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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139436
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】フォトマスク検査装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/84 20120101AFI20230927BHJP
【FI】
G03F1/84
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044967
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】岸本 良
【テーマコード(参考)】
2H195
【Fターム(参考)】
2H195BA01
2H195BA12
2H195BD03
2H195BD04
2H195BD12
2H195BD13
2H195BD17
2H195BD20
2H195BD24
2H195BD27
2H195BD29
(57)【要約】
【課題】より高い検出精度でフォトマスクを検出できる、信頼性の高いフォトマスク検査装置を提供する。
【解決手段】フォトマスク検査装置1は、保持部と、第1光源12aと、第2光源12bと、混合部14と、照明光学系17と、結像光学系21と、イメージセンサ25と、演算処理部50とを備える。保持部はフォトマスク80を保持する。第1光源12aは、第1光L1aを出射する単一の第1半導体発光素子121を含む。第2光源12bは、第2光L1bを出射する単一の第2半導体発光素子121を含む。混合部14は第1光L1aおよび第2光L1bを混合する。照明光学系17は光L2をフォトマスク80に導く。イメージセンサ25は、結像光学系21を通じて入射した光L2を受光して撮像画像IM1を生成する。演算処理部50は撮像画像IM1に基づいてフォトマスク80の検査を行う。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトマスクを保持する保持部と、
第1ピーク波長を有する第1光を出射する単一の第1半導体発光素子を含む第1光源と、
前記第1ピーク波長とは異なる第2ピーク波長を有する第2光を出射する単一の第2半導体発光素子を含む第2光源と、
前記第1光源からの前記第1光および前記第2光源からの前記第2光を混合する混合部と、
前記混合部によって前記第1光および前記第2光を混合した光を、前記フォトマスクに導く照明光学系と、
対物レンズを含み、前記フォトマスクからの前記光が入射する結像光学系と、
前記結像光学系を通じて入射した前記光を受光して撮像画像を生成するイメージセンサと、
前記撮像画像に基づいて、前記フォトマスクの検査を行う演算処理部と
を備える、フォトマスク検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載のフォトマスク検査装置であって、
前記結像光学系の開口数に対する前記照明光学系の比であるシグマは、前記フォトマスクが用いられる露光装置における前記シグマと同じである、フォトマスク検査装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のフォトマスク検査装置であって、
前記対物レンズの開口数は、前記フォトマスクが用いられる露光装置における対物レンズの開口数以上である、フォトマスク検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フォトマスク検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、フォトマスク(レチクル)を検査する検査装置が提案されている(特許文献1,2)。
【0003】
特許文献1では、g線、h線およびi線を含む光を出力する光源が設けられている。光源からの光は波長選択フィルタを通じて、フォトマスクに照射され、フォトマスクを透過した光が撮像手段の撮像面に入射する。波長選択フィルタは、g線のみを透過させる第1フィルタ、h線のみを透過させる第2フィルタ、および、i線のみを透過させる第3フィルタを含む。光はこれらの第1フィルタ、第2フィルタおよび第3フィルタを選択的に通る。光が第1フィルタを通過したときには、g線のみがフォトマスクを通じて撮像手段に入射するので、撮像手段はg線での撮像画像を生成する。光が第2フィルタを通過したときには撮像手段はh線での撮像画像を生成し、光が第3フィルタを通過したときには、i線での撮像画像を生成する。特許文献1では、これら3つの撮像画像を波長演算合成して、g線、h線およびi線を含む光での合成画像を生成し、合成画像に基づいて、フォトマスクの検査を行う。
【0004】
