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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139295
(43)【公開日】2023-10-03
(54)【発明の名称】X線撮影装置およびX線撮影方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20230926BHJP
   A61B 6/12 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
A61B6/00 320Z
A61B6/00 370
A61B6/12
A61B6/00 350P
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023126449
(22)【出願日】2023-08-02
(62)【分割の表示】P 2019091448の分割
【原出願日】2019-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】小川 拓
(72)【発明者】
【氏名】吉田 光毅
(72)【発明者】
【氏名】村上 大輔
(72)【発明者】
【氏名】廣▲瀬▼ 大
(57)【要約】
【課題】所定の対象物を強調表示する場合に、X線の照射領域を迅速に絞って、X線画像の画質を迅速に向上させることが可能なX線撮影装置を提供する。
【解決手段】このX線撮影装置100は、X線照射部1と、X線検出部2と、X線の第1照射において第2X線画像を作成し、第1照射の停止後に、第2X線画像において所定の対象物を含むとともに、操作者により設定された指定領域401が収まる関心領域402を設定し、X線の第2照射において第2X線画像よりも多い放射線量により生成された第1X線画像を作成する画像処理部3と、遮蔽部120と、設定された関心領域402に基づいて遮蔽部120を制御する制御部4とを備え、画像処理部3は、制御部4による遮蔽部120の制御後に、第2照射において第1X線画像を順次作成し、順次作成した第1X線画像において制御部により検出されたマーカに基づいて所定の対象物を強調表示する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体にX線を照射するX線照射部と、
前記被検体を透過したX線を検出するX線検出部と、
前記被検体へのX線の第1照射において前記被検体を通過したX線に基づいて第2X線画像を作成し、前記第1照射の停止後に、前記第2X線画像において所定の対象物を含むとともに、操作者により設定された指定領域が収まる関心領域を設定し、前記被検体へのX線の第2照射において前記被検体を通過したX線に基づいて、前記第2X線画像よりも多い放射線量により生成された第1X線画像を作成する画像処理部と、
前記X線照射部から照射されたX線を遮蔽する遮蔽部と、
前記画像処理部により設定された前記関心領域に基づいて前記遮蔽部を制御する制御部と、を備え、
前記画像処理部は、前記制御部による前記関心領域に基づく前記遮蔽部の制御後に、前記被検体へのX線の前記第2照射において前記第1X線画像を順次作成し、順次作成した前記第1X線画像において前記制御部により検出されたマーカに基づいて前記所定の対象物を強調表示する、X線撮影装置。
【請求項2】
前記遮蔽部を含むとともに、前記遮蔽部を移動させることにより、前記X線照射部から照射されたX線の照射領域であるX線照射領域を調整するX線照射領域調整部をさらに備え、
前記制御部は、前記X線照射領域を調整するように前記X線照射領域調整部の制御を行った後に、前記第1X線画像内の前記所定の対象物に設けられた前記マーカを検出する制御を行うように構成されている、請求項1に記載のX線撮影装置。
【請求項3】
前記制御部は、設定された前記関心領域に基づいて、前記X線照射領域を狭めるように前記X線照射領域調整部の制御を行うように構成されている、請求項2に記載のX線撮影装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記X線照射領域調整部を制御した後に前記画像処理部により前記強調表示を行うように制御をするように構成されている、請求項3に記載のX線撮影装置。
【請求項5】
前記遮蔽部は、各々が独立して移動可能な複数の遮蔽部材を含み、
前記X線照射領域調整部および前記X線検出部は、前記X線照射部と前記X線検出部とを結ぶ光軸回りに回転可能に構成されており、
