(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139242
(43)【公開日】2023-10-03
(54)【発明の名称】望まれない音伝達の低減
(51)【国際特許分類】
H04R 3/04 20060101AFI20230926BHJP
G10K 15/00 20060101ALI20230926BHJP
G10K 15/04 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
H04R3/04
G10K15/00 L
G10K15/04 302B
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023122523
(22)【出願日】2023-07-27
(62)【分割の表示】P 2020537015の分割
【原出願日】2019-01-08
(31)【優先権主張番号】18150772.4
(32)【優先日】2018-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】62/615,172
(32)【優先日】2018-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】507236292
【氏名又は名称】ドルビー ラボラトリーズ ライセンシング コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,シー. フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】スミザーズ,マイケル ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】オードフレイ,レミ エス.
(72)【発明者】
【氏名】ソーンダーズ,パトリック デイヴィッド
(57)【要約】 (修正有)
【課題】デバイス間の相互通信を使用して隣接する部屋間の望まれないオーディオ伝送を低減する方法、装置及び非一時的なコンピュータ可読媒体を提供する。
【解決手段】ある位置でオーディオ出力を調整し、該オーディオ出力の別の位置への伝搬を減らす方法において、第1の位置(部屋110)にある第1のデバイス(オーディオ装置130)が音を生成するとき、物理的障壁が114で隔てられた第2の位置(部屋112)にある第2のデバイス(オーディオ装置140)が伝搬された音を検出し、第1のデバイスが、検出された音に基づいてその出力を調整する。さらに、第1のデバイスは、オーディオ出力と検出されたオーディオとの比較に基づいて、一方の聴取領域から他方の聴取領域への伝送を少なくとも低減するように、オーディオ出力の少なくともいくつかの周波数帯域を調整するためのオーディオ伝達関数を決定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーディオ・デバイスによって生成される音の可聴性を低減する方法であって、当該方法は:
第1の位置において前記オーディオ・デバイスによって、オーディオ出力を生成する段階と;
第1の位置とは異なる第2の位置において、前記オーディオ出力に対応する検出オーディオ信号を複数の周波数帯域において検出する段階と;
前記検出オーディオ信号および複数の閾値に基づいて前記オーディオ出力の一つまたは複数の周波数帯域を減衰させるためのオーディオ伝達関数を決定する段階であって、所与の周波数帯域について、前記オーディオ伝達関数は、前記検出オーディオ信号の前記所与の周波数帯域が対応する閾値を超えるときに前記オーディオ出力の前記所与の周波数帯域を減衰させるものである、段階と;
前記オーディオ・デバイスによって、前記オーディオ伝達関数を適用することによって前記オーディオ出力を修正する段階とを含む、
方法。
【請求項2】
前記オーディオ・デバイスに、前記検出オーディオ信号に関連する情報を通信する段階をさらに含み、前記オーディオ・デバイスは前記情報に基づいて前記オーディオ伝達関数を決定する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記オーディオ・デバイスが第1のオーディオ・デバイスであり、第2のオーディオ・デバイスが前記第2の位置において前記検出オーディオ信号を検出し、前記第2のオーディオ・デバイスは、前記検出オーディオ信号に関連する前記情報を前記第1のオーディオ・デバイスに通信する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記第2のオーディオ・デバイスは、セットアップ・フェーズ中に前記検出オーディオ信号を検出し、前記第1のオーディオ・デバイスは、前記セットアップ・フェーズ中に前記オーディオ伝達関数を決定し、前記第1のオーディオ・デバイスは、前記セットアップ・フェーズに続く動作フェーズ中に前記オーディオ出力を修正し、
前記セットアップ・フェーズ中に、前記第1のオーディオ・デバイスはある範囲の周波数をカバーする試験オーディオ出力を出力し、前記第2のオーディオ・デバイスは前記試験オーディオ出力に対応する検出試験オーディオ信号を受領し、
前記オーディオ伝達関数は、前記検出試験オーディオ信号がある特定の周波数帯域について対応する閾値を超えるとき、前記試験オーディオ出力におけるその特定の周波数帯域を減衰させるものである、
請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記検出オーディオ信号に関連する情報をサーバー・デバイスに通信する段階と;
前記サーバー・デバイスから前記オーディオ・デバイスに、前記オーディオ伝達関数を送信する段階とをさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記オーディオ・デバイスが第1のオーディオ・デバイスであり、第2のオーディオ・デバイスが前記第2の位置において前記検出オーディオ信号を検出し、前記第2のオーディオ・デバイスは、前記検出オーディオ信号に関連する前記情報を前記サーバー・デバイスに通信する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記第2のオーディオ・デバイスは、セットアップ・フェーズ中に前記検出オーディオ信号を検出し、前記サーバー・デバイスは、前記セットアップ・フェーズ中に前記オーディオ伝達関数を決定し、前記第1のオーディオ・デバイスは、前記セットアップ・フェーズに続く動作フェーズ中に前記オーディオ出力を修正し、
前記セットアップ・フェーズ中に、前記第1のオーディオ・デバイスはある範囲の周波数をカバーする試験オーディオ出力を出力し、前記第2のオーディオ・デバイスは前記試験オーディオ出力に対応する検出試験オーディオ信号を受領し、
前記オーディオ伝達関数は、前記検出試験オーディオ信号がある特定の周波数帯域について対応する閾値を超えるとき、前記試験オーディオ出力におけるその特定の周波数帯域を減衰させるものである、
請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記複数の閾値は、人間の聴覚の生理的応答に従って定義される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
第1の周波数帯域についての第1の閾値は、第2の周波数帯域についての第2の閾値と、人間の聴覚の生理的応答に従って異なっている、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記オーディオ出力を修正することが、前記オーディオ出力の前記一つまたは複数の周波数帯域を一つまたは複数の異なる量だけ減衰させることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記オーディオ伝達関数は、第1の位置と第2の位置との間の測定された伝送特性に基づいて決定される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記測定された伝送特性は、第2の位置の周囲ノイズのレベルを考慮に入れる、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記周囲ノイズは、前記検出オーディオ信号に関連する情報と前記オーディオ出力とを比較することによって決定される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記周囲ノイズが前記検出オーディオ信号における一つまたは複数の周波数帯域をマスクするかどうかを判定することをさらに含み、前記周囲ノイズが前記検出オーディオ信号における一つまたは複数の周波数帯域をマスクすると判定することに応答して、前記オーディオ伝達関数は、マスクされる前記一つまたは複数の周波数帯域に対応する前記オーディオ出力の周波数帯域を減衰させない、請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記オーディオ出力および前記検出オーディオ信号を少なくとも3つのスペクトル帯域に分割し;
前記検出オーディオ信号の、帯域固有の閾値レベルとのスペクトル帯域毎の比較を実行し;
前記検出オーディオ信号が帯域固有の閾値レベルを超える前記オーディオ出力のスペクトル帯域のみを減衰させることをさらに含む、
請求項14記載の方法。
【請求項16】
プロセッサによって実行されると、請求項1に記載の方法を含む処理を実行するよう装置を制御するコンピュータ・プログラムを記憶している非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項17】
オーディオ・デバイス;
プロセッサ;および
スピーカーを有する装置であって、
前記プロセッサは、第1の位置において前記オーディオ・デバイスによってオーディオ出力を生成するよう前記オーディオ・デバイスを制御するように構成されており、
検出オーディオ信号が、第1の位置とは異なる第2の位置において検出され、前記検出オーディオ信号は、複数の周波数帯域における前記オーディオ出力に対応し、
前記検出オーディオ信号および複数の閾値に基づいて、前記オーディオ出力の一つまたは複数の周波数帯域を減衰させるためにオーディオ伝達関数が決定され、所与の周波数帯域について、前記オーディオ伝達関数は、前記検出オーディオ信号の前記所与の周波数帯域が対応する閾値を超えるときに前記オーディオ出力の前記所与の周波数帯域を減衰させるものであり、
前記プロセッサは、前記オーディオ伝達関数を適用することによって前記オーディオ出力を修正するよう前記オーディオ・デバイスを制御するように構成されている、
