(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139323
(43)【公開日】2023-10-03
(54)【発明の名称】組織凍結保存および回復のためのデバイス
(51)【国際特許分類】
C12M 3/00 20060101AFI20230926BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20230926BHJP
【FI】
C12M3/00 Z
C12M1/00 G
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023127909
(22)【出願日】2023-08-04
(62)【分割の表示】P 2019538157の分割
【原出願日】2018-01-31
(31)【優先権主張番号】62/453,148
(32)【優先日】2017-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
(71)【出願人】
【識別番号】508285606
【氏名又は名称】ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ, アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー, デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ウラジミール ロウスコフ クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】アルビダス マミニシュキス
(72)【発明者】
【氏名】カピル バーティ ジュニア
(57)【要約】
【課題】少なくとも1つの回復培地チャンバおよび廃棄物チャンバ(60)が、組織容器受器に流体的に結合される、凍結保存された組織と、凍結保存培地とを含有する、シールされた凍結組織容器(22)を受容する受器を備える、凍結保存された組織を回復させるためのデバイス(30)を提供すること。
【解決手段】回復デバイスは、培地および組織の解凍ならびに加温、および解凍された凍結保存培地を廃棄チャンバの中に流し出すような組織容器を通した回復培地の流動の調整を促進する、調整装置の中に挿入されることができる。調整器は、組織容器上のIDタグに基づいて、組織を識別し、生存可能な状態で組織を解凍、培養、かつ維持するために適切なアルゴリズムを自動的に適用することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2017年2月1日に出願された米国仮出願番号第62/453,148号の利益を主張しており、この仮出願は、その全体が参考とて本明細書中に援用される。
【0002】
政府支援の陳述
本発明は、国立衛生研究所、国立眼病研究所によるプロジェクト番号Z01#:EY00419、EY000542、EY000456およびEY000531の下、政府支援でなされた。政府は、本発明において特定の権利を有する。
【0003】
分野
本発明は、組織凍結保存および回復の分野に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
凍結保存は、調整されていない化学動態によってもたらされる損傷を受けやすい、生存している生体物質(例えば、細胞、組織)が、生体物質が損傷しないように保護する特定の凍結保存培地の存在下で、非常に低温に冷却することによって保存されるプロセスである。十分な低温において、生体物質に損傷をもたらす場合がある物理的または化学的活性は、事実上、停止される。生体物質は、次いで、損傷を最小限にし、かつ望ましくは、物質を生存可能な状態に回復させる、制御された様式で解凍される。
【0005】
単細胞懸濁液が、一般的には凍結保存されるが、それらが後に回復され、患者の中への移植のために生存可能であり得るように、組織のシートまたは層を凍結保存することは、はるかにより困難であり、3次元の組織構造物に関しては、さらにはるかに困難である。組織の層および3次元の組織構造物は、例えば、凍結ならびに解凍の間に生じる膨張および収縮の間に被られる、引張応力からの損傷を被り得る。冷却または加温の間の組織内での非均一な物理的変化もまた、組織に損傷をもたらし得る。さらに、従来の凍結保存培地は、非凍結状態の組織にとって有毒であり得、組織を後の回復および培養に好適でないものにし得る。組織が、通常、移植手技に先立って組織を凍結状態から回復させるための細胞培養室装備を要求する、移植目的のために手術室の中に移送されることが必要とされるとき、別の問題が、生じる。これはまた、無菌状態を維持するための具体的な要件を課すものである。例えば、網膜上皮組織層を使用するプロセスにおいて、凍結保存された上皮組織は、手動で解凍され、次いで、培養および維持のための複数の容器の間を移送されなければならないが、これは、変動性をもたらし、無菌状態を損なわせ得、種々のステップを完成させるために高度に訓練された職員を伴う細胞培養室を含む、特別な設備を要求する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
要旨
開示される技術は、凍結された組織の回復、培養、および維持を、より単純、より迅速、かつ組織に対してあまり危険ではないものにし、組織の汚染を低減させ、遂行するためにより少ない人的ならびにインフラストラクチャ資源を要求する。凍結保存された組織を回復させるための開示されるデバイスは、凍結保存された組織(例えば、組織シートまたは複雑な3次元の組織構造物)と、凍結保存培地とを含有する、シールされた凍結組織容器を受容する、組織容器受器を備えることができる。回復デバイスはまた、組織容器受器に流体的に結合されている組織回復培地の少なくとも1つのリザーバと、組織容器受器に流体的に結合されている廃棄物チャンバとを含有するように構成される、少なくとも1つの回復培地チャンバを含むことができる。
【0007】
凍結組織容器が内側に装填される回復デバイスは、組織容器の内側にある凍結組織および凍結保存培地の解凍ならびに加温を促進する調整装置内に設置されることができ、また、同様に、組織回復培地を加温することができる。調整装置は、組織容器上のIDタグ(例えば、NFCまたはRFIDタグ)に基づいて、組織のタイプを識別し、使用できる状態(例えば、患者の中への移植、試験等)になるまで、組織を生存可能な状態に解凍、培養、かつ維持するために適切なアルゴリズムを自動的に適用することができる。いくつかの実施形態では、調整装置は、いったん組織容器が回復デバイスの中に挿入され、回復デバイスが、調整装置の中に挿入されると、回復、培養、および維持プロセスをほぼ完全に自動化された様式で制御することができる。
【0008】
回復デバイスは、組織回復培地を、少なくとも1つの回復培地チャンバから組織容器受器内の組織容器の中に誘導し、廃棄培地(例えば、解凍された凍結保存培地を含む)を、組織容器の内側から廃棄物チャンバの中に誘導しながら、組織容器および培地を、制御された温度、ガスレベル(例えば、二酸化炭素レベル)、ならびに/またはパラメータを提供する、無菌状態の含有された環境において維持する。
【0009】