特許文献2では、複数の照明源が設けられており、各照明源は複数のレーザーダイオードアレイを含んでいる。複数の照明源から出力されたビームはビーム結合オプティクスによって結合され、任意の照明プロファイルでビームを試料に入射させる。該試料から反射したビームは検出器に入射し、該検出器によって検出される。検査装置は、検出器から出力される信号に基づいて、試料の限界寸法などの試料パラメータを求める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-256671号公報
【特許文献2】特開2020-064063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、異なるタイミングでg線での撮像画像、h線での撮像画像およびi線での撮像画像が撮像される。このため、検査装置の機械振動による位置ばらつきが撮像画像に対して生じる。よって、合成画像には、この位置ばらつきに起因した誤差が含まれてしまい、検査精度が低下してしまう、という問題がある。
【0007】
特許文献2では、光源にレーザーダイオードアレイが用いられる。各レーザーダイオードアレイでは、複数の発光素子が設けられるので、各照明源から出射される光の波長および位相の少なくともいずれか一方において、複数の素子間でのばらつきが生じてしまう。このため、各照明源から出射された光のコヒーレンス性が低下する。
【0008】
したがって、たとえ照明プロファイルを露光装置における光源の照明プロファイルに近づけたとしても、検査装置において試料で生じる回折現象が、露光装置における回折現象と大きく相違してしまう。このため、検出器によって検出される像が露光装置における像と異なってしまい、検査精度が低下してしまうという問題がある。また、複数の素子のいずれか一つに異常が生じると、全体を交換する必要があり、信頼性に劣る。
【0009】
そこで、本開示は、より高い検出精度でフォトマスクを検出できる、信頼性の高いフォトマスク検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様は、フォトマスク検査装置であって、フォトマスクを保持する保持部と、第1ピーク波長を有する第1光を出射する単一の第1半導体発光素子を含む第1光源と、前記第1ピーク波長とは異なる第2ピーク波長を有する第2光を出射する単一の第2半導体発光素子を含む第2光源と、前記第1光源からの前記第1光および前記第2光源からの前記第2光を混合する混合部と、前記混合部によって前記第1光および前記第2光を混合した光を、前記フォトマスクに導く照明光学系と、対物レンズを含み、前記フォトマスクからの前記光が入射する結像光学系と、前記結像光学系を通じて入射した前記光を受光して撮像画像を生成するイメージセンサと、前記撮像画像に基づいて、前記フォトマスクの検査を行う演算処理部とを備える。
【0011】
第2の態様は、第1の態様にかかるフォトマスク検査装置であって、前記結像光学系の開口数に対する前記照明光学系の比であるシグマは、前記フォトマスクが用いられる露光装置における前記シグマと同じである。
【0012】
第3の態様は、第1または第2の態様にかかるフォトマスク検査装置であって、前記対物レンズの開口数は、前記フォトマスクが用いられる露光装置における対物レンズの開口数以上である。
【発明の効果】
【0013】
フォトマスク検査装置によれば、混合部が、互いに異なるピーク波長を有する第1光および第2光を混合する。そして、その混合光である光はフォトマスクを透過し、結像光学系を通じてイメージセンサの受光面に入射する。よって、撮像画像には、第1ピーク波長および第2ピーク波長を有する光によるフォトマスクの投影像が含まれる。つまり、一度の撮像により、複数のピーク波長を有する光による投影像を含んだ撮像画像を得ることができる。
【0014】
このため、特許文献1のように、互いに異なるピーク波長を有する光を順次に照射して得られた複数の撮像画像を合成する必要がない。よって、特許文献1とは異なって、撮像画像においてピーク波長ごとの位置ばらつきが原理的に生じない。したがって、演算処理部はより高い検査精度で、撮像画像に基づいてフォトマスクを検査することができる。
【0015】
しかも、フォトマスク検査装置によれば、第1光源および第2光源が単一の半導体発光素子を含んでいる。このため、特許文献2のようなダイオードアレイでの波長または位相のばらつきが原理的に生じず、第1光源はよりコヒーレントな第1光を出射することができ、第2光源はよりコヒーレントな第2光を出射することができる。よって、露光装置における回折現象と同等な回折現象を、フォトマスクを透過する光に生じさせることができる。したがって、演算処理部はより高い検査精度でフォトマスクを検査することができる。しかも、第1光源および第2光源の信頼性も高い。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】フォトマスク検査装置の構成の一例を概略的に示す斜視図である。
図2】フォトマスク検査装置の光学的な構成の一例を概略的に示す図である。
