(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139347
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
F24F 1/0063 20190101AFI20230927BHJP
F24F 1/0025 20190101ALI20230927BHJP
F24F 13/24 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
F24F1/0063
F24F1/0025
F24F13/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044829
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】和田 賢宣
(72)【発明者】
【氏名】大城 崇裕
(72)【発明者】
【氏名】永田 剛史
【テーマコード(参考)】
3L049
3L051
【Fターム(参考)】
3L049BB08
3L051BE10
(57)【要約】
【課題】本開示は、熱交換器を通過した気流がクロスフローファンに流入する領域を拡大することにより、クロスフローファンにおける入力を低減し、騒音を抑制する空気調和機を提供する。
【解決手段】本開示における空気調和機は、クロスフローファンと、リアガイダと、熱交換器と補助熱交換器を備える。リアガイダは、上端突起部を備え、クロスフローファンの回転軸と直交する断面において、背面熱交換器の前面に対して垂直かつ上端突起部に外接する直線を直線Aとし、直線Aと背面熱交換器の背面との交点を交点Xとし、補助熱交換器における背面熱交換器と対向する面の上端を上端点Rとし、補助熱交換器における背面熱交換器と対向する面の下端を下端点Qとした場合に、交点Xと上端点Rとの距離RXと、交点Xと下端点Qとの距離QXとが、QX/(RX+QX)≧0.5の関係を満たす。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロスフローファンと、前記クロスフローファンの前面側に配置された前面熱交換器と、前記クロスフローファンの背面側に配置された配置された背面熱交換器と、前記背面熱交換器の背面側に配置された補助熱交換器と、前記クロスフローファンと前記背面熱交換器との間に配置されたリアガイダとを備え、
前記リアガイダは、前記クロスフローファンに近接した近接部と、前記近接部から上方へ向けて延出した上端突起部とを有し、
前記クロスフローファンの回転軸と直交する断面において、前記背面熱交換器の前面に対して垂直かつ前記上端突起部に外接する直線を直線Aと、前記直線Aと前記背面熱交換器の背面との交点を交点Xと、前記補助熱交換器における前記背面熱交換器と対向する面の上端を上端点Rと、前記補助熱交換器における前記背面熱交換器と対向する面の下端を下端点Qとした場合に、前記交点Xと前記上端点Rとの距離RXと、前記交点Xと前記下端点Qとの距離QXとが、QX/(RX+QX)≧0.5となる、空気調和機。
【請求項2】
前記交点Xと、前記背面熱交換器の背面の下端点Yと、前記交点Xと前記下端点Yの距離XYと、前記補助熱交換器の段方向長さHとした場合に、XY/H≧1.0となる、請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記背面熱交換器は、背面熱交換器フィンと、前記背面熱交換器フィンを貫通する背面熱交換器伝熱管とを備え、前記補助熱交換器は、補助熱交換器フィンと、前記補助熱交換器フィンを貫通する補助熱交換器伝熱管とを備え、前記背面熱交換器伝熱管の外径D1と、前記補助熱交換器伝熱管の外径D2が、D1<D2となる、請求項1または2に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記背面熱交換器伝熱管の外径D1が、D1≦5MMとなる、請求項1~3のいずれか1項に記載の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、主に家庭用の空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、空気調和機は、筐体内に、複数のブレードを有するクロスフローファンと、スタビライザと、リアガイダと、クロスフローファンの前面側に前面熱交換器、背面側に背面熱交換器を配設して構成される熱交換器とを備える。そして、筐体天面側から空気を吸い込み、吸い込んだ空気と熱交換器の内部を流れる冷媒とが熱交換し、筐体底面側から空気を吹き出し、室内の空気調和を行っている。リアガイダは、クロスフローファンに対向して近接して所定の寸法だけクロスフローファンから離れる近接部と、近接部から上方へ向けて延出した上端突起部とを有する。
