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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139410
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】位置計算装置および位置計算方法
(51)【国際特許分類】
   B61L 3/12 20060101AFI20230927BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20230927BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20230927BHJP
【FI】
B61L3/12 Z
G01C21/26 B
B60L3/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044924
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】318006365
【氏名又は名称】JRCモビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(74)【代理人】
【識別番号】100141678
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 久嗣
【テーマコード(参考)】
2F129
5H125
5H161
【Fターム(参考)】
2F129AA08
2F129BB03
2F129BB15
2F129BB49
2F129DD13
2F129DD20
2F129EE02
2F129EE78
2F129FF02
2F129FF20
2F129FF57
2F129FF62
2F129HH12
5H125AA05
5H125CA18
5H125EE55
5H161AA01
5H161BB02
5H161DD21
(57)【要約】
【課題】移動体の位置を効率的に計算する。
【解決手段】移動体の測位座標から遠い方の設備座標の側から所定個数の設備座標を除外する処理を繰り返して測位座標に最も近い方から2つの相互に隣り合う設備座標を特定する軌道座標特定部52と、特定された2つの相互に隣り合う設備座標どうしを結ぶ線分上に測位座標を割り付けるように補正したうえで移動体の位置として測位座標を割り付けた位置のキロ程を求めるキロ程計算部53と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の位置を測位して測位座標を計算する測位部と、
前記移動体が走行する設備が敷設されている地域がメッシュ状に区画されて設定される複数のエリアのうち前記測位座標が位置しているエリアを特定するとともに前記設備の平面視における形状を表すように連なる複数の設備座標のうち前記特定されたエリア内に位置する両端の設備座標を特定するエリア特定部と、
前記両端の設備座標のうち前記測位座標から遠い方の設備座標の側から前記特定されたエリア内に位置する設備座標の個数の1/n(但し、1<n)に相当する個数の設備座標を除外する設備座標特定部と、
前記移動体の位置を求めるキロ程計算部と、を有し、
前記設備座標特定部は、前記設備座標を除外する処理後に残っている設備座標の連なりの両端の設備座標のうち前記測位座標から遠い方の設備座標の側から前記設備座標の連なりを構成する設備座標の個数の1/nに相当する個数の設備座標を除外する処理を繰り返して前記測位座標に最も近い方から2つの相互に隣り合う設備座標を特定し、
前記キロ程計算部は、前記特定された2つの相互に隣り合う設備座標どうしを結ぶ線分上に前記測位座標を割り付けるように補正したうえで前記移動体の位置として前記測位座標を割り付けた位置のキロ程を求める、
ことを特徴とする位置計算装置。
【請求項2】
前記複数のエリアそれぞれと各エリア内に位置する前記設備座標との対応づけを含むデータベースを有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の位置計算装置。
【請求項3】
前記測位部と前記エリア特定部と前記設備座標特定部と前記キロ程計算部とが前記移動体に搭載される、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の位置計算装置。
【請求項4】
前記測位部が前記移動体に搭載されるとともに前記エリア特定部と前記設備座標特定部と前記キロ程計算部とが前記移動体から離れた場所に設置される、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の位置計算装置。
【請求項5】
前記移動体が鉄道車両であるとともに前記設備が鉄道軌道である、
ことを特徴とする請求項1から4のうちのいずれか1項に記載の位置計算装置。
【請求項6】
移動体の位置を測位して測位座標を計算する処理と、
前記移動体が走行する設備が敷設されている地域がメッシュ状に区画されて設定される複数のエリアのうち前記測位座標が位置しているエリアを特定する処理と、
前記設備の平面視における形状を表すように連なる複数の設備座標のうち前記特定されたエリア内に位置する両端の設備座標を特定する処理と、
前記両端の設備座標のうち前記測位座標から遠い方の設備座標の側から前記特定されたエリア内に位置する設備座標の個数の1/n(但し、1<n)に相当する個数の設備座標を除外する処理と、
前記移動体の位置を求める処理と、を有し、
