(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139243
(43)【公開日】2023-10-03
(54)【発明の名称】抗ペリオスチン抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230926BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20230926BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230926BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230926BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230926BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230926BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20230926BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230926BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/18
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61P35/00
A61K39/395 E
A61K39/395 T
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023122675
(22)【出願日】2023-07-27
(62)【分割の表示】P 2021534246の分割
【原出願日】2019-12-13
(31)【優先権主張番号】62/899,075
(32)【優先日】2019-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/779,996
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】521258005
【氏名又は名称】ベーリンガー・インゲルハイム・イオ・カナダ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOEHRINGER INGELHEIM IO CANADA INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ジェサ,アリフ
(72)【発明者】
【氏名】フランソン,ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】マクグレイ,エージェイ・ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ヒューム,ジョアン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】抗腫瘍免疫を抑制し、腫瘍の増殖及び進行を駆動すると考えられているペリオスチンの機能を遮断する抗体を提供する。
【解決手段】ペリオスチンに結合する組換え抗体又はその抗原結合断片であって、ここでの抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ特定のアミノ酸配列を含む、免疫グロブリン重鎖CDR1(CDR-H1)、免疫グロブリン重鎖CDR2(CDR-H2)、免疫グロブリン重鎖CDR3(CDR-H3)、免疫グロブリン軽鎖CDR1(CDR-L1)、免疫グロブリン軽鎖CDR2(CDR-L2)、及び免疫グロブリン軽鎖CDR3(CDR-L3)を含む、抗体又はその抗原結合断片である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペリオスチンに結合する組換え抗体又はその抗原結合断片であって、ここでの該抗体又はその抗原結合断片は、
a)配列番号1(GYTFTSYG)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR1(CDR-H1);
b)配列番号2(ISAYNGNT)、3(ISAYSGNT)、4(ISAYQGNT)、5(ISAYTGNT)、又は6(ISAYDGNT)のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR2(CDR-H2);
c)配列番号7(DILVVPFDY)、8(DVLVVPFDY)、又は9(DMLVVPFDY)のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR3(CDR-H3);
d)配列番号10(SSDIGSNR)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR1(CDR-L1);
e)配列番号11(SND)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR2(CDR-L2);及び
f)配列番号12(AAWDDSLSTYV)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR3(CDR-L3)
を含む、抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
ペリオスチンに結合する組換え抗体又はその抗原結合断片であって、ここでの該抗体又はその抗原結合断片は、
a)配列番号1(GYTFTSYG)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR1(CDR-H1);
b)配列番号16(ISAYXGNT)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR2(CDR-H2);
c)配列番号17(DXLVVPFDY)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR3(CDR-H3);
d)配列番号10(SSDIGSNR)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR1(CDR-L1);
e)配列番号11(SND)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR2(CDR-L2);及び
f)配列番号12(AAWDDSLSTYV)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR3(CDR-L3)
のいずれか1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つを含み、ここでのXは任意のアミノ酸残基である、抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
組換え抗体又はその抗原結合断片が、
a)配列番号1(GYTFTSYG)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR1(CDR-H1);
b)配列番号2(ISAYNGNT)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR2(CDR-H2);
c)配列番号9(DMLVVPFDY)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR3(CDR-H3);
d)配列番号10(SSDIGSNR)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR1(CDR-L1);
e)配列番号11(SND)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR2(CDR-L2);及び
f)配列番号12(AAWDDSLSTYV)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR3(CDR-L3)
を含む、請求項1又は2に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
組換え抗体又はその抗原結合断片が、ヒトであるか、キメラであるか、又はヒト化されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
組換え抗体又はその抗原結合断片が、IgG抗体である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項6】
組換え抗体又はその抗原結合断片が、該組換え抗体又はその抗原結合断片の1つ以上のエフェクター機能を減少させる1つ以上の突然変異を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項7】
組換え抗体又はその抗原結合断片の1つ以上のエフェクター機能を減少させる1つ以上の突然変異が、EUの番号付け体系による、IgG4のN434A、N434H、T307A/E380A/N434A、M252Y/S254T/T256E、433K/434F/436H、T250Q、T250F、M428L、M428F、T250Q/M428L、N434S、V308W、V308Y、V308F、M252Y/M428L、D259I/V308F、M428L/V308F、Q311V/N434S、T307Q/N434A、E258F/V427T、S228P、L235E、S228P/L235E/R409K、S228P/L235E、K370Q、K370E、G446の欠失、K447の欠失、及びその組合せから選択された1つ以上の突然変異又は突然変異のセットを含む、請求項6に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項8】
組換え抗体又はその抗原結合断片の1つ以上のエフェクター機能を減少させる1つ以上の突然変異が、EUの番号付け体系による、IgG4のS228P、F234A、及びL235Aの突然変異を含む、請求項6に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項9】
組換え抗体又はその抗原結合断片が、Fab、F(ab)2、単一ドメイン抗体、又は一本鎖可変断片(scFv)である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項10】
免疫グロブリン重鎖可変領域及び免疫グロブリン軽鎖可変領域:
a)ここでの免疫グロブリン重鎖可変領域は、配列番号13に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含み;そして
b)ここでの免疫グロブリン軽鎖可変領域は、配列番号14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含み;
ここでの配列番号13のアミノ酸残基番号55は、アスパラギン、セリン、グルタミン、トレオニン、若しくはアスパラギン酸であるか、又は配列番号13のアミノ酸残基番号100は、メチオニン、イソロイシン、又はバリンである
を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項11】
組換え抗体又はその抗原結合断片が、ペリオスチンに結合した場合、配列番号15の以下のアミノ酸残基(N276、R284、E288、L287、V295及びK302)の1つと接触する、請求項1~10のいずれか一項に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項12】
組換え抗体又はその抗原結合断片が、ペリオスチンに結合した場合、配列番号15の以下のアミノ酸残基(N276、R284、E288、L287、V295及びK302)の中の2つ、3つ、4つ、又は5つと接触する、請求項1~11のいずれか一項に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項13】
組換え抗体又はその抗原結合断片が、ペリオスチンに結合した場合、配列番号15の以下のアミノ酸残基(N276、R284、E288、L287、V295、及びK302)の全てと接触する、請求項1~12のいずれか一項に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項14】
免疫グロブリン重鎖可変領域及び免疫グロブリン軽鎖可変領域:
a)ここでの免疫グロブリン重鎖可変領域は、配列番号13に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含み;そして
b)ここでの免疫グロブリン軽鎖可変領域は、配列番号14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含み;
ここでの配列番号13のアミノ酸残基番号55は、アスパラギン、セリン、グルタミン、トレオニン、若しくはアスパラギン酸であるか、又は配列番号13のアミノ酸残基番号100は、メチオニン、イソロイシン、又はバリンである
を含む、ペリオスチンに結合する組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項15】
免疫グロブリン重鎖可変領域及び免疫グロブリン軽鎖可変領域:
a)ここでの免疫グロブリン重鎖可変領域は、配列番号13に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含み;そして
b)ここでの免疫グロブリン軽鎖可変領域は、配列番号14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含む、
を含む、ペリオスチンに結合する組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項16】
免疫グロブリン重鎖可変領域及び免疫グロブリン軽鎖可変領域:
a)ここでの免疫グロブリン重鎖可変領域は、配列番号13に示されるアミノ酸配列に対して同一であるアミノ酸配列を含み;そして
b)ここでの免疫グロブリン軽鎖可変領域は、配列番号14に示されるアミノ酸配列に対して同一であるアミノ酸配列を含む
を含む、ペリオスチンに結合する組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項17】
組換え抗体又はその抗原結合断片が、ヒトであるか、ヒト化されているか、又はキメラである、請求項14~16のいずれか一項に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項18】
組換え抗体又はその抗原結合断片が、IgG抗体である、請求項14~17のいずれか一項に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項19】
組換え抗体又はその抗原結合断片が、該組換え抗体又はその抗原結合断片の1つ以上のエフェクター機能を減少させる1つ以上の突然変異を含む、請求項14~18のいずれか一項に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項20】
組換え抗体又はその抗原結合断片の1つ以上のエフェクター機能を減少させる1つ以上の突然変異が、EUの番号付け体系による、IgG4のN434A、N434H、T307A/E380A/N434A、M252Y/S254T/T256E、433K/434F/436H、T250Q、T250F、M428L、M428F、T250Q/M428L、N434S、V308W、V308Y、V308F、M252Y/M428L、D259I/V308F、M428L/V308F、Q311V/N434S、T307Q/N434A、E258F/V427T、S228P、L235E、S228P/L235E/R409K、S228P/L235E、K370Q、K370E、G446の欠失、K447の欠失、及びその組合せから選択された1つ以上の突然変異又は突然変異のセットを含む、請求項19に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項21】
組換え抗体又はその抗原結合断片の1つ以上のエフェクター機能を減少させる1つ以上の突然変異が、EUの番号付け体系による、IgG4のS228P、F234A、及びL235Aの突然変異を含む、請求項19に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項22】
組換え抗体又はその抗原結合断片が、Fab、F(ab)2、単一ドメイン抗体、又は一本鎖可変断片(scFv)である、請求項14~16のいずれか一項に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項23】
ペリオスチンのファシクリン2(FAS2)ドメインに結合する、組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項24】
組換え抗体又はその抗原結合断片が、ペリオスチンに結合した場合、配列番号15のアミノ酸276~302から選択されたアミノ酸残基と接触する、請求項23に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項25】
組換え抗体又はその抗原結合断片が、ペリオスチンに結合した場合、配列番号15の以下のアミノ酸残基(N276、R284、E288、L287、V295又はK302)の1つと接触する、請求項23又は24に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項26】
組換え抗体又はその抗原結合断片が、ペリオスチンに結合した場合、配列番号15の以下のアミノ酸残基(N276、R284、E288、L287、V295及びK302)の2つ、3つ、4つ、又は5つと接触する、請求項23~25のいずれか一項に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項27】
組換え抗体又はその抗原結合断片が、ペリオスチンに結合した場合、配列番号15の以下のアミノ酸残基(N276、R284、E288、L287、V295又はK302)の全てと接触する、請求項23~26のいずれか一項に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項28】
抗体又はその抗原結合断片が、
a)配列番号1(GYTFTSYG)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR1(CDR-H1);
b)配列番号2(ISAYNGNT)、3(ISAYSGNT)、4(ISAYQGNT)、5(ISAYTGNT)、又は6(ISAYDGNT)のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR2(CDR-H2);
c)配列番号7(DILVVPFDY)、8(DVLVVPFDY)、又は9(DMLVVPFDY)のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR3(CDR-H3);
d)配列番号10(SSDIGSNR)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR1(CDR-L1);
e)配列番号11(SND)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR2(CDR-L2);及び
f)配列番号12(AAWDDSLSTYV)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR3(CDR-L3)
を含む、請求項23~27のいずれか一項に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項29】
組換え抗体又はその抗原結合断片が、キメラであるか、ヒト化されているか、又はヒトである、請求項23~28のいずれか一項に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項30】
組換え抗体又はその抗原結合断片が、IgG抗体である、請求項23~29のいずれか一項に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項31】
組換え抗体又はその抗原結合断片が、該組換え抗体又はその抗原結合断片の1つ以上のエフェクター機能を減少させる1つ以上の突然変異を含む、請求項23~30のいずれか一項に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項32】
組換え抗体又はその抗原結合断片の1つ以上のエフェクター機能を減少させる1つ以上の突然変異が、EUの番号付け体系による、IgG4のN434A、N434H、T307A/E380A/N434A、M252Y/S254T/T256E、433K/434F/436H、T250Q、T250F、M428L、M428F、T250Q/M428L、N434S、V308W、V308Y、V308F、M252Y/M428L、D259I/V308F、M428L/V308F、Q311V/N434S、T307Q/N434A、E258F/V427T、S228P、L235E、S228P/L235E/R409K、S228P/L235E、K370Q、K370E、G446の欠失、K447の欠失、及びその組合せから選択された1つ以上の突然変異又は突然変異のセットを含む、請求項31に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項33】
組換え抗体又はその抗原結合断片の1つ以上のエフェクター機能を減少させる1つ以上の突然変異が、EUの番号付け体系による、IgG4のS228P、F234A、及びL235Aの突然変異を含む、請求項31に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項34】
組換え抗体又はその抗原結合断片が、Fab、F(ab)2、単一ドメイン抗体、又は一本鎖可変断片(scFv)である、請求項23~30のいずれか一項に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項35】
抗体が、ヒト肺線維芽細胞及び/又はマウス線維芽細胞を用いて実施された細胞接着アッセイにおいて、約50ナノモル未満のIC50を有する、請求項1~34のいずれか一項に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項36】
請求項1~35のいずれか一項に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片をコードしている核酸。
【請求項37】
請求項36に記載の核酸を含む細胞株。
【請求項38】
細胞株が、チャイニーズハムスター卵巣細胞株である、請求項37に記載の細胞株。
【請求項39】
請求項1~35のいずれか一項に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片と、薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤とを含む、医薬組成物。
【請求項40】
静脈内投与用に製剤化された、請求項39に記載の医薬組成物。
【請求項41】
皮下投与用に製剤化された、請求項39に記載の医薬組成物。
【請求項42】
腫瘍内投与用に製剤化された、請求項39に記載の医薬組成物。
【請求項43】
請求項1~35のいずれか一項に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は請求項39~42のいずれか一項に記載の医薬組成物を、個体に投与する工程を含む、個体の腫瘍内のコラーゲン含量を減少させる方法。
【請求項44】
腫瘍内のコラーゲン含量を減少させるのに使用するための、請求項1~35のいずれか一項に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は請求項39~42のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項45】
