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特開2023-139430スライドモーション設定方法及びサーボトランスファプレスシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139430
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】スライドモーション設定方法及びサーボトランスファプレスシステム
(51)【国際特許分類】
   B30B 13/00 20060101AFI20230927BHJP
   B30B 15/14 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
B30B13/00 G
B30B15/14 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044961
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000100861
【氏名又は名称】アイダエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100143513
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 数規
(74)【代理人】
【識別番号】100213388
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 康司
(72)【発明者】
【氏名】原田 康宏
【テーマコード(参考)】
4E089
4E090
【Fターム(参考)】
4E089EA01
4E089EB01
4E089EC01
4E089ED02
4E089FB05
4E089FC01
4E089FC03
4E090AA01
4E090AB01
4E090BA02
4E090CC03
4E090EA03
4E090EB06
4E090EC01
4E090FB02
4E090GA02
4E090GA06
4E090HA02
4E090HA03
4E090HA04
(57)【要約】
【課題】本発明は、ストローク数が向上するようにスライドモーションを設定する方法を提供する。
【解決手段】スライドモーション設定方法は、サーボトランスファ機械10のダウン動作DWN、アンクランプ動作UCL、リターン動作RTN、クランプ動作CLP及びリフト動作LFTの割付角度ごとに偏心軸の角速度を算出し、角速度の中から最も遅い角速度を算出し、アドバンス動作ADVに対応する割付角度の半分の角度について偏心軸が最も遅い角速度で回転し停止するまでに要する第1時間と、停止した状態から最も遅い角速度まで加速して半分の角度について回転するのに要する第2時間とを加算して部分回転時間を算出し、部分回転時間がアドバンス動作の最速動作時間より長ければ、スライドモーションを偏心軸が反転する振子モーションに設定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏心軸を回転してプレス加工するサーボプレス機械とワークを搬送するサーボトランスファ機械とを有するサーボトランスファプレスシステムのスライドモーション設定方法であって、
前記サーボトランスファ機械のダウン動作、アンクランプ動作、リターン動作、クランプ動作及びリフト動作の各動作に対応する割付角度を当該動作ごとの最速動作時間で除して前記割付角度ごとに前記偏心軸の角速度を算出し、
前記角速度の中から最も遅い角速度を算出し、
前記サーボトランスファ機械のアドバンス動作に対応する割付角度の半分の角度について前記偏心軸が前記最も遅い角速度で回転し停止するまでに要する第1時間と、停止した状態から前記最も遅い角速度まで加速して前記半分の角度について回転するのに要する第2時間とを加算して部分回転時間を算出し、
前記部分回転時間が前記アドバンス動作の最速動作時間より長ければ、スライドモーションを前記偏心軸が反転する振子モーションに設定し、
前記割付角度のそれぞれは、前記偏心軸の1回転に対して割り付けた前記サーボトランスファ機械の各動作の開始角度から終了角度までの角度であることを特徴とする、スライドモーション設定方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記部分回転時間が前記アドバンス動作の最速動作時間と同じかそれに近くなるように、前記偏心軸が反転する2つの反転角度を算出し、
前記2つの反転角度を前記振子モーションに適用することを特徴とする、スライドモーション設定方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記振子モーションの1サイクルに対応する円弧状の画像を表示部に表示し、
前記画像は、円弧に沿って6つの前記割付角度が区分されて表示されることを特徴とする、スライドモーション設定方法。
【請求項4】
スライドモーションを設定する制御部と、前記スライドモーションを実行させる前記制御部からの指令に従って偏心軸を回転させてプレス加工するサーボプレス機械と、ワークを搬送するサーボトランスファ機械と、を有するサーボトランスファプレスシステムであって、
前記制御部は、
前記サーボトランスファ機械のダウン動作、アンクランプ動作、リターン動作、クランプ動作及びリフト動作の各動作に対応する割付角度を当該動作ごとの最速動作時間で除して前記割付角度ごとに前記偏心軸の角速度を算出する処理と、
前記角速度の中から最も遅い角速度を算出する処理と、
前記サーボトランスファ機械のアドバンス動作に対応する前記割付角度の半分の角度について前記偏心軸が前記最も遅い角速度で回転し停止するまでに要する第1時間と、停止した状態から前記最も遅い角速度まで加速して前記半分の角度について回転するのに要する第2時間とを加算して部分回転時間を算出する処理と、
前記部分回転時間が前記アドバンス動作の前記最速動作時間より長ければ、前記スライドモーションを前記偏心軸が反転する振子モーションに設定する処理と、
を実行するように構成され、
前記割付角度のそれぞれは、前記偏心軸の1回転に対して割り付けた前記サーボトランスファ機械の各動作の開始角度から終了角度までの角度であることを特徴とする、サーボトランスファプレスシステム。
