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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139416
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】積層ポリエステルフィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20230927BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230927BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20230927BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20230927BHJP
   B32B 27/30 20060101ALN20230927BHJP
【FI】
B32B27/36
B32B27/00 L
C08J5/18 CFD
C08J7/04 Z
B32B27/30 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044932
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤瀬 空
(72)【発明者】
【氏名】八尋 謙介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 維允
【テーマコード(参考)】
4F006
4F071
4F100
【Fターム(参考)】
4F006AA35
4F006AB20
4F006AB76
4F006DA04
4F071AA22
4F071AA46
4F071AB26
4F071AD02
4F071AG12
4F071AG28
4F071AG34
4F071AH19
4F071BA01
4F071BB06
4F071BB07
4F071BC01
4F100AA20B
4F100AA20H
4F100AK21B
4F100AK52C
4F100AL08C
4F100AR00A
4F100AR00C
4F100AT00
4F100CA19B
4F100CA19H
4F100CA30B
4F100CA30H
4F100CC102
4F100CC10B
4F100CC10C
4F100DD07B
4F100EH462
4F100EH46B
4F100EH46C
4F100GB41
4F100JK14B
4F100JL14B
4F100JL14C
4F100JL16
(57)【要約】
【課題】湿熱雰囲気下かつ面圧がかかった状態で保管した後でもポリエステルフィルム上の樹脂層の品質が良好で、かつ洗浄して当該樹脂層等を容易に除去できる積層ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】ポリエステルフィルムの片方の面に層Xを有する積層ポリエステルフィルムであって、層Xの表面自由エネルギーが50mN/m以上70mN/m以下であり、層Xの十点平均粗さRzjisXが200nm以上700nm以下である積層ポリエステルフィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムの片方の面に層Xを有する積層ポリエステルフィルムであって、層Xの表面自由エネルギーが50mN/m以上70mN/m以下であり、層Xの十点平均粗さRzjisXが200nm以上700nm以下である積層ポリエステルフィルム。
【請求項2】
前記層Xの水の接触角HX(1)(°)とHX(20)(°)が5≦|HX(1)-HX(20)|≦60を満たす、請求項1に記載の積層ポリエステルフィルム。
HX(1):層Xに水が接触してから1秒後の接触角
HX(20):層Xに水が接触してから20秒後の接触角
【請求項3】
前記層Xが水溶性の物質を含有する、請求項1または2に記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項4】
前記層Xが粒子を含有する、請求項1~3のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項5】
前記層Xの厚みxa(nm)と、層Xの十点平均粗さRzjisX(nm)が以下の条件1を満たす請求項1~4のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
条件1:1≦RzjisX/xa≦10
【請求項6】
前記層Xは粒子を含有し、前記層Xに含有される粒子が球状で粒径が90nm以上500nm以下である請求項1~5のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項7】
前記層Xは粒子を含有し、前記粒子の粒径Z(nm)と前記層Xの厚みxa(nm)が、以下の条件2を満たす請求項1~6のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
条件2:0.8≦Z/xa≦5.0
【請求項8】
前記ポリエステルフィルムの、層Xと接する面とは反対側の面Bの十点平均粗さRzjisBが50nm以上1000nm以下であり、面BのRzjisB(nm)と前記層Xの厚みxa(nm)以下の条件3を満たす請求項1~7のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
条件3:1≦RzjisB/xa≦10
【請求項9】
前記層Xのポリエステルフィルムと接する面とは反対面に、以下の条件4および条件5を満たす層Yを有する請求項1~8のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
条件4:80≦HY(1)≦120
条件5:5≦|HY(1)-HY(20)|≦90
HY(1)(°):層Yに水が接触してから1秒後の接触角
HY(20)(°):層Yに水が接触してから20秒後の接触角
【請求項10】
前記層Yの層Xと接する面とは反対側の面に被離型層を設け、層Yから被離型層を剥離する離型用途に用いられる請求項9に記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項11】
前記層Yから被離型層を剥離した後、層Xと層Yが除去される用途に用いられる請求項10に記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項12】
前記層Xと層Yを除去した積層ポリエステルフィルムを再利用する用途に用いられる請求項9~11のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項13】
前記被離型層が、チタン酸バリウムを主成分とするセラミックグリーンシートである請求項10~12のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項14】
少なくとも積層セラミックコンデンサ(MLCC)製造工程用の離型フィルムの一部として用いられる請求項1から13のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項15】
前記被離型層が、アクリル樹脂を主成分とする粘着剤である請求項10~14のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項16】
偏光板製造工程用の離型フィルムとして用いられる請求項1~15のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積層ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックは様々な分野に利用されている一方、マイクロプラスチックなど海洋汚染の原因物とされ、プラスチックによる環境負荷低減が急務となっている。また、近年、IoT(Internet of Things)の進化により、コンピュータやスマートフォンに搭載されるCPUなどの電子デバイスが急激に増加し、それに伴い、電子デバイスを駆動するために重要な積層セラミックコンデンサー(MLCC)の数も爆発的に増加している。MLCCの一般的な製造方法は、プラスチックフィルムを基材とし、該基材上に離型層を設けた離型フィルム上に、セラミックグリーンシートと電極を積層して乾燥して固めた後、該積層体を離型フィルムから剥離し複数層を積層し、焼成するというものである。この工程において、離型フィルムは、工程中で不要物として廃棄されることとなる。
【0003】
すなわち、近年のMLCC数量の爆発的増加で不要物として廃棄される離型フィルムが増えることによる環境への負荷が課題となりつつある。MLCCの製造工程で用いられる離型フィルムに含まれる離型層の成分は、離型性の観点から、一般的にはフィルムを構成する成分とは異なる組成であるため、離型層がついた離型フィルムをそのまま再溶融した場合、離型層の成分が異物として存在するため、再利用ができない。
【0004】
また、「withコロナ」の社会変革の中で、リモートワークなどの増加により、タブレット、ノートPCやディスプレイなどの需要が増加する中で、液晶モニタの部材である偏光フィルムの需要も伸びている。偏光フィルムは、一般的にはポリビニルアルコール樹脂とトリアセチルセルロース樹脂からなる積層体が用いられる。かかる積層体は、液晶モニタの製造工程における該積層体へのダメージを低減するため、該積層体に保護フィルムを貼り合わせられることが一般的に行われている。
【0005】
この保護フィルムの製造方法は、保護フィルムの片面に、偏光フィルムと貼り合わせるための粘着剤を形成する工程として、工程用離型フィルムを使用する工程を有することが一般的である。すなわち、工程用離型フィルムの離型面に粘着剤を付与した後に保護フィルムの片面に貼り合わせ、工程用離型フィルムを剥離することで粘着剤を保護フィルムの片面に転写する、という工程である。粘着剤形成の工程で用いられる工程用離型フィルムは、MLCCの製造工程で用いられる離型用フィルムと同様、離型層がついた離型フィルムをそのまま再利用したり、あるいはマテリアルリサイクルを実施する場合、離型層の成分が異物として存在するため、再利用ができないことがある。