前記設備座標を除外する処理後に残っている設備座標の連なりの両端の設備座標のうち前記測位座標から遠い方の設備座標の側から前記設備座標の連なりを構成する設備座標の個数の1/nに相当する個数の設備座標を除外する処理を繰り返して前記測位座標に最も近い方から2つの相互に隣り合う設備座標を特定し、
前記特定された2つの相互に隣り合う設備座標どうしを結ぶ線分上に前記測位座標を割り付けるように補正したうえで前記移動体の位置として前記測位座標を割り付けた位置のキロ程を求める、
ことを特徴とする位置計算方法。
【請求項7】
前記複数のエリアそれぞれと各エリア内に位置する前記設備座標との対応づけを含むデータベースを利用する、
ことを特徴とする請求項6に記載の位置計算方法。
【請求項8】
前記移動体が鉄道車両であるとともに前記設備が鉄道軌道である、
ことを特徴とする請求項6または7に記載の位置計算方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄道軌道や高速道路などの所定の基盤設備上を走行する移動体の位置を計算する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の位置を計算する装置として、GPS衛星(GPS:Global Positioning System の略:全地球測位システム)を利用して鉄道車両の車両位置を測位する測位手段と、軌道の位置情報を含む地図情報および前記測位した車両位置に基づいて、鉄道車両の位置を予め設定された起点からのキロ程で算出するキロ程算出手段と、を備える車両位置算出装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-186651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、GNSS受信機(GNSS:Global Navigation Satellite System の略:全球測位衛星システム)などによって測位される緯度経度を用いるとともにGIS(Geographic Information System の略:地理情報システム;尚、鉄道路線ごとの鉄道軌道の緯度経度およびキロ程の情報が整備されている)データを参照して鉄道軌道上を走行する鉄道車両の位置(具体的には、キロ程)を計算する場合、高速で移動する鉄道車両の位置を可能な限り即時的に計算するには、GNSSの測位間隔を短くして鉄道車両の位置の計算間隔を短くすることが考えられる。一方で、計算される鉄道車両の位置に基づいて様々な処理を行うアプリケーション機能を含めた処理は、GNSSの測位間隔の時間内ですべての処理を完結させる必要があるため、鉄道車両の位置の計算を高速化するために鉄道車両の位置を計算する際のGISデータの検索を効率化して検索回数を削減することが望まれる。
【0005】
そこでこの発明は、移動体の位置を効率的に計算することが可能な位置計算装置および位置計算方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明に係る位置計算装置は、移動体の位置を測位して測位座標を計算する測位部と、前記移動体が走行する設備が敷設されている地域がメッシュ状に区画されて設定される複数のエリアのうち前記測位座標が位置しているエリアを特定するとともに前記設備の平面視における形状を表すように連なる複数の設備座標のうち前記特定されたエリア内に位置する両端の設備座標を特定するエリア特定部と、前記両端の設備座標のうち前記測位座標から遠い方の設備座標の側から前記特定されたエリア内に位置する設備座標の個数の1/n(但し、1<n)に相当する個数の設備座標を除外する設備座標特定部と、前記移動体の位置を求めるキロ程計算部と、を有し、前記設備座標特定部は、前記設備座標を除外する処理後に残っている設備座標の連なりの両端の設備座標のうち前記測位座標から遠い方の設備座標の側から前記設備座標の連なりを構成する設備座標の個数の1/nに相当する個数の設備座標を除外する処理を繰り返して前記測位座標に最も近い方から2つの相互に隣り合う設備座標を特定し、前記キロ程計算部は、前記特定された2つの相互に隣り合う設備座標どうしを結ぶ線分上に前記測位座標を割り付けるように補正したうえで前記移動体の位置として前記測位座標を割り付けた位置のキロ程を求める、ことを特徴とする。
【0007】
この発明に係る位置計算装置は、前記複数のエリアそれぞれと各エリア内に位置する前記設備座標との対応づけを含むデータベースを有する、ようにしてもよい。
【0008】
この発明に係る位置計算装置は、前記測位部と前記エリア特定部と前記設備座標特定部と前記キロ程計算部とが前記移動体に搭載される、ようにしてもよい。
【0009】
この発明に係る位置計算装置は、前記測位部が前記移動体に搭載されるとともに前記エリア特定部と前記設備座標特定部と前記キロ程計算部とが前記移動体から離れた場所に設置される、ようにしてもよい。
【0010】
この発明に係る位置計算装置は、前記移動体が鉄道車両であるとともに前記設備が鉄道軌道である、ようにしてもよい。
【0011】
