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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139432
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20230927BHJP
   A01C 11/02 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
A01B69/00 303M
A01C11/02 331D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044963
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴原 優太
(72)【発明者】
【氏名】加藤 将太郎
【テーマコード(参考)】
2B043
2B062
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB07
2B043BA03
2B043BA09
2B043BB06
2B043DA01
2B043DA04
2B043DC03
2B043ED03
2B062AA04
2B062AA08
2B062AB01
2B062BA45
(57)【要約】
【課題】変形圃場においても作業性を向上した作業車両を提供する。
【解決手段】互いに隣接して順に並んだ第1仮想目標走行ライン、第2仮想目標走行ライン、及び第3仮想目標走行ラインを前記作業車両が走行する際に、自動モードにおいて、第1仮想目標走行ライン上の旋回開始予測位置と旋回開始位置との所定方向における位置の差を補正値として求め、第3仮想目標走行ライン上の旋回開始予測位置を、第1仮想目標走行ラインの旋回開始位置又は第2仮想目標走行ラインの旋回終了位置の所定方向における座標に補正値を加算することで算出する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置に支持される走行機体と、作業車両の測位データを検出する測位システムと、予め演算された互いに平行な複数の仮想目標走行ラインに沿って所定方向に直進するように、前記測位システムが検出した前記測位データに基づいて前記走行機体を自動的に操舵する自動操舵を実行可能な制御部と、を備えた作業車両において、
前記制御部は、旋回開始予測位置に基づいて求められる自動操舵停止位置において、前記自動操舵を行う自動操舵オン状態から、前記自動操舵を行わない自動操舵オフ状態に自動的に移行し、かつ隣接した前記仮想目標走行ラインに移動するための旋回操作が開始された旋回開始位置と前記所定方向における座標が同じ旋回終了位置において、前記自動操舵オフ状態から前記自動操舵オン状態に自動的に移行する自動モードを有し、
前記複数の仮想目標走行ラインの内、互いに隣接して順に並んだ第1仮想目標走行ライン、第2仮想目標走行ライン、及び第3仮想目標走行ラインを前記作業車両が走行する際に、前記自動モードにおいて、前記第1仮想目標走行ライン上の前記旋回開始予測位置と前記旋回開始位置との前記所定方向における位置の差を補正値として求め、前記第3仮想目標走行ライン上の前記旋回開始予測位置を、前記第1仮想目標走行ラインの前記旋回開始位置又は前記第2仮想目標走行ラインの前記旋回終了位置の前記所定方向における座標に前記補正値を加算することで算出する、
ことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
走行装置に支持される走行機体と、作業車両の測位データを検出する測位システムと、予め演算された互いに平行な複数の仮想目標走行ラインに沿って所定方向に直進するように、前記測位システムが検出した前記測位データに基づいて前記走行機体を自動的に操舵する自動操舵を実行可能な制御部と、を備えた作業車両において、
前記制御部は、旋回開始予測位置に基づいて求められる自動操舵停止位置において、前記自動操舵を行う自動操舵オン状態から、前記自動操舵を行わない自動操舵オフ状態に自動的に移行し、かつ隣接した前記仮想目標走行ラインに移動するための旋回操作が開始された旋回開始位置と前記所定方向における座標が同じ旋回終了位置において、前記自動操舵オフ状態から前記自動操舵オン状態に自動的に移行する自動モードを有し、
前記複数の仮想目標走行ラインの内、互いに隣接して順に並んだ第1仮想目標走行ライン、第2仮想目標走行ライン、及び第3仮想目標走行ラインを前記作業車両が走行する際に、前記自動モードにおいて、前記第1仮想目標走行ライン上の前記旋回開始予測位置と前記第2仮想目標走行ライン上の前記旋回終了位置との前記所定方向における位置の差を補正値として求め、前記第3仮想目標走行ライン上の前記旋回開始予測位置を、前記第1仮想目標走行ラインの前記旋回開始位置又は前記第2仮想目標走行ラインの前記旋回終了位置の前記所定方向における座標に前記補正値を加算することで算出する、
ことを特徴とする作業車両。
【請求項3】
前記制御部は、前記自動モードにおいて、前記差が所定値より大きい場合に、前記補正値を更新する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の作業車両。
【請求項4】
同一の前記仮想目標走行ライン上において、前記自動操舵停止位置は、前記旋回開始予測位置から第1距離だけ手前の位置である、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の作業車両。
【請求項5】
報知部を更に備え、
前記制御部は、前記自動モードにおいて、同一の前記仮想目標走行ライン上において、前記旋回開始予測位置から前記第1距離よりも大きい第2距離だけ手前の予告報知位置にて前記報知部を作動させる、
ことを特徴とする請求項4に記載の作業車両。
【請求項6】
前記走行機体を操舵するステアリングハンドルを更に備え、
前記制御部は、前記ステアリングハンドルの所定角以上の操作があった場合に、前記旋回操作が開始されたと判断する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の作業車両。
【請求項7】
前記制御部は、前記自動モードにおいて、前記第3仮想目標走行ライン以降の仮想目標走行ラインについても、前記補正値が更新されない限り、同一の前記補正値に基づいて前記旋回開始予測位置を求める、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の作業車両。
【請求項8】
前記制御部は、畦から第1基準位置までの距離を測定する測定処理を実行可能であり、圃場内の前記第1基準位置及び前記第1基準位置とは異なる第2基準位置を登録することでこれら前記第1基準位置及び前記第2基準位置を通る基準走行ラインを設定する、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の作業車両。
【請求項9】
前記自動操舵オン状態と前記自動操舵オフ状態との切換操作を行うための操作部を更に備え、