いくつかの実施形態では、本デバイスは、第1および第2の筐体構成要素が相互に取り付け可能であり、相互から取り外し可能であるように、少なくとも1つの回復培地チャンバを含む、第1の筐体構成要素と、廃棄物チャンバを含む、第2の筐体構成要素とを備えることができる。組織容器受器は、第1および第2の筐体構成要素がともに取り付けられると、第1および第2の筐体構成要素の間に画定されることができる。各構成要素は、ねじまたは相互係止部材等の係合手段を含み、2つの構成要素を、シールされる様式で組織容器の周囲にともに固着させることができる。組織容器は、第1および第2の筐体構成要素を相互から取り外すことによって、組織容器受器から除去可能であることができる。
【0010】
本デバイスはさらに、回復培地の回復培地チャンバから組織容器の中への誘導を可能にするために、受容された組織容器内に少なくとも第1の開口部を作成する、少なくとも第1の貫通要素(例えば、針)と、廃棄培地の組織容器から廃棄物チャンバへの誘導を可能にするために、受容された組織容器内に少なくとも第2の開口部を作成する、少なくとも第2の貫通要素(例えば、別の針)とを備えることができる。貫通要素は、流体流を誘導する内部導管を備えることができる。いくつかの実施形態では、貫通は、容器が本デバイスの中に挿入されると、または2つの構成要素がともに固着されると生じる。他の実施形態に関して、貫通は、組織容器が本デバイスの内側にシールされた後に生じるように、自動化されることができる。
【0011】
少なくとも1つの回復培地チャンバは、2つまたはそれを上回る異なる組織回復培地を含有するように構成される、2つまたはそれを上回る回復培地チャンバを備えることができる。例えば、1つの培地が、組織のシートの片側に適用されることができる一方、別の培地が、組織のシートの反対側に適用される。
【0012】
いくつかの実施形態では、回復培地チャンバは、組織回復培地を含有する、挿入可能かつ除去可能な培地容器を受容することができる。挿入可能かつ除去可能な培地容器は、所望される量の回復培地を培地容器から組織容器に誘導させるための手動で作動可能な機構を備えることができる。例えば、手動で作動可能な機構は、プランジャまたはねじ駆動アクチュエータを備えることができる。いくつかの実施形態では、回復培地チャンバは、所定の速度で培地を分注するように完全に自動化かつ制御されることができる。廃棄物チャンバはまた、受容された廃棄物を廃棄するために本デバイスから除去可能であることができ、空の廃棄物チャンバと交換可能であることができる。これは、本デバイスのある構成要素が、新しい使用の度にデバイス全体を廃棄または消毒する必要なく、使い捨て可能、交換可能、および/または消毒可能であることを可能にする。
【0013】
組織容器自体は、容器槽と、容器槽の内側に位置付けられる、組織ウェルと、組織ウェルの内側に位置付けられる、組織と、組織ウェルおよび容器槽の内側にある、凍結保存培地と、凍結保存培地を容器槽内にシールする容器槽にシールされる、蓋と、組織を識別する、容器槽、蓋、または組織ウェル上の、識別タグとを備えることができる。特定の用途では、組織は、上皮組織(例えば、足場上の網膜色素上皮の単分子層)のシートを含み、凍結保存培地は、アルギン酸ナトリウムを含むことができる。組織容器全体は、開示されるデバイスによって、凍結保存され、長い周期(例えば、5年間またはそれを上回る周期)にわたって保管され、次いで、使用できる状態に解凍、培養、および維持されることができる。いくつかの実施形態では、回復培地および組織容器が内側に封入される回復デバイス全体が、ユニットとして凍結かつ保管されることができる。
【0014】
開示される技術の前述および他の目的、特徴、ならびに利点は、付随の図を参照して進行する以下の詳細な説明からより明白となるであろう。
例えば、本願は以下の項目を提供する。
(項目1)
凍結保存された組織を回復させるためのデバイスであって、
凍結保存された組織と、凍結保存培地とを含有する、シールされた組織容器を受容する、組織容器受器と、
組織回復培地のリザーバを含有するように構成される少なくとも1つの回復培地チャンバであって、前記組織容器受器に流体的に結合されている、少なくとも1つの回復培地チャンバと、
前記組織容器受器に流体的に結合される、廃棄物出口と、
を備え、
前記デバイスは、組織回復培地を、前記少なくとも1つの回復培地チャンバから前記組織容器受器内の前記組織容器の中に誘導することによって、かつ解凍された凍結保存培地を含む廃棄物を、前記組織容器の内側から前記廃棄物出口を通して外に誘導することによって、受容された前記組織容器の内側の凍結組織の解凍および培養を促進する、デバイス。
(項目2)
前記デバイスは、前記少なくとも1つの回復培地チャンバを含む、第1の筐体構成要素と、前記廃棄物出口を含む、第2の筐体構成要素とを備え、前記第1および第2の筐体構成要素は、相互に取り付け可能であり、かつ相互から取り外し可能である、項目1に記載のデバイス。
(項目3)
前記組織容器受器は、前記第1および第2の筐体構成要素がともに取り付けられると、前記第1および第2の筐体構成要素の間に画定される、項目2に記載のデバイス。
(項目4)
前記受容された組織容器は、前記第1および第2の筐体構成要素がともに取り付けられると、前記組織容器受器内にシールされ、前記組織容器は、前記第1および第2の筐体構成要素を相互から取り外すことによって、前記組織容器受器から除去可能である、項目3に記載のデバイス。
(項目5)
回復培地の前記回復培地チャンバから前記組織容器の中への誘導を可能にするために、前記受容された組織容器内に少なくとも第1の開口部を作成する、少なくとも第1の貫通要素と、廃棄培地の前記組織容器から前記廃棄物出口を通した外への誘導を可能にするために、前記受容された組織容器内に少なくとも第2の開口部を作成する、少なくとも第2の貫通要素とをさらに備える、項目1-4のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目6)
前記少なくとも1つの回復培地チャンバは、2つまたはそれを上回る異なる組織回復培地を含有するように構成される、2つまたはそれを上回る回復培地チャンバを備える、項目1-5のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目7)
前記少なくとも1つの回復培地チャンバは、前記組織回復培地を含有する、挿入可能かつ除去可能な培地容器を受容する、項目1-6のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目8)
前記挿入可能かつ除去可能な培地容器は、所望される量の前記回復培地を、前記培地容器から前記組織容器に誘導させるように手動で作動可能である、項目7に記載のデバイス。
(項目9)
前記廃棄物出口に流体的に結合される廃棄物チャンバであって、前記デバイス内に前記廃棄物を受容かつ保管するように構成される、廃棄物チャンバをさらに備える、項目1-8のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目10)
前記少なくとも1つの回復培地チャンバを前記組織容器受器に流体的に結合させる、少なくとも第1の導管をさらに備える、項目1-9のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目11)