前記制御部は、前記関心領域に基づいて、前記複数の遮蔽部材の移動の制御と前記X線照射領域調整部および前記X線検出部の回転の制御を行うように構成されている、請求項2~4のいずれか1項に記載のX線撮影装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記強調表示が終了した後に前記X線照射領域を広げるように前記X線照射領域調整部の制御を行うように構成されている、請求項3または4に記載のX線撮影装置。
【請求項7】
前記画像処理部は、前記第2X線画像において前記操作者により設定される1つまたは複数の前記指定領域のすべてが収まるように前記関心領域を設定するように構成されている、請求項1に記載のX線撮影装置。
【請求項8】
前記所定の対象物は、前記被検体の内部に挿入される治療器具である、請求項2に記載のX線撮影装置。
【請求項9】
X線撮影装置によるX線撮影方法であって、
被検体へのX線の照射を開始する第1照射開始工程と、
前記第1照射開始工程において照射され、前記被検体を透過したX線に基づいて第2X線画像を取得する工程と、
前記第1照射開始工程において開始された前記被検体へのX線の照射を停止する第1照射停止工程と、
前記第2X線画像において所定の対象物を含むとともに、操作者により設定された指定領域が収まる関心領域を設定する関心領域設定工程と、
前記関心領域設定工程において設定された前記関心領域に基づいて、X線を遮蔽する遮蔽部を制御する遮蔽部制御工程と、
前記遮蔽部制御工程において前記遮蔽部を制御した後、前記被検体へのX線の照射を開始する第2照射開始工程と、
前記第2照射開始工程において照射され、前記被検体を透過したX線に基づいて、前記第2X線画像よりも多い放射線量により生成された第1X線画像を順次取得する工程と、
順次取得される前記第1X線画像において前記X線撮影装置が自動で検出したマーカに基づいて、前記所定の対象物を強調表示する強調工程とを備える、X線撮影方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線撮影装置およびX線撮影方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線撮影装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、被検体にX線を照射するX線管と、X線検出器と、X線管から照射されるX線の照射領域を調整するコリメータと、X線検出器により検出された検出信号に基づいて画像処理を行う画像処理部と、被検体の血管内に挿入されたステントに設けられたマーカを検出する検出部と、コリメータを制御する制御部と、を備えるX線撮影装置が開示されている。この特許文献1に記載のX線撮影装置では、制御部は、X線画像に写りにくいステントの視認性を向上させ、治療を行いやすくするために、ステントを強調表示する。また、制御部は、ステントを強調表示する場合に、検出器で検出されたステントのマーカに基づいてX線の照射領域がステントおよびステント近傍となるようにコリメータを制御して、X線の照射領域を絞るように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6115498号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載のX線撮影装置では、ステントを強調表示する場合に、ステントのマーカに基づいてX線の照射領域がステントおよびステント近傍となるようにコリメータを制御して、X線の照射領域を絞るため、ステントのマーカを検出する際には、X線の照射領域は絞られていない。この場合、X線の照射領域が広いため、X線の散乱光などの影響により、ステントのマーカを検出する際には、X線画像の画質が比較的低い状態となる。このため、X線画像からステントのマーカを迅速に検出できない場合がある。この場合、X線の照射領域を迅速に絞って、X線画像の画質を迅速に向上させることが困難である。そこで、ステント(所定の対象物)を強調表示する場合に、X線の照射領域を迅速に絞って、X線画像の画質を迅速に向上させることが望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、所定の対象物を強調表示する場合に、X線の照射領域を迅速に絞って、X線画像の画質を迅速に向上させることが可能なX線撮影装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の第1の局面におけるX線撮影装置は、被検体にX線を照射するX線照射部と、被検体を透過したX線を検出するX線検出部と、被検体へのX線の第1照射において被検体を通過したX線に基づいて第2X線画像を作成し、第1照射の停止後に、第2X線画像において所定の対象物を含むとともに、操作者により設定された指定領域が収まる関心領域を設定し、被検体へのX線の第2照射において被検体を通過したX線に基づいて、第2X線画像よりも多い放射線量により生成された第1X線画像を作成する画像処理部と、X線照射部から照射されたX線を遮蔽する遮蔽部と、画像処理部により設定された関心領域に基づいて遮蔽部を制御する制御部と、を備え、画像処理部は、制御部による関心領域に基づく遮蔽部の制御後に、被検体へのX線の第2照射において第1X線画像を順次作成し、順次作成した第1X線画像において制御部により検出されたマーカに基づいて所定の対象物を強調表示する。