前記制御部は、前記操作部の操作に基づいて、前記自動操舵オン状態と前記自動操舵オフ状態とを切り替える手動モードを有する、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場を直進するように自動操舵可能な作業車両に係り、特に田植機に適用して好適な制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、予め設定された設定走行ラインに沿って直進するように走行機体を自動操舵する乗用田植機が知られている(特許文献1参照)。この乗用田植機では、操作ボタンを手動操作することで自動操舵を行わない停止状態と自動操舵を行う作動状態を切り換えるようになっており、枕地での機体旋回開始時に作動状態から停止状態へと切り換えられ、機体旋回終了後に停止状態から作動状態へ切り換えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-134471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の乗用田植機では、操作ボタンを操作することで自動操舵を停止状態と作動状態とに切り換えるため、操作が煩わしく、特に圃場の形状が矩形ではない変形圃場において、作業性に課題があった。
【0005】
そこで、本発明は、変形圃場においても作業性を向上した作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、走行装置に支持される走行機体と、作業車両の測位データを検出する測位システムと、予め演算された互いに平行な複数の仮想目標走行ラインに沿って所定方向に直進するように、前記測位システムが検出した前記測位データに基づいて前記走行機体を自動的に操舵する自動操舵を実行可能な制御部と、を備えた作業車両において、
前記制御部は、旋回開始予測位置に基づいて求められる自動操舵停止位置において、前記自動操舵を行う自動操舵オン状態から、前記自動操舵を行わない自動操舵オフ状態に自動的に移行し、かつ隣接した前記仮想目標走行ラインに移動するための旋回操作が開始された旋回開始位置と前記所定方向における座標が同じ旋回終了位置において、前記自動操舵オフ状態から前記自動操舵オン状態に自動的に移行する自動モードを有し、
前記複数の仮想目標走行ラインの内、互いに隣接して順に並んだ第1仮想目標走行ライン、第2仮想目標走行ライン、及び第3仮想目標走行ラインを前記作業車両が走行する際に、前記自動モードにおいて、前記第1仮想目標走行ライン上の前記旋回開始予測位置と前記旋回開始位置との前記所定方向における位置の差を補正値として求め、前記第3仮想目標走行ライン上の前記旋回開始予測位置を、前記第1仮想目標走行ラインの前記旋回開始位置又は前記第2仮想目標走行ラインの前記旋回終了位置の前記所定方向における座標に前記補正値を加算することで算出する、
ことを特徴とする作業車両にある。
【0007】
また、本発明は、走行装置に支持される走行機体と、作業車両の測位データを検出する測位システムと、予め演算された互いに平行な複数の仮想目標走行ラインに沿って所定方向に直進するように、前記測位システムが検出した前記測位データに基づいて前記走行機体を自動的に操舵する自動操舵を実行可能な制御部と、を備えた作業車両において、
前記制御部は、旋回開始予測位置に基づいて求められる自動操舵停止位置において、前記自動操舵を行う自動操舵オン状態から、前記自動操舵を行わない自動操舵オフ状態に自動的に移行し、かつ隣接した前記仮想目標走行ラインに移動するための旋回操作が開始された旋回開始位置と前記所定方向における座標が同じ旋回終了位置において、前記自動操舵オフ状態から前記自動操舵オン状態に自動的に移行する自動モードを有し、
前記複数の仮想目標走行ラインの内、互いに隣接して順に並んだ第1仮想目標走行ライン、第2仮想目標走行ライン、及び第3仮想目標走行ラインを前記作業車両が走行する際に、前記自動モードにおいて、前記第1仮想目標走行ライン上の前記旋回開始予測位置と前記第2仮想目標走行ライン上の前記旋回終了位置との前記所定方向における位置の差を補正値として求め、前記第3仮想目標走行ライン上の前記旋回開始予測位置を、前記第1仮想目標走行ラインの前記旋回開始位置又は前記第2仮想目標走行ラインの前記旋回終了位置の前記所定方向における座標に前記補正値を加算することで算出する、
ことを特徴とする作業車両にある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、旋回開始予測位置と、旋回開始位置又は旋回終了位置と、の差を補正値として求め、その後の仮想目標走行ライン上に設定される旋回開始予測位置を、補正値を用いて求める。これにより、矩形ではない変形圃場においても、適切な自動操舵位置において自動操舵オフ状態に移行することができ、作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施の形態に係る乗用田植機を示す側面図。
図2】乗用田植機を示す平面図。
図3】(a)はステアリングハンドル及び自動操舵ユニットを示す斜視図、(b)は操作パネルを示す正面図。
図4】自動操舵制御を行うための制御構成を示すブロック図。
図5】四角圃場におけるティーチング走行制御及び手動モードの自動操舵制御を説明するための図。
図6】ティーチング走行制御を示すフローチャート。
図7】手動モードの自動操舵制御を示すフローチャート。
図8】自動操舵規制制御を示すフローチャート。
図9】変形例に係る自動操舵規制制御を示すフローチャート。
図10】変形圃場におけるティーチング走行制御及び自動モードの自動操舵制御を説明するための図。
図11】自動モードの自動操舵制御を示すフローチャート。
図12】第2の実施の形態に係る自動モードの自動操舵制御を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1の実施の形態>
以下、本発明の第1の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1及び図2において、作業車両としての乗用田植機Pは、前輪9及び後輪10によって支持される走行機体1と、昇降リンク機構2を介して該走行機体1の後部に昇降可能に連結される植付作業機3と、を備えている。
【0011】
植付作業機3は、マット苗が載置される苗載台4と、苗載台4の下端部から苗を掻き取って圃場に植え付ける植付機構5と、を備える。本実施形態の植付作業機3は、同時に8条分の苗を植え付け可能な8条植え仕様であり、8つの植付機構5が車幅方向に所定間隔を存して並設されている。
【0012】
走行機体1は、エンジン(図示せず)が搭載されるエンジン搭載部6と、エンジン動力を変速し、走行動力及び作業動力として出力するミッションケース7と、作業者が乗車する操縦部11と、を備える。前輪9は、ミッションケース7が出力する走行動力で駆動され、かつ、ステアリングハンドル8の操作に応じて操舵され、後輪10は、ミッションケース7が出力する走行動力で駆動される。前輪9及び後輪10は、走行装置を構成し、これら前輪9及び後輪10は、クローラ等から構成されてもよい。なお、走行機体1は、次行程に目標走行ラインを引く左右一対のマーカ装置12を備えるが、本実施形態では使用しないため、詳細な説明は省略する。
【0013】
操縦部11は、作業者が座る運転席13と、運転席13の前方に配置される前述のステアリングハンドル8と、走行動力及び作業動力を変速操作する主変速レバー14と、主変速レバー14の変速レンジを切り換える副変速レバー(図示せず)と、植付作業機3の昇降操作具及び植付クラッチ操作具を兼ねる作業機昇降レバー(図示せず)とを備える。
【0014】
図3(a)に示すように、ステアリングハンドル8には、自動操舵ユニット15が連結されている。自動操舵ユニット15は、ステアリングハンドル8の手動操作に代えて、ステアリングハンドル8をモータ動力で回転操作するステアリングモータ16(図4参照)と、後述する自動操舵制御関連の操作具及びモニタランプが配置される操作パネル17と、を備える。なお、ステアリングモータ16の駆動中でもステアリングハンドル8の手動操作は許容される。