装置。
【請求項18】
前記オーディオ・デバイスが前記プロセッサおよび前記スピーカーを含む第1のオーディオ・デバイスであり、システムが前記第1のオーディオ・デバイスを含み、該システムはさらに:
第2のオーディオ・デバイスを有しており、
前記第2のオーディオ・デバイスは、前記第2の位置において前記検出オーディオ信号を検出するように構成されており、前記第2のオーディオ・デバイスは、前記検出オーディオ信号に関連する前記情報を前記第1のオーディオ・デバイスに通信するように構成されており、前記プロセッサは、前記情報に基づいて前記オーディオ伝達関数を決定するように前記第1のオーディオ・デバイスを制御するように構成されている、
請求項17に記載の装置。
【請求項19】
さらにサーバー・デバイスを有しており、
前記サーバー・デバイスは、前記検出オーディオ信号に関連する情報を受信するように構成されており、前記サーバー・デバイスは、前記情報に基づいて前記オーディオ伝達関数を決定するように構成されており、前記サーバー・デバイスは前記オーディオ伝達関数を前記オーディオ・デバイスに送信するように構成されている、
請求項17に記載の装置。
【請求項20】
前記オーディオ・デバイスが前記プロセッサおよび前記スピーカーを含む第1のオーディオ・デバイスであり、システムが前記第1のオーディオ・デバイスを含み、該システムはさらに:
第2のオーディオ・デバイスを有しており、
前記第2のオーディオ・デバイスは、前記第2の位置において前記検出オーディオ信号を検出するように構成されており、前記第2のオーディオ・デバイスは、前記検出オーディオ信号に関連する前記情報を前記サーバー・デバイスに通信するように構成されている、
請求項19に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、次の優先権出願の優先権を主張する:2018年1月9日に出願された米国仮出願第62/615,172号および2018年1月9日に出願された欧州出願第18150772.4号。これらはここに参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本開示は、デバイス間の相互通信を使用して隣接する部屋間のオーディオ伝送を低減することに関する。
【0003】
本明細書に別段の記載がない限り、本セクションに記載されるアプローチは、本願の請求項の先行技術ではなく、本セクションに含めることにより先行技術であると自認されるものでもない。
【0004】
典型的な家には、リビングルーム、ダイニングルーム、および一つまたは複数の寝室などのいくつかの部屋が含まれる。時には、ある部屋のオーディオ・デバイスによって生成されたオーディオが、別の部屋で知覚されることがある。これは、人が該別の部屋で寝ようとしている場合や、隣の部屋からのオーディオによって埋没させられるレベルでオーディオを聞いている場合に、わずらわしいことがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記に鑑み、隣接する部屋で知覚されるオーディオを低減する必要がある。ある実施形態は、別個の部屋における2つのオーディオ・デバイス間の通信に向けられる。ある部屋から別の部屋へのオーディオ伝送特性は、一方のデバイスを通じてオーディオを再生し、伝送されたオーディオを他方のデバイスによって検出することによって決定される。伝送特性は、周波数帯域毎に決定されうる。これにより、ある部屋から別の部屋への伝送を低減するために、オーディオ再生時に周波数帯域毎の調整ができる。
【0006】
オーディオ・デバイスは、オーディオ出力と検出されたオーディオとの比較に基づいて、一方の聴取領域から他方の聴取領域への伝送を少なくとも低減するように、オーディオ出力の少なくともいくつかの周波数帯域を調整するためのオーディオ伝達関数を決定しうる。
【0007】
さらなる特徴は、オーディオ出力および検出されたオーディオをスペクトル帯域に分割し、検出されたオーディオの、帯域固有の閾値レベルとの帯域毎の比較を実行し、検出されたオーディオが帯域固有の閾値レベル(たとえば、各特定の帯域における人間の聴覚の可聴レベルに設定される)を超えるオーディオ出力の帯域のみを低減することを含んでいてもよい。もう一つのさらなる特徴は、ある部屋においてオーディオを出力するときに、別の部屋において周囲音を検出し、それを既知のオーディオ出力と比較して、オーディオがある聴取領域から別の聴取領域へ伝わっているかどうかを判定することを含んでいてもよい。もう一つのさらなる特徴は、オーディオ出力の了解性(intelligibility)を高めるために、ダイアログ特性に基づいてオーディオ出力を適応させることを含んでいてもよい。
【0008】
ある実施形態によれば、方法は、オーディオ・デバイスによって生成される音の可聴性を低減する。本方法は、第1の位置にあるオーディオ・デバイスによって、オーディオ出力を生成することを含む。この方法は、さらに、第1の位置とは異なる第2の位置において、前記オーディオ出力に対応する検出オーディオ信号を検出するステップを含む。本方法はさらに、検出オーディオ信号に関連する情報を前記オーディオ・デバイスに通信すること、たとえば、前記情報を前記第2の位置から前記オーディオ・デバイスに通信することを含む。本方法は、さらに、前記オーディオ・デバイスによって、前記情報に基づいて一つまたは複数の周波数帯域を減衰させるためのオーディオ伝達関数を決定するステップを含む。本方法はさらに、前記オーディオ・デバイスによって、前記オーディオ伝達関数を適用することによって前記オーディオ出力を修正することを含む。このようにして、オーディオ・デバイスからのオーディオ出力の可聴性が、第2の位置において低減されうる。
【0009】
オーディオ伝達関数を決定することは、検出オーディオ信号に関連する前記情報、前記オーディオ出力に関連する情報、および少なくとも一つの閾値を比較することを含んでいてもよい。
【0010】
物理的障壁が前記第1の位置と前記第2の位置とを隔てていてもよく、前記オーディオ・デバイスは、物理的障壁によって修正された前記オーディオ出力に応じて、前記検出オーディオ信号の前記オーディオ伝達関数を決定してもよい。
【0011】
前記オーディオ・デバイスは第1のオーディオ・デバイスであってもよく;前記第2の位置における第2のオーディオ・デバイスが、前記検出オーディオ信号を検出してもよく、前記第2のオーディオ・デバイスは、前記検出オーディオ信号に関連する前記情報を前記第1のオーディオ・デバイスに通信してもよい。前記第1のオーディオ・デバイスは、前記第2のオーディオ・デバイスが前記検出オーディオ信号を検出するのと同時に、前記オーディオ出力を修正してもよい。あるいはまた、第2のオーディオ・デバイスは、前記検出オーディオ信号をセットアップ・フェーズ中に検出してもよく、第1のオーディオ・デバイスは、前記オーディオ伝達関数をセットアップ・フェーズ中に決定してもよく;第1のオーディオ・デバイスは、セットアップ・フェーズに続く動作フェーズ中に前記オーディオ出力を修正してもよい。
【0012】
前記オーディオ出力は、複数の周波数帯域を含んでいてもよく、前記オーディオ出力を修正することは、前記複数の周波数帯域のうちの一つまたは複数の周波数帯域において前記オーディオ出力を修正する、たとえば減衰させることを含む。前記複数の周波数帯域は、人間の聴覚の生理的応答に従って定義されてもよい。前記オーディオ出力を修正することは、前記複数の周波数帯域のうちの前記一つまたは複数の周波数帯域における前記オーディオ出力を、前記オーディオ出力と前記検出オーディオ信号に関連する前記情報との比較に基づいて、任意的にはさらに前記第2の位置の周囲ノイズのレベルを考慮に入れて、一つまたは複数の異なる量だけ、修正するステップを含んでいてもよい。
【0013】
オーディオ伝達関数は、前記第2の位置の周囲ノイズのレベルを考慮に入れて、前記第1の位置と前記第2の位置との間の測定された伝送特性に基づいて決定されてもよい。ある例では、周囲ノイズは、前記検出オーディオ信号に関連する前記情報および前記オーディオ出力を比較することによって決定される。別の例では、周囲ノイズは、前記オーディオ・デバイスがオーディオ出力を生成するのに先立って、たとえば、前記第2の位置において(前記第1の位置のオーディオ・デバイスによるオーディオ出力がないときに)、周囲ノイズを表わすオーディオ信号を検出することによって、決定されている。
任意的に、周囲ノイズは、前記一つまたは複数の周波数帯域のそれぞれについて決定される。
任意的に、本方法は、周囲ノイズが、前記検出オーディオ信号中の一つまたは複数の周波数帯域をマスクするかどうかを判定することを含み、周囲ノイズが前記検出オーディオ信号中の一つまたは複数の周波数帯域をマスクと判定することに応答して、オーディオ伝達関数は、前記一つまたは複数のマスキング周波数帯域に対応する前記オーディオ出力の周波数帯域を減衰させない。
たとえば、各周波数帯域について、その周波数帯域における前記検出オーディオ信号のレベルがその周波数帯域の周囲ノイズ・レベルを超えているかどうかが判定され、前記検出オーディオ信号が前記周波数帯域についての周囲ノイズ・レベルを超えていると判定することに応答してのみ、前記オーディオ出力は前記周波数帯域について、オーディオ伝達関数によって減衰させられる。前記検出オーディオ信号のレベルが周囲ノイズ・レベルを超えない周波数帯域には減衰は適用されない。これはたとえば、前記検出オーディオ信号のレベルが周囲ノイズ・レベル以下である場合である。
任意的に、前記検出オーディオ信号と周囲ノイズ・レベルとの比較において、所定の閾値が使用される。たとえば、前記検出オーディオ信号が少なくとも前記所定の閾値だけ周囲ノイズ・レベルを超えるかどうかが判定される。所定の閾値は、すべての周波数帯域について同じであってもよく、あるいは、各周波数帯域について別個の閾値が提供されてもよい。
【0014】
オーディオ伝達関数は、第1の位置と第2の位置との間の測定された伝送特性、および人間の聴覚の生理的応答に基づいて決定されてもよい。
【0015】
オーディオ・デバイスは、複数のスピーカーを含み、前記オーディオ出力を修正することは、第2の位置における検出オーディオ信号のレベルが低減されるように前記オーディオ出力の位置応答を調整するために、前記複数のスピーカーを使用してスピーカーの指向性を制御することを含んでいてもよい。
【0016】
前記オーディオ出力は、ラウドネス平準化(loudness leveling〔ラウドネス・レベリング〕)およびラウドネス領域処理のうちの少なくとも一方を用いて修正されてもよい。
