(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139366
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】機能性羅漢果エキスのマスキング剤及びマスキング方法
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20230927BHJP
A23L 27/20 20160101ALI20230927BHJP
A23L 27/30 20160101ALI20230927BHJP
A23L 2/60 20060101ALN20230927BHJP
A23L 2/02 20060101ALN20230927BHJP
A23F 3/16 20060101ALN20230927BHJP
A23G 3/38 20060101ALN20230927BHJP
【FI】
A23L27/00 Z
A23L27/00 101A
A23L27/00 E
A23L27/00 101Z
A23L27/20 D
A23L27/30 Z
A23L27/30 C
A23L2/00 C
A23L2/60
A23L2/02 B
A23L2/02 C
A23F3/16
A23G3/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044856
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000106106
【氏名又は名称】サラヤ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】四元 優佑
(72)【発明者】
【氏名】村田 雄司
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雄太
【テーマコード(参考)】
4B014
4B027
4B047
4B117
【Fターム(参考)】
4B014GB08
4B014GG07
4B014GG08
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4B014GK05
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4B117LK16
(57)【要約】
【課題】機能性羅漢果エキスを含有する組成物、機能性羅漢果エキスのマスキング剤及びマスキング方法を提供する。
【解決手段】高甘味度甘味料を含有する、機能性羅漢果エキス用マスキング剤、機能性羅漢果エキス及び高甘味度甘味料を含有する組成物、及び機能性羅漢果エキスに高甘味度甘味料を配合することによる、機能性羅漢果エキスのマスキング方法を提供する。機能性羅漢果エキス及び高甘味度甘味料を含む組成物は、飲食品組成物又は医薬組成物として用いることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高甘味度甘味料を含有する、機能性羅漢果エキス用マスキング剤。
【請求項2】
さらに、有機酸を含有する、請求項1に記載の機能性羅漢果エキス用マスキング剤。
【請求項3】
前記高甘味度甘味料が、ソーマチン、スクラロース、アスパルテーム、レバウディオサイドA、及びモグロシドVからなる群より選択される1種以上である、請求項1又は2に記載の機能性羅漢果エキス用マスキング剤。
【請求項4】
機能性羅漢果エキス及び高甘味度甘味料を含有する組成物。
【請求項5】
さらに、有機酸を含有する請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
機能性羅漢果エキスに高甘味度甘味料を配合することによる、機能性羅漢果エキスのマスキング方法。
【請求項7】
機能性羅漢果エキスに高甘味度甘味料及び有機酸を配合することによる、機能性羅漢果エキスのマスキング方法。
【請求項8】
機能性羅漢果エキス1質量部に対して、0.1~15質量部の高甘味度甘味料と0.1~10質量部の有機酸を配合する、請求項7に記載の機能性羅漢果エキスのマスキング方法。
【請求項9】
前記有機酸が、アスコルビン酸、クエン酸、及びリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項7又は8に記載の機能性羅漢果エキスのマスキング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性羅漢果エキスを含有する組成物、機能性羅漢果エキスのマスキング剤及びマスキング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モグロールは、羅漢果に含まれる機能成分の一種であり、モグロシドとして知られているトリテルペン配糖体のファミリーのアグリコンである。モグロシドは、羅漢果の果実から単離され、天然甘味料として商業的に使用されている。
【0003】
一方で羅漢果は、甘味料以外にも、咳止め、熱冷まし、炎症の緩和などの効果や妊娠期間中や産後の体力が衰えた時の滋養強壮に優れており、漢方薬としても利用されている。
【0004】
近年、羅漢果エキスの伝統的な漢方薬としての効果に注目が集まり、羅漢果に含まれる微量成分の研究が進んだ結果、モグロールに様々な健康増進効果:肥満抑制作用(非特許文献1)、抗がん作用(非特許文献2)があることが明らかとなった。
【0005】
しかしながら、モグロールは羅漢果中に0.0003%しか含有されず、抽出・精製して食品原料として利用することは、コストの高騰と、生産過程の複雑化の観点から商業化は困難である。
【0006】
モグロールを調製する方法としては、羅漢果中の甘味成分であるモグロシドを加水分解する方法がある。例えば、モグロール配糖体を塩酸中で、95~100℃で10時間加熱し、酸加水分解する方法が開示されている(非特許文献1)。
【0007】
その他に、モグロール化合物を酵素で加水分解する方法が知られている(特許文献1)。この方法では、具体的には、Aspergillus niger由来のペクチナーゼを加えて50℃、48時間反応させる。
【0008】
このように酸または酵素を用いた加水分解によってモグロシドからモグロールを抽出すると、モグロールを主成分(乾燥ベースで10~40質量%程度)とする羅漢果エキスを調製することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO2013/076577
【特許文献2】特開2005-278467号公報
【0010】
【非特許文献1】PLoS One. Sep 1;11(9):e0162252,2016
【非特許文献2】Am. J. Cancer Res.5(4),1308-1318,2015
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
羅漢果エキスには、モグロシド以外にもグルコースやフルクトースなどの糖類、糖質、タンパク質、アミノ酸、有機酸、食物繊維、ミネラル類、ポリフェノールなどその他の微量成分が含まれている。色調は、茶褐色~黒褐色であり、性状は液状、ペースト状、粉末状が存在し、味質は甘味、苦味、渋味、えぐみが複雑に混ざり、風味は羅漢果独特の臭気と、カラメルのような臭気を呈する。一方、モグロールを主成分とする羅漢果エキス(以下、機能性羅漢果エキス)は、従来の羅漢果エキスに存在した甘味やカラメル様の香気が減弱し、苦味、渋味、えぐみが増強した不快感の強い味質を示すようになる。このため、食品へ利用する際は用途が非常に限定され、食品原料としては使いづらいものであった。
【0012】
本発明は、機能性羅漢果エキスを含有し、特有の苦味、又は渋味やえぐみなどの嫌悪味がマスキングされた組成物及びマスキング剤及びマスキング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、高甘味度甘味料を添加することにより、機能性羅漢果エキス特有の苦味と、渋味やえぐみなどの嫌悪味を低減できることを見出した。
【0014】
すなわち、本発明は下記に揚げる組成物、マスキング剤、及びマスキング方法に関するものである。
項1.
