(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139382
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】アンテナ装置及び電子機器
(51)【国際特許分類】
H01Q 7/00 20060101AFI20230927BHJP
H01Q 1/24 20060101ALI20230927BHJP
H04B 5/02 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
H01Q7/00
H01Q1/24 C
H04B5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044884
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇河 康
【テーマコード(参考)】
5J047
5K012
【Fターム(参考)】
5J047AA04
5J047AB11
5J047FC06
5K012AA03
5K012AB03
5K012AC06
5K012AC07
5K012AC08
5K012AC10
(57)【要約】
【課題】装置構成及び制御を容易にして複数か所の近距離無線通信を実現することである。
【解決手段】アンテナユニット17は、面F1に形成されたループアンテナ素子17a1と、面F1とは異なる面F2に形成されたループアンテナ素子17a2と、面F1,F2とは異なる面F3に形成され、ループアンテナ素子17a1,17a2を接続する2本のアンテナ素子を含む接続素子17a3と、を有する連続した1つのループアンテナ17aを備える。接続素子17a3と、面F1,F3の境界と、面F2,F3の境界と、に囲まれた領域の面積A3は、ループアンテナ素子17a1のループ面積A1、ループアンテナ素子17a2のループ面積A2よりも小さい。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面に形成された第1のループアンテナ素子と、
前記第1面とは異なる第2面に形成された第2のループアンテナ素子と、
前記第1面及び前記第2面とは異なる第3面に形成され、前記第1のループアンテナ素子及び前記第2のループアンテナ素子を接続する2本のアンテナ素子を含む接続素子と、を有する連続した1つのループアンテナと、を備え、
前記接続素子と、前記第1面及び前記第3面の境界と、前記第2面及び前記第3面の境界と、に囲まれた領域の面積が、前記第1のループアンテナ素子のループ面積、前記第2のループアンテナ素子のループ面積よりも小さいことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記ループアンテナ及び前記ループアンテナに囲まれた領域に対応して配置される磁性シートを備えることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記磁性シートは、
前記第1のループアンテナ素子に対応して配置される第1の磁性シート部と、
前記第2のループアンテナ素子に対応して配置される第2の磁性シート部と、を有し、
前記第1のループアンテナ素子及び前記第2のループアンテナ素子は、前記第1面の延長面及び前記第2面の延長面の成す角が90度未満になる位置に配置され、
前記第1の磁性シート部は、前記第1のループアンテナ素子における前記第2のループアンテナ素子側の位置に配置され、
前記第2の磁性シート部は、前記第2のループアンテナ素子における前記第1のループアンテナ素子側の位置に配置されることを特徴とする請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第1の磁性シート部は、前記第1のループアンテナ素子と前記アンテナ装置の取り付け先の電子機器の基板との間に配置され、
前記第2の磁性シート部は、前記第2のループアンテナ素子と前記基板との間に配置されることを特徴とする請求項3に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記接続素子は、前記第1面と前記第2面とに垂直な前記第3面に配置されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のアンテナ装置と、