【0017】
本方法は、さらに、マイクロフォンを用いて第2の位置の周囲ノイズ・レベルを連続的に検出するステップと、機械学習を用いて、周囲ノイズ・レベル内の少なくとも一つのパターンが検出されたことを判別するステップとを含んでいてもよく、ここで、前記オーディオ出力は、前記オーディオ伝達関数および前記少なくとも一つのパターンに基づいて修正される。マイクロフォンは、上述の第2のオーディオ・デバイスのマイクロフォンであってもよい。
【0018】
本方法は、さらに、第3の位置にある第3のオーディオ・デバイスによって、第2のオーディオ出力を生成することを含んでいてもよい。ここで、第2の位置で検出された前記検出オーディオ信号は、前記オーディオ出力および前記第2のオーディオ出力に対応し、前記情報は、前記検出オーディオ信号および前記第2の検出オーディオ信号に関連し、前記情報は、前記オーディオ・デバイスおよび前記第3のオーディオ・デバイスに通信される。本方法は、さらに、前記第3のオーディオ・デバイスによって、前記情報に基づいて前記第2のオーディオ出力の一つまたは複数の周波数帯域を減衰させるための第2のオーディオ伝達関数を決定することを含んでいてもよい。本方法は、さらに、前記第3のオーディオ・デバイスによって、前記第2のオーディオ伝達関数を適用することによって、前記第2のオーディオ出力を修正することを含んでいてもよい。
【0019】
ある実施形態によれば、装置は、オーディオ・デバイス、プロセッサ、メモリ、スピーカー、およびネットワーク・コンポーネントを含む。前記プロセッサは、前記オーディオ・デバイスを制御して、第1の位置にある前記スピーカーによってオーディオ出力を生成することと;前記ネットワーク・コンポーネントによって、第1の位置とは異なる第2の位置から、第2の位置で検出された前記オーディオ出力に対応する検出オーディオ信号に関連する情報を受信することと;前記プロセッサによって、前記情報に基づいて、前記オーディオ出力の一つまたは複数の周波数帯域を減衰させるためのオーディオ伝達関数を決定することと;前記プロセッサによって、前記オーディオ伝達関数に基づいて前記オーディオ出力を修正することとを含む処理を実行させるように構成される。
【0020】
ある実施形態によれば、システムは、オーディオ・デバイスによって生成される音の可聴性を低減する。本システムは、第1のオーディオ・デバイスおよび第2のオーディオ・デバイスを含む。第1のオーディオ・デバイスは、プロセッサと、メモリと、スピーカーと、ネットワーク・コンポーネントとを含み、第2のオーディオ・デバイスは、プロセッサと、メモリと、マイクロフォンと、ネットワーク・コンポーネントとを含む。第1のオーディオ・デバイスのプロセッサおよび第2のオーディオ・デバイスのプロセッサは、第1のオーディオ・デバイスおよび第2のオーディオ・デバイスを制御して、第1の位置にある第1のオーディオ・デバイスのスピーカーによってオーディオ出力を生成し;第1の位置とは異なる第2の位置にある第2のオーディオ・デバイスのマイクロフォンによって、前記オーディオ出力に対応する検出オーディオ信号を検出し;前記第2のオーディオ・デバイスのネットワーク・コンポーネントを介して、前記検出オーディオ信号に関連する情報を第2の位置から第1のオーディオ・デバイスのネットワーク・コンポーネントへ通信し;第1のオーディオ・デバイスのプロセッサによって、前記情報に基づいて前記オーディオ出力の一つまたは複数の周波数帯域を減衰させるためのオーディオ伝達関数を決定し;第1のオーディオ・デバイスのプロセッサによって、前記オーディオ伝達関数を適用することによって、前記オーディオ出力を修正することを含む処理を実行するように構成される。
【0021】
ある実施形態によれば、非一時的コンピュータ読み取り可能媒体が、オーディオ・デバイスによって生成される音の可聴性を低減するよう該オーディオ・デバイスを制御するためのコンピュータ・プログラムを格納する。前記デバイスは、プロセッサ、メモリ、スピーカー、およびネットワーク・コンポーネントを含んでいてもよい。コンピュータ・プログラムは、プロセッサによって実行されるときに、前記オーディオ・デバイスを制御して、上述の方法ステップのうちの一つまたは複数を実行させうる。
【0022】
以下の詳細な説明および添付の図面は、さまざまな実装の性質および利点のさらなる理解を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【0024】
【
図2】オーディオ・デバイスによって生成される音の可聴性を低減する方法200のフローチャートである。
【0025】
【
図3】オーディオ・デバイスを構成し動作させる方法300のフローチャートである。
【0026】
【
図4】オーディオ・デバイス400のブロック図である。
【0027】
【
図5】オーディオ・デバイス500のブロック図である。
【0028】
【
図6】6A~6Eは、オーディオ出力および検出オーディオ信号について閾値および周波数帯域の例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本明細書には、隣接する部屋の間のオーディオ伝送を低減する技術が記述される。以下の記述において、説明の目的のため、本開示の十全な理解を提供するために、多数の例および特定の詳細が記載される。しかしながら、特許請求の範囲によって定義される本開示は、これらの例における特徴の一部または全部を単独で、または以下に記載される他の特徴と組み合わせて含んでいてもよく、さらに、本明細書に記載される特徴および概念の修正および等価物を含みうることは、当業者にとって明らかであろう。
【0030】
以下の記述では、さまざまな方法、プロセスおよび手順が詳述される。個別の段階が動名詞の形で記載されることがあるが、そのような表現はまた、その形である状態をも示す。たとえば、「メモリにデータを記憶する」は、少なくとも以下を示すことができる:データが現在、メモリに記憶される(たとえば、メモリはそれまではそのデータを記憶していなかった);データが現在メモリに存在していること(たとえば、そのデータが以前にメモリに記憶された);など。そのような状況は、文脈から明確でない場合には、個別に指摘されるであろう。個別の段階がある順序で記述されることがあるが、そのような順序は、主として、便宜上、明確にするためである。個別の段階は、2回以上繰り返されることがあり、他の段階の前または後に(たとえそれらの段階が別の順序で説明されていても)生起することがありえ、他の段階と並列に生起してもよい。第2の段階が第1の段階の後であることが要求されるのは、第2の段階が開始される前に第1の段階が完了する必要がある場合にのみである。そのような状況は、文脈から明確でない場合には、個別に指摘されるであろう。
【0031】
本稿において、用語「および」、「または」および「および/または」が使われる。そのような用語は、包含的な意味を有するものとして読まれるべきである。たとえば、「AおよびB」は、少なくとも:「AおよびBの両方」、「少なくともAおよびBの両方」を意味しうる。別の例として、「AまたはB」は、少なくとも:「少なくともA」、「少なくともB」、「AおよびBの両方」、「少なくともAおよびBの両方」を意味しうる。別の例として、「Aおよび/またはB」は、少なくとも:「AおよびB」、「AまたはB」を意味しうる。排他的離接が意図される場合は、その旨が具体的に記載される(たとえば、「AまたはBのいずれか一方」、「AおよびBのうち高々一つ」)。
【0032】
本稿は、「オーディオ」、「音」、「オーディオ信号」および「オーディオ・データ」という用語を使用する。一般には、これらの用語は交換可能に使用される。特定性が望まれるときは、「オーディオ」および「音」という用語は、マイクロフォンによって捕捉される入力、またはラウドスピーカーによって生成される出力を指すために使われる。「オーディオ・データ」という用語は、たとえば、アナログ‐デジタル変換器(ADC)によって処理された、メモリに記憶された、またはデータ信号によって通信される
、オーディオを表わすデータを指す。「オーディオ信号」という用語は、アナログまたはデジタルの電子的な形で検出、処理、受信、または送信されるオーディオを指すために使用される。
【0033】
図1は、音響環境100の図である。音響環境100の例としては、住居、アパートメントなどが挙げられる。音響環境100は、部屋110および部屋112を含む。音響環境100は、他の部屋(図示せず)を含んでいてもよい。部屋110および112は、図のように隣接していてもよく、または他の部屋または空間(たとえば、廊下)によって隔てられていてもよい。部屋110および112は、同じのフロアにあってもよく(図示のように)、または異なるフロアにあってもよい。室110、112は、位置と称されることもある。
【0034】
部屋110および112は物理的障壁114によって隔てられている。物理的障壁114は、ドア116、壁118、床、天井等のような一つまたは複数の部分を含んでいてもよい。
【0035】
オーディオ・デバイス130が部屋110に位置しており、オーディオ・デバイス140が部屋112に位置している。オーディオ・デバイス130は、スピーカー132を含み、他のコンポーネントを含んでいてもよい。オーディオ・デバイス140は、マイクロフォン142を含み、他のコンポーネントを含んでいてもよい。オーディオ・デバイス130および140は、同じタイプのオーディオ・デバイス(たとえば、スピーカーおよびマイクロフォンの両方を有する)であってもよい。スピーカー132はオーディオ出力150を生成し、マイクロフォン142はオーディオ出力150に対応するオーディオ信号152を検出する。記述の簡単のため、オーディオ・デバイス130は能動オーディオ・デバイス(たとえば、オーディオ出力を能動的に生成する)と称されることがあり、オーディオ・デバイス140は聴取オーディオ・デバイス(たとえば、能動オーディオ・デバイスからの出力を聴取する)と称されることがある。ただし、各オーディオ・デバイスは、さまざまな時間に両方の機能を実行することがありうる(たとえば、第1のデバイスがオーディオ出力を生成し、第2のデバイスからのオーディオ出力を聴取し、第2のデバイスがオーディオ出力を生成し、第1のデバイスからのオーディオ出力を聴取する)。
【0036】
一般に、オーディオ・デバイス130は、オーディオ・デバイス140によって検出されたオーディオに応答して(たとえば、検出されたオーディオが閾値を超えているときに)そのオーディオ出力を修正(たとえば、低減)する。オーディオ・デバイス130、140の動作に関するさらなる詳細は、