【0015】
図3(b)に示すように、操作パネル17には、電源スイッチ18と、自動操舵スイッチ19と、後述する始点A点を登録する始点A点登録スイッチ20と、終点B点を登録する終点B点登録スイッチ21と、ランプ表示による報知を行う報知表示部22と、を備える。操作部としての自動操舵スイッチ19は、押操作されることで、後述する自動操舵制御を、自動操舵を行わない自動操舵オフ状態と、自動操舵を行う自動操舵オン状態と、の間で切換操作することができる。より具体的には、自動操舵オフ状態では、自動操舵制御による自動操舵が行われないので、ステアリングモータ16の駆動が規制される。一方で、自動操舵オン状態では、自動操舵制御による自動操舵が行われ、ステアリングモータ16の駆動が許容される。
【0016】
報知表示部22には、速度超過を報知する速度超過報知ランプ23、速度アップ可能状態を報知する速度アップOK報知ランプ24、及び走行機体1が目標走行ライン上に位置することを示す目標ライン報知ランプ50を備える。更に、操作パネル17には、後述する自動操舵制御を自動モードと手動モードとの間で切換可能な自動操舵モード切換スイッチ51が設けられており、自動操舵モード切換スイッチ51の近傍には、手動モードが選択されていることを示す手動モード報知ランプ52と、自動モードが選択されていることを示す自動モード報知ランプ53と、が配置されている。
【0017】
また、操縦部11には、正面視コ字状の測位用フレーム25が立設されている。測位用フレーム25は、上方に延在する左右一対の縦フレーム部25aと、左右の縦フレーム部25aの上端部同士を連結する横フレーム部25bと、を有する。横フレーム部25bには、後述する測位システム26の構成要素である2つのGNSSアンテナ27、28などが取付けられ、左右いずれか一方の縦フレーム部25aには、ナビゲーション表示などを行うタブレット29が取付けられている。
【0018】
図4に示すように、走行機体1は、自動操舵制御を行うための制御構成として、測位システム26及び制御部30を備える。測位システム26としては、例えば、数cmの誤差で高精度な測位が可能なRTK-GNSS測位システムが採用される。RTK-GNSS測位システムは、固定設置された基地局と、移動する移動局とのそれぞれで、GPSなどのGNSS測位を行い、基地局から移動局に送信される補正信号でリアルタイムに測位データを補正することで、誤差数cmの高精度な測位を実現するものである。また、移動局に所定の間隔をあけて2つのGNSSアンテナを設置すれば、移動局の絶対位置だけでなく、2つの測位結果に基づいて、移動局の進行方向(方位)も高精度に検出することが可能になる。
【0019】
具体的に説明すると、本実施形態の測位システム26は、図4に示すように、RTK-GNSS測位を実行する制御ユニットであるGNSSユニット31と、測位用フレーム25の横フレーム部25bに車幅方向に所定の間隔をあけて取付けられる基準用GNSSアンテナ27及び方位用GNSSアンテナ28と、ジャイロセンサ54と、固定設置されるRTK基地局32から補正信号を受信する補正信号受信装置33と、を備える。GNSSユニット31は、RTK-GNSS測位による測位データ(絶対位置データ及び進行方向データ)を、CANなどの有線通信手段を介して制御部30に送信するとともに、Bluetooth(登録商標)などの無線通信手段を介してタブレット29に送信する。
【0020】
制御部30は、自動操舵制御を実行する制御ユニットであり、制御部30の入力側には、前述した自動操舵スイッチ19、始点A点登録スイッチ20及び終点B点登録スイッチ21、自動操舵モード切換スイッチ51に加え、主変速レバー14の操作位置を検出する主変速レバーセンサ35と、副変速レバーの操作位置を検出する副変速レバーセンサ36と、前輪9の操舵角を検出する操舵角センサ37と、走行機体1の車速を検出する車速センサ38と、車軸の回転(走行距離)を検出する回転センサ39と、が接続される。制御部30の出力側には、前述したステアリングモータ16、報知表示部22及び各種のランプ(不図示)に加え、報知音を出力する報知ブザー40が接続されている。
【0021】
自動操舵制御は、予め演算された仮想目標走行ライン、又は圃場に引かれた目標走行ラインに沿って直進するように走行機体1を自動的に操舵する自動制御機能である。本実施形態では、圃場に目標走行ラインを引くことなく、予め演算された仮想目標走行ラインに沿って直進するように走行機体1を自動的に操舵する。
【0022】
なお、本実施の形態における自動操舵制御は、自動操舵モード切換スイッチ51によって択一的に切換えられる自動モードと手動モードとを有している。手動モードでは、自動操舵スイッチ19によって自動操舵オフ状態と自動操舵オン状態とが切り換えられる。すなわち、作業者は、仮想目標走行ラインに沿って自動操舵制御によって直進した後、隣接条へ向けて旋回する際又は旋回操作する前に、自動操舵スイッチ19を押し操作することで、自動操舵オン状態から自動操舵オフ状態へと切り換え、自動操舵(直進アシスト)が一時停止される。これにより、ステアリングモータ16によるステアリングハンドル8のアシストがキャンセルされる。そして、隣接条への旋回操作が完了すると、作業者は自動操舵スイッチ19を再び押し操作することで、自動操舵オフ状態から自動操舵オン状態へと切り換え、自動操舵(直進アシスト)を再開する。これにより、ステアリングモータ16によるステアリングハンドル8のアシストが再開される。
【0023】
また、後述するが、自動モードでは、制御部30によって旋回開始予測位置が算出され、旋回開始予測位置よりも距離D2だけ前の位置において、自動操舵スイッチ19が操作されることなく、自動操舵オン状態から自動操舵オフ状態へと切り換えられる。また、旋回開始位置に基づいて算出される旋回終了位置において、自動操舵スイッチ19が操作されることなく、自動操舵オフ状態から自動操舵オン状態へと切り換えられる。
【0024】
このように、手動モード及び自動モードを択一的に選択することができるので、例えば通常は自動モードを選択して、自動操舵スイッチ19の操作等の煩わしい操作を省いて作業性を向上すると共に、圃場内に障害物がある場合や、特殊な変形圃場の場合に手動モードを選択して、状況に応じた自動操舵制御を行うことができる。
【0025】
また、圃場に引かれた目標走行ラインに沿って直進するように走行機体1を自動的に操舵する場合は、枕地旋回毎に左右のマーカ装置12を交互に振り出して次行程に目標走行ラインを引くとともに、走行機体1に設置されたカメラで機体前方を撮影し、撮影画像における目標走行ラインの左右位置に基づいて走行機体1の自動操舵を行う。
【0026】
図5に示すように、仮想目標走行ライン(L1、L2、…Ln)は、最初の植付作業行程である基準走行ライン(L0)の始点位置で始点A点登録スイッチ20を操作して第1基準位置としての始点A点の測位データを登録するとともに、基準走行ライン(L0)の終点位置で終点B点登録スイッチ21を操作して第2基準位置としての終点B点の測位データを登録すると、後述するティーチング走行制御によって自動的に演算される。なお、畦から始点A点までの距離D0は、植付作業機3の植付可能条数に応じて異なり、制御部30に予め記憶されている。そして、乗用田植機Pは、畦際から該距離D0を測定する測定処理を実行可能に構成されてもよい。該測定処理により、始点A点の設定を正確にかつ容易に行うことができ、畦に衝突することなく植付作業機3を昇降することが可能な枕地幅を確保することができる。
【0027】