前記ループアンテナの通信を制御する通信制御部と、を備えることを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、近距離無線通信の規格としてNFC(Near Field Communication)が世の中に広まっている。中でも13.56[MHz]のHF(High Frequency)帯のNFCリーダライタを利用したセキュリティ関係などのソリューションは多数提案されている。
【0003】
例えば、NFCの一規格としてのFelica(登録商標)のリーダデバイスを裏面側に備え、近距離無線通信によりIC(Integrated Circuit)カードの情報を読み取るPDA(Personal Digital Assistant)が知られている(特許文献1参照)。また、特許文献1には、リーダ側の機器の金属の筐体又はアンテナ付近を磁性体で覆い、ICカードと正常に通信を行う技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のPDAは、ICカードの読み取り面が1か所であった。例えば、PDAにNFCの通信機能を搭載する場合、作業者が自らNFCカード(ICカード)を端末に近づけて端末の表面で読み取る場合と、作業者以外がNFCカードを端末の裏面に近づけて読ませる場合と、のように読み取り面が2か所あることで利便性が良い場合がある。
【0006】
通常、2か所の読み取り面を実現するために、「NFCチップ+NFCアンテナ」をPDAに複数実装する構成と、「NFCチップ+複数のNFCアンテナ」をPDAに実装してスイッチによりNFCチップと各NFCアンテナとの切り替えを実施する構成と、が考えられる。しかし、どちらの構成も、装置構成が複雑であるためコストが高くなり、各NFCアンテナを切り替える構成は、制御が複雑になる。
【0007】
本発明の課題は、装置構成及び制御を容易にして2か所の近距離無線通信を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のアンテナ装置は、第1面に形成された第1のループアンテナ素子と、前記第1面とは異なる第2面に形成された第2のループアンテナ素子と、前記第1面及び前記第2面とは異なる第3面に形成され、前記第1のループアンテナ素子及び前記第2のループアンテナ素子を接続する2本のアンテナ素子を含む接続素子と、を有する連続した1つのループアンテナと、を備え、前記接続素子と、前記第1面及び前記第3面の境界と、前記第2面及び前記第3面の境界と、に囲まれた領域の面積が、前記第1のループアンテナ素子のループ面積、前記第2のループアンテナ素子のループ面積よりも小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、装置構成及び制御を容易にして2か所の近距離無線通信を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)は、本発明の実施の形態の電子機器の正面図である。(b)は、電子機器の一部透過上面図である。
【
図2】電子機器の回路構成を示すブロック図である。
【
図3】(a)は、アンテナユニットの表面の展開図である。(b)は、アンテナユニットの裏面の展開図である。
【
図4】磁界を出力する電子機器の一部透過側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明に係る実施の形態を詳細に説明する。なお、以下に述べる実施の形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施の形態及び図示例に限定するものではない。
【0012】
まず、
図1~
図3を参照して、本実施の形態の装置構成を説明する。
図1は、本実施の形態の電子機器10の正面図である。(b)は、電子機器10の一部透過上面図である。
図2は、電子機器10の回路構成を示すブロック図である。
図3(a)は、アンテナユニット17の表面の展開図である。
図3(b)は、アンテナユニット17の裏面の展開図である。
【0013】
図1(a)、
