではバイオリアクタpHの操作セット点)で
あるが、異なる基準及び試験CO含有基質を使用して、第2の培養物の性能と比較して、
第1の培養物の性能を評価することをさらに含む。本方法は、(d)工程(c)における
第2の培養物の最小限の性能低下(またはオフセット)を得ない場合、試験C1含有基質
が生物学的変換プロセスを補助すると確認することをさらに含む。本方法は追加で、(e
)工程(c)において、最小限の性能低下を得る場合、またはより大きな性能低下を得る
場合、工程(c)において、性能を評価するために使用される試験C1含有基質と比較し
て、より高い質の試験C1含有基質を提供するために、試験C1含有基質の前処理をする
、または既存の前処理を強化する工程とを含む。
【0072】
代替の実施形態によると、上記の方法における工程(e)は、前処理をする、または既
存の前処理を強化することによって、試験C1含有基質の質を向上させる他に修正測定を
含んでもよい。例えば、このような修正手段は、現地の水源などの現地付加物の質を向上
させること、またはそうでなければ、より高い質の付加物、例えば、現地の処理水に対し
て現地の飲料水を代替することを含んでもよい。他の修正手段は、バイオリアクタ温度、
圧力、及び/またはpHなどの操作条件の調整を含んでもよい。修正手段の任意の種類は
、細菌培養物(例えば、第3の培養物)での第2のバイオリアクタの再植え付けを伴って
もよく、修正手段を試験するための再植え付け培養物の性能に比べて、第1の培養物(ま
たは基準C1含有基質を栄養として利用する他の培養物、または他の基準条件)の性能を
評価すること(例えば、同じ一連の対象操作条件下であるが、異なる、基準、及びより高
い質の試験C1含有基質を使用して、及び/または異なる基準、及びより高い質の付加物
を使用して、及び/または調整された操作条件を使用して)が続く。再植え付け培養物(
例えば、第3の培養物)の最小限の性能低下を得ない場合、本方法は、修正手段(例えば
、より高い質の試験C1含有基質、及び/またはより高い質の付加物、及び/または調整
された操作条件)が生物学的変換プロセスを補助すると確認することをさらに含む。この
方式では、多数の修正手段(例えば、漸進的に、より高度に精製されたC1含有基質)は
、例えば、逐次的な方式で、本明細書で説明されるガス試験装置を使用して評価されても
よい。いくつかの実施形態によると、試験/評価方法は、少なくとも1つの試験C1含有
基質の質、付加物の質、及び/または操作条件のセットが、生物学的変換プロセスを補助
することが、確立される/確認される場合、完了されてもよい。
【0073】
図1Aは、後部の「湿式」またはバイオリアクタステージ含有部200と、前部の「乾
式」または分析部300との両方を有する、代表的なガス試験装置1の側部の切取図を示
す。好ましくは、これらの部分200、300は、これらの部分に収容された機器を囲む
周囲環境が相互に混ざることを防ぐ、または少なくとも妨げる、縦の仕切り250などの
障壁によって分離される。部分200におけるバイオリアクタステージの代表的なバイオ
リアクタ100は、一般的に約0.25~約5リットル、及びしばしば約1~約3リット
ルの範囲にあるリアクタ体積を有する。このリアクタの体積を保持する(即ち、リアクタ
の気相及び液相の含有物を含有する)、バイオリアクタの典型的な長さは、約0.5~約
1.5メートルである。通常、バイオリアクタ含有部200は、
図1Bからより明らかで
あるように、基準及び試験CO含有基質の両方の性能の同時の評価のための、2つの別々
のバイオリアクタステージを含む。
【0074】
部分200におけるバイオリアクタステージは、外部の液体再生利用ループ25と、任
意のバイオリアクタ100内の混合/均一性を向上させる、及び/またはガス-液体大量
輸送の速度を向上させるための、関連付けられた外部の再生利用(または再循環)ポンプ
30とをさらに含んでもよい。外部の液体再生利用ループ25、培地及びC1固定性微生
物を含む液体生成物を使用することは、バイオリアクタ100(例えば、散布機などのガ
ス分配装置の下から、及び/または液体入口または液体出口の下から)の底部(即ち、底
端の近接部)から取り出されてもよく、バイオリアクタ100(例えば、連続気相域と連
続液相域との間の境界を定めるガス/液体の界面上に)の上部(即ち、反対側の上端の近
接部)の外部に再生利用されてもよい。上述のように、外部の液体再生利用ループ25は
、好ましくは、膜ろ過システム及び関連付けられた清掃手順を含む、C1固定性微生物の
分離及び再生利用に必要とされる追加された複雑性を伴わずに動作する。外部の液体再生
利用ポンプ30は、例えば、エネルギー使用と大量輸送速度の向上との間の最適なトレー
ドオフで、外部の液体循環を所望される速度で提供する。バイオリアクタ100の装着及
び制御に関連付けられた他の構成要素は、例えば、棚201、及びリアクタ温度の制御(
例えば、必要に応じてバイオリアクタ100の温度を上げる、または下げるためのヒート
トレーシング及び/またはファン)に必要とされるものなど、バイオリアクタ100の外
部の追加の機器である、バイオリアクタステージを含む部分200内に含まれてもよい。
【0075】
分析部300は、バイオリアクタステージ10から取得されたガス及び液体生成物の両
方の分析用にそれぞれ構成された、第1及び第2のクロマトグラフィーカラム302a、
302bを含む、ガスクロマトグラフィー(GC)分析装置301を含む。このような構
成は、液体生成物における代謝濃度の分析用の高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)
の従来の使用とは異なる。本発明の実施形態は、液体生成物分析用のHPLCの使用を含
むが、ガス試験装置の全体的な分析の要件が単一のGC分析装置に統合される場合、空間
が有利に節約されることが分かっている。一般的に、ガス及び液体生成物の分析用に使用
されるカラムは、所望されるクロマトグラフィー分離を実行するための異なる種類の固定
相(例えば、樹脂)を含有する。分析部300内の他の機器は、電気部品303と、必要
なディスプレイインターフェース304(例えば、コンピュータ)を有する操作ソフトウ
ェアと、及びユーティリティボックス305とを封入する、GC分析装置301用の基準
値ガス源としての使用のための、高純度の空気発生装置(図示されない「ゼロエア」発生
装置)を含んでもよい。特に、不良な、または信用できない通信サービスを有する、予想
される設置現場における使用における場合に、ガス試験装置1から、場所から遠隔であっ
てもよい(例えば、現場から、少なくとも100マイル、少なくとも1000マイル、ま
たは少なくとも5000マイルでも、離れた)第2の設備にデータを送信するために衛星
通信システム315も含まれてもよい。例えば、第2の設備は、リアルタイムでガス試験
装置の操作に利益を有する、生物学的変換プロセスのデベロッパーまたはライセンサーで
あってもよい。したがって、衛星通信システム315は、推奨された操作パラメータ調整
または、特定の処理工程(例えば、ガス前処理)における変更または追加など、ガス試験
装置1に関する操作指示を提供することにおける使用のための情報を第2の設備に送信し
てもよい。他の実施形態によると、衛星通信システム315は、本明細書で説明される様
々な操作パラメータを含む、ガス試験装置1の操作の直接的な制御を可能にしてもよい。
さらに、底ドロワ306などの補助部品、ベンチ(図示せず)、及び/またはグリルファ
ン(図示せず)は、分析部300にさらに含まれてもよい。
【0076】
図1Aに示されるように、ガス試験装置1の構成要素は、コンテナ500内に収容され
、それが特定のC1含有基質の現場での評価のために遠隔地へ容易に輸送可能にしている
。この輸送性は、有利に、組成物における組成及び揺らぎの両方について、固定の研究所
の現場、パイロット工場、またはデモンストレーションユニットで、商業用ガス流を再生
成する試みに固有の、誤解を招く可能性がある(及び費用がかかる)不正確さを避ける。