図3】露光装置の光学的な構成の一例を概略的に示す図である。
図4】第1ダイクロイックミラーの透過率および反射率を示すグラフである。
図5】第2ダイクロイックミラーの透過率および反射率を示すグラフである。
図6】撮像画像の一例を概略的に示す図である。
図7】フォトマスク検査装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図8】各撮像画像のラインにおける投影像の輝度分布を示す図である。
図9】Z軸位置と焦点評価値との関係、および、Z軸位置と投影像幅との関係を示すグラフである。
図10】欠陥を含む撮像画像の一例を概略的に示す図である。
図11】Z軸位置と焦点評価値との関係、および、Z軸位置と欠陥輝度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ実施の形態について詳細に説明する。なお図面においては、理解容易の目的で、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。また同様な構成及び機能を有する部分については同じ符号が付されており、下記説明では重複説明が省略される。また図面においては、各構成の位置関係を示すべく、XYZ直交座標が適宜に示されている。例えば、Z軸は鉛直方向に沿って配置されており、X軸およびY軸は水平方向に沿って配置されている。また下記説明では、Z軸方向の一方側を+Z側とも呼び、他方側を-Z側とも呼ぶ。X軸およびY軸についても同様である。
【0018】
また、以下に示される説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称と機能とについても同様のものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
【0019】
また、以下に記載される説明において、「第1」または「第2」などの序数が用いられる場合があっても、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするために便宜上用いられるものであり、これらの序数によって生じ得る順序に限定されるものではない。
【0020】
相対的または絶対的な位置関係を示す表現(例えば「一方向に」「一方向に沿って」「平行」「直交」「中心」「同心」「同軸」など)が用いられる場合、該表現は、特に断らない限り、その位置関係を厳密に表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる範囲で相対的に角度または距離に関して変位された状態も表すものとする。等しい状態であることを示す表現(例えば「同一」「等しい」「均質」など)が用いられる場合、該表現は、特に断らない限り、定量的に厳密に等しい状態を表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる差が存在する状態も表すものとする。形状を示す表現(例えば、「四角形状」または「円筒形状」など)が用いられる場合、該表現は、特に断らない限り、幾何学的に厳密にその形状を表すのみならず、同程度の効果が得られる範囲で、例えば凹凸や面取りなどを有する形状も表すものとする。一の構成要素を「備える」「具える」「具備する」「含む」または「有する」という表現が用いられる場合、該表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的表現ではない。「A,BおよびCの少なくともいずれか一つ」という表現が用いられる場合、該表現は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A,BおよびCのうち任意の2つ、ならびに、A,BおよびCの全てを含む。
【0021】
<フォトマスク検査装置>
図1は、フォトマスク検査装置1の構成の一例を概略的に示す斜視図であり、図2は、フォトマスク検査装置1の光学的な構成の一例を概略的に示す図である。フォトマスク検査装置1は、フォトマスク80を検査する装置である。
【0022】
<フォトマスク>
まず、検査対象であるフォトマスク80について説明する。フォトマスク80は、露光装置1000に用いられるフォトマスクである。図3は、露光装置1000の光学的な構成の一例を概略的に示す図である。露光装置1000はフォトマスク80を用いて基板Wに対して露光処理を行うことにより、フォトマスク80のパターンを基板Wに転写することができる。基板Wは、例えば、フラットパネルディスプレイ用の基板である。なお、基板Wには、半導体基板および太陽電池用基板などの種々の基板を適用することも可能である。
【0023】