前記デバイスは、第1の回復培地を前記組織の第1の側面に誘導し、第2の回復培地を前記組織の第2の側面に誘導する、項目1-10のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目12)
前記廃棄物出口は、廃棄物を前記デバイスの外に引き出すためのアクティブな減圧装置に結合可能である、項目1-11のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目13)
前記少なくとも1つの回復培地チャンバと前記組織容器受器との間に結合される流体導管に沿って位置付けられる、弁をさらに備える、項目1-12のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目14)
前記組織回復培地は、ROCK阻害剤Y-27632を含む、項目1-13のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目15)
調整装置であって、
項目1-14のいずれか1項に記載される前記組織回復デバイスを受容するように動作可能であるコンパートメントを有する、筐体と、
前記組織回復デバイス内の前記組織容器上の識別タグを読み取り、前記調整装置が、前記組織容器の内側の前記組織に関する識別情報を判定することを可能にする、識別タグリーダと、
前記組織回復デバイスの内側の前記組織容器を加温する、少なくとも第1の加熱器と、
を備える、調整装置。
(項目16)
前記組織回復デバイスの前記回復培地チャンバ内の前記組織回復培地を加温する、少なくとも第2の加熱器をさらに備える、項目15に記載の調整装置。
(項目17)
少なくとも部分的に前記組織に関する前記識別情報に基づいて、前記第1の加熱器によって前記組織容器の加熱を制御し、前記組織を生存可能な状態に回復させ、かつ前記組織を前記生存可能な状態に維持するようにプログラムされる、制御システムをさらに備える、項目15または項目16に記載の調整装置。
(項目18)
前記組織容器の中への組織回復培地の流動を調整するように、前記組織回復デバイス内の弁の作動を制御する、弁コントローラをさらに備える、項目15-17のいずれか1項に記載の調整装置。
(項目19)
項目1-14のいずれか1項に記載のデバイスと併用可能である組織容器であって、
容器槽と、
前記容器槽の内側に位置付けられる、組織ウェルと、
前記組織ウェルの内側に位置付けられる、組織と、
組織ウェルおよび容器槽の内側にある、凍結保存培地と、
前記凍結保存培地を前記容器槽内にシールする、前記容器槽にシールされる、蓋と、
前記組織を識別する、前記容器槽、前記蓋、または前記組織ウェル上の、識別タグと、
を備える、組織容器。
(項目20)
前記組織は、上皮組織のシートを含み、前記凍結保存培地は、アルギン酸ナトリウムを含む、項目19に記載の組織容器。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、凍結保存および回復の間、組織ならびに流体を保持する、例示的組織ウェルを示す。
【
図2】
図2は、凍結保存および回復の間、組織ならびに流体を伴う
図1の組織ウェルを封入する、例示的なシールされた容器を示す。
【
図3】
図3は、蓋が除去された、
図2の容器基部および組織ウェルの上面図である。
【
図4】
図4は、容器基部の内側に入る容器基部および組織ウェルの斜視図である。
【
図5】
図5は、容器基部にわたって蓋でシールされる、シールされた容器を示す。
【
図6】
図6は、シールされた凍結保存容器内に保管されている凍結組織を回復させるための例示的回復デバイスを図示する、垂直断面概略図である。
【
図7】
図7は、
図6の回復デバイスの種々の隔離された構成要素を図示する。
【
図8】
図8は、回復デバイスを加熱し、回復デバイスの内側の回復流体の流動を調整する、調整デバイスの中に挿入されている
図6の回復デバイスを示す。
【
図9】
図9は、NFCタグリーダを介して回復デバイスの性質を検出する調整デバイスを伴う、
図8の調整デバイスの中に設置される、
図6の回復デバイスを図示する、垂直断面概略図である。
【
図10】
図10は、組織の凍結保存、保管、輸送、および回復のための例示的方法を図示する、フローチャートである。
【
図11】
図11は、別の例示的調整デバイスの内側にある、別の例示的回復デバイスを図示する、垂直断面概略図である。
【
図12】
図12は、
図11の回復デバイスの内側に搭載され、かつ回復流体が容器を通して流動することを可能にするための、回復デバイスの針によって貫通されている、組織含有容器の拡大図である。
【
図13】
図13は、回復デバイスの上部内の回復流体を加温する、
図12の調整デバイスの加熱器を示す。
【
図14】
図14は、回復デバイスの上部内の回復流体を加温し、かつ組織容器の凍結内容物を加温する、
図12の調整デバイスの加熱器を示す。
【
図15】
図15は、回復デバイスの内側の弁に、回復流体が組織容器の中に流動し、かつ廃棄流体を回復デバイスの下側廃棄容器の中に押動することを可能にするように作動させる、
図12の調整デバイスを示す。
【
図16】
図16は、回復流体が、組織容器を通過し、かつ一部の回復流体を組織容器の中に残した状態で、組織容器の流体内容物を下側廃棄容器の中に洗浄した後の、
図12の回復デバイスの状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な説明
図1-5は、凍結保存培地に加えて、組織ウェル12内に組織または他の生体物質を含有する、例示的組織容器22を図示する。組織は、図内に示されていない。シールされた組織容器22は、凍結され、長い時間周期にわたって保管されることができる。後に、組織容器22は、
図6に示される回復デバイス30または
図11に示される回復デバイス230等の回復デバイスの中に設置されることができ、凍結組織は、患者の中への移植ならびに/もしくは組織の他の使用に好適である、生存可能な状態に解凍、培養、かつ回復されることができる。いくつかの実施形態では、組織は、凍結環境内に保たれている回復デバイス全体の中等、回復デバイスの中に長い時間周期にわたって凍結保存された状態で保管されることができる。
図9に示される実施形態80または
図11に示される実施形態200等の調整装置は、回復デバイスと併用され、解凍、培養、および回復プロセスを慎重に監視かつ制御することができる。
【0017】
図1は、組織が位置付けられる(組織自体は図示されていないが、ウェル12の底部に静置する)例示的組織ウェル12を示す。
図2は、槽14と、槽の上部にわたってシールされる蓋20とを含む、組織容器22の内側にある組織ウェル12を示す。槽14は、凍結保存培地に加えて、組織ウェル12(
図4)を受容する陥凹部16と、蓋20がシールされる上側平面18とを含むことができる。
図5に示されるように、蓋20は、組織が除去される準備ができると、蓋20からの容易な除去を促進するための剥離可能なタブ24または他の特徴を含むことができる。蓋20、槽14、もしくはウェル12は、回復デバイス、調整装置、および/または別のデバイスによって読み取られ、組織容器22の中に含有される組織ならびに/もしくは培地の詳細を判定し得る、