図1(b)に示すように、本実施の形態の電子機器10は、いわゆるPDAとして、スーパーマーケットなどの店舗の店員がユーザとして使用するハンディターミナルとして機能する電子機器とする。電子機器10は、NFC通信機能を有し、NFCカードC1、NFCタグT1に記憶されている情報をNFC通信により非接触で読み取る。例えば、店舗の社員の社員証のNFCカードC1から当該社員の識別情報などを読み取ったり、顧客が所有するポイントカードとしてのNFCカードC1から当該顧客の識別情報、ポイント残高情報などを読み取ったり、店舗で販売されている商品の管理のために、商品に付されているNFCタグT1から当該商品の識別情報を読み取る。
【0014】
電子機器10は、筐体(ケース)10a内に各種部品が格納されている。筐体10aは、略直方体であり、樹脂などの材料により構成されている。筐体10aの前面(正面)側の面を前面部10a1とし、同じく後面(背面)側の面を後面部10a2とし、同じく上面(平面)側の面を上面部10a3とする。
【0015】
図1(a)に示すように、電子機器10は、前面部10a1に、操作部12及び表示部14を備える。操作部12は、各種キーを有し、店員などのユーザからのキー操作入力を受け付ける。表示部14は、LCD(Liquid Crystal Display)、EL(Electro-Luminescence)ディスプレイなどの表示パネルを有し、各種表示情報を表示パネルに表示する。
【0016】
図1(b)に示すように、電子機器10は、筐体10aの内部(上面部10a3の下側)に設けられた、アンテナ装置としてのNFC通信のアンテナユニット17及び基板10bを備える。アンテナユニット17は、ループアンテナ17aと、磁性シート17bと、を有する。
【0017】
ループアンテナ17aは、筐体10aの内側に設けられ、銅箔などの金属箔(又は銅線などの金属線)をループ状に巻回したNFC通信のコイルアンテナである。
【0018】
磁性シート17bは、例えば、軟磁性金属及びアクリル系樹脂などで構成され、磁気シールド効果を有するシート状の部材である。ループアンテナ17aから発生した磁界は、NFCカードC1及びNFCタグT1の読み取りに用いられるが、基板10bの金属に当たると渦電流として消費されてしまい、NFCカードC1及びNFCタグT1との通信距離(読み取り距離)の短縮、通信不能などの通信障害が発生する。このため、磁性シート17bは、ループアンテナ17aから発生した磁界が、基板10bへ透過されることを防いで、基板10bの金属で消費されることを低減して、通信障害を防ぐ。
【0019】
ループアンテナ17aは、磁性シート17b上に設けられている。ループアンテナ17a及び磁性シート17bは、前面部10a1、上面部10a3、後面部10a2にわたり設けられている。
【0020】
基板10bは、電子機器10の後述する回路素子が実装されたPCB(Printed Circuit Board)である。磁性シート17bは、ループアンテナ17aと基板10bとの間に設けられている。このため、磁性シート17bは、ループアンテナ17aから発生した磁界が基板10bに透過することを妨ぐ。
【0021】
ついで、
図2を参照して、電子機器10の内部の回路構成を説明する。電子機器10は、アンテナユニット17の他に、基板10bに実装された回路素子として、CPU(Central Processing Unit)11と、操作部12と、RAM(Random Access Memory)13と、表示部14と、記憶部15と、無線通信部16と、通信制御部としてのNFC通信制御部18と、撮影部19と、を備える。電子機器10のアンテナユニット17を除く各部は、バス20を介して接続されている。
【0022】
CPU11は、電子機器10の各部を制御する。CPU11は、記憶部15に記憶された各種プログラムのうち指定されたプログラムを読み出してRAM13に展開し、展開されたプログラムとの協働で、各種処理を実行する。
【0023】
操作部12は、ユーザからのキー入力の操作入力を受け付け、その操作情報をCPU11に出力する。
【0024】
RAM13は、情報を読み出し及び書き込み可能な揮発性の半導体メモリであり、CPU11に作業用のワークエリアを提供し、データ及びプログラムを一時的に記憶する。
【0025】
表示部14は、CPU11などから入力される各種の表示情報を表示パネルに表示する。