フォトマスク80は板状の形状を有しており、平面視において、例えば矩形状の形状を有している。フォトマスク80の一辺の長さは例えば数m程度に設定される。より具体的な一例として、フォトマスク80の各辺の長さは、それぞれ1.8mおよび2.0mであり、フォトマスク80の厚みは例えば2.1mmである。フォトマスク80の一方の主面には、遮光膜(不図示)が所定のパターンで形成されている。つまり、フォトマスク80には、光を透過させる透過部と、光を遮断する遮断部が形成される。なお、フォトマスク80は、透過部よりも低い透過率で光を透過させる位相シフト膜が設けられた位相シフトマスクであってもよい。
【0024】
フォトマスク80は露光装置1000において不図示のマスク保持部によって保持される。マスク保持部はフォトマスク80をその厚み方向がZ軸方向に沿う姿勢で保持する。マスク保持部は例えばフォトマスク80の周縁部のみを支持する。
【0025】
図3に示されるように、露光装置1000は、照明部1100と、結像部1200とを含んでいる。照明部1100および結像部1200はフォトマスク80に対して互いに反対側に設けられている。図3の例では、照明部1100はフォトマスク80に対して+Z側に設けられており、結像部1200はフォトマスク80に対して-Z側に設けられている。
【0026】
照明部1100は、光源1110と、照明光学系1120とを含んでいる。光源1110は露光用の光を照明光学系1120に向けて出射する。露光用の光は例えば紫外線であり、光源1110は、例えば水銀ランプ(例えば高圧水銀ランプ)などの紫外線照射器である。光源1110からの光は照明光学系1120を通じてフォトマスク80に照射される。
【0027】
図3の例では、照明光学系1120は、集光レンズ1130、視野絞り1140、集光レンズ1150、開口絞り1160およびコンデンサーレンズ1170を含んでいる。集光レンズ1130、視野絞り1140、集光レンズ1150、開口絞り1160およびコンデンサーレンズ1170はZ軸方向において光源1110から離れるにしたがって、この順で設けられている。つまり、集光レンズ1130が光源1110に最も近い位置に設けられている。光源1110からの光は集光レンズ1130によって集光して、視野絞り1140を通過する。視野絞り1140の開口径は可変であり、照明範囲を調整することができる。視野絞り1140を通過した光は集光レンズ1150によって集光して、開口絞り1160を通過する。開口絞り1160を通過した光はコンデンサーレンズ1170によって、フォトマスク80に集光する。開口絞り1160の開口径は可変であり、照明光学系1120の開口数を調整することができる。
【0028】
なお、光源1110からの光のうち、所定の波長領域内の光のみを透過させる光フィルタが照明光学系1120に設けられてもよい。
【0029】
照明部1100からの露光用の光はフォトマスク80の透過部を透過する。フォトマスク80の透過部を透過したパターン状の光は結像部1200(結像光学系)に入射する。結像部1200は、対物レンズ1210と、開口絞り1220と、結像レンズ1230とを含む。対物レンズ1210、開口絞り1220および結像レンズ1230はZ軸方向においてフォトマスク80から離れるにしたがって、この順で設けられている。フォトマスク80の透過部を透過した光は対物レンズ1210および結像レンズ1230を介して拡大される。開口絞り1220の開口径は可変であり、結像部1200の開口数を調整することができる。基板Wがフラットパネルディスプレイ用の基板である場合、露光装置1000において、結像部1200の開口数は小さく設定され、例えば、0.1程度に設定される。
【0030】
基板Wは結像部1200に対してフォトマスク80とは反対側に設けられる。図3の例では、基板Wは結像部1200よりも-Z側に設けられている。基板Wは不図示の基板保持部によって水平姿勢で保持される。ここでいう水平姿勢とは、基板Wの厚み方向がZ軸方向に沿う姿勢である。
【0031】
結像部1200からのパターン状の光は基板Wの+Z側の主面に照射される。これにより、基板Wの主面に形成されたレジストがパターン状に露光される。つまり、フォトマスク80の透過部のパターンが基板Wの主面に転写される。
【0032】
フォトマスク80が不良品であれば、基板Wに転写されるパターンが設計上のパターンからずれるので、好ましくない。そこで、フォトマスク検査装置1はフォトマスク80を検査する。
【0033】
<フォトマスク検査装置の概要>
図2に例示されるように、フォトマスク検査装置1は、フォトマスク80を透過した光を受光するイメージセンサ(光学センサ)25を含んでいる。フォトマスク検査装置1は後に詳述するように、検査対象であるフォトマスク80を露光装置1000に用いたときに基板W上に照射されるパターン状の光を、このイメージセンサ25の受光面(撮像面)上に疑似的に再現させる。イメージセンサ25は受光面上の光を検出し、フォトマスク検査装置1はその検出結果に基づいてフォトマスク80の検査を行う。つまり、フォトマスク検査装置1は、疑似的に、露光装置1000における基板W上の光に基づいてフォトマスク80を検査することができる。
【0034】