図5に示されるタグ26等の識別タグを備えることができる。タグ26は、NFCタグ、RFIDタグ、バーコード、手書きラベル、または他の好適な識別手段を含むことができる。蓋20は、ヒートシール等の任意の好適な手段を使用して、槽14にシールされることができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、組織ウェル12は、例えば、0.5~1.0mmの厚さを有する、Keystone IndustriesからのSplint Material等の熱可塑性材料を含むことができる。そのような材料のシートが、金型にわたって熱成形され、組織ウェルを形成することができる。本タイプの材料は、組織との生体適合性を提供することができ、凍結~解凍周期の間、良好に生き延びることができる。酸化エチレンでの消毒もまた、本タイプの材料に良好に作用する。
【0019】
いくつかの実施形態では、組織をウェル内の定位置に保持するために、保定リングが、ウェルの内側に、組織サンプルにわたって含まれることができる。保定リングは、例えば、PTFE/Teflonまたは類似する材料を含むことができる。保定リングは、ウェルが傾斜され、横向きにされ、上下逆さまにされる等のとき、組織を定位置に保持することができる。リングは、流体がウェルの中かつそれから外に流動し、組織サンプルと相互作用することを可能にするための開口部を有することができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、蓋20は、接着剤層を伴うフィルムを含み、蓋を槽14に固着させることができる。例えば、蓋20は、BRADYからのM-129-461フィルムまたはM-114-490フィルム等のポリエステルラベルフィルムを含むことができる。本タイプの材料は、接着剤性質を喪失することなく液体窒素の凍結下で生き延びるように設計されている。
【0021】
いくつかの実施形態では、組織容器22は、
図1のウェル12のような別個の組織ウェルを含まず、代わりに、組織が、槽14の中に直接設置される。他の実施形態では、他の形態の組織容器または組織保持器が、組織容器22の内側に含まれ、組織が所望される配向もしくは位置にあるように維持することができる。例えば、シートの片側が容器の中実表面上に静置した状態にあるのではなく、シートの両側が培地に暴露されるように、組織の層を培地の中に懸濁された状態で保持することが、望ましくあり得る。
【0022】
凍結保存された組織は、単細胞懸濁液、単分子層組織シート、3次元の組織構造物、血管組織構造物、および/または他の生体物質を含む、任意のタイプの生体物質を含むことができる。開示される技術は、特に、より複雑な組織に好適であり得る。1つの例示的な好適材料は、足場上の網膜色素上皮の単分子層を含む。本例示的組織材料および他のものに関するさらなる情報ならびにそれらの培養および移植のための方法ならびに他の関連情報は、2016年11月9日に出願された米国仮出願特許出願第62/419,835号および2016年11月9日に出願された米国仮出願特許出願第62/419,804号(両方とも参照することによって全体として本明細書に組み込まれる)に見出されることができる。
【0023】
組織に加えて、組織容器の内側に設置される凍結保存培地は、特定の組織および凍結保存ならびに回復プロセスに好適である任意の材料を含むことができる。足場上の網膜色素上皮の単分子層を凍結保存するステップとの併用のための例示的凍結保存培地は、アルギン酸ナトリウム(例えば、0.24%アルギン酸ナトリウム)と混合された(例えば、BioLifeSolutions, Inc.から商業的に入手可能である)CryoStor(R) CS2を含むことができる。例示的凍結保存プロセスでは、組織容器の内側にシールされるそのような組織および培地は、1分あたり1℃の速度で冷却されることができる。
【0024】
図6および7は、例示的組織回復デバイス30を図示する。デバイス30は、2つの主要筐体構成要素、すなわち、ともに取り付けられかつ取り外され得る、上側構成要素32と、下側構成要素34とを備えることができる。他の実施形態では、回復デバイスは、図示されるような2つの取り外し可能な構成要素を含まない。デバイス30は、図示される容器22等のシールされた組織容器を受容するように構成される、組織容器受器40を含む。図示される実施形態では、上側および下側構成要素が取り外され、次いで、2つの構成要素がともに取り付けられ、組織容器を封入ならびに/もしくはシールするとき、組織容器が挿入されるように、受器40が、上側構成要素32と下側構成要素34との間に画定される。組織容器22の含有を促進するために、係合および/またはシール特徴36が、上側構成要素と下側構成要素との間に含まれることができる。例えば、2つの構成要素は、2つの構成要素をともに取り付けかつ取り外すための、噛合するねじ山付き特徴、スナップ係止特徴、ツイストロック特徴、磁気係合特徴、および/または他の手段を含むことができる。いくつかの実施形態では、本デバイスは、受容された組織容器をシールするために役立つように、界面にOリングもしくはガスケットを含むことができる。
【0025】
代替実施形態では、デバイス30は、閉鎖可能なドアまたは蓋を伴う筐体の側面上のスロット等の、他の組織容器受器構成を含むことができる。そのような実施形態では、デバイス30は、2つの取り外し可能かつ再取り付け可能な筐体構成要素を含む必要はない。
【0026】
組織回復デバイスはさらに、組織回復培地のリザーバを含有するように構成される、デバイス30のチャンバ40等の、少なくとも1つの回復培地チャンバであって、組織容器受器に流体的に結合される、少なくとも1つの回復培地チャンバを備えることができる。図示される実施形態では、デバイス30は、それぞれがシリンジ42または類似する挿入可能、除去可能、ならびに/もしくは交換可能な回復培地容器を受容する、2つのチャンバ40を含む。シリンジ42または類似するデバイスは、組織容器22の内側にある特定の組織ならびに/もしくは凍結保存培地に関して選択される回復培地44を事前装填されることができる。シリンジ42はさらに、インチワーム機構48に、プランジャ46を下方に押動させ、培地44をシリンジの下側出口52(例えば、針)から外に押進するように回転される、ノブ50等の手動の分注特徴を備えることができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、1つのそのようなシリンジまたは他の回復培地容器のみが、使用される一方、他の実施形態では、2つ、3つ、またはそれを上回る異なる回復培地容器が、デバイス30の中に同時に受容されることができる。複数の異なる回復培地が、所与の組織を回復かつ培養することに役立つように分注されることができる。例えば、1つのタイプの培地が、組織のシートの頂端面に指向されることができ、別のタイプの培地が、組織のシートの基底面に指向されることができる。2つのものは、同時に、連続的に、または任意の所望される時間的順序もしくはパターンで分注される培地であることができる。
【0028】