【0026】
記憶部15は、フラッシュメモリなどで構成され、情報の読み出し及び書き込みが可能な記憶部であり、各種データ及び各種プログラムを記憶している。
【0027】
無線通信部16は、モバイル通信の無線通信部であり、モバイル通信のアンテナ、発振部、変復調部、増幅部、信号処理部などを有し、CPU11の指示に従って、通信ネットワーク(図示略)上の基地局又はアクセスポイントとの無線通信を行う。CPU11は、無線通信部16の無線通信を介して、当該通信ネットワーク上の外部機器と通信を行う。
【0028】
NFC通信制御部18は、NFC通信の発振部、変復調部、増幅部、信号処理部などを有するICチップ(NFCチップ)であり、CPU11の指示に従って、アンテナユニット17のループアンテナ17aと近距離の位置に配置された通信先のNFCカードC1又はNFCタグT1と磁界を介して通信し、NFCカードC1又はNFCタグT1に記憶されている情報を読み取り、CPU11に出力する。このとき、NFC通信制御部18は、CPU11の指示に従って、発振部により送信信号を発生して変復調部により変調し増幅部により増幅してループアンテナ17aに当該送信信号を出力して磁界を発生させ、またNFCカードC1又はNFCタグT1からの磁界に応じてループアンテナ17aに発生した受信信号を増幅部により増幅し変復調部により復調し信号処理部により信号処理を施して、NFCカードC1又はNFCタグT1に記憶された情報の当該受信信号をCPU11に出力する。アンテナユニット17及びNFC通信制御部18の通信周波数は、例えば、13.56[MHz]とするが、これに限定されるものではない。
【0029】
撮影部19は、CCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどの撮像素子、光学系などを有するデジタルカメラ部であり、CPU11の指示に従って、被写体を撮影して画像データを生成し、CPU11などに出力する。例えば、撮影部19が、店舗の商品に付された被写体としてのシンボル(バーコード、2次元コード)を撮影して当該シンボルの画像データを生成し、CPU11が、当該シンボルの画像データをデコードして、当該シンボルの情報を読み取る。
【0030】
ついで、
図3(a)、
図3(b)を参照して、アンテナユニット17の構成をより詳細に説明する。
図3(a)に示すように、磁性シート17bの平面のうち、ループアンテナ17aが設けられる側の面を表面とする。
図3(b)に示すように、磁性シート17bの表面の裏側の面を裏面とする。
【0031】
図3(a)、
図3(b)に示すように、ループアンテナ17aは、第1のループアンテナ素子としてのループアンテナ素子17a1と、第2のループアンテナ素子としてのループアンテナ素子17a2と、接続素子17a3と、を有する。ループアンテナ17aは、ループアンテナ素子17a1,17a2及び接続素子17a3により連続した1つのループアンテナとして機能する。磁性シート17bは、第1の磁性シート部としての磁性シート部17b1と、第2の磁性シート部としての磁性シート部17b2と、磁性シート部17b3と、を有する。
【0032】
ループアンテナ素子17a1は、磁性シート部17b1の表面に配置された略長方形のループ状のアンテナ素子である。ループアンテナ素子17a1が配置される平面(磁性シート部17b1の表面)を第1面としての面F1とする。
【0033】
ループアンテナ素子17a2は、磁性シート部17b2の表面に配置された略長方形のループ状のアンテナ素子である。ループアンテナ素子17a2が配置される平面(磁性シート部17b2の表面)を第2面としての面F2とする。
【0034】
接続素子17a3は、磁性シート部17b3の表面に配置され、ループアンテナ素子17a1とループアンテナ素子17a2とを電気的に接続し、アンテナ電流の向きが互いに逆方向となる平行に配置された2つのアンテナ素子を含む。接続素子17a3が配置される平面(磁性シート部17b3の表面)を第3面としての面F3とする。
【0035】
図3(a)では、詳細な図示を省略しているが、ループアンテナ素子17a1,17a2は、それぞれ、アンテナ電流の向き(例えば、