フォトマスク検査装置1は照明部10と検出部20と移動機構40と制御部50と昇降機構60と保持部90とを備えている。以下では、まず、フォトマスク検査装置1の構成の概要を説明し、その後、各構成の一例について詳述する。
【0035】
保持部90はフォトマスク80を保持する部材である。この保持部90はフォトマスク80の厚み方向がZ軸方向に沿うように、フォトマスク80を保持する。図1の例では、保持部90はフォトマスク80の周縁部のみを支持している。ただし、保持部90は、透光性の部材によってフォトマスク80の下面を全体的に支持しても構わない。
【0036】
照明部10および検出部20はZ軸方向においてフォトマスク80に対して互いに反対側に設けられている。図1および図2の例では、照明部10はフォトマスク80に対して-Z側に設けられ、検出部20はフォトマスク80に対して+Z側に設けられている。
【0037】
照明部10はフォトマスク80に向けて光L2を照射する。図2の例では、照明部10は、疑似光照射部11と、照明光学系17とを含む。疑似光照射部11は、露光装置1000の光源1110が照射する光の波長範囲のうち露光に用いられる光のスペクトルに類似したスペクトルを有する光L2を出射する。つまり、光L2は、露光装置1000で基板Wの露光に用いられる光を模した光である。この光L2は照明光学系17を通じて-Z側からフォトマスク80に入射する。言い換えれば、照明光学系17は、照明部10からの光L2をフォトマスク80に導く。フォトマスク80の透過部を透過したパターン状の光L2は検出部20に入射する。
【0038】
検出部20は結像光学系21とイメージセンサ25とを含む。結像光学系21は、フォトマスク80を透過した光L2をイメージセンサ25の受光面に結像させる。結像光学系21の開口数N2に対する照明光学系17の開口数N1の比であるシグマ(=N1/N2)は、露光装置1000の結像部1200の開口数N20に対する照明光学系1120の開口数N10の比であるシグマ(=N10/N20)と同じ値に設定される。これにより、イメージセンサ25の受光面に入射する光L2の輝度分布は、基板W上に照射されるパターン状の光の輝度分布を模したものとなる。つまり、フォトマスク80を露光装置1000に用いたときに基板W上に照射される光の輝度分布が、イメージセンサ25の受光面において疑似的に再現される。
【0039】
<照明部>
図2に例示されるように、疑似光照射部11は、複数の光源12と、混合部14とを含んでいる。
【0040】
複数の光源12は、互いに異なるピーク波長を有する光L1を出射する。図2の例では、複数の光源12として3つの光源12a~12cが設けられている。各光源12は単一の半導体発光素子121を含む。半導体発光素子121は、例えば、発光ダイオード素子またはレーザー素子を含む。このような単一の半導体発光素子121は、例えば、単一のp型半導体層および単一のn型半導体層を有する単一の半導体積層構造を含んでいる。
【0041】
光源12aは、第1ピーク波長を有する光L1aを出射する。第1ピーク波長は例えば365nmである(いわゆるi線の波長)。光源12bは、第1ピーク波長とは異なる第2ピーク波長を有する光L1bを出射する。第2ピーク波長は例えば405nmである(いわゆるh線の波長)。光源12cは、第1ピーク波長および第2ピーク波長の両方と異なる第3ピーク波長を有する光L1cを出射する。第3ピーク波長は例えば436nmである(いわゆるg線の波長)。各光源12が出射する光L1の光分光分布(スペクトル)において、ピーク波長は一つのみであってもよい。つまり、光L1は単独波長の光であってもよい。具体的には、各光源12が出射する光のスペクトルは、ピーク波長における強度を最大強度とした急峻な山状の形状を有していてもよい。半導体発光素子121が発光ダイオード素子である場合、やや幅の広い山状のスペクトルを有する光L1を出射し、半導体発光素子121がレーザー素子である場合、比較的幅の狭い山状のスペクトルを有する光L1を出射する。
【0042】
各半導体発光素子121には不図示の電源部から個別に電力が供給される。各半導体発光素子121は、該電源部からの電力に応じた輝度で光L1を出射する。該電源部は、例えば、電流源であり、例えば、スイッチング電源回路を含む。この場合、該電源部は、半導体発光素子121に供給する電流を制御することにより、光L1の輝度を制御する。各電源部は制御部50によって個別に制御されるので、各光源12からの光L1の輝度は制御部50によって個別に制御される。
【0043】
各光源12には、半導体発光素子121からの光L1の強度(あるいは照度、光量)を測定する不図示のセンサが設けられてもよい。該センサは検出値を示す信号を制御部50に出力する。制御部50は検出値に基づいて電源部を制御して、電源部から半導体発光素子121に供給する電流を制御する。これにより、制御部50は、光源12から出射される光L1の強度をより高い精度で制御することができる。
【0044】