高甘味度甘味料を含有する、機能性羅漢果エキス用マスキング剤。
項2.
さらに、有機酸を含有する、項1に記載の機能性羅漢果エキス用マスキング剤。
項3.
前記高甘味度甘味料が、ソーマチン、スクラロース、アスパルテーム、レバウディオサイドA、及びモグロシドVからなる群より選択される1種以上である、項1又は2に記載の機能性羅漢果エキス用マスキング剤。
項4.
機能性羅漢果エキス及び高甘味度甘味料を含有する組成物。
項5.
さらに、有機酸を含有する項4に記載の組成物。
項6.
機能性羅漢果エキスに高甘味度甘味料を配合することによる、機能性羅漢果エキスのマスキング方法。
項7.
機能性羅漢果エキスに高甘味度甘味料及び有機酸を配合することによる、機能性羅漢果エキスのマスキング方法。
項8.
機能性羅漢果エキス1質量部に対して、0.1~15質量部の高甘味度甘味料と0.1~10質量部の有機酸を配合する、項7に記載の機能性羅漢果エキスのマスキング方法。
項9.
前記有機酸が、アスコルビン酸、クエン酸、及びリンゴ酸からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項7又は8に記載の機能性羅漢果エキスのマスキング方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、機能性羅漢果エキス特有の苦味と嫌悪味をマスキング又は低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、高甘味度甘味料を含有する、機能性羅漢果エキス用マスキング剤、機能性羅漢果エキス及び高甘味度甘味料を含有する組成物、機能性羅漢果エキスに高甘味度甘味料を配合することによる、機能性羅漢果エキスのマスキング方法に関する。
【0017】
[定義]
本明細書中、「モグロール」とは、(24R)-ククルビタ-5-エン-3β,11α,24,25-テトラオールであり、下記に示す構造式に示される化合物を指す。
【0018】
【0019】
本明細書中、「機能性羅漢果エキス」とは、羅漢果植物体から得られるエキス又はそれから派生して得られるエキスのうち、モグロールを少なくとも10質量%、好ましくは20質量%以上含むエキスをいう。すなわち、機能性羅漢果エキス中のモグロールの含有量は、機能性羅漢果エキス中の固体成分中、10~40質量%、好ましくは20~35質量%程度である。「機能性羅漢果エキス」中のモグロシドVの含有量は0.1質量%未満であり、好ましくは、0.01質量%以下である。
【0020】
羅漢果植物体から得られるエキスは、羅漢果植物体中のいかなる部位から抽出、加工、精製してもよく、果実、茎、葉、球根、根茎、種子などの部位が挙げられるが、特に好ましくは、果実から得られるものである。ここで、「羅漢果エキス(Monk Fruit Extract)」とは、羅漢果の抽出物の総称であり、液体、半固体、固体などの形態がある。好ましくは、粉末状などの固体である。溶媒以外の成分が100%羅漢果由来であるものを指す。抽出する際の溶媒としては水、メタノール、エタノール、二酸化炭素などが例示され、特に制限されない。また、「羅漢果エキス」の狭義の意味の位置づけとして、「ラカンカ抽出物(Luohanguo Extract)」という、日本国の食品添加物公定書に記載の規格を満たした羅漢果抽出物がある。本発明の羅漢果エキスは、このような規定を満たした羅漢果エキスを含むが、これには限定されない。
【0021】
本発明の機能性羅漢果エキスを使用する場合の形態は、液状、半固体、固体のいずれであってもよい。固体である場合には、粉末又は顆粒の形態であり得る。
【0022】
機能性羅漢果エキスの製造方法として、具体的には、以下の方法がある。
例えば、上述の羅漢果エキスを加水分解処理して、エキス中に含まれるモグロシドをモグロールに変換する方法が挙げられるがこれに限定はされない。加水分解処理は、例えば、酸加水分解、酵素加水分解、加熱熱水抽出法のいずれでも良い。カラム精製は必ずしも行う必要はなく、酵素法であれば、後処理として、煮沸処理で反応を停止させ、冷却後に10分間遠心分離(20,000G)した上清をフィルターろ過により、酵素成分を除去する方法を採用することができる。酸分解法であれば、後処理として、水酸化ナトリウム水溶液で中和する方法を採用することができる。これらの工程の後に、さらに、スプレードライ法や凍結乾燥法などの粉末化技術やロータリーエバポレータなどの濃縮技術により、固体または液体といった形態として混合物中にモグロールを多く含む機能性羅漢果エキスを得ることができる。
【0023】