【0003】
特許文献1は、熱交換性能の低下や騒音増大の防止を図る空気調和機を開示する。この空気調和機において、筐体の風路は、背面熱交換器の後方に位置する背面側壁面部と、空気吹出口と連続して形成され、クロスフローファンと熱交換器との間に配置されるフロントノーズ部およびバックノーズ部を備える。熱交換器は、前面熱交換器と背面熱交換器とで略逆V字状に構成されるとともに、フロントノーズ部およびバックノーズ部を含めてクロスフローファンを覆うように配設される。背面熱交換器は、空気の流れ方向の伝熱管の配列数がそれぞれ一定の背面主熱交換器および背面補助熱交換器を有する。補助熱交換器が背面主熱交換器の風上側に位置して背面側壁面部と離間して配置され、背面側補助熱交換器の下縁部から伝熱管の配列方向に対して直交する方向に沿って背面側壁面部までの距離をL1とし、補助熱交換器と背面側壁面部との間の最短距離をL2とし、背面主熱交換器とバックノーズ部の先端との間の距離をL3としたときに、0.4<(L2/L1)<0.6、かつ、0.55<(L3/L1)の関係を満たしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された空気調和機は、背面熱交換器及び補助熱交換器を通過する空気の風速分布と、背面熱交換器のみを通過する空気の風速分布を均一にしている。しかしながら、特許文献1に開示された空気調和機には、上端突起部とクロスフローファンとの間に大きな逆流渦が生じることによって送風性能が低下してしまうという課題がある。
【0006】
本開示は、送風性能の向上を可能とする空気調和機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示における空気調和機は、クロスフローファンと、前記クロスフローファンの前面側に配置された前面熱交換器と、前記クロスフローファンの背面側に配置された背面熱交換器と、前記背面熱交換器の背面側に配置された補助熱交換器と、前記クロスフローファンと前記背面熱交換器との間に配置されたリアガイダとを備え、
前記リアガイダは、前記クロスフローファンに近接した近接部と、前記近接部から上方へ向けて延出した上端突起部とを有し、
前記クロスフローファンの回転軸と直交する断面において、前記背面熱交換器の前面に対して垂直かつ前記上端突起部に外接する直線を直線Aとし、前記直線Aと前記背面熱交換器の背面との交点を交点Xとし、前記補助熱交換器における前記背面熱交換器と対向する面の上端を上端点Rとし、前記前記補助熱交換器における前記背面熱交換器と対向する面の下端を下端点Qとした場合に、前記交点Xと前記上端点Rとの距離RXと、前記交点Xと前記下端点Qとの距離QXとが、QX/(RX+QX)≧0.5の関係を満たす。
【発明の効果】
【0008】
本開示における空気調和機は、リアガイダの上端突起部の上端より上方における熱交換器通風抵抗の増加を抑制し、上端突起部の上端近傍での気流の乱れを改善することで、送風性能の向上を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】実施の形態1における空気調和機の背面熱交換器近傍の縦断面図
【
図3】実施の形態1における空気調和機の背面熱交換器近傍の空気の流れを示す図
【
図4】実施の形態1における空気調和機の背面熱交換器近傍の気流分布を示す図
【
図5】実施の形態1における空気調和機の、QX/(RX+QX)に対する吹出風量変化を示す図
【
図6】実施の形態1における空気調和機の、QX/(RX+QX)に対するクロスフローファンの入力変化を示す図
【
図8】特許文献1に係る空気調和機の背面熱交換器近傍の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本開示の基礎となった知見等)
発明者らが本開示に想到するに至った当時、クロスフローファンとリアガイダとの隙間において、クロスフローファンの回転方向と逆方向に逆流が生じ、この逆流がクロスフローファンとリアガイダの近接部を通過することで、クロスフローファンとリアガイダの近接部の上流において周囲の気流を巻き込んで逆流渦が形成され、その逆流渦をブレードが通過することで干渉騒音が生じるという課題があった。この課題に対し、クロスフローファンの後方で上流と下流を仕切る近接部からクロスフローファンの上方に向かって設けられる上端突起部により、逆流渦を上端突起部のクロスフローファンに対向する面に付着させることで渦中心を近接部よりも上流に位置させ、ブレードとの干渉を緩和して騒音抑制を図る技術があった。この技術による空気調和機において、クロスフローファンの後方でありリアガイダの背部に配置される背面熱交換器は、背面熱交換器の下端部が、上端突起部の上端より下方に挿入され、背面熱交換器の下流側面と上端突起部の背面熱交換器に対向する面との間に風路が形成されるように構成されている。この構成により、上端突起部の上端より下方に位置する背面熱交換器を通過する吸込気流は、上端突起部の背面熱交換器に対向する面に沿って上方へ流動し、上端突起部の上端近傍で、クロスフローファンへ向けて旋回し、クロスフローファンへ流入する。
