(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139393
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】車両用空調ユニット
(51)【国際特許分類】
B60H 1/00 20060101AFI20230927BHJP
【FI】
B60H1/00 102H
B60H1/00 102J
B60H1/00 103N
B60H1/00 102T
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044901
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】500309126
【氏名又は名称】株式会社ヴァレオジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】戸高 良徳
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 幸央
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA06
3L211BA08
3L211DA06
3L211DA11
3L211DA12
3L211DA15
3L211EA27
3L211EA28
3L211GA06
(57)【要約】
【課題】車室内の目標温度への早期の到達を可能としつつ、快適性を向上させることのできる車両用空調ユニットを提供すること。
【解決手段】車両用空調ユニット(20)は、下側ミックスドア(60)の回転軸部(61)に、下側冷風バイパス(By2)の流路面積を調節することにより送風空気の流量を調整可能な補助調整部(65)が形成されている。補助調整部(65)は、ヒータ(33)のうち下部を通過した送風空気と下側冷風バイパス(By2)を通過した送風空気の両方がリヤ開口部(44)に向かって流れる際に、下側冷風バイパス(By2)の流路断面積を狭め、ヒータ(33)を通過する送風空気の量が最も少ないフルクールモードのときに、下側冷風バイパス(By2)へ流れる送風空気の流量を最大とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室(11)内の後席(13)に送風を行うためのリヤダクト(16)と、このリヤダクト(16)に設けられ前記後席(13)への送風空気の吹き出しの可否を切り替え可能な後席部送風切替部(17)と、が備えられた車両に搭載可能な車両用空調ユニット(20)であって、
ケース(40)と、前記ケース(40)の内部に設けられ送風空気を冷却可能なエバポレータ(32)と、前記エバポレータ(32)を通過した送風空気を加熱可能なヒータ(33)と、前記ヒータ(33)の上方に形成された流路であって前記ヒータ(33)を迂回する送風空気が通過可能な上側冷風バイパス(By1)と、前記ヒータ(33)の下方に形成された流路であって前記ヒータ(33)を迂回する送風空気が通過可能な下側冷風バイパス(By2)と、前記上側冷風バイパス(By1)を通過する送風空気と前記ヒータ(33)のうち上部を通過する送風空気との比率を調整可能な上側ミックスドア(50)と、前記エバポレータ(32)と前記ヒータ(33)との間にスライド可能に配置され前記下側冷風バイパス(By2)を通過する送風空気と前記ヒータ(33)のうち下部を通過する送風空気との比率を調整可能な下側ミックスドア(60)と、前記上側冷風バイパス(By1)を通過した送風空気と前記ヒータ(33)のうち上部を通過した送風空気とが混合され上側調和空気とする空間である上側ミックス空間(Mi1)と、前記下側冷風バイパス(By2)を通過した送風空気と前記ヒータ(33)のうち下部を通過した送風空気とが混合され下側調和空気とする空間である下側ミックス空間(Mi2)と、を備え、
前記ケース(40)には、前記上側調和空気を前記車室(11)内の前席(12)の上部に供給するためのベント開口部(42)と、前記下側調和空気を前記後席(13)に供給するためのリヤ開口部(44)と、が形成され、
前記下側ミックスドア(60)は、前記ケース(40)に回転可能に支持された回転軸部(61)と、前記回転軸部(61)に設けられたピニオン部(62)と、前記ピニオン部(62)と嵌合するラック部(63)が形成されて前記ヒータ(33)の上流面から前記下側冷風バイパス(By2)までスライド可能なシャッタ本体(64)と、を有し、
前記回転軸部(61)には、前記下側冷風バイパス(By2)の流路面積を調節することにより送風空気の流量を調整可能な補助調整部(65)が形成され、
前記補助調整部(65)は、前記ヒータ(33)のうち下部を通過した送風空気と前記下側冷風バイパス(By2)を通過した送風空気の両方が前記リヤ開口部(44)に向かって流れる際に、前記下側冷風バイパス(By2)の流路断面積を狭め、前記ヒータ(33)を通過する送風空気の量が最も少ないフルクールモードのときに、前記下側冷風バイパス(By2)へ流れる送風空気の流量を最大とする、車両用空調ユニット。
