(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139357
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 12/91 20110101AFI20230927BHJP
H01R 13/11 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
H01R12/91
H01R13/11 302E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044846
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】390033318
【氏名又は名称】日本圧着端子製造株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉井 隆大
【テーマコード(参考)】
5E223
【Fターム(参考)】
5E223AB26
5E223AB62
5E223AC19
5E223BA01
5E223BA08
5E223BB01
5E223CB22
5E223CB29
5E223CB38
5E223CD01
5E223DA05
5E223DB08
5E223DB11
5E223DB25
(57)【要約】
【課題】フローティング量が大きく大電流に適した構造で部品点数の少ない回路基板間接続コネクタ
【解決手段】
回路基板に取り付く上下方向に沿って嵌合するリセプタクルコネクタ1であって、リセプタクルコンタクト30は板状の固定部33と上下方向に変位する第1バネ要素341と前後方向に変位する第2バネ要素342と接触部とを備える。第1バネ要素341と前記第2バネ要素342とは板状で概ね90度の角度をもって連続しており、接触部31は第2バネ要素342の先端部に連なり嵌合時相手方コンタクト70を左右方向から挟持する。接触部31の先端部には下方向に延びるストッパー部35が備わり、嵌合時相手方コネクタ50との間に位置にずれが生じたときストッパー部35の先端部とハウジングの規制部170との当接により接触部31の変形が抑制される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後及び左右方向に広がる回路基板に取り付く、上下方向に沿って降下する相手方コネクタに嵌合する、コンタクトとハウジングとを備えたコネクタであって、
前記コンタクトは金属製の板状体に曲げ加工を加えたもので前記回路基板と平行に延びる板状の固定部と前記固定部に連なる主に上下方向に変位する第1バネ要素と主に前後方向に変位する第2バネ要素と相手方コンタクトの接触部に接続する接触部とを備え、
前記第1バネ要素と前記第2バネ要素とは板状でおおよそ90度の角度をもって連続して備わり、
前記接触部は前記第2バネ要素の先端部に連なり嵌合時上方から降下する相手方コンタクトを左右方向から挟持する概ね左右対称形状の逆Ω形状であって、
前記接触部の先端部には下方向に延びるストッパー部が備わり、
嵌合時前記相手方コネクタとの間に位置にずれが生じたとき、前記ストッパーの先端部と前記ハウジングの所定部との当接により前記接触部の変形が弾性域内で抑制されるところに特徴を有するコネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のハウジングは内部に前記コンタクトを収容するための収容部を一列状に備えた前面、後面、底面、上面及び左右側面に壁面を有する立方形状であって、前記収容部を構成する前記前面、前記後面のいずれか一方には前記コンタクトを前記収容部に収容するための開口部が備わり、前記前面、前記後面のいずれか他方にはスリットが備わり、前記上面には前記収容部に対応する位置に上面開口部が備わるところに特徴を有するコネクタ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のコネクタは前記収容部を少なくとも4個備え、前記コンタクトの前記固定部は前記前面側に少なくとも2個備わり、前記後面側に少なくとも2個備わり、前記前面側に備わる固定部と前記後面側に備わる固定部との個数差は多くても1個であるところに特徴を有するコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回路基板同士を接続するフローティング機構を備えたコネクタである。
【0002】
回路基板同士を接続するフローティング機構を備えたコネクタであって、大電流に対応するものとして特許文献1及び特許文献2に記載のコネクタが開示されている。
特許文献1に記載のコネクタは、2種類のハウジングで構成されている。回路基板に固定される本体ハウジングがあり、これとは別部材として、フローティング機構を有するフローティングハウジングがある。また、コンタクトも2部品から成るツーピース構造である。さらに、コネクタと回路基板との接続強度を確保するためにコネクタの左右側面に補強タブが備わる。このように、特許文献1に記載のコネクタは、コネクタを構成する部品点数が多くなりコストも嵩張るものとなる。