【請求項5】
偏心軸を回転してプレス加工するサーボプレス機械とワークを搬送するサーボトランスファ機械とを有するサーボトランスファプレスシステムのスライドモーション設定方法であって、
前記サーボトランスファ機械のアドバンス動作、ダウン動作、アンクランプ動作、リターン動作、クランプ動作及びリフト動作の各動作に対応する割付角度を当該動作ごとの最速動作時間で除して前記割付角度ごとに前記偏心軸の角速度を算出し、
前記偏心軸がそれぞれの前記割付角度に対応する前記角速度で動作するスライドモーションを設定し、
前記割付角度のそれぞれは、前記偏心軸の1回転に対して割り付けた前記サーボトランスファ機械の各動作の開始角度から終了角度までの角度であることを特徴とする、スライドモーション設定方法。
【請求項6】
スライドモーションを設定する制御部と、前記スライドモーションを実行させる前記制御部からの指令に従って偏心軸を回転させてプレス加工するサーボプレス機械と、ワークを搬送するサーボトランスファ機械と、を有するサーボトランスファプレスシステムであって、
前記制御部は、
前記サーボトランスファ機械のアドバンス動作、ダウン動作、アンクランプ動作、リターン動作、クランプ動作及びリフト動作の各動作に対応する割付角度を当該動作ごとの最速動作時間で除して前記割付角度ごとに前記偏心軸の角速度を算出する処理と、
前記偏心軸がそれぞれの前記割付角度に対応する前記角速度で動作する前記スライドモーションを設定する処理と、
を実行するように構成され、
前記割付角度のそれぞれは、前記偏心軸の1回転に対して割り付けた前記サーボトランスファ機械の各動作の開始角度から終了角度までの角度であることを特徴とする、サーボトランスファプレスシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライドモーション設定方法及びサーボトランスファプレスシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
サーボトランスファプレスシステムは、プレス加工するサーボプレス機械とワーク(材料)をトランスファ(搬送)するサーボトランスファ機械とから構成されている。
【0003】
サーボプレス機械は、複数のプレス加工ステーションを有し、スライドを昇降させつつ金型を用いてワークにプレス加工(打ち抜き、曲げ及び絞り等)を施す。スライドは、スライドモーションに従って昇降運動される。
【0004】
サーボトランスファプレスシステムは、サーボプレス機械のスライドとサーボトランスファ機械のフィンガー等との干渉を防止する必要がある。そのため、スライドモーションが変更された場合に干渉判定を行い、干渉が有ると判定した場合にスライドモーションまたはトランスファモーションを調整する技術が提案されている(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5665233号公報
【特許文献2】国際公開第2020/116479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1,2は、ストローク数(SPM:Shots Per Minute)を向上させるためにスライドモーションを調整する方法について開示していない。
【0007】
そこで、本発明は、ストローク数が向上するようにスライドモーションを設定することができるスライドモーション設定方法及びサーボトランスファプレスシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0009】
[1]本発明に係るスライドモーション設定方法の一態様は、
偏心軸を回転してプレス加工するサーボプレス機械とワークを搬送するサーボトランスファ機械とを有するサーボトランスファプレスシステムのスライドモーション設定方法であって、
前記サーボトランスファ機械のダウン動作、アンクランプ動作、リターン動作、クランプ動作及びリフト動作の各動作に対応する割付角度を当該動作ごとの最速動作時間で除して前記割付角度ごとに前記偏心軸の角速度を算出し、
前記角速度の中から最も遅い角速度を算出し、
前記サーボトランスファ機械のアドバンス動作に対応する割付角度の半分の角度について前記偏心軸が前記最も遅い角速度で回転し停止するまでに要する第1時間と、停止した状態から前記最も遅い角速度まで加速して前記半分の角度について回転するのに要する第
2時間とを加算して部分回転時間を算出し、
前記部分回転時間が前記アドバンス動作の最速動作時間より長ければ、スライドモーションを前記偏心軸が反転する振子モーションに設定し、
前記割付角度のそれぞれは、前記偏心軸の1回転に対して割り付けた前記サーボトランスファ機械の各動作の開始角度から終了角度までの角度であることを特徴とする。
【0010】
前記スライドモーション設定方法の一態様によれば、各割付角度におけるサーボトランスファ機械の動作が可能な範囲で偏心軸の角速度を設定しながらも、スライドモーションを振子モーションに設定することにより、ストローク数が向上することができる。
【0011】
[2]前記スライドモーション設定方法の一態様において、
前記部分回転時間が前記アドバンス動作の最速動作時間と同じかそれに近くなるように、前記偏心軸が反転する2つの反転角度を算出し、
前記2つの反転角度を前記振子モーションに適用することができる。
【0012】
前記スライドモーション設定方法の一態様によれば、アドバンス動作に対応する割付角度を偏心軸が回転するための時間がアドバンス動作の最速動作時間に近づくことができる。
【0013】
[3]前記スライドモーション設定方法の一態様において、
前記振子モーションの1サイクルに対応する円弧状の画像を表示部に表示し、
前記画像は、円弧に沿って6つの前記割付角度が区分されて表示されることができる。
【0014】
前記スライドモーション設定方法の一態様によれば、設定された振子モーションにおける偏心軸の割付角度を操作者が視覚的に理解しやすい。
【0015】
[4]本発明に係るサーボトランスファプレスシステムの一態様は、