平均サイズの人間600の描写は、コンテナ500の典型的な寸法の代表を提供する。上
部を覆う分析部300で、コンテナ500は、コンテナを開けて、分析部300を有する
機器へのより良いアクセスを可能にするためのヒンジ接続550などの接続を有してもよ
い。コンテナ500は完全に封入するガス試験装置1を必要とせず、排気ファンの動作に
必要とされる開口のような開口は、コンテナ500に設けられてもよいことが理解される
べきである。コンテナ500が開口または露出された領域(または開口されてもよい領域
)を含むという点で、ガス試験装置1は、そうでなければ、上述されたような寸法を有す
る完全に閉じられたコンテナ内に少なくとも収容されることができる。
図1A及び
図1B
に示されるように、コンテナ500は、パレット575上に輸送されてもよく、フォーク
リフト受け開口590に係合するフォークリフトトラックを介して、比較的短距離を移動
されてもよい。
【0077】
図1Bの後部切取図は、基準及び試験C1含有基質の性能をそれぞれ評価するための、
各バイオリアクタステージ10a、10bの2つのバイオリアクタ100a、100bを
例証する。これらのバイオリアクタの各々は、
図1A、
図1Bに関して上述されたように
、外部の液体再生利用ループ25を備えてもよく、したがって、「湿式」またはバイオリ
アクタステージを含む部分200のより完全な図を提供する。リアクタの温度(上述)を
規制するために使用される操作制御システムに加えて、または代替して、他の操作制御シ
ステムが部分200内に少なくとも部分的にあってもよいが、フィードバック制御ループ
に関連付けられた計測ソフトウェアは、好ましくは、分析部300内に含まれてもよい。
このような追加の操作制御システムは、新鮮培地の追加速度、ガスC1含有基質の供給速
度、及びリアクタpHなどの操作パラメータを制御するために使用されてもよい。界面活
性剤の追加速度を制御する場合、可変速度ポンプ202a、202b(例えば、シリンジ
ポンプ)が、バイオリアクタ100a、100bに界面活性剤を個別に供給するために使
用されてもよい。ガスC1含有基質供給速度を制御する場合、所望されるガス流速と、弁
の上流(供給圧力)及び弁の下流(操作圧力)の予定される圧力とに従うサイズの、適切
な流れ制御弁が使用されてもよい。リアクタpHを制御する場合、バイオリアクタステー
ジに導入される(例えば、
図1Aに示される再生利用ループ25内へ)塩基性中和剤の量
は、可変速度ポンプで制御されてもよい。代表的なpH制御システムは、
図2についてよ
り詳細に説明される。
【0078】
図1Bに示されるように、合計で6つのポンプが含まれ、これらのうちの3つのポンプ
206aは、第1のバイオリアクタ100aに塩基性中和剤及び他の処理液(Na
2S、
培地など)を運ぶために使用され、3つの他のポンプ206bは、第2のバイオリアクタ
100bにこれらの液体を運ぶために使用される。さらに、CO含有基質流速ディスプレ
イ/制御装置207a、207b、新鮮培地流速ディスプレイ/制御装置208a、20
8b、及びリアクタ温度ディスプレイ/制御装置209a、209bを含む、各バイオリ
アクタステージに関係づけられた操作パラメータに関係するディスプレイ及び制御装置が
、バイオリアクタを含む部分200内に収容される。これらのディスプレイ/制御装置は
、操作者のアクセス/視認の簡便性のために折り畳みパネル(図示せず)に含まれてもよ
い。分析部における衛星通信システムの使用に関して上述したように、代替の実施形態に
おいて、衛星通信システム315は、上述したのと同じ機能性を有して、バイオリアクタ
を含む部分200内に同様に存在してもよい。
【0079】
図1Bにさらに例証されるように、バイオリアクタを含む部分200内の機器は、投入
されるものの供給、及びバイオリアクタ100a、100bから取り出された生成物の直
接の取り扱いに関連付けられた機器を含む。このような機器の例は、新鮮培地コンテナ2
03a、203b及び液体生成物廃棄コンテナ204a、204b、ならびにそれに関連
付けられたバイオリアクタ100a、100bへの接続である。この部分における機器の
さらなる例は、様々な目的の役割をする気泡205a、205bである。例えば、特定の
実施形態では、各バイオリアクタ100a、100bは、これらのリアクタからのガス生
成物と流体連通する一連の2つ以上のバブラーを有してもよい。各バイオリアクタの直接
の下流の1つ以上の空のバブラーを、バイオリアクタの溢れる液体からの保護手段として
使用することが可能である。ガス試料が分析される場合、1つ以上の液体で満たされたバ
ブラーが、ガス生成物をGCに迂回させるための背圧の源を提供するために、1つ以上の
空のバブラーの下流で使用されてもよい。バイオリアクタを含む部分200は、この部分
における新鮮な空気の循環を可能にするための、排気ファン及び排気口(図示せず)をさ
らに含んでもよい。これは、漏洩の場合に、この部分におけるC1炭素源(例えば、CO
、CO
2、CH
4)の、健康上の危険性または爆発の危険性の観点による危険な度合いま
での蓄積を妨げる、または防ぐことができる。これに関して、C1ガス検出器210(例
えば、CO検出器)を含む安全制御システムが、バイオリアクタを含む部分200にさら
に含まれてもよい。安全制御システムは、上述された操作制御システム(例えば、ガスC
1含有基質供給速度を制御するための)のうちの1つ以上、例えばすべてを無効にするよ
うに構成されてもよい。例えば、安全制御システムは、閾値濃度(例えば、警告閾値濃度
)を上回る環境C1濃度の測定に応じて、試験C1含有基質、及び/または基準C1含有
基質の、好ましくは両方の、流れを一時停止してもよい。
【0080】
図2は、基準及び試験C1含有基質のそれぞれの比較性能評価のために使用される、バ
イオリアクタ100a、100bについての動作のさらなる詳細を提供する。代表的なプ
ロセスによると、これらのC1含有基質は、各バイオリアクタステージの縦方向に延びる
バイオリアクタ100a、100bの底端に近接して配置されるガス入口12a、12b
を通して、バイオリアクタステージに供給される。例えば、ガス入口は、各バイオリアク
タの長さの、底25%内、及び好ましくは底10%内の各バイオリアクタ内に延びてもよ
い。ガス入口は、通常、リアクタの長さのこれらの割合内に一般的に対応する高さで、バ
イオリアクタ内で中央に配置されてもよいガス分配装置まで、各バイオリアクタ内に延び
る。詳細なガス分配装置は、それぞれの第1の端部に近接して、ガス入口が流体連通して
もよい散布機14a、14bを含む。変換されていないC1炭素源と、生物学的変換反応
において利用されないC1含有基質の任意のガス不純物(例えば、H
2)とを含むガス生
成物は、各バイオリアクタから引き出され、底端の反対の、バイオリアクタの上端に近接
して配置される、ガス出口16a、16bを通って出る。ガス出口は、各バイオリアクタ
の長さの、上25%内、及び好ましくは上10%内の各バイオリアクタ内に延びてもよく
、または、そうでなければ、各バイオリアクタ内に延びるガス出口を全く有さずに、ガス
生成物が各バイオリアクタの上部から引き出されてもよい。
【0081】
液体生成物(または「培養液」)は、液体生成物が引き出されるバイオリアクタ100
a、100bの底部から、バイオリアクタの上部へ(例えば、バイオリアクタ100a、
100bの長さの上10%内へ、及び、それを通して液体生成物が連続気相域に導入され
るシャワーヘッド110a、110bなどの液体分配装置の上方へ、液体再生利用ポンプ
30a、30bを使用して、例えばポンピングによって、外部の液体再生利用ループ25
a、25bを通して再生利用されてもよい。次に、この液体は、ガス/液体インターフェ
ース22a、22bで係合が外れ、連続気相域を通って(大量に)上向きに流れ続けるガ
スと接触する。この方式で、バイオリアクタ100a、100bは、連続液相領域の上方
に配置される領域において、逆流のガス及び液体の流れ(上向きに流れるガス、及び下向