特許文献2に記載のコネクタは、大電流に対応するもので低背化のフローティングコネクタを提案するものである。コンタクトの構造は、可動部を構成するU字状の折返しが1カ所備わるのみである。そのために、自ずと必要バネ長が長くなりコネクタの高さ方向が嵩張ることとなる。また、コンタクトのピッチ方向の展開長が大きくなるので、生産過程でのリール材の歩留まりが低くなり、その結果コスト高を招くものと思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-57311号公報
【特許文献2】特開2021-34275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事情を鑑みてなされたものである。回路基板同士を接続するコネクタであってフローティング量が大きく大電流に適した構造で部品点数の少ない回路基板間接続コネクタの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るコネクタは、(1)前後及び左右方向に広がる回路基板に取り付く、上下方向に沿って降下する相手方コネクタに嵌合する、コンタクトとハウジングとを備えたコネクタであって、前記コンタクトは金属製の板状体に曲げ加工を加えたもので前記回路基板と平行に延びる板状の固定部と前記固定部に連なる主に上下方向に変位する第1バネ要素と主に前後方向に変位する第2バネ要素と相手方コンタクトの接触部に接続する接触部とを備え、前記第1バネ要素と前記第2バネ要素とは板状でおおよそ90度の角度をもって連続して備わり、前記接触部は前記第2バネ要素の先端部に連なり嵌合時上方から降下する相手方コンタクトを左右方向から挟持する概ね左右対称形状の逆Ω形状であって、前記接触部の先端部には下方向に延びるストッパー部が備わり、嵌合時前記相手方コネクタとの間に位置にずれが生じたとき、前記ストッパーの先端部と前記ハウジングの所定部との当接により前記接触部の変形が弾性域内で抑制されるところに特徴を有するものである。
【0006】
この発明によれば、コンタクトは第1バネ要素及び第2バネ要素を備え前後左右に変位可能であり、弾性域が長くとれるので変位量も大きくなる。また、ハウジング及びコンタクト共に1種類のみからの構成であり部品点数が少ないコネクタである。大電流に対してはコンタクトの接触部から弾性部及び固定部までの幅が略一様に幅広であり断面積も大きくとられている。
【0007】
好ましくは、本発明に係るコネクタは、(2)上記(1)に記載のハウジングは内部に前記コンタクトを収容するための収容部を一列状に備えた前面、後面、底面、上面及び左右側面に壁面を有する立方形状であって、前記収容部を構成する前記前面、前記後面のいずれか一方には前記コンタクトを前記収容部に収容するための開口部が備わり、前記前面、前記後面のいずれか他方にはスリットが備わり、前記上面には前記収容部に対応する位置に上面開口部が備わるところに特徴を有するものである。
【0008】
この発明によれば、ハウジングの前面、後面及び上面に大きな開口部が設けられている。これにより、大電流に対する熱こもりが生じにくい放熱性に好ましいコネクタが得られる。前面、後面に関しては開口部は壁面の概ね80%程度であり、上面に関しては概ね50パーセント程度である。
【0009】
好ましくは、本発明に係るコネクタは、(3)上記(1)又は(2)に記載のコネクタは前記収容部を少なくとも4個備え、前記コンタクトの前記固定部は前記前面側に少なくとも2個備わり、前記後面側に少なくとも2個備わり、前記前面側に備わる固定部と前記後面側に備わる固定部との個数差は多くても1個であるところに特徴を有するものである。
【0010】
この発明によれば、ハウジングの前面及び後面にコンタクトの固定部が千鳥状に配置されている。これにより、コネクタは、回路基板に対してバランスよく接続されている。その結果、補強金具の装着が省くことができるコネクタが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るリセプタクルコネクタのコンタクトと相手方コネクタのコンタクトとの接続状態を示す要部拡大図であって、(1)は相手方コンタクトが左方向へずれた状態、(2)は相手方コンタクトとのずれのない状態、(3)は相手方コンタクトが右方向へずれた状態である。
【
図2】
図2は、同リセプタクルコネクタと相手方コネクタとの嵌合状態を示す図であって、(1)は外観斜視図であり、(2)は回路基板に装着された状態の嵌合状態を示す側面図である。
【
図3】
図3は、同リセプタクルコンタクトを示す図であって、(1)は単体状態の斜視図であって、(2)は相手方コンタクトと嵌合した状態を示す斜視図であって、(3)はリールから切り離す前で形状がつくられる前の展開図である。