【0006】
特許文献1では、離型層とポリエステルフィルムの中間に水溶性樹脂の層を設け、水洗することで離型層を除去した後、ポリエステルフィルムのみを再利用する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004-050681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、回収性が良好とされるポリビニルアルコールなどの水溶性樹脂層は、表面自由エネルギーが大きく、他の層との接着性が高いため、ロール形状に巻かれフィルムに面圧がかかる状況下で、湿熱雰囲気中に保管された場合、フィルムの特性が変化することがあり、かかるフィルムを使用する際に耐久性が低下し品質を保てないという改善点がみつかった。また湿熱雰囲気下において面圧がかかる状況で保管した後における当該樹脂層の水洗性が低下する場合があることもわかった。したがって、本発明の課題は、湿熱雰囲気下かつ面圧がかかった状態で保管した後でもポリエステルフィルム上の樹脂層の品質が良好で、かつ洗浄して当該樹脂層等を容易に除去できる積層ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の好ましい一態様は以下の構成をとる。
[1]ポリエステルフィルムの片方の面に層Xを有する積層ポリエステルフィルムであって、層Xの表面自由エネルギーが50mN/m以上70mN/m以下であり、層Xの十点平均粗さRzjisXが200nm以上700nm以下である積層ポリエステルフィルム。
[2]前記層Xの水の接触角HX(1)(°)とHX(20)(°)が5≦|HX(1)-HX(20)|≦60を満たす、[1]に記載の積層ポリエステルフィルム。
HX(1):層Xに水が接触してから1秒後の接触角
HX(20):層Xに水が接触してから20秒後の接触角
[3]前記層Xが水溶性の物質を含有する、[1]または[2]に記載の積層ポリエステルフィルム。
[4]前記層Xが粒子を含有する、[1]~[3]のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
[5]前記層Xの厚みxa(nm)と、層Xの十点平均粗さRzjisX(nm)が以下の条件1を満たす[1]~[4]のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
条件1:1≦RzjisX/xa≦10
[6]前記層Xは粒子を含有し、前記層Xに含有される粒子が球状で粒径が90nm以上500nm以下である[1]~[5]のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
[7]前記層Xは粒子を含有し、前記粒子の粒径Z(nm)と前記層Xの厚みxa(nm)が、以下の条件2を満たす[1]~[6]のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
条件2:0.8≦Z/xa≦5.0
[8]前記ポリエステルフィルムの、層Xと接する面とは反対側の面Bの十点平均粗さRzjisBが50nm以上1000nm以下であり、面BのRzjisB(nm)と前記層Xの厚みxa(nm)以下の条件3を満たす[1]~[7]のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
条件3:1≦RzjisB/xa≦10
[9]前記層Xのポリエステルフィルムと接する面とは反対面に、以下の条件4および条件5を満たす層Yを有する[1]~[8]のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
条件4:80≦HY(1)≦120
条件5:5≦|HY(1)-HY(20)|≦90
HY(1)(°):層Yに水が接触してから1秒後の接触角
HY(20)(°):層Yに水が接触してから20秒後の接触角
[10]前記層Yの層Xと接する面とは反対側の面に被離型層を設け、層Yから被離型層を剥離する離型用途に用いられる[9]に記載の積層ポリエステルフィルム。
[11]前記層Yから被離型層を剥離した後、層Xと層Yが除去される用途に用いられる[10]に記載の積層ポリエステルフィルム。
[12]前記層Xと層Yを除去した積層ポリエステルフィルムを再利用する用途に用いられる[9]~[11]に記載の積層ポリエステルフィルム。
[13]前記被離型層が、チタン酸バリウムを主成分とするセラミックグリーンシートである[10]~[12]のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
[14]少なくとも積層セラミックコンデンサ(MLCC)製造工程用の離型フィルムの一部として用いられる[1]~[13]のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
[15]前記被離型層が、アクリル樹脂を主成分とする粘着剤である[10]~[14]のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
[16]偏光板製造工程用の離型フィルムとして用いられる[1]~[15]のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、湿熱雰囲気下かつ面圧がかかった状態で保管した後でもポリエステルフィルム上の樹脂層の品質が良好で、かつ洗浄して当該樹脂層等を容易に除去できる積層ポリエステルフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に具体例を挙げつつ、本発明について詳細に説明する。
【0012】
本発明はポリエステルフィルムの少なくとも片側に1層以上の層を有する積層ポリエステルフィルムに関する。本発明でいうポリエステルは、ジカルボン酸構成成分とジオール構成成分を有してなるものである。なお、本明細書内において、構成成分とはポリエステルを加水分解することで得ることが可能な最小単位のことを示す。かかるポリエステルを構成するジカルボン酸構成成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、もしくはそのエステル誘導体が挙げられる。
【0013】
また、かかるポリエステルを構成するジオール構成成分としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール等の脂肪族ジオール類、シクロヘキサンジメタノール、スピログリコールなどの脂環式ジオール類、上述のジオールが複数個連なったものなどが挙げられる。中でも、機械特性、透明性の観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート(PEN)、およびPETのジカルボン酸成分の一部にイソフタル酸やナフタレンジカルボン酸を共重合したもの、PETのジオール成分の一部にシクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、ジエチレングリコールを共重合したポリエステルが好適に用いられる。
【0014】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、ポリエステルフィルムの片面に層Xを有する積層ポリエステルフィルムであって、前記層Xの表面自由エネルギーを後述の方法にて測定した場合、50mN/m以上70mN/m以下であることが好ましい。層Xの表面自由エネルギーが上述の範囲であると水との親和性が高くなり、後述の方法にて、水付与後に層X等を除去する際の除去性(水洗性)が向上する。層Xの表面自由エネルギーが50mN/m未満であると、層Xに別の層を塗布する場合、該層の塗布性や機能が低下する場合がある。層Xの表面自由エネルギーが70mN/mを超えると他の層との接着性が良いため、ロール形状にて面圧がかかる状況で保管した場合、湿熱雰囲気下において層Xと重なる層Xと接する面とは反対側のポリエステルフィルムの面(B面)に層Xが転写し、層Xの品質が低下する場合がある。同様の観点から層Xの表面自由エネルギーはより好ましくは、53mN/m以上65mN/m以下である。
【0015】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、上記層Xに水が接触してから1秒後の接触角HX(1)と層Xに水が接触してから20秒後の接触角HX(20)の差の絶対値(|HX(1)-HX(20)|)が5°以上60°以下であることが好ましい。|HX(1)-HX(20)|は、一定時間経過する前後の水の接触角変化量を表すものであり、この値が小さいと一定時間経過する前後の水の接触角変化量が小さく、この値が大きいと一定時間経過する前後の水の接触角変化量が大きいことを表す。|HX(1)-HX(20)|を5°以上とすることで、層Xの吸水性が向上し、水で洗浄することが容易となる。また、|HX(1)-HX(20)|を60°以下とすることで、層Xを安定して製膜することが可能となる。さらに、|HX(1)-HX(20)|が10°以上30°以下であることにより、局所的に偏在しにくく、水洗性がより向上する。上記観点から、10°以上25°以下であることがさらに好ましい。また、上記観点からHX(1)-HX(20)≧0°であることがより好ましい。
【0016】
本発明の積層ポリエステルフィルムの層Xは、水溶性の物質を含むことが好ましい。層Xが水溶性の物質を含むことで、|HX(1)-HX(20)|を好ましい範囲とすることが容易となる。また、層Xが水溶性の物質を含む場合、層Xを含む積層ポリエステルフィルムを水洗することにより、層Xが水中に溶け出し、層Xや層Xより上側に積層した層を除去して、純度が高いポリエステルフィルムを取り出すことが容易となる。水溶性の物質は、層X全体に対して60質量%以上含むことが好ましく、90質量%以上含むことがより好ましく、95質量%以上含むことがさらに好ましく、水溶性の物質のみからなることが特に好ましい。なお、純度が高いポリエステルフィルムを取り出す観点から、前記層Xと前記ポリエステルフィルムは接していることが好ましい。
【0017】