自動操舵制御では、演算した仮想目標走行ラインのうち最も走行機体1に近い仮想目標走行ラインの座標データと、測位システム26による走行機体1の測位データに基づいて、仮想目標走行ラインに対する走行機体1の横ズレ量D及びズレ方向θを演算するとともに、横ズレ量D及びズレ方向θに基づいて修正操舵角θsを演算し、該修正操舵角θsをステアリングモータ16に出力することにより、走行機体1を仮想目標走行ラインに沿って走行させる。
【0028】
走行機体1が基準走行ライン又は仮想目標走行ラインの終点位置に到達したら、作業者によるステアリングハンドル8の手動操作に基づいて、走行機体1を次の仮想目標走行ラインの始点位置に向けて枕地旋回させる。枕地旋回中は、後述する「枕地旋回時の自動操舵規制制御」(以下、単に自動操舵規制制御という場合がある)によって自動操舵制御の実行が制限される。具体的には、ステアリングハンドル8の旋回操作に応じて自動操舵オフ状態にするとともに、自動操舵スイッチ19による自動操舵オフ状態から自動操舵オン状態への切換操作を規制する。しかしながら、枕地旋回開始から枕地旋回終了までのあいだ、自動操舵オフ状態から自動操舵オン状態への手動切換操作を規制すると、状況によっては作業精度が低下する可能性がある。
【0029】
そこで、本実施形態の自動操舵規制制御は、機体旋回開始からの機体旋回角度が所定角θ1以上に達すると、機体旋回中であっても自動操舵オフ状態から自動操舵オン状態への切換操作を許容する。このような自動操舵規制制御によれば、自動操舵オフ状態から自動操舵オン状態への移行に柔軟性を持たせることができる。例えば、直進走行時に比べて走行速度が遅い機体旋回中に自動操舵オフ状態から自動操舵オン状態に移行することで、オーバーシュートによる蛇行を防止し、仮想目標走行ラインへの収束を早めることができる。なお、本実施形態では、測位システム26が、機体旋回開始時に計測した機体進行方向と、機体旋回中に計測した機体進行方向との差に基づいて機体旋回角度を判断しているが、機体旋回角度は、ジャイロセンサ54や方位センサの検出信号に基づいて判断するようにしてもよい。
【0030】
また、本実施形態の自動操舵制御は、機体旋回中に自動操舵オフ状態から自動操舵オン状態へ切換えられた後、走行機体1が仮想目標走行ラインに沿うまでのあいだ、走行機体1の走行速度が所定速度Vt以上である場合は警告報知を行う。タブレット29の画面に、「速度超過!速度を落として下さい。」という報知メッセージを表示したり、速度超過報知ランプ23を点灯したりさせる。このような自動操舵制御によれば、速度オーバーによるオーバーシュートを抑制できる。
【0031】
また、本実施形態の自動操舵制御は、機体旋回中に自動操舵オフ状態から自動操舵オン状態へ切換えられた後、走行機体1が仮想目標走行ラインに沿ったら、走行機体1の走行速度を上げられる旨の報知を行う。例えば、タブレット29の画面に、「目標ライン上、速度アップOK」という報知メッセージを表示したり、速度アップOK報知ランプ24及び目標ライン報知ランプ50を点灯させたりする。このような自動操舵制御によれば、オーバーシュートを伴うことなく走行速度を上げて作業効率を向上することができる。
【0032】
次に、上記のような制御機能を実現するティーチング走行制御、手動モードの自動操舵制御及び自動操舵規制制御の処理手順について、図6図9を参照して説明する。
【0033】
制御部30は、基準走行ライン(L0)の走行に際してティーチング走行制御を実行する。図6に示すように、ティーチング走行制御を実行する制御部30は、基準走行ライン(L0)の始点位置における始点A点登録スイッチ20の操作に応じて始点A点の測位データを登録するとともに(S101)、基準走行ライン(L0)の終点位置における終点B点登録スイッチ21の操作に応じて終点B点の測位データを登録する(S102)。なお、畦からB点までの距離は、例えば上述の畦から始点A点までの距離の測定と同様の距離D0に設定され、該距離D0を、始点A点と同様の測定方法で測定してもよい。
【0034】
次に、制御部30は、始点A点の測位データ及び終点B点の測位データに基づいて始点A点及び終点B点を通る直線である基準走行ライン(L0)の座標を演算するとともに(S103)、基準走行ライン(L0)と所定間隔を介して平行する仮想目標走行ライン(L1、L2、…Ln)の座標を演算する(S104)。
【0035】
ティーチング走行制御が終了すると、図7に示すように、制御部30は、続いて手動モードの自動操舵制御を実行する。なお、以下の説明におけるフローチャートでは、「Y」はYESを示し、「N」はNOを示す。自動操舵制御においては、制御部30は、まずサブルーチンである自動操舵規制制御を実行する(S201)。自動操舵規制制御においては、図8に示すように、制御部30は、まず、所定角θ0以上のステアリング操作があったか否かを判断し(S301)、この判断結果がYESの場合は、現在の測位データ(機体位置データ及び機体方向データ)を旋回開始位置として設定するとともに、旋回フラグをセットする(S302)。なお、制御部30は、植付作業機3が上昇したことに基づいて、旋回操作が開始されたと判断してもよい。これにより、ステアリングハンドル8が重い場面においても、植付作業機3を上昇させることで、適切な位置で旋回操作の開始を検知することができる。
【0036】
なお、自動操舵制御が手動モードの場合には、作業者は、旋回操作する際又は旋回操作する前に、自動操舵スイッチ19を押し操作することで、自動操舵オン状態から自動操舵オフ状態へと切り換え、自動操舵(直進アシスト)を一時停止させる。
【0037】
制御部30は、旋回フラグがセットされた状態では(ステップS303のセット判断状態)、旋回開始位置から走行機体1が所定角θ1(例えば、90°)以上旋回したか否かを判断し(S304)、この判断結果がNOの場合は、自動操舵規制状態となる(S305)。ここで、自動操舵規制状態とは、自動操舵オフ状態から自動操舵オン状態への切換が規制されている状態であり、例えば、自動操舵スイッチ19による自動操舵オフ状態から自動操舵オン状態への切換操作が規制される。このため、自動操舵制御によるステアリングモータ16の駆動制御が規制される。
【0038】
制御部30は、ステップS304の判断結果がYESの場合、自動操舵許容状態となる(S306)。ここで、自動操舵許容状態とは、自動操舵オフ状態から自動操舵オン状態への切換が許容されている状態であり、例えば、自動操舵スイッチ19による自動操舵オフ状態から自動操舵オン状態への切換操作が許容される。このため、自動操舵制御によるステアリングモータ16の駆動制御が許容される。そして、制御部30は、旋回開始位置から走行機体1が所定角θ2(例えば、180°)以上旋回したか否かを判断し(S307)、この判断がYESになったら旋回フラグをリセットする(S308)。
【0039】
このように、自動操舵規制制御においては、作業者によるステアリングハンドル8の操作によって、走行機体1が所定角θ0(例えば45°)以上回転される旋回操作が行われると、旋回操作が行われた地点が旋回開始位置として設定される(S301,S302)。そして、走行機体1が旋回開始位置の姿勢から所定角θ0(例えば45°)以上かつ所定角θ1(例えば90°)未満だけ旋回された状態では、自動操舵規制状態となって、例えば自動操舵スイッチ19による自動操舵オフ状態から自動操舵オン状態への切換操作が規制される(ステップS301,S303,S304,S305)。
【0040】
更に、走行機体1が旋回開始位置の姿勢から所定角θ1(例えば90°)以上かつ所定角θ2(例えば180°)未満だけ旋回された状態では、自動操舵許容状態となって、例えば自動操舵スイッチ19による自動操舵オフ状態から自動操舵オン状態への切換操作が許容される(ステップS301,S303,S304,S305,S306,S307:N)。