スライドモーションを設定する制御部と、前記スライドモーションを実行させる前記制御部からの指令に従って偏心軸を回転させてプレス加工するサーボプレス機械と、ワークを搬送するサーボトランスファ機械と、を有するサーボトランスファプレスシステムであって、
前記制御部は、
前記サーボトランスファ機械のダウン動作、アンクランプ動作、リターン動作、クランプ動作及びリフト動作の各動作に対応する割付角度を当該動作ごとの最速動作時間で除して前記割付角度ごとに前記偏心軸の角速度を算出する処理と、
前記角速度の中から最も遅い角速度を算出する処理と、
前記サーボトランスファ機械のアドバンス動作に対応する前記割付角度の半分の角度について前記偏心軸が前記最も遅い角速度で回転し停止するまでに要する第1時間と、停止した状態から前記最も遅い角速度まで加速して前記半分の角度について回転するのに要する第2時間とを加算して部分回転時間を算出する処理と、
前記部分回転時間が前記アドバンス動作の前記最速動作時間より長ければ、前記スライドモーションを前記偏心軸が反転する振子モーションに設定する処理と、
を実行するように構成され、
前記割付角度のそれぞれは、前記偏心軸の1回転に対して割り付けた前記サーボトランスファ機械の各動作の開始角度から終了角度までの角度であることを特徴とする。
【0016】
前記サーボトランスファプレスシステムの一態様によれば、各割付角度におけるサーボトランスファ機械の動作が可能な範囲で偏心軸の角速度を設定しながらも、スライドモーションを振子モーションに設定することにより、ストローク数が向上することができる。
【0017】
[5]本発明に係るスライドモーション設定方法の一態様は、
偏心軸を回転してプレス加工するサーボプレス機械とワークを搬送するサーボトランスファ機械とを有するサーボトランスファプレスシステムのスライドモーション設定方法であって、
前記サーボトランスファ機械のアドバンス動作、ダウン動作、アンクランプ動作、リターン動作、クランプ動作及びリフト動作の各動作に対応する割付角度を当該動作ごとの最速動作時間で除して前記割付角度ごとに前記偏心軸の角速度を算出し、
前記偏心軸がそれぞれの前記割付角度に対応する前記角速度で動作するスライドモーションを設定し、
前記割付角度のそれぞれは、前記偏心軸の1回転に対して割り付けた前記サーボトランスファ機械の各動作の開始角度から終了角度までの角度であることを特徴とする。
【0018】
前記スライドモーション設定方法の一態様によれば、割付角度ごとに偏心軸の最速となる角速度を設定することで、サーボプレス機械のストローク数が向上することができる。
【0019】
[6]本発明に係るサーボトランスファプレスシステムの一態様は、
スライドモーションを設定する制御部と、前記スライドモーションを実行させる前記制御部からの指令に従って偏心軸を回転させてプレス加工するサーボプレス機械と、ワークを搬送するサーボトランスファ機械と、を有するサーボトランスファプレスシステムであって、
前記制御部は、
前記サーボトランスファ機械のアドバンス動作、ダウン動作、アンクランプ動作、リターン動作、クランプ動作及びリフト動作の各動作に対応する割付角度を当該動作ごとの最速動作時間で除して前記割付角度ごとに前記偏心軸の角速度を算出する処理と、
前記偏心軸がそれぞれの前記割付角度に対応する前記角速度で動作する前記スライドモーションを設定する処理と、
を実行するように構成され、
前記割付角度のそれぞれは、前記偏心軸の1回転に対して割り付けた前記サーボトランスファ機械の各動作の開始角度から終了角度までの角度であることを特徴とする。
【0020】
前記サーボトランスファプレスシステムの一態様によれば、割付角度ごとに偏心軸の最速となる角速度を設定することで、サーボプレス機械のストローク数が向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態に係るサーボトランスファプレスシステムの模式図である。
図2】スライドモーションと割付角度との関係を説明する図である。
図3】振子モーションと割付角度との関係を説明する図である。
図4】変換後の同期角度で表した振子モーションと割付角度との関係を説明する図である。
図5】スライドモーションとトランスファモーションのタイミング線図である。
図6】第2実施形態に係るスライドモーション設定方法のフローチャートである。
図7】第2実施形態に係るスライドモーション設定方法のフローチャートである。
図8】第4実施形態に係るスライドモーション設定方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0023】
1.第1実施形態に係るサーボトランスファプレスシステム
図1図3を用いて、サーボトランスファプレスシステム1について詳細に説明する。図1は、第1実施形態に係るサーボトランスファプレスシステム1の模式図であり、図2は、フルストロークモーションのスライドモーションSMと割付角度(θa、θd、θu、θr、θc、θl)との関係を説明する図であり、図3は、振子モーションのスライドモーションSMと割付角度(θa、θd、θu、θr、θc、θl)との関係を説明する図であり、図4は、変換後の同期角度で表した振子モーションと割付角度(θa、θd、θu、θr、θc、θl)との関係を説明する図である。
【0024】
図1に示すように、サーボトランスファプレスシステム1は、スライドモーションを設定する制御部30と、スライドモーションを実行させる前記制御部からの指令に従って偏心軸を回転させてプレス加工するサーボプレス機械2と、ワーク100を搬送するサーボトランスファ機械10と、を有する。スライドモーションは、制御部30で生成されるスライド6の動作であり、一般にスライド6のスライド位置(mm)と時間(sec)又は速度(mm/sec)との関係で表される。スライドモーションを実行させる指令は、制御部30で設定されたスライドモーションに基づいて制御部30が作成する指令である。制御部30はこの指令をサーボモータ4に出力し、この指令に従ってサーボモータ4が偏心軸を回転させる。その結果、スライド6がスライドモーションに従って動作する。
【0025】