前記水溶性の物質としては有機樹脂であることが好ましく、当該有機樹脂として、層Xの表面自由エネルギーを好ましい範囲とする観点から、水溶性を有するポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール骨格を有する樹脂(以下、ポリビニルアルコール(PVA)と記載することがある)、ポリビニルピロリドン骨格を有する樹脂(以下、ポリビニルピロリドン(PVP)と記載することがある)、デンプンを主成分とするものが好ましく例示できる。水洗性の観点から、層Xは、ポリビニルアルコール骨格を有する樹脂を含むことが好ましく、ポリビニルアルコール骨格を有する樹脂を主成分とすることがより好ましい。特にPVA骨格を有する樹脂は、無極性部位が少なく、親水基を多く含有するため、親水性が高く表面自由エネルギーを好ましい範囲とできるだけでなく、耐溶剤性を有するため、好ましい。ここでいう水溶性とは、50℃の水に10分間浸漬した際の質量変化量が15%以上であり、水溶液となるものである。具体的な方法は以下の通りである。すなわち、水溶性とは、当該樹脂を50℃の水に10分間浸漬し、水から取り出して表面に付着した水滴をウエスで十分に拭き取ったあとの質量を測定し、以下の方法で算出した質量変化量ΔMが15%以上であり、水溶液となるものである。
ΔM=|(M2-M1)|/M1×100(%)
M1(g):50℃の水に10分間浸漬する前の樹脂質量
M2(g):50℃の水に10分間浸漬した後の樹脂質量。
【0018】
なお、主成分とは当該層100質量%中にその成分を60質量%以上含むことをいう。
【0019】
層Xとしてポリビニルアルコール骨格を有する樹脂を用いる場合、重合度は300以上1000以下、より好ましくは300以上800以下、さらに好ましくは400以上600以下である。重合度が前述の範囲のポリビニルアルコール骨格を有する樹脂を用いると、層Xをポリエステルフィルム上にコーティングによって設ける際、塗布性が良好となり、積層できなかったり、塗布性が悪くなりフィルム上に偏在するのを抑制することができる。なお、重合度はJISK 6726(1994)に準拠して求めることとし、具体的な測定方法は実施例に記載の方法とする。
【0020】
また、層Xとして用いるポリビニルアルコール骨格を有する樹脂の側鎖として、ヒドロキシル基や酢酸基以外の官能基を共重合した共重合ポリビニルアルコールを用いることも好ましい実施形態である。特に、親水性の官能基、例えば1,2-エタンジオール基、カルボキシル基、スルホン酸基やそのナトリウム塩基などを導入することで、親水性を向上させ、水溶性が向上する。共重合量としては、ポリビニルアルコール骨格を有する樹脂全体に対して1mol%以上20mol%以下、より好ましくは1mol%以上10mol%以下である。共重合量を前述の範囲とすると、層Xをポリエステルフィルム上にコーティングによって設ける際、塗布性が良好となり、積層できなかったり、樹脂成分がフィルム上に偏在するのを抑制することができる。共重合量の具体的な測定方法は実施例に記載の方法とする。
【0021】
層Xとしてポリビニルアルコール骨格を有する樹脂を用いる場合、層Xにバインダー機能を有するアクリル樹脂やポリエステル樹脂、また造膜性を向上させるメラミンやオキサゾリンなどの架橋作用のある樹脂は添加しない方が好ましい。バインダーや架橋作用のある樹脂は、ポリビニルアルコール骨格を有する樹脂の側鎖のヒドロキシル基と相互作用し、結晶化度や接触角を制御することができず、好ましい値とならない傾向にある。
【0022】
また、層Xの十点平均粗さRzjisXは200nm以上700nm以下であることが好ましい。層Xの十点平均粗さRzjisXが上述の範囲であると、ロール形状にて面圧がかかる状況で保管した場合、ポリエステルフィルムの層Xを有する面(A面)と層Xと接する面とは反対側のポリエステルフィルムの面(B面)の接触面積を減少させることが可能となり、湿熱雰囲気下において層Xと重なる層Xと接する面とは反対側のポリエステルフィルムの面(B面)に層Xが転写し、層Xの品質が低下することを抑制できる。また、湿熱雰囲気下において面圧がかかる状況で保管した後、適宜後述する層Yや被離型層を設けたり、離型フィルムとして使用し終わった後の積層ポリエステルフィルムを水洗する際の洗浄性を向上することができる。
【0023】
層Xの十点平均粗さRzjisXが200nm未満であると、ロール形状に巻かれフィルムに面圧がかかる状況下では、湿熱雰囲気下において層Xと接する面とは反対側のポリエステルフィルムの面(B面)と層Xが密着しやすく、層XがB面側に転写したり、層Xの形状が変化する結果、層Xに接して別の層を塗布する場合、該層の塗布性や機能が低下する場合がある。また、湿熱雰囲気下において面圧がかかる状況で保管した後における層Xの水洗性が低下する場合がある。層Xの十点平均粗さRzjisXが700nmを超えると、層Xに接して別の層を塗布する場合、該層の塗布性や機能が低下する場合や、ロール形状に巻かれフィルムに面圧がかかる状況下では、湿熱雰囲気下において、層X自体が大きな凹凸を有する結果、層Xと接する面とは反対側のポリエステルフィルムの面(B面)に転写する場合がある。また、湿熱雰囲気下において面圧がかかる状況で保管した後における層Xの水洗性が低下する場合がある。これは、層X自体が大きな凹凸を有することで、湿熱雰囲気下ロール形状に巻かれフィルムに面圧がかかる状況下では、大きな凹凸部分に圧力が集中して、層Xが部分的に変質するためではないかと考えている。同様の観点から層Xの十点平均粗さRzjisXは、より好ましくは280nm以上650nm以下である。なお、RzjisXは実施例に記載の方法で求めることとする。
【0024】
層Xには粒子を含有することが好ましい。粒子を含有することで層Xの十点平均粗さRzjisXを容易に制御することが可能となる。粒子はシリカ微粒子、架橋ポリスチレン粒子、炭酸カルシウム粒子等が例示される。また、粒子は、球状であることが好ましい。ここでいう球状とは、後述の方法で測定した際、粒子の短辺/長辺が0.5以上1.0以下のものをいう。粒子が球状であることで粒子同士が凝集しにくい場合がある。粒子が球状ではなく複雑な形状であった場合、粒子同士が凝集し、RzjisXを制御できない場合がある。粒子の粒径Zは実施例に記載の方法にて測定した場合に90nm以上500nm以下であることが好ましく、150nm以上400nm以下であることがより好ましい。層Xに含有される粒子の粒径Zを上述の範囲とすることで、層XのRzjisXを好ましい範囲にすることができる結果、層Xに接して別の層を塗布する場合の該層の塗布性や機能、特に湿熱雰囲気下における品質低下を抑制することができる。
【0025】
粒子の粒径Zが90nm未満であると、粒子による層Xの十点平均粗さRzjisXの制御が難しくなり、層Xの十点平均粗さRzjisXが好ましい範囲とならない場合がある。その結果、ロール形状に巻かれフィルムに面圧がかかる状況下では、湿熱雰囲気下において、層Xと接する面とは反対側のポリエステルフィルムの面(B面)と層Xが密着しやすく、層XがB面側に転写したり、層Xの形状が変化する結果、層Xに接して別の層を塗布する場合、該層の塗布性や機能が低下する場合がある。粒子の粒径Zが500nmを超えると、層Xの十点平均粗さRzjisXが大きくなり、層Xに接して別の層を塗布する場合、該層の塗布性や機能が低下する場合がある。
【0026】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、層Xの厚みxa(nm)と、層Xの十点平均粗さRzjisX(nm)が以下の条件1を満たすことが好ましい。
条件1:1≦RzjisX/xa≦10
RzjisX/xaが1.0以上である場合、例えばフィルムをロール状に巻き取る場合、層Xと層Xに接する他の面の間に、層Xの厚み以上の隙間が形成される。形成された隙間によって、ロール形状に巻かれフィルムに面圧がかかる状況下では、湿熱雰囲気下において、層Xと接する面とは反対側のポリエステルフィルムの面(B面)と層Xの密着や転写を防止でき、層Xの品質低下抑制が期待できる。また、湿熱雰囲気下においてフィルムに面圧がかかる状況で保管した後における層Xの水洗性が向上する。
【0027】
RzjisX/xaが1未満である場合、層Xの十点平均粗さRzjisXが小さい、もしくは層Xの厚みxa(nm)が大きい、もしくはその両方である場合が想定される。RzjisX/xaが1未満である場合、湿熱雰囲気下において、層Xと層Xが接していないポリエステルフィルム面Bが密着しやすく、面Bに層Xが転写してしまい、層Xの品質が低下する場合がある。RzjisX/xaが10より大きい場合、層Xの十点平均粗さRzjisXが大きい、もしくは層Xの厚みxa(nm)が小さい、もしくはその両方である場合が想定される。RzjisX/xaが10より大きい場合、層Xに接して別の層を塗布する場合、該層の塗布性や機能が低下する可能性がある。同様の観点からRzjisX/xaは、好ましくは3以上6.5以下である。
【0028】
層Xに含まれる粒子の粒径Z(nm)と層Xの厚みxa(nm)が、以下の条件2を満たすことが好ましい。
条件2:0.8≦Z/xa≦5.0
Z/xaを上述の範囲にすることで、粒子を含有せしめることによる層Xの十点平均粗さRzjisXの制御が可能となる。粒子による層Xの十点平均粗さRzjisXを制御することで、層Xに接して別の層を塗布する場合の該層の塗布性や機能、特に湿熱雰囲気下における品質低下抑制が良好になる。また、湿熱雰囲気下において面圧がかかる状況で保管した後における層Xの水洗性が向上する。
【0029】
Z/xaが0.8未満であると、層Xの厚みに比べて粒子の粒径が小さいため粒子が層Xに埋もれてしまい、粒子を含有せしめることによる層Xの十点平均粗さRzjisXを制御しにくくなる場合がある。その結果、ロール形状に巻かれフィルムに面圧がかかる状況下では、湿熱雰囲気下において層Xと重なる層Xが接していないポリエステルフィルム面Bが密着しやすく、層XがB面側に転写したり、層Xの形状が変化する結果、層Xの特性、すなわち層Xの親水性や、層Xに接して別の層を塗布する場合、該層の塗布性や機能が低下する場合がある。Z/xaが5.0を超えると、層Xの厚みに比べて粒子の粒径が大きいため、表面自由エネルギーが大きく親水性である層Xの有機樹脂が粒子を覆うことができず、層Xに接して別の層を塗布すると別の層と粒子が接するため、層Xと別の層を層Xに接して別の層を塗布する場合、該層の塗布性や機能が低下する場合がある。同様の観点からZ/xaは1.5以上4.0以下であることがより好ましい。