請求項1~35のいずれか一項に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は請求項39~42のいずれか一項に記載の医薬組成物を、個体に投与する工程を含む、個体におけるがんを処置する方法。
【請求項46】
がんが、神経膠芽腫、膵臓がん、乳がん、膀胱がん、腎臓がん、頭頸部がん、卵巣がん、皮膚がん、胃がん、中皮腫、肝臓がん、子宮内膜がん、大腸がん、子宮頸がん、前立腺がん、又は肺がんを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
がんの処置に使用するための、請求項1~35のいずれか一項に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は請求項39~42のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項48】
がんが、神経膠芽腫、膵臓がん、乳がん、膀胱がん、腎臓がん、頭頸部がん、卵巣がん、皮膚がん、胃がん、中皮腫、肝臓がん、子宮内膜がん、大腸がん、子宮頸がん、前立腺がん、又は肺がんを含む、請求項47に記載の使用。
【請求項49】
請求項1~35のいずれか一項に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は請求項39~42のいずれか一項に記載の医薬組成物を、個体に投与する工程を含む、個体の腫瘍内のM1マクロファージ表現型を増加させる及び/又はM2マクロファージ表現型を減少させる方法。
【請求項50】
腫瘍内のM1マクロファージ表現型を増加させる及び/又はM2マクロファージ表現型を減少させる方法に使用するための、請求項1~35のいずれか一項に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は請求項39~42のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項51】
請求項1~35のいずれか一項に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は請求項39~42のいずれか一項に記載の医薬組成物を、個体に投与する工程を含む、個体における抑制性顆粒球系骨髄球系細胞及び/又は腫瘍関連マクロファージの蓄積を減少させる方法。
【請求項52】
腫瘍内の抑制性顆粒球系骨髄球系細胞及び/又は腫瘍関連マクロファージの蓄積を減少させる方法に使用するための、請求項1~35のいずれか一項に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は請求項39~42のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項53】
請求項1~35のいずれか一項に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は請求項39~42のいずれか一項に記載の医薬組成物を、個体に投与する工程を含む、個体の腫瘍におけるCD4陽性及び/又はCD8陽性T細胞の出現頻度を増加させる方法。
【請求項54】
腫瘍内のCD4陽性及び/又はCD8陽性T細胞の出現頻度を増加させる方法に使用するための、請求項1~35のいずれか一項に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は請求項39~42のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項55】
請求項1~35のいずれか一項に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は請求項39~42のいずれか一項に記載の医薬組成物を、個体に投与する工程を含む、個体の腫瘍内のCD8陽性T細胞の出現頻度を増加させる方法。
【請求項56】
腫瘍内のCD8陽性T細胞の出現頻度を増加させる方法に使用するための、請求項1~35のいずれか一項に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は請求項39~42のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項57】
請求項1~35のいずれか一項に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は請求項39~42のいずれか一項に記載の医薬組成物を、個体に投与する工程を含む、個体におけるCD8陽性T細胞によるインターフェロンγの発現及び/又は放出によって測定されるような、CD8陽性T細胞の機能を高める方法。
【請求項58】
CD8陽性T細胞によるインターフェロンγの発現及び/又は放出によって測定されるような、CD8陽性T細胞の機能を高める方法に使用するための、請求項1~35のいずれか一項に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は請求項39~42のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項59】
請求項1~35のいずれか一項に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片と薬学的に許容される賦形剤、担体又は希釈剤とを混合する工程を含む、腫瘍内のコラーゲン含量を減少させるための組成物を作製する方法。
【請求項60】
請求項1~35のいずれか一項に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片と薬学的に許容される賦形剤、担体又は希釈剤とを混合する工程を含む、腫瘍内のM1マクロファージ表現型を増加させるための及び/又はM2マクロファージ表現型を減少させるための、組成物を作製する方法。
【請求項61】
請求項1~35のいずれか一項に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片と薬学的に許容される賦形剤、担体又は希釈剤とを混合する工程を含む、個体における抑制性顆粒球系骨髄球系細胞及び/又は腫瘍関連マクロファージの蓄積を減少させるための組成物を作製する方法。
【請求項62】
請求項1~35のいずれか一項に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片と薬学的に許容される賦形剤、担体又は希釈剤とを混合する工程を含む、個体の腫瘍内のCD4陽性及び/又はCD8陽性T細胞の出現頻度を増加させるための組成物を作製する方法。
【請求項63】
請求項1~35のいずれか一項に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片と薬学的に許容される賦形剤、担体又は希釈剤とを混合する工程を含む、個体の腫瘍内のCD8陽性T細胞によるインターフェロンγの発現及び/又は放出を増加させるための組成物を作製する方法。
【請求項64】
請求項1~35のいずれか一項に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片と薬学的に許容される賦形剤、担体又は希釈剤とを混合する工程を含む、がんを処置するための組成物を作製する方法。
【請求項65】
がんが、神経膠芽腫、膵臓がん、乳がん、膀胱がん、腎臓がん、頭頸部がん、卵巣がん、皮膚がん、胃がん、中皮腫、肝臓がん、子宮内膜がん、大腸がん、子宮頸がん、前立腺がん、又は肺がんを含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
請求項1~35のいずれか一項に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片の発現及び分泌を可能とするに十分な条件下で、細胞培養培地中で請求項37又は38に記載の細胞株をインキュベートする工程を含む、請求項1~35のいずれか一項に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片を産生する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年12月14日に出願された米国仮出願番号第62/779,996号、及び2019年9月11日に出願された米国仮出願番号第62/899,075号の恩典を主張し、これらは全て、その全体が参照によりここに組み入れられる。
【0002】
背景
ペリオスチン(POSTN)は、上皮間葉転換(EMT)、細胞・マトリックス相互作用、及び炎症をはじめとする、多くの病理学的プロセスに関与する多細胞タンパク質である。POSTNは、炎症、線維症、及びがんを含む、いくつかの病的状況において過剰発現され、ここでそれは、悪い予後に相関する。がんにおいて、POSTNは典型的には、がん関連線維芽細胞(CAF)などの間質細胞によって発現されるが、POSTNの発現はまた、がん惹起細胞(CIC)及び骨髄由来免疫抑制細胞においても報告されている。POSTNは、フィブロネクチン及びコラーゲンなどの他のマトリクス細胞タンパク質に結合することによって細胞外基質再構築を調節し、インテグリン受容体リガンドとして作用して、細胞の生存、遊走/浸潤、上皮間葉転換、血管新生、及び免疫細胞の動員を促進する。POSTNは、免疫の排除を促進することによって、及び腫瘍浸潤骨髄球系細胞による免疫抑制を増加させることによって、抗腫瘍免疫を抑制することを含む、がんの生物学の複数の側面に対して作用することによって、腫瘍の増殖及び進行を駆動すると仮定されている。
【0003】
要約
本明細書には、インテグリンにより媒介される細胞接着などの、ペリオスチンの機能を阻害する抗体が記載されている。このような抗体は、がんの処置に有用である。本明細書に記載の抗ペリオスチン抗体は、腫瘍のコラーゲン含量を減少させ、マクロファージのM1表現型への極性化を増加させつつ、顆粒球細胞及び腫瘍関連マクロファージなどの抑制性骨髄系細胞集団の浸潤を減少させ、腫瘍浸潤T細胞の蓄積及び抗腫瘍特性を増加させる。
【0004】
本明細書には、ペリオスチンに結合する組換え抗体又はその抗原結合断片が記載され、ここでの該抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1(GYTFTSYG)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR1(CDR-H1);配列番号2(ISAYNGNT)、3(ISAYSGNT)、4(ISAYQGNT)、5(ISAYTGNT)、又は6(ISAYDGNT)のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR2(CDR-H2);配列番号7(DILVVPFDY)、8(DVLVVPFDY)、又は9(DMLVVPFDY)のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR3(CDR-H3);配列番号10(SSDIGSNR)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR1(CDR-L1);配列番号11(SND)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR2(CDR-L2);及び配列番号12(AAWDDSLSTYV)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR3(CDR-L3)を含む。いくつかの実施態様では、該抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1(GYTFTSYG)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR1(CDR-H1);配列番号2(ISAYNGNT)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR2(CDR-H2);配列番号9(DMLVVPFDY)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR3(CDR-H3);配列番号10(SSDIGSNR)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR1(CDR-L1);配列番号11(SND)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR2(CDR-L2);及び配列番号12(AAWDDSLSTYV)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR3(CDR-L3)を含む。いくつかの実施態様では、該抗体又はその抗原結合断片は、ヒトであるか、キメラであるか、又はヒト化されている。いくつかの実施態様では、該組換え抗体又はその抗原結合断片は、IgG抗体である。特定の実施態様では、該組換え抗体又はその抗原結合断片は、該組換え抗体又はその抗原結合断片の1つ以上のエフェクター機能を減少させる1つ以上の突然変異を含む。特定の実施態様では、該組換え抗体又はその抗原結合断片の1つ以上のエフェクター機能を減少させる1つ以上の突然変異は、EUの番号付け体系による、IgG4のN434A、N434H、T307A/E380A/N434A、M252Y/S254T/T256E、433K/434F/436H、T250Q、T250F、M428L、M428F、T250Q/M428L、N434S、V308W、V308Y、V308F、M252Y/M428L、D259I/V308F、M428L/V308F、Q311V/N434S、T307Q/N434A、E258F/V427T、S228P、L235E、S228P/L235E/R409K、S228P/L235E、K370Q、K370E、G446の欠失、K447の欠失、及びその組合せから選択された1つ以上の突然変異又は突然変異のセットを含む。特定の実施態様では、該組換え抗体又はその抗原結合断片の1つ以上のエフェクター機能を減少させる1つ以上の突然変異は、EUの番号付け体系による、IgG4のS228P、F234A、及びL235Aの突然変異を含む。いくつかの実施態様では、該組換え抗体又はその抗原結合断片は、Fab、F(ab)2、単一ドメイン抗体、又は一本鎖可変断片(scFv)である。いくつかの実施態様では、該抗体又はその抗原結合断片は、免疫グロブリン重鎖可変領域及び免疫グロブリン軽鎖可変領域を含み、ここでの免疫グロブリン重鎖可変領域は、配列番号13に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含み;そして、ここでの免疫グロブリン軽鎖可変領域は、配列番号14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含み、ここでの配列番号13のアミノ酸残基番号55のアミノ酸は、アスパラギン、セリン、グルタミン、トレオニン、又はアスパラギン酸であり、ここでの配列番号13のアミノ酸残基番号100のアミノ酸は、メチオニン、イソロイシン、又はバリンである。いくつかの実施態様では、該組換え抗体又はその抗原結合断片は、ペリオスチンに対する特異的な結合のために、配列番号15の以下の残基(N276、R284、E288、L287、V295又はK302)の中の少なくとも1つを必要とする。いくつかの実施態様では、該組換え抗体又はその抗原結合断片は、ペリオスチンに対する特異的な結合のために、配列番号15の以下の残基(N276、R284、E288、L287、V295又はK302)の中の少なくとも2つ、3つ、4つ、又は5つを必要とする。いくつかの実施態様では、該組換え抗体又はその抗原結合抗体は、ペリオスチンに対する特異的な結合のために、配列番号15の以下の残基(N276、R284、E288、L287、V295又はK302)の少なくとも全部を必要とする。本明細書には、該組換え抗体又はその抗原結合断片と薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤とを含む、医薬組成物が記載されている。いくつかの実施態様では、該医薬組成物は、静脈内投与用に製剤化されている。いくつかの実施態様では、該医薬組成物は、皮下投与用に製剤化されている。いくつかの実施態様では、該医薬組成物は、腫瘍内投与用に製剤化されている。本明細書には、腫瘍内のコラーゲン含量を減少させるのに使用するための、該組換え抗体若しくはその抗原結合断片又は医薬組成物も記載されている。いくつかの実施態様では、該組換え抗体若しくはその抗原結合断片又は医薬組成物は、がんを処置するのに使用するためのものである。いくつかの実施態様では、がんは、神経膠芽腫、膵臓がん、乳がん、膀胱がん、腎臓がん、頭頸部がん、卵巣がん、皮膚がん、胃がん、中皮腫、肝臓がん、子宮内膜がん、大腸がん、子宮頸がん、前立腺がん、又は肺がんを含む。本明細書には、該組換え抗体若しくはその抗原結合断片又は医薬組成物を個体に投与する工程を含む、個体の腫瘍内のコラーゲン含量を減少させる方法も記載されている。本明細書には、該組換え抗体若しくはその抗原結合断片又は医薬組成物を個体に投与する工程を含む、個体の腫瘍内のM1マクロファージ表現型を増加させる及び/又はM2マクロファージ表現型を減少させる方法も記載されている。本明細書には、該組換え抗体若しくはその抗原結合断片又は医薬組成物を個体に投与する工程を含む、個体における抑制性顆粒球系骨髄球系細胞及び/又は腫瘍関連マクロファージの蓄積を減少させる方法も記載されている。本明細書には、該組換え抗体若しくはその抗原結合断片又は医薬組成物を個体に投与する工程を含む、個体の腫瘍内のCD4陽性及び/又はCD8陽性T細胞の出現頻度を増加させる方法も記載されている。本明細書には、該組換え抗体若しくはその抗原結合断片又は医薬組成物を個体に投与する工程を含む、個体におけるCD8陽性T細胞によるインターフェロンγの発現及び/又は放出によって測定されるような、腫瘍内のCD8陽性T細胞の機能を高める方法も記載されている。本明細書には、該組換え抗体若しくはその抗原結合断片又は医薬組成物の治療有効量を個体に投与する工程を含む、個体におけるがんの処置法も記載されている。いくつかの実施態様では、がんは、神経膠芽腫、膵臓がん、乳がん、膀胱がん、腎臓がん、頭頸部がん、卵巣がん、皮膚がん、胃がん、中皮腫、肝臓がん、子宮内膜がん、大腸がん、子宮頸がん、前立腺がん、又は肺がんを含む。本明細書には、該組換え抗体又はその抗原結合断片と薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤とを混合する工程を含む、腫瘍内のコラーゲン含量を減少させるための組成物を作製する方法も記載されている。本明細書には、該組換え抗体又はその抗原結合断片と薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤とを混合する工程を含む、腫瘍内のM1マクロファージ表現型を増加させるための及び/又はM2マクロファージ表現型を減少させるための組成物を作製する方法も記載されている。本明細書には、該組換え抗体又はその抗原結合断片と薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤とを混合する工程を含む、個体における抑制性顆粒球系骨髄球系細胞及び/又は腫瘍関連マクロファージの蓄積を減少させるための組成物を作製する方法も記載されている。本明細書には、該組換え抗体又はその抗原結合断片と薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤とを混合する工程を含む、個体の腫瘍内におけるCD4陽性及び/又はCD8陽性T細胞の出現頻度を増加させるための組成物を作製する方法も記載されている。本明細書には、該組換え抗体又はその抗原結合断片と薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤とを混合する工程を含む、個体におけるCD8陽性T細胞によるインターフェロンγの発現及び/又は放出によって測定されるような、腫瘍内のCD8陽性T細胞の機能を高めるための組成物を作製する方法も記載されている。本明細書には、該組換え抗体又はその抗原結合断片と薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤とを混合する工程を含む、がんを処置するための組成物を作製する方法も記載されている。いくつかの実施態様では、がんは、神経膠芽腫、膵臓がん、乳がん、膀胱がん、腎臓がん、頭頸部がん、卵巣がん、皮膚がん、胃がん、中皮腫、肝臓がん、子宮内膜がん、大腸がん、子宮頸がん、前立腺がん、又は肺がんを含む。
【0005】
本明細書には、免疫グロブリン重鎖可変領域及び免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む、ペリオスチンに結合する組換え抗体又はその抗原結合断片も記載され、ここでの免疫グロブリン重鎖可変領域は、配列番号13に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含み;そして、ここでの免疫グロブリン軽鎖可変領域は、配列番号14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含み、ここでの配列番号13のアミノ酸残基番号55は、アスパラギン、セリン、グルタミン、トレオニン、又はアスパラギン酸であり、ここでの配列番号13のアミノ酸残基番号100は、メチオニン、イソロイシン、又はバリンである。いくつかの実施態様では、該組換え抗体又はその抗原結合断片はヒト抗体である。いくつかの実施態様では、該組換え抗体又はその抗原結合断片は、IgG抗体である。特定の実施態様では、該組換え抗体又はその抗原結合断片は、該組換え抗体又はその抗原結合断片の1つ以上のエフェクター機能を減少させる1つ以上の突然変異を含む。特定の実施態様では、該組換え抗体又はその抗原結合断片の1つ以上のエフェクター機能を減少させる1つ以上の突然変異は、EUの番号付け体系による、IgG4のN434A、N434H、T307A/E380A/N434A、M252Y/S254T/T256E、433K/434F/436H、T250Q、T250F、M428L、M428F、T250Q/M428L、N434S、V308W、V308Y、V308F、M252Y/M428L、D259I/V308F、M428L/V308F、Q311V/N434S、T307Q/N434A、E258F/V427T、S228P、L235E、S228P/L235E/R409K、S228P/L235E、K370Q、K370E、G446の欠失、K447の欠失、及びその組合せから選択された1つ以上の突然変異又は突然変異のセットを含む。特定の実施態様では、該組換え抗体又はその抗原結合断片の1つ以上のエフェクター機能を減少させる1つ以上の突然変異は、EUの番号付け体系による、IgG4のS228P、F234A、及びL235Aの突然変異を含む。いくつかの実施態様では、該組換え抗体又はその抗原結合断片は、Fab、F(ab)2、単一ドメイン抗体、又は一本鎖可変断片(scFv)である。本明細書には、該組換え抗体又はその抗原結合断片と、薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤とを含む、医薬組成物も記載されている。いくつかの実施態様では、該医薬組成物は、静脈内投与用に製剤化されている。いくつかの実施態様では、該医薬組成物は、皮下投与用に製剤化されている。いくつかの実施態様では、該医薬組成物は、腫瘍内投与用に製剤化されている。本明細書には、腫瘍内のコラーゲン含量を減少させるのに使用するための、該組換え抗体若しくはその抗原結合断片又は医薬組成物も記載されている。いくつかの実施態様では、該組換え抗体若しくはその抗原結合断片又は医薬組成物は、がんを処置するのに使用するためのものである。いくつかの実施態様では、がんは、神経膠芽腫、膵臓がん、乳がん、膀胱がん、腎臓がん、頭頸部がん、卵巣がん、皮膚がん、胃がん、中皮腫、肝臓がん、子宮内膜がん、大腸がん、子宮頸がん、前立腺がん、又は肺がんを含む。本明細書には、該組換え抗体若しくはその抗原結合断片又は医薬組成物を個体に投与する工程を含む、個体の腫瘍内のコラーゲン含量を減少させる方法も記載されている。本明細書には、該組換え抗体若しくはその抗原結合断片又は医薬組成物を個体に投与する工程を含む、個体の腫瘍内のM1マクロファージ表現型を増加させる及び/又はM2マクロファージ表現型を減少させる方法も記載されている。本明細書には、該組換え抗体若しくはその抗原結合断片又は医薬組成物を個体に投与する工程を含む、個体における抑制性顆粒球系骨髄球系細胞及び/又は腫瘍関連マクロファージの蓄積を減少させる方法も記載されている。本明細書には、該組換え抗体若しくはその抗原結合断片又は医薬組成物を個体に投与する工程を含む、個体の腫瘍内におけるCD4陽性及び/又はCD8陽性T細胞の出現頻度を増加させる方法も記載されている。本明細書には、該組換え抗体若しくはその抗原結合断片又は医薬組成物を個体に投与する工程を含む、個体におけるCD8陽性T細胞によるインターフェロンγの発現及び/又は放出によって測定されるような、腫瘍内のCD8陽性T細胞の機能を高める方法も記載されている。本明細書には、該組換え抗体若しくはその抗原結合断片又は医薬組成物の治療有効量を個体に投与する工程を含む、個体におけるがんの処置法も記載されている。いくつかの実施態様では、がんは、神経膠芽腫、膵臓がん、乳がん、膀胱がん、腎臓がん、頭頸部がん、卵巣がん、皮膚がん、胃がん、中皮腫、肝臓がん、子宮内膜がん、大腸がん、子宮頸がん、前立腺がん、又は肺がんを含む。本明細書には、該組換え抗体又はその抗原結合断片と薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤とを混合する工程を含む、腫瘍内のコラーゲン含量を減少させるための組成物を作製する方法も記載されている。本明細書には、該組換え抗体又はその抗原結合断片と薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤とを混合する工程を含む、腫瘍内のM1マクロファージ表現型を増加させるための及び/又はM2マクロファージ表現型を減少させるための組成物を作製する方法も記載されている。本明細書には、該組換え抗体又はその抗原結合断片と薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤とを混合する工程を含む、個体における抑制性顆粒球系骨髄球系細胞及び/又は腫瘍関連マクロファージの蓄積を減少させるための組成物を作製する方法も記載されている。本明細書には、該組換え抗体又はその抗原結合断片と薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤とを混合する工程を含む、個体の腫瘍内におけるCD4陽性及び/又はCD8陽性T細胞の出現頻度を増加させるための組成物を作製する方法も記載されている。本明細書には、該組換え抗体又はその抗原結合断片と薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤とを混合する工程を含む、個体におけるCD8陽性T細胞によるインターフェロンγの発現及び/又は放出によって測定されるような、腫瘍内のCD8陽性T細胞の機能を高めるための組成物を作製する方法も記載されている。本明細書には、該組換え抗体又はその抗原結合断片と薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤とを混合する工程を含む、がんを処置するための組成物を作製する方法も記載されている。いくつかの実施態様では、がんは、神経膠芽腫、膵臓がん、乳がん、膀胱がん、腎臓がん、頭頸部がん、卵巣がん、皮膚がん、胃がん、中皮腫、肝臓がん、子宮内膜がん、大腸がん、子宮頸がん、前立腺がん、又は肺がんを含む。