きに流れる液体)で動作し、上述されたような内部液体循環で動作する。
【0082】
「リアクタの長さ」に関する様々な特徴の位置を定義することにおいて、この長さは、
一般的に「リアクタの体積」または「リアクタの作動体積」として考えられる、リアクタ
の内容物(反応物の混合物及び反応生成物)を含む部分の長さを指し、この長さは、リア
クタの体積の上方または下方に延びてもよい処理ライン(例えば、供給入口ラインまたは
生成物出口ライン)、または、リアクタを収容するが、あらゆるリアクタ内容物を含まな
い、カラムまたは他の容器の部分を含まない。例えば、円筒状のリアクタの場合、リアク
タの長さは、円筒の軸の長さを指す。リアクタの長さの「底10%」は、リアクタの底か
ら始まり、リアクタの長さの10%だけ上向きに延びる、高さの範囲を指す。リアクタの
長さの「上10%」は、リアクタの上から始まり、リアクタの長さの10%だけ下向きに
延びる、高さの範囲を指す。
【0083】
バイオリアクタ100a、100bは、新鮮培地を導入のための液体入口18a、18
b、及び、エタノール及び他の代謝物質の濃度、ならびに所望される場合、C1固定性微
生物の濃度を判断するために試料採取されることができる、リアクタの液体生成物を引き
出すための液体出口20a、20bをそれぞれ含む。新鮮培地のバイオリアクタ100a
、100bの各々から液体生成物(または「培養液」)への、入口及び出口18a、18
b、20a、20bを介した移動は、これらの入口及び出口と流体連通にある小径孔が開
いた管(例えば、約1mm~約6mmの内径を有する)を通して起こってもよい。バイオ
リアクタ100a、100bから引き出された液体生成物は、作動ガス非供給液面(即ち
、ガスホールドアップを有さずに存在する液面)に対応する、高さHを通ってもよく、選
択的にその上方を延びてもよい。即ち、最終段階の液体生成物が延びる最も高い高度Eは
、高さHであってもよく、または高さHを上回ってもよい。高さHは調整可能であっても
よく、サイフォンブレイカー75a、75bまたは他の種類の液体引き出し点の高さHに
実質的に対応してもよい。したがって、
図2の実施形態では、液体生成物出口20a、2
0bは、バイオリアクタ100a、100bに対して、高さが調整可能であるサイフォン
ブレイカー75a、75bと流体連通にある。高度E及び高さHは、液面または水頭、即
ち、各バイオリアクタ100a、100bにおけるガス/液体の界面22a、22bのレ
ベルを、個別に調節するために規制されてもよい。
【0084】
図2に示された具体的な実施形態では、液体入口18a、18b、及び液体出口20a
、20bは、好ましくは、各ガス入口12a、12b及び散布機14a、14bの下の静
止部に配置され、液体が、所与のバイオリアクタステージのこの部分またはリアクタ位置
に供給される、及びこの部分またはリアクタ位置から引き出されることを可能にする。し
かしながら、液体生成物の供給及び引き出しのための所望される位置によって、入口及び
出口が、各バイオリアクタの長さに沿ったどこかに配置されることも可能である。代替の
実施形態では、例えば、液体の引き出しの高さで溢れることに基づいて液面制御を提供す
るために、液体出口は、例えば、ガス/液体界面22a、22bのレベルで、またはその
近くに配置されてもよい。
【0085】
便利に、外部の液体再生利用ループ25a、25bは、バイオリアクタ液体試料採取/
分析の位置を提供することができ、バイオリアクタ制御のために構成されることもできる
。例えば、塩基性中和剤(例えば、NH4OH溶液またはNaOH溶液などの塩基水溶液
)が、リアクタpHを制御するための操作制御システムの一部として、塩基性中和剤入口
35a、35bを通して、これらの再生利用ループに追加されてもよい。操作システムは
、測定されたリアクタpHに基づいて、塩基性中和剤の流れを制御するための器具をさら
に含むことができ、より詳細には、バイオリアクタ100a、100bの各々に関連付け
られた好適なフィードバック制御ループを含むことができる。このような制御ループは、
例えば、外部の液体再生利用ループ25a、25b内のバイオリアクタ液のpH値を測定
する(例えば、連続的に、または断続的に)、pH分析装置40a、40bを含む。この
ような制御ループは、必要なハードウェア(例えば、図示されない、制御弁または可変速
度供給ポンプ)と、測定されたpH値を所与のバイオリアクタ用の設定点値と比較し、そ
して塩基性中和剤の流れを制御し、設定点を達成する、または維持するための計測ソフト
ウェア(例えば、コンピュータプログラム)とをさらに含む。
【0086】
したがって、外部の液体再生利用ループ100a、100bは、各塩基性中和剤入口3
5a、35bと流体連通にあってもよく、これらのバイオリアクタ内のpHを個別に制御
するための器具を含んでもよい。外部の液体再生利用ループ25a、25bは、リアクタ
温度などの、他の操作パラメータの制御に関連付けられた器具を含んでもよい。例えば、
バイオリアクタの操作温度の代表である温度で、外部の液体再生利用ループ内の液体の温
度を測定する(例えば、連続的に、または断続的に)温度変換器は、リアクタ温度制御の
ために、上述された、ヒートトレーシング及び/またはファンの操作を規制するために使
用されてもよい。さらに、外部の液体再生利用ループ25a、25bは、他の液体希釈剤
、試薬(例えば、界面活性剤)、及び/または栄養をバイオリアクタ100a、100b
に、同じまたは変化する速度で個別に導入するための、さらなる液体入口45a、45b
を含んでもよい。
【0087】
したがって、バイオリアクタステージ10a、10bは、個別に制御可能なプロセス操
作変数を有してもよく、その制御は上述されたような外部の液体再生利用ループ25a、
25b上のバイオリアクタ液体生成物の試料採取/分析、及び/または新鮮培地、塩基性
中和剤、及び/または他の処理液の、いずれかの入口18a、18b、35a、35b、
45a、45bを通した導入を含んでもよい。代表的なプロセス操作変数は、新鮮培地追
加速度、ガスC1含有基質供給速度、リアクタ温度、リアクタpH、及びそれらの組み合
わせを含む。様々な他の例示の制御方法によると、(1)C1含有基質の流れ(例えば、
バイオリアクタステージ10aへの基準C1含有基質の流れ、及び/またはバイオリアク
タステージ10bへの試験C1含有基質の流れ)は、測定されたリアクタpHに基づいて
制御されてもよく、(2)バイオリアクタステージ10a、10bのいずれか、または両
方への塩基性中和剤の流れは、対応するバイオリアクタ液体生成物における、測定された
酸性代謝物質濃度(例えば、アセテート濃度)に基づいて制御されてもよく、及び/また
は(3)バイオリアクタステージ10a、10bのいずれか、または両方への新鮮培地の
流れは、対応するバイオリアクタ液体生成物における、C1固定性微生物の測定された濃
度に基づいて制御されてもよい。
【0088】
上述されたガス試験装置は、例えば、商業規模の生物学的変換プロセスのための予想さ
れる設置現場で利用可能な、試験C1含有基質を評価するための方法において使用されて
もよい。第1及び第2のバイオリアクタは、基準C1含有基質(例えば、評価方法の持続
時間を通して固定されてもよい、既知の組成のC1炭素源含有ガス)と、鋼製造設備など
の産業設備からの利用可能なC1含有排気ガスであってもよく、1つ以上の汚染物質を除
去するために、選択的に前処理されてもよい試験C1含有基質とを、それぞれ処理するた
めに使用されてもよい。一般的に、前処理は、生物学的変換プロセスに有害である(例え
ば、C1固定性微生物の増殖に害がある)、試験C1含有基質の1つ以上の汚染物質、ま
たは1つ以上の汚染物質の少なくとも一部(例えば、1つ以上の汚染物質の、少なくとも
75%、少なくとも90%、または少なくとも99%)を除去するために実行される。典
型的に、前処理によって除去される、試験C1含有基質における汚染物質は、前処理がな
い場合、同じ条件下で行われる同じプロセスと比べて、生物学的変換プロセスにおいて見