本明細書中、「高甘味度甘味料」とは、スクラロース(甘味度:約600倍)、アセスルファムカリウム(甘味度:約150~200倍)、アスパルテーム(甘味度:約200倍)、ネオテーム(甘味度:約7000~13000倍)、アドバンテーム(甘味度:約20000~40000倍)、サッカリン(甘味度:約300倍)、ステビア抽出物(甘味度:約150~450倍)、ステビオサイド(甘味度:約300倍)、レバウディオサイドA(甘味度:約450倍)、ラカンカ抽出物(甘味度:約150~300倍)、モグロシドV(甘味度:約378倍)やシアメノサイドI(甘味度:約465倍)、モグロシドIV(甘味度:約300倍)、ソーマチン(甘味度:約3000~8000倍)、カンゾウ抽出物(甘味度:約150~200倍)、モネリン(甘味度:約3000倍)及びモナチン(甘味度:約800~1400倍)からなる群より選択される1種又は2種以上を指す。各高甘味度甘味料は商業的に入手することができる。具体的には、三栄源エフ・エフ・アイのサンスイートやサンナチュレ等を挙げることができる。また、植物由来の高甘味度甘味料であるステビア抽出物を例として挙げると、原料となるステビア中には、ステビオサイドやレバウディオサイドAなど複数の甘味性化合物を有する場合があり、このような植物由来の抽出物をそのまま使用しても、各成分単独を使用しても良い。
【0024】
このうち、好ましいのは、ソーマチン、スクラロース、アスパルテーム、モグロシドV、レバウディオサイドA、ステビア抽出物、及びラカンカ抽出物からなる群より選択される1種以上である。
【0025】
本明細書中、「有機酸」とは、クエン酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、乳酸、クロロゲン酸、酢酸、グルコン酸(グルコノデルタラクトンを含む)、アジピン酸、ソルビン酸、プロピオン酸、コハク酸、酒石酸及びフマル酸からなる群から選択される1種又は2種以上を指す。
【0026】
本明細書中、機能性羅漢果エキスの質量%又は質量部は、機能性羅漢果エキスの固体成分全量中にモグロール25質量%が含まれる場合を基準として、エキスの固体成分全量の値を指す。但し、「機能性羅漢果エキス」におけるモグロールの含有量は、少なくとも10質量%以上であれば、特に限定はされない。
【0027】
本明細書中、高甘味度甘味料等、甘味料の質量%又は質量部は、甘味料の化合物純分を基準とする。また、「機能性羅漢果エキス」に含まれている高甘味度甘味料を除き、配合する高甘味度甘味料の量を指す。
【0028】
本明細書中、有機酸の質量%又は質量部は、機能性羅漢果エキスに含まれ得る有機酸を除き、配合する有機酸の量を指す。
【0029】
[機能性羅漢果エキス用マスキング剤]
本発明の機能性羅漢果エキス用マスキング剤は、高甘味度甘味料を含有する。
【0030】
機能性羅漢果エキスの味をマスキング又は低減するために使用される高甘味度甘味料の量は、機能性羅漢果エキス(定義の通り、モグロールを25質量%含むエキス基準、以下同じ)1質量部に対して、高甘味度甘味料として好ましくは、0.1~15質量部、より好ましくは0.3~10質量部、さらに好ましくは0.5~10質量部である。
【0031】
機能性羅漢果エキスの味をマスキング又は低減するために使用される高甘味度甘味料の量は、機能性羅漢果エキス中のモグロール1質量部に対しては、好ましくは、0.4~60質量部、より好ましくは、1.2~40質量部、さらに好ましくは2~40質量部の割合である。ここで、例えば、スクラロース、アスパルテーム、又はモグロシドVは、機能性羅漢果エキス中のモグロール1質量部に対して10~40質量部、レバウディオサイドAは、5~15質量部が特に好ましい範囲である。ソーマチンに関しては、機能性羅漢果エキス中のモグロール1質量部に対して、好ましくは0.1~15質量部、より好ましくは0.2~10質量部、さらに好ましくは0.4~8質量部、特に好ましくは3~6質量部である。
【0032】
本発明の機能性羅漢果エキス用マスキング剤は、任意に、有機酸を含有し得る。機能性羅漢果エキスの味をマスキング又は低減するために使用される有機酸の量は、機能性羅漢果エキス1質量部に対して、有機酸を有機酸換算として、好ましくは0.1~5質量部、より好ましくは0.2~2質量部、さらに好ましくは0.4~2質量部である。また、有機酸又はその塩を併用する場合に、機能性羅漢果エキスの味をマスキング又は低減するために使用される高甘味度甘味料の量は、機能性羅漢果エキス1質量部に対して、高甘味度甘味料として好ましくは、0.1~10質量部、より好ましくは0.3~5質量部、さらに好ましくは0.5~5質量部程度とすることも可能である。
【0033】
機能性羅漢果エキスの味をマスキング又は低減するために使用される有機酸の量は、有機酸としてアスコルビン酸、クエン酸、リンゴ酸等を使用する場合、機能性羅漢果エキス1質量部あたり、有機酸の含有量として、0.1質量部以上の範囲を例示することができる。好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上を例示することができる。
【0034】