【0006】
本明細書には、ペリオスチンに結合する組換え抗体又はその抗原結合断片も記載され、ここではペリオスチンに結合した場合、該組換え抗体又はその抗原結合断片は、ペリオスチンのファシクリン2(FAS2)ドメインに結合する。いくつかの実施態様では、該組換え抗体又はその抗原結合断片は、ペリオスチン(配列番号15)のアミノ酸残基276~302の間の(境界の数字を含む)、任意の残基に結合する。いくつかの実施態様では、該組換え抗体又はその抗原結合断片は、ペリオスチンに結合すると、ペリオスチン(配列番号15)の以下の残基(N276、R284、E288、L287、V295又はK302)の少なくとも1つに結合する。いくつかの実施態様では、該組換え抗体又はその抗原結合断片は、ペリオスチンに結合すると、ペリオスチン(配列番号15)の以下の残基(N276、R284、E288、L287、V295又はK302)の中の2つ、3つ、4つ、又は5つに結合する。いくつかの実施態様では、該組換え抗体又はその抗原結合断片は、ペリオスチンに結合すると、ペリオスチン(配列番号15)の以下の残基(N276、R284、E288、L287、V295又はK302)の全部に結合する。いくつかの実施態様では、該組換え抗体又はその抗原結合断片は、免疫グロブリン重鎖可変領域及び免疫グロブリン軽鎖可変領域を含み、ここでの免疫グロブリン重鎖可変領域は、配列番号13に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含み;そして、ここでの免疫グロブリン軽鎖可変領域は、配列番号14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含み、ここでの配列番号13のアミノ酸残基番号55は、アスパラギン、セリン、グルタミン、トレオニン、又はアスパラギン酸であり、ここでの配列番号13のアミノ酸残基番号100は、メチオニン、イソロイシン、又はバリンである。いくつかの実施態様では、該抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1(GYTFTSYG)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR1(CDR-H1);配列番号2(ISAYNGNT)、3(ISAYSGNT)、4(ISAYQGNT)、5(ISAYTGNT)、又は6(ISAYDGNT)のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR2(CDR-H2);配列番号7(DILVVPFDY)、8(DVLVVPFDY)、又は9(DMLVVPFDY)のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR3(CDR-H3);配列番号10(SSDIGSNR)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR1(CDR-L1);配列番号11(SND)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR2(CDR-L2);及び配列番号12(AAWDDSLSTYV)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR3(CDR-L3)を含む。いくつかの実施態様では、該抗体は、ヒト肺線維芽細胞及び/又はマウス線維芽細胞を用いて実施された細胞接着アッセイにおいて、約50ナノモル未満のIC50を有する。本明細書には、該組換え抗体又はその抗原結合断片と、薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤とを含む、医薬組成物も記載されている。いくつかの実施態様では、該医薬組成物は、静脈内投与用に製剤化されている。いくつかの実施態様では、該医薬組成物は、皮下投与用に製剤化されている。いくつかの実施態様では、該医薬組成物は、腫瘍内投与用に製剤化されている。本明細書には、腫瘍内のコラーゲン含量を減少させるのに使用するための、該組換え抗体若しくはその抗原結合断片又は医薬組成物も記載されている。いくつかの実施態様では、該組換え抗体若しくはその抗原結合断片又は医薬組成物は、がんを処置するのに使用するためのものである。いくつかの実施態様では、がんは、神経膠芽腫、膵臓がん、乳がん、膀胱がん、腎臓がん、頭頸部がん、卵巣がん、皮膚がん、胃がん、中皮腫、肝臓がん、子宮内膜がん、大腸がん、子宮頸がん、前立腺がん、又は肺がんを含む。本明細書には、該組換え抗体若しくはその抗原結合断片又は医薬組成物を個体に投与する工程を含む、個体の腫瘍内のコラーゲン含量を減少させる方法も記載されている。本明細書には、該組換え抗体若しくはその抗原結合断片又は医薬組成物を個体に投与する工程を含む、個体の腫瘍内のM1マクロファージ表現型を増加させる及び/又はM2マクロファージ表現型を減少させる方法も記載されている。本明細書には、該組換え抗体若しくはその抗原結合断片又は医薬組成物を個体に投与する工程を含む、個体における抑制性顆粒球系骨髄球系細胞及び/又は腫瘍関連マクロファージの蓄積を減少させる方法も記載されている。本明細書には、該組換え抗体若しくはその抗原結合断片又は医薬組成物を個体に投与する工程を含む、個体の腫瘍内におけるCD4陽性及び/又はCD8陽性T細胞の出現頻度を増加させる方法も記載されている。本明細書には、該組換え抗体若しくはその抗原結合断片又は医薬組成物を個体に投与する工程を含む、個体におけるCD8陽性T細胞によるインターフェロンγの発現及び/又は放出によって測定されるような、腫瘍内のCD8陽性T細胞の機能を高める方法も記載されている。本明細書には、該組換え抗体若しくはその抗原結合断片又は医薬組成物の治療有効量を個体に投与する工程を含む、個体におけるがんの処置法も記載されている。いくつかの実施態様では、がんは、神経膠芽腫、膵臓がん、乳がん、膀胱がん、腎臓がん、頭頸部がん、卵巣がん、皮膚がん、胃がん、中皮腫、肝臓がん、子宮内膜がん、大腸がん、子宮頸がん、前立腺がん、又は肺がんを含む。本明細書には、該組換え抗体又はその抗原結合断片と薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤とを混合する工程を含む、腫瘍内のコラーゲン含量を減少させるための組成物を作製する方法も記載されている。本明細書には、該組換え抗体又はその抗原結合断片と薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤とを混合する工程を含む、腫瘍内のM1マクロファージ表現型を増加させるための及び/又はM2マクロファージ表現型を減少させるための組成物を作製する方法も記載されている。本明細書には、該組換え抗体又はその抗原結合断片と薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤とを混合する工程を含む、個体における抑制性顆粒球系骨髄球系細胞及び/又は腫瘍関連マクロファージの蓄積を減少させるための組成物を作製する方法も記載されている。本明細書には、該組換え抗体又はその抗原結合断片と薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤とを混合する工程を含む、個体の腫瘍内におけるCD4陽性及び/又はCD8陽性T細胞の出現頻度を増加させるための組成物を作製する方法も記載されている。本明細書には、該組換え抗体又はその抗原結合断片と薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤とを混合する工程を含む、個体におけるCD8陽性T細胞によるインターフェロンγの発現及び/又は放出によって測定されるような、腫瘍内のCD8陽性T細胞の機能を高めるための組成物を作製する方法も記載されている。本明細書には、該組換え抗体又はその抗原結合断片と薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤とを混合する工程を含む、がんを処置するための組成物を作製する方法も記載されている。いくつかの実施態様では、がんは、神経膠芽腫、膵臓がん、乳がん、膀胱がん、腎臓がん、頭頸部がん、卵巣がん、皮膚がん、胃がん、中皮腫、肝臓がん、子宮内膜がん、大腸がん、子宮頸がん、前立腺がん、又は肺がんを含む。
【0007】
本明細書には、上記の組換え抗体又はその抗原結合断片のいずれか1つをコードしている核酸も記載されている。
【0008】
本明細書には、上記の核酸を含む細胞株も記載されている。いくつかの実施態様では、該細胞株は、チャイニーズハムスター卵巣細胞株である。本明細書には、該組換え抗体又はその抗原結合断片のいずれか1つの発現及び分泌を可能とするに十分な条件下で、細胞培養培地中で該細胞株をインキュベートする工程を含む、該組換え抗体又はその抗原結合断片を産生する方法も記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本明細書に記載の新規な特色は特に、添付の特許請求の範囲に示されている。本明細書に記載の特色及び特色の利点のより良い理解は、例示的な実施例(本明細書に記載の特色の原理が利用されている)を示す以下の詳細な説明、及び添付図面を参照することによって得られるだろう。
【
図1】
図1は、500nMという単一の濃度で試験された、78個の配列の特有なIgGによる、ペリオスチン(POSTN)により媒介される細胞接着の阻害を示す。
【
図2】
図2は、NB0828又はビヒクル対照を用いての処置後の、マウスMB49膀胱がんモデルにおける腫瘍の増殖を示す。
【
図3】
図3は、腫瘍内骨髄球系細胞の蓄積に対する、NB0828による処置の影響を示す。MB49担がんマウスを、
図2に記載のように、NB0828又はビヒクルを用いて処置した。データは、総CD45陽性免疫浸潤物に対する比率として提示される。
【
図4】
図4は、NB0828を用いての処置後の、腫瘍コラーゲン総含量の変化を示す。MB49担がんマウスを、
図2に記載のように処置し、終点のMB49腫瘍の腫瘍内総コラーゲン含量を、方法に記載のように評価した。
【
図5】
図5は、NB0828又はビヒクル対照を用いての処置後の、マウスCT26大腸がんモデルにおける腫瘍の増殖を示す。
【
図6】
図6は、NB0828により処置されたCT26担がんマウスにおける、顆粒球細胞/TAM(腫瘍関連マクロファージ)の減少した腫瘍内蓄積、及びマクロファージのM1表現型への偏向を示す。
【
図7】
図7は、NB0828により処置されたCT26担がんマウスにおける、CD8陽性及びCD4陽性浸潤リンパ球(TIL)の増加した蓄積、並びに増強されたCD8陽性腫瘍浸潤リンパ球機能を示す。
【
図8】
図8は、NB0828又はビヒクル対照を用いての処置後の、マウスMC38大腸がんモデルにおける腫瘍の増殖を示す。
【
図9A】
図9A~9Dは、MC38大腸がんモデルにおいて、NB0828が、炎症誘発性I型マクロファージの出現頻度(9B)及びCD8陽性T細胞の出現頻度(9C)を増加させつつ、腫瘍関連マクロファージの総量を減少させること(9A)、並びに、NB0828の腫瘍に対する有効性が、CD8陽性T細胞に依存すること(9D)を示す。
【
図9B】
図9A~9Dは、MC38大腸がんモデルにおいて、NB0828が、炎症誘発性I型マクロファージの出現頻度(9B)及びCD8陽性T細胞の出現頻度(9C)を増加させつつ、腫瘍関連マクロファージの総量を減少させること(9A)、並びに、NB0828の腫瘍に対する有効性が、CD8陽性T細胞に依存すること(9D)を示す。
【
図9C】
図9A~9Dは、MC38大腸がんモデルにおいて、NB0828が、炎症誘発性I型マクロファージの出現頻度(9B)及びCD8陽性T細胞の出現頻度(9C)を増加させつつ、腫瘍関連マクロファージの総量を減少させること(9A)、並びに、NB0828の腫瘍に対する有効性が、CD8陽性T細胞に依存すること(9D)を示す。
【
図9D】
図9A~9Dは、MC38大腸がんモデルにおいて、NB0828が、炎症誘発性I型マクロファージの出現頻度(9B)及びCD8陽性T細胞の出現頻度(9C)を増加させつつ、腫瘍関連マクロファージの総量を減少させること(9A)、並びに、NB0828の腫瘍に対する有効性が、CD8陽性T細胞に依存すること(9D)を示す。
【
図10】
図10は、エピトープマッピング研究のための、形質転換増殖因子β誘導タンパク質(BIGH3)/ペリオスチンキメラを作製するための図を示す。
【
図11A】
図11A~11Cは、ペリオスチンのFAS2ドメインに対するNB0828の結合を示す。11Aは、
図10で作製されたキメラタンパク質に対するNB0828の結合を示し、一方、
図11B及び11Cは、POSTN EMI-FAS4のFAS2ドメイン内のアラニン突然変異に対するNB0828の結合を示す。
【
図11B】
図11A~11Cは、ペリオスチンのFAS2ドメインに対するNB0828の結合を示す。11Aは、
図10で作製されたキメラタンパク質に対するNB0828の結合を示し、一方、
図11B及び11Cは、POSTN EMI-FAS4のFAS2ドメイン内のアラニン突然変異に対するNB0828の結合を示す。
【
図11C】
図11A~11Cは、ペリオスチンのFAS2ドメインに対するNB0828の結合を示す。11Aは、
図10で作製されたキメラタンパク質に対するNB0828の結合を示し、一方、
図11B及び11Cは、POSTN EMI-FAS4のFAS2ドメイン内のアラニン突然変異に対するNB0828の結合を示す。
【
図12】
図12は、二量体POSTN EMI-FAS4の結晶構造を示し、NB0828エピトープの位置が、下半分の箇所に四角で囲まれ拡大されている。
【
図13A】
図13A及び13Bは、ペリオスチンに対するヒトテネイシンCの結合EC80、及びNB0828の機能遮断活性(13A)、及びペリオスチンに対するヒトI型コラーゲンの結合EC80、及びNB0828の機能遮断活性(13B)を示す。
【
図13B】
図13A及び13Bは、ペリオスチンに対するヒトテネイシンCの結合EC80、及びNB0828の機能遮断活性(13A)、及びペリオスチンに対するヒトI型コラーゲンの結合EC80、及びNB0828の機能遮断活性(13B)を示す。
【
図14A】
図14Aは、免疫組織化学検査によって測定されるような、様々な種類の腫瘍におけるペリオスチンの発現の広がりを示す。
【
図14B】
図14Bは、ペリオスチンを低度に、中程度に、及び高度に発現している乳がん試料上の免疫組織化学的検査の染色の代表的な図を示す。
【0010】
詳細な説明
本明細書には、ペリオスチンに結合する組換え抗体又はその抗原結合断片が記載され、ここでの該抗体又はその抗原結合断片は、(a)配列番号1(GYTFTSYG)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR1(CDR-H1);(b)配列番号2(ISAYNGNT)、3(ISAYSGNT)、4(ISAYQGNT)、5(ISAYTGNT)、又は6(ISAYDGNT)のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR2(CDR-H2);(c)配列番号7(DILVVPFDY)、8(DVLVVPFDY)、又は9(DMLVVPFDY)のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR3(CDR-H3);(d)配列番号10(SSDIGSNR)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR1(CDR-L1);(e)配列番号11(SND)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR2(CDR-L2);及び(f)配列番号12(AAWDDSLSTYV)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR3(CDR-L3)を含む。
【0011】
本明細書には、ペリオスチンに結合する組換え抗体又はその抗原結合断片が記載され、ここでの該抗体又はその抗原結合断片は、(a)配列番号1(GYTFTSYG)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR1(CDR-H1);(b)配列番号16(ISAYXGNT)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR2(CDR-H2);(c)配列番号17(DXLVVPFDY)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR3(CDR-H3);(d)配列番号10(SSDIGSNR)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR1(CDR-L1);(e)配列番号11(SND)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR2(CDR-L2);及び(f)配列番号12(AAWDDSLSTYV)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR3(CDR-L3)、のいずれか1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つを含み、ここでのXは任意のアミノ酸残基である。
【0012】
本明細書には、免疫グロブリン重鎖可変領域及び免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む、ペリオスチンに結合する組換え抗体又はその抗原結合断片が記載され、(a)ここでの免疫グロブリン重鎖可変領域は、配列番号13に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含み;そして、(b)ここでの免疫グロブリン軽鎖可変領域は、配列番号14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含み、ここでの配列番号13のアミノ酸残基番号55は、アスパラギン、セリン、グルタミン、トレオニン、若しくはアスパラギン酸であるか、又は配列番号13のアミノ酸残基番号100は、メチオニン、イソロイシン、若しくはバリンである。
【0013】
本明細書には、免疫グロブリン重鎖可変領域及び免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む、ペリオスチンに結合する組換え抗体又はその抗原結合断片も記載され、(a)ここでの免疫グロブリン重鎖可変領域は、配列番号13に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含み;そして、(b)ここでの免疫グロブリン軽鎖可変領域は、配列番号14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含む。
【0014】
本明細書には、免疫グロブリン重鎖可変領域及び免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む、ペリオスチンに結合する組換え抗体又はその抗原結合断片が記載され、(a)ここでの免疫グロブリン重鎖可変領域は、配列番号13に示されるアミノ酸配列に対して同一であるアミノ酸配列を含み;そして、(b)ここでの免疫グロブリン軽鎖可変領域は、配列番号14に示されるアミノ酸配列に対して同一であるアミノ酸配列を含む。
【0015】
本明細書には、ペリオスチンのファシクリン2(FAS2)ドメインに結合する組換え抗体又はその抗原結合断片が記載されている。特定の実施態様では、該組換え抗体又はその抗原結合断片は、ペリオスチンに結合した場合、配列番号15のアミノ酸276~302から選択されたアミノ酸残基と接触する。特定の実施態様では、該組換え抗体又はその抗原結合断片は、ペリオスチンに結合した場合、配列番号15の以下のアミノ酸残基(N276、R284、E288、L287、V295、又はK302)の1つと接触する。
【0016】
以下の記載において、特定の具体的な詳細が、様々な実施態様の完全な理解を提供するために示されている。しかしながら、当業者は、提供されている実施例が、これらの詳細を用いることなく実施され得ることを理解しているだろう。内容からそうではないことが必要とされない限り、明細書及び続く特許請求の範囲の全体を通して、「含む(comprise)」という単語及びその変化形、例えば「含む(comprises)」及び「含んでいる(comprising)」は、オープンで包含的な意味で、すなわち「を含むがこれらに限定されない」と捉えられるべきである。本明細書及び添付の特許請求の範囲に使用されているように、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、内容から明らかにそうではないことが示されない限り、複数の対象物も含む。また、「又は」という用語は、一般的に、内容から明らかにそうではないことが示されない限り、「及び/又は」を含むその意味で使用されることが注記されるべきである。さらに、本明細書に提供される見出しは、単に簡便のためであり、請求された実施態様の範囲又は意味を解釈するものではない。