られる性能低下に寄与するものである。汚染物質は、炭化水素(例えば、ベンゼン)及び
ヘテロ原子含有炭化水素(例えば、ハロゲン化された炭化水素、または、ジクロロプロパ
ン、エピクロロヒドリン、及びダイオキシンなど、Cl、O、N、及び/またはSのうち
の少なくとも1つを含有する炭化水素)を含む。このような汚染物質のいずれも、未処理
の試験C1含有基質において、一般的に、少ない量で(例えば、容量で、1%未満、10
00ppm未満、100ppm未満、またはさらに10ppm未満の量で)、存在する。
例示の前処理は、試験C1含有基質を、例えば吸着または溶解によって、1つ以上の汚染
物質を選択的に除去する、固形材料または液体のこすり洗い手段に接触させることを含む
。代表的な固形材料は、炭素(例えば、活性化された炭)、樹脂、及びゼオライトを含む
。他の汚染物質は、フィルタ及び/または液体のこすり洗い手段によって除去され得る、
塵埃粒子、及び他の固形物(例えば、触媒微粒子)を含む。
【0089】
代表的な基準C1含有基質は、純粋なCO、またはCO及び1つ以上の他のガスの合成
混合物(例えば、CO/H2の混合物、またはCO、CO2及びH2の混合物)であって
もよい。1つ以上の他のガスは、およそ同じ濃度で、試験C1含有基質において存在する
ことが既知のガスであってもよい。合成混合物は、性能データが以前に取得され、選択的
に大規模の操作の性能と相関性のある組成物の代表であってもよい。この方式では、基準
C1含有基質の、試験C1含有基質との比較性能は、例えばパイロットプラント規模、デ
モンストレーション規模、または商業規模の操作などの、大規模の操作での、後者の予測
された性能を計算するために使用されてもよい。多くの場合では、純粋なCOまたはCO
の合成混合物を含む基準C1含有基質は、圧力をかけられた筒からバイオリアクタの1つ
または両方に補給されてもよく、及び供給されてもよい。好適な圧力規制弁(または一連
の弁)を使用して、筒の圧力下流は、バイオリアクタの動作圧力(例えば、0~5バール
の絶対圧力)に減少されてもよい。
【0090】
基準及び試験C1含有基質をそれぞれ処理する、第1及び第2のバイオリアクタの性能
は、試験C1含有基質の好適性を確立するための基準として決定されてもよく、及び比較
されてもよい。この目的のために、本明細書で説明されるようなガス試験装置は、第1及
び第2のバイオリアクタのガス及び液体生成物の両方を分析するために構成されてもよい
。例えば、ガス生成物は、基準及び試験C1含有基質におけるC1ガスの、細菌培養物に
よる消費に続いて、残存しているC1ガスの量を決定するために分析されてもよい。バイ
オリアクタの基質利用の全体は、そのバイオリアクタに投入され、所望される生成物(例
えば、エタノール)及び微生物の他の代謝物質への変換において利用される、基質の割合
を指す。例としてCO含有ガスを使用し、バイオリアクタを出るガス生成物の組成が決定
される場合、CO利用(分画と表現される)全体が、次のように計算されてもよい。
1-(バイオリアクタを出るCOの割合)/(バイオリアクタに投入されるCOの割合)
【0091】
ガス試験装置は、これらのバイオリアクタ間の比較のための1つの性能パラメータとし
て、バイオリアクタの各々におけるC1炭素利用の決定のために、十分な情報(例えば、
供給及び生成物ガス流速及び組成)を提供することができる、または少なくとも提供する
ことができる。このC1炭素源利用は、より高い合計利用値を提供することができる、ガ
ス生成物再生利用の使用(及び追加された費用)を計算することなく、「通過ごとに」ま
たは「ワンススルー」ベースで決定される。しかしながら、通過ごとのC1炭素利用は、
このような再生利用を利用するプロセスの合計C1炭素利用を予測するために、モデリン
グにおいて使用されることができる。
【0092】
ガス試験装置からの他の分析結果は、基準及び試験C1含有基質で動作するバイオリア
クタ間の性能の比較において使用されることができる。例えば、エタノール、及びアセテ
ート、ならびに2,3-ブタンジオールを含む他の代謝物質の濃度(力価)を決定するた
めに、典型的に、C1固定性微生物の分離(例えば、ろ過によって)の後に、これらのバ
イオリアクタから得られる液体生成物が分析されることができる。例えば、GC分析装置
を使用して、これらの濃度のすべてが、リットルあたりのグラム、g/lで、得られても
よい。いくつかの場合では、好適な分析装置が、ガス試験装置に含まれてもよく、または
そうでなければ、液体生成物におけるC1固定性微生物の濃度の測定のために別々に使用
されてもよい。代表的な装置は、試料を通した電磁気エネルギーの吸収度または伝送(例
えば、分光測光器)、試料の特定の生物学的活動(例えば、プレートリーダ)、または使
い捨て、または再使用可能なプローブ(例えば、オンラインバイオマスプローブ)におけ
る試料の別の性質(例えば、インピーダンス/容量)を測定する装置を含む。ガス及び液
体生成物の分析は、連続的に(例えば、オンライン分析器を使用して)、または断続的に
実行されてもよい。分析はまた、試料の調製における柔軟性、及び機器の要件の減少のた
めにしばしば好まれる、GCなどの分析装置への手動の注入で、自動または手動で行われ
てもよい。例えば、バイオリアクタの液体生成物の自動化された分析のための試料採取シ
ステムは、所望される時点での所望されるバイオリアクタの試料採取を可能にするために
好適な導管(例えば、管または配管)、弁、ポンプ、及びアクチュエータ、ならびに正確
な結果を得るために試料ラインを流す(浄化する)のに好適な装置を含むことができる。
これらを考慮して、及び特定の実施形態によると、ガス生成物の分析は、自動的に実行さ
れてもよく、液体生成物の分析は、手動で実行されてもよい。
【0093】
経時的なバイオリアクタのガス及び液体生成物の分析は、選択的に、上述されたような
前処理が施された、所与の試験C1含有基質の好適性を確立するための基準として使用さ
れる、1つ以上の性能パラメータの監視を可能にする。第1のバイオリアクタ(基準C1
含有基質を処理する)の性能の、第2のバイオリアクタ(試験C1含有基質を処理する)
の性能に対する比較は、一般的に、1つ以上の測定された性能パラメータが、第1のバイ
オリアクタ(またはバイオリアクタ培養物)に対して、第2のバイオリアクタ(またはバ
イオリアクタ培養物)について、実質的に逸脱する(即ち、性能低下またはオフセットを
示す)かどうかを評価することを含んでもよい。例えば、バイオリアクタの性能は、本明
細書で説明されるように、操作の同時の期間、または試験期間、比較されてもよい。第1
及び第2のバイオリアクタの操作期間(即ち、これらのバイオリアクタが基準及び試験C
1含有基質がそれぞれ供給される時期)の性能に関する十分なデータを得るために、バイ
オリアクタのガス及び液体生成物は、連続的でないとしても、断続的に、十分な試料採取
間隔で各バイオリアクタ操作期間、分析されてもよい。代表的な試料採取間隔は、約15
分~約10時間の範囲であり、通常、約30分~約8時間である。特定の実施形態による
と、ガス生成物は、約30分~約2時間の範囲の間隔で試料採取され、及び分析され、液
体生成物は、約4時間~約8時間の範囲の間隔で試料採取され、及び分析される。好まし
くは、ガス及び液体生成物試料は、バイオリアクタ試験期間中、実質的に一定の間隔で、
採取され、分析される。
【0094】
上述されたように、バイオリアクタ間で比較されてもよい1つの性能パラメータは、C
1炭素源の利用である。他の性能パラメータは、バイオリアクタの液体生成物におけるエ
タノール濃度(力価)、及び/またはこれらの液体生成物における1つ以上の代謝物質(
例えば、アセテート)の濃度を含む。さらなる性能パラメータは、液体生成物における所
与の代謝物質に対するエタノールの比(例えば、エタノール/アセテート重量比)である
。所与の試験C1含有基質の好適性は、これらの性能パラメータのうちの1つ以上が、第
2のバイオリアクタ(またはバイオリアクタ培養物)について、第1のバイオリアクタ(
またはバイオリアクタ培養物)に対して、実質的に異ならない場合、確立されてもよい。