【0011】
ここで、
図7~
図8を用いて、従来の空気調和機の一例として、特許文献1について説明する。
【0012】
図7を用いて特許文献1に開示されている空気調和機1の構造を説明する。空気調和機1は、空気吸込口2と、空気吹出口3を有する筐体4を備える。筐体4は、貫流ファン5と、空気吸込口2と貫流ファン5との間に熱交換器6と、フロントケーシング7と、バックケーシング8を備える。貫流ファン5は、複数枚のファンブレード5Aを有する。熱交換器6は、前面熱交換器6Aと、背面熱交換器6Bと、補助熱交換器6Cとで構成される。熱交換器6は、フィン6Dと、フィン6Dを貫通する伝熱管6Eとを備える。前面熱交換器6Aと背面熱交換器6Bは、貫流ファン5をその上部から覆うように略逆V字状に配設される。熱交換器6の補助熱交換器6Cは、いわゆるサブクーラとして機能するものであり、背面熱交換器6Bの風上側(空気の流れの上流側)に配設されている。
【0013】
フロントケーシング7は、貫流ファン5の前方に位置し、フロントケーシング7の先端には略矩形状に曲げ形成されたスタビライザ7Aが一体に形成されている。
【0014】
バックケーシング8は、貫流ファン5の背面側に位置し、湾曲面8Aの上端部(先端部)8Bから、貫流ファン5と熱交換器6との間に突出する上端突起部8Cを有し、上端突起部8Cの後方に、鉛直方向上方に延びる流路壁面8Dを有している。バックケーシング8の湾曲面8Aの上端部8Bと流路壁面8Dの下端部との間に、背面熱交換器6Bの一部が挿入される凹部8Eが形成されている。
【0015】
背面熱交換器6Bは、縦断面において略長方形状を呈し、その長手方向が貫流ファン5の上方から下方に向けて流路壁面8Dに向けて傾斜し、さらに下端が流路壁面8Dに接している。背面熱交換器6Bの下端は、凹部8E内に挿入される。
【0016】
補助熱交換器6Cは、背面熱交換器6Bの長手方向よりも短く形成され、背面熱交換器6Bの上流面の一部に重ねられている。また、補助熱交換器6Cは、流路壁面8Dから離間している。なお、補助熱交換器6Cは、流路壁面8Dに近い側の端部の角部が、流路壁面8Dと平行になるように切り欠かれている。補助熱交換器6Cと流路壁面8Dとは接していないため、背面熱交換器6Bと補助熱交換器6Cを通過する空気の経路は、背面熱交換器6Bと補助熱交換器6Cの両方を通過するものと、背面熱交換器6Bのみを通過するものが存在する。
【0017】
図8を用いて特許文献1に開示されている空気調和機1の背面熱交換器6Bの近傍の構造を説明する。背面熱交換器6Bの下端は、凹部8E内に挿入され、背面熱交換器6Bの下流面と上端突起部8Cの背面熱交換器6Bに対向する面の間に狭隘部S1が形成される。背面熱交換器6Bに補助熱交換器6Cが存在しない部分の背面熱交換器6Bの上流側には、流路壁面8Dと補助熱交換器6Cとの間に狭隘部S2が形成されている。
【0018】
補助熱交換器6Cの下端縁から伝熱管6Eの配列方向(矢印A,Bの方向)に直交する方向に沿って流路壁面8Dまでの距離をL1とし、背面熱交換器6Bの上流側の狭隘部S2の寸法、すなわち、補助熱交換器6Cと流路壁面8Dとの最短距離をL2とし、背面熱交換器6Bの下流側の狭隘部S1の寸法、すなわち、背面熱交換器6Bと上端突起部8Cの先端との間の距離をL3としたときに、0.4<(L2/L1)<0.6、かつ、0.55<(L3/L1)の関係を満たすように設定したものである。
【0019】
このように、距離L1,L2,L3の関係を設定することで、これら2つの狭隘部S1,S2の通風抵抗の合計と、補助熱交換器6Cの通風抵抗を一致させることにより、背面熱交換器6B及び補助熱交換器6Cを通過する空気(矢印A)の風速分布と、背面熱交換器6Bのみを通過する空気(矢印B)の風速分布との偏りを低減し、熱交換性能の低下や騒音の増大を防止するとともに、性能のバラツキの小さな空気調和機1を提供することができると目論んでいる。
【0020】