【0017】
本明細書において使用する「約」という用語は、記載の量に10%以下だけ近い量を指す。
【0018】
本明細書において使用する「個体」、「患者」又は「被験者」という用語は、記載の組成物及び方法が処置のために有用である少なくとも1つの疾患と診断されたか、罹患していることが疑われているか、又は発症するリスクのある個体を指す。特定の実施態様では、該個体は哺乳動物である。特定の実施態様では、該哺乳動物はマウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ラマ、アルパカ、又はヤクである。特定の実施態様では、該個体はヒトである。
【0019】
本明細書において使用する「処置する」又は「処置している」という用語は、個体の生理学的状態又は疾患状態に伴う少なくとも1つの兆候又は症状を寛解するように設計されたか又は寛解することを目的とした、個体の生理学的状態又は疾患状態への介入を指す。当業者は、疾患に罹患している不均一な個体の集団を考えると、全ての個体が所与の処置に対して等しく応答しないであろうか、又は全く応答しないであろうことを認識しているだろう。個体は、任意の客観的な応答基準に関わらず、処置されるべきと考えられる。
【0020】
提供される抗体には、モノクロ―ナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異的抗体(例えば、二重特異的抗体及び多反応性抗体)、及び抗体断片がある。該抗体としては、抗体コンジュゲート、及び抗体を含む分子、例えばキメラ分子が挙げられる。したがって、抗体は、完全長抗体及び天然抗体、並びに、その結合特異性を保持しているその断片及び部分、例えば、任意の特異的なその結合部分、例えば任意の数の免疫グロブリンクラス及び/又はアイソタイプ(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgD、IgE、及びIgM)を有するもの;並びに、Fab、F(ab’)2、Fv、及びscFv(一本鎖又は関連した実体)を含むがこれらに限定されない、その生物学的に関連した(抗原結合性の)断片又は特異的な結合部分、を含むがこれらに限定されない。モノクロ―ナル抗体は一般的に、実質的に均一な抗体の組成物内の抗体であり;したがって、該モノクローナル抗体組成物内に含まれる任意の個々の抗体は、少数存在する可能性のある天然に生じる可能性のある突然変異を除いて同一である。ポリクローナル抗体は、2つ以上の異なる決定基(エピトープ)に対して一般的に指向される、様々な配列の異なる抗体を含む調製物である。該モノクロ―ナル抗体は、ヒトIgG1定常領域を含んでいてもよい。該モノクロ―ナル抗体は、ヒトIgG4定常領域を含んでいてもよい。
【0021】
本明細書における「抗体」という用語は、最も広義な意味で使用され、これには、ポリクローナル抗体及びモノクロ―ナル抗体、例えばインタクトな抗体及びその機能的(抗原結合性)抗体断片、例えば抗原結合性断片(Fab)、F(ab’)2断片、Fab’断片、Fv断片、組換えIgG(rIgG)断片、一本鎖抗体断片、例えば一本鎖可変断片(sFv又はscFv)、及び単一ドメイン抗体(例えばsdAb、sdFv、ナノボディ)断片が含まれる。該用語は、遺伝子工学操作された及び/又は他の方法で修飾された形の免疫グロブリン、例えばイントラボディ、ペプチボディ(peptibodies)、キメラ抗体、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、及びヘテロコンジュゲート抗体、多重特異的抗体、例えば二重特異的抗体、ディアボディーズ、トリアボディーズ、及びテトラボディーズ、直列型di-scFv、直列型tri-scFvを包含する。特記されない限り、「抗体」という用語は、その機能的な抗体断片を包含すると理解されるべきである。該用語はまた、インタクトな抗体又は完全長の抗体、例えば、任意のクラス又はサブクラスの抗体、例えばIgG及びそのサブクラス、IgM、IgE、IgA、及びIgDも包含する。該抗体は、ヒトIgG1定常領域を含んでいてもよい。該抗体は、ヒトIgG4定常領域を含んでいてもよい。
【0022】
「相補性決定領域」及び「CDR」という用語は、「超可変領域」すなわち「HVR」と同義語であるが、これは当技術分野において、抗原特異性及び/又は結合親和性を付与する、抗体可変領域内の非連続的なアミノ酸配列を指すことが知られている。一般的に、各々の重鎖可変領域には3つのCDR(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3)があり、各々の軽鎖可変領域には3つのCDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3)がある。「フレームワーク領域」及び「FR」は当技術分野において、重鎖及び軽鎖の可変領域のCDRではない部分を指すことが知られている。一般的には、各々の完全長重鎖可変領域には4つのFR(FR-H1、FR-H2、FR-H3、及びFR-H4)があり、各々の完全長軽鎖可変領域には4つのFR(FR-L1、FR-L2、FR-L3、及びFR-L4)がある。所与のCDR又はFRの正確なアミノ酸配列の境界は、Kabat et al. (1991), “Sequences of Proteins of Immunological Interest,”第5版,公衆衛生局,国立衛生研究所,ベセスダ,MD州(「Kabat」番号付け体系)、Al-Lazikani et al., (1997) JMB 273,927-948 (「Chothia」番号付け体系);MacCallum et al., J. Mol. Biol. 262:732-745 (1996), “Antibody-antigen interactions: Contact analysis and binding site topography,” J. Mol. Biol. 262, 732-745. (「Contact」番号付け体系);Lefranc MP et al.,“IMGT unique numbering for immunoglobulin and T cell receptor variable domains and Ig superfamily V-like domains,” Dev Comp Immunol, 2003 Jan;27(1):55-77 (「IMGT」番号付け体系);Honegger A and Pluckthun A, “Yet another numbering scheme for immunoglobulin variable domains: an automatic modeling and analysis tool,” J Mol Biol, 2001 Jun 8;309(3):657-70, (「Aho」番号付け体系);及びWhitelegg NR and Rees AR, “WAM: an improved algorithm for modelling antibodies on the WEB,” Protein Eng. 2000 Dec;13(12):819-24(「AbM」番号付け体系)によって記載されたスキームを含む、多くの周知のスキームのいずれかを使用して容易に決定され得る。
【0023】
所与のCDR又はFRの境界は、同定のために使用されるスキームに応じて変化し得る。例えば、Kabatスキームは構造的アラインメントに基づき、一方、Chothiaスキームは構造的情報に基づく。Kabat及びChothiaの両方のスキームの番号付けは、最も一般的な抗体領域の配列長に基づき、これは挿入文字、例えば「30a」によって収容される挿入、及びいくつかの抗体内に出現する欠失を伴う。2つのスキームは異なる位置に特定の挿入及び欠失(「挿入欠失」)を配置し、その結果、異なる番号付けとなる。Contactスキームは、複雑な結晶構造の分析に基づき、多くの点においてChothia番号付け体系に類似している。
【0024】
「可変領域」又は「可変ドメイン」という用語は、抗原に対する抗体の結合に関与する、抗体の重鎖又は軽鎖のドメインを指す。天然抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれVH及びVL)は一般的に、類似した構造を有し、各ドメインは、4つの保存されたフレームワーク領域(FR)及び3つのCDRを含んでいる(例えば、Kindt et al. Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., page 91(2007)参照)。単一のVHドメイン又はVLドメインは、抗原結合特異性を付与するのに十分であり得る。さらに、特定の抗原に結合する抗体は、抗原に結合する抗体に由来するVHドメイン又はVLドメインを使用して、それぞれ、相補的なVLドメイン又はVHドメインのライブラリーをスクリーニングすることによって単離され得る(例えば、Portolano et al., J. Immunol. 150:880-887 (1993); Clarkson et al., Nature 352:624-628(1991)参照)。
【0025】
提供された抗体の中には、抗体断片がある。「抗体断片」は、インタクトな抗体が結合する抗原に結合する、インタクトな抗体の部分を含む、インタクトな抗体ではない分子を指す。抗体断片の例としては、Fv、Fab、Fab’、 Fab’-SH、F(ab’)2;ディアボディーズ;リニア抗体;一本鎖抗体分子(例えばscFv又はscFv);及び、抗体断片から形成された多重特異的抗体が挙げられるがこれらに限定されない。特定の実施態様では、該抗体は、重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域を含む一本鎖抗体断片、例えばscFvである。
【0026】
本明細書において使用される場合の「特異的結合」又は「結合」という用語は、言及されている抗体若しくは断片のCDRの1つ以上のアミノ酸残基、又は言及されている抗体若しくは断片の1つ以上の可変領域アミノ酸残基によって媒介される、結合を指す。特異的な標的への抗体の結合又は結合していることに関連した、本明細書において使用する「接触する」又は「接触」という用語は、列挙されている接触している残基の5Å、4Å、3Å、又はそれ以下の範囲内に、可変領域又はCDRのアミノ酸残基がくることを指す。接触には、抗体の可変領域又はCDRのアミノ酸残基と列挙された残基との間の、水素結合、ファンデルワールス相互作用、及び塩橋形成を含む。
【0027】
抗体断片は、インタクトな抗体のタンパク質分解的消化、並びに、組換え宿主細胞の産生を含むがこれらに限定されない、様々な技術によって作製され得る。いくつかの実施態様では、該抗体は、組換え産生された断片、例えば、天然には起こらない整列を含む断片、例えば、合成リンカー、例えばポリペプチドリンカーによって接続された2つ以上の抗体領域若しくは抗体鎖を有する断片、及び/又は、天然に存在するインタクトな抗体の酵素消化によって産生されない断片である。いくつかの態様では、抗体断片はscFvである。
【0028】
「ヒト化」抗体は、全て又は実質的に全てのCDRアミノ酸残基が非ヒトCDRに由来し、全て又は実質的に全てのFRアミノ酸残基がヒトFRに由来する、抗体である。ヒト化抗体は場合により、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも部分を含んでいてもよい。「ヒト化形態」の非ヒト抗体は、典型的には親非ヒト抗体の特異性及び親和性を保持しつつ、ヒトに対する免疫原性を低減するために、ヒト化を受けている、非ヒト抗体の変異体を指す。いくつかの実施態様では、ヒト化抗体内のいくつかのFR残基は、例えば、抗体の特異性又は親和性を回復又は改善するために、非ヒト抗体(例えば、CDR残基が由来する抗体)に由来する対応する残基で置換されている。
【0029】
提供される抗体の中にはヒト抗体がある。「ヒト抗体」は、ヒト、又はヒト細胞、又は、ヒト抗体レパートリー若しくは他のヒト抗体コード配列、例えばヒト抗体ライブラリーを利用するヒト以外の起源によって産生される、抗体のアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を有する抗体である。該用語は、非ヒト抗原結合領域を含むヒト化形態の非ヒト抗体、例えば全て又は実質的に全てのCDRが非ヒトである抗体を除外する。
【0030】
ヒト抗体は、抗原による攻撃に応答して、インタクトなヒト抗体又はヒト可変領域を有するインタクトな抗体を産生するように改変されているトランスジェニック動物に免疫原を投与することによって調製され得る。このような動物は典型的には、内因性免疫グロブリン遺伝子座を置き換えているか、又は染色体外に存在するか、又は動物の染色体に無作為に組み込まれている、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全て又は一部を含有している。このようなトランスジェニック動物では、内因性免疫グロブリン遺伝子座は一般的に不活性化されている。ヒト抗体はまた、ヒトレパートリーに由来する抗体コード配列を含有している、ファージディスプレイライブラリー及び無細胞ライブラリーを含む、ヒト抗体ライブラリーに由来していても、又はそれから選択されてもよい。特定の実施態様では、ヒト抗体は、ファージディスプレイなどの方法による連続回の選択によって、配列の障害箇所が除去されていてもよいか、又はその親和性が高められていてもよい。
【0031】
「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、同義語として使用され、アミノ酸残基のポリマーを指し、最小の長さに限定されない。ポリペプチド(提供される抗体及び抗体鎖及び他のペプチド、例えばリンカー及び結合性ペプチドを含む)は、天然及び/又は非天然アミノ酸残基を含む、アミノ酸残基を含み得る。該用語はまた、ポリペプチドの発現後修飾、例えばグリコシル化、シアル化、アセチル化、リン酸化などを含む。いくつかの態様では、該ポリペプチドは、該タンパク質が所望の活性を維持する限りにおいて、生得の又は天然の配列に関して修飾を含有していてもよい。これらの修飾は、部位特異的突然変異誘発などを通した意図的なものであっても、又は、タンパク質を産生する宿主の突然変異、若しくはPCR増幅に起因するエラーなどを通した偶発的なものであってもよい。
【0032】
本明細書において、特定の実施態様では、エフェクター機能の減少した抗体が提供される。本明細書において使用する「エフェクター機能」という語句は、FcγRに結合した時にFc含有タンパク質によって付与される機能的能力を含むことを意味する。いずれか1つの理論に拘りたくはないが、Fc/FcγR複合体の形成は、様々なエフェクター細胞を、結合した抗原部位に動員し、典型的にはその結果として、細胞内に多様なシグナル伝達事象及び重要な後続の免疫応答が起こる。エフェクター機能は、抗体依存性細胞障害及び補体依存性細胞障害の両方を指す。インビトロ及び/又はインビボでの細胞障害アッセイを実施して、補体依存性細胞障害活性及び/又は抗体依存性細胞障害活性の減少/除去を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを実施して、該抗体はFcγRへの結合を欠失している(したがって、抗体依存性細胞障害活性を欠失している可能性がある)が、FcRnへの結合能は保持していることを確認することができる。関心対象の分子の抗体依存性細胞障害活性を評価するためのインビトロアッセイの非制限的な例は、米国特許第5,500,362号及び第5,821,337号に記載されている。あるいは、非放射性アッセイ法を使用してもよい(例えば、ACTI(商標)及びCytoTox96(商標)非放射性細胞障害アッセイ)。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)、単球、マクロファージ、及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。
【0033】
基準ポリペプチド配列に対する配列同一率(%)は、配列をアラインさせ、必要であれば、最大の配列同一率を達成するためにギャップを導入した後の、配列同一性の一部として保存的な置換を全く考慮しない、基準ポリペプチド配列内のアミノ酸残基と同一である、候補配列内のアミノ酸残基の比率である。アミノ酸配列同一率を決定する目的でのアラインメントは、公知である様々な方法で、例えば公共的に利用できるコンピューターソフトウェア、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN、又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアを使用して達成され得る。比較する配列の完全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要とされるアルゴリズムを含む、配列をアラインさせるための適切なパラメーターを決定することができる。しかしながら、本明細書での目的のために、アミノ酸配列同一率値%は、配列比較コンピュータープログラムALIGN-2を使用して算出される。ALIGN-2配列比較コンピュータープログラムは、ジェネンテック社によって作成され、ソースコードがユーザー文書と共にワシントンD.C.20559のアメリカ合衆国著作権局に提出され、そこでアメリカ合衆国著作権登録番号TXU510087として登録されている。ALIGN-2プログラムは、ジェネンテック社(サウスサンフランシスコ、カリフォルニア州)から公共的に入手可能であるか、又は、ソースコードからコンパイルしてもよい。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIX(登録商標) V4.0Dを含むUNIX(登録商標)オペレーティングシステム上での使用のためにコンパイルされるべきである。全ての配列比較パラメーターはALIGN-2プログラムによって設定され、変更されない。
【0034】
ALIGN-2がアミノ酸配列の比較のために使用される状況では、所与のアミノ酸配列Aの、所与のアミノ酸配列Bに対するアミノ酸配列同一率%(あるいは、所与のアミノ酸配列Bに対して、特定のアミノ酸配列同一率%を有する又は含む、所与のアミノ酸配列Aとして表現されてもよい)は、以下のように計算され:X/Yの分率×100、ここで、Xは、プログラムによるAとBのアラインメントにおいて、配列アラインメントプログラムALIGN-2によって同一な一致としてスコアリングされたアミノ酸残基の数であり、Yは、B内のアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さとは等しくない場合、Bに対するAのアミノ酸配列同一率%は、Aに対するBのアミノ酸配列同一率%とは等しくないであろうことが理解されるだろう。具体的に特記しない限り、本明細書において使用する全てのアミノ酸配列同一率値%は、ALIGN-2コンピュータープログラムを使用して直前の段落で記載されているように得られる。
【0035】
いくつかの実施態様では、本明細書において提供される抗体のアミノ酸配列変異体が考えられる。変異体は典型的には、1つ以上の置換、欠失、付加、及び/又は挿入において、本明細書において具体的に開示されたポリペプチドとは異なる。このような変異体は、天然に起こるものであっても、又は例えば本発明の上記の1つ以上のポリペプチド配列を修飾し、本明細書に記載のように及び/又は多くの公知の技術のいずれかを使用して、該ポリペプチドの1つ以上の生物学的活性を評価することによって、合成的に作製されてもよい。例えば、抗体の結合親和性及び/又は他の生物学的特性を改善することが望ましくあり得る。抗体のアミノ酸配列変異体は、該抗体をコードしているヌクレオチド配列に適切な改変を導入することによって、又はペプチド合成によって調製され得る。このような改変としては、例えば、該抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/又は該残基への挿入、及び/又は該残基の置換が挙げられる。欠失、挿入、及び置換のあらゆる組合せを行なって最終構築物に到達することができる。ただし、最終構築物は、所望の特徴、例えば抗原への結合を有する。
【0036】
いくつかの実施態様では、1つ以上のアミノ酸の置換を有する抗体変異体が提供される。置換による突然変異誘発のための関心対象の部位はCDR及びFRを含む。アミノ酸の置換を関心対象の抗体に導入し得、産物を所望の活性、例えば保持された/改善された抗原への結合、低減された免疫原性、又は改善されたADCC(抗体依存性細胞障害)若しくはCDC(補体依存性細胞障害)についてスクリーニングし得る。
【0037】
いくつかの実施態様では、置換、挿入、又は欠失は、1つ以上のCDR内で起こり得、ここでの置換、挿入、又は欠失は、抗原に対する抗体の結合を実質的に低減させない。例えば、実質的に結合親和性を低減させない保存的置換は、CDR内で行なわれてもよい。このような改変は、CDRの「ホットスポット」の外にあってもよい。変異体のVH配列及びVL配列のいくつかの実施態様では、各CDRは改変されていない。
【0038】
改変(例えば置換)は、例えば抗体の親和性を改善するために、CDR内で行なわれ得る。このような改変は、体細胞の成熟中に高い突然変異率を有する、CDRをコードするコドンにおいて行なわれ得(例えば、Chowdhury, Methods Mol. Biol. 207:179-196(2008)参照)、結果として得られた変異体を結合親和性について試験することができる。親和性成熟(例えば、エラープローンPCR、鎖シャッフリング、CDRの無作為化、又はオリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発を使用した)を使用して、抗体の親和性を改善することができる(例えば、Hoogenboom et al. in Methods in Molecular Biology 178:1-37(2001)参照)。抗原との結合に関与するCDR残基を、例えば、アラニン走査突然変異誘発又はモデリングを使用して具体的に同定し得る(例えば、Cunningham and Wells Science, 244:1081-1085(1989)参照)。CDR-H3及びCDR-L3が特に標的化されることが多い。代わりに又は追加して、抗体と抗原との間の接触点を同定するための抗原-抗体複合体の結晶構造。このような接触残基及び隣接残基を、置換のための候補として標的化又は排除し得る。変異体をスクリーニングして、それらが所望の特性を含有しているかどうかを決定し得る。
【0039】
アミノ酸配列の挿入及び欠失は、1残基から100以上の残基を含有しているポリペプチドまでの長さにおよぶアミノ末端及び/又はカルボキシル末端への融合、並びに、1つ又は複数のアミノ酸残基の配列間への挿入及び欠失を含む。末端への挿入例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入変異体は、抗体のN末端又はC末端への酵素(例えば抗体指向酵素プロドラッグ療法用)又は抗体の血清中半減期を延長させるポリペプチドへの融合を含む。抗体分子の配列内挿入変異体の例は、軽鎖への3アミノ酸の挿入を含む。末端欠失の例としては、軽鎖の末端における7個以下のアミノ酸の欠失した抗体が挙げられる。
【0040】
