被ろ過液を貯蔵した処理槽内に浸漬される複数のろ過膜エレメントと、前記ろ過膜エレメントを並列に複数配列させる筐体部と、前記筐体部の鉛直下方に配置され、前記ろ過膜エレメントの表面に空気を供給する散気管を内包する散気手段とを有する分離膜モジュールであって、以下の少なくともいずれかに、流体の流れを検知する流体計測センサを少なくとも1つ備えることを特徴とする分離膜モジュール。
(1) 前記筐体部の内部
(2) 前記散気手段の内部
(3) 前記筐体部と前記散気手段の間
(4) 前記筐体部の鉛直方向上方であって前記筐体部の鉛直方向上端から300mm以下
前記流体計測センサが、前記(1)であって、前記ろ過膜エレメントの鉛直方向下端の下方または、鉛直方向上端の上方または、水平方向に隣接する前記ろ過膜エレメント同士の間に備えられることを特徴とする請求項1に記載の分離膜モジュール。
前記流体計測センサは、2つの導電体に隙間を持たせ並列に配置する構成で、前記2つの導電体間に電位差を与え、前記処理槽内を流れる気泡が前記2つの導電体の隙間を通過する際の、前記2つの導電体間の電流値または、電気抵抗値または、電圧値の変化を計測することにより、前記気泡の通過を検知できるセンサであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の分離膜モジュール。
前記流体計測センサは、薄板を前記薄板と水平面とがなす角が±45度以内の状態で、前記薄板の短手の少なくとも一方の端部を固定し、前記薄板の上面または、下面の少なくとも一方に、ひずみゲージが少なくとも1枚貼り付けられる構成で、前記気泡または前記被ろ過液の流れによって発生する前記薄板の撓みの変化を前記ひずみゲージの電気抵抗値変化により計測することで、前記気泡または前記被ろ過液の流れの強さを計測できるセンサであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の分離膜モジュール。
近年、下水や工場排水の処理方法として、分離膜を汚泥を含んだ処理槽の中に浸漬し、被ろ過液を活性汚泥と処理水とに分離する膜分離活性汚泥法(MBR)による水浄化処理方法が用いられている。膜分離活性汚泥法に一般的に用いられるモジュールは、複数の分離膜を筐体部に収容した分離膜エレメントブロックと気泡を出す散気管を内包した散気手段とを組み合わせたものであり、分離膜にはシート状の平膜やストロー状の中空糸膜が一般的に用いられている。
膜分離活性汚泥法においては、ろ過効率低下の要因が大きく2つあり、1つが分離膜表面への汚泥付着による詰まり、もう1つが散気管への汚泥付着による目詰まりである。分離膜への汚泥付着に対しては、散気管から出た気泡による分離膜表面の洗浄が日常的に行われている。しかしながら、気泡による分離膜表面への洗浄だけでは完全には汚泥付着を防止することが出来ず、長期にわたり運転を続けると分離膜表面に汚泥が堆積することで、汚泥が堆積した箇所ではろ過することが出来なくなり、分離膜のろ過効率が低下する。そのため、平膜を用いた分離膜エレメントブロックでは、分離膜エレメントブロックを処理槽内に入れたまま、分離膜のろ過側から次亜塩素酸ナトリウムなどの薬品を流し、分離膜表面や細孔内部の汚泥を除去する薬品洗浄が定期的に行われている。
また、散気停止をした際に、散気管の気泡が出る穴を通して汚泥が散気管内を逆流し、散気管の穴および散気管内に汚泥が付着する。それにより、散気管からの気泡放出量が減ることで、分離膜表面への洗浄効果が低下し、分離膜表面への汚泥堆積につながる。そこで、散気管の洗浄方法としては、散気の停止と再開を繰り返し行うことで、散気管の穴および散気管内に付着した汚泥を洗浄する方法が一般的にとられている。