しかし、背面熱交換器6Bのみを通過する空気は、上端突起部8Cの背面熱交換器6Bに対向する面と背面熱交換器6Bとの間の狭隘部S1を下方から上方へ流動するため、背面熱交換器6B及び補助熱交換器6Cを通過する空気(矢印A)の風速分布と、背面熱交換器6Bのみを通過する空気(矢印B)の風速分布を均一にしても、背面熱交換器6B及び補助熱交換器6Cを通過した気流の速度と、背面熱交換器6Bのみを通過して狭隘部S1を下方から流動した後の上端突起部8Cの先端で貫流ファン5へ偏向する気流の速度との間で差異が生じる。背面熱交換器6Bのみを通過して狭隘部S1を下方から流動した後の上端突起部8Cの先端で貫流ファン5へ偏向する際の速度によっては、上端突起部8Cの先端近傍での旋回半径が大きくなり、熱交換器6を通過した吸込気流が貫流ファン5に流入する位置が上端突起部8Cの先端から前方へ離れた位置となり、貫流ファン5と上端突起部8Cの貫流ファン5に対向する面との間に生じる逆流渦が拡大して、熱交換器6を通過した気流が貫流ファン5に流入する領域が狭まる場合がある。この場合は、ファンの吹き出風量が低下する、ファン入力が増加する、騒音を抑制できないと言う課題を発明者らは発見し、その課題を解決するために、本開示の主題を構成するに至った。
【0021】
そこで本開示は、上端突起部の先端近傍での気流の旋回半径を縮小し、熱交換器を通過した吸込気流がクロスフローファン(貫流ファン)に流入する位置を上端突起部の先端に近づけ、クロスフローファン(貫流ファン)と上端突起部の貫流ファンに対向する面との間に生じる逆流渦を縮小して、熱交換器を通過した気流がクロスフローファン(貫流ファン)に流入する領域を拡大することで送風性能の向上を可能とする空気調和機を提供する。
【0022】
以下、図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が必要以上に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0023】
なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0024】
(実施の形態1)
以下、
図1~
図6を用いて、実施の形態1を説明する。
【0025】
[1-1.構成]
図1において、空気調和機100は、吸込口101と吹出口102を有する本体ケーシング103と、スタビライザ104と、リアガイダ105と、クロスフローファン106と、熱交換器107を備えている。
【0026】
リアガイダ105は、クロスフローファン106に対向して近接し、所定の寸法だけクロスフローファン106から離れる近接部105Aと、近接部105Aから上方へ向かって延出する上端突起部105Bとを有する。リアガイダ105はクロスフローファン106と後述する背面熱交換器107Bとの間に配置されている。
【0027】
クロスフローファン106は円筒状に配置された複数のブレード106Aを有している。
【0028】
熱交換器107は、前面熱交換器107Aと、背面熱交換器107Bと、補助熱交換器108とで構成される。前面熱交換器107Aはクロスフローファン106の前面側に配置される。背面熱交換器107Bはクロスフローファン106の背面側に配置される。補助熱交換器108は背面熱交換器107Bの背面、つまり、クロスフローファン106と背面熱交換器107Bの対面する面とは反対側の面に配置されており、言い換えると、補助熱交換器108は背面熱交換器107Bにおける、クロスフローファン回転時に吸込口101から流入する空気の上流側の面に配置される。以後、便宜上、吸込口101から流入する空気において、熱交換器の風上側の面を上流面、熱交換器の風下側の面を下流面と称する。
【0029】
前面熱交換器107A及び背面熱交換器107Bは、フィン107Cと、フィン107Cを貫通する伝熱管107Dとを備え、伝熱管107Dの外径D1がD1=5MMとなる。
【0030】
補助熱交換器108は、フィン108Aと、フィン108Aを貫通する伝熱管108Bとを備え、伝熱管108Bの外径D2がD2=6MMとなる。
【0031】
次に、
図2において、背面熱交換器107B近傍の詳細形状について説明する。リアガイダ105は、クロスフローファン106に対向して近接して所定の寸法だけクロスフローファン106から離れる近接部105Aを有し、近接部105Aから上方へ向かって延出した上端突起部105Bを有する。
【0032】
背面熱交換器107Bの略平面状である前面(下流面)に垂直で上端突起部105Bに外接する直線を直線Aとし、直線Aと背面熱交換器107Bの背面(上流面)の交点を交点Xとし、補助熱交換器における背面熱交換器と対向する面(下流面)の上端を上端点Rとし、補助熱交換器における背面熱交換器と対向する面(下流面)の下端を下端点Qとすると、交点Xと上端点Rの距離RXと、交点Xと下端点Qの距離QXの長さは、QX/(RX+QX)≧0.5となる。