また、この発明の第2の局面におけるX線撮影方法は、X線撮影装置によるX線撮影方法であって、被検体へのX線の照射を開始する第1照射開始工程と、第1照射開始工程において照射され、被検体を透過したX線に基づいて第2X線画像を取得する工程と、第1照射開始工程において開始された被検体へのX線の照射を停止する第1照射停止工程と、第2X線画像において所定の対象物を含むとともに、操作者により設定された指定領域が収まる関心領域を設定する関心領域設定工程と、関心領域設定工程において設定された関心領域に基づいて、X線を遮蔽する遮蔽部を制御する遮蔽部制御工程と、遮蔽部制御工程において遮蔽部を制御した後、被検体へのX線の照射を開始する第2照射開始工程と、第2照射開始工程において照射され、被検体を透過したX線に基づいて、第2X線画像よりも多い放射線量により生成された第1X線画像を順次取得する工程と、順次取得される第1X線画像においてX線撮影装置が自動で検出したマーカに基づいて、所定の対象物を強調表示する強調工程とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、上記のように、X線照射領域を迅速に絞って、X線画像の画質を迅速に向上させることが可能なX線撮影装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態によるX線撮影装置の全体構成を示したブロック図である。
図2】本発明の一実施形態による表示部に表示される透視画像を示した図である。
図3】本発明の一実施形態による関心領域強調モードの際に表示部に表示される1つの指定領域を示した図である。
図4】本発明の一実施形態による関心領域強調モードの関心領域設定の際に表示部に表示される2つの指定領域を示した図である。
図5】本発明の一実施形態による関心領域強調モードの関心領域設定の際に表示部に表示される関心領域を示した図である。
図6】本発明の一実施形態によるコリメータによるX線照射領域の調整を説明するための模式図である。
図7】本発明の一実施形態による関心領域強調モードの強調表示撮影の際に表示部に表示される強調表示撮影画像を示した図である。
図8】本発明の一実施形態による関心領域強調モード処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
X線撮影装置100は、図1に示すように、画像処理部3と、制御部4と、表示部6と、操作部7と、移動機構8と、天板9と、を備えている。移動機構8には、X線照射部1と、X線検出部2とが設けられている。また、制御部4は、照射部制御部81、コリメータ制御部82および検出部制御部83を介して、X線照射部1、コリメータ12およびX線検出部2の制御を行っている。
【0012】
X線照射部1は、治療器具300が導入された被検体200にX線を照射する。X線検出部2は、被検体200を透過したX線を検出する。X線照射部1とX線検出部2とは、それぞれ、被検体200が載置される天板9を挟んで対向するように配置されている。X線照射部1およびX線検出部2は、移動機構8により移動および回転可能に支持されている。天板9は、図示しない天板駆動部により水平方向に移動可能である。制御部4は、被検体200の所定の領域を画像として撮影できるように、各制御部、移動機構8および天板駆動部を介して、X線照射部1、X線検出部2および天板9を移動させる。なお、各制御部は、照射部制御部81、コリメータ制御部82および検出部制御部83を含む。なお、治療器具300は、特許請求の範囲の「所定の対象物」の一例である。
【0013】
X線照射部1は、図示しないX線管を含んでいる。X線管は、図示しない高電圧発生部に接続されており、高電圧が印加されることによりX線を発生させる。X線管は、X線出射方向をX線検出部2の検出面に向けて配置されている。X線照射部1は、照射部制御部81に接続されている。照射部制御部81は、管電圧、管電流およびX線照射の時間間隔などの予め設定された撮影条件に従って、X線管からX線を発生させるようにX線照射部1の制御を行う。
【0014】