そのため、分離膜や散気管への汚泥付着状況を監視し、適切なタイミングで洗浄作業を行う必要があるが、分離膜への汚泥付着の監視方法としては、単位膜面積あたりの膜透過流量である、ろ過フラックスや膜間差圧(TMP:transmembrane pressure)の監視が一般的に採用されている。また、散気管の監視方法としては、散気管内の圧力の監視以外にも、特許文献1や特許文献2で記載される監視方法が提案されている。特許文献1では、気泡の放出状況の確認装置として、画像入力装置等が提案されている。画像入力装置では処理槽における気泡の放出状況を撮影し、この画像から散気管の目詰まりの有無を判断する。特許文献2では、処理槽の液面の温度測定による監視方法が提案されている。気泡の発生が阻害されると、被ろ過液の液面に部分的に温度が低い領域が生じる。そのため、液面の温度分布を測定することで散気管の目詰まりの有無を判断することができる。
分離膜への汚泥付着の監視方法である、ろ過フラックスや膜間差圧の監視においては、分離膜エレメントブロック内の分離膜をすべてまとめるか、もしくは複数の分離膜をユニット化し、そのユニットごとに、監視を行っている。そのため、分離膜の一部で汚泥が堆積し、薬品洗浄の必要が生じている状態にあった場合でも、他の分離膜では汚泥が堆積しておらず、汚泥の堆積していない分離膜に気泡や被ろ過液の流れが集中することで、汚泥の堆積していない分離膜のろ過量が増加し、ろ過フラックスや膜間差圧の値としては、薬品洗浄が必要と判断される値には達さない。そのため、薬品洗浄が必要な状態であるにも関わらず、薬品洗浄を行う判断をすることができない。
また、散気管の監視方法である、散気管の圧力の監視においては、散気管の一部に目詰まりを起こしていた場合、他の部分では目詰まりを起こしておらず、他の部分で気泡がより多く放出されることで、正常に散気ができるため、散気管内の圧力としては、散気管の洗浄が必要と判断される値に達さない。そのため、散気管の洗浄が必要な状態であるにも関わらず、洗浄を実施する判断をすることができない。
そして、特許文献1や特許文献2で提案されている散気管の監視方法では、汚泥槽の上面から画像や温度分布を監視しているため、散気管の一部で目詰まりを起こして、気泡放出に偏りが生じていても、汚泥槽の液面に気泡が達する間に、分離膜エレメントブロック内や処理槽内で気泡が均一化され、液面付近では気泡が均一に放出されることで、散気状態に異常がないと判断され、散気管が一部で目詰まりを起こしていることを検知することができない可能性がある。
本発明では、上記の事情を鑑み、分離膜エレメントや散気管の近傍の気泡や被ろ過液といった流体の流れを検知することで、一部の分離膜への汚泥堆積や散気管の汚泥詰まりによる気泡や被ろ過液の流れの偏りを把握することができ、分離膜エレメントブロックや散気管の洗浄時期を適切に判断することが可能となる分離膜モジュールを提供することにある。
本発明の分離膜モジュールは、分離膜エレメントや散気管の近傍に流体の流れを検知することができる流体計測センサを配置することで、流体計測センサの計測値の経時変化から、一部の分離膜への汚泥堆積や散気管の汚泥詰まりによる気泡や被ろ過液の流れの偏りを把握することで、一部の分離膜への汚泥堆積や散気管の汚泥詰まりを認知することができ、よって分離膜エレメントブロックや散気管の洗浄時期を適切に判断することが可能となる。
以下、本発明における実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1に本発明の分離膜モジュールの実施形態の一例を示す。分離膜モジュール1は分離膜エレメント2を筐体部3に収容した分離膜エレメントブロック18、散気管7を内包した散気手段4、分離膜エレメントブロック18と散気手段4を接続するためのスペーサ部材24、流体計測センサ5と流体計測センサ5の値を取得するための測定装置6で構成されており、分離膜モジュール1は被ろ過液8を貯蔵した処理槽9内に浸漬され、膜分離活性汚泥処理で使用される。