【0033】
直線Aと背面熱交換器107Bの背面(上流面)の交点を交点Xとし、背面熱交換器107Bの背面(上流面)の下端点を下端点Yとし、交点Xと下端点Yの距離を距離XYとし、補助熱交換器108の段方向長さを長さHとする。距離XYと長さHが、XY/H≧1.0となる。ここで、補助熱交換器108の段方向長さHは、補助熱交換器108の背面熱交換器107Bに最も近接する面、すなわち補助熱交換器における背面熱交換器と対向する面(下流面)の上端と下端との間の距離で規定する。
【0034】
[1-2.動作]
以上のように構成された空気調和機100について、
図3において、その動作を以下説明する。空気調和機100において、クロスフローファン106が回転することにより、室内空気は吸込口101から本体ケーシング103内へ吸い込まれる。本体ケーシング103内へ吸い込まれた室内空気は、前面熱交換器107A、背面熱交換器107B、補助熱交換器108を通過してクロスフローファン106に流入し、吹出口102から室内空間へ吹き出される。
【0035】
この時、背面熱交換器107Bのみを通過する吸込気流200Aと吸込気流200B、背面熱交換器107Bと補助熱交換器108の両方を通過する吸込気流200Cと吸込気流200Dの4つの吸込気流が存在する。
【0036】
吸込気流200Aは背面熱交換器107Bにおける上端突起部105Bの上端より下方に位置する部分を通過する。
【0037】
吸込気流200Bは背面熱交換器107Bにおける上端突起部105Bの上端より上方に位置する部分を通過する。
【0038】
吸込気流200Cは補助熱交換器108と、背面熱交換器107Bにおける上端突起部105Bの上端より下方に位置する部分との両方を通過する。
【0039】
吸込気流200Dは補助熱交換器108と、背面熱交換器107Bにおける上端突起部105Bの上端より上方に位置する部分との両方を通過する。
【0040】
背面熱交換器107Bにおける上端突起部105Bの上端より下方に位置する部分を通過する吸込気流200Aと吸込気流200Cは、上端突起部105Bの背面熱交換器107Bに対向する面に沿って上方へ流動し、上端突起部105Bの上端近傍で、クロスフローファン106へ向けて旋回し、クロスフローファン106へ流入する。
【0041】
また、背面熱交換器107Bにおける上端突起部105Bの上端より上方に位置する部分を通過する吸込気流200B及び吸込気流200Dは、上端突起部105Bの上端近傍で、背面熱交換器107Bのおける上端突起部105Bの上端より下方に位置する部分を通過する吸込気流200A及び吸込気流200Cと合流して、クロスフローファン106へ流入する。
【0042】
背面熱交換器107Bにおける上端突起部105Bの上端より下方に位置する部分を通過する吸込気流200A及び吸込気流200Cは、上端突起部105Bの背面熱交換器107Bに対向する面に沿って上方へ流動し、上端突起部105Bの上端近傍で、背面熱交換器107Bにおける上端突起部105Bの上端より上方に位置する部分を通過する吸込気流200B及び吸込気流200Dと合流する際に、上方から下方に抑え込まれてクロスフローファン106へ向けて旋回し、クロスフローファン106へ流入する。
【0043】
背面熱交換器107B及び補助熱交換器108の通風抵抗は、背面熱交換器107Bのみの通風抵抗よりも高く、通風抵抗の差から、背面熱交換器107B及び補助熱交換器108を通過する吸込気流200C及び吸込気流200Dの風速は、背面熱交換器107Bのみを通過する吸込気流200A及び200Bの風速よりも低下する。
【0044】
補助熱交換器108は、QX/(RX+QX)≧0.5の位置にあり、つまり、背面熱交換器107Bの下流面に垂直で上端突起部105Bに外接する直線Aに対して、補助熱交換器108の段方向の半分以上が下方にある。この配置により、上端突起部105Bの先端近傍において、上端突起部105Bの先端に向けて上端突起部105Bの下方から流動してくる吸込気流200A及び吸込気流200Cの合流風速は、上端突起部105Bの先端近傍に向けて上端突起部105Bの上方から流動してくる吸込気流200B及び吸込気流200Dの合流風速よりも相対的に低下する。その風速差から、上端突起部105Bの上端より下方に位置する背面熱交換器107Bを通過する吸込気流200A及び吸込気流200Cは、上端突起部105Bの上端近傍で、上端突起部105Bの上端より上方に位置する背面熱交換器107Bを通過する吸込気流200C及び吸込気流200Dに強く抑え込まれる。