図3(a)のループアンテナ17a上の矢印方向)が1方向になるように、ターン数N(N:任意の自然数であり、例えば3、5)のループの経路で巻回されている。
【0036】
面F1上のループアンテナ素子17a1のループ面積(ループアンテナ素子17a1で囲まれた内側の領域の面積、コイルの断面積)をループ面積A1とする。面F2上のループアンテナ素子17a2のループ面積(ループアンテナ素子17a2で囲まれた内側の領域の面積、コイルの断面積)をループ面積A2とする。面F3上の接続素子17a3のコイルのループ面積(接続素子17a3と、面F1,F3の境界と、面F2,F3の境界と、に囲まれた領域の面積)を面積A3とする。
【0037】
図3(a)、
図3(b)上で、ループアンテナ素子17a1,17a2は、接続素子17a3を基準として、略左右対称であり、ループ面積A1=A2であるものとする。また、面積A3<ループ面積A1,A2であるものとする。
【0038】
磁性シート部17b1は、少なくともループアンテナ素子17a1を覆う形状及び大きさとしての略長方形状の磁性シート部であり、穴部H1を有する。磁性シート部17b2は、少なくともループアンテナ素子17a2を覆う形状及び大きさとしての略長方形状の磁性シート部である。磁性シート部17b3は、少なくとも接続素子17a3を覆う形状及び大きさとしての略長方形状の磁性シート部である。磁性シート部17b3の大きさは、磁性シート部17b1,17b2よりも小さい。このように、磁性シート17bは、ループアンテナ17a及びループアンテナ17aに囲まれた領域(ループ面積A1,A2、面積A3の領域)に対応して配置される。
【0039】
また、ループアンテナ素子17a1は、ループアンテナの端部として、端部E1,E2を有する。端部E1は、穴部H1を通して、NFC通信制御部18の+端子に接続された基板10b上の配線の+端子に、POGOピンP1(
図4)により電気的に接続される。端部E2は、穴部H1を通して、NFC通信制御部18の-端子に接続された基板10b上の配線の-端子に、POGOピンP1により電気的に接続される。なお、端部E1,E2と、基板10b上の配線の+端子、-端子とは、コネクタ端子、同軸端子などにより電気的に接続される構成としてもよい。
【0040】
アンテナ電流の経路は、端部E1→ループアンテナ素子17a1→接続素子17a3→ループアンテナ素子17a2→接続素子17a3→(ループアンテナ素子17a1→接続素子17a3→ループアンテナ素子17a2→接続素子17a3…)→端部E2となる。
【0041】
ついで、
図4を参照して、アンテナユニット17の磁界を説明する。
図4は、磁界B11~B33を出力する電子機器10の側面図である。
【0042】
図4に示すように、アンテナユニット17は、2か所で折り曲げられて、基板10bを挟み込むように電子機器10に取り付けられ、ループアンテナ素子17a1がPOGOピンP1を介して基板10bの端子に電気的に接続される。
【0043】
アンテナユニット17が取り付けられた電子機器10において、ループアンテナ素子17a1の面F1(磁性シート部17b1の表面)は、前面部10a1に平行な面となる。このため、ループアンテナ素子17a1に対応する前面部10a1は、前側のNFCカードC1及びNFCタグT1の読取面となる。
【0044】
同じく、ループアンテナ素子17a2の面F2(磁性シート部17b2の表面)は、後面部10a2に平行な面となる。このため、ループアンテナ素子17a2に対応する後面部10a2は、後側のNFCカードC1及びNFCタグT1の読取面となる。このように、ループアンテナ素子17a1の面F1とループアンテナ素子17a2の面F2とは、対向する位置に配置される。接続素子17a3の面F3(磁性シート部17b3の表面)は、上面部10a3に平行な面となる。
【0045】
ループアンテナ素子17a1は、前方向の磁界B11、前上方向の磁界B12、前下方向の磁界B13を出力する。ループアンテナ素子17a2は、後方向の磁界B21、後上方向の磁界B22、後下方向の磁界B23を出力する。接続素子17a3は、上方向の磁界B31、上前方向の磁界B32、上後方向の磁界B33を出力する。磁界B11~B33において、磁界の強さを矢印の幅で示している。
【0046】