【0030】
本発明の積層ポリエステルフィルムにおいて、層Xの厚みxaは、実施例記載の方法にて測定した場合、10nm以上500nm以下、より好ましくは80nm以上280nm以下であることが好ましい。xaを前述の範囲にすることで、層Xをコーティングによって設ける場合、塗布性を良好にすることができる。また、滑剤の含有による層Xの十点平均粗さRzjisXを制御しやすくなり、条件1、条件2を充足することが容易となる。層Xの厚みが10nm未満の場合、表面自由エネルギーが大きく親水性である層Xを構成する有機樹脂がポリエステルフィルムの表面を覆うことができず、層Xに接して別の層を塗布すると別の層とポリエステルフィルムが接するため、層Xと別の層を後述の方法にて除去する場合に除去性が低下する可能性がある。層Xの厚みが500nmを超える場合、層Xに接して別の層を塗布し、層Xと別の層を後述の方法にて除去すると、層Xの除去残りが発生する可能性がある。また、塗布後の乾燥時にポリエステルフィルムの延伸不良が発生し、製膜性が低下する可能性がある。
【0031】
前記ポリエステルフィルムの、層Xと接する面とは反対側の面Bの十点平均粗さRzjisB(nm)と前記層Xの厚みxa(nm)が以下の条件3を満たすことが好ましい。
条件3:1≦RzjisB/xa≦10
本発明の積層ポリエステルフィルムをロール形状で巻く場合、親水性の層Xは、ポリエステルフィルムの層Xを有する面(A面)とは反対側の面(B面)と接することとなる。後述の方法で測定される十点平均粗さであるRzjisBの値が大きいほど表面の凹凸が大きいことを表す。RzjisB/xaの値が小さく1に満たない場合、すなわちRzjisBが小さい、もしくはxaの値が大きい、もしくはその両方である場合、ロール形状にて面圧がかかる状況下では、湿熱雰囲気下において層XがB面と密着しやすく、層XがB面側に転写し、層Xの形状が変化する結果、層Xの特性、すなわち層Xの吸水性や、層Xに接して別の層を塗布する場合、該層の塗布性や機能が低下する場合がある。
【0032】
RzjisB/xaの値が大きく10を超える場合、すなわちRzjisBが大きい、もしくはxaの値が小さい、もしくはその両方である場合ロール形状に巻かれフィルムに面圧がかかる状況下では、湿熱雰囲気下において面Bの凹凸によって層Xの形状が変化する結果、層Xの特性、すなわち層Xの吸水性や、層Xに接して別の層を塗布する場合、該層の塗布性や機能が低下する場合がある。RzjisB/xaの値は、好ましくは1.5以上7.5以下である。
【0033】
前記層Xのポリエステルフィルムと接する面とは反対面に、以下の条件4および条件5を満たす層Yを有することが好ましい。
条件4:80≦HY(1)≦120
条件5:5≦|HY(1)-HY(20)|≦90
HY(1)(°):層Yに水が接触してから1秒後の接触角
HY(20)(°):層Yに水が接触してから20秒後の接触角
水に対する接触角を制御しHY(1)を上述の範囲とした層Yを有することで、層Yの表面エネルギーを低下させることができる結果、層Yを有する積層ポリエステルフィルムを離型用フィルムとして用いることが可能となる。
【0034】
すなわち、水に対する接触角を制御し、80≦HY(1)とすることで、離型性を十分高くすることができ、層Yを有する積層ポリエステルフィルムを離型用フィルムとして好適に用いることができる。また、HY(1)≦120とすることで、コーティングによって被離型層を設ける場合に被離型層形成用の塗剤を弾きにくくなり、被離型層にピンホールなどの塗布欠陥が生じることを防ぐことができる。同様の観点からHY(1)は、より好ましくは85°以上110°以下である。
【0035】
またHY(20)がHY(1)に比べて変化し、|HY(1)-HY(20)|を上述の範囲とすることで、層Yの物性を、水を媒介として変化させることが可能となる。即ち、水を媒介として物性を変化させることで、層Yと積層ポリエステルフィルムの接着性を変化させることで、層Yを積層ポリエステルフィルムから水を用いて除去することが容易になる。
【0036】
5≦|HY(1)-HY(20)|とすること、とはすなわち、層Yが水を透過していくことを意味する。5≦|HY(1)-HY(20)|とすることで、基材であるポリエステルフィルム側に水が多くしみわたっていくため、基材表面部分で他の層と剥離しやすくなり、層Yを積層ポリエステルフィルムから水を用いて除去し、リサイクルに供することが容易になる。また、|HY(1)-HY(20)|≦90とすることにより、層Yの物性が安定し、水蒸気などにより層Yが変質することを抑制できる。上記同様の観点から|HY(1)-HY(20)|は、よりに好ましくは10°以上60°以下であり、さらに好ましくは15°以上50°以下である。また、上記した観点から、HY(1)-HY(20)≧0であることが好ましい。なお、各接触角の値は実施例に記載の方法で求めることとする。
【0037】
層Yの|HY(1)-HY(20)|を上述の範囲とするため、ポリエステルフィルムと層Yの中間に、前述の層Xを、ポリエステルフィルムと層Yに接するように設ける(すなわち、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に親水性の層Xを有する積層ポリエステルフィルムにおいて、前記層Xのポリエステルフィルムと接する面とは反対面に層Yを有した積層ポリエステルフィルムとする)ことも好ましい実施形態である。水を吸収しやすい層Xが層Yに接してなることで、層Y上に接する水が、層Yを透過して層Xに吸収されるため、層Yの水の接触角も変化し、|HY(1)-HY(20)|を好ましい範囲とすることができる。また、層Xの特性、とくにロール形状で原反を保管した後の親水性を損なわないため、xaやRzjisB、RzjisXを上述の範囲とすることも重要となる。
【0038】
層Yの撥水性が高いほど、また層Yの水の透過性が高いほど、|HY(1)-HY(20)|を好ましい範囲とすることができる。層Yに用いることができる撥水性の高い樹脂として、ジメチルシロキサンを主骨格とするシリコーン化合物、長鎖アルキル基を有する化合物、フッ素を有する化合物が挙げられる。中でも、水の透過性の高いジメチルシロキサン骨格を有するシリコーン(オルガノポリシロキサン)が好ましく、特に硬化型シリコーン骨格を有する樹脂が好適に用いることができる。硬化型シリコーン骨格を有する樹脂には、オルガノハイドロジェンポリロキサンとアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンとを白金触媒のもとに、加熱硬化させた「付加反応型」、オルガノハイドロジェンポリロキサンと末端に水酸基を含有するオルガノポリシロキサンとを有機錫触媒を用いて加熱硬化させた「縮合反応型」、アクリロイル基あるいはメタクリロイル基を含有するオルガノポリシロキサン、あるいはアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンとメルカプト基を含有するオルガノポリシロキサンに光重合開始剤を配合し、UV光を照射することによって硬化させる「UV硬化型」、エポキシ基をオニウム塩開始剤にて光開環させて硬化させる「カチオン重合型」などが挙げられる。いずれを用いてもよいが、生産性、剥離力の観点から付加反応型やUV硬化型が好ましい。
【0039】
付加反応型シリコーン骨格を有する樹脂の具体例としては、末端にビニル基を含有するポリジメチルシロキサンとハイドロジェンシロキサンとを含むものが好ましく、信越化学工業株式会社製のKS-847、KS-847T、KS-841、KS-774、KS-3703T、X-62-2825、ダウ・東レ株式会社製のSD7333、SRX357、SRX345、LTC310、LTC303E、LTC300B、LTC350G、LTC750A、LTC851、LTC759、LTC755、LTC761、LTC856、などが挙げられる(なお、“LTC”は登録商標である)。
【0040】
縮合反応型シリコーン骨格を有する樹脂と触媒の具体例としては、末端に水酸基を含有するポリジメチルシロキサンとハイドロジェンシロキサンとを有機錫触媒を含むものが好ましく、ダウ・東レ株式会社製のSRX290やSY LOFF23が挙げられる。
【0041】
UV硬化型シリコーン骨格を有する樹脂と触媒の具体例としては、アクリロイル基あるいはメタクリロイル基を含有するオルガノポリシロキサンと光重合開始剤を含むものや、アルケニル基を含むポリジメチルシロキサンとメルカプト基を含むポリジメチルシロキサンと光重合開始剤を含むものが好ましく、JNC株式会社製のFM-0711、FM-0721、FM-0725、FM-7711、FM-7721、FM-7725、ダウ・東レ株式会社製のBY24-510HおよびBY24-544などが挙げられる。
【0042】
カチオン重合型シリコーン骨格を有する樹脂と触媒の具体例としては、エポキシ基を含むシロキサンと、オニウム塩開始剤を含むものが好ましく、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製のTPR6501、UV9300およびXS56-A2775などが挙げられる。
【0043】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、層Yの水に対する接触角が大きく、表面エネルギーが小さいことから、層Yの層Xまたは基材と接する面とは反対面に被離型層を設け、層Yから被離型層を剥離する離型用途に好適に用いることができる。さらに、本発明の積層ポリエステルフィルムは、層Xや層Yを除去した後、純度の高いポリエステルフィルムを取り出し、再利用することが好ましい。なお、層Xや層Yを除去した後、ポリエステルフィルムのみを取り出し、再利用することがより好ましい。再利用する方法としては、取り出したポリエステルフィルムに再び層Xや層Yを設けて離型用フィルムとして用いる方法や、ポリエステルフィルムを再溶融して再びポリエステルフィルムに成型する方法が挙げられる。再溶融して再びポリエステルフィルムに成型する方法は、再利用する用途が限定されず、様々な用途に使用が可能であり、環境負荷低減に大きく寄与することが可能となるため好ましい。