また、この発明に係る位置計算方法は、移動体の位置を測位して測位座標を計算する処理と、前記移動体が走行する設備が敷設されている地域がメッシュ状に区画されて設定される複数のエリアのうち前記測位座標が位置しているエリアを特定する処理と、前記設備の平面視における形状を表すように連なる複数の設備座標のうち前記特定されたエリア内に位置する両端の設備座標を特定する処理と、前記両端の設備座標のうち前記測位座標から遠い方の設備座標の側から前記特定されたエリア内に位置する設備座標の個数の1/n(但し、1<n)に相当する個数の設備座標を除外する処理と、前記移動体の位置を求める処理と、を有し、前記設備座標を除外する処理後に残っている設備座標の連なりの両端の設備座標のうち前記測位座標から遠い方の設備座標の側から前記設備座標の連なりを構成する設備座標の個数の1/nに相当する個数の設備座標を除外する処理を繰り返して前記測位座標に最も近い方から2つの相互に隣り合う設備座標を特定し、前記特定された2つの相互に隣り合う設備座標どうしを結ぶ線分上に前記測位座標を割り付けるように補正したうえで前記移動体の位置として前記測位座標を割り付けた位置のキロ程を求める、ことを特徴とする。
【0012】
この発明に係る位置計算方法は、前記複数のエリアそれぞれと各エリア内に位置する前記設備座標との対応づけを含むデータベースを利用する、ようにしてもよい。
【0013】
この発明に係る位置計算方法は、前記移動体が鉄道車両であるとともに前記設備が鉄道軌道である、ようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
この発明に係る位置計算装置や位置計算方法によれば、移動体の測位座標が位置しているエリアを特定するとともに前記エリア内の設備座標のうち測位座標から遠い方の所定個数の設備座標を除外する処理を繰り返して測位座標に最も近い方から2つの相互に隣り合う設備座標を特定して移動体の位置を求めるようにしているので、移動体の位置を効率的に計算することが可能となる。
【0015】
この発明に係る位置計算装置や位置計算方法によれば、複数のエリアそれぞれと各エリア内に位置する設備座標との対応づけを含むデータベースを利用するようにした場合には、移動体の位置を一層効率的に計算することが可能となる。
【0016】
この発明に係る位置計算装置は、当該位置計算装置を構成する各部のすべてが移動体に搭載されるようにしてもよく、或いは、当該位置計算装置を構成する各部のうちの一部が移動体に搭載されるとともに残りが移動体から離れた場所に設置されるようにしてもよいので、移動体の位置の計算の目的などに応じて当該位置計算装置を構成する各部の配置を調整することができる。このため、この発明に係る位置計算装置によれば、移動体の位置の計算を行う機序としての汎用性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】この発明の実施の形態に係る位置計算装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
図2図1の位置計算装置における処理手順であるとともにこの発明の実施の形態に係る位置計算方法の処理手順を示すフローチャートである。
図3】鉄道路線の鉄道軌道に対するメッシュの設定のイメージを示す図である。
図4図1の位置計算装置のエリア特定部におけるエリアの特定処理を説明する図である。
図5図1の位置計算装置の軌道座標特定部における最近傍の一対の軌道座標の特定処理を説明する図である。
図6図1の位置計算装置の軌道座標特定部における最近傍の一対の軌道座標の特定処理の最終段階における処理を説明する図である。
図7図1の位置計算装置のキロ程計算部における測位座標の補正後の位置のキロ程の計算処理を説明する図である。
図8】この発明に係る位置計算装置の他の態様の概略構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。この実施の形態では、この発明に係る位置計算装置1や位置計算方法が、鉄道軌道上を走行する鉄道車両を移動体として、前記鉄道車両の位置の計算に用いられる場合を例に挙げて説明する。位置計算装置1は、鉄道軌道上を走行する鉄道車両に搭載される。
【0019】
図1は、この発明の実施の形態に係る位置計算装置1の概略構成を示す機能ブロック図である。図2は、この発明の実施の形態に係る位置計算装置1における処理手順であるとともにこの発明の実施の形態に係る位置計算方法の処理手順を示すフローチャートである。
【0020】
位置計算装置1は、鉄道車両に搭載されて、当該鉄道車両の現在位置として、鉄道路線ごとに設定される起点(別言すると、始発駅)からの距離であるキロ程を計算して出力するための機序であり、主に、制御部2と、記憶部3と、測位部4と、位置計算部5と、インターフェース部6と、表示部7と、を有する。位置計算装置1を構成する各部は、バスを介して信号の送受を行って相互に情報伝達可能であるように接続される。
【0021】
実施の形態に係る位置計算装置1は、移動体(この実施の形態では、鉄道車両)の位置を測位して測位座標を計算する測位部4と、移動体が走行する設備(この実施の形態では、鉄道軌道)が敷設されている地域がメッシュ状に区画されて設定される複数のエリアのうち測位座標が位置しているエリアを特定するとともに前記設備の平面視における形状を表すように連なる複数の設備座標(この実施の形態では、軌道座標)のうち特定されたエリア内に位置する両端の設備座標を特定するエリア特定部51と、前記両端の設備座標のうち測位座標から遠い方の設備座標の側から特定されたエリア内に位置する設備座標の個数の1/n(但し、1<n)に相当する個数の設備座標を除外する設備座標特定部(この実施の形態では、軌道座標特定部52)と、移動体の位置を求めるキロ程計算部53と、を有し、設備座標特定部(軌道座標特定部52)は、設備座標を除外する処理後に残っている設備座標の連なりの両端の設備座標のうち測位座標から遠い方の設備座標の側から設備座標の連なりを構成する設備座標の個数の1/nに相当する個数の設備座標を除外する処理を繰り返して測位座標に最も近い方から2つの相互に隣り合う設備座標を特定し、キロ程計算部53は、特定された2つの相互に隣り合う設備座標どうしを結ぶ線分上に測位座標を割り付けるように補正したうえで移動体の位置として測位座標を割り付けた位置のキロ程を求める、ようにしている。