サーボプレス機械2は、サーボモータ4によって昇降可能なスライド6と、スライド6の下面に取り付けられた上型7と、上型7と対向するように配置された下型8と、下型8を固定する図示しないボルスタと、を備える。サーボプレス機械2は、サーボモータ4が駆動することで動力伝達機構を介して偏心軸例えばクランク軸3を回転し、クランク軸3の回転によって図示しないコンロッドを介してスライド6がスライドモーションに従って動作する。そして、スライド6に固定された上型7が下型8に対して昇降することでワーク100をプレス加工する。偏心軸は、クランク軸3に限らずエキセントリック軸を採用してもよい。偏心機構は、回転運動を往復直線運動に変換する機構である。偏心軸とコンロッドとで偏心機構が形成される。クランク軸3の1回転がスライド6の1ストロークに対応し、1ストロークがプレス加工の1サイクルに対応する。なお、一般に、1分間にスライド6がストロークする数をストローク数(SPM)と呼び、ストローク数(SPM)が生産数を表す。サーボプレス機械2は、サーボトランスファプレスシステム1に用いられる公知のサーボプレス機械を採用することができる。
【0026】
サーボモータ4は、エンコーダ5を有する。エンコーダ5から出力された検出信号は、プレスモーションに従った制御のためにサーボプレス制御装置21、サーボアンプ22及び制御部30に入力される。また、図示しないが、サーボプレス機械2は、スライド6の高さ位置を検出するエンコーダをさらに備えていてもよい。
【0027】
サーボトランスファ機械10は、複数例えば3つのサーボモータ14によって駆動するフィードバー11及びフィードバー11に取り付けられた保持具12を備える。フィードバー11及び保持具12は、下型8を挟んでそれぞれ一対設けられる。サーボトランスファ機械10はフィードバー11及び保持具12が下型8を挟んで一対設けられた例について示しているが、これに限らず下型8の片側にのみ設けられる1本のフィードバー11でワーク100を搬送する1本バー型のトランスファ機械であってもよい。各フィードバー11は、複数の保持具12を備える。保持具12は、ワーク100を保持するための機構として、例えばフィンガーやバキュームカップ等を有する。サーボトランスファ機械10は、設定されたトランスファモーションに従って複数のサーボモータ14を駆動して保持具12を図1に矢印で示すクランプ動作CLP、リフト動作LFT、アドバンス動作ADV、ダウン動作DWN、アンクランプ動作UCL、及びリターン動作RTNで移動させる
。3つのサーボモータ14は、それぞれX軸、Y軸及びZ軸に沿った方向のフィードバー11の動作に用いられる。
【0028】
クランプ動作CLPは、対向する保持具12を互いに近接移動して保持具12が下型8上のワーク100を保持する動作である。リフト動作LFTは、保持具12を上昇させて下型8からワーク100を離型させる動作である。アドバンス動作ADVは、保持具12をフィードバー11の長手方向(X軸に沿った方向)に沿って移動させてワーク100を次の下型8の上に移動させる動作である。ダウン動作DWNは、保持具12を下降させてワーク100を下型8の上に載せる動作である。アンクランプ動作UCLは、対向する保持具12を互いに離間移動させて保持具12がワーク100を放す動作である。リターン動作RTNは、上型7に干渉しない位置で保持具12をフィードバー11の長手方向に沿って移動させて初期位置に戻す動作である。クランプ動作CLPからリターン動作RTNまでの一連の動作がサーボプレス機械2の1サイクルに同期する。本実施形態では1台のサーボトランスファ機械10に対して1台のサーボプレス機械2の例について説明するが、これに限らず、サーボトランスファシステム1は、n(nは2以上の整数)台のサーボトランスファ機械10に対してn台のサーボプレス機械2を備えてもよい。
【0029】
また、サーボモータ14は、それぞれエンコーダ15を有する。エンコーダ15からの検出信号は、トランスファモーションに従った制御のためにサーボトランスファ制御装置25、サーボアンプ26及び制御部30に入力される。また、サーボトランスファ機械10は、保持具12及びフィードバー11の位置を検出する図示しない複数のエンコーダを備えていてもよい。
【0030】
制御部30は、例えば、操作部31、演算部32、記憶部33、及び出力部38を備える。制御部30は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)やHDD(Hard Disk Drive)などの記憶媒体、高速データ通信を行う通信インターフェース、及びディスプレイ、タッチパネルやキーボードなどのユーザインターフェースを備える。図1の例では、サーボトランスファプレスシステム1は、制御部30に接続する表示部35を備える例を示す。表示部35は、液晶画面(LCD(Liquid Crystal Display))や公知の他の表示装置(例えば有機EL(Electro Luminescence)等)を用いることができる。表示部35は出力部38から出力された情報を表示することができる。表示部35は、操作部31の一部として各種ユーザインターフェース(GUI(Graphical User Interface))を備えてもよい。制御部30及び表示部35は、サーボプレス制御装置21の一部であってもよいし、サーボトランスファ制御装置25の一部であってもよい。制御部30は、サーボトランスファプレスシステム1の一部として常設されているが、サーボトランスファプレスシステム1から取り外し可能であってもよく、例えば、サーボプレス制御装置21がサーボトランスファ制御装置25と直接通信可能であれば、スライドモーションの設定後はサーボトランスファプレスシステム1から取り外してもよい。また、制御部30の一部または全部は、インターネットを介してクラウド上に設けてもよい。
【0031】
操作部31は、スライドモーション及びトランスファモーションの各種条件を操作者が入力するためのインターフェースである。演算部32は、操作部31からの入力によって後述する各処理を実行する。記憶部33は、演算部32で各処理を実行後、操作部31で設定されたスライドモーション及びトランスファモーション、各種制御プログラム等を記憶する。出力部38は、制御部30に接続する装置の各部への各種指令を出力する。表示部35は、例えば図2図4に示すようなスライドモーションSMや円弧状の画像AS等
を表示する。
【0032】