【請求項2】
前記補助調整部(65)は、前記下側調和空気の流れ方向に沿って見たときに、前記リヤ開口部(44)と重なって位置している、請求項1に記載の車両用空調ユニット。
【請求項3】
前記補助調整部(65)は、前記下側調和空気の流れ方向に沿って見たときに、前記ベント開口部(42)と重なって位置している、請求項1又は請求項2に記載の車両用空調ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前席乗員の上半身に向かって送風を行なうためのベント開口部を有すると共に、後席乗員に向かって送風を行うためのリヤ開口部を有する車両用空調ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの車両には、車室内の温度を調節するために車両用空調ユニットが搭載されている。一部の車両用空調ユニットは、前席乗員の上半身に向かって送風を行なうためのベント開口部と、後席乗員に向かって送風を行うためのリヤ開口部と、を有している。車両用空調ユニットに関する従来技術として、特許文献1に開示される技術がある。
【0003】
特許文献1には、前席乗員の上半身に向かって送風するベント送風口と、後席へ送風するリヤ開口部と、後席への送風量を調節可能な後席部送風切替部(レジスタ)と、が開示されている。
【0004】
後席の乗員は後席部送風切替部を操作することにより、後席への送風量を調節することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、車両用空調ユニットの作動中に、後席の乗員が後席部送風切替部を操作し、後席への送風を遮断することがある。この場合に、後席へ送られる分の送風空気が、ベント開口部から吹き出されることがある。前席の乗員への送風量が急に増加するため、前席の乗員の快適性を損なう虞がある。
【0007】
この対策として、前席への送風量の急激な増加を防ぐために、後席への送風空気の流路を狭くして後席への送風量を小さくすることが考えられる。しかし、この場合には後席への送風が特に必要となる場合であっても、後席へ十分な量の送風を行なうことができなくなる。特に、車室内が目標温度よりも大幅に高い際に用いられるフルクールモード時には、後席への十分な量の送風を行うことができない。
【0008】
本発明は、車室内の目標温度への早期の到達を可能としつつ、快適性を向上させることのできる車両用空調ユニットの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下の説明では、本発明の理解を容易にするために添付図面中の参照符号を括弧書きで付記するが、それによって本発明は図示の形態に限定されるものではない。
【0010】
本開示によれば、車室(11)内の後席(13)に送風を行うためのリヤダクト(16)と、このリヤダクト(16)に設けられ前記後席(13)への送風空気の吹き出しの可否を切り替え可能な後席部送風切替部(17)と、が備えられた車両に搭載可能な車両用空調ユニット(20)であって、
ケース(40)と、前記ケース(40)の内部に設けられ送風空気を冷却可能なエバポレータ(32)と、前記エバポレータ(32)を通過した送風空気を加熱可能なヒータ(33)と、前記ヒータ(33)の上方に形成された流路であって前記ヒータ(33)を迂回する送風空気が通過可能な上側冷風バイパス(By1)と、前記ヒータ(33)の下方に形成された流路であって前記ヒータ(33)を迂回する送風空気が通過可能な下側冷風バイパス(By2)と、前記上側冷風バイパス(By1)を通過する送風空気と前記ヒータ(33)のうち上部を通過する送風空気との比率を調整可能な上側ミックスドア(50)と、前記エバポレータ(32)と前記ヒータ(33)との間にスライド可能に配置され前記下側冷風バイパス(By2)を通過する送風空気と前記ヒータ(33)のうち下部を通過する送風空気との比率を調整可能な下側ミックスドア(60)と、前記上側冷風バイパス(By1)を通過した送風空気と前記ヒータ(33)のうち上部を通過した送風空気とが混合され上側調和空気とする空間である上側ミックス空間(Mi1)と、前記下側冷風バイパス(By2)を通過した送風空気と前記ヒータ(33)のうち下部を通過した送風空気とが混合され下側調和空気とする空間である下側ミックス空間(Mi2)と、を備え、
前記ケース(40)には、前記上側調和空気を前記車室(11)内の前席(12)の上部に供給するためのベント開口部(42)と、前記下側調和空気を前記後席(13)に供給するためのリヤ開口部(44)と、が形成され、
前記下側ミックスドア(60)は、前記ケース(40)に回転可能に支持された回転軸部(61)と、前記回転軸部(61)に設けられたピニオン部(62)と、前記ピニオン部(62)と嵌合するラック部(63)が形成されて前記ヒータ(33)の上流面から前記下側冷風バイパス(By2)までスライド可能なシャッタ本体(64)と、を有し、