コリメータ12は、X線管から照射されたX線の一部を遮蔽することにより、X線照射領域110を調整することが可能に構成されている。コリメータ12は、X線照射部1とX線検出部2とを結ぶ光軸回りに回転可能に構成されている。コリメータ12は、複数の板状の部材であるリーフ120の各々が独立して移動可能に構成されている。コリメータ12は、X線管から照射されたX線の一部を遮蔽することにより、X線照射領域110を調整することが可能に構成されている。なお、コリメータ12は、特許請求の範囲の「X線照射領域調整部」の一例であり、コリメータ12のリーフ120は、特許請求の範囲の「遮蔽部」の一例である。
【0015】
X線検出部2は、X線照射部1から照射され、被検体200を透過したX線を検出し、検出したX線強度に応じた検出信号を出力する。X線検出部2は、たとえば、FPD(Flat Panel Detector)により構成されている。X線検出部2は、所定の解像度のX線検出信号を画像処理部3に出力する。画像処理部3は、X線検出部2からX線検出信号を取得して、画像を生成する。
【0016】
画像処理部3では、画像の撮影中にリアルタイムで画像処理が行われる。画像処理部3は、たとえば、CPUあるいはGPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサと、ROMおよびRAMなどの記憶部とを含んで構成されるコンピュータである。すなわち、画像処理部3は、記憶部に記憶された画像処理プログラムをプロセッサに実行させることにより構成される。画像処理部3は、制御部4と同一のハードウェア(CPU)に画像処理プログラムを実行させることにより、制御部4と一体的に構成されてもよい。
【0017】
画像処理部3は、治療器具300が導入された被検体200を透過したX線の検出信号に基づく画像を生成するように構成されている。画像処理部3は、X線検出部2の検出信号に基づき、画像を動画像の形式で生成する。すなわち、X線照射部1から被検体200に対してX線が所定時間間隔で断続的に照射され、被検体200を透過したX線がX線検出部2により順次検出される。画像処理部3は、X線検出部2から順次出力される検出信号を画像化することにより、画像を生成する。また、画像処理部3は、後述する関心領域強調モードを備える。
【0018】
制御部4は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などを含んで構成されたコンピュータである。制御部4は、CPUが所定の制御プログラムを実行することにより、X線撮影装置100の各部を制御する制御部4として機能する。
【0019】
また、制御部4は、画像処理部3の制御を行う。制御部4は、操作者により関心領域強調ボタンが操作された際に、関心領域強調ボタンへの操作内容に基づくモードの切り替えに関する情報を取得するように構成されている。そして、制御部4は、画像処理部3にモードの切り替えに関する情報を送信することによって、画像処理部3のモードを、関心領域強調モードに切り替えさせるように構成されている。
【0020】
表示部6は、たとえば、液晶ディスプレイなどのモニタであり、画像処理部3により生成された画像などを表示可能である。制御部4は、画像処理部3により生成された画像および後述する画像処理部3のモードを切り替えるための関心領域強調ボタンを表示部6に表示させる制御を行うように構成されている。
【0021】
操作部7は、X線撮影に関する操作者の入力を受け付けることが可能に構成されている。制御部4は、操作者による入力操作を、操作部7を介して受け付けるように構成されている。また、制御部4は、操作部7により関心領域強調ボタンの切り替え操作を検出し、後述する画像処理部3のモードを切り替える。
【0022】
本実施形態のX線撮影装置100は、X線透視とX線撮影との2種類の方法で、画像を取得可能に構成されている。なお、X線透視では、X線撮影よりも少ない放射線量が被検体200に照射されることによって、被検体200の被ばく量を低減可能である一方、低画質の画像(透視画像)が取得される。一方、X線撮影では、ある程度高画質の画像(X線画像)が取得される。
【0023】
図2は、本実施形態のX線撮影装置100の表示部6に表示される透視画像の一例を示したものである。図2に示すように、治療器具300は、被検体200の血管201内に挿入されるステント301と、ステント301を膨らませるためのバルーン302と、カテーテル303とを含む。ステント301は、細い金属などで形成された網目構造を有する筒状であり、X線が透過しやすく画像に写りにくい。このため、ステント301またはバルーン302には、X線透過性の低い(または不透過の)素材で構成された一対のマーカ305が、目印として設けられている。この一対のマーカ305は、ステント301を挟み込むように、ステント301の両端近傍に設けられている。