【0022】
また、実施の形態に係る位置計算方法は、移動体の位置を測位して測位座標を計算する処理(ステップS1)と、移動体が走行する設備が敷設されている地域がメッシュ状に区画されて設定される複数のエリアのうち測位座標が位置しているエリアを特定する処理(ステップS2)と、前記設備の平面視における形状を表すように連なる複数の設備座標(この実施の形態では、軌道座標)のうち特定されたエリア内に位置する両端の設備座標を特定する処理(ステップS3)と、前記両端の設備座標のうち測位座標から遠い方の設備座標の側から特定されたエリア内に位置する設備座標の個数の1/n(但し、1<n)に相当する個数の設備座標を除外する処理(ステップS4)と、移動体の位置を求める処理(ステップS5)と、を有し、設備座標を除外する処理後に残っている設備座標の連なりの両端の設備座標のうち測位座標から遠い方の設備座標の側から設備座標の連なりを構成する設備座標の個数の1/nに相当する個数の設備座標を除外する処理を繰り返して測位座標に最も近い方から2つの相互に隣り合う設備座標を特定し、特定された2つの相互に隣り合う設備座標どうしを結ぶ線分上に測位座標を割り付けるように補正したうえで移動体の位置として測位座標を割り付けた位置のキロ程を求める、ようにしている。
【0023】
(位置計算装置の全体構成)
制御部2は、位置計算装置1を構成する各部の動作を制御する機能を備え、例えば、鉄道車両の位置(具体的には、キロ程)の計算に纏わる演算処理を行う中央処理装置(CPU:Central Processing Unit の略)などを有する機序として構成される。
【0024】
制御部2は、記憶部3に格納されている、位置計算装置1の動作を制御するためのプログラム(図示省略)を中央処理装置が実行することにより、前記プログラムに従って位置計算装置1を構成する各部の処理の開始,内容,および終了を統制して制御する。
【0025】
記憶部3は、中央処理装置が鉄道車両の位置(具体的には、キロ程)の計算に纏わる演算処理を行う際に利用するプログラム,各種の情報,およびデータなどを記憶して格納などするための記憶領域となったり中央処理装置が前記演算処理を行う際に生成されるデータや情報などを一時的に記憶などするための作業領域となったりする機能を備え、例えば、読み取り専用の記憶装置であるROM(Read Only Memory の略)、読み出しおよび書き込み可能な記憶装置であるRAM(Random Access Memory の略)、ならびにハードディスクのうちの少なくとも1つを有する機序として構成される。
【0026】
記憶部3には、軌道座標データベース31と、エリア座標対応データベース32と、が格納される。
【0027】
軌道座標データベース31には、鉄道路線ごとに、鉄道軌道の平面視における形状の情報(別言すると、位置情報)とキロ程の情報とが蓄積される。鉄道軌道の平面視における形状の情報を構成する、前記鉄道軌道の平面視における形状に沿って連なる(言い換えると、形状を表すように連なる)複数の点の位置座標(具体的には、緯度および経度)のことを「軌道座標」と呼ぶ。
【0028】
軌道座標データベース31には、具体的には、鉄道路線ごとに、複数の軌道座標を相互に区別するための識別番号としての軌道座標番号と、各軌道座標の緯度および経度と、当該の鉄道路線の起点(別言すると、始発駅)から各軌道座標までの距離を示すキロ程と、の組み合わせデータが蓄積され保存される(下掲の表1参照)。
【0029】
【表1】
【0030】
軌道座標データベース31に蓄積される組み合わせデータにおける軌道座標番号は、当該の鉄道路線の起点から始まる序数(言い換えると、自然数の続き番号)として与えられる。軌道座標番号が1の軌道座標は当該の鉄道路線の起点(別言すると、始発駅)に相当する軌道座標であり、軌道座標番号が最も大きい値(上記の表1に示す例ではJ)の軌道座標は当該の鉄道路線の終点(別言すると、終着駅)に相当する軌道座標である。
【0031】
軌道座標データベース31に蓄積される組み合わせデータにおける軌道座標の緯度および経度として、例えば、GIS(Geographic Information System の略:地理情報システム)データにおける鉄道軌道の位置座標の緯度および経度が用いられる。
【0032】
軌道座標データベース31に蓄積される組み合わせデータにおけるキロ程として、例えば、相互に隣り合う軌道座標どうし各々の2点間距離が求められて起点から当該の軌道座標まで足し合わされた値が用いられたり、或いは、鉄道事業者によって定められている、起点から当該の軌道座標までの距離の値が用いられたりする。
【0033】
エリア座標対応データベース32には、メッシュ状に区画されたエリアの形状の情報と当該のエリア内に位置する軌道座標の情報とが蓄積される。
【0034】
エリアは、鉄道路線の起点から終点までの鉄道軌道が敷設されている地域がメッシュ状に区画されて設定される(図3参照)。エリアの区画は、鉄道軌道が敷設されている地域が独自の規則に従ってメッシュ状に区画されて設定されるようにしてもよく、或いは、鉄道軌道が敷設されている地域と対応する範囲について既存の仕法に従って設定されるようにしてもよい。エリアの区画は、例えば、経緯度に基づくジオコーディングであるGeohashに従って設定されるようにしてもよい。