図2を参照して後述される。
【0037】
図2は、オーディオ・デバイスによって生成される音の可聴性を低減する方法200のフローチャートである。たとえば、方法200は、部屋110において生成され、部屋112において知覚される音の可聴性を減少させるために、オーディオ・デバイス130およびオーディオ・デバイス140(
図1参照)によって実行されうる。
【0038】
202では、第1の位置のオーディオ・デバイスがオーディオ出力を生成する。たとえば、オーディオ・デバイス130(
図1参照)は、部屋110内でオーディオ出力150を生成してもよい。
【0039】
204では、オーディオ信号(「検出オーディオ信号」と称される)が第2の位置で検出される。検出オーディオ信号は、前記オーディオ出力が、距離、減衰(たとえば、物理的障壁による)、および他の音(たとえば、周囲ノイズ)のようなさまざまな要因に従って修正されたものに対応する。たとえば、オーディオ・デバイス140(
図1参照)は、前記検出オーディオ信号152を部屋112内で検出してもよく、この場合、検出オーディオ信号152は、部屋110内で生成されたオーディオ出力150がスピーカー132とマイクロフォン142との間の距離ならびに壁118およびドア116によって加えられる減衰に応じて修正されたものに対応する。
【0040】
206では、前記検出オーディオ信号に関連する情報が、第2の位置から前記オーディオ・デバイス(たとえば、
図1のオーディオ・デバイス130)に通信される。たとえば、オーディオ・デバイス140(
図1参照)は、前記検出オーディオ信号に関連する情報を部屋112から部屋110内のオーディオ・デバイス130に送信してもよい。
【0041】
208において、オーディオ・デバイス(たとえば、
図1のオーディオ・デバイス130)は、情報(206で通信された)に基づいてオーディオ伝達関数を決定する。たとえば、オーディオ・デバイス130は、オーディオ・デバイス140からの情報に基づいてオーディオ伝達関数を決定してもよい。例として、オーディオ・デバイス130は、オーディオ出力150と、検出オーディオ信号152に関連する情報とを比較して、オーディオ伝達関数を決定してもよい。一般に、前記オーディオ伝達関数は、他の部屋で検出されるオーディオ信号150を減衰させるために生成される。オーディオ伝達関数は、オーディオ出力150の異なる周波数帯域に印加される異なる減衰に対応してもよい。一般に、検出オーディオ信号152が特定の周波数帯域において、定義された閾値を超える場合、オーディオ伝達関数は、その特定の周波数帯域を減衰させる。たとえば、閾値を超える検出されたオーディオのレベルが増加するにつれて、減衰が増加してもよい。
【0042】
オーディオ・デバイスは、オーディオ伝達関数を決定する際に、第2の位置における周囲ノイズも考慮に入れてもよい。たとえば、第2の部屋にファン・ノイズがある場合、第1の部屋のオーディオ・デバイスは、前記検出オーディオ信号(ファン・ノイズを含む)に関連する情報と前記オーディオ出力(ファン・ノイズを含まない)とを比較することによって、ファン・ノイズが存在することを判別しうる。このように、オーディオ出力の第2の位置への伝搬のみが考慮され、第2の位置における周囲音が除外されるように、オーディオ・デバイスは、ファン・ノイズの考慮を除外するように前記オーディオ伝達関数を決定してもよい。周囲ノイズは、第1の位置から第2の位置への伝送によって減衰された前記オーディオ出力に対応しない任意の音を含みうる。換言すれば、周囲ノイズは、検出されたオーディオ内の、第1の位置から第2の位置へのオーディオ出力の伝送に帰することができない一つまたは複数の成分を含んでいてもよい。たとえば、周囲ノイズは、第2の位置で検出されたオーディオと第1の位置でのオーディオ出力との比較から決定できる。
【0043】
210では、オーディオ・デバイス(たとえば、
図1のオーディオ・デバイス130)は、オーディオ伝達関数に基づいて、すなわち、オーディオ伝達関数を適用することによって、オーディオ出力を修正する。たとえば、検出オーディオ信号152が特定の周波数帯域において閾値を超えると判定された場合、オーディオ・デバイス130によるオーディオ伝達関数の適用は、検出オーディオ信号152が(その後検出されたときに)閾値を下回るようにオーディオ出力150を低減してもよい。例として、物理的障壁114は、オーディオ出力150の低周波成分を十分に減衰させないことがあり、よって、オーディオ・デバイス130は、対応する周波数帯域内でオーディオ出力150を下げてもよい。もう一つの例として、部屋112は、検出オーディオ信号152内の所与の周波数帯域をマスクするファン・ノイズを有することがあり、よって、オーディオ・デバイス130は、該所与の周波数帯域内のオーディオ出力150を低減する必要がないことがある(しかし、他の帯域内のオーディオ出力150を低減してもよい)。その後、方法200は、オーディオ出力の連続的な修正のために202に戻ってもよい。
【0044】
方法ステップ204~208は、方法ステップ202および210と同時に実行されてもよい。たとえば、オーディオ・デバイス130(
図1参照)は、オーディオ出力150を生成している(ステップ202)際に、検出オーディオ信号152に関連する情報を受信し(ステップ206)、オーディオ伝達関数を決定し(ステップ208)、オーディオ出力150を動的に修正する(ステップ210)。このようにして、オーディオ・デバイス130は、状況の変化に反応する。
【0045】
あるいはまた、
図3を参照してさらに述べるように、方法ステップ204~208のうちの一つまたは複数がセットアップ・フェーズにおいて実行されてもよく、ステップ202および210は動作フェーズにおいて実行されてもよい。
【0046】
図3は、オーディオ・デバイスを構成し動作させる方法300のフローチャートである。2つのオーディオ・デバイス(たとえば、
図1のオーディオ・デバイス130および140)が同時に動作する代わりに、それらのオーディオ・デバイスは、セットアップ・フェーズおよび動作フェーズの2つのフェーズで動作してもよい。
【0047】
302では、それらのオーディオ・デバイスがセットアップ・フェーズにはいる。それらのオーディオ・デバイスは、一次オーディオ・デバイス(一般にオーディオ・デバイス130に対応する)および二次オーディオ・デバイス(一般にオーディオ・デバイス140に対応する)と称される。二次オーディオ・デバイスは、セットアップ・アプリケーションを実行するモバイル装置(たとえば、携帯電話)を用いて実装されてもよい。一次オーディオ・デバイスは、第1の位置(たとえば、部屋110)に位置され、二次オーディオ・デバイスは、第2の位置(たとえば、部屋112)に位置される。
【0048】
304では、一次オーディオ・デバイスは、試験オーディオ出力を出力する。(試験オーディオ出力は、
図1のオーディオ出力150に類似している。)一般に、試験オーディオ出力は、ある範囲のレベルおよび周波数をカバーする。
【0049】
306では、二次オーディオ・デバイスは、試験オーディオ出力に対応する、検出試験オーディオ信号を検出する。(検出試験オーディオ信号は、
図1の検出オーディオ信号152に類似している)。
【0050】
308では、二次オーディオ・デバイスは、検出試験オーディオ信号に関連する情報を、一次オーディオ・デバイスに通信する。
【0051】
310では、一次オーディオ・デバイスは、前記情報に基づいてオーディオ伝達関数を決定する。試験オーディオ出力は、ある範囲のレベルおよび周波数をカバーするので、本方法は、第2の位置における試験オーディオ出力の減衰(たとえば、物理的障壁114などによる)を決定する。この時点で、セットアップ・フェーズは終了する。
【0052】
312では、一次オーディオ・デバイスは動作フェーズにはいる。
【0053】
314では、一次オーディオ・デバイスは、オーディオ伝達関数に基づいてオーディオ出力を修正し、修正されたオーディオ出力を出力する。たとえば、検出されたオーディオの特定の周波数帯域のレベルが閾値を超えている場合、一次オーディオ・デバイスは、その特定の周波数帯域におけるオーディオ出力を低下させる。
【0054】
デバイスは、所望に応じて、後でセットアップ・フェーズに再びはいることができる。たとえば、初期セットアップ中にドア116(
図1参照)が閉じていて、その後ドア116が開かれた場合、ユーザーは、オーディオ伝達関数を再決定することを一次オーディオ・デバイスに所望してもよい。もう一つの例として、ユーザーが、第3の位置における検出オーディオ信号に適合するように一次オーディオ・デバイスを再構成することを望む場合、ユーザーは、第3の位置に関連するオーディオ伝達関数を決定するために、二次オーディオ・デバイスを第3の位置に配置し、再びセットアップ・フェーズにはいってもよい。
【0055】
図4は、オーディオ・デバイス400のブロック図である。オーディオ・デバイス400は、オーディオ・デバイス130またはオーディオ・デバイス140(
図1参照)に対応しうる。オーディオ・デバイス400は、方法200(
図2参照)または方法300(
図3参照)の一つまたは複数のステップを実装してもよい。オーディオ・デバイス400は、プロセッサ402、メモリ404、ネットワーク・コンポーネント406、スピーカー408、およびマイクロフォン410を含む。オーディオ・デバイス400は、簡潔のため詳述しない他のコンポーネントを含んでいてもよい。オーディオ・デバイス400のハードウェアは、AmazonからのEcho(商標)デバイスまたはAppleからのHomePod(商標)デバイスのような既存のデバイスを本稿を通じて記載される追加的な機能性をもって修正したものによって実装されてもよい。
【0056】
プロセッサ402は、一般に、オーディオ・デバイス400の動作を制御する。プロセッサ402は、たとえば一つまたは複数のコンピュータ・プログラムを実行することによって、方法200(
図2参照)または方法300(
図3参照)の一つまたは複数のステップを実施しうる。
【0057】
メモリ404は、一般に、オーディオ・デバイス400のための記憶を提供する。メモリ404は、プロセッサ402によって実行されるプログラム、さまざまな構成設定などを記憶してもよい。
【0058】
ネットワーク・コンポーネント406は、一般に、オーディオ・デバイス400と他のデバイス(図示せず)との間の電子通信を可能にする。たとえば、オーディオ・デバイス400がオーディオ・デバイス130、140(