【0024】
(関心領域強調モード)
本実施形態では、画像処理部3は、X線撮影の際に、連続的に生成された複数の画像を重ね合わせて合成画像を作成する画像処理を行うことが可能に構成されている。重ね合わせる際に、たとえば、ステント301に設けられたマーカ305などの特徴点を基準として各フレームの画像を重ね合わせる(時間積分を行う)ことによって、ステント301が強調表示された強調画像としての合成(積算)画像を生成する。また、画像処理部3は、合成画像の生成を、新たに画像が生成される毎に行うように構成されている。これにより、生成した合成画像を、動画像としてリアルタイムに表示部6に表示させることが可能である。また、画像処理部3は、後述する関心領域402(図5参照)の設定により設定された関心領域402において、所定の対象物を強調表示しながらX線撮影を行う強調表示撮影を行う関心領域強調モードを備える。
【0025】
(関心領域強調モードにおける関心領域の設定)
まず初めに、操作者はX線透視を行い、拍動によるマーカ305の位置変動を確認する。次に、操作者は、表示部6に表示された関心領域強調ボタンを操作する。関心領域強調ボタンが操作されたことに基づいて、制御部4が画像処理部3のモードを、関心領域強調モードに切り替えることにより、関心領域強調モードが開始される。
【0026】
画像処理部3は、関心領域強調モードが開始すると、図3に示すように、表示部6に指定領域401に表示させるとともに、X線透視画像を動画像として自動的に再生する。指定領域401は、動画像に重なるように表示される。関心領域強調ボタンが1度操作されると表示部6には指定領域401が1つ表示される。
【0027】
関心領域強調ボタンがもう一度操作すると、図4に示すように、指定領域401がさらに1つ表示される。操作者は、操作部7を用いて、表示部6に表示された指定領域401の位置や大きさを調整することができる。これにより、たとえば、ステント301のマーカ305などのような対象物の位置に指定領域401を移動させることができる。なお、本実施形態では、関心領域設定の際に指定領域401を2つ使用する例を示すが、関心領域設定の際に使用する指定領域401の数は3つ以上でもよいし、1つのみを使用して設定してもよい。1つの指定領域401のみを使用する場合は、指定領域401自体が関心領域402となる。
【0028】
さらに、画像処理部3は、図5に示すように、操作者により設定されたすべての指定領域401が収まるように関心領域402を設定する。なお、1つの指定領域401のみを使用する場合は、指定領域401自体が関心領域402となる。関心領域402は、血管201や臓器などの拍動による影響を考慮して、一定のマージンを与えて設定される。
【0029】
(コリメータの制御)
図6に示すように、コリメータ12のリーフ120は、X方向に沿って並ぶ第1リーフ部121および第2リーフ部122と、Y方向に沿って並ぶ第3リーフ部123および第4リーフ部124とを含む。複数のリーフ部(第1リーフ部121、第2リーフ部122、第3リーフ部123および第4リーフ部124)は、コリメータ制御部82を介して、制御部4により制御される。第1リーフ部121、第2リーフ部122、第3リーフ部123および第4リーフ部124をそれぞれ個別に移動させることにより、X線照射領域110の調整を行うことができるように構成されている。また、コリメータ12は、Z軸回りに回転可能に構成されている。なお、第1リーフ部121、第2リーフ部122、第3リーフ部123および第4リーフ部124は、特許請求の範囲の「遮蔽部材」の一例である。コリメータ12およびX線検出部2は、関心領域強調モードにおいて、制御部4により制御されるように構成されている。制御部4は、関心領域402に基づいて、複数のリーフ部の移動の制御とコリメータ12およびX線検出部2の回転の制御を行うように構成されている。
【0030】
制御部4は、移動機構8の制御を行い、コリメータ12およびX線検出部2を設定された関心領域402に沿うように回転させる。次に、設定された関心領域402基づいて、複数のリーフ部を内側に移動させ、X線照射領域110を狭める。設定された関心領域402基づいて、X線照射領域110を狭めた状態で、強調表示撮影を行うことにより、図7に示すように、設定された関心領域402の強調表示画像が表示部6に表示される。
【0031】
また、制御部4は、強調表示が終了すると、複数のリーフ部を外側に移動させ、X線照射領域110を広げる。そして、制御部4は、移動機構8の制御を行い、コリメータ12およびX線検出部2を回転させることで制御が行われる前の状態に戻すように制御を行う。