いくつかの実施態様では、抗体はそのグリコシル化を増加又は減少させるために、改変されている(例えば、1つ以上のグリコシル化部位が作り出されるか又は除去されるように、アミノ酸配列を改変することによって)。抗体のFc領域に付着した糖鎖が改変されてもよい。哺乳動物細胞に由来する天然抗体は典型的には、Fc領域のCH2ドメインのAsn297にN結合によって付着している分岐した、二分岐のオリゴ糖を含む(例えば、Wright et al. TIBTECH 15:26-32(1997)参照)。オリゴ糖は、様々な糖鎖、例えばマンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、シアル酸、二分岐オリゴ糖構造の「基部」にあるGlcNAcに付着したフコースであり得る。抗体内のオリゴ糖の修飾は、例えば、特定の改善された特性を有する抗体変異体を作製するために行なわれ得る。抗体グリコシル化変異体は、改善されたADCC及び/又はCDC機能を有し得る。いくつかの実施態様では、Fc領域に(直接的に又は間接的に)付着したフコースを欠失している糖鎖構造を有する抗体変異体が提供される。例えば、このような抗体内のフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%、又は20%~40%であり得る。フコースの量は、Asn297に付着した全ての糖構造の合計と比較した、Asn297における糖鎖内のフコースの平均量を計算することによって決定される(例えば、国際公開公報第08/077546号参照)。Asn297は、Fc領域内のおよそ297位に位置するアスパラギン残基を指す(Fc領域残基のEU番号付け;例えば、Edelman et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 1969 May; 63(1):78-85参照)。しかしながら、Asn297はまた、抗体内の小さな配列の変化に因り、297位の約±3アミノ酸上流又は下流、すなわち、294位から300位に位置し得る。このようなフコシル化変異体は、改善されたADCC機能を有し得る(例えば、Okazaki et al. J. Mol. Biol. 336:1239-1249 (2004);及びYamane-Ohnuki et al. Biotech. Bioeng. 87: 614(2004)参照)。細胞株、例えばノックアウト細胞株、例えば、タンパク質フコシル化の欠失したLec13CHO細胞、及びα-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子(FUT8)ノックアウトCHO細胞、並びにそれらの使用法を使用して、脱フコシル化抗体を産生することができる(例えば、Ripka et al. Arch. Biochem. Biophys. 249:533-545 (1986); Yamane-Ohnuki et al. Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004); Kanda, Y. et al., Biotechnol. Bioeng., 94(4):680-688(2006)参照)。他の抗体グルコシル化変異体も含まれる(例えば、米国特許第6,602,684号参照)。
【0041】
いくつかの実施態様では、1つ以上のアミノ酸の改変を、本明細書において提供された抗体のFc領域に導入し得、これによりFc領域変異体を作製し得る。本明細書のFc領域は、定常領域の少なくとも部分を含有している、免疫グロブリン重鎖のC末端領域である。Fc領域は、天然配列のFc領域及び変異Fc領域を含む。Fc領域変異体は、1つ以上のアミノ酸位置においてアミノ酸の改変(例えば置換)を含む、ヒトFc領域の配列(例えばヒトIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4のFc領域)を含み得る。
【0042】
抗体は、延長された半減期及び改善された胎児性Fc受容体(FcRn)への結合を有し得る(例えば米国特許出願第2005/0014934号参照)。このような抗体は、FcRnに対するFc領域の結合を改善する1つ以上の置換をFc領域内に有するFc領域を含み得、これには、Fc領域残基(EU番号付け体系による、238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424又は434)の1つ以上において置換を有するものが含まれる(例えば、米国特許第7,371,826号参照)。Fc領域変異体の他の例も考えられる(例えばDuncan & Winter, Nature 322:738-40 (1988);米国特許第5,648,260号及び第5,624,821号;及び国際公開公報第94/29351号参照)。
【0043】
いくつかの実施態様では、システインで工学操作された抗体、例えば「チオモノクロ―ナル抗体」(ここでは抗体の1つ以上の残基が、システイン残基で置換されている)を作製することが望ましくあり得る。いくつかの実施態様では、置換された残基は、抗体が近づくことのできる部位で起こる。反応性チオール基は、他の部分、例えば薬物部分又はリンカー薬物部分へのコンジュゲーションのための部位に位置し得、これにより免疫コンジュゲートが作製され得る。いくつかの実施態様では、以下の残基のいずれか1つ以上がシステインで置換されていてもよい:軽鎖のV205(Kabatの番号付け);重鎖のA118(EU番号付け);及び重鎖Fc領域のS400(EU番号付け)。
【0044】
いくつかの実施態様では、本明細書に提供された抗体は、公知であり入手可能である、追加の非タンパク質性部分を含有するようにさらに修飾されていてもよい。抗体の誘導体化に適した部分としては水溶性ポリマーが挙げられるがこれらに限定されない。水溶性ポリマーの非制限的な例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/マレイン酸無水物コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマー又はランダムコポリマーのいずれか)、及びデキストラン又はポリ(nビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えばグリセロール)、ポリビニルアルコール、及びその混合物が挙げられるがこれらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中におけるその安定性に因り、製造において利点を有し得る。ポリマーは、任意の分子量であり得、分岐していても分岐していなくてもよい。抗体に付着したポリマーの数は変更され得、2つ以上のポリマーが付着している場合、それらは同じ分子であっても、又は異なる分子であってもよい。
【0045】
本明細書に記載の抗体は、核酸によってコードされ得る。核酸は、2つ以上のヌクレオチド塩基を含んでいる、一種のポリヌクレオチドである。特定の実施態様では、核酸は、ポリヌクレオチドをコードしているポリペプチドを細胞内に導入するために使用され得る、ベクターの成分である。本明細書において使用する「ベクター」という用語は、核酸分子が連結されている別の核酸を輸送することのできる、該核酸分子を指す。ある種類のベクターは、ゲノムに組み込まれるベクター、すなわち「組込み型ベクター」であり、これは、宿主細胞の染色体DNAに組み込まれるようになることが可能である。別の種類のベクターは、「エピソーム」ベクター、例えば、染色体外での複製が可能な核酸である。作動可能に連結されている遺伝子の発現を指令することのできるベクターは、本明細書において「発現ベクター」と称される。適切なベクターは、プラスミド、細菌人工染色体、酵母人工染色体、ウイルスベクターなどを含む。発現ベクター内における、転写の制御に使用するための、調節配列、例えばプロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナルは、哺乳動物、微生物、ウイルス、又は昆虫の遺伝子に由来し得る。通常、複製起点によって付与される、宿主における複製能、及び形質転換体の認識を容易にする選択用遺伝子が追加的に取り込まれてもよい。ウイルス、例えばレンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスなどに由来するベクターが使用され得る。プラスミドベクターは、染色体の位置への組込みのために直鎖状化されていてもよい。ベクターは、ゲノム内の所定の位置又は限定された部位のセットへの部位特異的組込みを指令する配列を含み得る(例えばAttP-AttBの組換え)。さらに、ベクターは、転移因子に由来する配列を含み得る。
【0046】
本明細書において基準配列と比較してアミノ酸配列又は核酸配列を記載するために使用される場合の、本明細書において使用する「相同な」、「相同性」又は「相同率」という用語は、Karlin及びAltschul(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 2264-2268, 1990, modified as in Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5877, 1993)によって記載される式を使用して決定され得る。このような式は、Altschul et al.(J. Mol. Biol. 215: 403-410, 1990)の基本的な局所的アラインメント探索ツール(BLAST)プログラムに取り込まれる。配列の相同率は、本出願の出願日の日付において、最新版のBLASTを使用して決定され得る。
【0047】
本明細書に記載の抗体をコードしている核酸を使用して、適した細胞に感染させるか、トランスフェクトさせるか、形質転換させるか、又は別の方法で核酸の遺伝子を導入させることができ、よって、商業的使用又は治療的使用のための抗体の産生が可能となる。標準的な細胞株、及び大規模細胞培養液からの抗体の産生法は当技術分野において公知である。例えば、Li et al., “Cell culture processes for monoclonal antibody production.” Mabs. 2010 Sep-Oct; 2(5): 466-477を参照されたい。特定の実施態様では、該細胞は真核細胞である。特定の実施態様では、該真核細胞は哺乳動物細胞である。特定の実施態様では、該哺乳動物細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NS0マウス骨髄腫細胞、又はPER.C6(登録商標)細胞である。特定の実施態様では、抗体をコードしている核酸は、抗体の産生に有用な細胞のゲノム遺伝子座に組み込まれる。特定の実施態様では、本明細書には、抗体の産生及び分泌を可能とするに十分なインビトロでの条件下で、該抗体をコードしている核酸を含む細胞を培養する工程を含む、抗体の作製法が記載されている。
【0048】
特定の実施態様では、本明細書には、(a)ゲノム位置に組み込まれた本明細書に記載の抗体をコードしている1つ以上の核酸を含む哺乳動物細胞株;及び(b)凍結保護剤を含む、マスターセルバンクが記載されている。特定の実施態様では、凍結保護剤は、グリセロール、DMSO、又はその組合せを含む。特定の実施態様では、マスターセルバンクは、(a)(i)配列番号13によって示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一である重鎖アミノ酸配列;及び(ii)配列番号14によって示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一である軽鎖アミノ酸配列、を有する抗体をコードしている核酸を、ゲノム位置に組み込まれて含むCHO細胞株;及び(b)凍結保護剤を含む。特定の実施態様では、凍結保護剤は、グリセロール、DMSO、又はその組合せを含む。特定の実施態様では、マスターセルバンクは、液体窒素による凍結に耐えることのできる適切なバイアル又は容器に含まれる。
【0049】
また本明細書には、本明細書に記載の抗体を作製する方法が記載されている。このような方法は、抗体をコードしている核酸を含む細胞又は細胞株を、該抗体の発現及び分泌を可能とするに十分な条件下で細胞培養培地中でインキュベートし、細胞培養培地から該抗体をさらに収集する工程を含む。収集はさらに、生細胞、細胞片、非抗体タンパク質又はポリペプチド、所望ではない塩、緩衝液、及び培地成分を除去するための、1回以上の精製工程を含み得る。特定の実施態様では、追加の精製工程(群)としては、遠心分離、超遠心分離、透析、脱塩、プロテインA、プロテインG、プロテインA/G、若しくはプロテインLによる精製、及び/又はイオン交換クロマトグラフィーが挙げられる。
【0050】
抗ペリオスチン抗体
本明細書には、ペリオスチン(POSTN)機能を阻害する抗体が記載されている。このような抗体は、がんの処置に有用である。本明細書に記載の抗体は、腫瘍のコラーゲン含量を減少させ、マクロファージのM1表現型への極性化を増加させつつ、顆粒球及び腫瘍関連マクロファージの浸潤を減少させ、そして腫瘍浸潤T細胞の蓄積及び抗腫瘍特性を増加させる。特定の実施態様では、抗ペリオスチン抗体は、全く処置しないもの又は対照の処置と比較して、腫瘍コラーゲン含量を少なくとも約5%、10%、15%。20%、25%、30%、35%、又は40%減少させる。特定の実施態様では、抗ペリオスチン抗体は、全く処置しないもの又は対照の処置と比較して、顆粒球及び腫瘍関連マクロファージの浸潤を少なくとも約20%、25%、30%、35%、40%、45%、又は50%減少させる。特定の実施態様では、抗ペリオスチン抗体は、全く処置しないもの又は対照の処置と比較して、CD11b陽性細胞の浸潤を少なくとも約20%、25%、30%、35%、40%、45%、又は50%減少させる。特定の実施態様では、抗ペリオスチン抗体は、全く処置しないもの又は対照の処置と比較して、腫瘍関連マクロファージのM1型(CD11b陽性、MHCクラスII陽性、CD206陰性)への極性化を少なくとも約20%、25%、30%、35%、40%、45%、又は50%増加させる。特定の実施態様では、抗ペリオスチン抗体は、全く処置しないもの又は対照の処置と比較して、腫瘍内のCD4陽性及び/又はCD8陽性T細胞の蓄積を、少なくとも約20%、25%、30%、35%、40%、45%、又は50%増加させる。特定の実施態様では、抗ペリオスチン抗体は、全く処置しないもの又は対照の処置と比較して、腫瘍浸潤CD8陽性T細胞のインターフェロンγの産生を、少なくとも約20%、25%、30%、35%、40%、45%、又は50%増加させる。
【0051】
本明細書には、ペリオスチンに結合する組換え抗体又はその抗原結合断片が記載され、ここでの該抗体又はその抗原結合断片は、(a)配列番号1(GYTFTSYG)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR1(CDR-H1);(b)配列番号16(ISAYXGNT)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR2(CDR-H2);(c)配列番号17(DXLVVPFDY)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR3(CDR-H3);(d)配列番号10(SSDIGSNR)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR1(CDR-L1);(e)配列番号11(SND)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR2(CDR-L2);又は(f)配列番号12(AAWDDSLSTYV)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR3(CDR-L3)を含み、ここでのXは任意のアミノ酸である。
【0052】
本明細書には、ペリオスチンに結合する組換え抗体又はその抗原結合断片が記載され、ここでの該抗体又はその抗原結合断片は、(a)配列番号1(GYTFTSYG)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR1(CDR-H1);(b)配列番号16(ISAYXGNT)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR2(CDR-H2);(c)配列番号17(DXLVVPFDY)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR3(CDR-H3);(d)配列番号10(SSDIGSNR)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR1(CDR-L1);(e)配列番号11(SND)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR2(CDR-L2);及び(f)配列番号12(AAWDDSLSTYV)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR3(CDR-L3)、から選択されたいずれか1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つの相補性決定領域を含み、ここでのXは任意のアミノ酸である。
【0053】
本明細書には、ペリオスチンに結合する組換え抗体又はその抗原結合断片が記載され、ここでの該抗体又はその抗原結合断片は、(a)配列番号1(GYTFTSYG)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR1(CDR-H1);(b)配列番号2(ISAYNGNT)、3(ISAYSGNT)、4(ISAYQGNT)、5(ISAYTGNT)、又は6(ISAYDGNT)のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR2(CDR-H2);(c)配列番号7(DILVVPFDY)、8(DVLVVPFDY)、又は9(DMLVVPFDY)のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR3(CDR-H3);(d)配列番号10(SSDIGSNR)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR1(CDR-L1);(e)配列番号11(SND)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR2(CDR-L2);(f)及び配列番号12(AAWDDSLSTYV)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR3(CDR-L3)を含む。特定の実施態様では、該抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、又はキメラ抗体である。特定の実施態様では、該抗体はIgG抗体である。特定の実施態様では、本明細書に記載の抗体は、エフェクター機能の欠失した又は減少したFc部分を含み得る。特定の実施態様では、該抗体は、ヒト肺線維芽細胞及び/又はマウス線維芽細胞を用いて実施された細胞接着アッセイにおいて、約50ナノモル未満のIC50を有する。特定の実施態様では、該抗体は、ヒト肺線維芽細胞及び/又はマウス線維芽細胞を用いて実施された細胞接着アッセイにおいて、約40ナノモル未満のIC50を有する。特定の実施態様では、該抗体は、ヒト肺線維芽細胞及び/又はマウス線維芽細胞を用いて実施された細胞接着アッセイにおいて、約30ナノモル未満のIC50を有する。
【0054】
本明細書には、組換え抗体又はその抗原結合断片も記載され、ここでの該抗体又はその抗原結合断片は、(a)配列番号1(GYTFTSYG)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR1(CDR-H1);(b)配列番号2(ISAYNGNT)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR2(CDR-H2);(c)配列番号9(DMLVVPFDY)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR3(CDR-H3);(d)配列番号10(SSDIGSNR)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR1(CDR-L1);(e)配列番号11(SND)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR2(CDR-L2);及び(f)配列番号12(AAWDDSLSTYV)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR3(CDR-L3)を含む。特定の実施態様では、該抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、又はキメラ抗体である。特定の実施態様では、該抗体はIgG抗体である。特定の実施態様では、本明細書に記載の抗体は、エフェクター機能の欠失した又は減少したFc部分を含み得る。特定の実施態様では、該抗体は、ヒト肺線維芽細胞及び/又はマウス線維芽細胞を用いて実施された細胞接着アッセイにおいて、約50ナノモル未満のIC50を有する。特定の実施態様では、該抗体は、ヒト肺線維芽細胞及び/又はマウス線維芽細胞を用いて実施された細胞接着アッセイにおいて、約40ナノモル未満のIC50を有する。特定の実施態様では、該抗体は、ヒト肺線維芽細胞及び/又はマウス線維芽細胞を用いて実施された細胞接着アッセイにおいて、約30ナノモル未満のIC50を有する。
【0055】
本明細書には、免疫グロブリン重鎖及び免疫グロブリン軽鎖を含む、ペリオスチンに結合する組換え抗体又はその抗原結合断片も記載され、(a)ここでの免疫グロブリン重鎖は、配列番号13に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含み;そして、(b)ここでの免疫グロブリン軽鎖は、配列番号14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含み、ここでの配列番号13のアミノ酸残基番号55は、アスパラギン、セリン、グルタミン、トレオニン、又はアスパラギン酸であり、ここでの配列番号13のアミノ酸残基番号100は、メチオニン、イソロイシン、又はバリンである。特定の実施態様では、該抗体はIgG抗体である。特定の実施態様では、本明細書に記載の抗体は、エフェクター機能の欠失した又は減少したFc部分を含み得る。特定の実施態様では、該抗体は、ヒト肺線維芽細胞及び/又はマウス線維芽細胞を用いて実施された細胞接着アッセイにおいて、約50ナノモル未満のIC50を有する。特定の実施態様では、該抗体は、ヒト肺線維芽細胞及び/又はマウス線維芽細胞を用いて実施された細胞接着アッセイにおいて、約40ナノモル未満のIC50を有する。特定の実施態様では、該抗体は、ヒト肺線維芽細胞及び/又はマウス線維芽細胞を用いて実施された細胞接着アッセイにおいて、約30ナノモル未満のIC50を有する。
【0056】
本明細書に記載の可変領域及びCDR領域を含む、抗体結合領域は、エフェクター機能の減少した抗体の一部として適切にフォーマット化され得る。特定の実施態様では、該抗体は、Fc領域を欠失した、F(ab')2であり得る。特定の実施態様では、該抗体は、抗体依存性細胞障害又は補体依存性細胞障害などのエフェクター機能を減少させる、抗体重鎖の定常領域に対する1つ以上の突然変異を含み得る。特定の実施態様では、該抗体は、IgG4定常領域を含み得る。特定の実施態様では、該組換え抗体又はその抗原結合断片の1つ以上のエフェクター機能を減少させる1つ以上の突然変異は、EUの番号付け体系による、IgG4のN434A、N434H、T307A/E380A/N434A、M252Y/S254T/T256E、433K/434F/436H、T250Q、T250F、M428L、M428F、T250Q/M428L、N434S、V308W、V308Y、V308F、M252Y/M428L、D259I/V308F、M428L/V308F、Q311V/N434S、T307Q/N434A、E258F/V427T、S228P、L235E、S228P/L235E/R409K、S228P/L235E、K370Q、K370E、G446の欠失、K447の欠失、及びその組合せから選択された突然変異又は突然変異のセットを含む。特定の実施態様では、該抗体は、EUの番号付け体系による重鎖のS228Pに対応する突然変異を有する、IgG4定常領域を含む。特定の実施態様では、該抗体は、EUの番号付け体系による重鎖のS228P、F234A、及びL235Aに対応する突然変異を有する、IgG4PAA定常領域を含み得る。Parekh et al. “Development and validation of an antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity-reporter gene assay.” MAbs 2012 May 1; 4(3): 310-318を参照されたい。