有機酸を併用する場合の高甘味度甘味料の量は、機能性羅漢果エキス中のモグロール1質量部に対しては、好ましくは、0.4~40質量部、より好ましくは、1.2~20質量部、さらに好ましくは2~20質量部の割合である。ここで、例えば、スクラロース、アスパルテーム、又はモグロシドVは、機能性羅漢果エキス中のモグロール1質量部に対して5~20質量部、レバウディオサイドAは、3~10質量部が特に好ましい範囲である。ソーマチンに関しては、機能性羅漢果エキス中のモグロール1質量部に対して、好ましくは0.1~15質量部、より好ましくは0.2~10質量部、さらに好ましくは0.4~8質量部、特に好ましくは3~6質量部である。
【0035】
(マスキング剤の形態)
本発明のマスキング剤の形態は、液状、半固体、固体のいずれであってもよい。固体である場合には、粉末又は顆粒の形態であり得る。
【0036】
(その他の成分)
本発明のマスキング剤は、高甘味度甘味料の他に、任意に、その他の成分を含有することができる。ここで、その他の成分には、限定はされないが、賦形剤や希釈剤も含まれる。
【0037】
[機能性羅漢果エキス及び高甘味度甘味料を含有する組成物]
本発明の組成物は、機能性羅漢果エキス及び高甘味度甘味料を含有する。
【0038】
組成物中における機能性羅漢果エキスの含有量は、好ましくは、0.1質量%~10質量%、より好ましくは、0.2質量%~5質量%、さらに好ましくは、0.5質量%~2質量である。
【0039】
組成物中における高甘味度甘味料の総含有量は、化合物純分基準で、好ましくは、0.01質量%~10質量%、より好ましくは、0.05質量%~5質量%、さらに好ましくは、0.1質量%~3質量である。
【0040】
組成物中における高甘味度甘味料の総含有量は、機能性羅漢果エキスの固体成分量1質量部に対して、高甘味度甘味料として、好ましくは、0.1~15質量部、より好ましくは0.3~10質量部、さらに好ましくは0.5~10質量部の割合である。機能性羅漢果エキス中のモグロール1質量部に対しては、好ましくは、0.4~60質量部、より好ましくは、1.2~40質量部、さらに好ましくは2~40質量部の割合である。ここで、例えば、スクラロース、アスパルテーム、又はモグロシドVは、機能性羅漢果エキス中のモグロール1質量部に対して10~40質量部、レバウディオサイドAは、5~15質量部が特に好ましい範囲である。ソーマチンに関しては、機能性羅漢果エキス中のモグロール1質量部に対して、好ましくは0.1~15質量部、より好ましくは0.2~10質量部、さらに好ましくは0.4~8質量部、特に好ましくは3~6質量部である。
【0041】
本発明の組成物は、本発明の効果を妨げない限り、機能性羅漢果エキス及び高甘味度甘味料の他に、任意に、有機酸を含んでいても良い。
【0042】
組成物中における有機酸の総含有量は、有機酸基準で、好ましくは、0.01質量%~5質量%、より好ましくは、0.05質量%~2質量%、さらに好ましくは、0.1質量%~1質量である。
【0043】
組成物中における有機酸の量は、機能性羅漢果エキスの固体成分量1質量部に対して、有機酸として、好ましくは、0.1~10質量部、より好ましくは0.3~5質量部、さらに好ましくは0.5~2質量部の割合である。また、有機酸を併用する場合に、高甘味度甘味料の量は、機能性羅漢果エキス1質量部に対して、高甘味度甘味料として好ましくは、0.1~10質量部、より好ましくは0.3~5質量部、さらに好ましくは0.5~5質量部程度とすることも可能である。
【0044】
有機酸を併用する場合の高甘味度甘味料の量は、機能性羅漢果エキス中のモグロール1質量部に対しては、好ましくは、0.4~40質量部、より好ましくは、1.2~20質量部、さらに好ましくは2~20質量部の割合である。ここで、例えば、スクラロース、アスパルテーム、又はモグロシドVは、機能性羅漢果エキス中のモグロール1質量部に対して5~20質量部、レバウディオサイドAは、3~10質量部が特に好ましい範囲である。ソーマチンに関しては、機能性羅漢果エキス中のモグロール1質量部に対して、好ましくは0.1~15質量部、より好ましくは0.2~10質量部、さらに好ましくは0.4~8質量部、特に好ましくは3~6質量部である。
【0045】
さらに、本発明の組成物は、任意に補助甘味成分やその他の成分を含有し得る。ここで、その他の成分には、限定はされないが、賦形剤や希釈剤も含まれる。
【0046】
ここで補助甘味成分とは、甘味を有する又は甘味料の甘味強度及び甘味質を調整する成分を意味し、例えば単糖、二糖、オリゴ糖、及び糖アルコールなどの糖質系甘味料;及び食物繊維を挙げることができる。
【0047】