【0035】
メッシュ状のエリア各々の形状は、正方形に設定されるようにしてもよく、或いは、長方形に設定されるようにしてもよい。メッシュ状のエリア各々の大きさは、特定の大きさに限定されるものではなく、例えば下記のアやイが考慮されるなどしたうえで適当な値に適宜設定される。メッシュ状のエリア各々の大きさは、例えば、1辺が2~3km程度に設定され得る。
ア)エリア各々が小さいほど、各エリアに含まれる軌道座標の個数が少なくなってエリア単位の処理時間は短くなる一方で、エリアの個数が多くなってエリアの検索時間は長くなる。
イ)エリア各々が大きいほど、エリアの個数が少なくなってエリアの検索時間は短くなる一方で、各エリアに含まれる軌道座標の個数が多くなってエリア単位の処理時間は長くなる。
【0036】
メッシュ状のエリア各々の形状や大きさは、或る鉄道路線の起点から終点までの鉄道軌道が敷設されている地域の全体にわたってすべて同じであるように設定されるようにしてよく、或いは、前記地域の部分によって異なるように設定されるようにしてもよい。例えば、鉄道軌道の平面視における形状が(部分的に)折り返したり蛇行したりしている場合に、鉄道軌道が或るエリアの外側へと一旦出てからUターンして前記或るエリア内へと再び入ってくるようなことがないように、前記地域の部分ごとにエリア各々の形状や大きさが調節されて設定されるようにしてもよい。
【0037】
エリア座標対応データベース32には、具体的には、鉄道路線ごとに、複数のエリアを相互に区別するための識別番号としてのエリア番号と、各エリアの緯度の最小値および最大値と、各エリアの経度の最小値および最大値と、各エリア内に位置する軌道座標の軌道座標番号の始まりの値および終わりの値と、の組み合わせデータが蓄積され保存される(下掲の表2参照)。
【0038】
【表2】
【0039】
エリア座標対応データベース32に蓄積される組み合わせデータにおける、各エリア内に位置する軌道座標の軌道座標番号の始まりの値は、当該のエリア内に位置する軌道座標のうちの軌道座標番号の最も小さい値(言い換えると、最も起点方の軌道座標の軌道座標番号の値)であり、また、各エリア内に位置する軌道座標の軌道座標番号の終わりの値は、当該のエリア内に位置する軌道座標のうちの軌道座標番号の最も大きい値(言い換えると、最も終点方の軌道座標の軌道座標番号の値)である。
【0040】
測位部4は、アンテナを備え、GNSS(Global Navigation Satellite System の略:全球測位衛星システム)衛星から送出される電波(別言すると、GNSS信号)を受信し、受信した前記電波(GNSS信号)を利用して当該測位部4の位置座標(具体的には、緯度および経度;「測位座標」と呼ぶ)を計算/測位して測位データとして出力する。GNSSによる測位の仕法は周知の技術であるので詳細な説明は省略する。
【0041】
軌道座標データベース31に蓄積される組み合わせデータにおける軌道座標と、測位部4から出力される測位データにおける測位座標とは、共通の座標系における位置座標として整備されたり計算/測位されたりする、或いは、共通の座標系における位置座標に変換される。
【0042】
位置計算部5は、測位部4から出力される測位データを用いて、前記測位部4の位置(延いては、鉄道車両の位置)として、鉄道路線ごとに設定される起点(別言すると、始発駅)からの距離であるキロ程を計算する機能を備える。位置計算部5による処理は、予め設定される所定の時間間隔/周期で行われる。
【0043】
インターフェース部6は、位置計算部5に対する入出力のインターフェースを提供する機能を備え、例えば、位置計算部5によって計算される鉄道車両の位置(具体的には、キロ程)のデータの入力を受け、前記鉄道車両の位置(具体的には、キロ程)を表示部7に表示して出力する。
【0044】
表示部7は、インターフェース部6から出力される鉄道車両の位置(具体的には、キロ程)を含む各種の情報を表示する機能を備え、例えば、液晶ディスプレイを備える機序として構成される。
【0045】
(位置計算部の処理内容)
位置計算部5は、測位部4から出力される測位データ(具体的には、測位座標)を用いて、前記測位部4の位置(延いては、鉄道車両の位置)として、鉄道路線ごとに設定される起点(別言すると、始発駅)からの距離であるキロ程を計算するための機序であり、エリア特定部51,軌道座標特定部52,およびキロ程計算部53を有する。
【0046】
測位部4が、GNSS衛星から送出される電波(別言すると、GNSS信号)を利用して当該測位部4の位置座標(具体的には、緯度および経度;即ち、測位座標)を計算/測位して出力する(ステップS1)。
【0047】
エリア特定部51は、ステップS1の処理において取得される測位座標が位置しているエリアを特定する(ステップS2)。
【0048】
エリア特定部51は、具体的には、測位部4から出力される測位座標(具体的には、緯度および経度)の入力を受けるとともにエリア座標対応データベース32を参照して、前記測位座標の値と、エリア座標対応データベース32に蓄積されている各エリアの緯度の最小値および最大値ならびに経度の最小値および最大値と、を対比して前記測位座標が位置しているエリアを特定する。
【0049】
例えば、図3に示す例では、測位座標M(図中の▼印の位置)がエリア番号6のエリア内に位置しているので、エリア特定部51によってエリア番号6のエリアが特定される。
【0050】
エリア特定部51は、測位座標が各エリアの周縁部分に位置している場合に、前記測位座標が位置しているエリアに加えて、前記エリアの周縁部分と隣接するエリアも特定するようにしてもよい。
