(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139372
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】木質建材、建物用木質ユニット、建物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
E04C 3/18 20060101AFI20230927BHJP
E04C 5/08 20060101ALI20230927BHJP
E04C 5/10 20060101ALI20230927BHJP
E04B 1/10 20060101ALI20230927BHJP
E04B 1/26 20060101ALI20230927BHJP
E04B 1/30 20060101ALI20230927BHJP
E04G 21/12 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
E04C3/18
E04C5/08
E04C5/10
E04B1/10 Z
E04B1/26 F
E04B1/30 D
E04G21/12 104A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044869
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 嘉弘
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 諭司
【テーマコード(参考)】
2E163
2E164
【Fターム(参考)】
2E163DA02
2E163FC03
2E163FC35
2E163FC38
2E164AA01
2E164AA04
2E164AA31
2E164DA03
2E164DA12
2E164EA03
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、トラックやトレーラー等で移動可能な、パネルまたはユニットを建設現場で複数連結して作ることで移動可能な建物に用いられる木質建材を提供することにある。
【解決手段】複数の木質建材をプレストレス工法で連結して建物とするために用いられる木質建材であって、前記木質建材は、集成材、ならびに前記集成材の長手方向を貫通する繊維強化樹脂製補強材および前記集成材の長手方向を貫通する少なくとも2つの金属製中空管状補強材を含み、前記繊維強化樹脂製補強材は、その長手方向に配向した補強繊維およびマトリクス樹脂からなり、前記金属製中空管状補強材の少なくとも二つは、複数の木質建材をプレストレス工法で連結するために張力を掛けられた緊張材を収容するために用いられることを特徴とする、木質建材。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の木質建材をプレストレス工法で連結して建物とするために用いられる木質建材であって、前記木質建材は、集成材、ならびに前記集成材の長手方向を貫通する繊維強化樹脂製補強材および前記集成材の長手方向を貫通する少なくとも2つの金属製中空管状補強材を含み、前記繊維強化樹脂製補強材は、その長手方向に配向した補強繊維およびマトリクス樹脂からなり、前記金属製中空管状補強材の少なくとも二つは、複数の木質建材をプレストレス工法で連結するために張力を掛けられた緊張材を収容するために用いられることを特徴とする、木質建材。
【請求項2】
複数の木質ユニットをプレストレス工法で連結して建物とするために用いられる木質ユニットであって、前記木質ユニットは木質梁材および木質土台材を含み、前記木質梁材は、請求項1に記載の木質建材であり、前記木質土台材は、緊張材を収容するために用いられる長手方向を貫通する中空部を備える、建物用木質ユニット。
【請求項3】
請求項2に記載の建物用木質ユニットを少なくとも二つ含む建物であって、前記建物用木質ユニットの少なくとも二つは、前記建物用木質ユニットの木質梁材および/または木質土台材の中空部に配置され、張力を掛けられた緊張材によって連結されている、建物。
【請求項4】
請求項2に記載の建物用木質ユニットの少なくも二つを、前記建物用木質ユニットの木質梁材および/または木質土台材の中空部が連続するように配置する工程、前記建物用木質ユニットの木質梁材および/または木質土台材の中空部に緊張材を配置する工程、および前記緊張材に張力を掛けることで前記建物用木質ユニットの少なくとも二つを相互に接続した状態で固定する工程を含む、建物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質建材、建物用木質ユニット、建物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、木造建築において、工期短縮や建設現場での作業量低減、品質の安定化等を目的とした工法にユニット工法やパネル工法がある。ユニット工法は、工場で生産した建物の部屋単位等の箱型のユニットを現場で組み立てるプレハブ工法の一種であり、パネル工法は、工場で生産した建物の床や壁などの構造体をパネルにして現場で組み立てるプレハブ工法の一種である。また、木造軸組工法や板倉工法においても、工期短縮や低コスト化等を狙った木造システム建築構法が提案されている(例えば特許文献1)。