糖質系甘味料のうち、単糖としては、果糖、ブドウ糖、キシロース、ソルボース、ガラクトース、及び異性化糖などが挙げられる。二糖としては、麦芽糖、乳糖、トレハロース、ショ糖、異性化乳糖、及びパラチノースなどが挙げられる。オリゴ糖としては、キシロオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ダイズオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ラクトスクロース、ガラクトオリゴ糖、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖、シュクロオリゴ糖、テアンオリゴ糖、及び海藻オリゴ糖などが挙げられる。糖アルコールとしては、マルチトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、及びパラチニットなどが挙げられる。
【0048】
食物繊維としては、ペクチン、グア豆酵素分解物、グルコマンナン、βグルカン、ポリデキストロース、イヌリン、アガロース、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、フコイダン、ポルフィラン、ラミナラン、及び難消化性デキストリン等の水溶性食物繊維;及びセルロース、ヘミセルロース、リグニン、キチン、及びキトサン等の不溶性食物繊維を挙げることができる。好ましくは水溶性食物繊維である。
【0049】
本発明の組成物が、補助甘味成分を含有するものである場合、組成物に含まれる補助甘味成分の含有量としては0.01質量%~99.99質量%、好ましくは0.1質量%~99.9質量%、より好ましくは1質量%~99質量%さらに好ましくは5質量%~95質量%程度であり得る。
【0050】
本発明の組成物は、前述するように、本発明の機能性羅漢果エキス及び高甘味度甘味料を含むか、もしくは、有機酸や補助甘味成分を含有するものであり、安全性が高く、味質が良好である。このため、さらに、飲食品組成物又は医薬組成物(医薬品、医薬部外品)として好適に使用することもできる。
【0051】
(飲食品組成物)
本発明の組成物は、飲食品組成物であり得る。
【0052】
本発明の飲食品組成物は、加熱料理、洋菓子類、和菓子類、飲料類(清涼飲料水、アルコール飲料を含む)、乳製品、調味料などの飲食品組成物であっても良い。飲食品組成物としては、一般的な飲食品の他に、健康食品、特別用途食品(特定保健用食品)なども含む。本発明の組成物は、例えば、機能性食品などのサプリメントであってもよい。
【0053】
本発明の飲食品組成物は、当該分野で通常使用される飲食品原料をさらに含み得る。飲食品原料の例としては、肉エキス、黒酢エキス、ゼラチン、コーンスターチ、蜂蜜、動植物油脂、多糖類、穀物、野菜、果菜、果物、肉、卵、乳製品、海藻など及びそれらの加工品が挙げられる。本発明の組成物は、これらの食品原料を単独種又は複数種含み得る。
【0054】
本発明の飲食品組成物は、上記の食品原料に加えて、潤沢剤、乳化剤、懸濁化剤、酸化防止剤、防腐剤、及び香味剤などの成分の1種以上をさらに含み得る。また、水溶性ビタミン類及び油溶性ビタミン類などを含む他の成分をさらに含んでいてもよい。
【0055】
本発明の飲食品組成物は、当該分野で周知の方法によって製造される。例えば、作用を有する機能性羅漢果エキスを製造する方法に追加して連続して製造してもよいし、作用を有する機能性羅漢果エキスを添加する工程を包含する方法によって製造してもよい。
【0056】
本発明の飲食品組成物は、脂肪が気になる健常者を対象とした機能性食品とすることもできる。すなわち、食事に含まれる脂肪に働き、食後に上がる中性脂肪を抑える作用を有する機能を表示する飲食品として提供することも可能である。脂肪の多い食事を摂りがちな対象者、食後に上がる中性脂肪が気になる対象者に適した食品とすることもできる。
【0057】
(医薬組成物)
本発明の組成物は、医薬組成物であり得る。機能性羅漢果エキスを医薬組成物の有効成分として調製することができる他、機能性羅漢果エキスと別の有効成分と共に用いることもできる。医薬組成物は、薬学的に許容される原材料をさらに含み得る。例としては、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、珪酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体、トラガカント、ゼラチン、シロップ、ヒドロキシ安息香酸メチル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、水、鉱油などが挙げられる。本発明の医薬組成物は、これらの原材料を単独種又は複数種含み得る。
【0058】
本発明の医薬組成物は、潤沢剤、乳化剤、懸濁化剤、酸化防止剤、防腐剤、及び香味剤など、ならびに水溶性ビタミン類及び油溶性ビタミン類などを含む他の成分の1種以上を含み得る。
【0059】
本発明の医薬組成物の形態は、特に限定されない。本発明の医薬組成物の形態の例としては、錠剤、丸剤、粉剤、シロップ剤、乳濁剤、液剤、懸濁剤、ゼラチンカプセル剤などの経口組成物の形態;スプレー剤などの形態を挙げることができる。スプレー剤などの形態の医薬組成物は、鼻内などの経路によっても投与し得る。経口組成物としては、様々な疾患治療又は予防用の経口組成物の医薬組成物であり得る。