【0045】
クロスフローファン106と上端突起部105Bのクロスフローファン106に対向する面との間の空間に、クロスフローファン106の回転方向と逆方向に逆流渦201が生じる。逆流渦201は上端突起部105Bのクロスフローファン106に対向する面に付着し、渦中心が近接部105Aよりも上流に位置する。
【0046】
図4、
図5、
図6を用いて、直線Aが補助熱交換器108と交わる、つまり交点Xが補助熱交換器108と接触する場合について、補助熱交換器の配置位置による送風性能の向上を詳細に説明する。
【0047】
本実施の形態における空気調和機100の背面熱交換器107Bの近傍、特に上端突起部105Bの上端近傍の気流分布について、
図4において、その詳細を以下説明する。
【0048】
図4において、補助熱交換器108の位置による、上端突起部105Bの先端近傍の吸込気流、及び、クロスフローファン106への流入気流の気流比較として、QX/(RX+QX)=0.34となる補助熱交換器108の位置の場合と、QX/(RX+QX)=0.67となる補助熱交換器108の位置の場合との、数値解析による上端突起部105Bの先端近傍の吸込気流の風速分布の比較とクロスフローファン106への流入気流の流線分布の比較を示す。
【0049】
図4の上段に補助熱交換器位置を示す。図中、四角で囲んだ領域について、
図4の中段で上端突起部105Bの近傍における風速分布を示し、下段でクロスフローファン106への流入気流の流線分布を示す。
【0050】
図4の中段を用いて、上端突起部105Bの近傍における風速分布を説明する。
図4の中段において、破線は風速3M/Sの境界線を示し、破線の内側は風速3M/S以上であることを示している。
【0051】
また、
図4の中段左側は、QX/(RX+QX)=0.34となる補助熱交換器108の位置の場合の風速分布を示し、中段右側は、QX/(RX+QX)=0.67となる補助熱交換器108の位置の場合の風速分布図を示す。
図4中段右側には、QX/(RX+QX)=0.34となる補助熱交換器108の位置の場合の風速3M/Sを点線で示している。
【0052】
QX/(RX+QX)=0.34と、QX/(RX+QX)=0.67となる補助熱交換器108の位置の場合を比較すると、上端突起部105Bに近い領域が風速3M/S以上となることは一致する。しかし、QX/(RX+QX)=0.67となる補助熱交換器108の位置の場合の方が、上端突起部105Bの上端側に破線が狭くなっている。つまり、QX/(RX+QX)=0.67となる補助熱交換器108の位置の場合の方が、上端突起部105Bの上端より下方に位置する背面熱交換器107Bを通過する吸込気流の風速は低下していることがわかる。
【0053】
図4の下段を用いて、クロスフローファン106への流入気流の流線分布を説明する。流線図中の実線は上端突起部105Bの上端近傍でクロスフローファン106へ向けて旋回する流入気流を示す。クロスフローファン106へ流入する流線のうち、矢印付きの実線は上端突起部105Bの先端から最も後方の流線を示す。つまり、矢印付きの実線は、クロスフローファン106に実際に流入する吸込気流と逆流渦との境界を示す。
【0054】
図4の下段左側は、QX/(RX+QX)=0.34となる補助熱交換器108の位置の場合の流線分布を示し、下段右側は、QX/(RX+QX)=0.67となる補助熱交換器108の位置の場合の流線分布図を示す。
図4下段段右側には、QX/(RX+QX)=0.34となる補助熱交換器108の位置の場合の最も後方の流線を点線で示している。
【0055】
QX/(RX+QX)=0.67となる補助熱交換器108の位置の場合、QX/(RX+QX)=0.34となる補助熱交換器108の位置の場合と比べ、クロスフローファン106に実際に流入する吸込気流と逆流渦との境界が図中右側へ移動しており、逆流渦の領域が縮小している。これは熱交換器107を通過した気流がクロスフローファン106に流入する領域を拡大していることを示す。
【0056】
図5において、QX/(RX+QX)に対する風量変化について説明する。
図5は、数値解析によるQX/(RX+QX)をパラメータとしたときの空気調和機100の吹出風量変化を示す図である。横軸にQX/(RX+QX)をとり、縦軸に空気調和機100のクロスフローファン106の回転数を同一とした時の風量比(QX/(RX+QX)=0.5の時の風量比100%)をとる。XY座標上にプロットされている5つの点の座標は(0,97.8)、(0.34,99.4)、(0.5,100)、(0.67,100.3)、(1.0,99.8)である。