【0003】
しかしながら、これら工法は、木造住宅において普及している在来軸組工法よりも一般的に工期が短い等の特長があるものの、ユニット間やパネル間の連結は、建設現場でのボルト締め、釘打ち、接合金物や接着剤等によってなされるため、建設現場での更なる工期短縮や作業量の低減が望まれる。また、例えば仮設住宅等、基本的に短期での利用を目的とする場合において、組み立てられたユニットやパネルを分解して再利用することは容易ではない。
【0004】
また、移動が容易な移動式建屋が提案されている(例えば特許文献2)。特許文献2では、床体に移動用のキャスタを備え、基礎を用いずに重錘で建屋を固定することで、移動が容易な構造となっている。そのため、簡易的な構造となっており、一時的な店舗や住居として使用するには好適と考えられるが、地震時などに十分な安全性が確保されているとは言い難い。
【0005】
他方、補強材で補強された木質集成材がその物性を損なうことなく長手方向で接合された、剛性と強度に優れた長尺の木質建材が提案されている(例えば特許文献3)。特許文献3では、木質集成材を貫通する緊張材に張力を掛けることで、少なくとも二つの木質集成材を長手方向に接合する木質建材が提案されているが、当該木質建材を用いた、組み立て・分解・再利用が容易な建物については何ら示唆されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-190577号公報
【特許文献2】特開2014-37743号公報
【特許文献3】特開2020-133212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
生活様式の多様化や変化に伴い、近年では、必ずしも特定の土地に囚われない住まいが求められるようになってきている。これまで、トレーラーに積載できる大きさの建物を移動して用いるトレーラーハウスはあったが、トレーラーに積載できない大きさの建物でありながら、それを構成するユニットやパネルからの組み立て、分解、再利用および移動を容易に行うことができる、強度に優れた木造建物はなかった。
【0008】
本発明の課題は、トラックやトレーラー等で移動可能な、パネルまたはユニットを建設現場で複数連結して作ることで移動可能な建物に用いられる木質建材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明は、
(1) 複数の木質建材をプレストレス工法で連結して建物とするために用いられる木質建材であって、前記木質建材は、集成材、ならびに前記集成材の長手方向を貫通する繊維強化樹脂製補強材および前記集成材の長手方向を貫通する少なくとも2つの金属製中空管状補強材を含み、前記繊維強化樹脂製補強材は、その長手方向に配向した補強繊維およびマトリクス樹脂からなり、前記金属製中空管状補強材の少なくとも二つは、複数の木質建材をプレストレス工法で連結するために張力を掛けられた緊張材を収容するために用いられることを特徴とする、木質建材である。
【0010】
本発明はまた、
(2) 複数の木質ユニットをプレストレス工法で連結して建物とするために用いられる木質ユニットであって、前記木質ユニットは木質梁材および木質土台材を含み、前記木質梁材は、上記(1)に記載の木質建材であり、前記木質土台材は、緊張材を収容するために用いられる長手方向を貫通する中空部を備える、建物用木質ユニットである。
【0011】
本発明はまた、
(3) 上記(2)に記載の建物用木質ユニットを少なくとも二つ含む建物であって、前記建物用木質ユニットの少なくとも二つは、前記建物用木質ユニットの木質梁材および/または木質土台材の中空部に配置され、張力を掛けられた緊張材によって連結されている、建物である。
【0012】
本発明はさらに、
(4) 上記(2)に記載の建物用木質ユニットの少なくも二つを、前記建物用木質ユニットの木質梁材および/または木質土台材の中空部が連続するように配置する工程、前記建物用木質ユニットの木質梁材および/または木質土台材の中空部に緊張材を配置する工程、および前記緊張材に張力を掛けることで前記建物用木質ユニットの少なくとも二つを相互に接続した状態で固定する工程を含む、建物の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、トラックやトレーラー等で移動可能な、パネルまたはユニットを建設現場で複数連結して作ることで移動可能な建物に用いられる木質建材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