【0051】
例えば、図3に示す例のうちの一部分を拡大した図4に示す例では、エリアの特定処理が下記のaやbのように行われるようにしてもよい。
a)エリア番号3のエリアのうちの北側の縁部Enに測位座標Mが位置している場合に、エリア番号3のエリアに加えて、前記エリア番号3のエリアの北側のエリアであるエリア番号4のエリアも特定されるようにしてもよい。
b)エリア番号3のエリアのうちの北東の角部Eneに測位座標Mが位置している場合に、エリア番号3のエリアに加えて、前記エリア番号3のエリアの北側のエリアであるエリア番号4のエリアと、前記エリア番号3のエリアの北東側のエリアであるエリア番号5のエリアとのうちの少なくとも一方も特定されるようにしてもよい。
【0052】
エリア特定部51は、次に、エリア座標対応データベース32を参照して、ステップS2の処理において特定されるエリアのエリア番号と対応づけられている軌道座標番号の始まりの値と終わりの値とを取得する(ステップS3)。エリア特定部51は、すなわち、測位座標が位置しているエリア内に位置する軌道座標の連なりの両端の軌道座標を特定して前記両端の軌道座標それぞれの軌道座標番号の値を取得する。
【0053】
エリア特定部51は、ステップS2の処理において測位座標が位置しているエリアに加えて前記エリアの周縁部分と隣接するエリアも特定して複数のエリアを特定した場合には、前記複数のエリア各々のエリア番号と対応づけられている軌道座標番号の始まりの値と終わりの値とをそれぞれ取得したうえで、ステップS3の処理の結果として、取得された複数の始まりの値のうちで最も小さい値を軌道座標番号の始まりの値とするとともに取得された複数の終わりの値のうちで最も大きい値を軌道座標番号の終わりの値とする。
【0054】
そして、エリア特定部51は、測位部4から出力されて入力を受けた測位座標(具体的には、緯度および経度)、ならびに、上記で取得した軌道座標番号の始まりの値および終わりの値を軌道座標特定部52へと出力する。
【0055】
軌道座標特定部52は、ステップS3の処理において取得される軌道座標番号の始まりの値の軌道座標から終わりの値の軌道座標までの中からステップS1の処理において取得される測位座標に最も近い方から2つの相互に隣り合う軌道座標を特定する(ステップS4)。ステップS4の処理において特定される相互に隣り合う2つの軌道座標のことを「最近傍の一対の軌道座標」と呼ぶ。
【0056】
軌道座標特定部52は、具体的には、エリア特定部51から出力される測位座標Mならびに軌道座標番号の始まりの値Jsおよび終わりの値Jeの入力を受け、前記測位座標Mと前記軌道座標番号の始まりの値Jsの軌道座標との間の距離Dsを計算するとともに、前記測位座標Mと前記軌道座標番号の終わりの値Jeの軌道座標との間の距離Deを計算する(図5(A)参照)(ステップS4-1)。軌道座標特定部52は、すなわち、測位座標Mと前記測位座標Mが位置しているエリア内に位置する軌道座標の連なりの両端の軌道座標それぞれとの間の距離を計算する。なお、図5は、最近傍の一対の軌道座標の特定処理を説明するためのイメージ図であり、鉄道軌道の平面視における形状は考慮されていない。
【0057】
軌道座標特定部52は、続いて、ステップS4-1の処理において計算される距離Dsと距離Deとを比べて値が大きい方の軌道座標(即ち、距離が長く遠い方の軌道座標)の側を《除外側》として指定する(ステップS4-2)。図5(A)に示す例では、Ds<Deとし、軌道座標番号の終わりの値Jeの軌道座標の側が《除外側》に指定される。
【0058】
ステップS4-1の処理において計算される距離Dsと距離Deとが仮に同じ値であるときは、例えば、軌道座標番号が大きい方の軌道座標(言い換えると、終点方の軌道座標)の側が《除外側》として指定される。
【0059】
軌道座標特定部52は、また、入力された軌道座標番号の始まりの値Jsと終わりの値Jeとから、前記始まりの値Jsの軌道座標から終わりの値Jeの軌道座標までの軌道座標の個数Tを下記の数式1に従って算出する(ステップS4-3)。
(数1) T = Je-Js+1
【0060】
軌道座標特定部52は、次に、ステップS4-2の処理において指定される《除外側》からステップS4-3の処理において算出される軌道座標の個数Tの1/n(但し、1<n)に相当する個数の軌道座標を最近傍の一対の軌道座標の候補から除外する(ステップS4-4)。
【0061】
除外する軌道座標の個数(言い換えると、割合)を決定づけるnの値は、特定の値には限定されないものの(但し、1<n)、例えば、あくまで一例として挙げると、2.5~5程度の範囲のうちのいずれかの値に設定される。nの値は、或る鉄道路線の起点から終点までの鉄道軌道の平面視における形状が考慮されるなどしたうえで、前記鉄道軌道が敷設されている地域が区画されて設定されるメッシュ状のエリアのすべてにおいて同じであるように設定されるようにしてもよく、或いは、前記メッシュ状のエリアによって異なるように設定されるようにしてもよい。
【0062】
除外する軌道座標の個数であるT×(1/n)の値の小数点以下の部分は切り上げるようにしても切り捨てるようにしてもどちらでもよいが、T×(1/n)の値が1未満の場合は1とするようにする。
【0063】
また、軌道座標の個数Tの1/nに相当する個数の軌道座標を最近傍の一対の軌道座標の候補から除外すると最近傍の一対の軌道座標の候補が1個になってしまう場合には、最近傍の一対の軌道座標の候補が2個残るように、候補から除外する個数が調節される。