【0060】
本発明の医薬品組成物は、脂肪細胞への脂質蓄積抑制剤として、抗肥満剤とすることができる。
【0061】
[機能性羅漢果エキスのマスキング方法]
本発明はまた、高甘味度甘味料を機能性羅漢果エキスに配合することで、機能性羅漢果エキスの特有の苦味又は嫌悪味をマスキングする方法を包含する。嫌悪味には、えぐみや渋味が含まれる。本発明のマスキング方法において、各成分とそれらの含有量等、その他の成分とそれらの含有量については、前記マスキング剤又は組成物で記載した内容に準じる。
【実施例0062】
以下、本発明の内容を以下の実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0063】
(試料調製)
機能性羅漢果エキスを作製した。3mol/Lの塩酸と100%エタノールを1:2の割合で混合したエタノール濃度が67%の1mol/Lの塩酸100mLに、熱水抽出法で得られた、モグロシドVを約50質量%含有するラカンカ抽出物10gを溶解させ、80~90℃で1~6時間反応させた。冷却中和し、溶媒のエタノール濃度が20~30%程度になるまで蒸留水で希釈し、機能性羅漢果エキスを沈殿させ、濾過により回収した。回収した機能性羅漢果エキスを105℃で乾燥させ、粉末化した。この粉末化した物質を、高速液体クロマトグラフィーで分析した結果、モグロールを主成分(25質量%)とする機能性羅漢果エキスであることが分かった。モグロシドVは0.001質量%未満であった。この方法で得られた機能性羅漢果エキスは3.5gであった。
【0064】
ここで、モグロールの測定法は以下の通りである。
機能性羅漢果エキス中に含まれるモグロールの量は、以下に示す条件で高速液体クロマトグラフィーを用いて測定することができる。
HPLC機種名 Prominence LC-20AD(株式会社島津製作所製)
カラム Kaseisorb LC ODS 2000(東京化成株式会社製)
150mm×4.6mmI.D.
LC条件
試料注入量 0.02mL
カラム温度 40 ℃
移動相 60 %アセトニトリル水溶液
流量 1.0 ml/min
検出波長 203 nm
【0065】
ここで、モグロシドVの測定法は以下の通りである。
機能性羅漢果エキス中に含まれるモグロシドVの量は、以下に示す条件で高速液体クロマトグラフィーを用いて測定することができる。
HPLC機種名 Prominence LC-20AD(株式会社島津製作所製)
カラム Shodex Asahipak NH2-50 4E(昭和電工株式会社製)
250mm×4.6mmI.D.
LC条件
試料注入量 0.02mL
カラム温度 40 ℃
移動相 74%アセトニトリル水溶液
流量 1.0 ml/min
検出波長 203 nm
【0066】
(高甘味度甘味料)
実施例で使用した高甘味度甘味料は、以下の製品である。
【0067】
【0068】
なお、以下のすべての官能試験では、熟練したパネリスト5名による評価を行っている。その前提条件としては、評価者の経験と共に、当日の体調を考慮し、体調不良者は除いた。次に、甘味濃度試験を行った。すなわち、ショ糖を5種(0~0.1質量%)の濃度で溶解し、順位法により評価してもらい、順位が全て正しい者と3つ正しい者までを官能試験のパネリストとして選択した。さらに、パネリスト間で評価基準にばらつきが生じないように、各比較例で嫌悪味を確認した。
【0069】
(参考例1)
参考例で使用した甘味料又は炭水化物は、以下の製品である。
【表2】
【0070】
機能性羅漢果エキス特有の苦味と嫌悪味について、低甘味度甘味料又は炭水化物によりマスキングが可能かを検討した。マスキングを検討する際は、モグロール1質量部に対する各甘味料の化合物の純分を基準として添加した。
【0071】
官能評価の方法としては、機能性羅漢果エキスの摂取量を固定し、各甘味料の添加量を変化させて試験を行った。さらに、機能性羅漢果エキスと各甘味料の混合物をそのまま摂取する手法よりも、50mLの飲料水に溶解・分散させてから摂取することで官能評価における偏りを低減させることができる。味質の評価は、機能性羅漢果エキスに表2の参考例1~23をそれぞれの濃度で混合し、パネリスト5名を対象とした。官能評価のパネリスト5名は、コントロールとして機能性羅漢果エキス特有の嫌悪味を確認した後、参考例1~23のマスキング効果を次の基準で評価した。その結果を表に示す。
×:マスキング効果なし(嫌悪味を強く感じて不快)
△:ほぼマスキング効果なし(多少は低減されているが、嫌悪味を強く感じて不快)
○:ややマスキング効果があり(嫌悪味が低減され、弱く感じるが、不快ではない)
◎:マスキング効果があり(嫌悪味が非常に低減されており、ほぼ感じない)
【0072】
【0073】
【0074】