図5に示すようにQX/(RX+QX)が0.5を下回ると風量比は急激に低下し、一方、QX/(RX+QX)が0.5以上で風量比はほぼ一定となる。言い換えると、QX/(RX+QX)の値を0から1に増加させた場合に、0~0.5の間では急激に風量比は増加し、0.5に達した時点で風量比は上限に達する。つまり、QX/(RX+QX)が0.5以上の時、風量比は増加し、送風性能は向上するといえる。
【0057】
図6において、QX/(RX+QX)に対する入力変化について説明する。
図6は、数値解析によるQX/(RX+QX)をパラメータとしたときの空気調和機100の入力変化を示す図である。横軸にQX/(RX+QX)をとり、縦軸に空気調和機100の吹出風量を同一とした時のクロスフローファンの入力比(QX/(RX+QX)が0.0の時の入力比100%)をとる。XY座標上にプロットされている5つの点の座標は(0,100)、(0.34,100.1)、(0.5,99.9)、(0.67,99.9)、(1.0,99.8)である。
図6に示すようにQX/(RX+QX)が0.0~0.34間では入力比が上昇しているのに対して、0.34~0.5間で急激に入力比が低下し、その後、1.0にいたるまで、入力比が低い状態を保つ。つまり、QX/(RX+QX)が0.34~0.5の間に急激に改善する点が存在し、QX/(RX+QX)が少なくとも0.5以上であれば入力比は低減するといえる。また、QX/(RX+QX)が0.5以上では入力比を0.1%低減でき、十分な送風性能の向上を見込むことができる。
【0058】
以上、直線Aが補助熱交換器108と交わる、つまり交点Xが補助熱交換器108と接触する場合についての送風性能の向上を説明したが、交点Xが補助熱交換器108と接触しない場合、つまり、補助熱交換器108がすべて直線Aの下側にある場合においてもQX/(RX+QX)≧0.5の関係を満たし、同様の効果が生じるため、空気調和機の送風性能は向上する。
【0059】
[1-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、空気調和機100は、吸込口101と、吹出口102を有する本体ケーシング103と、スタビライザ104と、リアガイダ105と、クロスフローファン106と、前面熱交換器107Aと、背面熱交換器107Bと、補助熱交換器108を備えている。リアガイダ105は、クロスフローファン106に対向して近接して所定の寸法だけクロスフローファン106から離れる近接部105Aを有し、近接部105Aから上方へ向かって延出する上端突起部105Bを有し、近接部105Aから上方へ向かって上端突起部105Bを有する。背面熱交換器107Bの前面(下流面)に垂直で上端突起部105Bに外接する直線Aと背面熱交換器107Bの背面(上流面)の交点Xと、補助熱交換器における背面熱交換器と対向する面(下流面)の上端点Rと補助熱交換器における背面熱交換器と対向する面(下流面)の下端点Qと、交点Xと下端点Rの距離RXと、交点Xと下端点Qの距離QXの長さがQX/(RX+QX)≧0.5となる。補助熱交換器108は、QX/(RX+QX)≧0.5となる位置にあり、背面熱交換器107Bの下流面に垂直で上端突起部105Bに外接する直線Aに対して、補助熱交換器108の段方向の半分以上が下方にあることから、上端突起部105Bの先端近傍において、上端突起部105Bの先端に向けて上端突起部105Bの下方から流動してくる吸込気流の風速は、上端突起部105Bの先端近傍に向けて上端突起部105Bの上方から流動してくる吸込気流の風速よりも相対的に低下している。その風速差から、背面熱交換器107Bにおける上端突起部105Bの上端より下方に位置する部分を通過する吸込気流は、上端突起部105Bの上端近傍で、背面熱交換器107Bにおける上端突起部105Bの上端より上方に位置する部分を通過する吸込気流に強く抑え込まれる。これにより、空気調和機100は、上端突起部105Bの上端近傍でクロスフローファン106へ向けて旋回する気流の旋回半径を縮小できる。そのため、クロスフローファン106と上端突起部105Bのクロスフローファン106に対向する面との間に生じる逆流渦を縮小して、熱交換器107を通過した気流がクロスフローファン106に流入する領域を拡大することで、クロスフローファン106における吹出風量を増大し、クロスフローファン106における入力を低減し、騒音を抑制することができ、空気調和機の送風性能を向上させることができる。
【0060】
本実施の形態のように、直線Aと背面熱交換器107Bの上流面の交点Xと、背面熱交換器107Bの上流面の下端点Yの距離XYと、補助熱交換器108の段方向の長さHが、XY/H≧1.0となってもよい。
【0061】