例示的回復培地は、ROCK阻害剤Y-27632、すなわち、約10μMの濃縮度で培地中に存在する、Rho関連コイルドコイル含有タンパク質キナーゼ(STEMCELL Technologies, Inc.から商業的に入手可能である)の細胞浸透性であって、非常に強力であって、かつ選択的な阻害剤を含む。そのような回復培地は、例えば、約0.24%のアルギン酸ナトリウムと混合されたCryoStor CS2を含む凍結保存培地で凍結された、足場上の網膜色素上皮の単分子層を回復させるために使用されることができる。
【0029】
デバイス30を用いて、シリンジ42は、ノブ50を回転することによって手動で作動され、培地を分注することができる。いくつかの実施形態では、ノブ50の各回転は、所定のまたは計算された量の培地を分注するように較正される。他の実施形態では、シリンジまたは他の培地容器を作動させ、選択された量の培地を自動的に分注するための、自動化された機構が、含まれることができる。
【0030】
シリンジ42は、必要に応じて、除去され(例えば、それらが空になったとき、または異なる培地が所望されるとき)、同一の培地もしくは異なる培地のさらなるものを伴う新しいシリンジと交換されることができる。除去されたシリンジは、使い捨て可能であり、使用後、破棄されることができる、または滅菌可能であり、再利用のために補充されることができる。これは、迅速かつ安全な回復培地シリンジの装填および再装填を可能にしながら、デバイス30の残部を使用されている状態に維持する。
【0031】
シリンジ42が挿入されると、針52が、デバイス30のチャンバ40の底部において孔または材料70のシートを通過し、次いで、組織容器22の蓋20を貫通するこことができる。分注された回復培地は、次いで、滅菌された様式でデバイス30の内側の組織容器の中に分注されることができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、出口針52は、針の周囲に搭載される、滅菌シースを備えることができる。シースは、ゴムまたは同等物等の可撓性ポリマー材料を含むことができる。シースは、最初に、針を完全に囲繞する、シールかつ滅菌された遮蔽体を形成することができる。針が組織容器の蓋20に対して圧接されると、シースが、針の先端と蓋との間に固定される。針は、次いで、針および蓋の下方の内容物が、滅菌された環境の中に維持されるように、同時にシースを通してかつ蓋を通して貫通する。蓋に対してシールするシースはまた、蓋の中に作製された貫通部から外への液体の漏出を回避するためにも役立つことができる。後に、次いで、針は、蓋から後退し、針は、シースの中に引き戻され、シースは、針の周囲を、針によって作製された貫通部を必然的に閉鎖するシースのゴム材料で弾性的に再度シールし、針の周囲の滅菌された環境を維持し続け、針およびシリンジ全体の再利用を促進することができる。針およびシースはまた、随意に、無菌状態を確実にするために交換可能であることができる。シースは、解凍デバイス80、200が複数のカプセル30、230とともに再利用されることを可能にすることができる。本用途に好適である例示的シースは、VENOJECTマルチサンプルルアーアダプタ(例えば、Terumo XX*MN2000T)等のTerumoルアーアダプタを含む。
【0033】
デバイス30はまた、組織容器受器に流体的に結合され、組織容器から退出する廃棄物を受容するように構成される、廃棄物チャンバ60を備えることができる。廃棄物は、解凍された凍結保存培地、回復培地、および/または組織容器からの他の物質を含み得る。廃棄物チャンバ60はまた、除去可能、使い捨て可能、および/または交換可能であることができる。廃棄物チャンバ60は、空気が逃散することを可能にするが、チャンバの内側を無菌状態に維持するための圧力逃し導管66および/またはフィルタ64を含むことができる。
【0034】
デバイス30の下側構成要素34はさらに、組織容器の槽14を穿刺し、廃棄物の組織容器から廃棄物チャンバ60に向かった退出を可能にする、中空針62等の貫通要素を含むことができる。針62は、2つの構成要素32、34がともに固着されるにつれて、または2つの構成要素がともに取り付けられることに先立って、もしくは2つの構成要素がともに取り付けられた後、組織容器が受器40の中に設置されると、槽14を穿刺することができる。針62の高さは、容器22内に留まる培地のレベルに応じて判定されることができる。針62の端部における開口部のレベルより上方の培地は、重力を介して針を通して廃棄物チャンバ60の中に排出する。針62の高さは、組織を常時培地の中に浸漬された状態に保つように十分な培地等、十分な量の培地を随時槽14の中に残すように選択されることができる。
【0035】
図8に示されるように、凍結組織容器が回復デバイス30の中に装填された後、デバイス30は、調整装置80の中に装填されることができる。調整器80は、組織容器および/または回復培地の内容物を検出することができ、加熱器を使用して、デバイス30の内側の物質を解凍かつ加温するために熱を提供することができ、かつセンサ、ソフトウェア、ならびにコンピューティング構成要素を使用して、組織回復プロセスを監視、管理、かつ維持することができる。
【0036】
図9は、回復デバイス30が装置の陥凹部82の中に挿入されている、例示的調整装置80の横断面図である。デバイス30は、凍結組織容器22を含有し、回復培地シリンジ42が装填される。装置80内のセンサ86(例えば、NFC、RFID、またはバーコードリーダ)は、組織容器22上の対応するIDタグ(例えば、
図5のタグ26)を読み取り、組織容器22中の組織ならびに/もしくは凍結保存培地に関する情報を判定することができる。装置80は、壁コンセントの中に差し込まれている電気コードによって、または任意の他の給電手段を介して給電されることができる。装置80はさらに、オン/オフスイッチ84(
図8)、感知されたデバイス30の挿入によって誘起される自動電力オン機構、および/または種々の他の制御特徴を含むことができる。装置80は、プロセッサ、メモリ、センサ、ユーザ入力デバイス、ディスプレイおよび状態インジケータ等の出力デバイス、ファームウェア、ソフトウェア等の種々のコンピューティングならびに制御構成要素を含むことができる。例えば、装置80は、それと併用される場合がある異なるタイプの組織毎に、具体的なアルゴリズムを用いて事前にプログラムされることができる。アルゴリズムはさらに、凍結保存培地のタイプ、回復培地のタイプ、組織容器のタイプ、回復デバイスのタイプ、および/または他の可変パラメータに特有であることができる。
【0037】
代替実施形態では、回復デバイスおよび調整装置は、電気を用いることなく手動で動作されることができる。加熱および/または冷却は、例えば、化学的手段を使用して実施されることができる。回復培地は、例えば、ノブを回転させるまたはシリンジ上のプランジャを押動することによって、所望される様式で手動で分注されることができる。例えば、ノブ50は、回転可能であり、かつ分注される培地の量に関して使用されるようにフィードバックを提供するために、回転増分毎にクリックするように構成されることができる。デバイス30は、例えば、所望される量の回復培地が、ノブ50のクリック毎に分注されるように構成されることができる。