これらの試験の結果、表3及び4に示す通り、モグロール1質量部に対して炭水化物を400質量部添加することで、マスキング効果を得ることができる場合もあった。βシクロデキストリンとγシクロデキストリンは、ショ糖よりも甘味強度が低いがある程度のマスキング効果が得られた。
【0075】
上記で検討した甘味料に代表される炭水化物と機能性羅漢果エキスの組み合わせによって甘味質改善、風味改善、粘度改善、溶解性改善、色調改善する付加効果は認められなかった。
【0076】
(実施例1)
以下の表5に示す質量部の組み合わせで、総量が100となるようにエリスリトールで調製した。
【0077】
パネリスト5名が、機能性羅漢果エキス特有の苦味や嫌悪味についてマスキング効果があるかないかを判定した。マスキング効果があると答えた人数が0~2名である場合を×、3~4名である場合を○、5名である場合を◎で判定した。官能評価の方法は、機能性羅漢果エキスと各甘味料の混合物を10%溶液となるように、50mLの飲料水に溶解・分散させてから摂取することで官能評価における偏りを低減するようにした。
【表5】
【0078】
比較例1のように機能性羅漢果エキスとエリスリトールのみでは、嫌悪味のマスキング効果がなかった。しかし、実施例1~24のようにモグロシドVやレバウディオサイドAを組み合わせて配合することでマスキング効果が得られた。このように高甘味度甘味料を配合することで、機能性羅漢果エキスの嫌悪味をマスキングすることが可能であることが判明した。
【0079】
機能性羅漢果エキスと少量の添加剤で機能性羅漢果エキスの嫌悪味のマスキングが可能な条件を検討するために、次の試験を行った。
機能性羅漢果エキスとして、0.05質量%水溶液を調製し、そこに表6のように各高甘味度甘味料とアスコルビン酸を添加し、マスキング溶液を調整した。各高甘味度甘味料の濃度は、モグロール1質量部あたり2質量部とし、各高甘味度甘味料の化合物純分が0.025質量%となるように添加した。有機酸であるアスコルビン酸は、0.02質量%で添加した。それぞれの溶液を熟練したパネリスト5名による官能評価に供した。
【0080】
機能性羅漢果エキス特有の嫌悪味のマスキングは、表6の比較例2-1を嫌悪味のコントロールとし、比較例2-1、及び実施例2-1~2-5の条件で嫌悪味のマスキング効果を評価した。マスキング効果の採点内容は以下の通りである。
1:効果なし
2:弱いが効果あり
3:効果あり
4:明確に効果あり
5:非常に効果あり
嫌悪味の抑制効果は以下の内容で評価した。
1:抑制できていない
2:少し抑制できている
3:抑制できている
4:明確に抑制できている
5:非常に抑制できている
また、それぞれマスキング剤として用いた甘味、酸味については次の基準で評価した。
1:味を感じない
2:弱いが感じる
3:味を感じる
4:明確に味を感じる
5:非常に味を感じる
それぞれの味質に対する総合評価(好き、嫌い)を次の基準で評価した。
-2:嫌い
-1:やや嫌い
0:特になし
1:やや好き
2:好き
【0081】
評価項目は、マスキング、嫌悪味の抑制、甘味、酸味と総合評価である。総合評価以外の4種は点数が上がるにつれて、効果や味質が強くなり、総合評価は0を基準とし、好みによって±に分類してもらった。
総合評価について:混合物の比率によってマスキング効果があっても味質としては不快に感じることがあるため、指標に入れた。
パネリスト5名の評価を平均した結果を表7に示した。
【0082】
【0083】
【0084】
表7の結果のように、比較例2-1の嫌悪味をマスキングするには、比較例2-2のようにアスコルビン酸のみではマスキングはできなかった。また、高甘味度甘味料とアスコルビン酸を共に添加すると、嫌悪味抑制の数値が2~3となり、嫌悪味の味質を低減し、マスキング効果を確認した(マスキング:3~4)。特に実施例2-2のようにアスパルテームをアスコルビン酸と共に添加すると、機能性羅漢果エキスの嫌悪味は明確に抑制され(嫌悪味抑制:3.8)、マスキング効果が高い(マスキング:3.6)ことが判明した。ただし、高甘味度甘味料の種類により、その効果には差異があった。このように高甘味度甘味料の種類によって、多少の差異が発生するものの、高甘味度甘味料やアスコルビン酸を配合しない比較例と比べると顕著な効果が得られた。なかでも、高甘味度甘味料の内、スクラロース、アスパルテーム、レバウディオサイドA、モグロシドVは、アスコルビン酸と共に添加することで、機能性羅漢果エキスの嫌悪味を顕著に低減することが出来ることが判明した。
【0085】
(実施例3)
機能性羅漢果エキスとして0.05質量%水溶液を調製し、そこに表8のようにモグロシドVとアスコルビン酸を添加し、マスキング溶液を調製した。それぞれの溶液を5名のパネリストの官能評価に供し、機能性羅漢果エキス特有の嫌悪味のマスキングについて評価した。評価方法は、実施例2と同様に行った。そのパネリスト5名の評価の平均の結果を表9に示した。
【0086】
【0087】
【0088】