補助熱交換器108は、長さHがXY/H≧1.0となるため、背面熱交換器107Bの前面(下流面)に垂直で上端突起部105Bに外接する直線Aに対して、補助熱交換器108が全て直線Aの下方に位置することが可能となる。補助熱交換器108が全て直線Aの下方に位置することで、上端突起部105Bの先端近傍において、上端突起部105Bの先端に向けて上端突起部105Bの下方から背面熱交換器107B及び補助熱交換器108を通過して流動してくる吸込気流の風速と、上端突起部105Bの先端近傍に向けて上端突起部105Bの上方から背面熱交換器107Bのみを通過して流動してくる吸込気流の風速との相対的な風速差をより拡大することができる。その風速差から、背面熱交換器107Bにおける上端突起部105Bの上端より下方に位置する部分を通過する吸込気流は、上端突起部105Bの上端近傍で、背面熱交換器107Bにおける上端突起部105Bの上端より上方に位置する部分を通過する吸込気流に強く抑え込まれる。これにより、空気調和機100は、上端突起部105Bの上端近傍でクロスフローファン106へ向けて旋回する気流の旋回半径をさらに縮小できる。そのため、クロスフローファン106と上端突起部105Bのクロスフローファン106に対向する面との間に生じる逆流渦をより効果的に縮小して、熱交換器107を通過した気流がクロスフローファン106に流入する領域を諸条件により拡大することでクロスフローファン106における吹出風量を増大し、入力を低減し、騒音を抑制することができる。
【0062】
本実施の形態のように、熱交換器107は、フィン107Cと、フィン107Cを貫通する伝熱管107Dとを備え、補助熱交換器108は、フィン108Aと、フィン108Aを貫通する伝熱管108Bとを備え、伝熱管107Dの外径D1と伝熱管108Bの外径D2がD1<D2となってもよい。但し、本実施の形態で示す伝熱管107Dの外径D1=5MM、伝熱管108Bの外径D2=6MMは一例に過ぎない。熱交換器107はD1≦5MMを満たす伝熱管107Dであればよい。これにより、空気調和機100は、伝熱管107Dの外径D1と伝熱管108Bの外径D2がD1<D2となり、背面熱交換器107Bに対して補助熱交換器108の通風抵抗が大きくなる。そして、上端突起部105Bの先端に向けて上端突起部105Bの下方から背面熱交換器107B及び補助熱交換器108を通過して流動してくる吸込気流の風速と、上端突起部105Bの先端近傍に向けて上端突起部105Bの上方から背面熱交換器107Bのみを通過して流動してくる吸込気流の風速との相対的な風速差をより拡大することができる。
【0063】
また、伝熱管107Dの外径D1がD1=5MMである圧力損失の軽減を図った背面熱交換器107Bを備え、背面熱交換器107Bを大風量の吸込気流が通過する場合に、上端突起部105Bの先端近傍に向けて上端突起部105Bの上方から背面熱交換器107Bのみを通過して流動してくる吸込気流の風速を積極的に増すことができる。そのため、クロスフローファン106と上端突起部105Bのクロスフローファン106に対向する面との間に生じる逆流渦をより効果的に縮小して、熱交換器107を通過した気流がクロスフローファン106に流入する領域を拡大することでクロスフローファン106における吹出風量を増大し、入力を低減し、騒音を抑制することができる。
【0064】
なお、上述の実施の形態は、背面熱交換器107Bの上流面の上端点を上端点Zとしたとき、直線Aと背面熱交換器107Bの上流面の交点Xと上端点Zの距離XZと、直線Aと背面熱交換器107Bの上流面の交点Xと背面熱交換器107Bの上流面の下端点Yの距離XYが、XZ<XYとなるような背面熱交換器107Bのうち上端突起部105Bの上端よりも下方に位置する領域が多い場合ほど好適である。
【0065】
なお、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本開示は、上端突起部の上端近傍でクロスフローファンへ向けて旋回する気流の旋回半径を縮小し、リアガイダの近接部上流で形成される逆流渦を縮小して、熱交換器を通過した気流がクロスフローファンに流入する領域を拡大することで送風性能を向上できることから、家庭用空調や業務用空調に用いるのに好適である。
【符号の説明】
【0067】
100 空気調和機
101 吸込口
102 吹出口
103 本体ケーシング
104 スタビライザ
105 リアガイダ
105A 近接部
105B 上端突起部
106 クロスフローファン
107 熱交換器
107A 前面熱交換器
107B 背面熱交換器
107C フィン
107D 伝熱管
108 補助熱交換器
108A フィン
108B 伝熱管