(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139412
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】繊維強化樹脂接合構造体
(51)【国際特許分類】
B32B 5/28 20060101AFI20230927BHJP
B29C 65/48 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
B32B5/28 A
B29C65/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044928
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】土谷 敦岐
(72)【発明者】
【氏名】光岡 秀人
【テーマコード(参考)】
4F100
4F211
【Fターム(参考)】
4F100AD11A
4F100AD11B
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK03C
4F100AK25C
4F100AK46C
4F100AK51C
4F100AK53C
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100DD01A
4F100DD01B
4F100DG01A
4F100DG01B
4F100DG01C
4F100DH02A
4F100DH02B
4F100DH02C
4F100EJ17
4F100EJ42
4F100JK02C
4F100JK06
4F100YY00B
4F100YY00C
4F211AA11
4F211AA29
4F211AA37
4F211AA39
4F211AA43
4F211AD16
4F211AG03
4F211AH17
4F211AH31
4F211AH33
4F211TA03
4F211TC01
4F211TD02
4F211TH17
4F211TN46
4F211TN47
4F211TN50
4F211TQ01
4F211TQ09
(57)【要約】
【課題】良好な接合特性を示し、それを作製する際の接合プロセスもより簡便なプロセス条件で実施可能な繊維強化樹脂の接合構造体を提供する。
【解決手段】表面に凹凸形状を有する繊維強化樹脂からなる被着体1と被着体2が接合成分1を介して一体化された接合構造体であって、接合成分1が被着体1の表面に存在する凹凸形状の深さD1の30~95%の範囲で充填している繊維強化樹脂接合構造体。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に凹凸形状を有する繊維強化樹脂からなる被着体1と被着体2が接合成分1を介して一体化された接合構造体であって、接合成分1が被着体1の表面に存在する凹凸形状の深さD1の30~95%の範囲で充填している繊維強化樹脂接合構造体。
【請求項2】
接合成分1が被着体1の表面に存在する凹凸形状の深さD1の50~80%の範囲で充填している、請求項1に記載の繊維強化樹脂接合構造体。
【請求項3】
被着体2が表面に凹凸形状を有し、接合成分1が被着体2の表面に存在する凹凸形状の深さD2の30~95%の範囲で充填している、請求項1または2に記載の繊維強化樹脂接合構造体。
【請求項4】
被着体1および/または被着体2が炭素繊維強化樹脂からなる、請求項1~3のいずれかに記載の繊維強化樹脂接合構造体。
【請求項5】
接合成分1がエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂のいずれかの樹脂である、請求項1~4のいずれかに記載の繊維強化樹脂接合構造体。
【請求項6】
接合成分1の引張強度が10~200MPaである、請求項1~5のいずれかに記載の繊維強化樹脂接合構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は繊維強化樹脂接合構造体に関し、繊維強化樹脂と他の被着体とが良好に接合した状態を維持できる繊維強化樹脂接合構造体を示しており、この繊維強化樹脂接合構造体の接合状態が実現可能となる範囲であれば、接合の際の接合温度や接合圧力、接合時間といった接合プロセス負荷を低減することも可能である。