光源12aから出射された光L1aはレンズ13aを通じて混合部14に入射し、光源12bから出射された光L1bはレンズ13bを通じて混合部14に入射し、光源12cから出射された光L1cはレンズ13cを通じて混合部14に入射する。
【0045】
混合部14は、複数の光源12からそれぞれ入射される複数の光L1を混合する。ここでいう光の混合とは、複数の光L1の光路を実質的に一致させることをいう。図2の例では、混合部14は第1ダイクロイックミラー141および第2ダイクロイックミラー142を含んでいる。
【0046】
光L1aおよび光L1bは第1ダイクロイックミラー141に入射する。図2の例では、光源12aは第1ダイクロイックミラー141よりも-X側に設けられており、X軸方向に沿って+X側に光L1aを照射する。光源12bは第1ダイクロイックミラー141よりも+Z側に設けられており、Z軸方向に沿って-Z側に光L1bを照射する。第1ダイクロイックミラー141は板状の形状を有しており、その厚み方向が+X側かつ+Z側から-X側かつ-Z側に向かう方向に沿う姿勢で配置される。第1ダイクロイックミラー141は光L1aを反射させ、光L1bを、光L1aの反射方向と同じ方向に透過させる。図4は、第1ダイクロイックミラー141の透過率および反射率を示すグラフである。第1ピーク波長(ここでは365nm)の光L1aに対する第1ダイクロイックミラー141の透過率は低く、反射率は高い。一方、第2ピーク波長(ここでは405nm)の光L1bおよび第3ピーク波長(ここでは436nm)の光L1cに対する第1ダイクロイックミラー141の透過率は高く、反射率は低い。
【0047】
このような第1ダイクロイックミラー141によって、光L1aは反射してZ軸方向に沿って-Z側に反射し、光L1bは第1ダイクロイックミラー141を透過して-Z側に進む。これにより、光L1aおよび光L1bの光路が理想的には一致する。つまり、光L1aおよび光L1bが混合する。
【0048】
この混合光および光L1cは第2ダイクロイックミラー142に入射する。図2の例では、第2ダイクロイックミラー142は第1ダイクロイックミラー141よりも-Z側に設けられている。光源12cは第2ダイクロイックミラー142よりも-X側に設けられており、X軸方向に沿って+X側に光L1cを照射する。第2ダイクロイックミラー142は板状の形状を有しており、その厚み方向が+X側かつ+Z側から-X側かつ-Z側に向かう方向に沿う姿勢で配置される。第2ダイクロイックミラー142は混合光を反射させ、光L1cを、混合光の反射方向と同じ方向に透過させる。図5は、第2ダイクロイックミラー142の透過率および反射率を示すグラフである。光L1aおよび光L1bに対する第2ダイクロイックミラー142の透過率は低く、反射率は高い。一方、光L1cに対する第2ダイクロイックミラー142の透過率は高く、反射率は低い。
【0049】
このような第2ダイクロイックミラー142によって、光L1aおよび光L1bを含む混合光は反射してX軸方向に沿って+X側に反射し、光L1cは第2ダイクロイックミラー142を透過して+X側に進む。これにより、光L1a、光L1bおよび光L1cの光路が理想的には一致する。つまり、光L1a、光L1bおよび光L1cが混合する。光L1a、光L1bおよび光L1cを含む混合光が光L2に相当する。
【0050】
図2の例では、光L2はレンズ15によってライトガイド16の入射端に集光する。光L2はライトガイド16の内部を進み、ライトガイド16の出射端から出射する。ライトガイド16は、例えば、光を透過させる液体が充填されたチューブを含む液体ライトガイドであってもよく、あるいは、複数の光ファイバーが束ねられたファイバーライトガイドであってもよい。図2の例では、ライトガイド16の出射端が疑似光照射部11の出射端に相当する。
【0051】
この疑似光照射部11が出射する光L2のスペクトルが、露光装置1000において露光に用いられる光のスペクトルに類似するように、複数の光源12が制御される。具体的な一例として、露光装置1000において、照明部1100が出射する光にi線、h線およびg線が含まれる場合について説明する。この場合、該光に含まれるi線、h線およびg線の強度のピークが、それぞれ、光L1a、光L1bおよび光L1cの強度のピークと一致するように、光源12a、光源12bおよび光源12cが制御される。これにより、疑似光照射部11は、露光装置1000における光に模した光L2を出射することができる。
【0052】
なお、各光源12からの光L1の強度のピークに関する目標値は例えば予め設定され、不図示の非一時的な記憶部(例えばメモリまたはハードディスク)に記録されてもよい。あるいは、ユーザが不図示の入力デバイス(例えばキーボードもしくはマウス)を用いて各光L1の強度のピークを入力してもよい。制御部50は、光源12に含まれたセンサの検出値と、該目標値とに基づいて、光源12を制御する。これにより、光L1a、光L1bおよび光L1bを含む光L2のスペクトルを、より高い精度で露光装置1000における光のスペクトルに近づけることができる。
【0053】