【0041】
また、走行機体1が旋回開始位置の姿勢から所定角θ2(例えば180°)以上旋回されると、旋回フラグがリセットされる(ステップS301,S303,S304,S305,S306,S307,S308)。そして、制御部30は、ステップS301,S303:リセット、復帰処理を進む。この状態においても、制御部30は、自動操舵許容状態を維持する。
【0042】
なお、旋回時には、自動操舵制御とは他に、例えば旋回制御が実施されてもよい。旋回制御は、乗用田植機Pの旋回操作(例えば所定角θ0以上のステアリング操作)に基づいて開始され、制御部30は、旋回開始と共に植付クラッチをオフにするとともに植付作業機3を上昇させる。そして、制御部30は、旋回開始位置から180度旋回した旋回終了位置において植付作業機3が接地するように植付作業機3の下降を開始させ、植付作業機3が旋回終了位置に到達した際に植付クラッチをオンする。このような旋回制御により、作業者は、乗用田植機Pの旋回時の操作を簡易化することができ、作業性を向上することができる。
【0043】
制御部30は、サブルーチンである自動操舵規制制御を実行した後、その上位ルーチンである自動操舵制御に復帰すると、図7に示すように、自動操舵許容状態であるか否かを判断する(S202)。そして、自動操舵許容状態ではなく自動操舵規制状態だと判断された場合(S202:N)、自動操舵制御の処理を終了して復帰する。
【0044】
自動操舵許容状態だと判断された場合(S202:Y)、制御部30は、作業者による自動操舵スイッチ19の押し操作によって、自動操舵オフ状態から自動操舵オン状態へと切り換えられたか否かを判断する(S203)。
【0045】
自動操舵オン状態へと切り換えられたと判断された場合(S203:Y)、制御部30は、現在位置から近い任意の仮想目標走行ライン(L1、L2、…Ln)を目標走行ラインとして設定する(S204)。一方で、自動操舵オン状態へと切り換えられなかったと判断された場合、すなわち作業者による自動操舵スイッチ19の押し操作が無かった場合(S203:N)、制御部30は、走行機体1の目標走行ラインに対する横ズレ量Dが所定量Dauto以下であるか否かを判断し(S205)、走行機体1の目標走行ラインに対するずれ方向θが所定角θauto以下であるか否かを判断し(S206)、かつ、現行速度Vが所定値Vauto以下であるか否かを判断する(S207)。
【0046】
制御部30は、ステップS205,S206,S207の判断結果がいずれもYESの場合、自動操舵オフ状態から自動操舵オン状態へと切り換えられ(S215)、現在位置から近い任意の仮想目標走行ライン(L1、L2、…Ln)を目標走行ラインとして設定する(S204)。これにより、作業者が自動操舵スイッチ19を操作し忘れた場合にも、自動操舵制御を続けることができる。
【0047】
ステップS204の後、制御部30は、走行機体1の目標走行ライン(現在位置から近い任意の仮想目標走行ライン(L1、L2、…Ln))に対する横ズレ量Dが所定量Dt以下であるか否かを判断するとともに(S208)、走行機体1の目標走行ラインに対するずれ方向θが所定角θt以下であるか否かを判断する(S209)。なお、所定量Dt及び所定角θtは、任意に設定されてよいが、例えば所定量Dtは、所定量Dautoよりも大きく、所定角θtは、所定角θautoよりも大きく設定されてもよい。
【0048】
制御部30は、ステップS208,S209の判断結果がいずれもYESの場合、走行機体1の走行速度を上げられる旨の報知を行う(S210)。一方、制御部30は、ステップS208,S209の少なくとも一方の判断結果がNOの場合、横ズレ量D及びズレ方向θに基づいて修正操舵角θsを演算し、該修正操舵角θsをステアリングモータ16に出力する(S211)。次に、制御部30は、現行速度Vが所定速度Vt以上であるか否かを判断し(S212)、この判断結果がYESの場合は、速度超過の警告報知を行う(S213)。
【0049】
上述したように、本実施形態における自動操舵規制制御は、機体旋回開始からの機体旋回角度が所定角θ1以上に達すると、機体旋回中であっても自動操舵オフ状態から自動操舵オン状態への切換操作を許容するので、自動操舵オフ状態から自動操舵オン状態への移行に柔軟性を持たせることができる。例えば、直進走行時に比べて走行速度が遅い機体旋回中に自動操舵オフ状態から自動操舵オン状態に移行することで、オーバーシュートによる蛇行を防止し、仮想目標走行ライン又は目標走行ラインへの収束を早めることができる。
【0050】
また、自動操舵制御は、機体旋回中に自動操舵オフ状態から自動操舵オン状態へ切換えられた後、走行機体1が仮想目標走行ラインに沿うまでのあいだ、走行機体1の走行速度が所定速度Vt以上である場合は警告報知を行うので、速度オーバーによるオーバーシュートを抑制できる。
【0051】
また、自動操舵制御は、機体旋回中に自動操舵オフ状態から自動操舵オン状態へ切換えられた後、走行機体1が仮想目標走行ラインに沿ったら、走行機体1の走行速度を上げられる旨の報知を行うので、オーバーシュートを伴うことなく走行速度を上げて作業効率を向上できる。
【0052】
次に、図8で説明した自動操舵規制制御の変形例について、図9を用いて説明する。図9は、変形例に係る自動操舵規制制御を示すフローチャートである。図9のステップS401,S402,S403,S405,S406,S408は、図8のステップS301,S302,S303,S305,S306,S308と同様であるため、説明を省略する。すなわち、主にステップS404,S407のみを説明する。
【0053】
変形例に係る自動操舵規制制御においては、図9に示すように、制御部30は、旋回フラグがセットされた状態では(ステップS403のセット判断状態)、旋回開始位置から走行機体1が所定距離M1(例えば、旋回角90°に相当する距離)以上走行したか否かを判断する(S404)。また、制御部30は、自動操舵許容状態へ遷移した後(S406)、旋回開始位置から走行機体1が所定距離M2(例えば、旋回角180°に相当する距離)以上走行したか否かを判断する(S407)。
【0054】
次に、自動モードの自動操舵制御の処理手順について、図10及び図11を参照して説明する。図10は、矩形ではない略台形の圃場(以下、変形圃場という)における乗用田植機Pの走行経路を示す図であり、以下では、変形圃場での自動モードの自動操舵制御を例に説明する。なお、自動モードの自動操舵制御は、変形圃場に限らず、矩形の圃場(以下、四角圃場という)にも適用可能であり、いずれの場合でも制御は変わらない。
【0055】
図10に示すように、変形圃場DPにおいても、図5で説明した四角圃場の場合と同様に、ティーチング走行制御によって基準走行ライン(L0)が演算されることで、自動的に仮想目標走行ライン(L1、L2、…Ln)が演算される。以下では、基準走行ライン(L0)及び仮想目標走行ライン(L1、L2、…Ln)に平行な方向を所定方向としてのX方向、X方向に直交する方向をY方向とする。また、図10における紙面下側を+X方向、紙面上側を-X方向とし、紙面右側を-Y方向、紙面左側を+Y方向とする。すなわち、乗用田植機Pは、変形圃場DPの内周植え(圃場内側の植付領域)において、複数の仮想目標走行ライン(L1、L2、…Ln)に沿って、-X方向及び+X方向に直進走行しつつ、+Y方向へと進んでいく。このとき、乗用田植機Pの走行機体1は、測位システム26が検出した測位データに基づいて、自動的に操舵される。