【
図4】
図4は、同リセプタクルハウジングとリセプタクルコンタクトとを示す図であって、(1)はリセプタクルコンタクトが組み付けられる前の状態であって、(2)はリセプタクルコンタクトが組み付けられた状態を示す外観斜視図である。
【
図5】
図5は、同リセプタクルコネクタと相手方コネクタとが傾きをもって嵌合する過程を示す要部図であって、(1)は断面図、(2)は斜視図である。
【
図6】
図6は、第2の実施形態に係るリセプタクルコンタクトの外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態に係るコネクタを図面に従って説明する。
図1は、本実施形態に係るリセプタクルコネクタのコンタクトと、相手方コネクタのコンタクトとの接続状態を示す要部図であって、(1)は相手方コンタクトが左方向へずれた状態、(2)は相手方コンタクトのずれのない状態、(3)は相手方コンタクトが右方向へずれた状態である。
図2は、同リセプタクルコネクタと、相手方コネクタとの嵌合状態を示す図であって、(1)は外観斜視図であり、(2)は回路基板に装着された状態の嵌合状態を示す側面図である。
図3は、同リセプタクルコンタクトを示す図であって、(1)は単体の外観斜視図であって、(2)は相手方コンタクトと嵌合した状態を示す外観斜視図であって、(3)はリールから切り離す前で形状がつくられる前の展開図である。
図4は、同リセプタクルハウジングと、リセプタクルコンタクトとの組み付けを示す図であって、(1)はリセプタクルコンタクトが組み付けられる前の状態であって、(2)はリセプタクルコンタクトが組み付けられた状態を示す外観斜視図である。
図5は、同リセプタクルコネクタと、相手方コネクタとが傾きをもって嵌合する過程を示す要部拡大図であって、(1)は断面図、(2)は斜視図である。なお、本発明の技術的範囲は本実施形態に限定的に解釈されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の変更は種々行ない得るものである。
【0013】
本実施形態に係るリセプタクルコネクタ1は、
図1及び
図2に示されるように、相手方コネクタ50と、上下方向に沿って嵌合する。リセプタクルコネクタ1及び相手方コネクタ50は、ともに図示しない回路基板に接続した状態で互いに天面を対峙させた姿勢で嵌合する。リセプタクルコネクタ1と、相手方コネクタ50とは、嵌合の際、位置ずれが生じる場合があり、この位置ずれは左右方向、前後方向(紙面を貫く表裏方向)及び上下方向に生じる場合がある。また、自動車など移動するものに装着された場合には振動が伝播してリセプタクルコンタクト30と、相手方コンタクト70との接触部間で振動が生じる場合がある。
本実施形態に係るリセプタクルコネクタ1は、このような位置ずれや振動が生じたときに、相手方コネクタ50に追従して適切な接続状態を確保する機能を備えたものである。
【0014】
嵌合の際、相手方コネクタ50が、
図1の(1)に示されるように、リセプタクルコネクタ1に対して左方向に位置がずれた場合には、リセプタクルコンタクト30は、相手方コンタクト70に引き摺られるようにして全体が左方向に変位する。このとき、バネ部34の第1バネ要素341は、上方向に変位し、第2バネ要素342は、左方向に変位して相手方コンタクト70との接続状態を確保する。すなわち、接触部31は挟持姿勢を維持したまま位置ずれに対応するようにして全体的に左方向に変位する。
【0015】
相手方コネクタ50が、
図1の(3)に示されるように、リセプタクルコネクタ1に対して右方向に位置がずれた場合には、リセプタクルコンタクト30は、相手方コンタクト70に引き摺られるようにして全体が右方向に変位する。このとき、バネ部34の第1バネ要素341は、下向きに変位し、第2バネ要素342は、右方向に変位して相手方コンタクト70との接続状態を確保している。すなわち、接触部31は挟持姿勢を維持したまま位置ずれに対応するようにして全体的に右方向に変位する。
【0016】
本実施形態に係るリセプタクルコンタクト30は、
図3に示されるように、矩形状の固定部33の後端から短寸の接続部32が一段下がったところで後方に延びている。一方、前端からは長寸のバネ部34が前方に延びている。バネ部34は、前後方向に沿って延びる第1バネ要素341と、その先端に連なる上下方向に沿って延びる第2バネ要素342とから成る。第2バネ要素342の先端からは逆Ω状に成形された接触部31が備わる。接触部31は、一対の接触面310、311で相手方コンタクト70を挟持する構造で中央付近に形成された頂部で相手方コンタクト70と、電気的機械的に接続する。接触面310、311の頂部より上方は、テーパー状の広がりを備え、嵌合の際相手方コンタクト70を奥部へと誘導する。一対の接触面310、311は、互いに対称的に頂部を形成し奥部下端で連結している。接触面310、311は、バネ部34に比べて幅が大きく、その比は概ね2倍程度である。