分離膜エレメント2は、2枚のシート状の分離膜を分離膜の透過側の面同士が対向するように貼り合わされた形状をしている。分離膜エレメント2は集水部を有しており、分離膜を透過した水は、集水部を経由して、分離膜エレメント2の系外に取り出される。なお、分離膜同士は支持板を介して貼り合わされていても構わない。
筐体部3は分離膜エレメント2を並列に収容するためのラックの役割を果たす構造物である。分離膜エレメントブロック18における単位体積当たりのろ過面積を増やすためには、分離膜エレメント2と水平方向に隣接する分離膜エレメント2の間の距離を狭くして、より多くの分離膜エレメント2を配置することが望ましいが、分離膜エレメント2間の距離が狭すぎると、分離膜エレメント2同士の間を気泡や被ろ過液が流れる際に、圧力損失が大きくなり、十分な流速が得られず、気泡による分離膜表面の洗浄が不十分となってしまう。そのため、効率よくろ過を行うためには、分離膜エレメント2と水平方向に隣接する分離膜エレメント2の間の距離は4~12mmであることが好ましい。
図1では複数の分離膜エレメント2を1つの分離膜ユニット10にして、分離膜ユニット10をX軸方向に3個、Z軸方向に2段、筐体部3に収容する例を示したが、分離膜エレメント2をユニット化せず、直接筐体部3に収容しても構わない。
図1では1つの筐体部3に分離膜エレメント2をZ軸方向に2段配置した例を示したが、筐体部3を鉛直方向に分割し、それぞれの筐体部3に分離膜エレメント2を収容しても構わない。また、筐体部3を鉛直方向に分割し、分割された筐体部3同士を別部材を介して配置していても構わない。なお、その場合、別部材は筐体部3と同一であるとみなすものとする。
図1では分離膜エレメント2をZ軸方向に2段配置した例を示したが、特にこれに限定されず、浸漬する処理槽9のサイズ、要求される処理能力、等々により任意に設定することが可能である。また、
図1では分離膜エレメント2をX軸方向に複数並列に配置する例を示したが、Y軸方向のみや、X軸方向およびY軸方向に複数並列に配置することも可能である。
散気手段4は、分離膜エレメントブロック18の鉛直下方に配置され、気泡を放出する散気管7を内包する構造体である。散気手段4は
図1のように筐体部3の鉛直方向下部にスペーサ部材24を介して配置されている例を示したが、スペーサ部材24を介さず鉛直方向下部に直接配置されていても構わない。
散気管7は、空気供給装置(図示せず)に接続されており、散気管7から出た気泡は、分離膜エレメント2に向けて上昇し、分離膜エレメント2の表面が気泡水流によって洗浄され、被ろ過液をろ過する際の目詰まりを防止することができる。散気管7には、常時開口する複数の散気孔を有する配管である粗泡散気管や、ゴムやウレタン等の部材に微小な散気スリットを設けたメンブレンタイプの微細気泡散気管が一般的に使用されるが、特にこれに限定されず、気泡を放出するものであれば任意に設定することが可能である。
図1では散気管7をX軸に平行に1本配置する例を示したが、X軸に平行にY軸方向に複数並列に配置することも可能である。また、Y軸に平行に1本配置したり、Y軸に平行にX軸方向に複数並列に配置したりすることも可能である。また、複数の散気管7を直列もしくは並列に連結させても構わない。また、粗泡散気管を使用する場合は、散気孔の孔径は、吐出圧損低減の観点から、φ3~10mmが好ましい。そして、微細気泡散気管を用いる場合は、散気スリットの長手方向の長さは微細気泡吐出の観点から0.1~10mmが好ましい。
流体計測センサ5は、流体の流れを検知することができるセンサであり、以下の(1)~(4)の少なくともいずれかに、少なくとも1つ配置することで、流体計測センサ5の計測値の経時変化から、一部の分離膜への汚泥堆積や散気管の汚泥詰まりによる気泡や被ろ過液の流れの偏りを把握することで、一部の分離膜への汚泥堆積や散気管の汚泥詰まりを認知することができ、よって分離膜エレメントブロックや散気管の洗浄時期を適切に判断することが可能となる。また、流体計測センサ5を以下の(1)~(4)の少なくともいずれかに、2つ以上配置することで、別位置での計測値との比較から分離膜への汚泥堆積や散気管の汚泥詰まりの場所間差を把握することが可能となる。