【0057】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、対応する野生型抗体と比較して、C1qに対して低下した親和性を示す。いくつかの実施態様では、抗体は、対応する野生型抗体よりも少なくとも2倍、又は少なくとも3倍、又は少なくとも5倍、又は少なくとも7倍、又は少なくとも10倍、又は少なくとも20倍、又は少なくとも30倍、又は少なくとも40倍、又は少なくとも50倍、又は少なくとも60倍、又は少なくとも70倍、又は少なくとも80倍、又は少なくとも90倍、又は少なくとも100倍、又は少なくとも200倍低い、C1q受容体に対する親和性を示す。
【0058】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、対応する野生型抗体よりも、少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、少なくとも50%、少なくとも40%、少なくとも30%、少なくとも20%、少なくとも10%、又は少なくとも5%低い、C1q対する親和性を示す。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、約100nMから約100μM、又は約100nMから約10μM、又は約100nMから約1μM、又は約1nMから約100μM、又は約10nMから約100μM、又は約1μMから約100μM、又は約10μMから約100μMのC1q対する親和性を示す。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、1μMより大きい、5μMより大きい、10μMより大きい、25μMより大きい、50μMより大きい、又は100μMより大きい、C1q対する親和性を示す。
【0059】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、対応する野生型Fc抗体と比較して、低下した補体依存性細胞障害活性を示す。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、対応する野生型抗体よりも少なくとも2倍、又は少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも50倍、又は少なくとも100倍低い補体依存性細胞障害活性を示す。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、対応する野生型と比較して、少なくとも10%、又は少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は少なくとも100%、又は少なくとも200%、又は少なくとも300%、又は少なくとも400%、又は少なくとも500%減少した補体依存性細胞障害活性を示す。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、検出可能な補体依存性細胞障害活性を全く示さない。いくつかの実施態様では、補体依存性細胞障害活性の減少及び/又は除去は、Fcリガンド及び/又は受容体に対する本明細書に記載の抗体の減少した親和性に起因し得る。
【0060】
当技術分野において、生物学的療法は、望んでいない細胞及び/又は標的を認識し攻撃するように免疫系が指令するという複雑な性質に伴う、有害毒性問題を有し得ることが理解される。処置が必要とされる場所で攻撃のための認識及び/又は標的化が行なわれない場合、有害毒性などの結果が起こり得る。例えば、非標的化組織の抗体による染色は、毒性問題の可能性を示し得る。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、対応する野生型抗体と比較して低減した非標的化組織の染色を示す。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、対応する野生型抗体よりも少なくとも2倍、又は少なくとも3倍、又は少なくとも5倍、又は少なくとも7倍、又は少なくとも10倍、又は少なくとも20倍、又は少なくとも30倍、又は少なくとも40倍、又は少なくとも50倍、又は少なくとも60倍、又は少なくとも70倍、又は少なくとも80倍、又は少なくとも90倍、又は少なくとも100倍、又は少なくとも200倍低い、低減した非標的化組織の染色を示す。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、対応する野生型抗体と比較して、少なくとも10%、又は少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は少なくとも100%、又は少なくとも200%、又は少なくとも300%、又は少なくとも400%、又は少なくとも500%低減した、低減した非標的化組織の染色を示す。
【0061】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、対応する野生型抗体と比較して、低減した抗体に関連した毒性を示す。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、対応する野生型抗体よりも少なくとも2倍、又は少なくとも3倍、又は少なくとも5倍、又は少なくとも7倍、又は少なくとも10倍、又は少なくとも20倍、又は少なくとも30倍、又は少なくとも40倍、又は少なくとも50倍、又は少なくとも60倍、又は少なくとも70倍、又は少なくとも80倍、又は少なくとも90倍、又は少なくとも100倍、又は少なくとも200倍低い毒性を示す。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、対応する野生型抗体と比較して、少なくとも10%、又は少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は少なくとも100%、又は少なくとも200%、又は少なくとも300%、又は少なくとも400%、又は少なくとも500%低減した毒性を示す。
【0062】
当技術分野において、生物学的療法は、有害作用の血小板凝集を有し得ることが理解される。インビトロ及びインビボでのアッセイを、血小板凝集の測定のために使用することができる。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、インビトロアッセイにおいて、対応する野生型抗体と比較して低減した血小板凝集を示す。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、インビトロアッセイにおいて、対応する野生型抗体よりも少なくとも2倍、又は少なくとも3倍、又は少なくとも5倍、又は少なくとも7倍、又は少なくとも10倍、又は少なくとも20倍、又は少なくとも30倍、又は少なくとも40倍、又は少なくとも50倍、又は少なくとも60倍、又は少なくとも70倍、又は少なくとも80倍、又は少なくとも90倍、又は少なくとも100倍、又は少なくとも200倍低い、低減した血小板凝集を示す。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、インビトロアッセイにおいて、対応する野生型抗体と比較して、少なくとも10%、又は少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は少なくとも100%、又は少なくとも200%、又は少なくとも300%、又は少なくとも400%、又は少なくとも500%低減した、低減した血小板凝集を示す。
【0063】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、対応する野生型抗体と比較して、低減したインビボでの血小板凝集を示す。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、インビボアッセイにおいて、対応する野生型抗体よりも少なくとも2倍、又は少なくとも3倍、又は少なくとも5倍、又は少なくとも7倍、又は少なくとも10倍、又は少なくとも20倍、又は少なくとも30倍、又は少なくとも40倍、又は少なくとも50倍、又は少なくとも60倍、又は少なくとも70倍、又は少なくとも80倍、又は少なくとも90倍、又は少なくとも100倍、又は少なくとも200倍低い、低減した血小板凝集を示す。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、インビボアッセイにおいて、対応する野生型抗体と比較して、少なくとも10%、又は少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は少なくとも100%、又は少なくとも200%、又は少なくとも300%、又は少なくとも400%、又は少なくとも500%低減した、低減した血小板凝集を示す。
【0064】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体は、対応する野生型抗体と比較して、低減した血小板活性化及び/又は血小板凝集を示す。
【0065】
治療に有用なペリオスチン抗体によって結合されるエピトープ
本明細書には、結合した場合に、ペリオスチンの生物学的活性(例えばインテグリンにより媒介される細胞接着)を阻害し、腫瘍の微小環境を変化させる(コラーゲン再構築及び免疫細胞の変化)、ヒトペリオスチンの特有のエピトープ又は領域が記載されている。この結合は、抗体のCDRアミノ酸残基と、ペリオスチン内のアミノ酸残基(例えば接触残基)との間の弱い(ファンデルワールス引力)、中程度の(水素結合)、及び強力な(塩橋)相互作用の組合せである。特定の実施態様では、接触残基は、抗ペリオスチン抗体上の残基と水素結合を形成するペリオスチン上の残基である。特定の実施態様では、接触残基は、抗ペリオスチン抗体上の残基と塩橋を形成するペリオスチン上の残基である。特定の実施態様では、接触残基は、抗ペリオスチン抗体上の残基とファンデルワールス引力を生じ、抗ペリオスチン抗体上の残基の少なくとも5Å、4Å、又は3Å以内である、ペリオスチン上の残基である。
【0066】
特定の実施態様では、本明細書に記載の抗ペリオスチン抗体は、テネイシンC又はI型コラーゲンに結合しない。
【0067】
特定の実施態様では、本明細書には、ペリオスチン(配列番号15)の以下の残基(N276、R284、E288、L287、V295、又はK302)のいずれか1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つに結合する、単離された抗体が記載されている。特定の実施態様では、本明細書には、配列番号15の以下の残基(N276、R284、E288、L287、V295、又はK302)の全部に結合する、単離された抗体が記載されている。特定の実施態様では、該抗体は、強力な又は中程度の相互作用で抗体と関与する残基にのみ結合する。特定の実施態様では、該抗体は、強力な相互作用で抗体と関与する残基にのみ結合する。いくつかの実施態様では、該抗体は、腫瘍部位における、CD8陽性T細胞による、インターフェロンγの発現及び/又は放出を増加させる。いくつかの実施態様では、該抗体は、浸潤腫瘍において抑制性顆粒球系骨髄球系細胞及び/又は腫瘍関連マクロファージの蓄積を減少させる。いくつかの実施態様では、該抗体は、浸潤腫瘍において、炎症誘発性M1マクロファージ表現型を増加させ、及び/又は、M2マクロファージ表現型を減少させる。いくつかの実施態様では、該抗体は、腫瘍部位へのCD8陽性T細胞を増加させ、腫瘍関連マクロファージを減少させ、そして浸潤腫瘍における炎症誘発性M1マクロファージ表現型を増加させる。
【0068】
特定の実施態様では、本明細書には、配列番号15の以下の残基(N276、R284、E288、L287、V295、又はK302)のいずれか1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つに結合する、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、及び12のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有するCDRを含む抗体が記載されている。特定の実施態様では、本明細書には、配列番号15の以下の残基(N276、R284、E288、L287、V295、又はK302)の全てに結合する、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、及び12のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有するCDRを含む抗体が記載されている。特定の実施態様では、該抗体は、強力な又は中程度の相互作用で抗体と関与する残基にのみ結合する。特定の実施態様では、該抗体は、強力な相互作用で抗体と関与する残基にのみ結合する。
【0069】
特定の実施態様では、本明細書には、配列番号15の以下の残基(N276、R284、E288、L287、V295、又はK302)のいずれか1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つに結合する、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、及び12のいずれか1つに示されるアミノ酸配列とは異なるCDRを含む抗体が記載されている。特定の実施態様では、本明細書には、配列番号15の以下の残基(N276、R284、E288、L287、V295、又はK302)のいずれか1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つに結合する、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、及び12のいずれか1つに示されるアミノ酸配列とは異なるCDRを含む抗体が記載されている。特定の実施態様では、該抗体は、強力な又は中程度の相互作用で抗体と関与する残基にのみ結合する。特定の実施態様では、該抗体は、強力な相互作用で抗体と関与する残基にのみ結合する。
【0070】
特定の実施態様では、本明細書には、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、及び12のいずれか1つに示されるアミノ酸配列とは、1、2、3、4、又は5つのアミノ酸残基だけ異なり、そして配列番号15の以下の残基(N276、R284、E288、L287、V295、又はK302)のいずれか1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つに結合する、CDRを含む抗体が記載されている。特定の実施態様では、本明細書には、配列番号15の以下の残基(N276、R284、E288、L287、V295、又はK302)のいずれか1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つに結合する、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、及び12のいずれか1つに示されるアミノ酸配列とは異なるCDRを含む抗体が記載されている。特定の実施態様では、該抗体は、強力な又は中程度の相互作用で抗体と関与する残基にのみ結合する。特定の実施態様では、該抗体は、強力な相互作用で抗体と関与する残基にのみ結合する。
【0071】
特定の実施態様では、本明細書には、配列番号13に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、又は約99%同一であるヒト又はヒト化重鎖可変領域アミノ酸配列;及び、配列番号14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、又は約99%同一であるヒト又はヒト化軽鎖可変領域アミノ酸配列を含み、そして、配列番号15の以下の残基(N276、R284、E288、L287、V295又はK302)の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つに結合する、ペリオスチンに特異的に結合する抗体が記載されている。特定の実施態様では、本明細書には、配列番号13に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、又は約99%同一であるヒト又はヒト化重鎖可変領域アミノ酸配列;及び、配列番号14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、又は約99%同一であるヒト又はヒト化軽鎖可変領域アミノ酸配列を含み、そして、配列番号15の以下の残基(N276、R284、E288、L287、V295又はK302)の全部に結合する、ペリオスチンに特異的に結合する抗体が記載されている。特定の実施態様では、該抗体は、強力な又は中程度の相互作用で抗体と関与する残基のみに結合する。特定の実施態様では、該抗体は、強力な相互作用で抗体と関与する残基のみに結合する。
【0072】
特定の実施態様では、本明細書には、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、及び12のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有するCDRを含み、配列番号13に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、又は約99%同一であるヒト又はヒト化重鎖可変領域アミノ酸配列;及び、配列番号14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、又は約99%同一であるヒト又はヒト化軽鎖可変領域アミノ酸配列を含み、配列番号15の以下の残基(N276、R284、E288、L287、V295又はK302)のいずれか1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つに結合する、抗体が記載されている。特定の実施態様では、本明細書には、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、及び12のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有するCDRを含み、配列番号15の以下の残基(N276、R284、E288、L287、V295又はK302)の全部に結合する、抗体が記載されている。特定の実施態様では、該抗体は、強力な又は中程度の相互作用で抗体と関与する残基のみに結合する。特定の実施態様では、該抗体は、強力な相互作用で抗体と関与する残基のみに結合する。
【0073】
特定の実施態様では、本明細書には、配列番号13に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、又は約99%同一であるヒト又はヒト化重鎖可変領域アミノ酸配列(ここでの配列番号13のアミノ酸残基番号55は、アスパラギン、セリン、グルタミン、トレオニン、又はアスパラギン酸であり、ここでの配列番号13のアミノ酸残基番号100は、メチオニン、イソロイシン、又はバリンである);及び、配列番号14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、又は約99%同一であるヒト又はヒト化軽鎖可変領域アミノ酸配列を含み、配列番号15の以下の残基(N276、R284、E288、L287、V295又はK302)の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つに結合する、ペリオスチンに特異的に結合する抗体が記載されている。特定の実施態様では、本明細書には、配列番号13に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、又は約99%同一であるヒト又はヒト化重鎖可変領域アミノ酸配列(ここでの配列番号13のアミノ酸残基番号55は、アスパラギン、セリン、グルタミン、トレオニン、又はアスパラギン酸であり、ここでの配列番号13のアミノ酸残基番号100は、メチオニン、イソロイシン、又はバリンである);及び、配列番号14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、又は約99%同一であるヒト又はヒト化軽鎖可変領域アミノ酸配列を含み、配列番号15の以下の残基(N276、R284、E288、L287、V295又はK302)の全部に結合する、ペリオスチンに特異的に結合する抗体が記載されている。特定の実施態様では、該抗体は、強力な又は中程度の相互作用で抗体と関与する残基のみに結合する。特定の実施態様では、該抗体は、強力な相互作用で抗体と関与する残基のみに結合する。
【0074】
特定の実施態様では、本明細書には、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、及び12のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有するCDR、及び配列番号13に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、又は約99%同一であるヒト又はヒト化重鎖可変領域アミノ酸配列(ここでの配列番号13のアミノ酸残基番号55は、アスパラギン、セリン、グルタミン、トレオニン、又はアスパラギン酸であり、ここでの配列番号13のアミノ酸残基番号100は、メチオニン、イソロイシン、又はバリンである);並びに、配列番号14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、又は約99%同一であるヒト又はヒト化軽鎖可変領域アミノ酸配列を含み、配列番号15の以下の残基(N276、R284、E288、L287、V295又はK302)の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つに結合する、ペリオスチンに特異的に結合する抗体が記載されている。特定の実施態様では、本明細書には、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、及び12のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有するCDR、及び配列番号13に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、又は約99%同一であるヒト又はヒト化重鎖可変領域アミノ酸配列(ここでの配列番号13のアミノ酸残基番号55は、アスパラギン、セリン、グルタミン、トレオニン、又はアスパラギン酸であり、ここでの配列番号13のアミノ酸残基番号100は、メチオニン、イソロイシン、又はバリンである);並びに、配列番号14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、又は約99%同一であるヒト又はヒト化軽鎖可変領域アミノ酸配列を含み、配列番号15の以下の残基(N276、R284、E288、L287、V295又はK302)の全部に結合する、ペリオスチンに特異的に結合する抗体が記載されている。特定の実施態様では、該抗体は、強力な又は中程度の相互作用で抗体と関与する残基のみに結合する。特定の実施態様では、該抗体は、強力な相互作用で抗体と関与する残基のみに結合する。
【0075】
特定の実施態様では、本明細書には、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、及び12のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有するCDRを含む抗体と結合について競合し、配列番号15の以下の残基(N276、R284、E288、L287、V295又はK302)のいずれか1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つに結合する、抗体が記載されている。特定の実施態様では、本明細書には、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、及び12のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有するCDRを含む抗体と結合について競合し、配列番号15の以下の残基(N276、R284、E288、L287、V295又はK302)の全部に結合する、抗体が記載されている。特定の実施態様では、該抗体は、強力な又は中程度の相互作用で抗体と関与する残基のみに結合する。特定の実施態様では、該抗体は、強力な相互作用で抗体と関与する残基のみに結合する。
