(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139346
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】足場材
(51)【国際特許分類】
G06K 19/077 20060101AFI20230927BHJP
E04G 1/00 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
G06K19/077 156
E04G1/00 ESW
G06K19/077 220
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044826
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】391054545
【氏名又は名称】アサヒ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095647
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】松浦 正治郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 尚隆
(72)【発明者】
【氏名】浅井 洋文
(72)【発明者】
【氏名】大井 高三
(57)【要約】
【課題】ICタグを材表面に付与するにあたり、仮設足場の構築や解体時の衝撃からRFICを保護し、より確実に個別情報を管理することができる足場材を提供する。
【解決手段】ICタグを材表面に固定した仮設足場用の足場材であって、ICタグは、足場材の識別情報を記録したシート状のRFICと、このRFICの少なくとも材表面側のシート片面を被覆する樹脂製の保護層とを備え、保護層は、仮設足場の構築・解体に際する耐衝撃性を有するものとした。また保護層は太陽光に対する遮熱性をも有することが好ましい。さらにICタグは、RFICの全体が保護層で被覆され、RFICは材表面から浮き上がって位置させる。なお、保護層を形成する樹脂はポリウレアとする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICタグを材表面に固定した仮設足場用の足場材であって、前記ICタグは、前記足場材の識別情報を記録したシート状のRFICと、該RFICの少なくとも前記材表面側のシート片面を被覆する樹脂製の保護層とを備え、当該保護層は、前記仮設足場の構築・解体に際する耐衝撃性を有することを特徴とした足場材。
【請求項2】
保護層は、遮熱性をさらに有する請求項1記載の足場材。
【請求項3】
ICタグは、RFICの全体を保護層で被覆してなる請求項1または2記載の足場材。
【請求項4】
ICタグは、RFICが材表面から離間して位置する請求項1、2または3記載の足場材。
【請求項5】
スペーサーを介してRFICを材表面から離間させた請求項4記載の足場材。
【請求項6】
保護層を形成する樹脂はポリウレアである請求項1から5のうち何れか一項記載の足場材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建築のための仮設足場に係り、管理が容易な足場材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築に際しては躯体などを構築するための仮設足場が必要であり、近年、安全基準が厳格化されていることも一因として、仮設足場の足場材は年々その構成が複雑化している。また、足場材の種類も多岐に亘っている。
【0003】
ところで、足場材は一般的に繰り返し利用を前提とするもので、複数回の転用が行われる。その場合の管理として個々の足場材には型番、製造年月、製造工場などの識別標識が付与されている。従来、識別標識には金属製のシールが用いられることが多く、シール表面に各種の情報が表示されていた。しかしながら、このような構成であると、情報は目視によって確認しなければならないので、時間を要すると共に誤判定が生じることがあり、正確な材料管理をすることは困難であった。
【0004】
そこで、識別標識としてICタグを採用し、ICに各種の情報を書き込んで、これをICリーダーによって瞬時に読み取るという方法が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ICタグを利用するにあたって注意しなければならないRFICへの衝撃や熱について、ICタグは、例えば特許文献1に開示されているように、シート状のRFICを薄い樹脂に浸漬したものであるから、仮設足場を組んだり解体したりする際の衝撃によってRFICが容易に破壊されてしまうという問題がある。また、RFICに異常があっても、外部からの目視ではこれを判別することができず、誤作動が生じるという問題につながる。
【0007】
本発明は上述した課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、ICタグを材表面に付与するにあたり、仮設足場の構築や解体時の衝撃からRFICを保護し、より確実に個別情報を管理することができる足場材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するために本発明では、材表面にICタグを固定した仮設足場用の足場材であって、前記ICタグは、前記足場材の識別情報を記録したシート状のRFICと、該RFICの少なくとも前記材表面側のシート片面を被覆する保護層とを備え、当該保護層は、前記仮設足場の構築・解体に際する耐衝撃性を有した材質と厚みの樹脂によって形成するという手段を用いた。なお、RFICは、Radio Frequency Integrated Circuitの略称であり、高周波集積回路あるいは無線周波数集積回路を意味する。