通常であれば、ループアンテナ素子17a1から前側の方向に出力される磁界B11,B12,B13と、ループアンテナ素子17a2から後側の方向に出力される磁界B21,B22,B23とが交われば、お互いを弱め合う磁界を出力することになるが、磁性シート部17b1によりループアンテナ素子17a1から後側(基板10b側)に出力される磁界が低減され、磁性シート部17b2によりループアンテナ素子17a2から前側(基板10b側)に出力される磁界が低減される。このため、磁性シート部17b1,17b2により、上記弱めあう磁界出力を抑えることができる。
【0047】
また、接続素子17a3により、上方向にも磁界B31,B32,B33の出力はされるが、磁界B32が磁界B12を打消し、磁界B33が磁界B22を打消す。これに対しては、
図3(a)に示す2本の接続素子17a3を近付け、接続素子17a3の面積A3を小さくして、上側の方向の磁界B31,B32,B33の出力を小さく抑えることで、磁界B11,B12,B13及び磁界B21,B22,B23を弱める磁界強度も抑えることができる。
【0048】
なお、磁性シート部17b3により、接続素子17a3から基板10bに出力される磁界B31,B32,B33を低減する。このように、磁性シート部17b1,17b2、磁性シート部17b3により、基板10bに出力される磁界を低減して、基板10bの金属で消費される磁界を低減する。
【0049】
以上、本実施の形態によれば、アンテナユニット17は、面F1に形成されたループアンテナ素子17a1と、面F1とは異なる面F2に形成されたループアンテナ素子17a2と、面F1,F2とは異なる面F3に形成され、ループアンテナ素子17a1,17a2を接続する2本のアンテナ素子を含む接続素子17a3と、を有する連続した1つのループアンテナ17aを備える。接続素子17a3と、面F1,F3の境界と、面F2,F3の境界と、に囲まれた領域の面積A3は、ループアンテナ素子17a1のループ面積A1、ループアンテナ素子17a2のループ面積A2よりも小さい。
【0050】
このため、連続した1つのループアンテナ17aにより、1つのNFC通信制御部18を設ければよく、アンテナユニット17を有する電子機器10の装置構成及び制御を容易にでき、アンテナユニット17及び電子機器10の構成の簡略化、軽量化及びコストダウンを実現できる。また、ループアンテナ素子17a1,17a2により、電子機器10の前方向の読み取り面(面F1、前面部10a1)と後方向の読み取り面(面F2、後面部10a2)との2か所の近距離無線通信を実現でき、ユーザの利便性を向上できる。例えば、電子機器10を使用している店員が、社員証などのNFCカードC1を前面部10a1から読み取らせ、顧客の有するNFCカードC1又は商品に付されたNFCタグT1を後面部10a2から読み取らせることができる。
【0051】
また、アンテナユニット17は、ループアンテナ17a及びループアンテナ17aに囲まれた領域(ループ面積A1,A2、面積A3の領域)に対応して配置される磁性シート17bを備える。このため、磁性シート17bにより、アンテナユニット17の取り付け先の電子機器10の基板10bに出力される磁界を低減でき、基板10bの金属で消費される磁界を低減できる。
【0052】
また、磁性シート17bは、ループアンテナ素子17a1に対応して配置される磁性シート部17b1と、ループアンテナ素子17a2に対応して配置される磁性シート部17b2と、を有する。ループアンテナ素子17a1,17a2は、面F1,F2が対向する位置に配置される。磁性シート部17b1は、ループアンテナ素子17a1におけるループアンテナ素子17a2側の位置に配置される。磁性シート部17b2は、ループアンテナ素子17a2におけるループアンテナ素子17a1側の位置に配置される。このため、磁性シート部17b1,17b2により、ループアンテナ素子17a1から出力される磁界B11,B12,B13と、ループアンテナ素子17a2から出力される磁界B21,B22,B23とを弱めあう磁界出力を抑えることができ、ループアンテナ素子17a1,17a2のそれぞれの読み取り面の通信距離を長くし、通信不能を防いで通信性能を向上できる。
【0053】