【0076】
特定の実施態様では、本明細書には、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、及び12のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有するCDRを含む抗体の結合領域と少なくとも部分的に重複し、配列番号15の以下の残基(N276、R284、E288、L287、V295又はK302)のいずれか1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つに結合する、結合領域を含む抗体が記載されている。特定の実施態様では、本明細書には、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、及び12のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有するCDRを含む抗体の結合領域と少なくとも部分的に重複し、配列番号15の以下の残基(N276、R284、E288、L287、V295又はK302)の全部に結合する、結合領域を含む抗体が記載されている。特定の実施態様では、該抗体は、強力な又は中程度の相互作用で抗体と関与する残基のみに結合する。特定の実施態様では、該抗体は、強力な相互作用で抗体と関与する残基のみに結合する。
【0077】
特定の実施態様では、本明細書には、配列番号13に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、又は約99%同一であるヒト又はヒト化重鎖可変領域アミノ酸配列;及び、配列番号14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、又は約99%同一であるヒト又はヒト化軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む、抗体と結合について競合する抗体が記載されている。
【0078】
特定の実施態様では、本明細書には、配列番号13に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、又は約99%同一であるヒト又はヒト化重鎖可変領域アミノ酸配列;及び、配列番号14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、又は約99%同一であるヒト又はヒト化軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む、抗体の結合領域と少なくとも部分的に重複する、結合領域を含む抗体が記載されている。
【0079】
特定の実施態様では、本明細書には、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、及び12のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有するCDRを含む抗体と結合について競合し、配列番号13に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、又は約99%同一であるヒト又はヒト化重鎖可変領域アミノ酸配列;及び、配列番号14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、又は約99%同一であるヒト又はヒト化軽鎖可変領域アミノ酸配列を含み、配列番号15の以下の残基(N276、R284、E288、L287、V295又はK302)のいずれか1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つに結合する、抗体が記載されている。特定の実施態様では、本明細書には、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、及び12のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有するCDRを含み、配列番号15の以下の残基(N276、R284、E288、L287、V295又はK302)の全部に結合する、抗体が記載されている。特定の実施態様では、該抗体は、強力な又は中程度の相互作用で抗体と関与する残基のみに結合する。特定の実施態様では、該抗体は、強力な相互作用で抗体と関与する残基のみに結合する。
【0080】
特定の実施態様では、本明細書には、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、及び12のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有するCDRを含む抗体の結合領域と少なくとも部分的に重複し、配列番号13に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、又は約99%同一であるヒト又はヒト化重鎖可変領域アミノ酸配列;及び、配列番号14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、又は約99%同一であるヒト又はヒト化軽鎖可変領域アミノ酸配列を含み、配列番号15の以下の残基(N276、R284、E288、L287、V295又はK302)のいずれか1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つに結合する、結合領域を含む抗体が記載されている。特定の実施態様では、本明細書には、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、及び12のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有するCDRを含み、配列番号15の以下の残基(N276、R284、E288、L287、V295又はK302)の全部に結合する、抗体が記載されている。特定の実施態様では、該抗体は、強力な又は中程度の相互作用で抗体と関与する残基のみに結合する。特定の実施態様では、該抗体は、強力な相互作用で抗体と関与する残基のみに結合する。
【0081】
特定の実施態様では、本明細書には、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、及び12のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有するCDRを含む抗体と結合について競合し、配列番号13に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、又は約99%同一であるヒト又はヒト化重鎖可変領域アミノ酸配列(ここでの配列番号13のアミノ酸残基番号55は、アスパラギン、セリン、グルタミン、トレオニン、又はアスパラギン酸であり、ここでの配列番号13のアミノ酸残基番号100は、メチオニン、イソロイシン、又はバリンである);及び、配列番号14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、又は約99%同一であるヒト又はヒト化軽鎖可変領域アミノ酸配列を含み、配列番号15の以下の残基(N276、R284、E288、L287、V295又はK302)のいずれか1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つに結合する、抗体が記載されている。特定の実施態様では、本明細書には、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、及び12のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有するCDRを含み、配列番号15の以下の残基(N276、R284、E288、L287、V295又はK302)の全部に結合する、抗体が記載されている。特定の実施態様では、該抗体は、強力な又は中程度の相互作用で抗体と関与する残基のみに結合する。特定の実施態様では、該抗体は、強力な相互作用で抗体と関与する残基のみに結合する。
【0082】
特定の実施態様では、本明細書には、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、及び12のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有するCDRを含む抗体の結合領域と少なくとも部分的に重複し、配列番号13に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、又は約99%同一であるヒト又はヒト化重鎖可変領域アミノ酸配列(ここでの配列番号13の残基番号55のアミノ酸は、アスパラギン、セリン、グルタミン、トレオニン、又はアスパラギン酸であり、ここでの配列番号13の残基100のアミノ酸は、メチオニン、イソロイシン、又はバリンである);及び、配列番号14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、又は約99%同一であるヒト又はヒト化軽鎖可変領域アミノ酸配列を含み、配列番号15の以下の残基(N276、R284、E288、L287、V295又はK302)のいずれか1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つに結合する、結合領域を含む抗体が記載されている。特定の実施態様では、本明細書には、配列番号15の以下の残基(N276、R284、E288、L287、V295又はK302)の全部に結合し、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、及び12のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有するCDRを含む、抗体が記載されている。特定の実施態様では、該抗体は、強力な又は中程度の相互作用で抗体と関与する残基のみに結合する。特定の実施態様では、該抗体は、強力な相互作用で抗体と関与する残基のみに結合する。
【0083】
治療法
本明細書に開示された抗体は、がん又は腫瘍の処置に有用な抗体である。処置は、処置される容態を改善又は寛解することを探究した方法を指す。がんに関する処置は、腫瘍体積の低減、腫瘍体積の成長の低減、無進行生存期間又は寿命の延長を含むがこれらに限定されない。特定の実施態様では、処置は、処置されるがんの緩解に影響を及ぼすだろう。特定の実施態様では、処置は、以前に処置されたがん又は腫瘍の再発若しくは進行を予防することを目的とした、予防用量又は維持用量としての使用を包含する。当業者によって、該抗体は、安全かつ有効であり得るが、全ての個体が、投与される処置に等しく応答するわけではなく、それにも関わらずこれらの個体は処置されると判断されることが理解される。
【0084】
本明細書に記載の抗体によって処置可能な腫瘍としては、ペリオスチンを発現する腫瘍が挙げられる。ペリオスチンは、がん関連線維芽細胞によって分泌される、細胞外マトリックスの一成分であり、よって、大半の腫瘍は、ペリオスチンを発現するか又は含むであろう。特定の実施態様では、処置される腫瘍は、ペリオスチン陽性であり、検出可能なペリオスチンを有するか、又は確率の高い腫瘍の集団分析に基づいて検出可能なペリオスチンを有することが知られている腫瘍である。特定の実施態様では、ペリオスチンの高い腫瘍は、約50以上のIHCスコアを有するものである。
【0085】
特定の実施態様では、がん又は腫瘍は、固形がん又は腫瘍である。特定の実施態様では、がん又は腫瘍は、血液がん又は腫瘍である。特定の実施態様では、がん又は腫瘍は、乳腺、心臓、肺、小腸、大腸、脾臓、腎臓、膀胱、頭部、頸部、卵巣、前立腺、脳、膵臓、皮膚、骨、骨髄、血液、胸腺、子宮、精巣、及び肝臓の腫瘍を含む。特定の実施態様では、本発明の抗体を用いて処置され得る腫瘍又はがんは、腺腫、腺がん、血管肉腫、星状細胞腫、上皮がん、胚細胞腫、神経膠芽腫、神経膠腫、血管内皮腫、血管肉腫、血腫、肝芽腫、白血病、リンパ腫、髄芽腫、黒色腫、神経芽細胞腫、骨肉腫、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫、及び/又は奇形腫を含む。特定の実施態様では、腫瘍/がんは、末端黒子型黒色腫、日光角化症、腺がん、腺様嚢胞がん、腺腫、腺肉腫、腺扁平上皮がん、星細胞腫、バルトリン腺がん、基底細胞がん、気管支腺がん、毛細血管カルチノイド、細胞がん、がん肉腫、胆管細胞がん、軟骨肉腫、嚢胞腺腫、卵黄嚢腫瘍、子宮内膜増殖症、子宮内膜間質肉腫、類内膜腺がん、上衣腫、ユーイング肉腫、限局性結節性過形成、ガストリン産生腫瘍、生殖系列腫瘍、神経膠腫、グルカゴン産生腫瘍、血管芽腫、血管内皮腫、血管腫、肝腺腫、肝腺腫症、肝細胞がん、インスリナイト(insulinite)、上皮内腫瘍、上皮内扁平細胞腫瘍、浸潤性扁平細胞がん、大細胞がん、脂肪肉腫、肺がん、リンパ芽球性白血病、リンパ球性白血病、平滑筋肉腫、黒色腫、悪性黒色腫、悪性中皮腫、神経鞘腫、髄芽腫、髄上皮腫、中皮腫、粘表皮がん、骨髄性白血病、神経芽細胞腫、神経上皮腺がん、結節性黒色腫、骨肉腫、卵巣がん、漿液性乳頭状腺がん、下垂体腫瘍、形質細胞腫、偽肉腫、前立腺がん、肺芽腫、腎細胞がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫、漿液性がん、扁平細胞がん、小細胞がん、軟組織がん、ソマトスタチン分泌腫瘍、扁平上皮がん、扁平上皮細胞がん、未分化がん、ぶどう膜黒色腫、疣状がん、膣/外陰部がん、VIP(血管作動性腸管ペプチド)産生腫瘍、及びウィルムス腫瘍の群から選択される。特定の実施態様では、本発明の1つ以上の抗体を用いて処置される予定の腫瘍/がんは、脳がん、頭頸部がん、頭頸部扁平細胞がん、結腸直腸がん、急性骨髄性白血病、前駆B細胞急性リンパ芽球性白血病、膀胱がん、星細胞腫、好ましくはグレードII、III、又はIVの星細胞腫、神経膠芽腫、多形神経膠芽腫、小細胞がん、及び非小細胞がん、好ましくは非小細胞肺がん、肺腺がん、転移性黒色腫、アンドロゲン非依存性転移性前立腺がん、アンドロゲン依存性転移性前立腺がん、前立腺腺がん、及び乳がん、好ましくは乳管がん、及び/又は乳がんを含む。いくつかの実施態様では、がんは、神経膠芽腫、膵臓がん、乳がん、膀胱がん、腎臓がん、頭頸部がん、卵巣がん、皮膚がん、胃がん、中皮腫、肝臓がん、子宮内膜がん、大腸がん、子宮頸がん、前立腺がん、又は肺がんを含む。特定の実施態様では、この開示の抗体を用いて処置されるがんは、神経膠芽腫を含む。特定の実施態様では、この開示の1つ以上の抗体を用いて処置されるがんは、膵臓がんを含む。特定の実施態様では、この開示の1つ以上の抗体を用いて処置されるがんは、卵巣がんを含む。特定の実施態様では、この開示の1つ以上の抗体を用いて処置されるがんは、肺がんを含む。特定の実施態様では、この開示の1つ以上の抗体を用いて処置されるがんは、扁平細胞肺がんを含む。特定の実施態様では、この開示の1つ以上の抗体を用いて処置されるがんは、前立腺がんを含む。特定の実施態様では、この開示の1つ以上の抗体を用いて処置されるがんは、大腸がんを含む。特定の実施態様では、処置されるがんは、神経膠芽腫、膵臓がん、卵巣がん、大腸がん、前立腺がん、又は肺がんを含む。特定の実施態様では、がんは、他の処置に対して難治性である。特定の実施態様では、処置されるがんは、再発している。特定の実施態様では、がんは、再発した/難治性の神経膠芽腫、膵臓がん、卵巣がん、大腸がん、前立腺がん、又は肺がんである。
【0086】
特定の実施態様では、前記抗体は、それを必要とする被験者に、抗体を含有している医薬組成物の投与に適した任意の経路、例えば、皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内、腫瘍内、又は脳内などの経路によって投与され得る。特定の実施態様では、該抗体は静脈内に投与される。特定の実施態様では、該抗体は皮下に投与される。特定の実施態様では、該抗体は腫瘍内に投与される。特定の実施態様では、該抗体は、適切な投薬計画で、例えば週1回、週2回、月1回、月2回、2週間毎に1回、3週間毎に1回、又は月1回などで投与される。特定の実施態様では、該抗体は3週間毎に1回投与される。該抗体は、任意の治療有効量で投与され得る。特定の実施態様では、治療に許容される量は、約0.1mg/kgから約50mg/kgである。特定の実施態様では、治療に許容される量は、約1mg/kgから約40mg/kgである。特定の実施態様では、治療に許容される量は、約5mg/kgから約30mg/kgである。治療有効量は、処置される予定の疾患又は苦痛に伴う1つ以上の症状を寛解するに十分な量を含む。
【0087】
本明細書に記載の抗ペリオスチン抗体はまた、個体の腫瘍内のコラーゲン含量を減少させる方法において有用である。
【0088】
本明細書に記載の抗ペリオスチン抗体はまた、個体の腫瘍内のM1マクロファージ表現型を増加させる及び/又はM2マクロファージ表現型を減少させる方法において有用である。
【0089】
本明細書に記載の抗ペリオスチン抗体はまた、個体における抑制性顆粒球系骨髄球系細胞及び/又は腫瘍関連マクロファージの蓄積を減少させる方法において有用である。
【0090】
本明細書に記載の抗ペリオスチン抗体はまた、個体の腫瘍内のCD4陽性及び/又はCD8陽性T細胞の出現頻度を増加させる方法において有用である。
【0091】
本明細書に記載の抗ペリオスチン抗体はまた、個体の腫瘍内のCD8陽性T細胞によるインターフェロンγの発現及び/又は放出を増加させる方法において有用である。
【0092】
本明細書に記載の抗体は、個体の腫瘍内のコラーゲン含量を減少させるための医薬品の製造において有用である。
【0093】
本明細書に記載の抗体は、個体の腫瘍内のM1マクロファージ表現型を増加させるための及び/又はM2マクロファージ表現型を減少させるための医薬品の製造において有用である。
【0094】
本明細書に記載の抗体は、個体における抑制性顆粒球系骨髄球系細胞及び/又は腫瘍関連マクロファージの蓄積を減少させるための医薬品の製造において有用である。
【0095】
本明細書に記載の抗体は、個体の腫瘍内のCD4陽性及び/又はCD8陽性T細胞の出現頻度を増加させるための医薬品の製造において有用である。
【0096】
本明細書に記載の抗体は、個体の腫瘍内のCD8陽性T細胞によるインターフェロンγの発現及び/又は放出を増加させるための医薬品の製造において有用である。
【0097】
薬学的に許容される賦形剤、担体、及び希釈剤
本明細書に記載の抗体は、ヒト個体への投与に十分なほど純粋な、単離され精製された形態で提供され得る。
【0098】
特定の実施態様では、今回の開示の抗ペリオスチン抗体は、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤、担体、及び希釈剤を含む医薬組成物に含まれる。特定の実施態様では、今回の開示の抗体は、無菌溶液中に懸濁して投与される。特定の実施態様では、該溶液は、約0.9%のNaCl又は約5%のデキストロース、グルコース、又はショ糖を含む。特定の実施態様では、該溶液はさらに、緩衝液、例えば酢酸塩、クエン酸塩、ヒスチジン、コハク酸塩、リン酸塩、重炭酸塩、及びヒドロキシメチルアミノメタン(トリス);界面活性剤、例えばポリソルベート80(Tween80)、ポリソルベート20(Tween20)、及びポロキサマー188;ポリオール/二糖/多糖、例えばグルコース、デキストロース、マンノース、マンニトール、ソルビトール、ショ糖、トレハロース、及びデキストラン40;アミノ酸、例えば、グリシン又はアルギニン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、メチオニン;又は、キレート剤、例えばEDTA若しくはEGTA、の中の1つ以上を含む。
【0099】
特定の実施態様では、今回の開示の抗体は、凍結乾燥して発送/保存され、投与前に復元される。特定の実施態様では、凍結乾燥した抗体製剤は、増量剤、例えばマンニトール、ソルビトール、ショ糖、トレハロース、デキストラン40、又はその組合せを含む。凍結乾燥製剤は、ガラス又は他の適切な非反応性材料のバイアルに含まれて含有され得る。製剤化された場合、復元されるか否かに関わらず、該抗体は、特定のpHで、一般的には7.0未満で緩衝化され得る。特定の実施態様では、pHは、4.5~6.5、4.5~6.0、4.5~5.5、4.5~5.0、又は5.0~6.0であり得る。
【0100】
本明細書には、適切な容器内の本明細書に記載の1つ以上の抗体と、使用説明書、希釈剤、賦形剤、担体、及び投与用の器具から選択された1つ以上の追加の成分とを含む、キットも記載されている。
【0101】
特定の実施態様では、本明細書には、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤と、今回の開示の抗体とを混合する工程を含む、がん処置を調製する方法が記載されている。特定の実施態様では、本明細書には、今回の開示の1つ以上の抗体を凍結乾燥させる工程を含む、保存又は発送のためのがん処置を調製する方法が記載されている。
【0102】
実施例
以下の例示的な実施例は、本明細書に記載の組成物及び方法の実施態様の代表であり、いずれにしても限定することを意味するものではない。
【0103】
実施例1-抗体の作製及びスクリーニング
完全ヒトファージライブラリーを使用して、ファージディスプレイ抗体発見キャンペーンを実施し、ペリオスチンに対する結合物を単離した。簡潔に言えば、3回のパンニングを、組換えヒトペリオスチン、組換えマウスペリオスチン、又はその組合せのいずれかを使用して行ない、マウス交差反応性結合物の同定に重点が置かれた。このパンニング戦略から、マウスペリオスチンと交差反応する78個の配列の特有なScFvが同定され、細胞接着アッセイにおける機能スクリーニングのためにヒトIgG1フォーマットで生成された。
図1を参照されたい。
【0104】
組換えヒト又はマウスのペリオスチンを、96ウェルプレート上に4℃で一晩かけてコーティングした。翌日、プレートをPBSで洗浄し、2%ウシ血清アルブミンを用いて37℃で1時間かけてブロッキングした。ブロッキング後、抗体をプレートに加え、37℃で30分間インキュベートした。次いで、インキュベーション後、50,000個のIMR90ヒト肺線維芽細胞又は50,000個のMLGマウス線維芽細胞をウェルに加え、37℃で2時間のインキュベートを可能とした。その後、プレートをPBSで2回洗浄し、ウェルの集密度を、IncuCyteプラットフォームを使用して測定した。500nMでの高濃度の単一用量のスクリーニングから、21個のIgGが、
図1に示されるように、50%を超える阻害を有するとして同定され、結合スクリーニングへと進めて、以下の表1に示されるように、ヒト及びマウスのペリオスチンに対する相対的親和性を決定した。
【0105】
組換えヒト又はマウスのペリオスチンに対する相対的親和性を決定するために、これらのタンパク質を、マキシソーププレート上に4℃で一晩かけてコーティングした。翌日、プレートを、カゼインブロッキング緩衝液を用いて37℃で1時間かけてブロッキングした。各抗体の滴定液をプレートに加え、室温で1時間かけて結合させた。プレートをPBSTで4回洗浄し、その後、セイヨウワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートさせた抗ヒトFc二次抗体と共に室温で30分間インキュベートした。その後、プレートを再度、4×PBSTで洗浄し、その後、TMB基質及び1M HClを使用して展開した。このスクリーニングから、ヒトペリオスチン及びマウスペリオスチンの両方に対して1nM未満の結合EC50値を有する、4つのクローンが選択された(表1に太字及びイタリック体によって印が付けられている)。
【0106】
【0107】
実施例2-NB0828及び配列変異体の作製
4つの候補を、細胞接着アッセイにおいて用量反応で再試験し、IC50値を決定した。このスクリーニングから、NB0627は、特に適したIgGとして同定された(表2)。