【0032】
(関心領域強調モード処理フロー)
次に、図8を参照して、本実施形態のX線撮影装置100による関心領域強調モードをフローチャートに基づいて説明する。関心領域強調モード処理は、制御部4により行われる。
【0033】
ステップ501において、表示部6に指定領域401が表示される。指定領域401が表示された後、ステップ502へと進む。
【0034】
ステップ502において、表示部6に透視画像が再生される。再生される透視画像は、関心領域強調モードの前に行っていた際のX線透視の動画像である。透視画像が再生されるとX線撮影のステップ503へと進む。
【0035】
ステップ503において、関心領域402が設定され、設定された関心領域402が表示部6に表示される。表示部6に設定された関心領域402の表示が完了すると、ステップ504へと進む。
【0036】
ステップ504において、撮影スイッチが押下されたと判断された場合には、ステップ505へと進む。
【0037】
一方、ステップ504において、撮影スイッチが押下されていないと判断された場合には、押下されたと判断されるまで、ステップ504の判断が繰り返される。
【0038】
ステップ505において、設定された関心領域402に基づいて、コリメータ12の制御が行われる。なお、コリメータ12を回転させる際には、X線検出部2も同様に回転させられる。コリメータ12の制御が完了すると、ステップ506へと進む。
【0039】
ステップ506において、X線が照射され、ステップ507へと進む。
【0040】
ステップ507において、設定された関心領域402内のマーカ305が検出され、ステップ508へと進む。なお、設定された関心領域402内にマーカ305が検出されない場合には、強調表示を行わない通常のX線撮影を行う。
【0041】
ステップ508において、強調表示撮影が開始される。撮影されたX線画像に対して、画像処理部3が、強調表示を行うことにより強調表示撮影が行われる。そして、強調表示撮影が開始されると、ステップ509へと進む。
【0042】
ステップ509において、撮影スイッチの押下が解除されたと判断された場合には、ステップ510へと進む。
【0043】
一方、ステップ509において、撮影スイッチが押下され続けていると判断された場合には、撮影スイッチの押下が解除されたと判断されるまで、ステップ509の判断が繰り返される。
【0044】
ステップ510において、強調表示撮影が終了される。そして、強調表示撮影が終了されると、ステップ511へと進む。
【0045】
ステップ511において、コリメータ12の制御が行われる。コリメータ12は、ステップ505の前の状態に戻すように制御が行われる。なお、コリメータ12を回転させる場合には、X線検出部2も同様に回転させられる。コリメータ12の制御が完了するとステップ512へと進む。
【0046】
ステップ512において、ステップ507からステップ509の間で強調表示撮影された画像が再生される。
【0047】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0048】
本実施形態では、画像処理部3により作成された画像内に設定された関心領域402内の治療器具300(所定の対象物)を強調表示する関心領域強調モードの場合に、設定された関心領域402に基づいて、X線照射領域110を調整するようにコリメータ12(X線照射領域調整部)を制御する制御部4を設ける。これにより、X線照射領域110が絞られる前の比較的画質が低い状態のX線画像内から治療器具300(所定の対象物)のマーカ305などの特徴点を検出する必要がなく、設定された関心領域402に基づいて、X線照射領域110を迅速に絞ることができる。その結果、X線画像の画質を迅速に向上させることができる。また、X線照射領域110を迅速に絞ることができるので、被検体200のX線の被爆量を低減することができる。
【0049】
また、本実施形態では、制御部4は、X線照射領域110を調整するようにコリメータ12(X線照射領域調整部)の制御を行った後に、関心領域402内の治療器具300(所定の対象物)または治療器具300(所定の対象物)に設けられたマーカ305を検出する制御を行うように構成する。これにより、X線照射領域110が絞られて画質が向上した状態のX線画像内から治療器具300(所定の対象物)のマーカ305を検出することができる。また、治療器具300(所定の対象物)に設けられたマーカ305をX線照射領域110が絞られて範囲が狭くなった状態のX線画像内から検出することができる。これらの結果、X線画像内からマーカ305を容易かつ迅速に検出することができる。