いくつかの実施形態によると、許容されてもよい相違の閾値レベルは、第1のバイオリア
クタに対する、第2のバイオリアクタの最小限の性能低下(またはオフセット)を単位と
して定量化されることができる。
【0095】
例えば、上述された性能パラメータの場合、性能低下は、試験期間の性能パラメータの
平均値(例えば、第2のバイオリアクタのものと比較した、第1のバイオリアクタにおい
て測定されたC1炭素源利用の平均値)に基づいてもよい。例えば、最小限の性能低下は
、測定された性能パラメータの平均値における、少なくとも5%の不足、少なくとも10
%の不足、少なくとも15%の不足、または少なくとも20%の不足であり得る。当業者
に明らかであるように、本明細書を考慮すると、他の特定の最小限の性能低下(例えば、
少なくとも1%の不足~少なくとも75%の不足の範囲内の任意の値)は、特定の性能パ
ラメータ及び他の要因に依存する、好適性を確立するために許容されてもよい閾値差を定
量化するために使用されることができる。さらに当業者に明らかであるように、本明細書
を考慮すると、「不足」は、例えば、(1)第1のバイオリアクタに対する、第2のバイ
オリアクタの平均C1炭素源利用における割合の低下、(2)第1のバイオリアクタに対
する、第2のバイオリアクタの液体生成物における平均エタノール濃度における割合の低
下、(3)第1のバイオリアクタのものに対する、第2のバイオリアクタの液体生成物に
おけるアセテートまたは他の代謝物質の平均濃度における割合の増加、または(4)第1
のバイオリアクタのものに対する、第2のバイオリアクタの液体生成物における所与の代
謝物質(例えば、アセテート)に対するエタノールの平均比における割合の低下など、第
1のバイオリアクタに対する、第2のバイオリアクタの性能における低下を指す。
【0096】
他の実施形態によると、性能低下は、試験期間の性能パラメータの変化の速度(例えば
、第2のバイオリアクタのものに比べた、第1のバイオリアクタにおいて測定されたC1
炭素源利用の変化の速度)に基づいてもよく、したがって、最小限の性能低下は、試験C
1含有基質を使用して達成されるべき、所望される安定度を反映することができる。変化
の速度は、単位時間あたりの測定された性能パラメータにおける平均差(例えば、C1炭
素源利用減の平均%/日)として表現されることができ、または、そうでなければ、指数
関数速度方程式(例えば、指数関数減衰方程式、または1次もしくはより高次の反応速度
方程式、または動的表現)などのモデル方程式に性能パラメータの測定された値を入れる
ことから得られる速度定数で表現されることができる。変化の速度が所与の性能低下の基
準として使用される、このような場合、代表的な、上述されたような最小限の性能低下(
割合での)は、依然として適用可能である。また、このような場合、「不足」は、また、
例えば、(1)第1のバイオリアクタに対する、第2のバイオリアクタの、C1利用減の
平均速度、または関連する減衰速度定数における割合の増加、(2)第1のバイオリアク
タに対する、第2のバイオリアクタの液体生成物における、エタノール濃度減の平均速度
、または関連する減衰速度定数における割合の増加、(3)第1のバイオリアクタのもの
に対する、第2のバイオリアクタの液体生成物における、アセテートまたは他の代謝物質
の濃度の増加の平均速度、または関連する速度定数における割合の増加、または(4)第
1のバイオリアクタのものに対する、第2のバイオリアクタの液体生成物における、所与
の代謝物質(例えば、アセテート)に対するエタノールの比の減少の平均速度、または関
連する速度定数における割合の増加など、第1のバイオリアクタに対する、第2のバイオ
リアクタの性能における低下を指す。
【0097】
他の性能パラメータ、または性能パラメータにおける他の変化は、本明細書を考慮して
、当業者に明らかであるように、所与の試験C1含有基質の好適性を確立するための基準
として使用されてもよい。通常、試験C1含有基質の好適性を確立するための基準として
使用される、バイオリアクタの性能間の比較は、第1及び第2のバイオリアクタのガス生
成物における少なくとも1つのC1炭素源の少なくとも濃度を測定する工程と、これらの
リアクタの液体生成物におけるエタノール、及び少なくとも1つのさらなる代謝物質(例
えば、アセテート)の濃度を測定する工程とを含む。多くの場合、第1のバイオリアクタ
に供給するために使用される基準C1含有基質の組成は既知であり、したがって、試験期
間中に連続的、または周期的に分析されない。これは、試験期間に対応してもよい、少な
くともいくらかの限定された操作期間(例えば、約1~約5日の範囲)での、試験C1含
有基質の場合においても同じである。他の実施形態によると、試験C1含有基質の組成は
、試験期間中に大きく変動し得、このような変動は、商業の実務で遭遇される、現実的な
組成範囲下で性能を評価するために貴重であり得る。特定の実施形態では、試験C1含有
基質におけるC1炭素源または他のガスの濃度は、最大及び最少濃度が試験期間中に測定
された、100%x(最大濃度/最少濃度-1)を基準に、少なくとも20%(例えば、
約20%~約500%)変動し得る。他の実施形態では、この偏差は、少なくとも50%
(例えば、約50%~約100%)の、少なくとも約40%(例えば、約40%~約25
0%)であり得る。
【0098】
図3に示された特定の方法によると、例えば、C1固定性微生物を使用する、C1炭素
源からのエタノールの生成用の微生物発酵などの生物学的変換プロセスは、基準C1含有
基質を使用して第1及び第2のバイオリアクタの両方(例えば、上述されたような、ガス
の混合物であってもよい、合成ガス)において確立される。この工程では、両方の培養物
用の栄養として基準C1含有基質を利用して、別々の、C1固定性微生物の第1及び第2
の培養物が維持される。プロセスを開始するための1つの可能性のある手順によると、第
1及び第2のバイオリアクタは、C1固定性微生物が最初に植え付けられてもよく、また
は充填されてもよく(例えば、凍結乾燥された形式で)、及び、培養物における回分増殖
の期間の後、微生物は、新鮮培地の連続的な追加が開始されることができるように、十分
に高い濃度を達成してもよい。
【0099】
各実施形態において、培養物は、例えば、回分によって、そして、合計4日の期間、ま
たはより一般的に約1日~約10日、例えば、約2日~約7日、連続する操作によって、
確立される。この期間の後、第2のバイオリアクタに供給された基準C1含有基質は、試
験C1含有基質(処理ガス)に変更され、一方で、基準C1含有基質が、第1のバイオリ
アクタに連続的に供給される。第1のバイオリアクタの動作は、このバイオリアクタの不
良な/不安定な動作の事象において、必要であれば、第2のバイオリアクタに種を付ける
、または植え付けられるために使用されてもよい、安定した微生物培養物(「制御/種培
養」)で維持される。「制御/種培養物」を有する第1のバイオリアクタは、例えば、バ
イオリアクタのガス及び液体生成物から得られた分析結果に基づいて、1つ以上の上述さ
れた性能パラメータを比較することによって、第1の性能に対して、第2の培養物の性能
を評価する期間中に動作される。
【0100】
図3に示されるように、基準から試験C1含有基質への切り替えに続く、第2のバイオ
リアクタにおける安定状態の動作は、3日、またはより一般的に、約1~約7日を要する
。試験C1含有基質は、追加の3日間、またはより一般的に、各試験期間の追加の1~7
日間、安定状態の試験(評価)条件下で、この「実験培養物」に供給されることができる
。試験C1含有基質の好適性を確認するために、ガス及び液体生成物の分析の頻度が、「
実験培養物」の先行する性能評価の頻度と同じ、またはおそらく比較して減少された頻度
で、「安定性試験」の追加の期間が実行されてもよい。確認の安定試験期間は、代表的な
実施形態において、約3日~約28日、及び典型的に約7日~約21日続いてもよい。し