(1)筐体部3の内部
(2)散気手段4の内部
(3)筐体部3と散気手段4の間(筐体部3と散気手段4が直接配置されている場合は存在しない領域)
(4)前記筐体部の鉛直方向上方であって前記筐体部の鉛直方向上端から300mm以下
流体計測センサ5は、前記(1)~(4)の少なくともいずれかの場所に配置されていれば固定方法は特に指定されず、分離膜エレメントブロック18または散気手段4に直接もしくは、別部材を介して固定されていても構わない。また、流体計測センサ5を別部材を介して、分離膜モジュール1とは別に処理槽9などに固定しても構わない。
なお、流体計測センサ5の設置場所について
図1を用いて説明をする。流体計測センサ5を前記(2)かつ、散気管7の鉛直方向上部、つまり
図1でのEの位置または前記(3)の位置、つまり
図1でのAの位置(筐体部3と散気手段4が直接配置されている場合は存在しない)に設置する。すると、流体計測センサ5の計測値の経時変化から、流体計測センサ5近傍の気泡や被ろ過液の流れの偏りを把握することで、散気管7の汚泥詰まりを認識することができる。また、流体計測センサ5の計測値の経時変化から、散気管7の詰まりの進行具合を把握することができ、散気管7の洗浄時期の予測を行うことも可能である。そして、流体計測センサ5を複数配置した場合には、各場所における流体計測センサ5の値を計測することで、散気管7の汚泥詰まりの場所間差を把握することが可能となる。
そして、C’のように分離膜エレメントブロック18内で最も鉛直方向下方にある分離膜エレメント2の鉛直方向下端の下方に設置した場合も同様に、流体計測センサ5近傍の散気管7の汚泥詰まりを認識することができる。
また、流体計測センサ5を前記(1)であって、分離膜エレメント2の鉛直方向下端の下方、つまり
図1でのC、C’の位置または鉛直方向上端の上方、つまり
図1でのB,B’の位置または隣接する分離膜エレメント2同士の間、つまり
図1でのD,D’の位置に設置する。すると、流体計測センサ5の計測値の経時変化から、流体計測センサ5近傍の気泡や被ろ過液の流れの偏りを把握することで、分離膜エレメント2での汚泥堆積を認識することができる。また、流体計測センサ5の計測値の経時変化から、分離膜エレメント2での汚泥堆積の進行具合を把握することができ、分離膜エレメント2の洗浄時期の予測を行うことも可能となる。そして、流体計測センサ5を複数配置した場合には、各場所における流体計測センサ5の値を計測することで、分離膜エレメント2での汚泥堆積の場所間差を把握することが可能となる。そして、
図1のように複数の分離膜エレメント2をユニット化した場合には、流体計測センサ5を各分離膜ユニット10の鉛直方向下端の下方または鉛直方向上端の上方または隣接する分離膜エレメント2同士の間に設置することで、分離膜ユニット10ごとに分離膜エレメント2での汚泥堆積を認識することが可能となる。
なお、流体計測センサ5を筐体部3の鉛直方向上端よりも鉛直方向上方の非常に離れた位置に設置した場合、筐体部内部から鉛直方向上方へ向けて出た気泡や被ろ過液が処理槽9の下方へ向かう流れへ変化したり、気泡や被ろ過液の流れが均一になったりするため、流体計測センサ5近傍の分離膜エレメント2の汚泥堆積による流体の流れの変化を把握することができなくなる。そのため、流体計測センサ5を筐体部3の鉛直方向上端よりも鉛直方向上方に設置する場合は、前記筐体部の鉛直方向上端から300mm以下に設置する必要がある。
本発明で使用する流体計測センサ5について、実施形態の一例を
図2を用いて説明する。
本形態の流体計測センサ5は、