〔集成材〕
集成材は、木質材料片(木質ラミナ)を相互に接着剤で貼り合わせて構成された木質の材料であり、単一木材や、木材の繊維方向に長く切削加工した引き板または小角材を木質ラミナとして用い、それらの木質ラミナの繊維方向を互いに平行にして積層し、接着剤を用いて貼り合わせたものである。
【0017】
本発明においては、集成材を補強するために、集成材に、繊維強化樹脂製補強材および金属製中空管状補強材が内包されている。これら繊維強化樹脂製補強材および金属製中空管状補強材は、繊維強化樹脂製補強材および金属製中空管状補強材の長さ方向とラミナの繊維の長さ方向とが平行になるように配置されている。
【0018】
集成材における補強ラミナ(繊維強化樹脂製補強材を内包するラミナ)の長さ方向と、木質ラミナの木目方向は、繊維強化樹脂製補強材の繊維方向と一致していることが好ましい。すわなち、繊維強化樹脂製補強材と木質ラミナは、それぞれの繊維方向が平行となる向きに接着されていることが好ましい。本発明の木質建材の断面(木質建材の長手方向に直交する面、以下これを単に「断面」という)の一例を
図1に示す。
【0019】
〔繊維強化樹脂製補強材〕
繊維強化樹脂製補強材は、その長手方向に配向した補強繊維およびマトリクス樹脂からなる。補強繊維は、少なくともその一部、好ましくは全部がマトリクス樹脂に内包される。
【0020】
〔補強繊維〕
繊維強化樹脂製補強材を構成する補強繊維として、木材の補強に適した強度を有する繊維を用いる。本発明の木質建材は、その用途が建物を成り立たせるための部材であるため、火災時においても強度低下が起こらないことが好ましい。このため、補強繊維は、融点またはガラス転移温度が200℃以上である有機繊維であるか、無機繊維であることが好ましい。いずれも連続繊維であることが好ましい。
【0021】
補強繊維として、炭素繊維、芳香族ポリアミド繊維(アラミド繊維)、ポリアリレート繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサザール繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリイミド繊維、四フッ化エチレン繊維、ガラス繊維を例示することができ、好ましくは、炭素繊維、ガラス繊維または芳香族ポリアミド繊維を用いる。これらの補強繊維は単独で用いてもよく、二種類以上を用いてもよい。
補強繊維の中でも炭素繊維が特に好ましく、炭素繊維の中でもポリアクリロニトリル系繊維を焼成して得られるアクリルニトリル系の炭素繊維が最も好ましい。
【0022】
炭素繊維として、窒素含有率が0.1~15重量%、引張り強度2500~7000MPaかつ弾性率150~700GPaである炭素繊維が好ましく、窒素含有率が3~10重量%、引張り強度3500MPa以上かつ弾性率200~350GPaである炭素繊維が好ましい。
【0023】
炭素繊維は、マトリクス樹脂との接着強度の観点から、ESCA表面分析装置(島津製作所製)による炭素繊維表面の酸素/炭素比率が、好ましくは0.1/1~0.3/1、さらに好ましくは0.15/1~0.25/1である。
【0024】
また、マトリクス樹脂との接着性の観点から、補強繊維の直径は、好ましくは5~9μmである。補強繊維は、好ましくは繊維束である。この繊維束として、繊維束を構成する単糸の本数が1000~300000本である繊維束が好ましい。この繊維束は、所望の形状に拡幅されていてもよい。
【0025】
本発明において、補強繊維はマトリクス樹脂とともに繊維強化樹脂製補強材を構成している。繊維強化樹脂製補強材における補強繊維の形態は、一方向に繊維を引き揃えたUD基材やその2方向以上の組合せ、織物、不織布など様々な形態であることができ、必要とする強度に応じて設計することができる。
【0026】
補強繊維は、実際の性能とコストとのバランスの観点から、補強繊維を一方向に引き揃えたUD基材として用いることが好ましい。UD基材としては、引張強度や引張弾性率が高く、かつ耐熱性が高い炭素繊維を一方向に引き揃えたUD基材が好ましい。
【0027】
補強繊維は、繊維強化樹脂製補強材の長さ方向に配向したものであることが好ましい。そして、補強繊維は連続繊維であることが好ましい。そのような繊維形態を用いることによって、繊維による補強効果を、より効果的に発揮することができる。
【0028】
〔マトリクス樹脂〕
繊維強化樹脂製補強材を構成するマトリクス樹脂は、火災時において強度低下を引き起こさないために、熱硬化性樹脂であることが好ましい。
熱硬化性樹脂として、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂を例示することができる。中でも物性や加工性、最終的な木材との接着性の観点からビニルエステル樹脂が好ましい。