たがって、第2のバイオリアクタは、安定状態条件がこの培養物に対して確立される間、
及び/または安定試験に続く期間の間、実験培養物との性能を監視されてもよい。これら
の期間のいずれか、または両方の間に不安定性が引き起こされる事象において、または、
上述されたような最小限の性能低下が得られる(即ち、上述されたような性能パラメータ
の不足の最小限の許容レベルを超える)事象において、第2のバイオリアクタは、種が付
けられる、または再度植え付けられてもよい。不安定性が引き起こされない(または不安
定性の最少または許容レベルである)事象において、または上述されたような最小限の性
能低下が得られない(即ち、上述されたような、性能パラメータの不足の最少許容レベル
を超えない)事象において、試験C1含有基質が生物学的変換プロセスに好適であること
が確立されることができる、または確認されることができる。
【0101】
第2のバイオリアクタが、種が付けられる、または再度植え付けられる(例えば、第3
の微生物培養物で)ことが必要である場合、第1のバイオリアクタに対する性能評価を行
う、及び/または安定性試験を実行する、第2のバイオリアクタに対する、安定状態動作
を達成する工程を繰り返すことが続く、上述されたような修正手段が、試験されてもよい
。代表的な修正手段は、第2のバイオリアクタへの導入の前に、引き続く強化されたガス
処理(精製)で得られる、より質の高い(例えば、より純粋な)試験C1含有基質である
。修正手段の試験は、本来の試験におけるように、同じ、または異なる最小限の性能低下
を得ることに基づく、性能評価を含んでもよい。
図3に例証されるように、「さらなる安
定性試験」の期間は、修正手段が生物学的変換プロセスに好適であることを確立する、ま
たは確認するために実行されてもよい。さらなる安定性試験の条件及び持続期間は、本来
の安定性試験のものと比べて、同じでもよく、または異なっていてもよい。本明細書を考
慮すると、当業者に明らかであるように、連続する修正手段(例えば、4番目、5番目、
6番目等の細菌培養物を使用する)のさらなる試験が、特に、前の修正手段が成功しなか
った事象において、実行されてもよい。
【0102】
次の例は、本発明の代表として記述される。これら、及び他の等価の実施形態が本開示
及び付属の請求項から明らかであるように、これらの例は、本発明の範囲を限定するとし
て解釈されるべきはない。
【0103】
[実施例1]
(装置構成)
ガス試験装置は、2つの循環ループリアクタ(各リアクタ容量が2リットル)含むバイ
オリアクタ部を有して構築された。C1含有基質(基準及び試験)の制御は、ガス流測定
装置/制御装置の設定に基づき、自動pH補償(制御)システムは、NH4OHの調整ま
たは他の塩基性中和剤流に基づいて、各リアクタ用に含まれた。リアクタステージは、細
菌培養物の分離及び再生利用のための膜分離システムを含まなかった。ヒートトレーシン
グ及びファンは、リアクタ温度制御のためのバイオリアクタ部に設置された。上下方向の
仕切りを使用するバイオリアクタ部から離れて維持される分析部における機器は、二重カ
ラムガスクロマトグラフ(ガス及び液体試料用の別々のGCカラム)と、ガス分析のため
の自動化された試料採取を可能にする弁/アクチュエータとを、含んだ。分析部は、エタ
ノール、酢酸(アセテート)、及び2,3-ブタンジオールの濃度の決定のために、リア
クタからの液体生成物のGC内への手動注入用に構成された。分析の制御及び操作パラメ
ータの処理のためのラップトップコンピュータが、この部分に含まれた。
【0104】
より詳細には、ガスクロマトグラフは、ガス生成物の自動化された、連続の分析を可能
にするために、外部のオーブン、弁、アクチュエータ、及び6ポートの選択弁でカスタマ
イズされた。この弁は、GCも制御し、及びラップトップコンピュータから実行された、
ソフトウェアによって制御された。ループを保持する弁及び試料のみが、主GCオーブン
の外部に構成され、他のカラム部品はオーブン内に配置された。アクチュエータ及び弁の
オーブンからの隔離は、熱膨張及び収縮を防ぐ方法として選択され、それによって、動作
寿命を延長し、保守を減少させた。GCの幅、及びGCの支持部品は、約80cmであっ
た。GCとの使用のための他の機器は、ゼロエア発生装置と、熱伝導(TCD)検出器(
高純度の純アルゴンで動作される)と、水素炎イオン化検出器(FID)(圧縮空気及び
水素で動作される)とを含んだ。
【0105】
バイオリアクタ及び分析部(冷却を可能にするための、約10cmの周辺を有する、G
C及びGCの支持部品を含む)は、輸送用のための、内蔵型の箱内に取り付けられた。例
えば活性炭を使用する、C1含有基質の前処理は、顧客のガスの質に依存して、「箱の外
」の選択肢として考慮された。温度変動の追加の制御/最小化のために、ガス試験装置は
、室内に収容されることができた(例えば、一時的な建物内に)。
【0106】
[実施例2]
実施例1のガス試験装置は、顧客のC1含有基質(試験C1含有基質)の設備試験のた
めの顧客の現場に送られた。試験されるC1含有ガスは、リン生成プロセスの主要な副産
物として生成される産業ガスとしてであった。典型的に、C1含有ガスは、顧客によって
燃やされた。ガス試験装置は、試験C1含有基質が、生物学的変換プロセスによる生成物
への変換に好適であったかどうかを決定するために、現場に送られた。
【0107】
試験C1含有基質の組成が、表3に示される。
【表3】
【0108】
試験C1含有基質のガス浄化は、典型的に、静電集塵装置及び水洗浄機を通って試験C
1含有基質を通過することを含んだ。試験C1含有基質は、既知の汚染物質を除去するた
めにさらに処理された。さらなる処理は、2つの泡洗浄機及び活性炭床の使用を含んだ。
第1の泡洗浄機は、炭酸ナトリウム溶液(5%)を含有し、第2の泡洗浄機は、硫酸銅溶
液を含み、炭素床は、約10kgのCalgon社の「sulfisorb 8 GAC
」を含有した。
【0109】
圧縮空気ガスブースターは、ガス試験装置の入口で2.0バールの最少を提供するよう
に、処理された試験C1含有基質の圧力を増加するために使用されてもよい。
【0110】
試験C1含有基質の好適性を評価するために、顧客の設備で3つの試験動作が実行され
た。試験動作1及び2は、処理された試験C1含有基質を使用して実行され、試験3は、
原料/未処理の試験C1含有ガスを使用して実行された。
【0111】
試験動作1は、次の組成を有する、処理された試験C1含有基質を使用して実行された
。
【表4】
【0112】
液体栄養培地がGST反応容器に追加された。液体栄養培地は、リットルあたり、Mg
Cl、CaCl2(0.5mM)、KCl(2mM)、H3PO4(5mM)、Fe(1
00μM)、Ni、Zn(5μM)、Mn、B、W、Mo、及びSe(2μM)を含有し
た。本培地は、オートクレーブされ、オートクレーブの後、本培地はチアミン、パントテ
ン酸(0.05mg)、及びビオチン(0.02mg)が補給され、3mMシステインH
Clが減少された。
【0113】
窒素ガスが反応容器内に散布され、pH及びORPが調整される。GTS反応容器は、
次に、凍結乾燥されたセルがシリンジを通して植え付けられる。凍結乾燥されたセルは、
DSMZ(The German Collection of Microorgan
isms and Cell Cultures,Inhoffenstraβe 7B
、38124 Braunschweig,Germany)で堆積された、クロストリ
ジウムオートエタノゲナム株DSM23693であった。そして、投入ガスが、窒素ガス
から処理されたC1含有ガスに切り替えられた。
【0114】
試験動作は、5日の期間にわたって実行された。4.2日目、クロストリジウムオート
エタノゲナム培養物の増殖が視覚的に確認された。5日目、発酵培養液のGC分析で、1
.6g/Lのエタノール濃度、及び5.4g/Lのアセテート濃度を確認した。
【0115】
試験動作1で、凍結乾燥された接種物の再生の成功を確認し、培養物の連続的な増殖を
立証し、及び、培養物によるエタノール生成を立証した。試験動作1で、処理された試験