【0050】
また、本実施形態では、制御部4は、関心領域強調モードの場合に、設定された関心領域402に基づいて、X線照射領域110を狭めるようにコリメータ12(X線照射領域調整部)の制御を行うように構成する。これにより、関心領域402外からの散乱X線を除去して、関心領域402におけるX線画像の画質を向上させることができる。
【0051】
また、本実施形態では、制御部4は、関心領域強調モードの場合に、コリメータ12(X線照射領域調整部)を制御した後に画像処理部3により強調表示を行うように制御をするように構成する。これにより、強調表示開始時には、X線照射領域110が調整されているので、強調表示開始直後から画質が高い状態のX線画像を表示することができる。
【0052】
また、本実施形態では、コリメータ12のリーフ120(遮蔽部)は、各々が独立して移動可能な複数のリーフ部(遮蔽部材)である第1リーフ部121、第2リーフ部122、第3リーフ部123および第4リーフ部124を含み、コリメータ12(X線照射領域調整部)およびX線検出部2は、X線照射部1とX線検出部2とを結ぶ光軸回りに回転可能に構成されており、制御部4は、関心領域402に基づいて、複数のリーフ部(遮蔽部材)である第1リーフ部121、第2リーフ部122、第3リーフ部123および第4リーフ部124の移動の制御とコリメータ12(X線照射領域調整部)およびX線検出部2の回転の制御を行うように構成する。これにより、予め治療器具300(所定の対象物)にX線照射領域110の中心位置を合わせなくても、複数のリーフ部(遮蔽部材)である第1リーフ部121、第2リーフ部122、第3リーフ部123および第4リーフ部124を移動させることにより、治療器具300(所定の対象物)が入るようにX線照射領域110の調整を行うことができる。
【0053】
また、本実施形態では、制御部4は、関心領域強調モードの場合に、強調表示が終了した後にX線照射領域110を広げるようにコリメータ12(X線照射領域調整部)の制御を行うように構成する。これにより、強調表示が終了した後にX線照射領域110を広げるので、強調表示が終了した後に強調表示の際よりも広い領域を確認することができる。その結果、別の箇所の撮影を続けて行う際に、次に撮影を行う箇所を容易に探すことができるので、操作性を向上させることができる。
【0054】
また、本実施形態では、画像処理部3は、画像において操作者により設定される1つまたは複数の指定領域401のすべてが収まるように関心領域402を設定するように構成する。これにより、複数の指定領域401により関心領域402を設定することが可能になるので、1つのみの指定領域401で設定される場合よりも、より詳細に関心領域402を設定することができる。
【0055】
また、本実施形態では、治療器具300(所定の対象物)は、被検体200の内部に挿入される治療器具300である。これにより、ステント301などの被検体200の内部に挿入される治療器具300を強調表示する場合に、X線照射領域110を迅速に絞って、X線画像の画質を迅速に向上させることができる。
【0056】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0057】
たとえば、上記実施形態では、強調表示撮影開始前にコリメータ12(X線照射領域調整部)の制御を行い、X線照射領域110の調整を行うように構成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、強調表示撮影開始後にX線照射領域調整部の制御を行い、X線照射領域の調整を行うように構成してもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、関心領域強調モードの場合において、マーカ305を検出した後に強調表示撮影を行うように構成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、マーカを検出せずに強調表示撮影を行うように構成してもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、コリメータ12(X線照射領域調整部)の複数のリーフ部(遮蔽部材)が各々独立して移動可能に構成される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、X線照射領域調整部は、各遮蔽部材が連動して移動するように構成してもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、強調表示撮影終了後に、X線照射領域110を広げるようにコリメータ12(X線