表9の結果のように、比較例3-1の嫌悪味をマスキングするには、比較例3-2のように、アスコルビン酸のみでマスキング効果は発揮されなかった。モグロール1質量部に対して20質量部のモグロシドVを添加することで、マスキング効果は見られた。
この結果から、比較例の条件では、機能性羅漢果エキスの嫌悪味を低減し、食品として利用するには十分でないことが判明した。実施例では、マスキング効果の数値が高く、機能性羅漢果エキスの嫌悪味をマスキングし、なおかつ総合評価の数値が0に近い値となり、不快な味質ではないことが明らかになった。特に、モグロシドVとアスコルビン酸を共に添加することで、機能性羅漢果エキスの嫌悪味を低減の効果が顕著であった。
【0089】
(実施例4)
機能性羅漢果エキスとして0.05質量%水溶液を調製し、そこにモグロシドVとクエン酸の量を変えて添加し、表のようにマスキング溶液を調製した。それぞれの溶液を5名のパネリストによる官能評価に供し、機能性羅漢果エキス特有の嫌悪味のマスキングについて評価した。評価方法は、実施例2と同様に行い、そのパネリスト5名の評価の平均した結果を表10に示した。
【0090】
【0091】
【0092】
表11の結果のように、比較例4-1の嫌悪味をマスキングするため、アスコルビン酸の代わりに、高濃度のクエン酸のみで嫌悪味のマスキング効果を確認しても、嫌悪味のマスキング効果は高くはなかった。また、酸味も数値が5と非常に強く、総合評価の数値は-1.8と不快な味質となった。そのため、クエン酸のみでは嫌悪味のマスキングはできないことを確認した。しかし、モグロシドV単独では、総合評価として優れており、バランスの良い味質となることがわかった。さらに他の実施例のように、モグロシドVとクエン酸両方を共に添加することで、機能性羅漢果エキスの嫌悪味は低減し、総合評価の数値も良好となった。特に実施例4-3の条件は、マスキング効果の数値が3.8となり、総合評価も極めて優れていた。すなわち、この条件では、機能性羅漢果エキスの嫌悪味をマスキングし、なおかつ不快な味質ではなくなる顕著な効果が得られた。また、アスコルビン酸と比較してクエン酸の方は添加量が半分程度で、嫌悪味のマスキング補助効果があることを確認した。
【0093】
(実施例5)
機能性羅漢果エキスは0.05質量%水溶液を調製し、そこにモグロシドVとリンゴ酸の量を変えて添加し、表12のようにマスキング溶液を調製した。それぞれの溶液を5名のパネリストによる官能評価に供した。評価方法は実施例2と同様に行い、そのパネリスト5名の評価の平均結果を表13に示した。
【0094】
【0095】
【0096】
表13の結果のように、比較例5-1の嫌悪味をマスキングするため、リンゴ酸のみで嫌悪味のマスキング効果を確認すると、若干のマスキング効果を確認したが、酸味の数値が強く、総合評価の数値が良くなかった。そのため、リンゴ酸のみでは嫌悪味のマスキングには十分でないことを確認した。しかし、実施例のように、モグロシドV単独又はモグロシドVとリンゴ酸両方を共に添加することで、機能性羅漢果エキスの嫌悪味は低減し、総合評価の数値も良好となった。特に実施例5-3の条件は、マスキング効果の数値が3.6となり、かつ総合評価も非常に良好であった。従って、機能性羅漢果エキスの嫌悪味をマスキングし、なおかつ不快な味質ではなくなる顕著な効果が得られた。
【0097】
(実施例6~8)
機能性羅漢果エキスとして0.05質量%水溶液を調製し、そこに、各種高甘味度甘味料を濃度違いで添加し、マスキング溶液を調製した。それぞれの溶液を5名のパネリストによる官能評価に供した。評価方法は実施例2と同様に行い、そのパネリスト5名の評価の平均結果を表に示した。
以下の表14の高甘味度甘味料の濃度は、いずれも0.125質量%であった。
【0098】
【0099】
以下の表15の高甘味度甘味料の濃度は、いずれも0.25質量%であった。
【0100】
【0101】
以下の表16の高甘味度甘味料の濃度は、いずれも0.5質量%であった。
【0102】
【0103】
実施例の結果から、高甘味度甘味料単独又は有機酸との併用により、機能性羅漢果エキスの嫌悪味を顕著に低減させることがわかった。高甘味度甘味料のうち、スクラロース、アスパルテーム、レバウディオサイドA、モグロシドVでは、単独でも、複数種類を使用しても、マスキング効果ができることを示唆している。有機酸として、アスコルビン酸、クエン酸、又はリンゴ酸を併用すると、単独でも、複数種類を使用しても、マスキング効果がさらに顕著になることがわかった。
【0104】
(実施例9)
機能性羅漢果エキス中のモグロールを1質量部に対して、ソーマチンを0.2~6部の割合になるように配合した。その結果を表17に示す。
【表17】
表に示すように、ソーマチンでも優れた機能性羅漢果エキス特有の嫌悪味をマスキングする効果が認められた。
【0105】
[組成物例]
下記の表18に示す処方に基づいて、本発明の機能性羅漢果エキスと高甘味度甘味料を含有する組成物を調製した。表中の数値は、質量%を意味する。
【0106】