図2(a)に示すように、2つの導電体11に隙間を持たせ並列に配置する構成で、2つの導電体11間に電位差を与え、処理槽9内を流れる気泡が2つの導電体の隙間22を通過する際の、2つの導電体11間の電流値、電気抵抗値または電圧値の変化を計測することにより、気泡の通過を検知できるセンサであることを特徴としており、2つの導電体11と導電体固定用部材12とコード13とで構成される。
本形態の流体計測センサ5では、気泡の通過を検知することができるため、気泡の通過頻度を把握することにより、一定時間経過後の計測値との比較や、別位置での計測値との比較から、流体計測センサ5近傍における気泡や被ろ過液の流れの偏りを把握することで、分離膜エレメント2の汚泥堆積や散気管7の汚泥詰まりを認識することが可能となる。
本形態の流体計測センサ5は処理槽9内に設置されており、被ろ過液にはカルシウムなど塩類成分が溶け込んでいるため、微弱な導電性を有する。そのため、2つの導電体間に電気を流すことができ、2つの導電体11間に一定の電圧をかけた場合、2つの導電体の隙間22に気泡が流れた場合に、導電体11間に電気が流れにくくなることで、2つの導電体11間の抵抗値が大きくなり、導電体11間に流れる電流値が低下する。そのため、2つの導電体11間の電流値や抵抗値を計測することで、気泡が流れたことを検知することが可能となる。また、2つの導電体11間に一定の電流を与えた場合、2つの導電体の隙間22に気泡が流れた場合に、2つの導電体11間の抵抗値が大きくなり、導電体11間の電圧が上昇する。そのため、導電体11間に流れる抵抗値や電圧値を計測することで、気泡が流れたことを検知することができる。また、計測方法として、他にも
図2(b)に示すように片方の導電体11に抵抗19を直列に接続して計測する方法が挙げられる。そして、抵抗19と導電体11間との間に一定の電圧をかけることで、気泡が2つの導電体の隙間22に流れた場合に、導電体11間の抵抗値が上昇し、流れる電流の値が小さくなるため、抵抗19における電圧値が低下する。そのため、抵抗19の前後の電圧値を電圧計21にて計測することで、気泡が流れたことを検知することができる。このように、計測方法については2つの導電体の隙間22に気泡が流れた時に、導電体11間の抵抗値が上昇することを直接的、もしくは間接的に計測することができる方法であれば特に限定されるものではない。
導電体11は、電気をよく通す材質であれば特に限定されるものではないが、耐腐食性があり、剛性の高いステンレス材が好適である。また、導電体11の形状は気泡通過を阻害しにくい形状である、板形状のものが好ましいが、丸棒形状、四角形状、三角形状など任意形状でも構わない。なお、板形状のものを使用する場合、2つの導電体の隙間22を気泡が通過する際に、気泡通過を阻害させにくいように、
図2(a)のように導電体11の最も広い面同士が向かい合うように配置し、かつ流体計測センサ5を前記(1)~(4)に設置した際に、
図2(a)におけるZ軸が
図1におけるZ軸が一致するように配置することが好ましい。なお、他形状を用いる場合も同様に、2つの導電体の隙間22を気泡が通過する際に、気泡通過を阻害させにくいように、導電体11を配置することが好ましい。また、2つの導電体11は同一形状のものを並行に配置することが好ましいが別形状のものを並行に配置しても構わない。
また、2つの導電体11の間隔は、狭すぎる場合、気泡が上昇時に導電体11に接触し、2つの導電体の隙間22を通過せず、2つの導電体の隙間22以外を気泡が通過することで、気泡通過を検知することができなくなる可能性があるため、2つの導電体11の間隔はある程度広い必要がある。しかしながら、2つの導電体11の間隔が広すぎた場合、2つの導電体の隙間22に1度に通過する気泡の個数が多くなることで、常に2つの導電体の隙間22に気泡が存在している状態となり、2つの導電体11間の抵抗値がほとんど変化せず、気泡通過を検知することができなくなる可能性があるため、2つの導電体11の間隔は、1度に2つの導電体の隙間22を通過する気泡が1つとなる、分離膜モジュール1内部を流れる気泡の水平方向の長さに近い値に設定することが好ましい。