【0064】
軌道座標特定部52は、次に、ステップS4-4の処理後に残っている軌道座標の個数が2個になっているか否かを判断する(ステップS4-5)。
【0065】
ステップS4-4の処理後に残っている軌道座標の個数が2個になっていない場合は(ステップS4-5:No)、軌道座標特定部52は、ステップS4-1の処理に戻ってステップS4-5までの処理を繰り返す。
【0066】
このとき、軌道座標特定部52は、ステップS4-4の処理後に残っている軌道座標の各々の軌道座標番号のうち最も小さい値を始まりの値Jsとするとともに最も大きい値を終わりの値Jeとして、エリア特定部51から出力される測位座標Mと新たに設定される前記始まりの値Jsの軌道座標との間の距離Dsを計算するとともに、前記測位座標Mと新たに設定される前記終わりの値Jeの軌道座標との間の距離Deを計算する(図5(B)参照)(ステップS4-1)。軌道座標特定部52は、すなわち、測位座標MとステップS4-4の処理後に残っている軌道座標の連なりの両端の軌道座標それぞれとの間の距離を計算する。
【0067】
そして、軌道座標特定部52は、ステップS4-1の処理において計算される距離Dsと距離Deとを比べて値が大きい方の軌道座標(即ち、距離が長く遠い方の軌道座標)の側を《除外側》として指定し(ステップS4-2)、新たに設定される始まりの値Jsの軌道座標から終わりの値Jeの軌道座標までの軌道座標の個数Tを上記の数式1に従って算出し(ステップS4-3)、ステップS4-2の処理において指定される《除外側》からステップS4-3の処理において算出される軌道座標の個数Tの1/nに相当する個数の軌道座標を最近傍の一対の軌道座標の候補から除外して(ステップS4-4)、ステップS4-4の処理後に残っている軌道座標の個数が2個になっているか否かを判断する(ステップS4-5)。
【0068】
ステップS4-3の処理において算出される軌道座標の個数Tの値が3であるとき、軌道座標特定部52は、ステップS4-4の処理として、ステップS4-1の処理において計算される距離Dsと距離Deとを比べて値が大きい方の軌道座標(即ち、距離が長く遠い方の軌道座標)1個を最近傍の一対の軌道座標の候補から除外する(図6(A)参照)。図6(A)に示す例では、Ds<Deとし、軌道座標番号の終わりの値Jeの軌道座標が除外される。残り2個の軌道座標が最近傍の一対の軌道座標となる。
【0069】
また、ステップS4-3の処理において算出される軌道座標の個数Tの値が3であり、且つ、ステップS4-1の処理において計算される距離Dsと距離Deとが同じ値であるとき、軌道座標特定部52は、ステップS4-4の処理として、例えば、軌道座標番号が大きい方の軌道座標(言い換えると、終点方の軌道座標;この場合は、軌道座標番号の終わりの値Jeの軌道座標)1個を最近傍の一対の軌道座標の候補から除外する(図6(B)参照)。残り2個の軌道座標が最近傍の一対の軌道座標となる。
【0070】
一方、ステップS4-4の処理後に残っている軌道座標の個数が2個になっている場合は(ステップS4-5:Yes)、軌道座標特定部52は、前記2個の軌道座標(即ち、最近傍の一対の軌道座標)の軌道座標番号をキロ程計算部53へと出力する。
【0071】
キロ程計算部53は、ステップS1の処理において取得される測位座標とステップS4の処理において特定される最近傍の一対の軌道座標とを用いて鉄道車両の現在位置としてキロ程を計算する(ステップS5)。
【0072】
ここで、測位データに誤差が無くて測位座標が正確であり、且つ、鉄道軌道の位置情報(例えば、GISデータ)が十分な精度を備えて軌道座標が正確であれば、測位座標は、最近傍の一対の軌道座標どうしを結ぶ線分上に位置する、すなわち鉄道軌道上に位置することとなる。しかしながら実際には、測位データに誤差が含まれたり、鉄道軌道の位置情報の精度が不十分であったりするために、測位座標は、最近傍の一対の軌道座標どうしを結ぶ線分上(即ち、鉄道軌道上)から外れた位置を示す(可能性がある)。
【0073】
そこで、測位座標を最近傍の一対の軌道座標どうしを結ぶ線分上の位置へと補正するため、キロ程計算部53は、最近傍の一対の軌道座標どうしを結ぶ線分上に測位座標を割り付ける。キロ程計算部53は、そのうえで、割り付け位置のキロ程を求める。なお、相互に隣り合う2つの軌道座標の間における鉄道軌道の形状が直線と見做せる程度の間隔/距離で軌道座標は整備されているとし、相互に隣り合う2つの軌道座標の間における鉄道軌道の形状は直線であるとして扱われる。
【0074】
キロ程計算部53は、具体的には、エリア特定部51から出力される測位座標Mの入力を受けるとともに軌道座標特定部52から出力される最近傍の一対の軌道座標Aおよび軌道座標Bの軌道座標番号の入力を受け、前記測位座標Mから前記最近傍の一対の軌道座標Aと軌道座標Bとの間の線分ABへと垂線を下ろし、前記線分ABと前記垂線との交点Pの位置を、鉄道軌道上に存在する鉄道車両の位置として測位座標Mを補正する(図7参照)。なお、軌道座標Aが軌道座標Bよりも起点方の軌道座標であるとする。
【0075】
図7に示す例では、三平方の定理に基づいて下記の数式2Aおよび数式2Bが成り立つ。
(数2A) DMA 2 = a2+m2
(数2B) DMB 2 = b2+m2
ここに、DMA:測位座標Mと軌道座標Aとの間の距離
MB:測位座標Mと軌道座標Bとの間の距離
a:軌道座標Aと垂線の交点Pとの間の距離
b:軌道座標Bと垂線の交点Pとの間の距離
m:測位座標Mと垂線の交点Pとの間の距離
【0076】