【0029】
〔繊維強化樹脂製補強材の物性〕
繊維強化樹脂製補強材における補強繊維とマトリクス樹脂との体積分率は、好ましくは40/60~60/40である。また、補強繊維の繊維強化樹脂製補強材における存在密度は、その長さ方向の断面において、好ましくは10,000~18,000本/mm2である。
【0030】
繊維強化樹脂製補強材は、木質建材の曲げ物性を補強する観点から、繊維方向への引張物性と圧縮物性のバランスが重要となる。他方、繊維強化樹脂製補強材により補強された木質建材が脆性破壊を起こさないようにする観点から、繊維強化樹脂製補強材として圧縮強度が引張強度より小さくいことが重要である。
【0031】
これらの観点から、繊維強化樹脂製補強材の引張強度は、好ましくは500~5,000MPa、さらに好ましくは1,000~4,500MPaである。圧縮強度は、好ましくは引張強度よりも低くかつ100~5,000N/mm、さらに好ましくは引張強度よりも低くかつ500~4,500N/mmである。
【0032】
〔繊維強化樹脂製補強材の断面形状〕
繊維強化樹脂製補強材の断面形状は、矩形であることが好ましい。これに対して、断面形状が円形であると、繊維強化樹脂製補強材と木質部分との間に隙間ができやすく、両者間の接着性が低下するため好ましくない。
【0033】
繊維強化樹脂製補強材は、中空の管状補強材であってもよい。この場合、中空部は一つの繊維強化樹脂製補強材につき、一つであってもよく、二つ以上であってもよい。中空とすることで、繊維強化樹脂製補強材の外寸を固定したまま、管状補強材の肉厚を変更することで、管状補強材の力学的性質を最適にコントロールすることができ、過剰に補強繊維やマトリクス樹脂を使用することを避け、繊維強化樹脂製補強材の重量を軽くすることができる。
【0034】
管状補強材の断面形状が矩形である場合、その断面の寸法は、好ましくは短辺の外寸が10~50mmかつ長辺の外寸が10~500mmであり、さらに好ましくは短辺の外寸が15~45mmかつ長辺の外寸が15~400mmである。管状補強材の短辺の外寸が集成材を構成する木質ラミナの厚さと同じであるか、それより小さいことが製造上好ましい。
【0035】
〔繊維強化樹脂製補強材の位置〕
本発明の木質建材における繊維強化樹脂製補強材の配置の態様は、木質建材の断面の中心から等距離の位置に繊維強化樹脂製補強材を複数本配置した態様であるか、木質集成材の中心に対して点対称に繊維強化樹脂製補強材を複数本配置した態様であることが好ましい。木質建材の断面の中心から等距離の位置に、繊維強化樹脂製補強材を、2本、4本または6本配置した態様であることが特に好ましい。
【0036】
木質建材の断面の中心から等距離の位置に配置することより、木質建材の剛性を効果的に向上させることができる。さらに断面二次モーメントの観点から木質建材における繊維強化樹脂製補強材の配置は、木質建材の上面と下面に近い位置であることが好ましく、この配置は、殊に梁として用いる場合に好ましい。また、木質建材の上方または下方から繊維強化樹脂製補強材が見えないようにするためには、繊維強化樹脂製補強材の配置は、木質建材の内側に配置することが好ましい。
【0037】
繊維強化樹脂製補強材の本数は、必要に応じて設計することができ、例えば、梁などのように木質建材の断面が上下方向に長い場合、木質建材の断面の中心から上方に1本、下方に1本の合計2本であってもよく、上方の1本および下方の1本のそれぞれを左右に並べた2本や3本に置き換えて配置してもよい。
【0038】
〔接着剤〕
繊維強化樹脂製補強材は、集成材の内部に一体化されている。この一体化は、接着剤によることが好ましい。接着剤として、エポキシ系接着剤やアクリル系接着剤など、木材とマトリクス樹脂とを接着できるものであれば任意のものを用いることができる。
【0039】
集成材の作製に使用される水溶性高分子-イソシアネート系接着剤やレゾルシノール系接着剤を使用することが、プロセスコストを低減するために好ましい。接着方法は、接着剤の反応に合わせて選定することができ、常温でプレスしてもよく、高周波で短時間に接着してもよい。より接着効果を高めるために、繊維強化樹脂製補強材の表面に凹凸をつけて、接着面積を高くしておくことも有用である。
【0040】
〔金属製中空管状補強材〕
金属製中空管状補強材は木質建材の内部に配置され、金属製中空管状補強材の内部には、それを貫通する緊張材が配置され、その緊張材に張力が掛けられ、金属製中空管状補強材の軸方向に圧縮力が掛けられる。
【0041】
このため、金属製中空管状補強材はその圧縮力に抵抗できる強度を備える素材からなる必要がある。したがって、金属製中空管状補強材の素材は、木質建材よりも圧縮に対する強度や剛性で優れた素材から選ばれる。素材として、鉄やアルミニウム、炭素鋼、ステンレス鋼を例示することができ、好ましくは炭素鋼、ステンレス鋼であり、特に好ましくは炭素鋼である。
【0042】