図2の上段に示す図は、「2.第2実施形態に係るスライドモーション設定方法」で説明する「事前準備」の「割付角度の設定工程」で設定される割付角度(θa、θd、θu、θr、θc、θl)とスライドモーションSMとの関係を表す。一般的なスライドモーションはスライド位置と時間で表されるが、同図は、縦軸がスライド位置(mm)及びクランク軸の角度(°)であり、横軸がトランスファ同期角度(°)である。スライドモーションSMは実線で示し、実際のクランク軸角度CAは破線で示す。トランスファモーションの各動作は、トランスファ同期角度(°)のいわゆる割付角度(θa、θd、θu、θr、θc、θl)に網掛け処理で示す。割付角度(θa、θd、θu、θr、θc、θl)は、トランスファ同期角度(一般にはクランク角度)に対するトランスファモーションの各動作の開始角度から終了角度までの範囲の角度である。
【0033】
図2の上段に示すスライドモーションSMは、スライド6が上死点TDCから下死点BDCを通って再び上死点TDCまで戻るフルストロークモーションである。このモーションは、クランク軸3が一方向(右回り)に一定の角速度で停止することなく連続回転する。この1サイクルのスライドモーションSMを円環状の画像ASとして示したのが図2の下段の図である。下段の図では、トランスファ同期角度(この図ではクランク軸3の1回転に相当する)を画像ASの1周で表し、トランスファ同期角度における割付角度(θa、θd、θu、θr、θc、θl)を、中心3aに対して真上を0°(スライド6の上死点TDC)、真下を180°(スライド6の下死点BDC)として表す。
【0034】
図3の上段に示すスライドモーションSMは、スライド6が上死点TDCに戻る前にクランク軸3が停止、反転するいわゆる振子モーションの例である。振子モーションは、クランク軸3を振り子のように下死点BDCを中心に揺動させることでストロークが短くなり、その結果としてストローク数が増加する。この例では、クランク軸3は反転角度IA(60°と300°)で反転動作を繰り返す。また、クランク軸3は、基本的に等速回転であるが、反転角度IAにおいて停止するため反転角度IA付近で減速し、停止後に再び加速する。この1サイクルのスライドモーションSMは、同図の下段のように円弧状の画像ASで表すことができる。下段の図では、図2の例に比べてアドバンス動作ADVに対応するクランク軸3の回転動作を短縮することができるので、1サイクルに要する時間が短くなる。
【0035】
トランスファ同期角度(°)は、トランスファモーションが同期する仮想的なクランク軸の角度であり、図2及び図3の例では現実のクランク軸3の角度と同じく0°~360°である。例えば、図3に示す60°~300°で反転する振子モーションのスライドモーションSMを、図4に示すように0°~360°のトランスファ同期角度に変換すると、1サイクルを仮想のクランク軸の1回転としてトランスファモーションの割付角度(θa、θd、θu、θr、θc、θl)を認識することができる。仮想のクランク軸の角度でトランスファ同期角度を表わすことにより、従来の機械式プレス機械に慣れた操作者であっても1サイクルをクランク軸の1回転として理解しやすい。
【0036】
トランスファモーションの各動作の割付角度(θa、θd、θu、θr、θc、θl)は、現実のクランク軸3の角度で表すトランスファ同期角度で設定される。図2及び図3の下段における中心3aは、現実のクランク軸3の回転の中心3aとして考えることができる。角速度(ωa、ωd、ωu、ωr、ωc、ωl)は、トランスファモーションの各動作の割付角度(θa、θd、θu、θr、θc、θl)におけるクランク軸3の角速度である。
【0037】
制御部30は、サーボトランスファ機械10のダウン動作DWN、アンクランプ動作U
CL、リターン動作RTN、クランプ動作CLP及びリフト動作LFTの各動作に対応する割付角度(図2及び図3では順にθd、θu、θr、θc、θlで示す)を当該動作ごとの最速動作時間で除して割付角度ごとに偏心軸例えばクランク軸3の角速度(図2及び図3では順にωd、ωu、ωr、ωc、ωlの矢印で示す)を算出する処理と、角速度の中から最も遅い角速度を算出する処理と、サーボトランスファ機械のアドバンス動作ADVに対応する割付角度θaの半分の角度(θa/2)についてクランク軸3が最も遅い角速度ωaで回転し停止するまでに要する第1時間と、停止した状態から最も遅い角速度ωaまで加速して半分の角度(θa/2)について回転するのに要する第2時間とを加算して部分回転時間Taを算出する処理と、部分回転時間Taがアドバンス動作ADVの最速動作時間より長ければ、スライドモーションSMをクランク軸3が反転する振子モーション(例えば図3)に設定する処理と、を実行するように構成される。割付角度(θa、θd、θu、θr、θc、θl)のそれぞれは、クランク軸3の1回転に対して割り付けたサーボトランスファ機械10の各動作の開始角度から終了角度までの角度である。なお、制御部30における処理については、第2実施形態に係るスライドモーション設定方法において詳述する。
【0038】
このように、サーボトランスファプレスシステム1の一態様によれば、各割付角度(θa、θd、θu、θr、θc、θl)におけるサーボトランスファ機械10の動作が可能な範囲で偏心軸であるクランク軸3の角速度(ωa、ωd、ωu、ωr、ωc、ωl)を設定しながらも、スライドモーションSMを振子モーションに設定することにより、ストローク数が向上する。具体的には、図2のようなスライドモーションSMより、スライドモーションSMを図3のような振子モーションに変更した方が、割付角度θaにおける部分回転時間Taよりも長いスライド6の移動時間を減らすことができるので、サーボトランスファプレスシステム1の生産性を向上させることができる。
【0039】