図1参照)を実装するために使用される場合、ネットワーク・コンポーネント406は、オーディオ・デバイス130、140の間の電子通信を可能にする。もう一つの例として、ネットワーク・コンポーネント406は、オーディオ・デバイス400を、オーディオ・デバイス400と別のデバイスとの間の中間デバイスとしての、ルーター・デバイス(図示せず)、サーバー・デバイス(図示せず)、または別のデバイスに接続してもよい。ネットワーク・コンポーネント406は、IEEE802.11プロトコル(たとえば、無線ローカルエリアネットワーク)、IEEE802.15.1プロトコル(たとえば、Bluetooth(登録商標)規格)などの無線プロトコルを実装してもよい。一般に、ネットワーク・コンポーネント406は、検出オーディオ信号に関連する情報の通信(
図2の206参照)を可能にする。
【0059】
スピーカー408は、一般に、オーディオ出力(たとえば、
図1のオーディオ出力150に対応する)を出力する。スピーカー408は、オーディオ・デバイス400のコンポーネントである多数のスピーカーのうちの一つであってもよい。
【0060】
マイクロフォン410は、一般に、オーディオ信号を検出する。上述したように、オーディオ・デバイス400がオーディオ・デバイス140(
図1参照)を実装するとき、マイクロフォン410は、オーディオ・デバイス130から部屋112に伝搬するオーディオ信号152を検出する。マイクロフォン410はまた、ファン・ノイズ、周囲ノイズ、会話など、オーディオ・デバイス400の近傍の他のオーディオ入力をも検出してもよい。
【0061】
スピーカー408とマイクロフォン410の両方を有する代わりに、オーディオ・デバイス400は、それら2つのうちの一方のみを有していてもよい。例として、オーディオ・デバイス400は、マイクロフォン410を省略してもよい。別の例として、オーディオ・デバイス400は、スピーカー408を省略してもよい。
【0062】
図5は、オーディオ・デバイス500のブロック図である。オーディオ・デバイス400(
図4参照)と比較して、オーディオ・デバイス500は、スピーカー・アレイ508を含む。スピーカー・アレイ508は、複数のスピーカー(図示した408a、408b、および408c)を含む。オーディオ・デバイス500はまた、オーディオ・デバイス400(
図4参照)に関して上記で論じたように、プロセッサ402、メモリ404、ネットワーク・コンポーネント406、およびマイクロフォン410を含む。(マイクロフォン410は、オーディオ・デバイス400に関して上記で論じたように、オーディオ・デバイス500から省略されてもよい)。
【0063】
スピーカー・アレイ508は、隣接する部屋における検出されるオーディオを減らすために、そのオーディオ出力にスピーカー指向性を加えてもよい。一般に、スピーカーの指向性とは、オーディオ出力のサイズ、形状、方向を調整することをいう。スピーカーの指向性は、スピーカー・アレイ508内のスピーカーのサブセットのみを使用することによって、スピーカー・アレイ508のためのドライバのサブセットのみを選択することによって、または複数のドライバを使用するビームフォーミングによって実現できる。一般に、ビームフォーミングは、各スピーカーからの出力(遅延、ボリューム、および位相など)を調整して、総合的なオーディオ出力のサイズ、形状または方向を制御することを含む。たとえば、オーディオ出力のレベルは、ある方向または位置で増加され、別の方向または位置で減少されてもよい。
【0064】
オーディオ・デバイス500は、オーディオ出力を修正(
図2の210参照)するときにスピーカーの指向性を制御してもよい。たとえば、他の部屋からの検出オーディオ信号に関連する情報(
図2の206参照)が特定の周波数帯域における閾値を超える場合、オーディオ・デバイス500は、スピーカー指向性を修正してオーディオ出力の方向または位置を調整し、その結果をモニタリングしてもよい。検出オーディオ信号に関するその後の情報が、検出オーディオ信号がもはや閾値を超えていないことを示す場合、指向性調整は成功しており、そうでなければ、オーディオ・デバイス500は、オーディオ出力の放射パターンまたは位置に異なる指向性調整を与える。
【0065】
以下のセクションは、本明細書で論じられるオーディオ・デバイスの追加的な機能について説明する。
【0066】
周波数帯域
【0067】
一般に、伝達関数は、さまざまな入力値をさまざまな出力値にマッピングする関数を指す。本明細書で使用されるところでは、オーディオ伝達関数は、入力の周波数の関数としての出力の振幅を指す。オーディオ・デバイスは、帯域毎にオーディオ伝達関数を決定してもよく、各特定の帯域がその振幅に適用される異なる減衰量をもつ。
【0068】
本明細書に記載されるオーディオ・デバイス(たとえば、
図4のオーディオ・デバイス400)は、検出オーディオ信号の異なる周波数帯域について異なる閾値を使用してもよい。検出オーディオ信号に関連する情報が特定の周波数帯域において閾値を超える場合、オーディオ・デバイスは、オーディオ出力に印加されたときに、その特定の周波数帯域におけるオーディオ出力の振幅を減少させるオーディオ伝達関数を決定する。たとえば、低周波数帯域は、中周波数帯域または高周波数帯域よりも低い閾値を有していてもよい。閾値は、人間の心理音響学的特性に従って定義されてもよい。たとえば、人間の聴覚が第2の帯域より第1の帯域においてより敏感である場合、第1の帯域についての閾値は、第2の帯域についての閾値よりも低い値に設定されてもよい。
【0069】
閾値は、人間の聴覚の心理音響モデルに従って設定されてもよい。閾値のために心理音響モデルを使用する例は、非特許文献1に記載されている。このモデルでは、一セットの臨界帯域フィルタ応答が等価長方形帯域幅(ERB)スケールに沿って一様な間隔にされ、各フィルタ形状が、丸められた指数関数で記述され、帯域は1ERBの間隔を用いて分布させられる。閾値のために心理音響モデルを使用する別の例は、特許文献8に記載されている。
【0070】
オーディオ・デバイスは、特定の周波数帯域において閾値を超えたときに、オーディオ出力にdBでの漸進的な低下を適用してもよい。たとえば、検出オーディオ信号が特定の帯域において5dBだけ閾値を超える場合、オーディオ・デバイスは、オーディオ伝達関数を使用して、その特定の帯域における5dBの減衰を、徐々に(たとえば、5秒間の期間にかけて)オーディオ出力に加えてもよい。
任意的に、帯域固有の閾値は、その特定の帯域について決定された周囲ノイズ・レベルと、たとえば心理音響モデルに基づくその帯域についての所定の閾値との両方に基づいて、決定されてもよい。たとえば、帯域固有の各閾値は、心理音響モデルに基づく、その帯域のための所定の閾値レベル(実際のオーディオ出力および実際のノイズ・レベルに依存しない)と、その周波数帯域内の周囲ノイズ・レベル(第2の位置における実際のノイズに基づく)との最大値であってもよい。よって、周囲ノイズ・レベルが前記閾値レベルを超える場合を除いて、心理音響モデルに基づく帯域固有の閾値が使用される。
【0071】
図6A~6Eは、オーディオ出力および検出オーディオ信号について、閾値および周波数帯域の一例を示す表である。
図6Aは、3つの帯域のそれぞれにおいて100dBである、第1の位置におけるオーディオ出力のレベルを示す。(例示の簡単のために、3つの帯域のみが示されているが、上述したように、オーディオ・デバイスは、3つより多くの帯域、たとえば、20~40個の帯域を実装してもよい)。
図6Bは、第2の位置における検出オーディオ信号のレベルを示す。これは、第1の帯域では75dB、第2の帯域では60dB、第3の帯域では50dBである。
図6Aおよび
図6Bを比較して、2つの位置の間の伝送特性は、第2の帯域よりも第1の帯域に対してより透過性であり、第3の帯域よりも第2の帯域に対してより透過性であることを注意しておく。
【0072】
図6Cは、前記3つの帯域についての閾値を示す。該閾値は70、60および55dBである。
図6Bと
図6Cを比較して、第1の帯域で閾値を5dBを超えているので、オーディオ・デバイスは、その帯域でのオーディオ出力を(たとえば、徐々に5dB)減少させるオーディオ伝達関数を決定することを注意しておく。
【0073】
図6Dは、オーディオ伝達関数を適用した結果としての、第1の位置におけるオーディオ出力のレベルを示す。
図6Aと
図6Dを比較して、第1の帯域のオーディオ出力は今や95dB(以前は100dB)であり、他の帯域は変化していないことを注意しておく。
図6Eは、第2の位置における検出オーディオ信号のレベルを示している;今やすべての帯域が
図6Cの閾値以下であることを注意しておく。
【0074】
事実上、オーディオ・デバイスは、閾値を、検出オーディオ信号と比較することに基づいて、オーディオ出力に対するマルチ帯域コンプレッサ/リミッタとして動作する。
【0075】
オーディオ処理
【0076】
本明細書に記載されるオーディオ・デバイス(たとえば、
図4のオーディオ・デバイス400)は、オーディオ出力を修正(
図2の210参照)するために、一つまたは複数のオーディオ処理技術を実装してもよい。たとえば、オーディオ・デバイスは、ドルビー(登録商標)・オーディオ(商標)解決策、ドルビー(登録商標)Digital Plus解決策、ドルビー(登録商標)・マルチストリーム・デコーダMS12解決策、または他の好適なオーディオ処理技術を実装してもよい。オーディオ・デバイスは、ダイアログ向上器機能、ボリューム平準化器機能、等化器機能、オーディオ・レギュレーター機能などのさまざまな機能を使用して、オーディオ出力を修正しうる。たとえば、オーディオ・デバイスが、オーディオ出力がダイアログを含むと判断する場合、オーディオ・デバイスは、オーディオ伝達関数を適用する前に、ダイアログ向上器機能を起動してもよい。別の例として、オーディオ・デバイスは、オーディオ伝達関数を適用する前に、ボリューム平準化器機能を適用してもよい。別の例として、オーディオ・デバイスは、他の部屋からの前記検出オーディオ信号に関連する情報がある特定の周波数帯域における閾値を超える場合には、その特定の周波数帯域におけるオーディオ出力のレベルを調整するために等化器機能を使用してもよい。別の例として、オーディオ・デバイスは、オーディオ伝達関数を適用する前に、選択された周波数帯域を低減するために(たとえば、マルチ帯域コンプレッサを使用して)、オーディオ・レギュレーター機能(通常、典型的には低周波数の歪みを回避するために、スピーカーを定義された制限内に維持するために使用される)を使用してもよい。
【0077】
機械学習
【0078】
本明細書に記載されるオーディオ・デバイス(たとえば、