ただし、本形態の流体計測センサ5を隣接する分離膜エレメント2同士の間に設置する場合には、2つの導電体11と2つの導電体の隙間22を合わせたX軸方向の最大値を分離膜エレメント2と水平方向に隣接する分離膜エレメント2の間の距離以下にする必要がある。なお、流体計測センサ5を分離膜エレメント2同士の間に設置する場合、導電体固定用部材12のX軸方向の長さが、2つの導電体11と2つの導電体の隙間22を合わせたX軸方向の最大値よりも長い場合は、2つの導電体11のみを分離膜エレメント2同士の間に設置し、導電体固定用部材12は、分離膜エレメントブロック18の内部かつ分離膜エレメント2よりも外側に設置するか、分離膜エレメントブロック18の外側に設置しても構わない。
なお、分離膜モジュール1内部を流れる気泡の水平方向の長さは、流体計測センサ5を分離膜エレメントブロック18内で最も鉛直方向下方にある分離膜エレメント2の鉛直方向下端よりも鉛直方向下方に設置する場合は、散気管から出る気泡の長さ、すなわち、粗泡散気管の場合は散気孔の大きさ、メンブレンタイプの微細気泡散気管の場合は散気スリットの長さと同じであることが推測される。また、流体計測センサ5を分離膜エレメントブロック18内で最も鉛直方向下方にある分離膜エレメント2の鉛直方向下端から鉛直方向上方に設置する場合は、分離膜モジュール1内部を流れる気泡の水平方向の長さは、分離膜エレメント2と水平方向に隣接する分離膜エレメント2の間の距離と同じであることが推測される。
導電体11の
図2(a)のY軸方向の長さが気泡のY軸方向の長さに対して大きすぎた場合、気泡が常に2つの導電体の隙間22のY軸方向のいずれかの位置に存在することで、2つの導電体11間の抵抗値がほとんど変化せず、気泡通過を検知することができなくなる可能性があるため、導電体11のY軸方向の長さを2つの導電体11の間隔よりも長く設定する場合には、2つの導電体11間のY軸方向の通電領域を減らすことが好ましい。すなわち、
図2(c)のように、2つの通電体11のY軸方向の一部を絶縁体14(縦線)で覆い、電気が流れないようにすることが好ましい。なお、絶縁体14で覆う位置は2つの導電体11においてY軸方向で同じ位置であることが好ましい。また、絶縁体14で覆う領域は、絶縁体14で覆われていない領域のY軸方向の長さが分離膜モジュール1内部を流れる気泡の水平方向の長さと同じになるように、設定することが好ましい。また、絶縁体14で覆われていない領域のY軸方向の位置は、導電体11の-Y軸方向の端部、Y軸方向中央部、+Y軸方向端部いずれでも構わない。
そして、2つの導電体11は導電体固定用部材12に固定されるが、固定方法としては、接着やボルトを使用した固定などが挙げられる。導電体11が導電体固定用部材12の中に一部埋め込まれていても構わない。
また、導電体固定用部材12は、分離膜エレメントブロック18や散気手段4と一体の構造であっても構わない。
導電体固定用部材12は、導電体固定用部材12を通して電気が流れないようにする必要があり、絶縁性のある樹脂を用いることが好ましいが、導電体固定用部材12に導電体である金属を用い、導電体11に触れる部分に絶縁処理や絶縁材料を組み合わせて使用した構造でも構わない。
2つの導電体11には処理槽9外で計測できるようにそれぞれコード13が接続されている。コード13は導電線に絶縁体の被覆がついているものであれば特に太さなどは指定されるものではない。また、導電体11とコード13の接続は、接着、溶接などが挙げられるが、ボルトなど別部材を用いて接続しても構わない。ただし、計測時に2つの導電体11間以外の部分で通電しないよう、絶縁体11とコード13のそれぞれの接続部やそれぞれのコード13部分は被ろ過液内部でも互いに絶縁されている必要がある。