C1含有基質が、生物学的プロセスに好適であることを確認し、増殖に負の影響を有する
、既知ではない汚染物質が試験C1含有基質に存在しないことを立証した。
【0116】
試験動作2は、13%のCO組成を有する、処理されたC1含有基質を使用して実行さ
れた。増殖の視覚的な確認は、3.75日目に確認された。4.75日目に、同時のエタ
ノール生成がない、5~6g/Lの比較的安定した酢酸濃度が示された。この結果は、供
給不足の培養条件と一貫している。入ってくるC1含有物のCO組成は、9.73日目に
72%の濃度まで増加された。次の3日にわたって、観測されたエタノールの8g/Lよ
り多くの測定と共に、エタノール生成が観測された。
【0117】
試験動作2で、試験動作1の発見を確認した。
【0118】
試験動作3は、72%のCO組成を有する、処理された試験C1含有ガスを使用して開
始された。培養物の増殖が一旦判断されると、ガスが未処理の試験C1含有基質に切り替
えられた。培養物は、ガス試験装置に供給される未処理の試験C1含有物の1日の内に崩
壊した。動作3で、原料/未処理の試験C1含有ガスが、生物学的プロセスに好適ではな
いことを確認した。
【0119】
(装置動作/補助機器)
両方のバイオリアクタは、凍結乾燥された有機体、及び現地の供給者からのプロパンガ
スなどの合成ガスを使用して確立された培養物が充填された(植え付けられた)。合成ガ
スでの開始に続いて、1つのリアクタが、数日から数週間の試験期間に、流れの性能を検
証するために、現場のガスに切り替えられる。現場のガスが十分な圧力、例えば、約3~
約10バールの範囲の絶対圧力など、公称の少なくとも約2バールの絶対圧力で利用可能
ではない場合、ブースターコンプレッサが、このような圧力まで現場のガスの利用可能な
圧力を上げるために、必要に応じて使用されてもよく、それによって、バイオリアクタへ
の安定した投入を確実にする。バイオリアクタへのガス源を合成ガス(例えば、炭化水素
ガスまたはプロパンガス)から現場のガスに切り替えるために使用される弁は、いくつか
の場合において、代替の源からのガス流を可能にするための追加のポートを有してもよい
。例えば、三方弁は、作業者が、窒素などの不活性ガスであってもよい、合成ガス、現場
のガス、パージガスの中から源を変えることを可能にし得る。選択的なバッチの実行が、
液体生成物のエタノール力価の増加を調べるために実行され得る。試験に必要とされる低
い予定ガス流速(およそ2リットル/分)のために、ガス試験装置に存在しているガス生
成物は、その源(例えば、顧客の排ガス流)に戻るか、またはそうでなければ大気に発散
されるか、のいずれかであり得る。
【0120】
ガス試験装置に含まれるべき、機器、補助材料、及び補助、ならびに、予想される設備
(顧客)の機器/要件、及び、ガス試験装置の実施/動作のために必要である、現地の販
売者からのさらなる要件の例示の一覧は次のとおりである。
【表5】
【0121】
(機能/目的/成果物)
ガス試験装置の動作に関連付けられるいくつかの重要な機能は、(1)設備によって供
給されたガス組成の変更の範囲全体の、安定した、またはそうでなければ許容可能な操作
、(2)未処理のガスにおける正の微生物増殖、(3)ガス及び液体試料の汚染物質のプ
ロファイル、(4)合成混合物を使用してどこかで(現場以外の試験で)得られた性能目
標、(5)合成ガスに対する現場のガスの使用によって、及び/または水道(現地の、飲
料用の)水に対する、及びさらに購入された、蒸留水に対する、処理(現地の、現場の)
水の使用によって引き起こされた、あらゆる操作の不一致の、検証を含む。
【0122】
予想される施設からのガスの、現場試験のさらなる目的は、(1)合成ガスに対する、
前処理を伴うか、または伴わない現場のガス、及び処理水でのバイオリアクタ性能の比較
を得ることと、(2)ガス接種、微生物増殖、及び代謝物質の選択性への、微量化合物を
含むガス汚染物質の影響を、汚染物質を有さない合成ガスと比べて、総計で評価すること
と、(3)現場の処理水の影響を同様に評価することと、(4)さらなるガスの浄化/前
処理が必要であるかを評価することと、(5)現地の処理水が、希釈剤(新鮮培地)の導
入の様々な速度での細菌増殖を補助するかを評価することと、(6)得られたデータでリ
アクタのモデルを検証する、または更新すること、及びそれによって、保証を提供するた
めの基準として性能の予想を改善することと、(7)例えば、既知の汚染物質と比較する
ことによって、ガス前処理床(吸着床)から脱離されたガス汚染物質の「死後」分析を得
ることと、である。
【0123】
ガス試験装置から得られた情報の結果として提供される重要な成果物は、計画及び予想
される設備の必要性によって、変化する、及び依存することが予測された。成果物のいく
つかの代表的な例は、(1)設備が、生物学的変換プロセスを補助するガス流を提供する
ことと、(2)生成物(エタノール)及び代謝物質の選択性が、経済学の観点から許容可
能であることと、(3)提案されたガス精製策(使用される場合)が効果的であることと
、(4)処理水または別の現地水源が許容可能であることと、(5)ガス組成変動の範囲
が、許容可能であり、その影響が予測されることと、(6)ガス試験装置のGC分析、及
び他の情報が正確であることと、(7)ガス汚染レベル(検出される場合)が微生物培養
物によって許容されることができることと、の検証である。
【0124】
全体的に、本発明の態様は、生物学的変換プロセスにおける使用のために、及び、特に
、エタノール生成のためのCO含有基質の微生物発酵のために、予想される設備で生成さ
れた、実際のガスの現場試験のための輸送可能な装置に向けられる。ガス試験装置、及び
、試験CO含有基質の好適性を確立するための関連する方法ならびに方法論は、特に、そ
うでなければ、現場以外で商業用ガス組成をシミュレーションする試みから得られること
ができない、現実的で正確な性能予測、及び目的を得ることに関して、本明細書において
説明されるような多数の利点を提供する。当業者は、本開示から得られた知識で、本発明
の範囲から逸脱せずに、本明細書に説明された装置及び方法において、様々な変更がされ
ることができることを認識するであろう。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス試験装置の使用のための発酵ユニットであって、
(i)ガス入口及びガス出口を含み、垂直に延びるバイオリアクタ容器であって、前記ガス入口は、垂直に延びる前記バイオリアクタ容器の底端に近接して配置され、ガスC1含有基質を前記バイオリアクタ容器に供給するように構成され、前記ガス入口は、前記バイオリアクタ容器内を延び、前記バイオリアクタ容器内に位置するガス分配装置と液体連通し、前記ガス出口は、垂直に延びる前記バイオリアクタ容器の上端に近接して配置され、前記バイオリアクタ容器と液体連通し、前記ガス出口は、前記バイオリアクタ容器から、反応していないC1含有基質を含むガス生成物を引き出すように構成されている、バイオリアクタ容器と、
(ii)液体入口及び液体出口であって、前記液体入口は、前記ガス入口の下に配置され、かつ少なくとも1つのC1固定微生物を含む培地を前記バイオリアクタ容器の中に導入するように構成され、前記液体出口は、前記ガス入口の下に配置され、前記バイオリアクタ容器から液体生成物を引き出すように構成されている、液体入口及び液体出口と、
(iii)外部の液体再生利用ループ及び液体再生利用ポンプであって、前記液体再生利用ループは、前記バイオリアクタ容器の前記底端に近接して配置された再生利用出口から発酵培養液を引き出し、前記バイオリアクタ容器の前記上端に近接して配置された再生利用入口に前記発酵培養液をポンピングするように構成され、前記再生利用入口は、前記発酵培養液を、前記バイオリアクタ容器の前記上端内に配置された液体分配装置に提供するように構成される、外部の液体再生利用ループ及び液体再生利用ポンプと、
を含む、発酵ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の発酵ユニットであって、前記発酵ユニットは、容積が6m