図4のオーディオ・デバイス400)は、使用統計を収集し、機械学習を実行して使用パターンを決定してもよく、オーディオ出力を調整する際に該決定された使用パターンを使用してもよい。使用パターンは、日ごとのパターン、平日対週末のパターンなどに融合されてもよい。たとえば、ほとんどの日において、午前0時から午前6時までの間に隣接する部屋の周囲ノイズが少ない場合、これは、誰かが隣接する部屋で寝ていることを示す可能性があり、この使用パターンの結果、閾値を超える検出オーディオ信号がない場合でも、その時間期間の間、オーディオ・デバイスはそのオーディオ出力を下げてもよい。別の例として、隣接する部屋における周囲ノイズが、週末にはより遅い時間帯に移ることがあり(隣接する部屋の人がより遅くまで起きていて、より遅く寝ることに相当)、この利用パターンの結果、オーディオ・デバイスは、平日に比べてより遅い時刻にそのオーディオ出力を下げてもよい。別の例として、ユーザーがオーディオ・デバイスを第1の位置内で(または第1の位置から異なる位置に)移動させると、使用統計は(変化する伝送、指向性などのため、第2の位置に関して)新しい位置を反映し始め、機械学習は最終的に、新しい位置に従ってオーディオ出力が調整されることになる。
【0079】
ひとたびオーディオ・デバイスが使用パターンを特定したら、オーディオ・デバイスはユーザーにその使用パターンを確認するよう求めてもよい。たとえば、オーディオ・デバイスが、平日の午前0時から午前6時の間に隣の部屋における静かな時間帯を識別するとき、オーディオ・デバイスは、ユーザーにこの使用パターンを確認するよう求める。オーディオ・デバイスは、たとえば、ユーザー選択に従って、その使用統計をリセットしてもよい。たとえば、
図1の構成において、オーディオ・デバイス140が第3の部屋(図示せず)に動かされる場合、ユーザーは、オーディオ・デバイス140の新しい位置に適合するために、オーディオ・デバイス130がその使用統計をリセットすることを選択してもよい。
【0080】
本明細書に記載されるオーディオ・デバイス(たとえば、
図5のオーディオ・デバイス500)は、使用統計を収集し、オーディオ出力に対してスピーカー指向性制御を実行するときに機械学習を実行してもよい。これにより、オーディオ・デバイスは、前記他のオーディオ・デバイスの前記位置におけるスピーカー指向性マップを構築し、第2の位置における検出オーディオ信号を低減するために、過去に奏効したスピーカー指向性構成を選択することができる。たとえば、
図1の構成では、オーディオ・デバイス130は、初期には、ラウドスピーカー指向性制御を実行せず、オーディオ出力150は0度に向けられる。検出オーディオ信号152に基づいて、オーディオ・デバイス130は、その放射パターンを調整する;機械学習は、検出オーディオ信号152の最大レベルが、オーディオ出力150が0度に向けられるときであり、オーディオ出力150が+30度(たとえば、上から見て右に30度)に向けられるときには閾値を下回ることを示す。オーディオ・デバイス130が将来の時点においてスピーカー指向性制御を実行しているとき、音響放射の選択された主方向として+30度を使用し、次いで、検出オーディオ信号152のレベルが閾値を下回ることをモニタリングすることができる。
【0081】
プリセット機能
【0082】
検出オーディオ信号を連続的に検出し、オーディオ出力を修正する(たとえば、
図2)、またはセットアップ機能を実行する(たとえば、
図3)代わりに、本明細書に記載されるオーディオ・デバイス(たとえば、
図4のオーディオ・デバイス400)は、ユーザーによって選択されうるいくつかの一般的なオーディオ伝達関数を記憶していてもよい。一般的なオーディオ伝達関数のそれぞれは、多様な聴取環境構成の一つに対応してもよく、各オーディオ伝達関数の値は、多様な聴取環境構成について経験的に計算されてもよい。たとえば、聴取環境構成は、小さなアパートメント(たとえば、寝室1室と他の2室)、大きなアパートメント(たとえば、寝室3室と他の3室)、2階建てタウンハウス、3階建てタウンハウス、小さな家(たとえば、寝室2室と他の4室)、大きな家(たとえば、寝室4室と他の6室)、2階建ての大きな家などを含んでいてもよい。ユーザーが関連する聴取環境構成を選択すると、ユーザーは、オーディオ・デバイスの部屋の位置をも示してもよく、これがオーディオ伝達関数に影響しうる。たとえば、オーディオ・デバイスが寝室に置かれるとき、オーディオ伝達関数は、オーディオ・デバイスがリビングルームに置かれるときほどオーディオ出力を減衰させなくてもよい。
【0083】
クライアント/サーバー機能
【0084】
上記(たとえば、
図2の206)で論じたように、オーディオ・デバイス(たとえば、
図1のオーディオ・デバイス130)は、オーディオ伝達関数を決定する。代替として、サーバー・デバイスは、第2の位置からの(たとえば、オーディオ・デバイス140によって送信された)検出オーディオ信号に関連する情報を受信し、オーディオ伝達関数を決定し、第1の位置に(たとえば、オーディオ・デバイス130に)オーディオ伝達関数を送信してもよい。サーバー・デバイスは、家の中でオーディオ・デバイスと一緒に位置されるコンピュータであってもよく、あるいはサーバー・デバイスはリモートに位置されてもよい(たとえば、コンピュータ・ネットワークを介してアクセスされるクラウド・サービス)。
【0085】
サーバーは、オーディオ・デバイスから使用統計を収集し、使用統計に対して機械学習を実行し、その結果をオーディオ・デバイスに提供してもよい。たとえば、第2の部屋のオーディオ・デバイス140は、その使用統計をサーバーに送信してもよい;サーバーは、機械学習を実行し、第2の部屋では午前0時から午前6時の間、通常は周囲ノイズがないと判断してもよく;サーバーは、その解析の結果を第1の部屋のオーディオ・デバイス130に送信し;オーディオ・デバイス130は、それに応じてオーディオ出力を修正する。
【0086】
マルチデバイス機能
【0087】
上記(たとえば、
図1)で示したように、音響環境100は、2つの部屋があり、各部屋にオーディオ・デバイスがあるというコンテキストで論じられている。これらの機能は、3つ以上の部屋および3つ以上のオーディオ・デバイスで動作するように拡張されてもよい。各オーディオ・デバイスは、オーディオ出力を生成し、他のオーディオ・デバイスからのオーディオ信号を検出してもよい。たとえば、3つの部屋と3つのオーディオ・デバイスがある場合、第1のオーディオ・デバイスはオーディオ出力を生成してもよく;第2および第3のオーディオ・デバイスからのオーディオ信号を検出してもよい;第2のオーディオ・デバイスはオーディオ出力を生成してもよく、第1および第3のオーディオ・デバイスからのオーディオ信号を検出してもよく;第3のオーディオ・デバイスはオーディオ出力を生成してもよく、第1および第2のオーディオ・デバイスからのオーディオ信号を検出してもよい。
【0088】
次いで、各オーディオ・デバイスは、互いに他のオーディオ・デバイスからの検出オーディオ信号に基づいてオーディオ伝達関数を決定してもよい。3つのデバイスの例に戻ると、(第1のオーディオ・デバイスの観点から)第2のオーディオ・デバイスからの検出オーディオ信号が第1の周波数帯域において閾値を超え、第3のオーディオ・デバイスからの検出オーディオ信号が第2の周波数帯域において閾値を超える場合、第1のオーディオ・デバイスは、第1の周波数帯域および第2の周波数帯域においてオーディオ出力を減衰させる複合関数として、オーディオ伝達関数を決定してもよい。
【0089】
各オーディオ・デバイスは、実装されるネットワーク・プロトコルに従って、他のオーディオ・デバイスの、近傍での存在を決定してもよい。たとえば、IEEE802.11ネットワーク・プロトコルについて、さまざまなオーディオ・デバイスは、無線アドホックネットワーキングを介して互いを発見してもよく、あるいは、発見情報を提供する無線アクセスポイントにそれぞれ接続してもよい。別の例として、IEEE802.15.1ネットワーク・プロトコルについて、さまざまなオーディオ・デバイスはペアリング・プロセスを使用して互いを発見してもよい。
【0090】
住居間機能
【0091】
上記(たとえば、
図1)に示されるように、音響環境100は、単一の住居またはアパートメントのコンテキストで論じられている。オーディオ・デバイスの機能は、ある住居(またはアパートメント)でのオーディオ・デバイスが、別の住居(またはアパートメント)でのオーディオ・デバイスからの情報に応答して、そのオーディオ出力を調整するように拡張されてもよい。この調整は、さまざまなオーディオ・デバイスの所有者が知らないうちに実行されてもよい。たとえば、各階に20部屋ある大学寮と各部屋のオーディオ・デバイスを思い浮かべてみる。各オーディオ・デバイスは、互いに他のオーディオ・デバイスからの検出オーディオ信号に応答して、その出力を調整し、寮のさまざまな部屋の間で音の量を減少させる。
【0092】
実装の詳細
【0093】
ある実施形態は、ハードウェア、コンピュータ読取可能媒体上に記憶された実行可能モジュール、または両方の組み合わせ(たとえば、プログラマブル論理アレイ)で実施されてもよい。別段の記載がない限り、実施形態によって実行されるステップは、いかなる特定のコンピュータまたは他の装置にも本来的に関係している必要はない。ただし、ある種の実施形態では関係していることもありうる。特に、さまざまな汎用機械が、本明細書の教示に従って書かれたプログラムとともに使用されてもよく、または、要求される方法ステップを実行するために、より特殊化された装置(たとえば、集積回路)を構築することがより便利であることもある。よって、実施形態は、それぞれ少なくとも一つのプロセッサ、少なくとも一つのデータ記憶システム(揮発性および不揮発性メモリおよび/または記憶素子を含む)、少なくとも一つの入力装置またはポート、および少なくとも一つの出力装置またはポートを有する、一つまたは複数のプログラマブル・コンピュータ・システム上で実行される一つまたは複数のコンピュータ・プログラムにおいて実装されてもよい。プログラム・コードは、本明細書に記載される機能を実行し、出力情報を生成するために入力データに適用される。出力情報は、公知の仕方で一つまたは複数の出力デバイスに適用される。
【0094】