【背景技術】
【0002】
繊維強化樹脂(FRP)と他の被着体とを接合したFRP接合構造体は、その機能を効果的に発揮するために、良好な接合状態を維持するには、FRP表面に凹凸形状を付与してFRPと他の被着体とを接合する接合成分の両者間での接触面積を増大させたり、両者間で接合成分が容易に引き剥がれないような、いわゆるアンカー構造を形成させたりする手法が一般的である。しかしFRP表面の凹凸形状に接合成分を隅々まで行き渡らせるのは容易ではなく、接合プロセスの負荷が非常に大きくなってしまう。
【0003】
これに対して、特許文献1では、FRPを硬化して成形する際に接合成分である熱可塑性樹脂を含浸させることで成形時に形成される凹凸形状の隅々まで接合成分を行き渡らせる手法が記載されている。しかしこの方法は接合成分なしで成形したFRPへの適用が出来ず、そもそも成形後に接合成分を用いて接合する場合には実施が不可能であった。
【0004】
また、特許文献2では、FRP表面に微細凹凸形状を付与して、そこに他の部材を接合成分で接合する構成が記載されているが、微細凹凸形状への接合成分の充填度合いについては触れられておらず、接合は微細凹凸形状全てへの充填が前提として記載されており、場合によっては接合プロセス負荷が大きくなる可能性もある。
【0005】
特許文献3には、FRPのマトリックス樹脂のみを除去して強化繊維を露出させて接合成分である第二の高分子材料を充填して接合する接合構造が記載されている。この方法はFRP表面を予め処理して強化繊維のみを露出させておき、そこへ接合成分を充填する必要があるが、露出した強化繊維への接合成分の充填度合いについては触れられておらず、接合は露出した強化繊維全てへの充填が前提として記載されており、場合によっては接合プロセス負荷が大きくなる可能性もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開WO2004/060658号
【特許文献2】特開2017-52127号公報
【特許文献3】特開2011-79289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明の課題は、上記のような従来技術における問題点に着目し、FRPと他の被着体とを良好に接合した状態を維持できるFRP接合構造体を提供することにあり、このFRP接合構造体の接合状態が実現可能となる範囲であれば、接合の際の接合温度や接合圧力、接合時間といった接合プロセス負荷を低減することも可能である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明では以下の構成を採用する。
(1)表面に凹凸形状を有する繊維強化樹脂からなる被着体1と被着体2が接合成分1を介して一体化された接合構造体であって、接合成分1が被着体1の表面に存在する凹凸形状の深さD1の30~95%の範囲で充填している繊維強化樹脂接合構造体。
(2)接合成分1が被着体1の表面に存在する凹凸形状の深さD1の50~80%の範囲で充填している、(1)に記載の繊維強化樹脂接合構造体。
(3)被着体2が表面に凹凸形状を有し、接合成分1が被着体2の表面に存在する凹凸形状の深さD2の30~95%の範囲で充填している、(1)または(2)に記載の繊維強化樹脂接合構造体。
(4)被着体1および/または被着体2が炭素繊維強化樹脂からなる、(1)~(3)のいずれかに記載の繊維強化樹脂接合構造体。
(5)接合成分1がエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂のいずれかの樹脂である、(1)~(4)のいずれかに記載の繊維強化樹脂接合構造体。
(6)接合成分1の引張強度が10~200MPaである、(1)~(5)のいずれかに記載の繊維強化樹脂接合構造体。
【発明の効果】
【0009】
このように、本発明の繊維強化樹脂接合構造体によれば、良好な接合特性を示し、それを作製する際の接合プロセスもより簡便なプロセス条件で実施可能な繊維強化樹脂の接合構造体を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】繊維強化樹脂表面の凹凸形状の一例を示す概略断面図である。
【