図2図4におけるスライドモーションSMは、スライド位置とトランスファ同期角度で表したが、一般的な表示としては図5のようなストロークとクランク角度で表すタイミング線図がある。図5に示すように、タイミング線図では、スライドモーションSMのみならず、サーボトランスファ機械10のサーボトランスファモーションもストロークとクランク角度で表すことができる。図5のように表す場合には、アドバンス動作ADV及びリターン動作RTNと、ダウン動作DWNと、アンクランプ動作UCLと、クランプ動作CLPと、リフト動作LFTの各動作は、それぞれ独立した曲線で表すことができる。また、各割付角度(θa、θd、θu、θr、θc、θl)は、それぞれ破線で示す範囲になる。そして、サーボトランスファモーションは、図5に示すような隣接する2つの動作が一部重複するオーバーラップ区間を設けるモーションを採用してもよい。オーバーラップ区間は、例えばクランプ動作CLPが終了する前にリフト動作LFTが開始するオーバーラップ区間(θcとθlの範囲が重複している区間)を設けたり、アドバンス動作ADVが終了する前にダウン動作DWNが開始するオーバーラップ区間(θaとθdが重複している区間)を設けたりしてもよい。このようなオーバーラップ区間を設けることにより、前の動作の終了を待たずに次の動作を開始できるため、サーボトランスファモーションのサイクルタイムを短縮できる。なお、オーバーラップ区間は、単に「ラップ」と呼ばれることがある。
【0040】
2.第2実施形態に係るスライドモーション設定方法
図6及び図7を用いて、第2実施形態に係るスライドモーション設定方法を詳細に説明する。図6及び図7は、第2実施形態に係るスライドモーション設定方法のフローチャートである。
【0041】
以下の説明では図1のサーボトランスファプレスシステム1を用いて、図2及び図3のスライドモーションSMを設定する例について説明する。第2実施形態に係るスライドモ
ーション設定方法は、偏心軸例えばクランク軸3を回転してプレス加工するサーボプレス機械2とワーク100を搬送するサーボトランスファ機械10とを有するサーボトランスファプレスシステム1のスライドモーション設定方法である。
【0042】
図6に示すように、本実施形態に係るスライドモーション設定方法は、角速度を算出する工程(S10)、最も遅い角速度を算出する工程(S12)、部分回転時間Taを算出する工程(S14)、部分回転時間Taが最速動作時間FTaより長いかを判定する工程(S16)を含み、さらに、当該判定結果によってスライドモーションを振子モーションに設定する工程(S20)を含む。
【0043】
事前準備:スライドモーション設定方法を実行する事前準備として、例えば、割付角度の設定工程と、最速動作時間の算出工程と、を実行することができる。
【0044】
割付角度の設定工程は、制御部30がサーボトランスファ機械10のアドバンス動作ADV、ダウン動作DWN、アンクランプ動作UCL、リターン動作RTN、クランプ動作CLP及びリフト動作LFTの各動作に対応する割付角度(θa、θd、θu、θr、θc、θl)を設定する。割付角度の設定工程は、例えば、操作者が操作部31を操作して、記憶部33にあらかじめ保存された金型、装置等に応じた割付角度(θa、θd、θu、θr、θc、θl)を読み出してもよい。
【0045】
割付角度(θa、θd、θu、θr、θc、θl)のそれぞれは、偏心軸例えばクランク軸3の1回転に対して割り付けたサーボトランスファ機械10の各動作の開始角度から終了角度までの角度である。一般に、サーボプレス機械2とサーボトランスファ機械10との干渉を防止するため、両機械は同期運転する必要がある。そのため、サーボプレス機械2の偏心軸の角度に対してサーボトランスファ機械10の各動作の範囲を割り付けた割付角度(θa、θd、θu、θr、θc、θl)を用いて同期運転を可能としている場合がある。偏心軸の角度はスライド6の高さ位置に対応するため、あらかじめ設定した割付角度(θa、θd、θu、θr、θc、θl)に従ってサーボトランスファ機械10が動作すればスライド6と保持具12とが干渉することはない。本実施形態における各動作の開始角度と終了角度との間の角度が各動作の割付角度(θa、θd、θu、θr、θc、θl)である。例えば、図2におけるダウン動作DWNは、アドバンス動作ADVの終了角度(100°)が開始角度となり、アンクランプ動作UCLの開始角度(110°)が終了角度となり、その間がダウン動作DWNの割付角度(θd=10°)となる。スライドモーションSMに従ってサーボトランスファプレスシステム1が動作する場合、クランク軸3が開始角度(100°)になるとダウン動作DWNが開始可能となり、終了角度(110°)までの間にダウン動作DWNが終了しなければならない。他のトランスファモーションの各動作も同様である。
【0046】
また、割付角度の設定工程は、サーボプレス機械2とサーボトランスファ機械10に工場出荷時点であらかじめ設定された割付角度を用いてもよいし、金型や製品に合わせて干渉線図から割付角度を決定する方法や、3次元シミュレーションや実際に寸動運転させながら干渉しない割付角度を探査して設定してもよい。図3に示すような振子モーションにおける割付角度の設定に際して、ダウン動作DWNの開始角度からリフト動作LFTの終了角度までの割付角度の範囲が狭い方がスライド6のストロークが短くなってストローク数が増加するため好ましい。例えば、振子モーションの場合、ダウン動作DWNの開始角度は90°より下死点BDCに近く、リフト動作LFTの終了角度は270°より下死点BDCに近いことが好ましい。
【0047】
最速動作時間の算出工程は、割付角度(θa、θd、θu、θr、θc、θl)のそれぞれを最速で動作させた場合に必要な時間を最速動作時間(FTa、FTd、FTu、F
Tr、FTc、FTl)として算出する。したがって、各軸のサーボモータ14が仕様上の最大出力で動作する場合に各割付角度をサーボトランスファ機械10の各軸が動作するのに要する時間を最速動作時間(FTa、FTd、FTu、FTr、FTc、FTl)として例えば演算部32が算出する。最速動作時間(FTa、FTd、FTu、FTr、FTc、FTl)の算出は、サーボモータ14の最大出力による加速度及び減速度、フィードバー11のイナーシャ、伝達機構のバックラッシュ等を考慮する。なお、割付角度が狭い場合にはサーボモータ14の最速に到達する前に減速する場合もある。
【0048】