本発明の木質建材には、金属製中空管状補強材が少なくとも二つ含まれる。金属製中空管状補強材が一つしかないと、緊張材はその一箇所にしか存在しないため、緊張材へバランスよく、かつ強い張力を掛けることが難しい。
【0043】
そして、金属製中空管状補強材の少なくとも二つは、複数の木質建材をプレストレス工法で連結するために張力を掛けられた緊張材を収容するために用いられる。緊張材を収容するために用いられる金属製中空管状補強材が一つしかないと、緊張材はその一箇所にしか存在しないため、緊張材へバランスよく、かつ強い張力を掛けることが難しい。
【0044】
金属製中空管状補強材は、集成材を製造する工程において、金属製中空管状補強材を内包させる位置に相当する木質ラミナに予め金属製中空管状補強材を設置できるように溝または長孔を設けておき、木質ラミナを積層して貼り合わせる際にその溝または長孔に金属製中空管状体を挟み込む方法で、集成材に内包させることができる。
【0045】
積層後の集成材の長手方向の長孔に、金属製中空管状補強材を挿入することで内包させてもよい。この長孔は、集成材の製造後に作成してもよく、製造時に作成してもよい。金属製中空管状補強材は、木質建材に接着剤で接着されていてもよく、接着されていなくてもよい。
【0046】
〔金属製中空管状補強材の断面形状〕
金属製中空管状補強材に通した緊張材に張力がかけられた際に、金属製中空管状補強材がその圧縮力をもって張力に抵抗する観点からは、管状体の形状は矩形であっても円形であってもよい。木質建材の製造後に金属製中空管状補強材を木質建材の断面から挿入する場合には、管状体の形状は円形であることが好まししい。
【0047】
金属製中空管状補強材の管内の形状は任意である。例えば、外形が円形断面であり、管内(中空部)が矩形断面である場合、金属製中空管状補強材の肉厚を多く設計することができ、金属製中空管状補強材の圧縮強度を高くしたい場合に有効な手段となる。
【0048】
金属製中空管状補強材の外形が円形断面であり、管内(中空部)も円形断面であり両者が同心円である場合、金属製中空管状補強材の肉厚は、好ましくは1~10mm、さらに好ましくは2~5mmである。肉厚がこれより薄いと、金属製中空管状補強材の管内に通した緊張材に張力がかけられた際に、金属製中空管状補強材が座屈破壊を起こしてしまう可能性もあり、金属製中空管状補強材にかかる圧縮力に十分な抵抗力を発現できないことがあり、好ましくない。他方、これより厚いと金属製中空管状補強材に通す緊張材の太さに制限を与えてしまうか、それを避けるために金属製中空管状補強材自体を太くした場合には木質建材の重量を著しく大きくしてしまう可能性があり、好ましくない。
【0049】
〔金属製中空管状補強材の配置〕
木質建材における金属製中空管状補強材の配置の態様は、金属製中空管状補強材が木質建材の断面の中心から等距離の位置に複数本配置されている態様が好ましく、さらに断面の中心に対して点対称に金属製中空管状補強材が複数本配置されている態様が好ましい。これらの場合、断面の中心を外れた位置を、緊張材が通ることになる。
【0050】
特に、断面の中心から等距離の位置に管状材料を2本または4本を配置した態様が好ましい。中心から等距離の位置に金属製中空管状補強材を配置することより、金属製中空管状補強材の管内に通した緊張材に張力がかけられた際に断面に対して、より均一に圧縮力を付与することができる。
【0051】
金属製中空管状補強材は、繊維強化樹脂製補強材の断面二次モーメントを大きくする観点から、繊維強化樹脂性補強材よりも断面の中心に近い位置に配置されていることが好ましい。
【0052】
金属製中空管状補強材の本数は必要に応じ設計することができる。例えば、梁として用いる木質建材で断面が上下方向に長い場合には、断面の中心から上方に1本、下方に1本の合計2本であってもよく、上方の1本および下方の1本のそれぞれを左右または上下に並べた2本に置き換えて配置してもよい。木質建材の断面積と金属製中空管状補強材の断面積の兼ね合いで設計することができる。
【0053】
〔木質建材の連結〕
本発明の木質建材は、複数の木質建材がプレストレス工法で連結されて建物として用いられる。複数の木質建材をプレストレス工法で連結する方法として、一般的なプレストレスコンクリートの工法で使用されている方法を用いることができる。
【0054】
例えば、木質建材に内包される金属製中空管状補強材が長手方向に貫通している二つの木質建材を金属製中空管状補強材が同一線上に来るように配置し、木質建材の両端部に配置した金属プレートと金属製中空管状補強材の内部を緊張材が貫通するように通し、緊張定着装置を用いて緊張材に張力をかけた後、緊張材が緩まないように、くさび金物を取り付ける方法を用いることができる。
【0055】
〔緊張材〕