図2】接合成分1が充填した繊維強化樹脂表面の凹凸形状の一例を示す概略断面図である。
【
図3】接合構造体(接合試験片)を示す概略斜視図である。
【
図4】レーザー加工処理された被着体を示す概略斜視図である。
【
図5】サンドブラスト処理された被着体を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明について、実施の形態とともに、さらに詳細に説明する。
【0012】
本発明に係るFRP接合構造体は表面に凹凸形状を有する繊維強化樹脂からなる被着体1と、被着体2が接合成分1を介して一体化された接合構造体であって、接合成分1が被着体1の表面に存在する凹凸形状の深さD1の30~95%の範囲で充填している繊維強化樹脂接合構造体であって、接合成分1が凹凸の深さD1に対して完全充填ではないが、接合が良好となるように一定の度合いで充填していることを特徴とする。ここで良好な接合とは、接合強度評価を実施した際に、接合成分が接合面全体にわたり凝集破壊することで安定した高い接合強度を発現する状態が理想的である。逆に接合成分が被着体との界面で界面剥離となってしまう場合は、接合強度のばらつきが大きくなり、接合強度も低くなる傾向にある。また、接合成分の凝集破壊と界面剥離が混在する場合も考えられ、その場合は凝集破壊の割合が高くなるほど、安定した良好な接合と判断することが出来る。
【0013】
具体的に
図1、
図2に示すように、FRP接合構造体のFRP部分の断面模式図において、FRPの表面Fに凹凸形状が付与されており、この凹凸形状に接合成分1が充填してFRPと被着体2とを接合することで、良好なFRP接合構造体が得られる。この際、接合成分1はFRP表面の凹凸形状の全領域に渡って充填している必要はなく、接合成分1が凝集破壊する程度に充填していれば良好な接合を維持出来る。凹凸形状の全領域に渡って接合成分1を充填させるためには、接合プロセスにおいて接合温度や接合圧力、接合時間などの負荷を大きくする必要があり、接合プロセスにおける使用電力や消費エネルギーを抑える観点からは可能な限り負荷を小さくしておきたい。
【0014】
ここで、本発明の重要なパラメータである、FRP表面の凹凸形状の深さD1と、凹凸形状D1への接合成分1の充填について説明する。本発明のFRP表面の凹凸形状とは、サンドブラスト処理、レーザー加工処理、火炎処理、薬液処理、電解処理、プラズマ処理、紙ヤスリ等での表面粗化などの表面処理方法でFRP表面に付与された凹凸形状のことを示している。また、その凹凸形状の深さD1とは、
図1に示すFRP断面において2で示される特定長さLの範囲内において、FRP表面の凹凸形状のうち最も浅い位置にある2点AB間で形成されるFRPの基準表面1から凹凸形状で形成された凹凸形状表面3までの距離のうち、最大から5番目までの深さDmax1~Dmax5と、最小から5番目までの深さDmin1~Dmin5までの10ヶ所の深さの平均をもって、凹凸形状の深さD1とする。さらに、凹凸形状の深さD1への接合成分1の充填については、
図2において2で示される上記特定長さLの範囲内のDmax1~Dmax5において、接合成分1が充填した距離Dmax1p~Dmax5pとの比をパーセント表示した値の平均値で定義する。例えば、接合成分1が凹凸形状の深さDmax1~Dmax5のいずれも半分まで充填していた場合は、充填50%となる。ここで特定長さLについては、評価結果にFRPの特徴を十分に反映させる観点から、FRPに曲げ加工など極端な凹凸形状が付与された部位を除いて0.1mm~10mmの範囲で選択することが適切である。また、凹凸形状の深さD1の評価と、接合成分1の充填の評価はFRPの同じ部位で評価しても異なる部位で評価しても構わない。
【0015】
凹凸形状の深さD1は良好な接合を発現する観点から、1μm以上であることが好ましい。また、FRPに過度な凹凸形状を付与して、FRP自体の強度低下をさせない観点、および凹凸形状を付与する際の負荷を低減させる観点から、5000μm以下とすることが好ましい。より好ましい範囲としては10μm~3000μm、さらに好ましくは50~1000μmである。
【0016】
また、凹凸形状の深さD1への接合成分1の充填は、良好な接合を発現する観点から、30%以上であることが重要であり、接合プロセスの負荷低減の観点からは完全充填である100%よりも小さいことが重要となり、具体的には95%以下とする。好ましい範囲としては40~90%、より好ましくは50~80%である。