S10:制御部30は、角速度を算出する工程を実行する。角速度を算出する工程は、サーボトランスファ機械10のダウン動作DWN、アンクランプ動作UCL、リターン動作RTN、クランプ動作CLP及びリフト動作LFTの各動作に対応する割付角度(θd、θu、θr、θc、θl)を当該動作ごとの最速動作時間(FTd、FTu、FTr、FTc、FTl)で除して割付角度ごとに偏心軸例えばクランク軸3の角速度(ωd、ωu、ωr、ωc、ωl)を例えば演算部32が算出する。例えば、ダウン動作DWNにおける最速の角速度ωdは、割付角度θd/最速動作時間FTdで算出できる。なお、最速動作時間(FTd、FTu、FTr、FTc、FTl)は、各割付角度(θd、θu、θr、θc、θl)をクランク軸3が等速回転するものとする。
【0049】
S12:制御部30は、最も遅い角速度を算出する工程を実行する。最も遅い角速度を算出する工程は、S10で算出された5つの角速度(ωd、ωu、ωr、ωc、ωl)の中から最も遅い角速度を例えば演算部32が算出する。また、算出されたクランク軸3の角速度(ωd、ωu、ωr、ωc、ωl)がクランク軸3の設定可能な角速度(プレスの最高速度)を超えてしまった場合には、演算部32は、最も遅い角速度としてプレス最高回転数に対応する角速度とすることができる。最も遅い角速度でクランク軸3を等速回転すれば、クランク軸3が各割付角度を回転する間に、サーボトランスファ機械10のアドバンス動作ADVを除く全ての動作が終了する。
【0050】
S14:制御部30は、部分回転時間Taを算出する工程を実行する。部分回転時間Taを算出する工程は、サーボトランスファ機械10のアドバンス動作ADVに対応する割付角度の半分の角度(θa/2)について偏心軸例えばクランク軸3がS12で算出された最も遅い角速度ωaで回転し停止するまでに要する第1時間と、停止した状態から最も遅い角速度ωaまで加速して半分の角度(θa/2)について回転するのに要する第2時間とを加算して部分回転時間Taを例えば演算部32が算出する。
【0051】
ここで、図2に示すスライドモーションSMで動作するクランク軸3が角速度ωaで割付角度θaを回転するのに要する時間は、式Ta=θa/ωaで算出できる。角速度ωaは、最も遅い角速度を算出する工程(S12)で得られる。しかし、部分回転時間Taは、図3のような振子モーションに適用する条件を想定しているため、図2のスライドモーションSMであっても割付角度θaの半分の角度(θa/2)について角速度ωaで回転し、停止するまでに要する第1時間と、停止した状態から角速度ωaまで加速して半分の角度(θa/2)について回転するのに要する第2時間とを加算して得られる時間とする。このときの加速及び減速の条件に付いては、サーボプレス機械2に与えられた仕様等に基づいて適切な条件が設定でき、例えば角速度ωaから最短で停止する条件と停止した状態から最短で角速度ωaまで加速する条件とを用いることができる。
【0052】
S16:制御部30は、判定する工程を実行する。判定する工程は、部分回転時間Taが最速動作時間FTaより長いかを例えば演算部32が判定する。部分回転時間Taは、図2の割付角度θaをクランク軸3が回転する時間なので、最速動作時間TFaより部分回転時間Taの方が長ければ、スライドモーションSMを振子モーションにすることでストローク数が増加し結果としてサイクルタイムを短縮できる。
【0053】
S20:制御部30は、S16の判定結果が「YES」の場合、スライドモーションを振子モーションに設定する工程を実行する。スライドモーションを振子モーションに設定する工程は、部分回転時間Taがアドバンス動作ADVの最速動作時間FTaより長ければ(YES)、スライドモーションSMを偏心軸例えばクランク軸3が反転する振子モーションに例えば演算部32が設定する。スライドモーション設定方法の一態様によれば、各割付角度におけるサーボトランスファ機械10の動作が可能な範囲で偏心軸の角速度を設定しながらも、スライドモーションSMを振子モーションに設定することにより、ストローク数が向上する。また、S16の判定結果が「NO」の場合、スライドモーションに振子モーションを適用しても生産性の向上は望めないので、演算部32はスライドモーションSMを振子モーションに設定しない。
【0054】
図7を用いて、以下ではS20の各処理について説明する。図7は、S20のフローチャートである。
【0055】
S22:制御部30は、2つの反転角度を算出する工程を実行する。2つの反転角度を算出する工程は、部分回転時間Taがアドバンス動作ADVの最速動作時間FTaと同じかそれに近くなるように、偏心軸であるクランク軸3が反転する2つの反転角度IAを例えば演算部32が算出する。部分回転時間Taが最速動作時間FTaと同じであれば最も生産効率の良い振子モーションとなる。また、部分回転時間Taが最速動作時間FTaに近い時間になれば、アドバンス動作ADVが終了してからクランク軸3が停止するまでの時間や反転角度IAでクランク軸3が停止する時間を削減できる。
【0056】
S24:制御部30は、反転角度IAを振子モーションに適用する工程を実行する。反転角度IAを振子モーションに適用する工程は、S22で算出された2つの反転角度IAを振子モーションに例えば演算部32が適用する。このように、アドバンス動作に対応する割付角度θaについて偏心軸が回転するための時間がアドバンス動作ADVの最速動作時間FTaに近づくことができる。
【0057】
S26:制御部30は、円弧状の画像ASを表示する工程を実行する。円弧状の画像ASを表示する工程は、例えば演算部32の指令により出力部38から表示部35へ信号を出力し、振子モーションの1サイクルに対応する円弧状の画像ASを表示部35に表示する。画像ASは、円弧に沿って6つの割付角度(θa、θd、θu、θr、θc、θl)が区分されて表示される。なお、割付角度θaは、図3に示すように2つに分割されて表示される。このように画像ASを表示部35に表示することで、設定された振子モーションにおける偏心軸の割付角度(θa、θd、θu、θr、θc、θl)を操作者が視覚的に理解しやすい。サーボトランスファ機械10の動作にオーバーラップ区間を設けた場合には、例えば動作ごとに異なる曲率半径の円弧を使ってラップ量がわかるように画像ASを表示してもよい。
【0058】
さらに、制御部30は、図3に示す円弧状の画像ASを図4の円環状の画像ASに変換して表示部35に表示してもよい。図3の振子モーションはクランク軸3の60°~300°で反転するように表示部35に表示されるが、実際のクランク軸の60°~300°を図4に示すトランスファ同期角度の0°~360°に変換して、1サイクルを仮想のクランク軸の1回転として表現できる。