【0017】
接触部31の端部は、
図3に示されるように、ストッパー部35に連なる。ストッパー部35は、上下方向に沿って下方向に延び、先端は水平方向にストッパー面350が備わる。ストッパー部35は、固定部33の概ね上方に所定距離を隔て位置している。ストッパー部35は、限定空間内で上下方向に沿って弾性的に変位可能である。
【0018】
リセプタクルコンタクト30は、
図3の(3)に示されるように、展開形状は長手方向に長寸である一方、幅方向は短寸である。これにより、挟ピッチでリール状に成型することが可能である。
【0019】
リセプタクルハウジング10は、
図4に示されるように、断面矩形の直方体で内部にコンタクト30を収容するための4個のコンタクト収容空間160を備えている。前面は、前壁130で覆われ、右端及び左端にはコンタクト収容空間160に連なるコンタクト30を組み付けるための開口部131が備わる。中間部には、コンタクト収容空間160に連なるスリット132が備わる。そして、上面は上壁110で覆われ、コンタクト収容空間160に連なる上面開口部111が備わる。左右側面は全面が側壁150で覆われている。
【0020】
リセプタクルハウジング10は、
図4に示されるように、前面、後面及び上面に開口部131及び上面開口部111を有する前壁130、後壁及び上壁110が備わり、通電時に発生する熱が効率よく周囲に拡散されるので、熱のこもりが効果的に抑制される。
【0021】
相手方コネクタ50が傾きをもって嵌合する場合は、
図5に示されるように、相手方コンタクト70の先端部は、リセプタクルコンタクト30の接触面311に当接する。傾き程度が大きくリセプタクルコンタクト30を下方向に押し下げる力が強く作用する場合には、ストッパー部35は、下方向に押し下げられて先端のストッパー面350がリセプタクルハウジング10の底壁上面に形成された規制部170に当接する。当接によりリセプタクルコンタクト30の変位は、この位置で規制され過度の変形が抑制されることとなる。
【0022】
図6は、第2の実施形態に係るリセプタクルコンタクト30の外観斜視図である。第2実施形態に係るリセプタクルコンタクト30は、
図6に示されるように、ストッパー部35の先端はL字状のストッパー面350bが備わる。側面は直線状に切り落とされている。これにより、ストッパー部35と、規制部170との当接によるリセプタクルハウジング10の摩耗損傷が抑制される。また、一層リール材の歩留まりが向上する。
【0023】
<効果>
・接触部31の下方にバネ部34の第1バネ要素341が備わることにより、十分なバネ長が確保でき、リセプタクルコネクタ1の高さ方向の寸法を小型化できる。
・リセプタクルコンタクト30の上下方向に可動する第1バネ要素341により嵌合時に生じる応力の分散が拡充されるのでフローティング量の大きなリセプタクルコネクタ1が得られる。
・リセプタクルコンタクト30の接触面310、311の幅寸法が大きいので相手方コンタクト70の位置ずれを広い範囲で吸収し得るリセプタクルコネクタ1が得られる。
・リセプタクルハウジング10の前壁130、後壁及び上壁110に大きな開口部131、111が備わるので放熱性に優れたリセプタクルコネクタ1が得られる。
・リセプタクルコンタクト30のストッパー部35と、リセプタクルハウジング10の規制部170とが当接するので接触面310、311の変形損傷を抑制可能なリセプタクルコネクタ1が得られる。
・接触面310、311が変形する力に対してバネ部34が変形する力の方が小さいので、接触部31が変形するよりもそれ以前にフローティングするリセプタクルコネクタ1が得られる。
・リセプタクルハウジング10のほかにフローティングハウジングを必要としないので、簡素な構造で組立工数の少ないフローティングコネクタが得られる。
・リセプタクルコンタクト30の幅寸法が大きく断面積が十分確保できるので大電流に適したリセプタクルコネクタ1が得られる。
・リセプタクルコンタクト30の端部にストッパー部35が備わるのでこじり挿抜による過度な変形が抑制可能なリセプタクルコネクタ1が得られる。
・接触圧力よりもリセプタクルコンタクト30のバネ部34の変形圧力の方が小さいので、大電流に対応可能な接続の信頼性の高いリセプタクルコネクタ1が得られる。
【符号の説明】
【0024】
1 リセプタクルコネクタ
10 リセプタクルハウジング
110 上壁
111 上面開口部
120 下壁
130 前壁
131 開口部
132 スリット
140 後壁
150 側壁
160 コンタクト収容空間
170 規制部
30 リセプタクルコンタクト
31 接触部
310 311 接触面
32 接続部
33 固定部
34 バネ部
341 第1バネ要素
342 第2バネ要素
35 ストッパー部
350 ストッパー面
50 相手方コネクタ
60 相手方ハウジング
70 相手方コンタクト
B 回路基板