3
未満のコンテナ内に収容される、発酵ユニット。
【請求項3】
請求項2に記載の発酵ユニットであって、前記コンテナは、各約1.8メートル未満の、長さ、幅、及び高さ寸法を有する、発酵ユニット。
【請求項4】
請求項1に記載の発酵ユニットであって、前記液体分配装置は、シャワーヘッドである、発酵ユニット。
【請求項5】
請求項1に記載の発酵ユニットであって、前記液体再生利用ループは、塩基性中和剤の源と液体連通した塩基性中和剤入口をさらに備える、発酵ユニット。
【請求項6】
請求項1に記載の発酵ユニットであって、塩基性中和剤の源と液体連通した塩基性中和剤入口をさらに備え、前記塩基性中和剤入口は、前記バイオリアクタ容器に前記塩基性中和剤を供給する、発酵ユニット。
【請求項7】
請求項1に記載の発酵ユニットであって、前記ガス分配装置は、散布機であり、前記バイオリアクタ容器の底の25%内に位置する、発酵ユニット。
【請求項8】
請求項7に記載の発酵ユニットであって、前記ガス分配装置は、前記バイオリアクタ容器の底の10%内に位置する、発酵ユニット。
【請求項9】
請求項1に記載の発酵ユニットであって、前記ガス出口は、前記バイオリアクタ容器の上の25%内に延びる、発酵ユニット。
【請求項10】
請求項1に記載の発酵ユニットであって、前記ガス出口は前記バイオリアクタ容器内に全く延びない、発酵ユニット。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0124
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0124】
全体的に、本発明の態様は、生物学的変換プロセスにおける使用のために、及び、特に、エタノール生成のためのCO含有基質の微生物発酵のために、予想される設備で生成された、実際のガスの現場試験のための輸送可能な装置に向けられる。ガス試験装置、及び、試験CO含有基質の好適性を確立するための関連する方法ならびに方法論は、特に、そうでなければ、現場以外で商業用ガス組成をシミュレーションする試みから得られることができない、現実的で正確な性能予測、及び目的を得ることに関して、本明細書において説明されるような多数の利点を提供する。当業者は、本開示から得られた知識で、本発明の範囲から逸脱せずに、本明細書に説明された装置及び方法において、様々な変更がされることができることを認識するであろう。
なお、本発明には以下の態様が含まれることを付記する。
[態様1]
生物学的変換プロセスにおける使用のために、産業プロセスから得られた試験C1含有基質の好適性を評価するための方法であって、当該方法は、
(a)ガス試験装置を提供する工程であって、前記ガス試験装置は、
(i)基準C1含有基質の性能を評価するための第1のバイオリアクタのステージと、
(ii)前記試験C1含有基質の性能を評価するための第2のバイオリアクタのステージと、
(iii)前記第1及び第2のバイオリアクタのガス及び液体生成物の両方の分析用に構成された分析部と、を備え、
前記ガス試験装置は、6m
3
未満の体積を有し、複数の場所に輸送可能なコンテナ内に収容されることが可能である、ガス試験装置を提供する工程と、
(b)前記ガス試験装置の第1のバイオリアクタに、基準C1含有基質を供給する工程であって、前記第1のバイオリアクタはC1固定性微生物の第1の培養物を含み、前記第1のバイオリアクタは一連の対象操作条件で操作される、基準C1含有基質を供給する工程と、
(c)前記ガス試験装置の第2のバイオリアクタに、前記産業プロセスから得られる前記試験C1含有基質を供給する工程であって、前記第2のバイオリアクタは前記C1固定性微生物の第2の培養物を含み、前記第2のバイオリアクタは前記一連の対象操作条件と同じに操作される、前記試験C1含有基質を供給する工程と、
(d)前記第1及び第2のバイオリアクタの性能を判断するために、前記ガス試験装置の分析部を用いて、前記第1及び第2のバイオリアクタのガス及び液体生成物の両方を分析する工程と、
(e)生物学的変換プロセスにおける使用のために、前記産業プロセスから得られた前記試験C1含有基質の前記好適性を決定するために、前記第2のバイオリアクタの性能に対する、前記第1のバイオリアクタの性能を比較する工程と、
(f)前記工程(e)において、前記第1のバイオリアクタに対する、前記第2のバイオリアクタの性能低下を得た場合、前記試験C1含有基質と比較して、より高い質の試験C1含有基質を提供するために、前記試験C1含有基質の前処理をする工程、または前処理を強化する工程であって、前記性能低下は、前記第1のバイオリアクタ及び前記第2のバイオリアクの間における性能相違の閾値であり、前記性能低下は、(i)前記第2のバイオリアクタのものと比較した、前記第1のバイオリアクタにおいて測定されたC1炭素源利用の平均値に基づく、または(ii)前記第2のバイオリアクタのものと比べた、前記第1のバイオリアクタにおいて測定されたC1炭素源利用の変化の速度に基づく、工程とを含み、
前記方法は、前記産業プロセスの現場で実行されることを特徴とし、
前記基準C1含有基質の組成は既知であり、前記産業プロセスから得られる前記試験C1含有基質の組成は試験期間中に変動する、方法。
[態様2]
工程(b)及び工程(c)の少なくとも一部が同時に実行される、態様1に記載の方法。
[態様3]
工程(b)で前記試験C1含有基質を前記第2のバイオリアクタに供給する前に、前記基準C1含有基質を前記第2のバイオリアクタに供給する工程を含む、態様1に記載の方法。
[態様4]
前記産業プロセスから得られた前記試験C1含有基質が、汚染物質を除去するために前処理された工業用C1含有排ガス流である、態様1に記載の方法。
[態様5]
分析する工程(d)が、前記第1及び第2のバイオリアクタの前記ガス生成物におけるC1炭素源の濃度を測定する工程と、前記第1及び第2のバイオリアクタの前記液体生成物におけるエタノール及び少なくとも1つのさらなる代謝物質の濃度を測定する工程とを含む、態様1に記載の方法。
[態様6]
前記C1固定性微生物の前記第1及び第2の培養物のうちの少なくとも1つは、現地の水源で調製された、または現地の水源が補われた、培地を含む、態様1に記載の方法。[態様7]
前記C1含有基質が、CO、CO
2
、及びCH
4
からなる群から選択される少なくとも1つのC1炭素源を含む、態様1に記載の方法。
[態様8]
前記C1固定性微生物が、クロストリジウム属からの酸化炭素資化微生物である、態様1に記載の方法。
[態様9]
前記C1固定性微生物が、クロストリジウムオートエタノゲナム、クロストリジウムリュングダリイ、及びクロストリジウムラグスダレイからなる群から選択される、態様8に記載の方法。
[態様10]
前記ガス試験装置が、1.8メートル未満の長さ、幅、及び高さ寸法をそれぞれ有する箱内に収容されることが可能である、態様1に記載の方法。
[態様11]
前記ガス試験装置の前記分析部が、前記ガス及び前記液体生成物の分析用にそれぞれ構成された第1及び第2のクロマトグラフィーカラムを有する、ガスクロマトグラフィー(GC)分析装置を備える、態様1に記載の方法。
[態様12]
前記第1及び第2のバイオリアクタのステージが、循環ループバイオリアクタをそれぞれ備える、態様1に記載の方法。
[態様13]
前記ガス試験装置が、新鮮培地の付加速度、ガスC1含有基質供給速度、リアクタ温度、及びリアクタpHからなる群から選択される1つ以上の操作パラメータを制御するための操作制御システムをさらに備える、態様1に記載の方法。
[態様14]
前記1つ以上の操作パラメータが、リアクタpHを含み、前記制御システムが、測定されたリアクタpHに基づいて、前記バイオリアクタへの塩基性中和剤の流れを制御するための器具を含む、態様13に記載の方法。
[態様15]
前記ガス試験装置が、閾値濃度を上回る環境C1炭素源濃度の測定に応じて、少なくとも前記試験C1含有基質または前記基準C1含有基質の流れを一時停止するための安全制御システムをさらに備える、態様1に記載の方法。