【0056】
また、図10の変形圃場DPは、+X方向かつ+Y方向の角部が、傾斜部DP1となるように切欠かれた形状であり、該傾斜部DP1の形状に即して、内周植えにおいても傾斜状に植付作業をする必要がある。また、変形圃場DP内において、乗用田植機Pの位置は、X方向及びY方向の座標で表すことができ、以下の説明において、乗用田植機Pの位置は、例えば乗用田植機Pの植付作業機3の植付位置が基準となる。
【0057】
図11は、自動モードの自動操舵制御を示すフローチャートである。なお、以下で説明する自動モードの自動操舵制御は、変形圃場DPの+X方向の端部と、-X方向の端部と、でそれぞれ別個に実施される。すなわち、例えば後述するステップS502,S505の補正値は、変形圃場DPの+X方向の端部における自動操舵制御と、-X方向の端部における自動操舵制御と、で互いに異なることがある。これら変形圃場DPの両端部における自動操舵制御自体は、実質的に同様のものであるため、以下では、+X方向の端部における自動操舵制御のみを説明する。また、図11のフローチャートにおけるステップS503~S513は、仮想目標走行ラインL1~Lk(例えば図10ではL7まで)において繰り返し実施されるが、説明のため、仮想目標走行ライン上の具体的な位置を適宜カッコ書きを付した符号で示す。
【0058】
図11に示すように、自動モードの自動操舵制御が開始されると、制御部30は、基準走行ラインL0が生成されたか否かを判断する(S501)。基準走行ラインL0が生成された場合(S501:Y)、制御部30は、後述する補正値Hを初期化、すなわち0に設定する(S502)。
【0059】
次に、制御部30は、旋回開始位置の記録があったか否かを判断する(S503)。旋回開始位置の記録は、図8のステップS301,S302で説明したように、例えば所定角θ0以上のステアリング操作があった場合に行われる。例えば、基準走行ラインL0上のB点で旋回操作が行われた場合、B点の位置情報(座標)が旋回開始位置として記録される。また、上述したように、制御部30は、植付作業機3が上昇したことに基づいて、旋回操作が開始されたと判断してもよい。
【0060】
次に、制御部30は、ステップS504~S506に進むが、基準走行ラインL0では後述する旋回開始予測位置が設定されていないため、ステップS504~S506の処理が行われず、補正値Hは0に設定されている。これらステップS504~S506については、目標走行ラインL2~L6を例に後述する。そして、制御部30は、乗用田植機Pが旋回終了位置(X1)に到達したか否かを判断し(S507)、旋回終了位置(X1)に到達した場合(S507:Y)、自動操舵オン状態へと移行する(S508)。すなわち、制御部30は、仮想目標走行ライン(L1)を目標走行ラインとして設定し、図7のステップS208~213で説明したように、乗用田植機Pが目標走行ライン(L1)に沿って走行するように、ステアリングモータ16を制御する。
【0061】
なお、旋回終了位置(X1)は、旋回開始位置(B点)とX方向における座標が同じである。例えば、旋回開始位置(B点)のX座標、Y座標を、(x1、y1)と表すとき、旋回終了位置(X1)のX座標、Y座標は、(x1、y1+W)と表すことができる。Wは、各目標走行ライン間の行程間隔である。
【0062】
次に、図10の目標走行ラインL2を乗用田植機Pが+X方向に走行している場合を例に、図11のステップS509~S513について説明する。まず、制御部30は、予告報知位置(E2)に到達したか否かを判断する(S509)。予告報知位置(E2)は、後述するステップS506において設定される旋回開始予測位置(S2)に基づいて設定される。目標走行ラインL2においては、旋回開始予測位置(S2)は旋回開始位置(X2)と一致するものとし、予告報知位置(E2)は、旋回開始予測位置(S2)から距離D1だけX方向において手前の位置である。
【0063】
予告報知位置(E2)に乗用田植機Pが到達した場合(S509:Y)、制御部30は、予告報知を実施する(S510)。例えば、予告報知は、制御部30が報知ブザー40を鳴動させる処理であり、報知部としての報知ブザー40の鳴動は、連続的な鳴動でも断続的な鳴動でもよい。また、予告報知は、操作パネル17のランプを点灯させたり、タブレット29上にメッセージを表示させたりするものでもよく、これらを組み合わせてもよい。
【0064】
次に、制御部30は、乗用田植機Pが自動操舵停止位置(F2)に到達したか否かを判断する(S511)。自動操舵停止位置(F2)は、旋回開始予測位置(S2)から距離D2だけX方向において手前の位置である。なお、距離D1は、距離D2よりも大きい(D1>D2)。
【0065】
自動操舵停止位置(F2)に乗用田植機Pが到達した場合(S511:Y)、制御部30は、自動操舵オフ状態へと移行する(S512)。すなわち、制御部30は、ステアリングモータ16によるステアリングハンドル8の制御を停止する。次に、制御部30は、自動操舵制御が自動モードに設定されているか否かを判断する(S513)。自動操舵制御が自動モードに設定されている場合(S513:Y)、ステップS503に戻り、自動操舵制御が自動モードに設定されていない場合(S513:N)、処理を終了する。なお、ステップS513においては、電源スイッチ18がオンでない場合においても、自動操舵制御の処理を終了する。本実施例の説明では、目標走行ラインL7まで植付作業を行うので、自動操舵制御が自動モードに設定されているものとし(S513:Y)、ステップS503に戻る。
【0066】
作業者は、乗用田植機Pが自動操舵停止位置(F2)を通過してからは、手動操作によって目標走行ラインL2に沿うように乗用田植機Pを運転する。そして、作業者は、目測若しくは予め付けた目印を基に、乗用田植機Pの旋回操作(例えば所定角θ0以上のステアリング操作)を行う。
【0067】
本実施例の説明では、旋回開始予測位置(S2)と同じ位置において、作業者が旋回操作したものとする。このため、制御部30は、旋回開始予測位置(S2)と同じ位置を旋回開始位置(X2)として記録する(S503)。次に、制御部30は、旋回開始位置(X2)のX座標が補正値維持領域SK外か否かを判断する(S504)。ここで、補正値維持領域SKは、旋回開始予測位置(S2)を中心とした、+X方向及び-X方向に所定距離(SK/2)の範囲である。
【0068】
旋回開始位置(X2)のX座標が補正値維持領域SK外であると判断された場合(S504:Y)、制御部30は、補正値Hを更新し(S505)、ステップS506に進む。すなわち、補正値Hは、旋回開始予測位置と旋回開始位置との差が所定値としての所定距離(SK/2)より大きい場合に、更新される。また、旋回開始位置(X2)のX座標が補正値維持領域SK外ではない、すなわち旋回開始位置(X2)のX座標が補正値維持領域SK内であると判断された場合(S504:N)、制御部30は、補正値Hを更新することなく、ステップS506に進む。補正値Hの更新については、目標走行ラインL4において説明し、ここ(目標走行ラインL2)では、旋回開始位置(X2)のX座標が補正値維持領域SK内であるとする。このため、旋回開始位置(X2)においての旋回では、補正値Hは更新されない。このように、補正値維持領域SKを設けることで、作業者の旋回操作によって記録される旋回開始位置が多少ぶれたとしても、補正値Hはみだりに更新されず、安定して予告報知や自動操舵オフ状態への移行を行うことができる。
【0069】