【0009】
本発明は、材表面に固定したICタグ内の識別情報を読み取ることによって、その足場材の型番や製造年月日、製造工場等をデジタルによって管理することができる。そして、このICタグは、本発明では樹脂製の保護層によって被覆しているため、耐摩耗性を有することはもちろん、耐衝撃性をも有するから、仮設足場の構築や解体時の衝撃からRFICが保護され、足場材の転用回数に見合った長期に亘って、識別情報の読み取りが可能となる。なお、保護層がリーダーによる読み取り(非接触通信)を阻害しないことはもちろんである。
【0010】
好ましくは、ICタグはRFICの全体を保護層で被覆する。表面からの外力や熱だけでなく、裏面(材表面)からの外力や熱からもRFICを保護するためである。また、RFICを材表面から離間して位置させることにより、こうした裏面からの外力や熱からRFICを防護することができる。この場合の離間手段としては、やや厚めの両面テープなどによってスペーサーを採用する。スペーサーは一枚であってもよいが、複数の片に分割されている場合は、スペーサー相互間に保護層を形成することが好ましい。
【0011】
また、保護層は、太陽光等の熱からRFICを保護するために遮熱性をさらに有することが好ましい。構築された仮設足場は太陽光にさらされ、夏場などは材表面が高温となるところ、この高熱からもRFICを保護することができるからである。特にRFICの全体を保護層で被覆した場合のRFICに対する遮熱効果を一層高めることができる。
【0012】
こうした耐衝撃性や遮熱性を備える保護層の具体的な素材として、本発明ではポリウレアを採用する。即ち、ポリウレアは、主剤成分のイソシアネートに硬化剤であるポリアミンがウレア結合した樹脂であり、優れた強度と柔軟性からRFICを衝撃から高度に保護でき、また、防水性、耐薬品性、耐摩耗性、耐熱性、防食性をも備えているからである。さらに、ポリウレアは、速乾性にも優れ、保護層の形成時間も短くなることから、ICタグの製造が容易となる。
【0013】
なお、保護層の形成方法は、固化前の樹脂をRFICに塗布(刷毛塗り)するか噴霧するのが代表的であるが、所望の厚みの保護層を形成することができる方法であれば、その他の方法を採用することができる。また、ICタグの材表面への適用順序についても、先にRFICに保護層を形成しておき、これを接着剤や両面テープ等によって材表面に固定する他、先にRFICだけを材表面に固定しておき、その後、上述した塗布や噴霧等によって保護層を形成することの何れであってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、足場材の管理手段として材表面にICタグを適用したので、識別情報を瞬時に取得できるなど、非常に管理が容易になるうえ、このICタグはポリウレアに代表される耐衝撃性と耐熱性を備えた樹脂によってRFICを保護しているので、建築現場という過酷な環境下にあっても、長期にわたってRFICの劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る足場材の要部断面図
【
図4】本発明の第二実施形態に係る足場材の要部断面図
【
図6】本発明の足場材に適用するICタグの一例を示す説明図
【
図8】本発明の足場材に適用する他のICタグの製造方法を示す工程図
【
図10】本発明の第三実施形態に係る足場材の要部斜視図
【
図11】本発明の第四実施形態に係る足場材の要部斜視図
【
図12】同足場材に適用するICタグの製造方法を示す説明図
【
図13】同足場材に適用するICタグの他の製造方法を示す工程図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付した図面に従って説明する。
図1は、本発明の第一実施形態に係る足場材の要部断面図であり、材表面1にICタグ2を固定してなる。足場材は仮設足場を構築するための部材であり、上下に連設される左右の枠組みパイプ、この枠組みパイプに水平に掛け渡される足場板、手摺り、ブレースなどが該当し、これらの表面に、材毎の情報を記録したICタグ2を固定している。また、ICタグ2は、シート状のRFIC3を樹脂製の保護層4で被覆してなる。なお、ICタグ2の固定方法は両面テープ5を用いることが簡易であるが、接着であってもよい。また、足場材に対する固定位置は、ICリーダーによって読み取り可能な位置であることはもちろんである。
【0017】
図2は
図1の足場材の製造方法を示し、シート状のRFIC3に両面テープ5の片面から剥離紙5aを剥がして貼着し(同図(a))、次に、両面テープ5の反対面の剥離紙5bを剥がして粘着面を露出して足場材の材表面1に貼着し(同図(b))、最後にRFIC3を被覆するように樹脂を噴霧するか(同図(c))、塗布(刷毛塗り)する(同図(d))。そして、樹脂が硬化すればRFIC3は樹脂製の保護層4で被覆され、本発明の足場材が完成する。
【0018】
なお、ICタグ2における保護層4の形成は、ICタグ2を足場材の材表面に固定する前であってもよい。即ち、
図3では、シート状のRFIC3に両面テープ5の片面を貼着し(同図(a))、これに樹脂を噴霧(同図(b))または塗布(同図(c))し、樹脂の硬化後、両面テープの反対面から剥離紙5bを剥がして材表面1に貼着している(同図(d))。