【0017】
本発明の被着体2は、その構成材料については特に制限はなく、スチールやアルミなどの金属材料、各種樹脂材料、フィルム、被着体1と同様のFRPなどFRP接合構造体に求められる特性に応じて適切に組み合わせることができる。FRP接合構造体における被着体1と被着体2との接合を高める観点からは、被着体1と同様に被着体2の表面にも深さD2が1~5000μmの凹凸形状を有することが好ましい。より好ましい範囲としては10μm~3000μm、さらに好ましくは50~1000μmである。
【0018】
また、凹凸形状の深さD2への接合成分1の充填は、良好な接合を発現し、かつ接合プロセスの負荷低減の観点からは30~95%であることが好ましく、より好ましくは40~90%、さらに好ましくは50~80%である。
【0019】
FRP表面の凹凸形状の深さの測定方法については、例えばFRPの断面を顕微鏡観察して、
図1に記載する最大から5番目までの深さDmax1~Dmax5、および最小から5番目までの深さDmax1~Dmax5を画像解析により測定する方法などが挙げられる。凹凸形状の深さD1への接合成分1の充填の測定方法については、同様に接合成分1が充填した後のFRP接合構造体の断面の顕微鏡観察から、
図2に記載する接合成分1が充填した距離Dmax1p~Dmax5pを画像解析により測定する方法などが挙げられる。被着体2についても同様に測定することが可能である。
【0020】
本発明のFRPからなる被着体1と被着体2の少なくともいずれか一方が炭素繊維強化樹脂であることが、FRP接合構造体をより軽量で強度剛性に優れたものとすることが出来るため好ましい。用いる炭素繊維は、その強度や弾性率を用途や必要とされる特性に応じて選択して使用する。また、炭素繊維強化樹脂に用いるマトリックス樹脂には、熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂のいずれを用いても良い。熱硬化性樹脂としてはエポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂などを用いることができる。熱可塑性樹脂としてはポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、PPS樹脂、PEEK樹脂などを用いることができる。
【0021】
本発明の接合成分1としては、各種接合用樹脂を用いることが出来るが、なかでもエポキシ樹脂は熱硬化性で三次元架橋構造を形成し、強度や耐熱性に優れて高い耐久性を有することから好ましい。また破断伸度が高く変形に強い接合構造を可能とする観点から、ウレタン樹脂も好ましい。また、アクリル樹脂も化学構造のバリエーションを豊富に有しており、接合成分として性能バランスを制御しやすい樹脂である点から好ましい。さらにポリアミド樹脂やポリプロピレン樹脂などの熱可塑性樹脂は、熱を付与することで溶融させたのち冷却固化することで接合可能であることから、接合サイクルを短くすることが容易であり、かつ熱により接合構造を解体できるリサイクル性を有する観点からも好ましい。
【0022】
また、本発明の接合成分1は、より強固な接合強度を発現させる観点から、その引張強度(ISO527規格)が10~200MPaであることが好ましい。より好ましくは15~200MPa、さらに好ましくは20~200MPaである。
【0023】
FRP接合構造体の用途
本発明のFRP接合構造体は航空機部品、自動車部品、ドローンなどのモビリティ用途や、電気・電子部品、建築部材、各種容器、日用品、生活雑貨および衛生用品など各種用途に利用することができる。なかでもモビリティ用途においてFRPを活用した構造部品、外装部品、内装部品などに用いることが好ましい。
【実施例0024】
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、下記実施例は本発明を何ら制約するものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で変更することは、本発明の技術範囲である。本発明特性評価は下記の方法に従って行った。