【0038】
いったんデバイス30および/または組織容器22の内容物が、識別されると、装置80は、加熱器90を使用してシリンジ42内の回復培地に熱を印加することができ、かつ加熱器92を使用して組織容器22にも熱を印加することができる。シリンジ42中の回復培地44は、デバイス30の中に挿入されると、最初に凍結され得、したがって、組織容器の中への導入の前に、解凍かつ機能温度に加温される必要があり得る。装置は、センサ86によって検出される具体的な凍結組織に関してプロセスを最適化するために加熱レベルおよび加熱シーケンスを調節するように事前にプログラムされることができる。装置80および/またはデバイス30は、回復培地ならびに/もしくは組織容器の温度を監視するための温度センサを含むことができる。回復培地は、組織容器が解凍される前に、所望される温度に加温され、かつ組織容器22の中に導入され得る状態に維持され、患者の中への移植または他の使用に先立って組織が解凍される持続時間を最小限にさせ、組織が完全に回復され、使用できる状態に維持される時間周期を延長することができる。装置80は、ユーザに、組織の現状、その残りの生存可能寿命、および/または他の有用である情報を把握させる、視覚ならびに/もしくはオーディオインジケータを含むことができる。
【0039】
いったん組織容器22中の凍結保存培地が十分に解凍かつ加温されると、回復培地44は、シリンジ42または他の回復培地容器から組織容器の中に誘導され始めることができる。回復培地が組織容器に進入するにつれて、解凍された凍結保存培地は、組織容器から廃棄物チャンバ60の中に排出または流し出される。回復培地は、所望される率および所望されるシーケンスで組織容器の中に導入され、組織を凍結保存から回復させ、望ましくない凍結保存培地を流し出し、デバイス30の内側の組織を培養し続け、組織を容器22ならびにデバイス30の滅菌された限局部の内側で生存可能な状態に回復させ、組織が、組織が利用され得る場所(例えば、手術室)において即時使用できる状態に保たれ得るように、数日または数週間等の長時間の時間周期にわたって生存可能な状態に維持することを可能にすることができる。いくつかの実施形態では、ユーザは、1日毎に1回または2日毎に1回、シリンジ42のノブ50を回転し(また、類似する作用を実施し)、新鮮な回復培地を分注し、組織を生存可能な状態に維持することができる。
【0040】
回復された組織が使用できる状態であるとき、デバイス30は、装置80から除去されることができ、上部および底部構成要素32ならびに34は、取り外されることができ、組織容器22は、デバイス30から除去されることができる。蓋20は、次いで、剥離して除去され、組織が、槽14内のウェル12から除去されることができる。蓋20の開放は、組織容器22中の生体物質の無菌状態を損なうことなく遂行されることができる。さらなるステップが、患者の中への移植等のその特定の意図された使用のために、組織を調製するために講じられてもよい。空の組織容器が、次いで、廃棄されることができる。組織容器が除去された後、デバイス30は、シリンジ42および廃棄物チャンバ60を除去することによって、その次回の使用のために調製されることができる。新鮮回復培地が充填された新しいシリンジが、デバイス30の中に挿入されることができ、新しい空の廃棄物チャンバ60が、本デバイスの中に挿入されることができる。デバイス30は、次いで、新しい凍結組織容器を受容できる状態になり、再度、回復および培養プロセスを開始する。いくつかの実施形態では、デバイス30の筐体は、使用の度に消毒される必要はなく、準備時間を最小限にさせる。
【0041】
図10は、開示される技術を使用した組織の凍結保存および回復のための例示的方法100を図示する、フローチャートである。102において、完全に成長した生存可能な組織が、凍結保存培地を使用する凍結プロセスのために調製される。104において、組織を保持するウェルが、組織容器の中に設置され、凍結保存培地が、追加され、組織容器が、シールされる。106において、シールされた組織容器が、凍結保存のために制御された凍結デバイスの中に設置される。108において、組織が、必要とされるまで、数年等の長時間の時間周期にわたって、組織容器の内側で凍結状態に保たれることができる。110において、凍結組織容器が、必要に応じて発送または輸送される一方、依然として、組織の生存率を損なうことなく凍結された状態であることができる。112において、凍結組織容器は、組織を生存可能な状態に回復させることが所望されるとき、回復デバイスの中に設置され、回復デバイスは、次いで、調整装置の中に挿入され、回復および培養プロセスを制御し、組織を生存可能な状態に維持する。114において、生存可能な回復された組織が、組織容器から除去され、患者の中に移植されることができる。
【0042】
図11は、別の例示的調整装置200および対応する回復デバイス230を図示する。装置200およびデバイス230は、装置80ならびにデバイス30と同一の一般的機能を有するが、いくつかの差異を伴う。デバイス230は、2つの構成要素の間の受器240の中への組織容器222の挿入を可能にするように取り外される、上側筐体構成要素232と、下側筐体構成要素234とを含む。上部構成要素232は、回復培地244を含有する回復培地チャンバ240を含み、下側構成要素234は、廃棄物チャンバ260を含む。
【0043】
本実施形態では、回復培地を含有する除去可能かつ交換可能なシリンジは、存在しないが、代わりに、上部構成要素232内のチャンバ240が、上部構成要素内のシール可能ポート等を介して、必要に応じて回復培地を補充されることができる。同様に、廃棄物もまた、下側構成要素内のポートを介してチャンバ260から空にされることができる。代替として、チャンバ240および260は、使い捨て可能ならびに/もしくは滅菌可能であるように、デバイス230に挿入可能かつそれから除去可能である、除去可能な封入物を備えることができる。
【0044】
デバイス230はさらに、回復培地がチャンバ240から組織容器222に流動することを可能にされるときを判定する、弁202を備える。弁202は、装置200(
図11に図示される)内の弁コントローラ294によって制御されることができる。一実施例では、弁コントローラ294は、磁場を使用して弁を作動させる、磁気デバイスを備えることができる。弁コントローラ294を使用して、装置200の主要制御システムは、回復培地を放出するとき、および放出する量、ならびにシーケンスの種類を判定することができる。
【0045】
デバイス230は、随意に、異なるタイプの回復培地を保持する、1つを上回る回復培地チャンバ240を含むことができる。
【0046】
デバイス230はまた、随意に、回復培地を組織容器の異なる部分に指向するための、1つを上回る導管を含むことができる。例えば、
図11および
図12に示されるように、第1の導管204は、培地が組織保持器212の下方の槽214を充填するように、第1の針205を介して、組織容器222の蓋220を通して培地を指向することができる。第2の導管202は、培地を、第2の針203を介して、蓋220を通して組織保持器212の中に指向することができる。他の実施形態では、1つの導管は、第1の培地を組織の頂端側に誘導することができ、第2の導管は、第2の異なる培地を組織の底側に誘導することができる。