そのようなコンピュータ・プログラムのそれぞれは、好ましくは、汎用または特殊目的のプログラム可能なコンピュータによって読み出し可能な記憶媒体またはデバイス(たとえば、固体メモリまたは媒体、または磁気または光学媒体)に記憶またはダウンロードされ、本明細書に記載される手順を実行するためにコンピュータ・システムによって該記憶媒体またはデバイスが読まれるときに、コンピュータを構成し、動作させる。本発明のシステムは、コンピュータ・プログラムで構成された非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体として実装されると考えられてもよい。そのように構成された記憶媒体は、コンピュータ・システムに、本明細書に記載の機能を実行するために、特定のあらかじめ定義された仕方で動作させる。(ソフトウエア自体および無形または一時的な信号は、それらが特許できない主題である限りにおいて除外される。)
【0095】
上記の説明は、本発明の諸側面がどのように実施されうるかの例とともに、本発明のさまざまな実施形態を例示する。上記の例および実施形態は、唯一の実施形態とみなされるべきではなく、特許請求の範囲によって定義される本発明の柔軟性および利点を例示するために呈示されている。上記の開示および以下の特許請求の範囲に基づいて、他の構成、実施形態、実装および等価物が当業者には明らかであり、特許請求の範囲によって定義される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、使用されうる。
【0096】
本発明のさまざまな側面は、以下の列挙される例示的実施形態(enumerated example embodiment、EEE)から理解されうる。
【0097】
〔EEE1〕
オーディオ・デバイスによって生成される音の可聴性を減少させる方法であって、当該方法は:
第1の位置において前記オーディオ・デバイスによって、オーディオ出力を生成する段階と;
第1の位置とは異なる第2の位置において、前記オーディオ出力に対応する検出オーディオ信号を検出する段階と;
第2の位置から前記オーディオ・デバイスに、前記検出オーディオ信号に関連する情報を通信する段階と;
前記オーディオ・デバイスによって、前記情報に基づいて前記検出オーディオ信号のオーディオ伝達関数を決定する段階と;
前記オーディオ・デバイスによって、前記オーディオ伝達関数に基づいて前記オーディオ出力を修正する段階とを含む、
方法。
〔EEE2〕
前記オーディオ伝達関数を決定することは、前記検出オーディオ信号に関連する前記情報、前記オーディオ出力に関連する情報、および少なくとも一つの閾値を比較することを含む、EEE1記載の方法。
〔EEE2A〕
前記オーディオ・デバイスが、前記オーディオ出力の一つまたは複数の周波数帯域を減衰させるための前記オーディオ伝達関数を決定し、当該方法は:
前記オーディオ出力および前記検出されたオーディオを少なくとも3つのスペクトル帯域、たとえば20~40のスペクトル帯域に分割する段階と;
前記検出されたオーディオの、帯域固有の閾値レベルとのスペクトル帯域毎の比較を実行する段階と;
前記検出されたオーディオが帯域固有の閾値レベルを超える前記オーディオ出力のスペクトル帯域のみを減衰させる段階とを含む、
EEE2記載の方法。
〔EEE3〕
物理的障壁が、前記第1の位置と前記第2の位置とを隔てている、EEE1記載の方法。
〔EEE4〕
前記オーディオ・デバイスは、前記物理的障壁によって修正された前記オーディオ出力に応じて、前記検出オーディオ信号の前記オーディオ伝達関数を決定する、EEE3記載の方法。
〔EEE5〕
前記オーディオ・デバイスが第1のオーディオ・デバイスであり、前記第2の位置にある第2のオーディオ・デバイスが前記検出オーディオ信号を検出し、前記第2のオーディオ・デバイスが前記検出オーディオ信号に関連する情報を前記第1のオーディオ・デバイスに通信する、EEE1記載の方法。
〔EEE6〕
前記第1のオーディオ・デバイスが、前記第2のオーディオ・デバイスが前記検出オーディオ信号を検出するのと同時に前記オーディオ出力を修正する、EEE5記載の方法。
〔EEE7〕
前記第2のオーディオ・デバイスは、セットアップ・フェーズ中に前記検出オーディオ信号を検出し、前記第1のオーディオ・デバイスは、前記セットアップ・フェーズ中に前記オーディオ伝達関数を決定し、前記第1のオーディオ・デバイスは、前記セットアップ・フェーズに続く動作フェーズ中に前記オーディオ出力を修正する、EEE5記載の方法。
〔EEE8〕
前記オーディオ出力は複数の周波数帯域を含み、前記オーディオ出力を修正することは、前記オーディオ伝達関数に基づいて、前記複数の周波数帯域のうちの一つまたは複数の周波数帯域における前記オーディオ出力を修正することを含む、EEE1記載の方法。
〔EEE9〕
前記複数の周波数帯域は、人間の聴覚の生理的応答に従って定義されている、EEE8記載の方法。
〔EEE10〕
前記オーディオ出力を修正することは、前記複数の周波数帯域のうちの前記一つまたは複数の周波数帯域における前記オーディオ出力を、前記オーディオ伝達関数に基づいて一つまたは複数の異なる量だけ修正することを含む、EEE8記載の方法。
〔EEE11〕
前記オーディオ伝達関数が、前記第1の位置と前記第2の位置との間の測定された伝送特性、および前記第2の位置の周囲ノイズ・レベルに基づく、EEE1記載の方法。
〔EEE12〕
前記オーディオ伝達関数が、前記第1の位置と前記第2の位置との間の測定された伝送特性、および人間の聴覚の生理的応答に基づく、EEE1記載の方法。
〔EEE13〕
前記オーディオ・デバイスは複数のスピーカーを含み、前記オーディオ出力を修正することは:
前記複数のスピーカーを用いてスピーカー指向性を制御して、第1の位置における前記オーディオ出力の第1のレベルが維持され、第2の位置における前記検出オーディオ信号の第2のレベルが低減されるように、前記オーディオ出力の位置応答を調整することを含む、
EEE1記載の方法。
〔EEE14〕
前記オーディオ出力が、ラウドネス平準化およびラウドネス領域処理のうちの少なくとも一つを用いて修正される、EEE1記載の方法。
〔EEE15〕
第2の位置における周囲ノイズ・レベルを連続的に検出するし;
機械学習を用いて、検出された周囲ノイズ・レベルにおける少なくとも一つのパターンを判別することをさらに含み、
前記オーディオ出力は、前記オーディオ伝達関数および前記少なくとも一つのパターンに基づいて修正される、
EEE1記載の方法。
〔EEE16〕
第3の位置にある第3のオーディオ・デバイスによって第2のオーディオ出力を生成する段階であって、第2の位置で検出された前記検出オーディオ信号は、前記オーディオ出力および前記第2のオーディオ出力に対応し、前記情報は前記検出オーディオ信号および前記第2の検出オーディオ信号に関連し、前記情報は前記オーディオ・デバイスおよび前記第3のオーディオ・デバイスに通信される、段階と;
第3のオーディオ・デバイスによって、前記情報に基づいて、前記検出オーディオ信号の第2のオーディオ伝達関数を決定する段階と;
第3のオーディオ・デバイスによって、前記第2のオーディオ伝達関数に基づいて前記第2のオーディオ出力を修正する段階とをさらに含む、
EEE1記載の方法。
〔EEE17〕
オーディオ・デバイスによって生成される音の可聴性を低下させるためのオーディオ・デバイスを含む装置であって、当該装置は:
プロセッサ;
メモリ;
スピーカー;および
ネットワーク・コンポーネントを有しており、
前記プロセッサは:
第1の位置にある前記スピーカーによってオーディオ出力を生成する段階と;
第1の位置とは異なる第2の位置から前記ネットワーク・コンポーネントによって、第2の位置において検出された前記オーディオ出力に対応する検出オーディオ信号に関連する情報を受信する段階と;
前記プロセッサによって、前記情報に基づいて前記検出オーディオ信号のオーディオ伝達関数を決定する段階と;および
前記プロセッサによって、前記オーディオ伝達関数に基づいて前記オーディオ出力を修正する段階
とを含む処理を実行するよう前記オーディオ・デバイスを制御するよう構成されている、
装置。
〔EEE18〕
オーディオ・デバイスによって生成される音の可聴性を低減するためのシステムであって、当該システムは:
プロセッサ、メモリ、スピーカー、およびネットワーク・コンポーネントを有する第1のオーディオ・デバイスと;
プロセッサ、メモリ、マイクロフォン、およびネットワーク・コンポーネントを有する第2のオーディオ・デバイスとを有しており、
前記第1のオーディオ・デバイスの前記プロセッサおよび前記第2のオーディオ・デバイスの前記プロセッサは:
第1の位置にある前記第1のオーディオ・デバイスのスピーカーによってオーディオ出力を生成する段階と;
第1の位置とは異なる第2の位置における前記第2のオーディオ・デバイスのマイクロフォンによって、前記オーディオ出力に対応する検出オーディオ信号を検出する段階と;
前記第2のオーディオ・デバイスのネットワーク・コンポーネントを介して、前記検出オーディオ信号に関連する情報を前記第2の位置から前記第1のオーディオ・デバイスのネットワーク・コンポーネントへ通信する段階と;
前記第1のオーディオ・デバイスのプロセッサによって、前記情報に基づいて前記検出オーディオ信号のオーディオ伝達関数を決定する段階と;
前記第1のオーディオ・デバイスのプロセッサによって、前記オーディオ伝達関数に基づいて前記オーディオ出力を修正する段階
とを含む処理を実行するよう、前記第1のオーディオ・デバイスおよび前記第2のオーディオ・デバイスを制御するように構成されている、
システム。
〔EEE19〕
前記第1のオーディオ・デバイスは、さらにマイクロフォンを有しており、前記第2のオーディオ・デバイスは、さらにスピーカーを有しており、前記第2のオーディオ・デバイスは、前記第1のオーディオ・デバイスの検出オーディオ信号に関連する情報に応答して、前記第2のオーディオ・デバイスのオーディオ出力を調整する、EEE18記載のシステム。
〔EEE20〕
オーディオ・デバイスによって生成される音の可聴性を低減するためにオーディオ・デバイスを制御するためのコンピュータ・プログラムを記憶している非一時的コンピュータ読み取り可能媒体であって、前記オーディオ・デバイスは、プロセッサ、メモリ、スピーカー、およびネットワーク・コンポーネントを含み、前記コンピュータ・プログラムは、前記プロセッサによって実行されるときに:
第1の位置にある前記スピーカーによってオーディオ出力を生成する段階と;
第1の位置とは異なる第2の位置から前記ネットワーク・コンポーネントによって、第2の位置で検出された前記オーディオ出力に対応する検出オーディオ信号に関連する情報を受信する段階と;
前記プロセッサによって、前記情報に基づいて前記検出オーディオ信号のオーディオ伝達関数を決定する段階と;
前記プロセッサによって、前記オーディオ伝達関数に基づいて前記オーディオ出力を修正する段階