図2の例では、ライトガイド16の出射端は照明光学系17よりも-Z側に設けられており、照明光学系17に向けて光L2を出射する。図2の例では、照明光学系17は、集光レンズ171、視野絞り172、集光レンズ173、開口絞り174およびコンデンサーレンズ175を含んでいる。集光レンズ171、視野絞り172、集光レンズ173、開口絞り174およびコンデンサーレンズ175はZ軸方向において、ライトガイド16の出射端から離れるにしたがって、この順で設けられている。
【0054】
ライトガイド16の出射端からの光L2は集光レンズ171によって集光して、視野絞り172を通過する。視野絞り172の開口径は絞り機構によって可変であり、照明範囲を調整することができる。視野絞り172を通過した光L2は集光レンズ173によって集光して、開口絞り174を通過する。開口絞り174を通過した光L2はコンデンサーレンズ175によって、フォトマスク80に集光する。開口絞り174の開口径は絞り機構によって可変であり、照明光学系17の開口数N1を調整することができる。視野絞り172および開口絞り174の絞り機構は制御部50によって制御されてもよい。
【0055】
<検出部>
フォトマスク80の透過部を透過したパターン状の光L2は検出部20に入射する。検出部20は、結像光学系21と、イメージセンサ25とを含む。
【0056】
結像光学系21は、フォトマスク80の透過部を透過したパターン状の光L2をイメージセンサ25の受光面に結像させる。図2の例では、結像光学系21は、対物レンズ22と、開口絞り23と、結像レンズ24とを含む。対物レンズ22、開口絞り23および結像レンズ24はZ軸方向においてフォトマスク80から離れるにしたがって、この順で設けられている。対物レンズ22の開口数は、露光装置1000における対物レンズ1210の開口数以上である。フォトマスク80を透過した光は対物レンズ22および結像レンズ24を介して拡大される。開口絞り23の開口径は絞り機構によって可変であり、結像光学系21の開口数を調整することができる。開口絞り23の絞り機構は制御部50によって制御されてもよい。
【0057】
結像レンズ24を透過した光L2はイメージセンサ25の受光面に入射する。イメージセンサ25は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサまたはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサである。イメージセンサ25は、自身の受光面に入射した光に基づいて撮像画像IM1を生成し、その撮像画像IM1を制御部50に出力する。制御部50はこの撮像画像IM1に基づいてフォトマスク80を検査する。
【0058】
<移動機構>
移動機構40は保持部90をXY平面内で移動させる。これにより、保持部90に保持されたフォトマスク80もXY平面内で移動する。移動機構40は例えばボールねじ機構を有しており、制御部50によって制御される。フォトマスク80がXY平面内で移動することにより、照明部10および検出部20をフォトマスク80に対して走査させることができる。このため、照明部10はフォトマスク80の各測定領域に光L2を照射し、イメージセンサ25はフォトマスク80の各測定領域における撮像画像IM1を生成することができる。したがって、制御部50はフォトマスク80の複数の測定領域に対する検査を行うことができる。なお、移動機構40は、照明部10および検出部20に対してフォトマスク80を相対的に移動させる機能および構造を有していればよく、例えば、照明部10および検出部20を一体的に移動させてもよい。
【0059】
<昇降機構>
昇降機構60は保持部90をZ軸方向に昇降させる。これにより、保持部90に保持されたフォトマスク80も昇降する。昇降機構60は例えばボールねじ機構を有しており、制御部50によって制御される。昇降機構60がフォトマスク80を昇降させることにより、フォトマスク80を対物レンズ22の焦点に移動させることができる。なお、昇降機構60は、検出部20に対してフォトマスク80を相対的に昇降させる機能および構造を有していればよく、例えば、検出部20を昇降させてもよい。
【0060】
<制御部>
制御部50はフォトマスク検査装置1を全体的に統括することができる。例えば制御部50は上述のように、照明部10、移動機構40および昇降機構60を制御する。また制御部50は、イメージセンサ25によって生成された撮像画像IM1に基づいてフォトマスク80のマスク特性を求める演算処理部としても機能する。マスク特性とは、例えば、フォトマスク80に形成されるパターンの線幅、パターンどうしの間隔、もしくは、種々の欠陥を含む。マスク特性の求め方については後に詳述する。
【0061】