【0044】
本発明の積層ポリエステルフィルムの層Yとしてシリコーン化合物、特にジメチルシロキサン結合を含有する化合物を用いる場合、ジメチルシロキサン結合を含む成分は、ポリエステルフィルムと混合して再溶融すると異物になりやすく、ポリエステルの劣化を促進したり、溶融後に押出成形することができなくなることがあるため、本発明のフィルムを再溶融して再利用するためには層Yを除去することが好ましい。
【0045】
層X、層Yを有する本発明の積層ポリエステルフィルムを離型用フィルムとして用いる場合、被離型物はアクリル樹脂を主成分とする粘着剤や、金属や金属酸化物を主成分とする無機物のシートが挙げられる。粘着剤は、偏光フィルムを製造するために用いられるものであることが好ましく、また、金属酸化物であるチタン酸バリウムは、MLCCを製造するために用いられるものであることが好ましい。偏光フィルムやMLCCを製造するための工程用離型フィルムの使用量が増加している状況下、偏光フィルムやMLCCを製造する工程において、層X、層Yを有する本発明のフィルムを用いることで、該製造工程での使用後に、本発明の積層ポリエステルフィルムから層X、層Yを除去して純度の高いポリエステルフィルムを再利用することができ、環境負荷低減に寄与することが可能となる。
【0046】
本発明の積層ポリエステルフィルムを製造する方法を以下に説明するが、本発明はこの方法により得られる積層ポリエステルフィルムに限られるものでは無い。
【0047】
本発明に用いるポリエステルフィルムは、必要に応じて乾燥した原料を押出機内で加熱溶融し、口金から冷却したキャストドラム上に押し出してシート状に加工する方法(溶融キャスト法)を使用することができる。本発明のポリエステルフィルムには、フィルムに粒子を含有させることが好ましい。含有させる粒子は、粒度分布が均一な球形の粒子、例えばコロイダルシリカ粒子、架橋ポリスチレン粒子、炭酸カルシウム粒子が好適に用いられる。粒子含有量は、ポリエステルフィルムの質量に対して0.01質量%以上3.0質量%以下であることが好ましい。また、粒子の粒径は、50nm以上5000nm以下であることが好ましい。キャストドラム上に押し出すシートは、2層以上の積層構成とすることが好ましい。
【0048】
積層構成を有するシートを得る方法としては、それぞれの層を構成する原料をそれぞれ別の押出機にて溶融し、キャストドラム上に設置した合流装置にて好ましい順番にそれぞれの層を積層する方法が挙げられる。
【0049】
上述の方法で得られたシートは、表面温度20℃以上60℃以下に冷却されたドラム上で静電気により密着冷却固化し、未延伸シートを作製する。キャストドラムの温度は、より好ましくは20℃以上40℃以下、さらに好ましくは20℃以上30℃以下である。
【0050】
次に、未延伸シートを、下記(i)式を満たす温度T1n(℃)にて、フィルムの長手方向(MD)に3.6倍以上、フィルムの幅方向(TD)に3.9倍以上、面積倍率14.0倍以上20.0倍以下に二軸延伸する。
【0051】
フィルム幅方向の延伸倍率は、好ましくは4.0倍以上、より好ましくは4.3倍以上5.0倍以下である。フィルム幅方向の延伸倍率を4.0倍以上とすることで、層Xを後述のインラインコート法を用いて一軸延伸後のフィルムに塗布する場合、層Xを構成する成分がフィルムに追随して延伸されて引き延ばされるため、層Xを構成する成分が規則正しく配列するのを抑制し、層Xの結晶化度を好ましい範囲とすることが可能となる。幅方向延伸倍率が5.0倍を超えると、フィルムの製膜性が低下する場合がある。
(i)Tg(℃)≦T1n(℃)≦Tg+40(℃)
Tg:ポリエステルフィルムのガラス転移温度(℃)
フィルムの長手方向の延伸方法には、ロール感の速度差を用いる方法が好適に用いられる。この際、フィルムが滑らないようにニップロールでフィルムを固定しながら、複数区間にわけて延伸することも好ましい実施形態である。
【0052】
次に、二軸延伸フィルムを、下記(ii)式を満足する温度(Th0(℃))で、1秒間以上30秒間以下の熱固定処理を行ない、均一に徐冷後、室温まで冷却することによって、ポリエステルフィルムを得る。
(ii)Tmf-35(℃)≦Th0(℃)≦Tmf(℃)
Tmf:フィルムの融点(℃)
(ii)を満たす条件によって二軸延伸フィルムを得ることにより、フィルムに適度な配向を付与せしめ、離型用フィルムとして使用する場合のハンドリング性を向上させることができる。
【0053】
次に、本発明のポリエステルフィルムに、層X、層Yを設ける方法について以下に説明する。
【0054】
層Xが水溶性の樹脂で形成される場合、層Xを形成する樹脂を水に溶解させ、ポリエステルフィルム上にコーティングする方法を好ましく用いることができる。コーティング方法としては、グラビアコーティング、メイヤーバーコーティング、ロールコーター、エアーナイフコーティング、ドクターナイフコーティング等の一般的なコーティング方式を利用することが出来る。特に、層Xの結晶化度制御の観点から、長手方向に一軸延伸した後のポリエステルフィルムの表層に、層Xの樹脂をコーティングし、ポリエステルフィルムを幅方向に延伸すると同時に層Xを造膜するインラインコート法が好適に用いられる。
【0055】
次に、層Yを設ける方法について説明する。層Yは、層Xと同時に設けても、別々に設けてもよい。同時に設ける場合は、ダイなどを用いて2層を同時に塗布する方法、もしくは層Xの成分と層Yの成分を予め混合した塗剤を用いて塗布する方法が挙げられる。層Xと層Yの積層精度を向上させるため、層Xと層Yを設ける場合に、層Xと層Yを別々に設ける方が好ましい。上述の方法で得られた層Xを含む積層ポリエステルフィルムに、層Yの成分を溶解させた塗液を用い、グラビアコーティング、メイヤーバーコーティング、エアーナイフコーティング、ドクターナイフコーティング等の一般的なコーティング方式を利用して塗布することができる。層Yの厚みは、10nm以上1000nm以下であることが好ましい。10nm以上とすることで層Yの機能を十分に発現することが可能となり、1000nm以下とすることで、層Yの水分透過性を十分に発現することができ、|HY(1)-HY(20)|を好ましい範囲とすることが容易となる。同様の観点からより好ましくは50nm以上500nm以下である。
【0056】
次に、層Xと層Yを除去する方法について説明する。層Xの表面自由エネルギーは後述の方法にて測定した場合に50mN/m以上70mN/m以下となるため、濡れ性、とくに水に対する親和性が高い。そのため、水で洗浄することが好ましい実施形態である。例えば、本発明のポリエステルフィルムを含む積層ポリエステルフィルム(以下、積層フィルムということがある)を、積層フィルムを巻き出す工程と、巻き出した積層フィルム表面に温水を供給し、該積層フィルムから層Xおよび層Xより表面側に積層されている部材を剥離する工程と、剥離後のポリエステルフィルムを巻き取る工程に供することが好ましい。温水の温度は50℃以上120℃以下であることが好ましい。50℃以上とすることで洗浄性を充分に得ることができる。120℃以下とすることで、ポリエステルフィルムのガラス転移温度を超えてしまい、フィルムが搬送できない場合が起こることを抑制することができる。積層フィルムの表面に水が接する時間は、5秒以上、好ましくは10秒以上、さらに好ましくは30秒以上600秒以下である。巻出した積層フィルム表面に温水を供する工程は、水槽で行い、積層フィルム全体を覆う方法や、加熱された水を加圧してフィルムに対して噴射する方法が挙げられる。積層ポリエステルフィルムの層Yに水を供給することで、層Yを通して層Xに水が吸水され、層Yの物性を変化させることができる結果、層Yが積層ポリエステルフィルムから移動しやすくなり、洗浄性が向上する。フィルムを搬送する速度は、5m/分以上、好ましくは10m/分以上、より好ましくは20m/分以上100m/分以下である。層Xと層Yを除去する工程において層Xと層Yを設けた積層ポリエステルフィルムを搬送する際、積層ポリエステルフィルムに張力をかけることも好適な態様として挙げられる。積層ポリエステルフィルムの表面を展伸し、層Xと層Yの剥離性を向上させる結果、洗浄性を向上させることができる。張力は5N/m以上100N/m以下、より好ましくは20N/m以上80N/m以下、より好ましくは30N/m以上50N/m以下である。張力を前述の5N/m以上とすることで、積層ポリエステルフィルムの表面が十分に展伸され、洗浄性を良好にすることができる。また、張力を100N/m以下とすることで、フィルムにシワが入り表面の展伸性が低下することを抑制でき、洗浄性を良好にすることができる。
【0057】
次に、層Xと層Yを除去したフィルムを再生原料とする方法に係る好ましい一態様について述べる。上述の方法で層Xや層Yを除去したフィルムロールを、モーターにて駆動する回転刃を有するクラッシャーに導入して粉砕した後、押出機に導入して溶融し、ストランド状に押出加工し、ペレット状に裁断して再生原料を得る方法を取ることが好ましい。溶融する温度は、再生原料の固有粘度を好ましい範囲とするため、250℃以上300℃以下であることが好ましい。また、押出機が有するスクリュウは単軸でも二軸でも構わない。層Xや層Yを除去したフィルムには、フィルム自体が粒子を含有している場合や、層Xや層Yを除去した際の残渣が含まれる場合があるため、含有される成分を均一に混練する観点から、押出機は二軸であることが好ましい。また、溶融押出する際に、ポリエステル以外の成分を適正な範囲とするため、フィルターでろ過することも好ましい。
【0058】
得られた再生原料は、ポリエステル以外の成分を、0.0001質量%以上0.3質量%以下含有することが好ましい。ポリエステル以外の成分が0.3質量%を超えると、製造装置によっては再生原料を用いてフィルムを製膜した場合に異物が多く発生し、所望の特性を得るのが困難になり、例えば再生原料を本発明の積層フィルムのA層やB層に用いる場合、A層やB層の表面特性を満足できない場合がある。ポリエステルの成分が0.0001質量%未満になるほど不純物量を低下させようとすると、層Xや層Yを除去する工程による基材フィルムへのダメージが大きくなり、再生ポリエステルを得ることが難しくなる場合がある。