また、磁性シート部17b1は、ループアンテナ素子17a1と、アンテナユニット17の取り付け先の電子機器10の基板10bとの間に配置される。磁性シート部17b2は、ループアンテナ素子17a2と、基板10bとの間に配置される。このため、磁性シート部17b1,17b2により、ループアンテナ素子17a1,17a2が出力する磁界が基板10bの金属で消費されることを防ぎ、ループアンテナ素子17a1,17a2のそれぞれの読み取り面の通信距離を長くし、通信不能を防いで通信性能を向上できる。
【0054】
また、接続素子17a3は、面F1と面F2とに垂直な面F3に配置される。このため、面積A3が小さい接続素子17a3が出力する上側の方向の磁界を小さくすることができ、当該上側の方向の磁界が、ループアンテナ素子17a1,17a2が出力する磁界を打ち消すことを低減でき、ループアンテナ素子17a1,17a2のそれぞれの読み取り面の通信距離を長くし、通信不能を防いで通信性能を向上できる。
【0055】
また、電子機器10は、アンテナユニット17と、アンテナユニット17(ループアンテナ17a)の通信を制御するNFC通信制御部18と、を備える。このため、連続した1つのループアンテナ17aと1つのNFC通信制御部18とにより、電子機器10の装置構成及び制御を容易にでき、電子機器10の構成の簡略化、軽量化及びコストダウンを実現できる。また、電子機器10の前方向の読み取り面(面F1、前面部10a1)と後方向の読み取り面(面F2、後面部10a2)との2か所の近距離無線通信を実現でき、ユーザの利便性を向上できる。
【0056】
なお、上記実施の形態における記述は、本発明に係るアンテナ装置及び電子機器の一例であり、これに限定されるものではない。
【0057】
例えば、上記実施の形態では、ループアンテナ素子17a1,17a2のループ面積A1,A2が同じであるループアンテナ17aの構成を説明したが、これは一例であって、他の形状のループアンテナ及び磁性シートと、その組み込み方法と、によって複数面の読み取りを実現するループアンテナとしてもよい。例えば、ループアンテナ素子17a1,17a2のループ面積A1,A2が異なるループアンテナ17aとしてもよい。
【0058】
また、上記実施の形態では、ループアンテナ素子17a1と、ループアンテナ素子17a2と、が前後方向に対向する位置に配置されるループアンテナ17aを説明したが、これに限定されるものではない。ここで、
図5を参照して、上記実施の形態の変形例のループアンテナ17Caを説明する。
図5は、変形例のループアンテナ17Caの側面図である。
【0059】
図5に示すように、本変形例のアンテナユニットは、ループアンテナ17Caと、磁性シート(図示略)と、を有し、電子機器(図示略)に取り付けられる。ループアンテナ17Caは、前方向の位置に配置されたループアンテナ素子17Ca1と、ループアンテナ素子17Ca1よりも後方向の位置に配置されたループアンテナ素子17Ca2と、ループアンテナ素子17Ca1,17Ca2を接続する2本のアンテナ素子を有する接続素子17Ca3と、を有する。磁性シート(図示略)は、上記実施の形態の磁性シート17bと同様の構成である。ループアンテナ17Caは、磁性シート(図示略)上に配置されている。また、ループアンテナ素子17Ca3と、ループアンテナ素子17Ca1が配置される第1面及びループアンテナ素子17Ca3が配置される第3面の境界と、ループアンテナ素子17Ca2が配置される第2面及び第3面の境界と、に囲まれた領域の面積は、ループアンテナ素子17Ca1のループ面積、ループアンテナ素子17Ca2のループ面積よりも小さい。
【0060】
また、側面から見たループアンテナ素子17Ca1の延在方向の第1の延長面を延長面G1とする。側面から見たループアンテナ素子17Ca2の延在方向の第2の延長面を延長面G2とする。ループアンテナ素子17Ca1,17Ca2は、延長面G1及び延長面G2の成す角θが90度未満になる位置に配置される構成とする。なお、上記実施の形態のループアンテナ素子17a1,17a2は、角θ=0度(平行)に対応する位置に配置されている。
【0061】