緊張材として、一般的なプレストレストコンクリートで使用されるPC鋼線やPC鋼より線、PC鋼棒などのPC鋼材を使用することができる。さらに、引張強度やクリープ性能の高い緊張材を使用してもよく、また、炭素繊維、芳香族ポリアミド繊維(アラミド繊維)、ポリアリレート繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサザール繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリイミド繊維、四フッ化エチレン繊維、ガラス繊維などの高性能繊維を用いたFRP(繊維強化プラスチックス)ロッドや繊維ロープ、繊維ケーブルであってもよい。緊張材の太さは掛ける張力に応じて選択することができる。
【0056】
緊張材は、金属製中空管状補強材の菅の中に通して長手方向を貫通する態様で設置する。緊張材を通す金属製中空管状補強材は、木質建材の断面の中心に通してもよいが、中心から等距離かつ、中心に対して点対称の位置に複数本を通すことが好ましい。
【0057】
例えば、バランスよく張力を掛ける観点から、木質建材の断面の中心から等距離かつ中心に対して点対称の位置に4本の金属製中空管状補強材を配置する場合において、4本すべての金属製中空管状補強材に緊張材を通すことが好ましい。個々の金属製中空管状補強材に通す緊張材は1本でもよく2本以上でもよい。
【0058】
〔プレストレス〕
プレストレス工法による木質建材の接合では、緊張材に張力をかける際に、木質建材の端部の金属プレートを介して木質建材の両端部から圧縮力をかけ、木質建材同士を圧着することが重要である。高い圧着を実現することで、一方の木質建材と他方の木質建材とが接合した部分をより一体化した状態に近づけることができ、接合部の曲げ特性の向上を得ることができる。
【0059】
緊張材にかける張力は、緊張材1本あたり、例えば10~300kN、好ましくは30~250kNである。張力が10kN未満であると木質建材同士の圧着が不十分となり、木質建材の接合部における剛性や強度が十分に発現しない可能性があり、他方、張力が300kNを超えると圧縮を受ける木質建材の端部や圧着されている木質建材同士の接合面がめり込み破壊を起こしてしまい、結果、本発明の木質建材の接合部における剛性や強度が十分発現しない恐れがある。
【0060】
本発明の木質建材は、緊張材を金属製中空管状補強材に通してプレストレスをかけることで複数の木質建材を接合することができる。このため、例えば本発明の複数の短尺の木質建材をプレストレス工法で継ぐことで、長尺の木質建材を得ることができる。
【0061】
本発明の木質建材を用いることで、建設現場でも容易に作業効率よく長尺の木質建材を得ることができる。すなわち、建築物を建築する現場に接合前の本発明の複数の短尺の木質建材を搬入し、現場で木質建材を接合して長尺の木質建材とすることができる。この場合は、搬入路が狭隘であっても、建築に必要な木質建材を現場で接合して得ることができる。
【0062】
また、長大かつ重量の大きい木質建材を小さく軽量な木質建材に分割して搬入して現場で、必要な長さの木質建材を得ることができるので、例えば人力での搬入に頼らざる得ない場所であっても、長大な木質建材を現場で得ることができる。
【0063】
本発明では、作業性を向上させるために木質建材の断面の中心またはその近傍にザグリ穴を開けて金属ダボなどを使用してもよい。この場合、作業時の木質建材同士のズレ防止や木質建材の接合部における補助的なせん断補強に効果が得られる。
【0064】
本発明の木質建材同士を接合する際は、両者の接合部にめり込み補強材を設けることが好ましい。めりこみ補強材は、木質建材同士の接合面が局所的にめり込むことを防ぐ補強材である。
【0065】
木質建材同士の接合面のめり込み耐力が高いほど、より大きな圧力を木質建材が受けることができ、緊張材に高い張力をかけることができる。すなわち、めりこみ補強材を介して接合することで、より高い剛性や強度を備える接合部を得ることができる。
【0066】
めりこみ補強材の形状は、例えば平板状であってもよく、木質集成材の端部を覆う形状であってもよい。補強材の表面は平滑であってもよく、凹凸があってもよい。凹凸がある場合には、一方の補強材と他方の補強材が噛み合う凹凸であることが好ましい。
【0067】
めりこみ補強材の材料には、表面が平滑で、木質建材よりも高いめり込み強度を持つ材料を用いることができる。具体的には、炭素繊維、ガラス繊維または芳香族ポリアミド繊維で補強された繊維補強樹脂、鉄やアルミ、ステンレスといった金属材料、さらにはコンクリートやモルタルなどのセメント材料といった無機材料を用いることができる。
【0068】
〔木質ユニット〕
本発明の木質ユニットは、複数の木質ユニットをプレストレス工法で連結して建物とするために用いられる木質ユニットであって、前記木質ユニットは木質梁材および木質土台材を含み、前記木質梁材は、上述の木質建材であり、前記木質土台材は、緊張材を収容するために用いられる長手方向を貫通する中空部を備える、建物用木質ユニットである。