本形態の流体計測センサ5は、2つの導電体11間の電流値や抵抗値を計測することで、気泡が流れたことを検知し、気泡通過の頻度を把握することが可能であるが、2つの導電体の隙間22を通過する気泡の上昇速度や大きさが異なると、2つの導電体の隙間22を気泡が通過する時の時間や2つの導電体11間の抵抗値が異なるため、気泡通過時の2つの導電体11間の電流値や抵抗値の変化速度、変化量を測定することにより、2つの導電体の隙間22を通過する気泡の上昇速度や大きさを把握することも可能となる。
本発明で使用する流体計測センサ5について、実施形態の別の一例を
図3を用いて説明する。
本形態の流体計測センサ5は、計測用薄板20、ひずみゲージ15、計測用薄板固定用部材17で構成されており、計測用薄板20の短手の少なくとも一方の端部を固定し、計測用薄板20の上面または、下面の少なくとも一方に、ひずみゲージ15が少なくとも1枚貼り付けられる構成で、気泡または被ろ過液の流れによって発生する計測用薄板20の撓みの変化を前記ひずみゲージ15の電気抵抗値変化により計測することで、気泡または被ろ過液の流れの強さを計測できるセンサであることを特徴とする。
本形態の流体計測センサ5では、気泡もしくは被ろ過液の流れの強さをひずみゲージ15を用いて計測できることから、一定時間経過後の計測値との比較や、別位置での計測値との比較から、流体計測センサ5近傍における気泡や被ろ過液の流れの偏りを把握することで、分離膜エレメント2の汚泥堆積や散気管7の汚泥詰まりを認識することが可能となる。
計測用薄板20は気泡や被ろ過液の抗力によって撓むことで、その撓みを電気抵抗値の変化として、ひずみゲージ15により計測する。そのため、計測用薄板20は気泡や被ろ過液の流れにより抗力を受けて撓む必要があることから、流体計測センサ5を前記(1)~(4)の場所に設置した際に、計測用薄板20と水平面とがなす角が±45度以内の状態であることが好ましく、より好ましくは気泡や被ろ過液の流れに対し直交する状態、すなわち計測用薄板20が水平にある状態である。
計測用薄板20の材質としてはステンレス、アルミなどといった金属や、ABSやポリアセタールなどといった樹脂など任意に選択が可能性であるが、気泡や被ろ過液の流れにより、撓んでも塑性変形しにくく、耐腐食性があるステンレスを選択することが好ましい。
計測用薄板20は、厚みが薄すぎる場合には、気泡や被ろ過液の流れによって、塑性変形してしまう。また、厚すぎた場合には、気泡や被ろ過液の流れによって、計測用薄板20が撓まず、ひずみゲージ15の電気抵抗値がほとんど変化せず、気泡や被ろ過液の流れの強さを計測することができない。そのため、計測用薄板20は、適切な厚みを有する必要があり、ステンレスを選択した場合には、厚みは0.1mm~0.5mmに設定することが好ましい。
計測用薄板20は、大きすぎた場合は、分離膜モジュール1内や処理槽9内の気泡や被ろ過液の流れを妨げてしまうため、計測用薄板20の
図3におけるX軸方向の最大の長さを30mm以下に、Y軸方向の最大の長さは100mm以下に設定することが好ましい。ただし、本形態の流体計測センサ5を隣接する分離膜エレメント2同士の間に設置する場合には、流体計測センサ5が分離膜エレメント2に干渉しないよう、X軸方向の長さを設定する必要がある。すなわち、流体計測センサ5を計測用薄板20が水平にある状態で隣接する分離膜エレメント2同士の間に設置した場合には、計測用薄板20のX軸方向の最大の長さを分離膜エレメント2と水平方向に隣接する分離膜エレメント2の間の距離以下にする必要がある。また、分離膜エレメント2は気泡や被ろ過液の流れによって撓んだり、水平方向にぶれたりすることで、分離膜エレメント2同士の間隔が狭まる可能性がある。