ループアンテナ素子17Ca1,17Ca2が、角θ<90度になる位置に配置される構成とすることにより、ループアンテナ素子17Ca1の読み取り面の通信方向と、ループアンテナ素子17Ca2の読み取り面の通信方向とを、ユーザのNFC通信用途に好ましい2方向に自在にとることができる。また、ループアンテナ17Caに対応する位置に配置される磁性シートにより、ループアンテナ素子17Ca1から出力される磁界と、ループアンテナ素子17Ca2から出力される磁界とを弱めあう磁界出力を抑えることができ、ループアンテナ素子17Ca1,17Ca2のそれぞれの読み取り面の通信距離を長くし、通信不能を防いで通信性能を向上できる。さらに、接続素子17Ca3が出力する上側の方向の磁界を小さくすることができ、ループアンテナ素子17Ca1,17Ca2のそれぞれの読み取り面の通信距離を長くし、通信不能を防いで通信性能を向上できる。
【0062】
また、上記実施の形態では、電子機器10が、ハンディターミナルとしての機能を有するPDAである例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、電子機器10としては、ハンディターミナルの専用機、タブレットPC(Personal Computer)、ノートPC、スマートフォンなど、近距離通信機能を有する他の電子機器としてもよい。また、電子機器10の用途は、店舗の情報管理に限定されるものではなく、倉庫の荷物管理、所定の場所の入退場者管理など、他の用途に用いてもよい。
【0063】
本発明の実施の形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
第1面に形成された第1のループアンテナ素子と、
前記第1面とは異なる第2面に形成された第2のループアンテナ素子と、
前記第1面及び前記第2面とは異なる第3面に形成され、前記第1のループアンテナ素子及び前記第2のループアンテナ素子を接続する2本のアンテナ素子を含む接続素子と、を有する連続した1つのループアンテナと、を備え、
前記接続素子と、前記第1面及び前記第3面の境界と、前記第2面及び前記第3面の境界と、に囲まれた領域の面積が、前記第1のループアンテナ素子のループ面積、前記第2のループアンテナ素子のループ面積よりも小さいことを特徴とするアンテナ装置。
<請求項2>
前記ループアンテナ及び前記ループアンテナに囲まれた領域に対応して配置される磁性シートを備えることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
<請求項3>
前記磁性シートは、
前記第1のループアンテナ素子に対応して配置される第1の磁性シート部と、
前記第2のループアンテナ素子に対応して配置される第2の磁性シート部と、を有し、
前記第1のループアンテナ素子及び前記第2のループアンテナ素子は、前記第1面の延長面及び前記第2面の延長面の成す角が90度未満になる位置に配置され、
前記第1の磁性シート部は、前記第1のループアンテナ素子における前記第2のループアンテナ素子側の位置に配置され、
前記第2の磁性シート部は、前記第2のループアンテナ素子における前記第1のループアンテナ素子側の位置に配置されることを特徴とする請求項2に記載のアンテナ装置。
<請求項4>
前記第1の磁性シート部は、前記第1のループアンテナ素子と前記アンテナ装置の取り付け先の電子機器の基板との間に配置され、
前記第2の磁性シート部は、前記第2のループアンテナ素子と前記基板との間に配置されることを特徴とする請求項3に記載のアンテナ装置。
<請求項5>
前記接続素子は、前記第1面と前記第2面とに垂直な前記第3面に配置されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
<請求項6>
請求項1から5のいずれか一項に記載のアンテナ装置と、
前記ループアンテナの通信を制御する通信制御部と、を備えることを特徴とする電子機器。
【符号の説明】
【0064】
10 電子機器
10a 筐体
10a1 前面部
10a2 後面部
10a3 上面部
11 CPU
12 操作部
13 RAM
14 表示部
15 記憶部
16 無線通信部
17 アンテナユニット
17a,17Ca ループアンテナ
17a1,17a2,17Ca1,17Ca2 ループアンテナ素子
17a3,17Ca3 接続素子
17b 磁性シート
17b1,17b2,17b3 磁性シート部
H1 穴部
P1 POGOピン
18 NFC通信制御部
19 撮影部
20 バス
C1 NFCカード
T1 NFCタグ