【0047】
出口導管262は、廃棄培地を組織容器222から廃棄物チャンバ260に至るまで誘導する。
図12は、所望されるレベルで組織容器の側面を貫通する単一の針263を有する単一の出口導管260を伴うある実施形態を示す。いくつかの実施形態では、
図11に示されるように、出口導管262は、2つの出口導管208および209を備える。上側出口導管208は、組織保持器212からまたは組織の頂端面から越流する廃棄物を排水することができる一方、下側出口導管209は、槽214もしくは組織の底側から廃棄物を排水することができる。各出口導管は、それ自体の針を有し、組織容器内の別個の孔を貫通することができる。
【0048】
図13は、例えば、凍結状態から回復培地244を最初に加熱しながら、弁202が、閉鎖された状態であり、内側の組織容器222および凍結保存培地223が、依然として凍結している、装置200の加熱器290を図示する。
図14は、回復培地244に熱を提供し続け、例えば、それを所望される温度に維持する一方、弁202は、閉鎖された状態であり、内側の組織容器222および凍結保存培地223が、装置内の加熱器292によって解凍かつ加温されている、装置200の加熱器290を図示する。組織容器222およびその内容物が、十分に加温されると、
図15は、弁コントローラ294によって開放され、回復培地244が組織容器222の中に流動し、かつ凍結保存培地223を洗浄し、廃棄物チャンバ260の中に流し出すこと可能にする弁202を図示する。本流動プロセスは、必要に応じて段階的または順に継続し、有毒な凍結保存培地223を流し出し、それを回復培地244と交換し、組織を生存可能な状態に培養することができる一方、加熱器292は、組織容器を所望される温度に維持する。圧力逃し導管266が、チャンバ240および260を結合し、2つのものの間の圧力平衡を維持することができる。
図16は、組織容器を通過した回復培地の大部分に加えて、回復培地244が全てチャンバ240から外に流動し、凍結保存培地を廃棄物チャンバ260の中に洗浄した後のデバイス230を示す。回復培地244の一部は、組織容器の内側に留まる。この時点において、回復培地チャンバは、さらなる回復培地を補充される、または回復培地で満たされたチャンバと交換されることができる、もしくはそれは、
図16に示されるような定常状態に留まり、組織を、使用されるまで、ある時間周期にわたって生存可能な状態に維持することができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、組織容器222は、
図15および16に図示される洗浄ならびに回復プロセスの間、約90度~垂直の配向に回転されることができる。組織容器222を垂直に回転させることによって、重力が、容器内の新鮮培地および古い培地の混合を低減させることによって、洗浄プロセスを補助し、培地交換のプロセスを加速させ、かつより少ない回復培地を要求することができる。図示される水平位置において、回復培地は、注入点203、205から出口点263に、容器222を横断してほぼ水平に流動する。本水平流動は、重力が一次流動方向に対して垂直に作用するにつれて、2つの培地のより緩やかな、激しい混合による凍結保存培地の交換をもたらす。したがって、凍結保存培地(例えば、一実施例では、40~50mlの回復培地)を完全に流し出すために、さらなる回復培地が、必要とされる。対照的に、組織容器が垂直に配向されると、回復培地が上部に進入し、下側出口に向かった重力と併せて凍結保存培地を下向きに押動するにつれて、より線形の流動が、容器の中に生じる。これは、実質的により少ない回復培地(例えば、一実施例では、5~10mlの回復培地)を要求する、あまり激しくない、より効率的な洗浄プロセスをもたらす。組織容器を垂直配向に設置するために、種々の異なる随意の実施形態が、存在する。いくつかの実施形態では、調整装置200全体が、単に、洗浄プロセスの間、90度回転されることができる(例えば、自動化システムを介して手動で)。いくつかの実施形態では、調整装置200は、回復デバイス230が上部の代わりに側面において開口部の中に水平に挿入されるように、水平に構成されることができる。いくつかの実施形態では、回復デバイス230は、側面等から蓋を貫通する針を伴って、示されるように、組織容器222を、水平配向の代わりに垂直配向に保持するように構成されることができる。いくつかの実施形態では、組織容器222自体が、本明細書に図示される短く幅広い形状ではなく、より垂直形状に構成されることができる。垂直に配向された組織容器222は、ウェルおよび組織サンプルを横向きに保持し、例えば、組織をウェル内の定位置に保持するようにウェル内の保定リングに依拠することができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、廃棄流体の収集および/または除去が、他の様式で実装されることができる。回復デバイス30では、組織チャンバ22から廃棄物を回収するための受動的廃棄物収集チャンバ60が、含まれ、チャンバ60は、チャンバ60内の圧力蓄積を回避するための圧力逃し導管66を含む。回復デバイス230では、廃棄物収集チャンバ260内の圧力蓄積を逃がすための、圧力逃し導管266が、含まれる。他の実施形態では、能動的な吸引力が、廃棄チャンバに印加され、廃棄チャンバ内の圧力を低減させるおよび/または廃棄物を廃棄チャンバから外に引き出すことができる。そのような実施形態では、減圧ポンプが、廃棄チャンバの出口に結合されることができる。減圧ポンプは、別個の外部デバイスであることができる、または解凍/回復の間に回復デバイスが設置される回復デバイスもしくは調整装置の一体型の構成要素であることができる。いくつかの実施形態では、調整器デバイスは、減圧ポンプと、針が回復デバイス内の廃棄チャンバの開口部を貫通またはそれに進入するように、回復デバイスを受容する受器の底部もしくは側面に位置付けられる、針とを含むことができる。針は、次いで、減圧ポンプを介して廃棄物および/空気を廃棄チャンバから外に引き出すための導管としての役割を果たすことができる。針は、随意に、針52を参照して上記に説明されるもののような針の周囲の保護/滅菌シースを含み、漏出を低減しおよび/または無菌状態を維持することができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、回復デバイス内には廃棄物収集チャンバは、含まれておらず、廃棄物は、組織チャンバの出口から、調整装置または別様のものの中等、外部の場所に直接引き出される。
【0052】