【0059】
本発明の積層ポリエステルフィルムの好ましい態様としては、上記のように、ポリエステルフィルムの少なくとも片側に層Xを設けた後、層Yを設けて工程用の離型用フィルムや他の機能成績層フィルムとして用い、さらに層Xや層Yを水により洗浄して除去し、純度の高いポリエステルフィルムを得ることを挙げることができる。そのため、得られるポリエステルフィルムをそのまま再利用したり、該フィルムを再溶融したのちチップ化し、再生原料としてフィルムの製膜に用いることができる。再生原料としては、製膜性の観点から、固有粘度(IV)は0.5以上0.7以下、特に好ましくは0.55以上0.65以下である。
【0060】
[特性の評価方法]
A.層Xの平均重合度
JIS K 6726(1994)ポリビニルアルコール試験方法に準じて、試料を水酸化ナトリウム水溶液にて完全にけん化した後、オストワルド粘度系を用いて25℃での粘度を測定し、極限粘度から平均重合度を算出する。
B.層Xの共重合量(mol%)
下記の装置を用い、13C-NMRスペクトル、DEPT135スペクトルにおいて、変性基導入の炭素シグナルのピーク面積から共重合量(mol%)を求める。
装置:ECZ-600R(株式会社JEOL RESONANCE社製)
測定方法:Single 13C pulse with inverse gated H decoupling
測定周波数:150.9MHz
パルス幅:5.25μs
ロック溶媒:D
化学シフト基準:TSP(0ppm)
積算回数:10000回
測定温度:20℃
試料回転数:15Hz。
【0061】
C.RzjisX、RzjisB(nm)
下記装置、条件にてサンプルの3次元表面粗さを測定し、解析ソフトを用いて表面粗さの十点平均粗さRzjisを算出し、場所を変えて10回測定しその平均値をもってRzjisX(nm)、RzjisB(nm)とする。本測定におけるRzjisはJISB 0601(2001)で準拠する2次元パラメータである十点平均粗さRzjisの定義を3次元的に拡張したものを用いる。RzjisXは層Xを有する積層ポリエステルフィルムの、層Xがポリエステルフィルムと接する面とは反対の面を測定する。RzjisBは、積層ポリエステルフィルムの、層Xを有する面とは反対側の面を測定する。
装置:小坂研究所製“surf-corder ET-4000A”
解析ソフト:i-Face model TDA31
触針先端半径:0.2μm
測定視野:X方向:380μm ピッチ:1μm
Y方向:280μm ピッチ:5μm
針圧:50μN
測定速度:0.1mm/s
カットオフ値;低域:0.8mm、高域:なし
レベリング:全域
フィルター:ガウシアンフィルタ(2D)
倍率:10万倍。
【0062】
D.層Xの厚みxa(nm)
日立ハイテク社製イオンミリング装置IM4000を用い、冷凍モード、加速電圧4kVにてフィルム幅方向に積層フィルム断面を露出させる。該断面を、日立ハイテク社製走査型電子顕微鏡S3400Nにて5000倍の倍率で観察し、層X内で粒子が観察されない箇所かつポリエステルフィルムに対して平行な箇所を20箇所測定した中央値をxa(nm)とする。
【0063】
E.粒子の粒径
日立ハイテク社製イオンミリング装置IM4000を用い、冷凍モード、加速電圧4kVにてフィルム幅方向に積層フィルム断面を露出させる。該断面を、日立ハイテク社製走査型電子顕微鏡S3400Nにて5000倍の倍率で観察し、ポリエステルフィルムに接する層Xに含まれる粒子の最大径を求める。これを100回繰り返し、都合100個分の粒子における最大径の中央値を粒径とする。
【0064】
F.粒子の形状
E.項の観察において、ポリエステルフィルムに接する層Xに含まれる粒子の長径(上記最大径)と短径を測定し、100個それぞれ測定してそのうち80個以上が以下の条件を満たす場合、球状であると判定する。
0.5≦短径/長径≦1.0。
【0065】
G.固有粘度(IV)
オルトクロロフェノール100mlに測定試料を溶解させ(溶液濃度C=1.2g/dl)、その溶液の25℃での粘度を、オストワルド粘度計を用いて測定する。また、同様に溶媒の粘度を測定する。得られた溶液粘度、溶媒粘度を用いて、下記(a)式により、[η](dl/g)を算出し、得られた値でもって固有粘度(IV)とする。
(a)ηsp/C=[η]+K[η]・C
(ここで、ηsp=(溶液粘度(dl/g)/溶媒粘度(dl/g))―1、Kはハギンス定数(0.343とする)である。)。
【0066】
H.表面自由エネルギー(mN/m)
共和界面科学株式会社製の接触角計DM501および付属の解析ソフトFAMASを用いて以下の方法で測定する。層X表面に対して、標準液としてグリセロール、エチレングリコール、ホルムアミド、ジヨードメタンを用い、25℃での各液体の静的接触角を求め、各液体での静的接触角と、非特許文献1に記載の、各液体の表面自由エネルギーの分散成分、極性成分、水素結合成分を、非特許文献1に記載の「畑、北崎の拡張ホークスの式」に導入し、連立方程式を解くことにより、層Xの表面自由エネルギーの分散成分、極性成分、水素結合成分を求める。
非特許文献1:北崎寧昭、畑敏雄:日本接着協会紙,8,(3) 131(1972).
静的接触角の測定は、試料を事前に25℃の環境下で、12時間静置後に実施し、試料表面に液滴が接触した時間を0秒として、30秒後に撮影した画像を使用し、θ/2法を用いて、静的接触角を算出する。場所を変えて5回測定し、静的接触角の平均値を用いて、層Xの表面自由エネルギーの分散成分、極性成分、水素結合成分を算出する。表面自由エネルギーは分散成分、極性成分、水素結合成分の和から求める。
【0067】
I.水の接触角(°)
共和界面科学(株)性の接触角計DM500および付属の解析ソフトFAMASを用いて以下の方法で測定する。23℃、65%RHの雰囲気下、試料表面に水滴が接触した時間を0秒として、20秒間にわたって水滴形状の動画を撮影する。場所を変えて5回測定し、水滴が接する試料表面が層Xの場合、1秒後の水滴形状および20秒後の水滴形状から求められる接触角の平均値を算出し、それぞれHX(1)、HY(20)として算出する。水滴が接する試料表面が層Yの場合、同様にしてHY(1)、HY(20)として算出する。
【0068】
I-2.水溶性
樹脂を50℃の水に10分間浸漬し、水から取り出して表面に付着した水滴をウエスで十分に拭き取ったあとの質量を測定し、以下の方法で算出した質量変化量ΔMが15%以上であり、水溶液となるものであるか否かを判別する。
ΔM=|(M2-M1)|/M1×100(%)
M1(g):50℃の水に10分間浸漬する前の樹脂質量
M2(g):50℃の水に10分間浸漬した後の樹脂質量。
【0069】
J.ブロッキング性
50mm幅に切断したフィルムを2枚重ね、50kg/cmの荷重を加え、温度23℃、相対湿度50%RHにて24時間保持した。その後、スベリ係数測定装置にて荷重を加えた箇所の静摩擦係数を測定した。静摩擦係数μsが0.55以下であればブロッキング抑制していると判別する。
装置:テクノニーズ(株)製 すべり係数測定装置 ST-200
測定面:D面/ND面
(なお、D面とは製膜時にキャスティングドラムと触れる面を言い、ND面はその逆側の面をいう)
測定方向:MD方向
荷重: 200gf
最大値測定時間:1000(ms)
最大後空白時間:500(ms)
平均値測定時間:1000(ms)
測定速度:210(mm/min)
測定距離:12(mm)。
【0070】
K.被離型物(チタン酸バリウムシート)の剥離性
被離型物を積層した積層ポリエステルの被離型物の表面に、ポリエステル粘着テープ(日東電工(株)製No.31B、幅19mm)を張り付けて、共和界面化学(株)製VPA-H200を用いて180°剥離の強度を測定し、50mm幅に換算する。剥離強度が小さいものほど望ましい。
【0071】
L.被離型物(アクリル系有機系粘着剤)の剥離性
被離型物を積層した積層ポリエステルの被離型物の表面に、東レ(株)製のポリエステルフィルム#50T60を張り付け、幅19mm、長さ300mmに切り出してサンプルとする。該サンプルを、共和界面化学(株)製VPA-H200を用いて180°剥離の強度を測定し、50mm幅に換算する。剥離強度が小さいものほど望ましい。
【0072】
M.層X、層Yの除去性
層X、層Yを除去して得られたポリエステルフィルムを用い、上記I.項に従って、1秒後に得られる水の接触角を測定し、以下の通り判定する。
A;65°以上80°未満
B;50°以上65°以下、未満もしく80°以上94°以下
C; 94°を超える、もしくは50°未満
なお、94°を超えるときは層Yの除去が不足しており、50°未満であるときは層Xの除去が不足していると考えられる。
【実施例0073】
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0074】
[PET-1の製造]テレフタル酸およびエチレングリコールから、三酸化アンチモン、酢酸マグネシウム・四水塩を触媒として、常法により重合を行い、溶融重合PETを得た。得られた溶融重合PETのガラス転移温度は81℃、融点は255℃、固有粘度は0.63、末端カルボキシル基量は21eq./tであった。
【0075】
[PENの製造]2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチルおよびエチレングリコールから、酢酸マンガンを触媒として、エステル交換反応を実施した。エステル交換反応終了後、三酸化アンチモンを触媒として常法によりPENを得た。また、重合時に粒径0.1μmのδ晶型アルミナ粒子の含有量が0.1%となるように添加した。得られたPENのガラス転移温度は124℃、融点は265℃、固有粘度は0.62、末端カルボキシル基量は25eq./tであった。
【0076】
[MB-Aの製造]PET-1と粒径0.2μmの架橋ポリスチレン粒子(スチレン・アクリレート共重合体)の10質量%水スラリーを用い、MB-A全体に対して架橋ポリスチレン粒子を2.0質量%含有するように、ベント孔付き押出機に投入し、1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去しながら混練し、MB-Aを得た。ガラス転移温度は81℃、融点は255℃、固有粘度は0.61、末端カルボキシル基量は22eq./tであった。