次に、制御部30は、2行程後の旋回開始予測位置を設定する(S506)。2行程後の旋回開始予測位置(S4)は、旋回開始位置(X2)のX座標に補正値Hを加算したものである。補正値Hは、正の値、0、及び負の値をとることができる。ここ(目標走行ラインL2)では、補正値Hは0なので、2行程後の旋回開始予測位置(S4)と旋回開始位置(X2)のX座標は一致する。
【0070】
そして、制御部30は、乗用田植機Pが旋回終了位置(X3)に到達したか否かを判断し(S507)、旋回終了位置(X3)に到達した場合(S507:Y)、自動操舵オン状態へと移行する(S508)。すなわち、制御部30は、仮想目標走行ライン(L3)を目標走行ラインとして設定し、図7のステップS208~213で説明したように、乗用田植機Pが目標走行ライン(L3)に沿って走行するように、ステアリングモータ16を制御する。
【0071】
次に、図10の目標走行ラインL4を乗用田植機Pが+X方向に走行している場合を例に、図11のステップS509~S513について説明する。まず、制御部30は、予告報知位置(E4)に到達したか否かを判断する(S509)。予告報知位置(E4)は、ステップS506において設定された旋回開始予測位置(S4)に基づいて設定され、旋回開始予測位置(S4)から距離D1だけX方向において手前の位置である。
【0072】
予告報知位置(E4)に乗用田植機Pが到達した場合(S509:Y)、制御部30は、予告報知を実施する(S510)。次に、制御部30は、乗用田植機Pが自動操舵停止位置(F4)に到達したか否かを判断する(S511)。自動操舵停止位置(F4)は、旋回開始予測位置(S4)から第1距離としての距離D2だけX方向において手前の位置である。
【0073】
自動操舵停止位置(F4)に乗用田植機Pが到達した場合(S511:Y)、制御部30は、自動操舵オフ状態へと移行する(S512)。すなわち、制御部30は、ステアリングモータ16によるステアリングハンドル8の制御を停止する。次に、制御部30は、自動操舵制御が自動モードに設定されているか否かを判断する(S513)。自動操舵制御が自動モードに設定されている場合(S513:Y)、ステップS503に戻り、自動操舵制御が自動モードに設定されていない場合(S513:N)、処理を終了する。本実施例の説明では、目標走行ラインL7まで植付作業を行うので、自動操舵制御が自動モードに設定されているものとし(S513:Y)、ステップS503に戻る。
【0074】
ここで、目標走行ラインL4は、変形圃場DPの傾斜部DP1によって、基準走行ラインL0及び目標走行ラインL1~L3よりも、植付作業を行うべき植付作業距離が短い。このため、作業者は、乗用田植機Pが自動操舵停止位置(F4)を通過してからは、手動操作によって目標走行ラインL4に沿うように乗用田植機Pを運転するが、例えば旋回開始予測位置(S4)よりも所定距離手前の旋回開始位置(X4)で旋回開始する。制御部30は、この時の旋回開始位置(X4)を記録する(S503)。
【0075】
すなわち、目標走行ラインL4においては、旋回開始位置(X4)と、旋回開始予測位置(S4)と、のX座標が異なる。次に、制御部30は、旋回開始位置(X4)のX座標が補正値維持領域SK外か否かを判断する(S504)。ここで、旋回開始位置(X4)のX座標は、補正値維持領域SK外であるとする。
【0076】
このため、制御部30は、旋回開始位置(X4)のX座標が補正値維持領域SK外であると判断し(S504:Y)、制御部30は、補正値Hを更新し(S505)、ステップS506に進む。補正値Hは、現行程の旋回開始予測位置(S4)と旋回開始位置(X4)とのX座標における差によって求められ、ここでは負の値である。
【0077】
次に、制御部30は、2行程後の旋回開始予測位置を設定する(S506)。2行程後の旋回開始予測位置(S6)は、旋回開始位置(X4)のX座標に補正値H(負の値)を加算したものである。
【0078】
そして、制御部30は、乗用田植機Pが旋回終了位置(X5)に到達したか否かを判断し(S507)、旋回終了位置(X5)に到達した場合(S507:Y)、自動操舵オン状態へと移行する(S508)。すなわち、制御部30は、仮想目標走行ライン(L5)を目標走行ラインとして設定し、図7のステップS208~213で説明したように、乗用田植機Pが目標走行ライン(L5)に沿って走行するように、ステアリングモータ16を制御する。
【0079】
次に、図10の目標走行ラインL6を乗用田植機Pが+X方向に走行している場合を例に、図11のステップS509~S513について説明する。まず、制御部30は、予告報知位置(E6)に到達したか否かを判断する(S509)。予告報知位置(E6)は、ステップS506において設定された旋回開始予測位置(S6)に基づいて設定され、旋回開始予測位置(S6)から第2距離としての距離D1だけX方向において手前の位置である。
【0080】
予告報知位置(E6)に乗用田植機Pが到達した場合(S509:Y)、制御部30は、予告報知を実施する(S510)。次に、制御部30は、乗用田植機Pが自動操舵停止位置(F6)に到達したか否かを判断する(S511)。自動操舵停止位置(F6)は、旋回開始予測位置(S6)から距離D2だけX方向において手前の位置である。
【0081】
自動操舵停止位置(F6)に乗用田植機Pが到達した場合(S511:Y)、制御部30は、自動操舵オフ状態へと移行する(S512)。すなわち、制御部30は、ステアリングモータ16によるステアリングハンドル8の制御を停止する。次に、制御部30は、自動操舵制御が自動モードに設定されているか否かを判断する(S513)。自動操舵制御が自動モードに設定されている場合(S513:Y)、ステップS503に戻り、自動操舵制御が自動モードに設定されていない場合(S513:N)、処理を終了する。本実施例の説明では、目標走行ラインL7まで植付作業を行うので、自動操舵制御が自動モードに設定されているものとし(S513:Y)、ステップS503に戻る。
【0082】
ここで、目標走行ラインL6は、変形圃場DPの傾斜部DP1に交差するラインであるが、傾斜部DP1の傾斜は、一定であって直線的である。このため、上述のステップS506で求めたように、目標走行ラインL6での旋回開始予測位置(S6)は、旋回開始位置(X4)のX座標に補正値H(負の値)を加算したものであるが、旋回開始予測位置(S6)は、作業者が手動で旋回開始すべき位置と一致する。
【0083】
このため、作業者は、乗用田植機Pが自動操舵停止位置(F6)を通過してからは、手動操作によって目標走行ラインL6に沿うように乗用田植機Pを運転するが、例えば旋回開始予測位置(S6)に一致する旋回開始位置(X6)で旋回開始する。制御部30は、この時の旋回開始位置(X6)を記録する(S503)。このように、一定の角度で傾斜した傾斜部DP1に対応する仮想目標走行ラインを走行する際には、旋回開始予測位置と旋回開始位置とがほとんどずれず、補正値Hは更新されない。このため、予告報知位置及び自動操舵停止位置が傾斜部DP1と同じ角度で各目標走行ラインに対して設定され、安定して予告報知及び自動操舵オフ状態への移行を行うことができる。
【0084】
なお、制御部30は、旋回開始予測位置(S6)に到達した際又は到達する直前に、報知ブザー40を鳴動させることで、作業者に旋回開始位置を報知してもよい。また、上述した予告報知と同様に、本報知においても、報知ブザー40の鳴動は、連続的な鳴動でも断続的な鳴動でもよい。また、該報知は、操作パネル17のランプを点灯させたり、タブレット29上にメッセージを表示させたりするものでもよく、これらを組み合わせてもよい。これにより、作業者は、変形圃場DPにおいても、旋回開始すべき位置を認識することができ、作業性を向上することができる。
【0085】