とを含む処理を実行するよう前記オーディオ・デバイスを制御する、
コンピュータ読み取り可能媒体。
【0098】
いくつかの態様を記載しておく。
〔態様1〕
オーディオ・デバイスによって生成される音の可聴性を低減する方法であって、当該方法は:
第1の位置において前記オーディオ・デバイスによって、オーディオ出力を生成する段階と;
第1の位置とは異なる第2の位置において、前記オーディオ出力に対応する検出オーディオ信号を検出する段階と;
前記オーディオ・デバイスに、前記検出オーディオ信号に関連する情報を通信する段階と;
前記オーディオ・デバイスによって、前記情報に基づいて前記オーディオ出力の一つまたは複数の周波数帯域を減衰させるためのオーディオ伝達関数を決定する段階と;
前記オーディオ・デバイスによって、前記オーディオ伝達関数を適用することによって前記オーディオ出力を修正する段階とを含み、
前記オーディオ伝達関数は、第2の位置の周囲ノイズのレベルを考慮に入れて、第1の位置と第2の位置との間の測定された伝送特性に基づいて決定される、
方法。
〔態様2〕
前記周囲ノイズは、前記検出オーディオ信号に関連する情報と前記オーディオ出力とを比較することによって決定される、態様1記載の方法。
〔態様3〕
前記周囲ノイズが前記検出オーディオ信号における一つまたは複数の周波数帯域をマスクするかどうかを判定することをさらに含み、前記周囲ノイズが前記検出オーディオ信号における一つまたは複数の周波数帯域をマスクすると判別することに応答して、前記オーディオ伝達関数は、前記一つまたは複数のマスキング周波数帯域に対応する前記オーディオ出力の周波数帯域を減衰させない、態様1または2記載の方法。
〔態様4〕
前記オーディオ伝達関数を決定することは、前記検出オーディオ信号に関連する前記情報、前記オーディオ出力に関連する情報、および少なくとも一つの閾値を比較することを含む、態様1ないし3のうちいずれか一項記載の方法。
〔態様5〕
前記オーディオ出力および前記検出オーディオを少なくとも3つのスペクトル帯域に分割し;
前記検出オーディオの、帯域固有の閾値レベルとのスペクトル帯域毎の比較を実行し;
前記検出オーディオが帯域固有の閾値レベルを超える前記オーディオ出力のスペクトル帯域のみを減衰させることを含む、
態様4記載の方法。
〔態様6〕
物理的障壁が、前記第1の位置と前記第2の位置とを隔てている、態様1ないし5のうちいずれか一項記載の方法。
〔態様7〕
前記オーディオ・デバイスは、前記物理的障壁によって修正された前記オーディオ出力に応じて、前記検出オーディオ信号の前記オーディオ伝達関数を決定する、態様6記載の方法。
〔態様8〕
前記オーディオ・デバイスが第1のオーディオ・デバイスであり、前記第2の位置にある第2のオーディオ・デバイスが前記検出オーディオ信号を検出し、前記第2のオーディオ・デバイスは、前記検出オーディオ信号に関連する前記情報を前記第1のオーディオ・デバイスに通信する、態様1ないし7のうちいずれか一項記載の方法。
〔態様9〕
前記第1のオーディオ・デバイスは、前記第2のオーディオ・デバイスが前記検出オーディオ信号を検出するのと同時に前記オーディオ出力を修正する、態様8記載の方法。
〔態様10〕
前記第2のオーディオ・デバイスは、セットアップ・フェーズ中に前記検出オーディオ信号を検出し、前記第1のオーディオ・デバイスは、前記セットアップ・フェーズ中に前記オーディオ伝達関数を決定し、前記第1のオーディオ・デバイスは、前記セットアップ・フェーズに続く動作フェーズ中に前記オーディオ出力を修正する、態様8記載の方法。
〔態様11〕
前記オーディオ出力の前記一つまたは複数の周波数帯域は、人間の聴覚の生理的応答に従って定義される、態様1ないし10のうちいずれか一項記載の方法。
〔態様12〕
前記オーディオ出力を修正することが、前記オーディオ出力の前記一つまたは複数の周波数帯域を一つまたは複数の異なる量だけ減衰させることを含む、態様1ないし11のうちいずれか一項記載の方法。
〔態様13〕
前記オーディオ出力は、ラウドネス平準化およびラウドネス領域処理のうちの少なくとも一つを使って修正される、態様1ないし12のうちいずれか一項記載の方法。
〔態様14〕
前記オーディオ伝達関数は、前記第1の位置と前記第2の位置との間の測定された伝送特性、および人間の聴覚の生理的応答に基づいて決定される、態様1ないし13のうちいずれか一項記載の方法。
〔態様15〕
マイクロフォンを使って第2の位置における周囲ノイズ・レベルを連続的に検出し;
機械学習を用いて、検出された周囲ノイズ・レベルにおける少なくとも一つのパターンを判別することをさらに含み、
前記オーディオ出力は、前記オーディオ伝達関数および前記少なくとも一つのパターンに基づいて修正される、
態様1ないし14のうちいずれか一項記載の方法。
〔態様16〕
前記オーディオ・デバイスが複数のスピーカーを含み、前記オーディオ出力を修正することが:
前記複数のスピーカーを用いてスピーカー指向性を制御して、第2の位置における前記検出オーディオ信号のレベルが低減されるように前記オーディオ出力の位置応答を調整することを含む、
態様1ないし15のうちいずれか一項記載の方法。
〔態様17〕
オーディオ・デバイス;
プロセッサ;
メモリ;
スピーカー;および
ネットワーク・コンポーネントを有する装置であって、
前記プロセッサは:
第1の位置にある前記スピーカーによってオーディオ出力を生成する段階と;
第1の位置とは異なる第2の位置において検出された前記オーディオ出力に対応する検出オーディオ信号に関連する情報を、前記ネットワーク・コンポーネントによって受信する段階と;
前記プロセッサによって、前記情報に基づいて、前記オーディオ出力の一つまたは複数の周波数帯域を減衰させるためのオーディオ伝達関数を決定する段階と;
前記プロセッサによって、前記オーディオ伝達関数を適用して前記オーディオ出力を修正する段階
とを含む処理を実行するよう前記オーディオ・デバイスを制御するように構成されており、
前記プロセッサは、第2の位置の周囲ノイズのレベルを考慮に入れて、第1の位置と第2の位置との間の測定された伝送特性に基づいて前記オーディオ伝達関数を決定する、
装置。
〔態様18〕
プロセッサ、メモリ、スピーカー、およびネットワーク・コンポーネントを有する第1のオーディオ・デバイスと;
プロセッサ、メモリ、マイクロフォン、およびネットワーク・コンポーネントを有する第2のオーディオ・デバイスとを有するシステムであって、
前記第1のオーディオ・デバイスのプロセッサおよび前記第2のオーディオ・デバイスのプロセッサは:
第1の位置にある前記第1のオーディオ・デバイスのスピーカーによってオーディオ出力を生成する段階と;
第1の位置とは異なる第2の位置における前記第2のオーディオ・デバイスのマイクロフォンによって、前記オーディオ出力に対応する検出オーディオ信号を検出する段階と;
前記第2のオーディオ・デバイスのネットワーク・コンポーネントを介して、前記検出オーディオ信号に関連する情報を前記第2の位置から前記第1のオーディオ・デバイスのネットワーク・コンポーネントへ通信する段階と;
前記第1のオーディオ・デバイスのプロセッサによって、前記情報に基づいて、前記オーディオ出力の一つまたは複数の周波数帯域を減衰させるためのオーディオ伝達関数を決定する段階と;
前記第1のオーディオ・デバイスのプロセッサによって、前記オーディオ伝達関数を適用することによって前記オーディオ出力を修正する段階
とを含む処理を実行するよう、前記第1のオーディオ・デバイスおよび前記第2のオーディオ・デバイスを制御するように構成されており、
前記第1のオーディオ・デバイスのプロセッサは、第2の位置の周囲ノイズのレベルを考慮に入れて、第1の位置と第2の位置との間の測定された伝送特性に基づいて前記オーディオ伝達関数を決定する、
システム。
〔態様19〕
前記第1のオーディオ・デバイスはさらにマイクロフォンを有しており、前記第2のオーディオ・デバイスはさらにスピーカーを有しており、前記第2のオーディオ・デバイスは、前記第1のオーディオ・デバイスの検出オーディオ信号に関連する情報に応答して、前記第2のオーディオ・デバイスのオーディオ出力を調整する、態様18記載のシステム。
〔態様20〕
オーディオ・デバイスによって生成される音の可聴性を低減するためにオーディオ・デバイスを制御するためのコンピュータ・プログラムを記憶している非一時的コンピュータ読み取り可能媒体であって、前記オーディオ・デバイスは、プロセッサ、メモリ、スピーカー、およびネットワーク・コンポーネントを含み、前記コンピュータ・プログラムは、前記プロセッサによって実行されるときに:
第1の位置にある前記スピーカーによってオーディオ出力を生成する段階と;
第1の位置とは異なる第2の位置から前記ネットワーク・コンポーネントによって、第2の位置で検出された前記オーディオ出力に対応する検出オーディオ信号に関連する情報を受信する段階と;
前記プロセッサによって、前記情報に基づいて、前記オーディオ出力の一つまたは複数の周波数帯域を減衰させるためのオーディオ伝達関数を決定する段階と;
前記プロセッサによって、前記オーディオ伝達関数を適用することによって前記オーディオ出力を修正する段階
とを含む処理を実行するよう前記オーディオ・デバイスを制御するものであり、
前記プロセッサは、第2の位置の周囲ノイズのレベルを考慮に入れて、第1の位置と第2の位置との間の測定された伝送特性に基づいて前記オーディオ伝達関数を決定した、
コンピュータ読み取り可能媒体。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0099】
【特許文献1】欧州出願EP0414524A2、1991年2月27日公開
【特許文献2】米国出願公開第2012/0121097号
【特許文献3】ES出願ES2087020A2、1996年7月1日公開
【特許文献4】ES出願ES2087020A2
【特許文献5】米国出願公開第2012/0195447号
【特許文献6】米国出願公開第2009/0129604号
【特許文献7】米国出願公開第2016/0211817号
【特許文献8】米国特許第8,019,095号
【非特許文献】
【0100】
【非特許文献1】B.C.J. Moore, B. Glasberg, T. Baer、"A Model for the Prediction of Thresholds, Loudness, and Partial Loudness"、Journal of the Audio Engineering Society、Vol.45, No.4, April 1997, pp.224-240
【外国語明細書】