【0077】
[MB-Bの作製]PET-1と粒径0.5μmの架橋ポリスチレン粒子(スチレン・アクリレート共重合体)の10質量%水スラリーを用い、MB-B全体に対して架橋ポリスチレン粒子を1.0質量%含有するように、ベント孔付き押出機に投入し、1kPa以 下の減圧度に保持し水分を除去しながら混練し、MB-Bを得た。ガラス転移温度は81℃、融点は255℃、固有粘度は0.62、末端カルボキシル基量は20eq./tであった。
【0078】
[MB-Cの作製]PET-1と粒径4.0μmの珪酸アルミナ粒子を用い、MB-C全体に対して珪酸アルミナ粒子を1.0質量%含有するように、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去しながら混練し、MB-Cを得た。ガラス転移温度は81℃、融点は255℃、固有粘度は0.61、末端カルボキシル基量は22eq./tであった。
【0079】
[塗剤Aの作製]付加反応型シリコーン樹脂離型剤(信越化学工業株式会社製商品名KS-847T)100質量部、白金触媒(信越化学工業株式会社製商品名CAT-PL-50T)1質量部を、トルエンを溶媒として固形分1.5質量%となるように調整し、塗剤Aを得た。
【0080】
[有機樹脂bの作製]特許文献特開平9-227627号公報を参考にして、けん化度88、平均重合度500、スルホン酸ナトリウムの共重合量3mol%となるPVAを作製した。該PVAを、4質量%となるように水に溶解させ、有機樹脂bを得た。
【0081】
[有機樹脂cの作製]特許文献特開平9-227627号を参考にして、けん化度88、平均重合度500となるPVAを作製した。該PVAを、4質量%となるように水に溶解し、有機樹脂cを得た。
【0082】
[塗剤Dの作製]日本カーバイド製のアクリル樹脂「ニカゾール RX7013」を、4質量%となるように水で希釈し、塗剤Dを得た。
【0083】
[粒子A] 日本触媒(株)製:シーホスターKE-W30(シリカ球状微粒子、平均粒径300nm)を用いた。
【0084】
[粒子B]micromod社製:43-00-502(シリカ球状微粒子、平均粒子径500nm)を用いた。
【0085】
[粒子C]micromod社製:43-00-102(シリカ球状微粒子、平均粒子径100nm)を用いた。
【0086】
[粒子D] ナノ・ミール(株)製:PS15V(ポリスチレン粒子、平均粒径150nm)
[粒子E]micromod社製:43-00-802(シリカ球状微粒子、平均粒子径800nm)を用いた。
【0087】
[粒子F]日揮触媒化成(株)製:Cataloid SI80P(シリカ球状微粒子、平均粒子径80nm)を用いた。
【0088】
[粘着剤Pの作製]ブチルアクリレート97質量部、アクリル酸3質量部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.2質量部および酢酸エチル233質量部投入した後、窒素ガスを流し、攪拌しながら約1時間窒素置換を行った。その後、60℃にフラスコを加熱し、7時間反応させて、重量平均分子量(Mw)110万のアクリル系ポリマーを得た。このアクリル系ポリマー溶液(固形分を100質量部とする)に、イソシアネート系架橋剤としてトリメチロールプロパントリレンジイソシアネート(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン工業社製):0.8質量部、およびシランカップリング剤(商品名「KBM-403」、信越化学社製):0.1質量部を加えて粘着剤組成物を調製した。
【0089】
[誘電体ペーストの作製]チタン酸バリウム(富士チタン工業(株)製商品名HPBT-1)100質量部、ポリビニルブチラール(積水化学(株)製商品名BL-1)10質量部、フタル酸ジブチル5質量部とトルエン-エタノール(質量比30:30)60質量部に、数平均粒径2mmのガラスビーズを加え、ジェットミルにて20時間混合・分散させた後、濾過してペースト状の誘電体ペーストを作製した。
【0090】
(実施例1)
A面を構成する原料としてPET-1を95質量部、MB-Aを5質量部混合し、160℃で2時間真空乾燥した原料、B面を構成する原料としてPET-1を80質量部とMB-Bを20質量部混合し、160℃で2時間真空乾燥した後、それぞれ別々の押出機に投入し、280℃で溶融させ、合流装置を通してA面を構成する層(A層)の厚みとB面を構成する層(B層)の厚みが5/95となるように積層させた後、ダイを通して表面温度25℃のキャスティングドラム上に押し出し、未延伸シートを作製した。続いて該シートを加熱したロール群で予熱した後、90℃の温度で長手方向(MD方向)に3.8倍延伸を行った後、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムのA面側に、有機樹脂bを95質量部、粒子Aを5質量部混合し、乾燥・延伸後の塗布厚みが100nmとなるようにバーコート法にて塗布し、続いてフィルムのフィルム両端をクリップで把持しながらテンター内の100℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な幅方向(TD方向)に4.3倍延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで230℃の温度で10秒間の熱固定を施した。次いで、冷却ゾーンで均一に徐冷後、ロール形状に巻き取り、層Xが積層された積層ポリエステルフィルムを得た。得られた層Xが積層された積層ポリエステルフィルムの一部を用い、層Xのポリエステルフィルムと接する面とは反対の面に、層Yとして厚みが100nmとなるように塗剤Aを用いてグラビアコート法にて塗布し、層Xと層Yが積層された積層ポリエステルフィルムを得た。得られた層Xと層Yが積層された積層ポリエステルフィルムの層Yの特性は表に記載のとおりであった。さらに、このようにして作製した層Xと層Yが積層された積層ポリエステルフィルムを離型用フィルムとして用い、層Yの層Xと接する面とは反対の面に、被離型物として、誘電体ペーストをダイコート法によって乾燥後の厚みが1.0μmとなるように塗布した。その後、得られた積層体から、誘電体を離型するとともに、被離型物を剥離した工程用の離型用フィルムロールを得た。該フィルムロールを、巻出しと巻き取り装置のある水洗装置に導入し、30N/mの張力下で、100℃の水で2分間洗浄し、層Xと層Yを除去した。離型用フィルムの特性を表に示す。
【0091】
また、得られた層Xが積層された積層ポリエステルフィルムの残りを、ロール形状のまま防湿梱包材(長岡産業(株)製アルミチューブ)で包み、60℃相対湿度80%の雰囲気下で7日間静置する。その後、層Xが積層された積層ポリエステルフィルムを取り出し、 層Xのポリエステルフィルムと接する面とは反対の面に、層Yとして乾燥後厚みが100nmとなるように塗剤Aを用いてグラビアコート法にて塗布し、層Xと層Yが積層された積層ポリエステルフィルムを得た。得られた層Xと層Yが積層された積層ポリエステルフィルムの層Yの特性は表に記載のとおりであった。さらに、このようにして作製した層Xと層Yが積層された積層ポリエステルフィルムを離型用フィルムとして用い、層Yの層Xと接する面とは反対の面に、被離型物として、誘電体ペーストをダイコート法によって乾燥後の厚みが1.0μmとなるように塗布した。その後、得られた積層体から、誘電体を離型するとともに、被離型物を剥離した工程用の離型用フィルムロールを得た。該フィルムロールを、巻出しと巻き取り装置のある水洗装置に導入し、30N/mの張力下で、100℃の水で2分間洗浄し、層Xと層Yを除去した。
【0092】
湿熱雰囲気下で保管しない場合の層Xを有する積層フィルムを用いた離型用フィルム、および湿熱雰囲気下で保管した後の層Xを有する積層フィルムを用いた離型用フィルムの層X、層Yの除去性は優れており、離型用フィルムとしても優れていた。湿熱雰囲気下での保管前後で積層ポリエステルフィルムの性能に差は見られなかった。
【0093】
(実施例2)
層Xに含有される粒子Aの添加量を表に記載の通りとした以外は、実施例1と同様に層Xを積層した積層ポリエステルフィルム、層Xと層Yが積層された積層ポリエステルフィルム、離型用フィルムを得た。各特性を表に示す。
【0094】
湿熱雰囲気下で保管しない場合の層Xを有する積層フィルムを用いた離型用フィルム、および湿熱雰囲気下で保管した後の層Xを有する積層フィルムを用いた離型用フィルムの層X、層Yの除去性は優れており、離型用フィルムとしても優れていた。湿熱雰囲気下での保管前後で積層ポリエステルフィルムの性能に差は見られなかった。
【0095】
(実施例3)
層Xに含有される粒子Aの添加量を表に記載の通りとした以外は、実施例1と同様に層Xを積層した積層ポリエステルフィルム、層Xと層Yが積層された積層ポリエステルフィルム、離型用フィルムを得た。各特性を表に示す。
【0096】
湿熱雰囲気下で保管しない場合の層Xを有する積層フィルムを用いた離型用フィルム、および湿熱雰囲気下で保管した後の層Xを有する積層フィルムを用いた離型用フィルムの層X、層Yの除去性は優れており、離型用フィルムとしても優れていた。湿熱雰囲気下での保管前後で積層ポリエステルフィルムの性能に差は見られなかった。
【0097】
(実施例4)
層Xに含有される粒子Aの添加量と層Xの塗布厚みを表に記載の通りとした以外は、実施例1と同様に層Xを積層した積層ポリエステルフィルム、層Xと層Yが積層された積層ポリエステルフィルム、離型用フィルムを得た。各特性を表に示す。
【0098】
湿熱雰囲気下で保管しない場合の層Xを有する積層フィルムを用いた離型用フィルムの層X、層Yの除去性は優れており、離型用フィルムとしても優れていた。湿熱雰囲気下で保管した後の離型用フィルムとしての被離型物の剥離性は優れており、離型の層Xを有する積層フィルムを用いた離型用フィルムの層X、層Yの除去性は実用上問題なかった。
【0099】
(実施例5)
層Xに含有される滑剤Aの添加量を表に記載の通りとした以外は、実施例1と同様に層Xを積層した積層ポリエステルフィルム、層Xと層Yが積層された積層ポリエステルフィルム、離型用フィルムを得た。各特性を表に示す。