【0019】
このように足場材の材表面1にICタグ2を固定したので、その足場材の情報はICリーダーによって非接触で読み取ることができ、材毎の管理が容易となる。また、ICタグ2のRFIC3は樹脂製の保護層4によって被覆されているので、摩擦や衝撃からRFIC3が保護される。さらに、その樹脂が直射日光に対する耐性(遮熱性)を有する場合、夏場などの高温時においてもRFIC3が故障することがない。
【0020】
ただし、
図1のICタグ2は材表面1とRFIC3の間に両面テープ5が介在するのみで、該両面テープ5の厚みが薄いと材表面1の熱がRFIC3に伝わりやすいため、こうした材表面1からの熱によってRFIC3が故障することが想定される。
【0021】
そこで
図4に示す第二実施形態では、材表面1とRFIC3との間にスペーサー6を介在させている。これによってRFIC3はスペーサー6の厚み分だけ材表面1から離間して(浮き上がって)位置する。したがって、材表面1からの熱がRFIC3に伝わりにくくなる。なお、この実施形態では厚めの両面テープをスペーサー6として、さらに複数片に分割し、これらスペーサー6は互いに間隔をおいて配設され、この間隔にも樹脂製の保護層4が形成されるようにしている。したがって、RFIC3の裏面(材表面1)側も保護層4によって防護される。スペーサー6の厚みは、材表面1からRFIC3に直接伝熱しない程度に設定されることはもちろんであり、特定の数値に限定されない。
【0022】
図5は上記スペーサー6を採用した足場材の製造方法を示し、まず材表面1に複数のスペーサー6を固定し(同図(a))、これらスペーサー6上にシート状のRFIC3を固定したならば(同図(b))、あとは上記実施形態と同様に、樹脂を噴霧(同図(c))または塗布(同図(d))する。これによってRFIC3の表面はもちろん、裏面側にも樹脂製の保護層4が形成される。したがって、材表面1が高温となっても、裏面側の保護層4によって遮熱され、RFIC3を確実に熱から保護することができる。
【0023】
なお、耐衝撃性や遮熱性を同時に発揮する樹脂としてはポリウレアを採用することが好ましい。ポリウレアであれば速乾性にも優れるため、保護層4も短時間で形成することができる。
【0024】
図6は、保護層4のちょうど中間にシート状RFIC3を埋め込んだICタグ2を示しており、シート状RFIC3の全体が樹脂製の保護層4で被覆されるため、あらゆる方向の衝撃や熱からRFIC3を保護することができる。
【0025】
このICタグ2は、
図7に示したように、型枠7を用い、これにRFIC3を浸漬して製造する。即ち、同図の方法では、RFIC3を矩形の型枠7の蓋体8に垂設した銅線などの支持線9に接着等して垂下した後(同図(a))、これを型枠7に挿入して閉蓋すると共に、樹脂を注入する(同図(b))。そして、樹脂が降下した後に離型することで、
図6のICタグ2が完成する。このとき支持線9は余分を切除した後、保護層4内に残置する。
【0026】
このように
図7の方法はICタグ2を1つずつしか製造することができないが、
図8の方法では複数のICタグ2を一度に製造することができる。即ち、同図の方法では、一枚のベースシート10に複数のシート状RFIC3を固定し、その両面から樹脂を噴霧等することで、全RFIC3の両面を樹脂製の保護層4で被覆したものが作成される。そして、
図9に示すように、こうして作成したものの片面に両面テープ5等の固定手段を設けてから、はさみ11などを用いてRFIC3単位で切り離すことで、必要な数のICタグ2を取得することができる。
【0027】
ところで、保護層4を形成する樹脂は、化学的に安定していることから、上述のようにポリウレアが好ましいが、このポリウレアのさらなる利点としては、その柔軟性にある。つまり、ポリウレアは強度に優れる反面、柔軟性も有していることから、これで保護層4を形成したICタグ2は、
図10に示したように、パイプ状の足場材Pの表面にも容易に固定することができる。
【0028】
また、
図11に示すように、ICタグ2を円筒状に形成し、これをパイプ状の足場材Pに圧入するようにすれば、接着等によらずICタグ2を足場材に固定することができて簡便である。
【0029】
こうした円筒状のICタグ2を製造するには、
図7の型枠による製造方法と同様、
図12に示すように、円形の型枠12に筒状に丸めたシート状RFIC3を挿入し、樹脂に浸漬するようにすればよい。
【0030】
また、
図13に示すように、クランプ式の割り型13を用いれば、シート状RFIC3を容易に円形に保持でき(同図(a))、割り型13を閉じてから樹脂を噴霧等すれば、まずRFIC3の内面に保護層4を形成でき、その後、割り型13を開けば簡単に離型ができ、さらに表面に樹脂を噴霧等すれば、内周面と外周面の両面に保護層4を有する円筒状のICタグ2を製造することができる。
【0031】
上記した何れの実施形態も、シート状のRFIC3の少なくとも表面がポリウレア等の樹脂による保護層4で被覆されているため、仮設足場を構築する際に衝撃が生じたり、構築後の仮設足場が太陽光にさらされて高熱となったとしても、内部のRFIC3は故障せず、その足場材の転用回数に見合った時間だけ長期にICタグ2内の情報を利用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 材表面
2 ICタグ
3 RFIC(シート状)
4 保護層
5 両面テープ
5a・5b 剥離紙
6 スペーサー
7 型枠(矩形)
8 蓋体
9 支持線
10 ベースシート
11 はさみ
12 型枠(円形)
13 割り型