前記回転軸部(61)には、前記下側冷風バイパス(By2)の流路面積を調節することにより送風空気の流量を調整可能な補助調整部(65)が形成され、
前記補助調整部(65)は、前記ヒータ(33)のうち下部を通過した送風空気と前記下側冷風バイパス(By2)を通過した送風空気の両方が前記リヤ開口部(44)に向かって流れる際に、前記下側冷風バイパス(By2)の流路断面積を狭め、前記ヒータ(33)を通過する送風空気の量が最も少ないフルクールモードのときに、前記下側冷風バイパス(By2)へ流れる送風空気の流量を最大とする、車両用空調ユニットが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車室内の目標温度への早期の到達を可能としつつ、快適性を向上させることのできる車両用空調ユニットできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例による車両用空調ユニットが搭載された車両の模式図である。
【
図2】
図1に示された車両用空調ユニットの斜視図である。
【
図4】
図3に示した下側ミックスドアの斜視図である。
【
図5A】ミックスモード時における車両用空調ユニットの作用説明図である。
【
図5B】フルクールモード時における車両用空調ユニットの作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。図中Frは車両進行方向を基準として前、Rrは車両進行方向を基準として後、Leは乗員から見て左、Riは乗員から見て右、Upは上、Dnは下を示している。
【0014】
<実施例>
図1を参照する。
図1には、車両用空調ユニット20の搭載された車両10が示されている。車両10は、例えば乗用車であり、車室11内の前部に設けられた左右の前席12、12と、これらの前席12、12の後方に車幅方向の両端に亘って設けられた後席13と、を有する。
【0015】
車両用空調ユニット20は、前席12、12の前方に設けられ、前席12、12及び後席13の乗員に所定の温度に調節された空気を送風するために用いられる。車両10は、前席12の前方であって車幅方向の外側には、送風空気の吹き出しの可否を切り替え可能な前部送風切替部14、14が形成されている。車両用空調ユニット20には後席13へ向かって延びるリヤダクト16が接続されており、リヤダクト16を介して後席13へ送風を行なうことができる。リヤダクト16の後端あるいは下流端には、後席13への送風空気の吹き出しの可否を切り替え可能な後席部送風切替部17、17が設けられている。
【0016】
リヤダクト16は、例えば、センターコンソールの下面に沿って後方に向かって延びると共に、センターコンソールの後面に沿って上方に向かって延びるように配置することができる。又は、車室内の床下を通りBピラーに沿って立ち上げられていても良い。また、途中で分岐して後席乗員の上半身及び下半身に送風可能となるよう配置されても良い。
【0017】
それぞれの送風切替部14、17は、ルーバーによって構成され乗員が操作部14a、17aをスイングさせることにより、全開から全閉まで送風量を切り替えることができる。
【0018】
図2を参照する。車両用空調ユニット20は、車室内及び/又は車外の空気を取り入れて送風することが可能な送風部21と、この送風部21から送られた送風空気を所定の温度に調節可能な温度調節部30と、を有する。送風部21から左に向かって送られた風は、温度調節部30内を後方に向かって流れる。
【0019】
送風部21は、周知の構成を採用することができ、例えば、ブロアファンが内蔵されている。
【0020】
図3を参照する。温度調節部30は、内部に送風部21(
図2参照)からの送風空気が流されるケース40と、このケース40の内部に設けられ送風空気を冷却可能なエバポレータ32と、エバポレータ32を通過した送風空気を加熱可能なヒータ33と、このヒータ33の上部前方に設けられヒータ33を通過する空気の量を調節可能な上側ミックスドア50と、ヒータ33の下部前方に設けられヒータ33を通過する空気の量を調節可能な下側ミックスドア60と、を主な構成要素とする。
【0021】
ケース40の内部には、ヒータ33の上方であってヒータ33を迂回する送風空気が通過可能な上側冷風バイパスBy1と、ヒータ33の下方であってヒータ33を迂回する送風空気が通過可能な下側冷風バイパスBy2と、上側冷風バイパスBy1を通過した送風空気とヒータ33のうち上部を通過した送風空気とが混合され上側調和空気とする上側ミックス空間Mi1と、下側冷風バイパスBy2を通過した送風空気とヒータ33のうち下部を通過した送風空気とが混合され下側調和空気とする下側ミックス空間Mi2と、が形成されている。
【0022】