【0025】
(1)被着体1の凹凸の深さD1
被着体1の断面を湿式研磨して顕微鏡で観察し、その断面(
図1に示す模式図)において2で示される特定長さLを5mmとする範囲内において、FRP表面の凹凸形状のうち最も浅い位置にある2点AB間で形成されるFRPの基準表面1から凹凸形状で形成された凹凸形状表面3までの距離のうち、最大から5番目までの深さDmax1~Dmax5と、最小から5番目までの深さDmin1~Dmin5までの10ヶ所の深さの平均をもって、凹凸形状の深さD1とした。なお、被着体2の凹凸の深さD2も同様に評価した。
【0026】
(2)接合成分1の充填(%)
FRP接合構造体の断面を湿式研磨して顕微鏡で観察し、被着体1に接合成分1が充填した断面(
図2に示す模式図)において2で示される上記特定長さLを5mmとする範囲内のDmax1~Dmax5において、接合成分1が充填した距離Dmax1p~Dmax5pとの比をパーセント表示した値の平均値として評価した。なお、被着体2への接合成分1の充填(%)も同様に評価した。
【0027】
(3)FRP接合構造体の接合強度
接合成分1で接合された被着体1と被着体2からなる接合試験片(
図3)を引張試験機にて5mm/分の速度で引張剪断試験をn=5で実施し、平均値を接合強度とした。接合強度20MPa以上をA、10MPa以上20MPa未満をB、10MPa未満をCとした。
【0028】
(4)FRP接合構造体の接合強度ばらつき
接合強度評価において、n=5の評価の最大値と最小値との差を接合強度ばらつきとし、接合強度ばらつきが5MPa未満をA、5MPa以上8MPa未満をB、8MPa以上をCとした。接合強度ばらつきの良好な順からA、B、Cとなる。
【0029】
(5)FRP接合構造体の破壊形態
接合強度を評価した後のFRP接合構造体の破断面を目視で観察し、接合部全面にわたり接合成分1の凝集破壊である場合をA、接合成分1の凝集破壊の領域が界面剥離の領域よりも多い場合をB、接合成分1の凝集破壊の領域が界面剥離の領域よりも少ない場合をC、接合部全面にわたり接合成分1の界面剥離である場合をDとした。接合状態の良好な順からA、B、C、Dとなる。
【0030】
[参考例1]炭素繊維強化樹脂(CFRP1)の製造
東レ(株)製炭素繊維“トレカ”(登録商標)T700S(12K)使いの一方向プリプレグを同一方向に積層して1.5mm厚みに硬化したCFRP1を得た。接合する前にはアセトンで脱脂して使用した。
【0031】
[参考例2]ガラス繊維強化樹脂(GFRP1)の製造
日東紡(株)製ガラス繊維RS240PU-537使いの一方向プリプレグを同一方向に積層して1.5mm厚みに硬化したGFRP1を得た。接合する前にはアセトンで脱脂して使用した。
【0032】
[参考例3]アルミ材1
アルミA5052(厚み1.5mm)の表面をアセトンで脱脂して使用した。
【0033】
[参考例4]接合成分1
エポキシ1:3M製パネルボンド8115を用いた。
エポキシ2:スリーボンド製スリーボンド3951Dを用いた。
ポリアミド:東レ製CM4000をプレス成形し0.3mm厚みのシートとして用いた。
変性PP(ポリプロピレン):三井化学製QF500をプレス成形し0.3mm厚みのシートとして用いた。
【0034】
実施例1
被着体1に参考例1で作製したCFRP1を用い、被着体2にも参考例1で作製したCFRP1を用いて、それぞれ幅25mm、長さ150mm(繊維の配向方向が長さ方向とした)の大きさにカットし、
図4のようにCFRP1の表面にレーザー加工処理を施して直径100μmで深さ20μmの孔を200μm間隔の格子交点上に形成した。このCFRP1の孔の形成した面同士を参考例4に記載した接合成分1(エポキシ1)を用いて、
図3のような接合構造体(接合試験片)を作製した。接合部分の面積は25mm×12.5mmである。接合プロセスは表1に記載のとおりである。得られた接合試験片の接合成分1の充填と接合強度評価を表1に示す。
【0035】
実施例2~12、比較例2、3
表1,2に示すように使用する被着体1、被着体2、被着体の表面を
図4または