以上のように、本実施の形態では、自動モードの自動操舵制御において、旋回開始位置のX座標が補正値維持領域SK外であると判断されると、補正値Hを更新し、この補正値Hを用いて2行程後の旋回開始予測位置を設定する。例えば、複数の仮想目標走行ライン(L1~L7)の内、互いに隣接して順に並んだ第1仮想目標走行ライン(L4)、第2仮想目標走行ライン(L5)、及び第3仮想目標走行ライン(L6)を乗用田植機Pが走行する際に、自動モードにおいて、第1仮想目標走行ライン(L4)上の旋回開始予測位置(S4)と旋回開始位置(X4)とのX方向における位置の差を補正値(H)として求め、第3仮想目標走行ライン(L6)上の旋回開始予測位置(S6)を、第1仮想目標走行ライン(L4)の旋回開始位置(X4)又は第2仮想目標走行ライン(L5)の旋回終了位置(X5)のX方向における座標に補正値(H)を加算することで算出する。これにより、矩形ではない変形圃場DPにおいても、適切な旋回開始予測位置を設定し、該旋回開始予測位置に基づいて算出される自動操舵停止位置において自動操舵オフ状態に自動で移行することができ、作業性を向上することができる。
【0086】
また、補正値Hは、変形圃場DPの傾斜部DP1の角度が一定である場合には、以降、更新されず、補正値Hを用いて求められた旋回開始予測位置を使って、適切な位置で予告報知及び自動操舵オフ状態への移行(自動操舵停止)を行うことができる。
【0087】
そして、補正値Hは、旋回操作の流れの中で、自動的に更新され、補正値Hを作業者が手動で設定する必要が無いため、容易に自動直進走行を行うことができる。また、自動モードの自動操舵制御では、旋回開始時及び旋回終了時に作業者が自動操舵スイッチ19を操作する必要が無いため、作業性を向上できる。
【0088】
なお、図10では、傾斜部DP1によって、圃場が内側に切り欠かれるように変形していたが、例えば傾斜部DP1が外側に膨らむように設けられていた場合には、補正値Hは正の値となる。すなわち、制御部30は、ステップS506において、現行程の旋回開始位置のX座標に補正値H(正の値)を加算することで、2行程後の旋回開始予測位置を求める。
【0089】
また、本実施の形態では、旋回開始予測位置の設定(S506)は、旋回開始後かつ旋回終了前に実施されていたが、これに限定されない。例えば、旋回開始予測位置の設定(S506)は、旋回終了(S507)後かつ予告報知位置に到達(S509)前に行われてもよい。この時設定される旋回開始予測位置は、設定されるタイミングによって現行程~2行程後の旋回開始予測位置となる。
【0090】
また、本実施の形態では、旋回開始予測位置は、旋回開始位置のX座標に補正値Hを加算されることで求められていたが、これに限定されない。例えば、旋回開始予測位置は、旋回終了位置のX座標に補正値Hを加算されることで求められてもよい。
【0091】
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態について説明するが、第2の実施の形態は、第1の実施の形態に対して自動モードの自動操舵制御の処理が一部異なり、その他は同様である。このため、第1の実施の形態と同様な構成又は処理については、第1の実施の形態と同一の符号を図面に付し、説明を省略する。
【0092】
図12は、第2の実施の形態に係る自動モードの自動操舵制御を示すフローチャートである。第2の実施の形態では、第1の実施の形態で説明した図11のステップS504~S506を省くと共に、ステップS508とステップS509の間にステップS601~S603を追加した。その他の処理については、図11と同様であるため説明を省略する。以下では、図10の目標走行ラインL4,L5を乗用田植機Pが走行する場合を例に、図12のステップS503,S507~S508,S601~S603について説明する。
【0093】
図12に示すように、作業者は、乗用田植機Pが自動操舵停止位置(F4)を通過してからは、手動操作によって目標走行ラインL4に沿うように乗用田植機Pを運転するが、例えば旋回開始予測位置(S4)よりも所定距離手前の旋回開始位置(X4)で旋回開始する。制御部30は、この時の旋回開始位置(X4)を記録する(S503)。
【0094】
すなわち、目標走行ラインL4においては、旋回開始位置(X4)と、旋回開始予測位置(S4)と、のX座標が異なる。次に、制御部30は、乗用田植機Pが旋回終了位置(X5)に到達したか否かを判断し(S507)、旋回終了位置(X5)に到達した場合(S507:Y)、自動操舵オン状態へと移行する(S508)。なお、第1の実施の形態で説明したように、旋回終了位置(X5)のX座標は、旋回開始位置(X4)のX座標と同じである。
【0095】
次に、制御部30は、旋回終了位置(X5)のX座標が補正値維持領域SK外か否かを判断する(S601)。補正値維持領域SKは、第1の実施の形態と同様に、旋回開始予測位置(S4)を中心とした、+X方向及び-X方向に所定距離(SK/2)の範囲である。ここで、旋回終了位置(X5)のX座標は、補正値維持領域SK外であるとする。
【0096】
このため、制御部30は、旋回終了位置(X5)のX座標が補正値維持領域SK外であると判断し(S601:Y)、制御部30は、補正値Hを更新する(S602)。補正値Hは、前行程の旋回開始予測位置(S4)と現行程の旋回終了位置(X5)とのX座標における差によって求められる。
【0097】
更に、制御部30は、1行程後の旋回開始予測位置を設定する(S603)。1行程後の旋回開始予測位置(S6)は、旋回終了位置(X5)のX座標に補正値H(負の値)を加算したものである。ステップS509以降は、第1の実施の形態と同様であるため説明を省略する。
【0098】
以上のように、本実施の形態では、自動モードの自動操舵制御において、前行程の旋回開始予測位置(S4)と現行程の旋回終了位置(X5)とのX座標における差によって補正値Hを求める。例えば、複数の仮想目標走行ライン(L1~L7)の内、互いに隣接して順に並んだ第1仮想目標走行ライン(L4)、第2仮想目標走行ライン(L5)、及び第3仮想目標走行ライン(L6)を乗用田植機Pが走行する際に、自動モードにおいて、第1仮想目標走行ライン(L4)上の旋回開始予測位置(S4)と第2仮想目標走行ライン(L5)上の旋回終了位置(X5)とのX方向における位置の差を補正値(H)として求め、第3仮想目標走行ライン(L6)上の旋回開始予測位置(S6)を、第1仮想目標走行ライン(L4)の旋回開始位置(X4)又は第2仮想目標走行ライン(L5)の旋回終了位置(X5)のX方向における座標に補正値(H)を加算することで算出する。これにより、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0099】
なお、本実施の形態では、旋回開始予測位置は、旋回終了位置のX座標に補正値Hを加算されることで求められていたが、これに限定されない。例えば、旋回開始予測位置は、旋回開始位置のX座標に補正値Hを加算されることで求められてもよい。
【0100】
また、上述したいずれの実施の形態においても、作業車両として乗用田植機Pについて説明をしたが、これに限定されない。作業車両は、例えば、トラクタやコンバイン等、他の作業車両であってもよい。
【符号の説明】
【0101】
1 走行機体
8 ステアリングハンドル
9 走行装置(前輪)
10 走行装置(後輪)
19 操作部(自動操舵スイッチ)
26 測位システム
30 制御部
40 報知部(報知ブザー)
P 作業車両(乗用田植機)
θ 所定角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12