図1を併せて参照する。ケース40には、フロントガラスに向かって送風を行うための送風空気が吹き出されるデフロスタ開口部41と、上側ミックス空間Mi1の上方に形成され上側調和空気を前部送風切替部14に供給するためのベント開口部42と、下側調和空気をリヤダクト16を介して後席13に供給するためのリヤ開口部44と、が形成されている。
【0023】
図2のみを参照する。ケース40には、その左側側面および右側側面に、下側調和空気を前席12、12の下方に供給するためのフット開口部45、45が形成されている。フット開口部45、45はケース40の右側側面および左側側面に形成されているため、
図3には示されていない。
【0024】
リヤ開口部44は、ケース40の下方かつ左右方向の中央に形成されていることが好ましい。リヤダクト16がセンターコンソールの下面に沿って延びるように設けられる場合、接続を容易化できる。
【0025】
図3のみを参照する。それぞれの開口部41、42、44の近傍には、スイング可能に設けられ、開口部41、42、44の開度を調節することにより送風空気の吹出し量を調節可能な風量調節ドア36、37、39が設けられている。図示しないが、フット開口部45、45の近傍にも、風量調整ドアが設けられている。
【0026】
なお、ケース40は、図示しない隔壁によって左右の部屋に区画されている。開口部41、42、44及び風量調節ドア36、37、39は、左右の部屋のそれぞれに形成されている。フット開口部45およびフット開口部45のための風量調節ドアも、同様である。
【0027】
エバポレータ32は、空気の流れる方向(図面左から右の方向)に略直交するように1つ設けられている。エバポレータ32には、冷媒が流され、エバポレータ32を通過する空気は、冷媒との熱交換によって冷却される。送風部21(
図2参照)からの送風空気は、エバポレータ32の前方からケース40内に取り入れられ、略90°曲がってエバポレータ32を通過する。
【0028】
ヒータ33は、温水が流される温水ヒータや通電することにより発熱する電気ヒータ、あるいは冷媒が流される冷媒放熱器を用いることができる。また、これらを組み合わせて用いることもできる。エバポレータ32を通過した空気の一部は、ヒータ33を通過することにより温められる。
【0029】
上側ミックスドア50は、ケース40に回転可能に支持された上側回転軸部51と、上側回転軸部51に設けられた上側ピニオン部52と、上側ピニオン部52に嵌合し上側回転軸部51が回転することによりヒータ33の上流から上側冷風バイパスBy1までスライド可能な上側シャッタ本体54と、を有している。上側ミックスドア50は、上側シャッタ本体54のヒータ33への重なり量によって、上側冷風バイパスBy1を通過する送風空気とヒータ33のうち上部を通過する送風空気との比率を調整可能である。
【0030】
下側ミックスドア60は、エバポレータ32とヒータ33との間にスライド可能に配置され下側冷風バイパスBy2を通過する送風空気とヒータ33のうち下部を通過する送風空気との比率を調整可能である。
【0031】
図4を併せて参照する。下側ミックスドア60は、ケース40に回転可能に支持された下側回転軸部61(回転軸部61)と、下側回転軸部61に設けられた下側ピニオン部62(ピニオン部62)と、下側ピニオン部62と嵌合する下側ラック部63(ラック部63)が形成されてヒータ33の上流から下側冷風バイパスBy2までスライド可能な下側シャッタ本体64(シャッタ本体64)と、を有している。
【0032】
下側回転軸部61には、下側冷風バイパスBy2の流路面積を調節することにより送風空気の流量を調整可能な補助調整部65が形成されている。補助調整部65は、下側回転軸部61の中心から径方向に延びる板状の部材によって構成される。
【0033】
図3を参照する。補助調整部65は、車幅方向の位置と上下方向を基準として、リヤ開口部44と重なって位置している。また、補助調整部65は、車幅方向を基準として、ベント開口部42と重なって位置している。
【0034】
図3に示す状態において、下側シャッタ本体64は、一部がヒータ33に重なると共に、一部が下側冷風バイパスBy2を塞いでいる。このとき、エバポレータ32を通過した送風空気の一部はヒータ33の下部を通過し、一部は下側冷風バイパスBy2を通過する。このような場合において、補助調整部65は、下側冷風バイパスBy2の流路断面積を狭める。換言すれば、補助調整部65は、ヒータ33のうち下部を通過した送風空気と下側冷風バイパスBy2を通過した送風空気の両方がリヤ開口部44に向かって流れる際に、下側冷風バイパスBy2の流路断面積を狭めるよう、下側回転軸部61に設けられている。
【0035】
以上に説明した車両用空調ユニット20の作用について説明する。
【0036】