図5のようにレーザー加工処理またはサンドブラスト処理を施して表面凹凸形状を付与したこと、接合成分1、接合プロセス条件を変更した以外は、実施例1と同様の方法で接合構造体(接合試験片)を作製し、評価を行った。評価結果を表1,2に示す。なお、接合成分1がポリアミドの場合の接合プロセスは、例えば実施例7では160℃で0.1MPaの圧力で0.02時間処理したのち、25℃で0.1MPaの圧力で0.5時間処理している。接合成分1が変性PP(実施例11)の場合の接合プロセスは、170℃で0.2MPaの圧力で0.02時間処理したのち、25℃で0.2MPaの圧力で0.5時間処理している。
【0036】
比較例1
CFRP1に表面処理を施さなかったこと以外は、実施例7と同様の方法で接合構造体(接合試験片)を作製し、評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0037】
実施例1はレーザー加工処理したCFRP1同士をエポキシ1で接合した接合構造体であるが、良好な接合状態が得られている。
【0038】
実施例2は実施例1よりも凹凸の深さD1、D2を深くしており、接合強度がより良好な結果となった。
【0039】
実施例3はCFRP1の表面処理をサンドブラストに変更しているが、良好な接合状態が得られている。
【0040】
実施例4は実施例3において被着体2をアルミ材1に変更しているが、良好な接合状態が得られている。
【0041】
実施例5は実施例4において被着体1をGFRP1に変更しているが、良好な接合状態が得られている。
【0042】
実施例6は実施例4の接合プロセスにおける負荷をより大きく、具体的には接合温度を50℃から80℃へ、接合圧力を0.01MPaから0.05MPaへ変更しており、その結果、接合成分1の充填は70%から95%と大きくなったが、接合状態はどちらも同様に良好な状態である。
【0043】
実施例7は実施例4の接合成分1をポリアミドに変更しているが、良好な接合状態が得られている。接合成分1を熱可塑性樹脂のポリアミドにしたことから、接合温度や接合圧力は大きくする必要があるものの、接合時間が3時間から約30分と大きく短縮可能となった。
【0044】
実施例8は実施例7よりも凹凸の深さD1、D2を浅くしており、接合強度はやや低下するものの良好な結果となった。
【0045】
実施例9は実施例7の接合プロセスにおける負荷をより大きく、具体的には接合温度を160℃から170℃へ、接合圧力を0.1MPaから0.2MPaへ、接合時間を0.52時間から0.54時間へ変更しており、その結果、接合成分1の充填は75~80%から95%と大きくなったが、接合状態はどちらも同様に良好な状態である。
【0046】
実施例10は実施例7の接合プロセスにおける負荷をより小さく、具体的には接合圧力を0.1MPaから0.01MPaへ、接合時間を0.52時間から0.51時間へ変更したことにより、接合成分1の充填が小さくなり、それに伴って接合状態も良好ではあるがやや低下する結果となった。
【0047】
実施例11は実施例7の接合成分1を変性PPに変更したものであるが、変性PPはポリアミドよりも極性が低いため、CFRP1との接合性がポリアミドよりも低下する傾向にあることから、接合成分1の引張強度や充填は同じレベルであっても接合強度がやや低下する結果となった。
【0048】
実施例12は実施例3の接合成分1をエポキシ2に変更したものであるが、エポキシ2は引張強度が8MPaとエポキシ1の21MPaよりも低強度であるため、接合強度は低くなる結果となった。但し、接合強度ばらつきは小さく、破壊形態も接合成分1の凝集破壊であり、接合強度は低いが接合特性としては安定した良好なものである。
【0049】
一方、比較例1は被着体1の表面に凹凸が形成されておらず、接合成分1が充填しないことから、破壊形態が界面剥離となり、接合状態は悪いものとなった。
【0050】
比較例2では、接合成分1の充填を100%とするために、接合プロセスの負荷を大きくする必要があり、実施例7と比較して接合温度は160℃から200℃へ、接合圧力は0.1MPaから1MPaへ、接合時間は0.52時間から0.7時間へ条件を変更することが必要であったが、接合特性としては大きな違いは見られず、過剰な条件で過剰に充填された状態であると判断できる。
【0051】
比較例3は接合成分1の充填が20%と小さい状態であり、破壊形態も界面剥離が多く見られる低接合強度の接合状態であった。
【0052】
【0053】