数式2Aおよび数式2Bを、測位座標Mの座標(xM,yM),最近傍の一対の軌道座標Aの座標(xA,yA)および軌道座標Bの座標(xB,yB),ならびに線分ABと垂線との交点Pの座標(xP,yP)を用いて表すことにより、未知の座標である垂線の交点Pの座標(xP,yP)が求められる。
【0077】
キロ程計算部53による計算における各座標の値として、緯度・経度の値(即ち、経緯度座標系における値であり、例えばWGS84座標系における値やITRF座標系における値)が用いられるようにしてもよく、或いは、緯度・経度の値を所定の平面直角座標系に変換した値が用いられるようにしてもよい。
【0078】
キロ程計算部53は、続いて、下記の数式3に従って、垂線の交点Pのキロ程KPを算出する。下記の数式3は、軌道座標Aのキロ程KAに軌道座標Aと垂線の交点Pとの間のキロ程を加えることによって測位座標Mの割り付け位置のキロ程を求めることに相当する。
(数3) KP = KA+(KB-KA)×a/(a+b)
ここに、KP:垂線の交点Pのキロ程
A:軌道座標Aのキロ程
B:軌道座標Bのキロ程
a:軌道座標Aと垂線の交点Pとの間の距離
b:軌道座標Bと垂線の交点Pとの間の距離
【0079】
実施の形態に係る位置計算装置1や位置計算方法によれば、移動体の測位座標が位置しているエリアを特定するとともに前記エリア内の設備座標のうち測位座標から遠い方の所定個数の設備座標を除外する処理を繰り返して最近傍の一対の軌道座標を特定して移動体の位置を求めるようにしているので、移動体の位置を効率的に計算することが可能となる。
【0080】
実施の形態に係る位置計算装置1や位置計算方法によれば、複数のエリアそれぞれと各エリア内に位置する軌道座標との対応づけを含むエリア座標対応データベース32を利用するようにしているので、移動体の位置を一層効率的に計算することが可能となる。
【0081】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。
【0082】
例えば、上記の実施の形態ではこの発明に係る位置計算装置1や位置計算方法が鉄道軌道上を走行する鉄道車両の位置の計算に用いられるようにしているが、この発明に係る位置計算装置1や位置計算方法の適用対象は鉄道車両の位置の計算に限定されるものではなく、この発明に係る位置計算装置1や位置計算方法は、例えば高速道路上を走行する自動車の位置の計算に用いられるようにしてもよく、さらに言えば、所定の基盤設備上を走行する種々の移動体の位置の計算に用いられるようにしてもよい。この場合、上記の実施の形態における軌道座標データベース31に相当するデータベースに、上記の実施の形態における軌道座標に相当する設備座標として、所定の基盤設備の平面視における形状の情報を構成する、前記基盤設備の平面視における形状に沿って連なる(言い換えると、形状を表すように連なる)複数の点の位置座標(具体的には、緯度および経度)が蓄積され保存される。
【0083】
また、上記の実施の形態では位置計算装置1を構成する各部が移動体としての鉄道車両に搭載されるようにしているが、位置計算装置1を構成する各部のすべてが移動体に搭載されることはこの発明において必須の構成ではなく、位置計算装置1を構成する各部のうちの一部が移動体から離れた場所に設置されるようにしてもよい。
【0084】
例えば、図8に示すように、測位部4が移動体に搭載されるとともに記憶部3,位置計算部5,インターフェース部6,および表示部7は前記移動体から離れた場所に設置されるようにしてもよい。前記移動体から離れた場所に設置される各部のまとまり(言い換えると、前記移動体から離れた場所に設置される各部を備える機器)のことを「管理装置8」と呼ぶ。なお、移動体の位置(具体的には、キロ程)の計算を行う各部が相互に離れて移動体に搭載されたり前記移動体から離れた場所に設置されたりする場合も、相互に離れた各部によって構成される、移動体の位置の計算を行う機序のことを「位置計算装置1」と呼ぶ。
【0085】
この場合、移動体には、位置計算装置1を構成する各部のうちの移動体に搭載される各部の動作を制御する、中央処理装置(CPU)などを有する制御部2Aが搭載され、また、移動体側と管理装置8との間で信号の送受を行って相互に情報伝達/通信を行う、無線通信モジュールなどを有する移動体通信部9Aが搭載される。
【0086】
また、管理装置8には、位置計算装置1を構成する各部のうちの当該管理装置8内に設けられる各部の動作を制御する、中央処理装置(CPU)などを有する制御部2Bが設けられ、また、移動体に搭載される移動体通信部9Aとの間で信号の送受を行って相互に情報伝達/通信を行う、無線通信モジュールなどを有する管理装置通信部9Bが設けられる。
【0087】
この場合、移動体に搭載される測位部4によって計算/測位される当該測位部4の測位座標が測位データとして移動体通信部9Aおよび管理装置通信部9Bを介して管理装置8へと伝達/通信され、管理装置8に設けられる位置計算部5によって前記測位データが用いられて前記測位部4の位置(延いては、移動体の位置)が計算される。
【符号の説明】
【0088】
1 位置計算装置
2 制御部
3 記憶部
31 軌道座標データベース
32 エリア座標対応データベース
4 測位部
5 位置計算部
51 エリア特定部
52 軌道座標特定部
53 キロ程計算部
6 インターフェース部
7 表示部
2A 移動体側の制御部
9A 移動体通信部
8 管理装置
2B 管理装置の制御部
9B 管理装置通信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8