【0059】
3.第3実施形態に係るサーボトランスファプレスシステム
第3実施形態に係るサーボトランスファプレスシステムは、制御部30の構成を除いて図1を用いて説明した第1実施形態に係るサーボトランスファプレスシステム1と基本的に同じ構成である。そのため、以下の説明では、第3実施形態に係るサーボトランスファ
プレスシステムを図1のサーボトランスファプレスシステム1として説明し、重複する説明を省略する。
【0060】
第1実施形態に係るサーボトランスファプレスシステム1は、基本的にクランク軸3が一定の角速度で回転するスライドモーションであるが、第3実施形態に係るサーボトランスファプレスシステム1は、割付角度(θa、θd、θu、θr、θc、θl)ごとにクランク軸3の角速度を変化させることができる。
【0061】
第3実施形態に係るサーボトランスファプレスシステム1の制御部30は、サーボトランスファ機械10のアドバンス動作ADV、ダウン動作DWN、アンクランプ動作UCL、リターン動作RTN、クランプ動作CLP及びリフト動作LFTの各動作に対応する割付角度(θa、θd、θu、θr、θc、θl)を当該動作ごとの最速動作時間(FTa、FTd、FTu、FTr、FTc、FTl)で除して割付角度ごとに偏心軸例えばクランク軸3の角速度(ωa、ωd、ωu、ωr、ωc、ωl)を算出する処理と、クランク軸3がそれぞれの割付角度(θa、θd、θu、θr、θc、θl)に対応する角速度(ωa、ωd、ωu、ωr、ωc、ωl)で動作するスライドモーションを設定する処理と、を実行するように構成される。
【0062】
割付角度(θa、θd、θu、θr、θc、θl)のそれぞれは、偏心軸例えばクランク軸3の1回転に対して割り付けたサーボトランスファ機械10の各動作の開始角度から終了角度までの角度である。
【0063】
第3実施形態に係るサーボトランスファプレスシステムによれば、割付角度(θa、θd、θu、θr、θc、θl)ごとに偏心軸の最速となる角速度(ωa、ωd、ωu、ωr、ωc、ωl)を設定することで、ストローク数が向上するようにスライドモーションを設定することができる。なお、制御部30における処理については、第4実施形態に係るスライドモーション設定方法において詳述する。
【0064】
4.第4実施形態に係るスライドモーション設定方法
図8を用いて、第4実施形態に係るスライドモーション設定方法について説明する。図8は、第4実施形態に係るスライドモーション設定方法のフローチャートである。第4実施形態に係るスライドモーション設定方法は、第2実施形態と同様に、偏心軸例えばクランク軸3を回転してプレス加工するサーボプレス機械2とワーク100を搬送するサーボトランスファ機械10とを有するサーボトランスファプレスシステム1のスライドモーション設定方法である。そのため、以下は、図1のサーボトランスファプレスシステム1を用いて説明する。
【0065】
図8に示すように、第4実施形態に係るスライドモーション設定方法は、角速度を算出する工程(S30)と、スライドモーションを設定する工程(S32)と、を含む。S30の実施に先立って、あらかじめ第2実施形態で説明した事前準備を実行することができる。
【0066】
S30:制御部30は、角速度(ωa、ωd、ωu、ωr、ωc、ωl)を算出する工程を実行する。角速度(ωa、ωd、ωu、ωr、ωc、ωl)を算出する工程は、サーボトランスファ機械10のアドバンス動作ADV、ダウン動作DWN、アンクランプ動作UCL、リターン動作RTN、クランプ動作CLP及びリフト動作LFTの各動作に対応する割付角度(θa、θd、θu、θr、θc、θl)を当該動作ごとの最速動作時間(FTa、FTd、FTu、FTr、FTc、FTl)で除して割付角度ごとに偏心軸例えばクランク軸3の角速度(ωa、ωd、ωu、ωr、ωc、ωl)を例えば演算部32が算出する。
【0067】
割付角度(θa、θd、θu、θr、θc、θl)のそれぞれは、偏心軸例えばクランク軸3の1回転に対して割り付けたサーボトランスファ機械10の各動作の開始角度から終了角度までの角度である。また、隣接する割付角度の角速度が異なる場合には、開始角度付近と終了角度付近の角速度が加速または減速するように設定することが好ましい。
【0068】
S32:制御部30は、スライドモーションを設定する工程を実行する。スライドモーションを設定する工程は、偏心軸例えばクランク軸3がそれぞれの割付角度(θa、θd、θu、θr、θc、θl)に対応する角速度(ωa、ωd、ωu、ωr、ωc、ωl)で動作するスライドモーションを例えば演算部32が設定する。
【0069】
スライドモーション設定方法の一態様によれば、割付角度(θa、θd、θu、θr、θc、θl)ごとに偏心軸の最速となる角速度(ωa、ωd、ωu、ωr、ωc、ωl)を設定することで、ストローク数が向上するようにスライドモーションを設定することができる。
【0070】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能であり、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0071】
1…サーボトランスファプレスシステム、2…サーボプレス機械、3…クランク軸、3a…中心、4…サーボモータ、5…エンコーダ、6…スライド、7…上型、8…下型、10…サーボトランスファ機械、11…フィードバー、12…保持具、14…サーボモータ、15…エンコーダ、21…サーボプレス制御装置、22…サーボアンプ、25…サーボトランスファ制御装置、26…サーボアンプ、30…制御部、31…操作部、32…演算部、33…記憶部、35…表示部、38…出力部、100…ワーク、AS…画像、CA…クランク軸角度、IA…反転角度、SM…スライドモーション、ADV…アドバンス動作、BDC…下死点、CLP…クランプ動作、DWN…ダウン動作、LFT…リフト動作、RTN…リターン動作、TDC…上死点、UCL…アンクランプ動作
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8