そのため、支持板を用いた分離膜エレメント2を使用する場合には、X軸方向の最大の長さを分離膜エレメント2同士の散気管7から気泡を放出していない状態の時の距離に対して、0.9倍以下に設定することがより好ましい。また、支持板を用いない分離膜エレメント2を使用する場合には、分離膜エレメント2がより撓みやすいため、X軸方向の最大の長さを分離膜エレメント2同士の散気管7から気泡を放出していない状態の時の距離に対して、0.7倍以下に設定することがより好ましい。なお、流体計測センサ5を計測用薄板20が水平ではなく、傾けた状態で隣接する分離膜エレメント2同士の間に設置する場合も同様に、分離膜エレメント2の撓みやブレを考慮して、計測用薄板20のX軸方向の長さを設定することがより好ましい。また、流体計測センサ5を分離膜エレメント2同士の間に設置する場合、計測用薄板固定用部材17のX軸方向の長さが、計測用薄板20のX軸方向の長さよりも長い場合は、計測用薄板20のみを分離膜エレメント2同士の間に設置し、計測用薄板固定用部材17は、分離膜エレメントブロック18の内部かつ分離膜エレメント2よりも外側に設置するか、分離膜エレメントブロック18の外側に設置しても構わない。
計測用薄板20は計測用薄板20の短手の少なくとも一方の端部を計測用薄板固定用部材17を用いて固定するが、固定方法としては、
図3のように計測用薄板20を計測用薄板固定用部材17で挟み込み、ボルト23で固定することによる固定方法のほかに溶接や接着材による固定などが任意に選択が可能である。また、計測用薄板固定用部材17は、分離膜エレメントブロック18や散気手段4と一体の構造であっても構わない。
計測用固定部材17の材質としては、ステンレス、アルミなどといった金属や、ABSやポリアセタールといった樹脂など任意に選択が可能であるが、耐食性があるステンレスを選択することが好ましい。
計測用薄板20の上面もしくは下面の少なくとも一方にひずみゲージ15を少なくとも1枚貼り付ける。ひずみゲージ15の貼付け方法としては、エポキシ系接着剤、シアノアクリレート系接着剤などといった接着剤を用いた方法や溶接などが挙げられるが、耐水性があるエポキシ系接着剤を用いた接着が好ましい。
本形態での流体計測センサ5は処理槽9内で使用することから、ひずみゲージ15に耐水性を持たせるために、ひずみゲージ15にコーティング16を設けることが好ましい。この際、コーティング16が高剛性の場合、気泡や被ろ過液の流れによって計測用薄板20が撓まず、ひずみゲージ15の電気抵抗値が変化せず、気泡もしくは被ろ過液の流れの強さを計測することができなくなるため、ひずみゲージ近傍の剛性が変化しにくいように、コーティング16には、エポキシ樹脂などのように低剛性で可とう性のある樹脂を用いることが好ましい。
計測用薄板20の撓みにより生じるひずみゲージ15の電気抵抗値の変化量は非常に小さく、通常の計測機では直接計測することが難しいことから、ホイーストンブリッジ回路が構成されたひずみ測定機を用いることで、電気抵抗値の変化を電圧の変化に変換し、その電圧の変化を増幅することができるため、ひずみゲージの電気抵抗値の変化をひずみ値として容易に計測することが可能となる。
本形態の流体計測センサ5は事前に、処理槽9内と同等の被ろ過液を用いて、処理槽9内での気泡と被ろ過液の流速と同程度の流速を流体計測センサ5に与えることにより、流体計測センサ5でのひずみゲージの電気抵抗値の変化もしくはひずみ値と流速の関係を取得することが可能となる。よって、事前に校正された本形態の流体計測センサ5を用いることにより、計測値から処理槽9内の流速を把握することも可能となる。
流体計測センサ5について、2種類の実施形態の例を示したが、本発明においては一方の実施形態の流体計測センサ5を使用しても、両方の実施形態の流体計測センサ5を使用しても構わない。また、本発明における流体計測センサ5は、流体の流れを検知することができるセンサであれば、本実施形態に限定されるものではない。