図5Aを参照する。ヒータ33のうち下部を通過した送風空気と下側冷風バイパスBy2を通過した送風空気の両方がリヤ開口部44に向かって流れる際に、補助調整部65は、下側冷風バイパスBy2の流路断面積を狭める。これにより、下側冷風バイパスBy2を通過する送風空気の流量は減少する。下側冷風バイパスBy2を通過する送風空気の流量が小さいため、所定の温度まで調節する為に必要な温風の流量も小さい。つまり、ヒータ33の下部を通過する送風空気の流量も小さい。相対的に、上側冷風バイパスBy1を通過する送風空気の流量とヒータ33の上部を通過する空気の流量は増加する。
【0037】
図5Bを参照する。
図5Bには、フルクールモードにおける車両用空調ユニット20が示されている。
図5Aに示される状態から上下の回転軸部51、61が回転し、上下のシャッタ本体54、64をスライドさせてヒータ33の前面をほぼ覆っている。下側回転軸部61と共に回転することにより、補助調整部65は、送風空気の流れに沿った方向を向いている。つまり、補助調整部65は、ヒータ33の下部を通過する送風空気の量が最も少ないフルクールモードのときに、下側冷風バイパスBy2の流路断面積を最大とする。
【0038】
なお、フルホットモードでは、下側冷風バイパスBy2のほとんど又は全てが下側シャッタ本体64によって閉じられる。このため、補助調整部65によって調整するまでもなく、下側冷風バイパスBy2へは送風空気がほとんど流れない。このため、補助調整部65はどのような向きを向いていても良い。
【0039】
以上に説明した車両用空調ユニット20は、以下の効果を奏する。
【0040】
図5A及び
図5Bを参照する。補助調整部65は、冷風と温風とが混ぜられる温度域において下側冷風バイパスBy2の少なくとも一部を閉じ、ヒータ33を通過する送風空気の量が最も少ないフルクールモードにおいて下側冷風バイパスBy2へ流れる送風空気の流量を最大とする。一般に、設定温度に近い温度では温風と冷風の両方が混ぜられて車室11内に送られる。このような温度域においては、補助調整部65によって下側冷風バイパスBy2への送風量を少なくする。これにより、後席部送風切替部17(
図3参照)が操作された場合にベント開口部42から吹き出される送風空気の流量が大きく変化することを抑制することができ、快適性を向上させることができる。一方、フルクールモードのときには、下側冷風バイパスBy2へ流れる送風空気の流量を最大とする。車室11内の目標温度と吹き出される調和空気の温度との差が大きいフルクールモードにおいては、下側冷風バイパスBy2へ流れる送風空気の流量を最大とすることにより、車室11の後部も早急に冷却することができる。車室11内の目標温度への早期の到達を可能としつつ、快適性を向上させることのできる車両用空調ユニット20を提供することができる。
【0041】
補助調整部65は、下側調和空気の流れ方向に沿って見たときにリヤ開口部44と重なって位置している。後席部送風切替部17が突然閉塞されたときであっても、下側冷風バイパスBy2を通過する送風空気の流量が予め減少されるので、ベント開口部42から吹き出される送風空気の流量が増加することを抑制できる。車室11内の快適性をより向上させることができる。
【0042】
補助調整部65は、下側調和空気の流れ方向に沿って見たときにベント開口部42と重なって位置している。後席部送風切替部17が突然閉塞されたときであっても、下側冷風バイパスBy2を通過する送風空気の流量が予め減少されるので、ベント開口部42から吹き出される送風空気の流量の増加を抑制できる。車室11内の快適性をより向上させることができる。
【0043】
尚、本発明による車両用空調ユニットは、ケースが左右の部屋に区画されている例を用いて説明を行ったが、左右に区画されていない車両用空調ユニットにも適用可能である。
【0044】
また、上側ミックス空間Mi1には、送風空気をベント開口部42へガイドするためのガイド部材(バッフルプレート)を設けることも可能である。
【0045】
また、上側ミックスドア50は、スライド可能な上側シャッタ本体54を有しているとして説明したが、周知の片持ちドアやバタフライドアにより構成されていてもよい。上側冷風バイパスBy1を通過する送風空気とヒータ33のうち上部を通過する送風空気との比率を調整可能であれば、上側ミックスドア50の形態は限定されない。
【0046】
本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の車両用空調ユニットは、乗用車両に搭載するのに好適である。
【符号の説明】
【0048】
11…車室
12…前席
13…後席
16…リヤダクト
17…後席部送風切替部
20…車両用空調ユニット
32…エバポレータ
33…ヒータ
40…ケース
42…ベント開口部
44…リヤ開口部
50…上側ミックスドア
60…下側ミックスドア
61…下側回転軸部(回転軸部)
62…下側ピニオン部(ピニオン部)
63…下側ラック部(ラック部)
64…下側シャッタ本体(シャッタ本体)
65…補助調整部
By1…上側冷風バイパス
By2…下側冷風バイパス
Mi1…上側ミックス空間
Mi2…下側ミックス空間