【0069】
本発明の木質ユニットは、さらに壁を含み、この壁は木質梁材および木質土台材に接合されていることが好ましい。この壁は耐震壁であることが好ましい。壁は全ての壁が耐震壁であってもよく、全てではない一つまたは幾つかの壁が耐震壁であってもよい。本発明の建物用木質ユニットは、さらに屋根および/または床を備えることが好ましい。
【0070】
〔木質土台材〕
木質土台材として、一般的な木質建材を用いることができ、製材、集成材、CLT、LVLを例示することができる。木質土台材中に緊張材を収容するための長手方向を貫通する中空部を設ける場合には、集成材が好ましい。
【0071】
木質土台材は、緊張材を収容するために用いられる長手方向を貫通する中空部を備えることが好ましい。この中空部は一つでもよく、二つ以上でもよい。バランスよく張力を掛ける観点から、中空部は、中空部が一つの場合には木質土台材の断面の中心に設けることが好ましく、二つ以上の場合には木質土台材の断面の中心に対して点対称の位置に設けることが好ましい。木質土台材の中空部は、圧縮力を補強する観点から、本発明の木質建材と同様の金属製中空管状補強材によって形成することが好ましい。
【0072】
〔建物〕
本発明の建物は、上述の建物用木質ユニットを少なくとも二つ連結して含む建物である。そして、前記建物用木質ユニットの少なくとも二つは、前記建物用木質ユニットの木質梁材および/または木質土台材の中空部に配置され、張力を掛けられた緊張材によって連結されている。
【0073】
本発明の建物は、さらに木質土台材を支持するコンクリート製基礎を含むことが好ましい。コンクリート製基礎は、プレキャストコンクリート製基礎であることが好ましい。このコンクリート製基礎を含む、本発明の建物の一例を
図2に示す。
【0074】
本発明の建物の好ましい態様においては、少なくとも二つの本発明の木質ユニットを、木質ユニットに含まれる木質梁材および木質土台材の中空部に、緊張材がそれぞれ長手方向を貫通できるように配置して、基礎にアンカーボルトなどを用いて固定し、中空部に緊張材を貫通させ、その緊張材に緊張定着装置を用いて張力を掛け、木質ユニット同士を圧着して固定した態様である。
【0075】
すなわち、本発明によれば、上述の建物用木質ユニットの少なくも二つを、前記建物用木質ユニットの木質梁材および/または木質土台材の中空部が連続するように配置する工程、前記建物用木質ユニットの木質梁材および/または木質土台材の中空部に緊張材を配置する工程、および前記緊張材に張力を掛けることで前記建物用木質ユニットの少なくとも二つを相互に接続した状態で固定する工程を含む、建物の製造方法が提供される。
【実施例0076】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明する。物性は下記方法にて測定した。
(1)プレストレスの張力
緊張材を固定する金属プレート間に、圧縮センターホール型荷重計を配置し、金属プレート間の圧力を測定することで緊張材の張力とした。
【0077】
(2)木質建材同士の接合部の強度(破断耐力、曲げヤング係数)
木質建材を直列に二つ接合した試験体について、木質建材同士の接合部を試験体中央に配置し、支点間距離を4,220mmとした。集成材同士の接合部に荷重を印加する繰返し曲げ試験を実施した。繰返しは、支点間距離4,220mmに対して、木質建材の接合部のたわみ量が、1/450、1/300、1/250、1/200、1/150、1/100、1/75、1/50、1/30、1/15、1/10になるように試験を行った。ただし、試験体が破壊された場合は、そこで試験終了とした。試験体が破壊された時の荷重(最大荷重)を破断耐力Pmax(単位:kN)とした。曲げヤング係数(単位:GPa)は以下の式より求めた。試験体のたわみ量は、試験体中央部の側面に設置した高感度変位計の変化量により測定した。
【0078】
【数1】
ただし、
L:支点間距離
L
1:荷重支点間距離
b:試験体幅
h:試験体厚み(梁成)
ΔF:最大荷重の10%-最大荷重の40%間の荷重増分
Δy:ΔFに対応するたわみ増分
である。
【0079】
〔実施例1〕
集成材に内包される金属製中空管状補強材(1)として、炭素鋼製(STKM16C)のパイプを使用した。この金属製中空管状補強材(1)の断面形状は円形中空であって、外径25.4mm、肉厚は全周均一で3.5mm、長さは2,300mmである。
【0080】
集成材に内包される繊維強化樹脂性補強材として、補強繊維に炭素繊維(帝人株式会社製、アクリルニトリル系炭素繊維「HTS40、24K」、直径7μm)を用いたマトリクス樹脂がビニルエステル樹脂(硬化温度110~150℃、硬化所要時間5~10min)である引抜成形材を作製した。
【0081】