照射領域調整部)の制御を行う例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、関心領域強調モードが終了した際にX線照射領域110を広げるようにX線照射領域調整部の制御を行うようにしてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、設定された関心領域402に基づいて、コリメータ12(X線照射領域調整部)を制御し、強調表示撮影を行う関心領域強調モードのみで、強調表示撮影を行うように構成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、関心領域強調モードに加えて、所定の対象物に設けられたマーカに基づいて、X線照射領域調整部を制御し、強調表示撮影を行う撮影モードをさらに備えてもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、説明の便宜上、本発明のX線撮影装置100の処理を処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローチャートを用いて説明したが、本発明はこれに限られない。本発明では、処理動作を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。
【0063】
[態様]
上記した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0064】
(項目1)
被検体にX線を照射するX線照射部と、前記被検体を透過したX線を検出するX線検出部と、前記X線検出部から出力される検出信号に基づいて、画像を作成する画像処理部と、X線を遮蔽する遮蔽部を含み、前記遮蔽部を移動させることにより、前記X線照射部から照射されたX線の照射領域であるX線照射領域を調整するX線照射領域調整部と、前記画像処理部により作成された画像内に設定された関心領域内の所定の対象物を強調表示する関心領域強調モードの場合に、設定された前記関心領域に基づいて、前記X線照射領域を調整するように前記X線照射領域調整部を制御する制御部と、を備える、X線撮影装置。
【0065】
(項目2)
前記制御部は、前記X線照射領域を調整するように前記X線照射領域調整部の制御を行った後に、前記関心領域内の前記所定の対象物または前記所定の対象物に設けられたマーカを検出する制御を行うように構成されている、項目1に記載のX線撮影装置。
【0066】
(項目3)
前記制御部は、前記関心領域強調モードの場合に、設定された前記関心領域に基づいて、前記X線照射領域を狭めるように前記X線照射領域調整部の制御を行うように構成されている、項目2に記載のX線撮影装置。
【0067】
(項目4)
前記制御部は、前記関心領域強調モードの場合に、前記X線照射領域調整部を制御した後に前記画像処理部により前記強調表示を行うように制御をするように構成されている、項目3に記載のX線撮影装置。
【0068】
(項目5)
前記遮蔽部は、各々が独立して移動可能な複数の遮蔽部材を含み、前記X線照射領域調整部および前記X線検出部は、前記X線照射部と前記X線検出部とを結ぶ光軸回りに回転可能に構成されており、前記制御部は、前記関心領域に基づいて、前記複数の遮蔽部材の移動の制御と前記X線照射領域調整部および前記X線検出部の回転の制御を行うように構成されている、項目1~4のいずれか1項に記載のX線撮影装置。
【0069】
(項目6)
前記制御部は、前記関心領域強調モードの場合に、前記強調表示が終了した後に前記X線照射領域を広げるように前記X線照射領域調整部の制御を行うように構成されている、項目3または4に記載のX線撮影装置。
【0070】
(項目7)
前記画像処理部は、前記画像において操作者により設定される1つまたは複数の指定領域のすべてが収まるように前記関心領域を設定するように構成されている、項目1に記載のX線撮影装置。
【0071】
(項目8)
前記所定の対象物は、前記被検体の内部に挿入される治療器具である、項目2に記載のX線撮影装置。
【符号の説明】
【0072】
1 X線照射部
2 X線検出部
3 画像処理部
4 制御部
12 コリメータ(X線照射領域調整部)
100 X線撮影装置
110 X線照射領域
120 リーフ(遮蔽部)
121 第1リーフ部(遮蔽部材)
122 第2リーフ部(遮蔽部材)
123 第3リーフ部(遮蔽部材)
124 第4リーフ部(遮蔽部材)
200 被検体
300 治療器具(所定の対象物)
305 マーカ
401 指定領域
402 関心領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8