【0108】
【0109】
その後、NB0627を、エフェクターサイレントなIgG4PAAアイソタイプに変換して、リード候補のNB0828が作製された。NB0828の配列分析は、VH領域における2つの翻訳後修飾の障害箇所を同定した。最初の脱アミド化部位は、CDR-H2に位置し、第二の酸化部位は、CDR-H3に位置する。それ故、これらの障害箇所を除去する試みにおいて、いくつかの単一突然変異体及び二重突然変異体を作製し、それらの結合及び活性を測定した。NB0828及びその変異体についてのIC50値及びEC50値の結果の要約を表3に列挙する。
【0110】
【0111】
実施例3-マウス膀胱MB49及び大腸CT26腫瘍モデルにおけるNB0828のインビボにおける有効性
NB0828の有効性を、2つの別々の腫瘍モデルである膀胱MB49及び大腸CT26の腫瘍モデルにおいて試験した。簡潔に言えば、250,000個のMB49細胞を、雌C57BL/6マウスの脇腹に皮内注射したか、又は、50,000個のCT26細胞を、雌Balb/cマウスの脇腹に皮内注射した。腫瘍の移植から3日後、マウスを、NB0828(50mg/kg、週3回)又はビヒクル対照(PBS)のいずれかを用いて腹腔内に処置した。腫瘍体積を、カリパスによる測定により週2回評価し、(長さ×幅2)/2として計算した。マウスを、腫瘍のサイズがいずれかの単一の方向で15mmを超えた場合、又は人道的終点としての腫瘍の潰瘍化に因り安楽死させた。
【0112】
図2(MB49)及び
図5(CT26)に示されるように、NB0828は、両方のモデルにおいて腫瘍の増殖を低減させるのに効果を示した。MB49モデルにおける腫瘍増殖のこの低減は、
図3に示されるような腫瘍内顆粒球系骨髄球系細胞のより低い出現頻度、及び
図4に示されるようなより低いコラーゲン含量を伴っていた。MB49モデルと同様に、CT26モデルは、顆粒球系骨髄球系細胞の低減を示した。さらに、NB0828は、
図6に示されるように、NB0828による処置の結果として、腫瘍浸潤マクロファージの出現頻度を低減させ、存在していたマクロファージは、M1表現型へと偏向した。CT26マウスモデルにおいて、NB0828による処置はまた、
図7に示されるように、腫瘍浸潤CD8陽性及びCD4陽性T細胞のより高い出現頻度、並びにインターフェロンγのより高い発現によって測定されるような高められたCD8陽性T細胞機能も伴っていた。
【0113】
免疫表現型検査
MB49又はCT26の担がんマウスを、NB0828又はビヒクル対照を用いて、記載のように3日目から開始して処置した。示されるデータについて、免疫表現型検査は、MB49及びCT26についてそれぞれ、腫瘍の移植後20日目及び18日目に実施された。腫瘍を切除し、皮膚を除去し、手術用のメスの刃を使用して機械的に破壊し、その後、ミルテニー社のマウス腫瘍解離酵素混液を使用して酵素消化した。消化された試料を、40μmのろ過器を通し、RPMIで洗浄し、その後、RPMI+10%のウシ胎児血清で2回目の洗浄を行なった。その後、細胞を、計数のために再懸濁し、1試料あたり最大で2×106個の白血球を蒔き、フローサイトメトリーによる分析のために染色した。CT26モデルにおけるCD8陽性腫瘍浸潤リンパ球の機能の評価のために、消化された腫瘍の単一細胞懸濁液を、抗CD28抗体及びブレフェルディンAの存在下で、AH1ペプチド[H2-Ld拘束性gp70(423~431)MuLVエピトープ、CT26細胞によって発現される免疫優性CD8陽性T細胞エピトープ]を用いて37℃で5時間刺激した。刺激後、標準的な表面/細胞内染色法によって、細胞を染色して、フローサイトメトリーを使用して、CD8陽性T細胞によるIFN-γの産生を検出した。示された細胞集団を評価するために使用されたフロー染色パネルは、以下の表4に含まれる。生存率判定染色(サーモフィッシャー社、Live/Dead Fixable Violet Stain)を使用して、生細胞イベントのみを調べることが可能となり、汎白血球マーカーCD45が、免疫コンパートメント内の集団の標準化を可能とするために含められた。関心対象の免疫集団は、以下のように表現型的に/機能的に定義された:全骨髄球系細胞(CD45陽性CD11b陽性)、顆粒球(CD45陽性CD11b陽性Gr-1 hi又はCD45陽性CD11b陽性Ly6G陽性Ly6C lo)、マクロファージ(CD45陽性CD11b陽性Ly6G陰性Ly6C lo/陰性F4/80陽性)、M1マクロファージ(MHC II陽性CD206陰性)、M2マクロファージ(MHC II陰性CD206陽性)、CD8陽性腫瘍浸潤リンパ球(CD45陽性CD11b陰性CD3陽性CD90.2陽性CD8陽性)、CD4陽性腫瘍浸潤リンパ球(CD45陽性CD11b陰性CD3陽性CD90.2陽性CD4陽性)、IFN-γ陽性CD8陽性腫瘍浸潤リンパ球(CD45陽性CD11b陰性CD3陽性CD8陽性IFN-γ陽性)。蛍光強度の中央値(MFI)を、IFN-γ陽性CD8陽性腫瘍浸潤リンパ球に由来するIFN-γ染色強度の決定のために使用した。
【0114】
【0115】
コラーゲン含量
腫瘍のコラーゲン総含量を、クイックザイム社の総コラーゲンアッセイを使用したヒドロキシプロリンの定量によって評価した。試料の調製のために、MB49腫瘍を、腫瘍が終点に達した時に担がんマウスから切除し、液体窒素中で瞬間凍結させ、-80℃で保存し、その後、分析した。腫瘍材料を秤量し、6M HClに1mlのHClあたり200mgの腫瘍の割合で再懸濁し、ボルテックスにかけ、95℃で20時間インキュベートした。チューブを冷却し、13,000RPMで10分間遠心分離にかけ、上清を回収した。上清を、製造業者の推奨するプロトコールに従って、ミリQ水で希釈し、その後、4M HClで希釈し、供給された緩衝液及び検出試薬を使用してヒドロキシプロリンの検出のために蒔き、技術的反復実験を行なった。570nmにおける吸光度の数値を測定し、供給されたコラーゲンを使用して作成された標準曲線と比較して、各試料中のコラーゲンの量を計算した。各試料の計算された総コラーゲン量(μg)を、腫瘍投入量の総質量(mg)で割り、腫瘍試料間のデータを標準化した。
【0116】
実施例4-マウス大腸MC38腫瘍モデルにおけるNB0828のインビボでの有効性
NB0828を、マウス大腸MC38腫瘍モデルにおける腫瘍増殖を低減させるその有効性について試験し、結果を
図8に示した。簡潔に言えば、200,000個のMC38細胞を、雌C57BL/6マウスの脇腹に皮内注射した。腫瘍の移植から3日後、マウスを、NB0828(50mg/kg、週3回)又はビヒクル対照(PBS)のいずれかを用いて腹腔内に処置した。CD8陽性T細胞の除去のために、抗マウスCD8a抗体(クローン2.43)又はIgGアイソタイプ対照(クローンLTF-2)を、最初の6回の投薬(10mg/kg、週3回)についてはNB0828と共に送達した。血液中のT細胞の除去は、表5に列挙されたフロー染色パネルを使用したフローサイトメトリーによって確認された。腫瘍体積を、MB49及びCT26のモデルについて記載されているのと同じ方法を使用して測定した。NB0828は、MC38モデルにおいて腫瘍増殖を低減するのに効果的であった(
図8)。NB0828はまた、
図9A及び9Cに示されているように、腫瘍微小環境を変化させることにより、CD8陽性T細胞を増加させ、腫瘍関連マクロファージ(TAM)の出現頻度を減少させ、炎症誘発性マクロファージの比を増加させるのに効果的であった。NB0828のこのモデルにおける腫瘍増殖を低減させる効力は、CD8陽性T細胞に依存していた。なぜなら、NB0828による処置中のCD8陽性T細胞の除去は、
図9Dに示されるように、NB0828の有益な効果を元に戻したからである。要するに、このデータは、NB0828が、効果的に腫瘍増殖を低減させ、腫瘍部位へのCD8陽性T細胞を増加させ、腫瘍関連マクロファージを減少させ、浸潤腫瘍における炎症誘発性M1マクロファージ表現型を増加させることを示す。
【0117】
免疫表現型検査
腫瘍を切除し、皮膚を除去し、手術用のメスを使用して機械的に破壊し、その後、ミルテニー社のマウス腫瘍解離酵素混液を使用して酵素消化した(37℃で振盪プラットフォーム上で45分間のインキュベーション)。消化された試料を、40μmのろ過器を通し、RPMIで洗浄し、その後、RPMI+10%のウシ胎児血清で2回目の洗浄を行なった。その後、細胞を、計数のために再懸濁し、1試料あたり最大で2×106個の白血球を蒔き、フローサイトメトリーによる分析のために染色した。MC38モデルにおけるCD8陽性腫瘍浸潤リンパ球(CD8陽性TIL)機能の評価のために、消化された腫瘍の単一細胞懸濁液(1試料あたり最大2×106個の白血球)を、抗CD28抗体及びブレフェルディンAの存在下で、p15Eペプチド[MC38腫瘍によって発現される、H2-Kb拘束性p15E(604~611)MuLVエピトープ]を用いて37℃で5時間刺激した。刺激後、細胞を染色して、eBioscience社の細胞内固定及び透過緩衝液セットを使用した標準的な表面/細胞内染色法によるフローサイトメトリーを使用して、CD8陽性T細胞によるIFN-γの産生を検出した。示された細胞集団を評価するために使用されたフロー染色パネルは、以下の表に含まれる。生存率判定染色(サーモフィッシャー社、生死判別のための固定可能なバイオレット染色(Live/Dead Fixable Violet Stain))を使用して、生細胞イベントのみを調べることが可能となり、汎白血球マーカーCD45が、免疫コンパートメント内の集団の標準化を可能とするために含められた。MC38における研究のために、関心対象の報告された免疫集団は、以下のように表現型的に/機能的に定義された:総骨髄球系細胞(CD45陽性CD11b陽性)、マクロファージ(CD45陽性CD11b陽性Ly6G陰性Ly6C lo/陰性F4/80陽性)、M1マクロファージ(MHC II陽性)、M2マクロファージ(MHC II陰性)、CD8陽性腫瘍浸潤リンパ球(CD45陽性CD11b陰性CD3陽性SSC lo CD8陽性)、IFN-γ陽性CD8陽性腫瘍浸潤リンパ球(CD45陽性CD11b陰性CD3陽性SSC loCD8陽性IFN-γ陽性)。
【0118】
【0119】
実施例5-NB0828は、ペリオスチン(POSTN)のFAS2ドメインに結合する
NB0828の結合領域を調べて、抗体をさらに特徴付けた。
【0120】
BIGH3/POSTNキメラタンパク質の作製
配列的にペリオスチンに最も近い相同タンパク質は、形質転換増殖因子β誘導タンパク質(BIGH3)であり、これは、該タンパク質のEMI-FAS4領域内に48%の配列相同率を有する。2つのタンパク質間の配列相同率は低いが、全体的なドメイン構造は非常に類似しており、1つのEMIドメインと4つの直列ファシクリン(FAS)ドメインを含んでいる。NB0828は、高い親和性で、ペリオスチンに結合するが、BIGH3には結合しない。NB0828の結合ドメインをさらに特徴付けるために、BIGH3/POSTNキメラタンパク質を作製し、ここで、ペリオスチンの各ドメインを、BIGH3の対応するドメインと置き換え、5つのBIGH/POSTNキメラを作製した(
図10)。NB0828結合研究を、これらのタンパク質に対してELISAによって実施した。
図11Aに示されているように、NB0828は、FAS2キメラを除いて、全てのBIGH3/POSTNキメラへの結合を保持している。POSTN FAS2ドメインをBIGH3 FAS2ドメインで置き換えた場合の、この観察可能な結合の減少は、NB0828がPOSTNのFAS2ドメインに結合することを示す。
【0121】
POSTN FAS2変異体の作製
ペリオスチンのFAS2ドメインは、132アミノ酸から構成される立体配座構造である。FAS2ドメイン間の様々な位置における単一のアミノ酸置換(アラニン)変異体を作製して、NB0828エピトープ又は結合領域をさらに規定し、重要な接触残基を同定した(表5)。公開されている結晶構造(Liu et al, 2018; PDB # 5YJG)を使用して、コンピューター分析ツールであるMOEにおける表面露出に基づいて、突然変異誘発のための残基を同定した。
【0122】
【0123】
全FAS2ドメインにわたる残基にわたる23個のアラニン変異体を、初回に作製した。NB0828の結合研究を、これらの変異体に対して実施し、アッセイ内の最大のシグナルから50%を超えて減少した変異体を、結合にとって重要な残基として同定した。
図11Bは、そのスクリーニングの結果を示す。NB0828の結合にとって重要なアミノ酸を示した2つの変異体を同定した:NB1205(R284A)及びNB1207(E288A)。これらの2つのアミノ酸が近接していることから(
図12)、2回目の11個の追加の変異体を作製し、この領域内の残基により特に焦点を当てた。
図11Cは、2回目のスクリーニングの結果を示す。2回目のスクリーニングのELISA結果に基づいて、NB0828の結合にとって重要なアミノ酸を示した追加の4つの変異体を同定した:NB1243(L287A)、NB1246(V295A)、NB1248(K302A)及びNB1202(N276A)。特に、NB1190(D245A)(これは、最大シグナルカットオフ値から50%を超える減少に非常に近かったが、これより下回らなかった)は、残りの残基とは別のループに位置するが、FASドメイン内にありNB0828の結合するループ上にあり、N276と接触点を形成する(
図12)。N276は、NB0828への結合にとって重要な残基として同定されたことから、D245残基もまた、NB0828に対する接触残基であり得るか、又は結合にとって重要であるNB0828エピトープループに対し構造的整合性を提供し得るかのいずれかである。
【0124】
種間のNB0828の親和性の決定
ヒト、マウス、ラット、及びカニクイザルの種間のNB0828の結合親和性が決定された。NB0828の親和性は、octet redシステムを使用して決定された。簡潔に言えば、抗ヒトFc抗体(AHC)バイオセンサーを使用して、NB0828を捕捉し、その後、滴定量の組換えヒト、マウス、ラット、又はカニクイザルのペリオスチンと会合させた(100nM→0nM;1:2の希釈率)。組換えヒト、マウス、及びラットのペリオスチンは、R&Dシステム社から商業的に購入し、カニクイザルのペリオスチンは社内で作製された。結果は、4つの種間のペリオスチンに対するNB0828の親和性が、非常に類似し、0.1~0,5nMの範囲内であることを示す。このデータは、上記に詳述されたエピトープマッピング実験を強く支持する。なぜなら、記載のNB0828の結合ループにおける配列同一率が、4つの種間で100%であったからである。
【0125】
【0126】
実施例6-NB0828は、テネイシンC及びI型コラーゲンに対するペリオスチンの結合を遮断しないが、細胞の接着は遮断する
NB0828が、細胞外タンパク質であるテネイシンC及びI型コラーゲンに対するペリオスチンの結合を遮断するかどうかを決定するために、競合的ELISAアッセイを実施した。組換えヒトペリオスチン(2ng/mL)を、マキシソーププレート上に4℃で一晩かけてコーティングした。翌日、プレートをカゼインブロッキング緩衝液を用いて37℃で1時間かけてブロッキングした。組換えヒトテネイシンC及びヒトI型コラーゲンについての結合EC80を決定するために、タンパク質を、EZ-Link(商標)NHS-PEG4-ビオチン(フィッシャー社)を使用して10:1でビオチニル化し、各ビオチニル化タンパク質の滴定液をプレートに加え、室温で1時間インキュベートした。プレートをPBSTで4回洗浄し、その後、アビジン-HRP(セイヨウワサビペルオキシダーゼ)を使用して30分間かけて検出した。その後、プレートを、再度、4×PBSTで洗浄し、TMB基質及び1M HClを使用して展開した。各タンパク質のEC80は、グラフパッドプリズム7ソフトウェアを使用して決定された。競合的ELISAのために、NB0828の滴定液、対照IgG、又はPBSTをプレートに加え、室温で30分間振盪しながらインキュベートした。その後、プレートをPBSTで4回洗浄し、ビオチニル化テネイシンC(0.9nM、13A、左)、又はコラーゲン(100nM、13B、左)のいずれかのEC80結合濃度、又は予め混合された遮断対照をプレートに加えた。予め混合された遮断対照は、EC80濃度のビオチニル化タンパク質を、組換えヒトペリオスチンの滴定液と混合することによって調製され、室温で30分間振盪しながらインキュベートし、その後、プレートに加えた。その後、プレートを室温で1時間振盪しながらインキュベートし、洗浄し、検出し、上記のように展開した。
【0127】
テネイシンC及びI型コラーゲンは、それぞれ0.9nM及び100nMの結合EC
80でペリオスチンに結合した(
図13A及び13B)。
図13A及び13Bに示されているように、NB0828は、予め混合された陽性対照とは対照的に、テネイシンC及びI型コラーゲンへのペリオスチンの結合を阻害しなかった。要するに、これらのデータは、NB0828が、細胞外マトリックスタンパク質であるテネイシンC及びI型コラーゲンに対するペリオスチンの相互作用を遮断しないことを示す。
【0128】
実施例7-ヒト腫瘍の徴候間のペリオスチン発現の免疫組織化学的検査(IHC)による評価
様々なヒトのがん間のペリオスチンの発現レベルを評価するために、免疫組織化学的検査(IHC)による有病率の研究を実施した。18個の腫瘍の徴候及び約750個の個々の試料を含んでいる、組織マイクロアレイ(TMA)を、ペリオスチンの発現について評価した。試料を、1:50に希釈された、抗ペリオスチン抗体のEPR20806(アブカム社の製造識別番号:ab215199、ロット識別番号:GR3192974-3)を用いて染色した。染色を、デジタル病理学法(HALO、Indica labs社)を使用して定量して、IHCスコアを計算した(IHCスコア=[低い強度の染色領域%
*1]+[中程度の強度の染色領域%
*2]+[高い強度の染色領域%
*3])。低い/高いペリオスチンの染色についての切点は、全試料間のおよそのペリオスチンIHCスコア平均値に基づいて、ペリオスチンのIHCスコアは50であるとして計算された。有病率の研究は、試験された徴候間及び徴候内における、一連のペリオスチンの染色を示し、膵がん、乳がん、及び扁平細胞肺がんが最も高いレベルのペリオスチン染色を示した(
図14A)。ペリオスチンの高い腫瘍は、全ての徴候において存在したが、出現頻度は異なっていた(
図14A)。乳がんにおける代表的なペリオスチン発現の免疫組織化学的検査画像が、
図14Bに示されている。要するに、これらのデータは、ペリオスチンが、複数の種類の腫瘍の間で広く発現されていることを実証する。
【0129】
本発明の好ましい実施態様が本明細書において示され記載されているが、このような実施態様が、単なる例として提供されることが当業者には明らかであろう。数多くの変種、変化、及び置換がすぐに、本発明から逸脱することなく、当業者には思いつくであろう。本明細書に記載の本発明の実施態様に対する様々な代替選択肢が、本発明の実施に使用されてもよいことが理解されるべきである。
【0130】
全ての刊行物、特許出願、交付済特許、及び本明細書に言及された他の文書は、各々の個々の刊行物、特許出願、交付済特許、及び他の文書のその全体が、参照により具体的かつ個々に組み込まれることが示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。参照によって組み込まれた文書中に含まれる定義は、それらが本開示の定義と矛盾する範囲では除外される。
【0131】
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-08-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペリオスチンに結合する組換え抗体又はその抗原結合断片であって、ここでの該抗体又はその抗原結合断片は、
a)配列番号1(GYTFTSYG)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR1(CDR-H1);
b)配列番号2(ISAYNGNT)、3(ISAYSGNT)、4(ISAYQGNT)、5(ISAYTGNT)、又は6(ISAYDGNT)のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR2(CDR-H2);
c)配列番号7(DILVVPFDY)、8(DVLVVPFDY)、又は9(DMLVVPFDY)のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR3(CDR-H3);
d)配列番号10(SSDIGSNR)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR1(CDR-L1);
e)配列番号11(SND)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR2(CDR-L2);及び
f)配列番号12(AAWDDSLSTYV)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR3(CDR-L3)
を含む、抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
組換え抗体又はその抗原結合断片が、
a)配列番号1(GYTFTSYG)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR1(CDR-H1);
b)配列番号2(ISAYNGNT)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR2(CDR-H2);
c)配列番号9(DMLVVPFDY)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR3(CDR-H3);
d)配列番号10(SSDIGSNR)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR1(CDR-L1);
e)配列番号11(SND)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR2(CDR-L2);及び
f)配列番号12(AAWDDSLSTYV)に示されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR3(CDR-L3)
を含む、請求項1に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
組換え抗体又はその抗原結合断片が、Fab、F(ab)2、単一ドメイン抗体、又は一本鎖可変断片(scFv)である、請求項1又は2に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
免疫グロブリン重鎖可変領域及び免疫グロブリン軽鎖可変領域:
a)ここでの免疫グロブリン重鎖可変領域は、配列番号13に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、95%、97%、99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含み;そして
b)ここでの免疫グロブリン軽鎖可変領域は、配列番号14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、95%、97%、99%同一であるか、又は100%同一である、アミノ酸配列を含み;
を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片をコードしている核酸。
【請求項6】
請求項5に記載の核酸を含む、細胞株。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか一項に記載の組換え抗体又はその抗原結合断片と、薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤とを含む、医薬組成物。
【請求項8】
がんの処置に使用するための、請求項1~4のいずれか一項に記載の組換え抗体若しくはその抗原結合断片、又は請求項7に記載の医薬組成物。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
【外国語明細書】