この繊維強化樹脂性補強材における補強繊維とマトリクス樹脂の体積比率は60/40であり、断面における炭素繊維の存在密度は15000本/mm2の密度であった。繊維強化樹脂性補強材の断面形状は、外寸は20mm×40mmの長方形であって、内部に直径14mmの孔が2つ空いている形状であり、長さは2,300mmである。
【0082】
繊維強化樹脂性補強材を含む補強ラミナは、木質ラミナ(スギ)の長手方向に幅40.5mm、深さ9.5mmの溝を2箇所掘り、掘った木質ラミナ(スギ)の溝内に水溶性高分子-イソシアネート系接着剤(株式会社オーシカ製、ピーアイボンド5340)を250g/m2の塗付量で塗付し、木質ラミナの溝間に上記の繊維強化樹脂性補強材をそれぞれ挟み、常温で、プレス圧0.8MPaで30分間プレスして接着することで作製した。
【0083】
ここでで得られた補強ラミナは、幅方向に、13mmの木材-40mmの繊維強化樹脂性補強材-20mmの木材-40mmの繊維強化樹脂性補強材-13mmの木材の構成で、繊維強化樹脂性補強材と木材が交互に並んだ幅126mmのラミナであった。
【0084】
得られた補強ラミナを最下段と最上段に用い、その間は金属製中空管状補強材を挿入するための直径27.5mmの孔が4箇所空いた木材のみのラミナで積層された木質集成材を得た。用いた接着剤は補強ラミナと同様に、水溶性高分子-イソシアネート系接着剤(株式会社オーシカ製、ピーアイボンド5340)であり(塗付量250g/m2)、常温プレス(プレス圧0.8MPa、プレス時間30分)で作製した。
【0085】
金属製中空管状補強材を挿入するための孔は、挿入する部分に予め直径27.5mmの半円溝を掘った2枚の木質ラミナ(スギ)を半円溝が向かい合うように接着することで形成した。溝内には接着剤を塗付しなかった。
【0086】
金属製中空管状補強材を挿入するための孔の位置は、直径27.5mmの孔の中心が、集成材の断面(120mm×300mmの長方形)において、上から60mmかつ横方向の端部からそれぞれ31.75mmの位置に1箇所ずつと、下から60mmかつ横方向の端部からそれぞれ31.75mmの位置に1箇所ずつとなるように配置した。
【0087】
接着後、集成材の表面にモルダー仕上げを行い、集成材内の金属製中空管状補強材を挿入するための4つの孔に炭素鋼製(STKM16C)のパイプをそれぞれ挿入し、断面サイズ120mm×300mm、長さ2,300mmの木質建材を得た。この木質建材の断面の模式図を
図3に示す。
【0088】
得られた木質建材を長さ方向に2つ並べ、プレストレス工法による接合を実施して実施例1の試験体を得た。この試験体の側面図を
図4に示す。プレストレスは次の方法で実施した。
【0089】
木質建材2つを、めりこみ補強材である鉄製プレート(120mm×300mm、厚み19mm、木質建材の金属製中空管状補強材4箇所と同様の位置にそれぞれ直径17mmの孔が空いているもの)を介して長手方向に並べ、木質建材の両端部にもそれぞれ鉄製プレート(120mm×300mm、厚みで19mm、木質建材の金属製中空管状補強材4箇所と同様の位置にそれぞれ直径17mmの孔が空いているもの)を配置し、金属製中空管状補強材4箇所内にそれぞれ1本ずつ直径12.7mmのPC鋼より線が2つに並べた木質建材を貫通するように通し、4本の緊張材の片側に圧縮センターホール型荷重計をそれぞれ1つずつ取り付け、圧縮センターホール型荷重計の外側にさらに鉄製プレート(120mm×300mm、厚みで40mm、木質建材の金属製中空管状補強材4箇所と同様の位置にそれぞれ直径17mmの孔が空いているもの)を緊張材が通るように設置し、直径12.7mmのPC鋼より線用の定着具を緊張材の両端にそれぞれ設置し、緊張定着装置である油圧の緊張ジャッキで、緊張材に100kN/本の張力を掛けた。
【0090】
〔実施例2〕
実施例1で緊張材1本あたりにかける張力を130kNにしたこと以外は実施例1と同様として実施した。評価結果を表1に示す。実施例1よりも緊張材にかける張力を増したことで、破断耐力、曲げヤング係数はともに実施例1よりも高い結果となった。
【0091】
〔比較例1〕
木質建材として、金属製中空管状補強材と繊維強化樹脂性補強材が含まれていない、断面サイズ120mm×300mm、長さ4,620mmのスギ木質集成材(E65-F225)を用い、支点間距離を4,220mmとして試験体中央に荷重を印加する繰返し曲げ試験を実施した。
評価結果を表1に示す。金属製中空管状補強材と繊維強化樹脂性補強材が含まれていないことで、破断耐力、曲げヤング係数はともに実施例1に比べ低い結果となった。
【0092】
〔比較例2〕
実施例1で補強ラミナの替わりに木ラミナを用いたこと以外は実施例1と同様として、断面サイズ120mm×300mm、長さ2,300mmの木質建材を得た。この木質建材を実施例1と同様にプレストレス工法で接合した。
評価結果を表1に示す。繊維強化樹脂性補強材が含まれていないことで、破断耐力、曲げヤング係数はともに実施例1に比べ低い結果となった。
【0093】