【0100】
湿熱雰囲気下で保管しない場合の層Xを有する積層フィルムを用いた離型用フィルムの層X、層Yの除去性は優れており、離型用フィルムとしても優れていた。湿熱雰囲気下で保管した後の離型用フィルムとしての被離型物の剥離性は優れており、離型の層Xを有する積層フィルムを用いた離型用フィルムの層X、層Yの除去性は実用上問題なかった。
【0101】
(実施例6)
層Xに含有される粒子Aの添加量と層Xの塗布厚みを表に記載の通りとした以外は、実施例1と同様に層Xを積層した積層ポリエステルフィルム、層Xと層Yが積層された積層ポリエステルフィルム、離型用フィルムを得た。各特性を表に示す。
【0102】
湿熱雰囲気下で保管しない場合の層Xを有する積層フィルムを用いた離型用フィルムの層X、層Yの除去性は優れており、離型用フィルムとしては被離型物の剥離性には実用上問題ないフィルムであった。湿熱雰囲気下で保管した後の層Xを有する積層フィルムを用いた離型用フィルムの層X、層Yの除去性は実用上問題なく、離型用フィルムとしては被離型物の剥離性には実用上問題ないフィルムであった。
【0103】
(実施例7)
層Xに含有される粒子を粒子Bに変更し、粒子Bの添加量を表に記載の通りとした以外は、実施例1と同様に層Xを積層した積層ポリエステルフィルム、層Xと層Yが積層された積層ポリエステルフィルム、離型用フィルムを得た。各特性を表に示す。
【0104】
湿熱雰囲気下で保管しない場合の層Xを有する積層フィルムを用いた離型用フィルムの層X、層Yの除去性は優れており、離型用フィルムとしても優れていた。湿熱雰囲気下で保管した後の層Xを有する積層フィルムを用いた離型用フィルムの層X、層Yの除去性に実用上問題なく、離型用フィルムとしては被離型物の剥離性には実用上問題ないフィルムであった。
【0105】
(実施例8)
層Xに含有される粒子を粒子Cに変更し、粒子Cの添加量を表に記載の通りとした以外は、実施例1と同様に層Xを積層した積層ポリエステルフィルム、層Xと層Yが積層された積層ポリエステルフィルム、離型用フィルムを得た。各特性を表に示す。
【0106】
湿熱雰囲気下で保管しない場合の層Xを有する積層フィルムを用いた離型用フィルムの層X、層Yの除去性は優れており、離型用フィルムとしては被離型物の剥離性には実用上問題ないフィルムであった。湿熱雰囲気下で保管した後の層Xを有する積層フィルムを用いた離型用フィルムの層X、除去性は実用上問題なく、離型用フィルムとしては被離型物の剥離性には実用上問題ないフィルムであった。
(実施例9)
A面を構成する原料としてPET-1 95質量部とMB-A 5質量部を混合した原料、B面を構成する原料としてPET-1 100質量部とした原料とした以外は、実施例1同様にして層Xを積層した積層ポリエステルフィルム、層Xと層Yが積層されたポリエステルフィルム、離型用フィルムを得た。各特性を表に示す。
【0107】
湿熱雰囲気下で保管しない場合の層Xを有する積層フィルムを用いた離型用フィルムの層X、層Yの除去性は実用上問題なく、離型用フィルムとしては優れたフィルムであった。湿熱雰囲気下で保管した後の層Xを有する積層フィルムを用いた離型用フィルムの層X、層Yの除去性は優れており、離型用フィルムとしても被離型物の剥離性は実用上問題ないフィルムであった。
【0108】
(実施例10)
A面を構成する原料としてPET-1 95質量部とMB-A 5質量部を混合した原料、B面を構成する原料としてPET-1 10質量部とMB-C 90質量部を混合した原料とした以外は、実施例1同様にして層Xを積層した積層ポリエステルフィルム、層Xと層Yが積層された積層ポリエステルフィルム、離型用フィルムを得た。各特性を表に示す。
【0109】
湿熱雰囲気下で保管しない場合の層Xを有する積層フィルムを用いた離型用フィルムの層X、層Yの除去性は優れており、離型用フィルムとしては被離型物の剥離性は実用上問題ないフィルムであった。湿熱雰囲気下で保管した後の層Xを有する積層フィルムを用いた離型用フィルムの層X、層Yの除去性は優れており、離型用フィルムとしては被離型物の剥離性には実用上問題ないフィルムであった。
【0110】
(実施例11)
層Xに含有される有機樹脂を表に記載の通りとした以外は、実施例1同様に層Xを積層した積層ポリエステルフィルム、層Xと層Yが積層された積層ポリエステルフィルム、離型用フィルムを得た。各特性を表に示す。
【0111】
湿熱雰囲気下で保管しない場合の層Xを有する積層フィルムを用いた離型用フィルム、および湿熱雰囲気下で保管した後の層Xを有する積層フィルムを用いた離型用フィルムの層X、層Yの除去性は優れており、離型用フィルムとしても優れていた。湿熱雰囲気下での保管前後で積層ポリエステルフィルムの性能に差は見られなかった。
【0112】
(実施例12)
層Xに含有される粒子を粒子Dに変更し、粒子Dの添加量を表に記載の通りとした以外は、実施例1と同様に層Xを積層した積層ポリエステルフィルム、層Xと層Yが積層された積層ポリエステルフィルム、離型用フィルムを得た。各特性を表に示す。
湿熱雰囲気下で保管しない場合の層Xを有する積層フィルムを用いた離型用フィルム、および湿熱雰囲気下で保管した後の層Xを有する積層フィルムを用いた離型用フィルムの層X、層Yの除去性に優れ、離型用フィルムとしても優れたものであった。湿熱雰囲気下での保管前後で積層ポリエステルフィルムの性能に差は見られなかった。
【0113】
(実施例13)
使用するポリエステル原料をPENに変えた以外は、実施例1と同様に層Xを積層した積層ポリエステルフィルム、層Xと層Yが積層された積層ポリエステルフィルム、離型用フィルムを得た。各特性を表に示す。
湿熱雰囲気下で保管しない場合の層Xを有する積層フィルムを用いた離型用フィルム、および湿熱雰囲気下で保管した後の層Xを有する積層フィルムを用いた離型用フィルムの層X、層Yの除去性に優れ、離型用フィルムとしても優れたものであった。湿熱雰囲気下での保管前後で積層ポリエステルフィルムの性能に差は見られなかった。
【0114】
(実施例14)
実施例1において、被離型物として粘着剤Pを用い、ダイコート法によって乾燥後の厚みが10μmとなるように塗布した。その後、得られた積層体から、粘着剤を離型するとともに、被離型物を剥離した工程用の離型用フィルムロールを得た。該フィルムロールを、巻出しと巻き取り装置のある水洗装置に導入し、30N/mの張力下で、100℃の水で2分間洗浄し、層Xと層Yを除去した。
【0115】
湿熱雰囲気下で保管しない場合の層Xを有する積層フィルムを用いた離型用フィルム、および湿熱雰囲気下で保管した後の層Xを有する積層フィルムを用いた離型用フィルムの層X、層Yの除去性に優れ、離型用フィルムとしても優れたものであった。湿熱雰囲気下での保管前後で積層ポリエステルフィルムの性能に差は見られなかった。
【0116】
(比較例1)
層Xの有機樹脂を表に記載の通りとした点以外は実施例1と同様にして層Xを積層した積層ポリエステルフィルム、層Xと層Yが積層された積層ポリエステルフィルム、離型用フィルムを得た。各特性を表に示す。
【0117】
湿熱雰囲気下で保管しない場合の離型用フィルムとしての被離型物の剥離性は優れていたものの、層Xを有する積層フィルムを用いた離型用フィルムの層X、層Yの除去性は劣り、湿熱雰囲気下で保管した後の層Xを有する積層フィルムを用いた離型用フィルムの層X、層Yの除去性に劣り、離型用フィルムとしても被離型物の剥離性は実用上問題ないフィルムであった。
【0118】
(比較例2)
層Xの構成成分である粒子を添加しなかった点以外は実施例1と同様にして層Xを積層した積層ポリエステルフィルム、層Xと層Yが積層された積層ポリエステルフィルム、離型用フィルムを得た。各特性を表に示す。
【0119】
湿熱雰囲気下で保管しない場合の層Xを有する積層フィルムを用いた離型用フィルムの層X、層Yの除去性は優れており、離型用フィルムとしても優れていた。湿熱雰囲気下で保管した後の層Xを有する積層フィルムを用いた離型用フィルムの層X、層Yの除去性に劣り、離型用フィルムとしても被離型物の剥離性に劣るフィルムであった。
【0120】
(比較例3)
層Xに含有される粒子を粒子Eに変更し、粒子Eの添加量を表に記載の通りとした以外は、実施例1と同様に層Xを積層した積層ポリエステルフィルム、層Xと層Yが積層された積層ポリエステルフィルム、離型用フィルムを得た。各特性を表に示す。
【0121】
湿熱雰囲気下で保管しない場合の層Xを有する積層フィルムを用いた離型用フィルムの層X、層Yの除去性は優れていたものの、離型用フィルムとしての被離型物の剥離性は劣るフィルムであった。湿熱雰囲気下で保管した後の層Xを有する積層フィルムを用いた離型用フィルムの層X、層Yの除去性は実用上問題なく、離型用フィルムとしても被離型物の剥離性に劣るフィルムであった。
【0122】
(比較例4)
層Xに含有される粒子を粒子Fに変更し、粒子Fの添加量を表に記載の通りとした以外は、実施例1と同様に層Xを積層した積層ポリエステルフィルム、層Xと層Yが積層された積層ポリエステルフィルム、離型用フィルムを得た。各特性を表に示す。
湿熱雰囲気下で保管しない場合の層Xを有する積層フィルムを用いた離型用フィルムの層X、層Yの除去性は優れており、離型用フィルムとしても優れていた。湿熱雰囲気下で保管した後の層Xを有する積層フィルムを用いた離型用フィルムの層X、層Yの除去性に劣り、離型用フィルムとしても被離型物の剥離性に劣るフィルムであった。
【0123】
【表1】
【0124】
【表2】
【0125】
【表3】
【0126】
【表4】
【0127】
【表5】
【0128】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、親水性の層Xを有していながら湿熱雰囲気下での耐久性維持に優れ、層Xを介して積層された他の層(層Y)の水を媒介とした除去性に優れる。また、本発明の層Yを撥水性のある材料とすることで、誘電体ペーストを被離型物とした積層セラミックコンデンサー(MLCC)の製造工程用の離型用フィルムとして好適に使用出来る。また、MLCC製造工程で使用した後の離型用フィルムからポリエステルフィルムを容易に回収できるため、ポリエステルフィルムを溶融製膜用の原料として容易に再利用することができる。