いくつかの実施形態では、回復培地の大型の供給部が、同時または連続的に、1つもしくは2つまたはそれを上回る回復デバイスに結合され、多忙な病院または診療所の中等で、比較的短時間周期にわたって生じる複数の組織回復事象を促進することができる。いくつかの実施形態では、大型の廃棄物収集チャンバもまた、同時または連続的に、1つもしくは2つまたはそれを上回る回復デバイスの廃棄チャンバに結合され、比較的に短時間周期にわたって生じる複数の組織回復事象をさらに促進することができる。廃棄物は、能動的なポンプまたは他の好適な手段を使用して、回復デバイスから大型の廃棄物収集チャンバの中に能動的に引き出されることができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、回復デバイスおよび/または調整器は、回復されている組織に関する、温度、二酸化炭素レベル、他のガスレベル、ならびに/もしくは他の因子等の、任意の1つまたはそれを上回る付加的な環境パラメータを制御することができる。従来の細胞培養装置における二酸化炭素レベルの制御に関して、培養器中の二酸化炭素レベルは、培地中の炭酸緩衝液と組み合わせて、一定の培地pHを維持するように作用する。安定したpHのための要件は、凍結保存された組織が開示される技術を使用するとき等の回復位相にあるとき、維持されることができる。開示される技術を用いてpHを維持するために、二酸化炭素非依存性回復培地が、使用されることができる、または回復チャンバ内の二酸化炭素レベルを制御するためのある手段が、実装されることができる。例えば、これは、化学的手段によって、または組織回復チャンバの中への二酸化炭素ガスの制御される注入によって遂行されることができる。
【0054】
いくつかの状況では、開示される技術は、具体的な使用のために凍結保存された組織を回復かつ調製するために使用されることができ、組織は、回復かつ培養され、次いで、準備ができるとすぐに移植される。そのような状況、例えば、熱傷患者のための組織移植は、非常に時間的制約があるものであり得、開示される技術は、そのような場合における組織調製の速度、安全性、および正確度を増加させるために役立つことができる。
【0055】
いくつかの状況では、開示される技術は、組織が必要とされ得るとき、延長された時間窓にわたって、凍結保存された組織を回復させ、組織を生存可能な状態または近生存可能な状態に維持するために使用されることができる。これは、開示される技術の「要望に応じた」用途と見なされることができる。例えば、ある組織が定期的に必要とされる設定では、その組織の少なくとも1つのサンプルが、要求に応じた使用のために、常時利用可能な状態に保たれることができる。1つの組織サンプルが、使用される必要なくその要求に応じた「貯蔵寿命」の終末に到達すると、それは、破棄される、または可能性として再凍結され、別のサンプルが、使用できる状態になるように調製されることができる。このように、新鮮かつ生存可能な組織が、要求に応じた使用のために、常時利用可能な状態に保たれることができる。
【0056】
開示される技術はまた、組織回復および移植プロセスを、より少人数によって、より少ない資源ならびに少ないインフラストラクチャを用いて、かつあまり慎重に制御されていない環境において実施されるように利用可能にすることができる。従来のプロセスと比較してより少ない人の入力が、必要とされ、合併症のより少ないリスクが、もたらされる。本技術は、電源コンセントが存在する、または電気がなくても、本技術の手動バージョンが使用される場合等であれば、開示されるデバイスおよび装置が使用され得る任意の場所で、低リスクを伴って使用されることができる。開示される技術は、人が、組織の解凍、培養、培養のいくつかのステップ(典型的には、これらのステップは、特別な細胞培養室内の特殊細胞培養フードを使用して行われることを要求する)を実施し、次いで、回復された組織を外科手術室に搬送することを不要にすることができる。開示される技術を用いることで、生存可能な組織の解凍、培養、および維持は、小型の内蔵デバイスの内側で、制御するために自動化または少なくとも単純な様式で、全て実施されることができる。
【0057】
本説明の目的のために、本開示の実施形態のある側面、利点、および新規の特徴が、本明細書において説明されている。開示される方法、装置、およびシステムは、いかようにも限定するように解釈されるべきではない。代わりに、本開示は、種々の開示される実施形態の、単独および相互の種々の組み合わせならびに部分的組み合わせにおける、新規および非自明な特徴ならびに側面の全てを対象とする。本方法、装置、およびシステムは、任意の具体的な側面または特徴もしくはその組み合わせに限定されず、開示される実施形態もまた、任意の1つまたはそれを上回る具体的な利点が存在するもしくは問題が解決されることを要求しない。
【0058】
開示される技術の特定の側面、実施形態、または実施例と併せて説明される特徴、要素、および特性は、それと両立しない状態ではない限り、本明細書に説明される任意の他の側面、実施形態、もしくは実施例に適用可能であると理解されたい。本明細書(任意の添付の請求項、要約、および図面を含む)に開示される特徴の全てならびに/もしくはそのように開示される任意の方法またはプロセスのステップの全ては、そのような特徴ならびに/もしくはステップの少なくともいくつかのものが相互に排他的である組み合わせを除いては、任意の組み合わせに組み合わされてもよい。本発明は、任意の前述の実施形態の詳細に制限されない。本発明は、本明細書(任意の添付の請求項、要約、および図面を含む)に開示される特徴のうちの任意の新規の1つのもの、または任意の新規の組み合わせ、もしくはそのように開示される任意の方法またはプロセスのステップのうちの任意の新規の1つのもの、もしくは任意の新規の組み合わせに拡張する。
【0059】
開示される方法のうちのいくつかのものの動作が、便宜的提示のために特定の順次順序で説明されているが、本説明様式は、特定の順序付けが具体的な言い回しによって要求されていない限り、再配列を包含することを理解されたい。例えば、連続的に説明される動作は、ある場合には、再配列される、または同時に実施されてもよい。そのうえ、単純にするために、添付される図は、開示される方法が他の方法と併用され得る種々の方法を示していない場合がある。
【0060】
本明細書で使用されるように、用語「a」、「an」、および「少なくとも1つの」は、規定される要素の1つまたはそれを上回るものを包含する。すなわち、特定の要素の2つのものが存在する場合、これらの要素のうちの1つのものもまた、存在し、したがって、「an」要素が、存在することになる。用語「複数のもの」および「複数」は、規定される要素の2つまたはそれを上回るものを意味する。本明細書で使用されるように、要素の列挙の最後の2つのものの間で使用される用語「および/または」は、列挙される要素のうちの任意の1つまたはそれを上回るものを意味する。例えば、語句「A、B、および/またはC」は、「A」、「B」、「C」、「AおよびB」、「AおよびC」、「BおよびC」、もしくは「A、B、およびC」を意味する。本明細書で使用されるように、用語「結合される」は、概して、物理的、化学的、電気的、磁気的、または別様に結合されるもしくは連結されることを意味し、具体的な逆の言い回しのない状態では、結合される物品の間の中間要素の存在を除外するものではない。
【0061】
開示される技術の原理が適用され得る多くの可能性として考えられる実施形態に照らして、図示された実施形態は、実施例にすぎず、本開示の範囲を限定するものとして捉えられるべきではないことを認識されたい。むしろ、本開示の範囲は、少なくとも以下の請求項と同程度に広義である。したがって、これらの請求項の範囲に具備されるもの全てを請求する。
【外国語明細書】