制御部50は電子回路機器であって、例えば演算処理装置および記憶部を有していてもよい。演算処理装置は例えばCPU(Central Processor Unit)などの演算処理装置であってもよい。記憶部は非一時的な記憶部(例えばROM(Read Only Memory)またはハードディスク)および一時的な記憶部(例えばRAM(Random Access Memory))を有していてもよい。非一時的な記憶部には、例えば制御部50が実行する処理を規定するプログラムが記憶されていてもよい。処理装置がこのプログラムを実行することにより、制御部50が、プログラムに規定された処理を実行することができる。もちろん、制御部50が実行する処理の一部または全部がハードウェアによって実行されてもよい。
【0062】
<マスク特性の算出方法>
次に、イメージセンサ25によって撮像された撮像画像IM1に基づく、フォトマスク80のマスク特性の算出方法の一例について説明する。
【0063】
図6は、撮像画像IM1の一例を概略的に示す図である。撮像画像IM1にはパターン状の光L2が含まれている。この光L2の輝度分布は、フォトマスク80の透過部の投影像に相当する。図6の例では、投影像は、縦方向に延在する縦部分と、縦部分の途中から右方向に延在する横部分とを含んでいる。
【0064】
図6の例では、縦部分の幅方向に延在するラインAにおける輝度分布の一例も概略的に示されている。制御部50は該輝度分布において、輝度値がゼロから立ち上がる立ち上がりエッジの位置、および、輝度値がゼロに立ち下がる立ち下がりエッジの位置を求め、両位置に基づいて縦部分の幅(投影像幅)を求める。
【0065】
ところで、フォトマスク80に対する対物レンズ22の位置が焦点位置からZ軸方向にずれると、撮像画像IM1において投影像は変動し得る。つまり、昇降機構60が保持部90を焦点位置からずれた位置で停止させると、投影像は焦点位置における投影像と異なり得る。
【0066】
基板Wがフラットパネルディスプレイ用の基板である場合、露光装置1000における結像部1200の開口数は0.1程度と小さいので、結像部1200の焦点深度は大きい。しかしながら、後に詳述するように、焦点位置からの10μm程度のわずかなずれでも、撮像画像IM1における投影像の幅は変動してしまう。
【0067】
そこで、ここでは、対物レンズ22に対する保持部90のZ軸方向の位置(以下、Z軸位置と呼ぶ)を順次に変更し、その都度、イメージセンサ25が撮像画像IM1を生成し、制御部50はこれら複数の撮像画像IM1に基づいて、検査を行う。以下、検査方法の一例を具体的に述べる。
【0068】
図7は、フォトマスク検査装置1の動作の一例を示すフローチャートである。ここでは、移動機構40は保持部90を所定の測定位置に移動させている。制御部50は複数の光源12に光L1を照射させる(ステップS1)。これにより、露光装置1000における光に模した光L2がフォトマスク80の所定の測定領域内の透過部を透過し、パターン状の光L2が結像光学系21を通じてイメージセンサ25の受光面に入射する。
【0069】
次に、制御部50は昇降機構60およびイメージセンサ25を制御して、各Z軸位置における撮像画像IM1をイメージセンサ25に生成させる(ステップS2)。例えば、昇降機構60は、焦点位置を含む所定の昇降範囲(フォーカス範囲)内で保持部90を移動させつつ、イメージセンサ25が順次に撮像画像IM1を生成する。なお、昇降機構60は撮像タイミングにおいて保持部90を停止させてもよい。これにより、複数のZ軸位置に対応した複数の撮像画像IM1を得ることができる。
【0070】
次に、制御部50は複数の撮像画像IM1に基づいてマスク特性を求める(ステップS3)。ここでは、マスク特性として投影像幅を求める。図8は、各撮像画像IM1のラインAにおける投影像の輝度分布を示している。より具体的には、図8は、焦点位置における輝度分布LD1と、焦点位置から+Z側および-Z側に10μmずつ離れたZ軸位置での輝度分布を示している。図8から理解できるように、焦点ずれが生じると、輝度分布が焦点ずれ量に応じて変動する。このため、各輝度分布に基づいて求められた投影像幅は互いに相違する。
【0071】
そこで、制御部50は複数の撮像画像IM1の各々の焦点評価値を算出する。焦点評価値とは、焦点がどの程度あっているかを示す指標であり、焦点評価値が高いほど、焦点があっている。焦点評価値は、例えば、撮像画像IM1の輝度分布をフーリエ変換して得られる周波数成分のうち、高周波成分で示される指標であってもよい。高周波成分が高いほど、輝度分布は急峻に変化しているので、投影像の輪郭は明瞭であり、焦点が合っていることになる。あるいは、焦点評価値として、撮像画像IM1のコントラストおよびシャープネスなどの種々の指標を採用してもよい。
【0072】
複数の撮像画像IM1は複数のZ軸位置に対応しているので、各撮像画像IM1の輝度分布に基づいて算出される焦点評価値もZ軸位置に対応している。同様に、各撮像画像IM1のラインAにおける輝度分布に基づいて算出される投影像幅もZ軸位置に対応している。図9は、Z軸位置と焦点評価値との関係、および、Z軸位置と投影像幅との関係を示すグラフである。図9の例では、近似曲線G1および近似曲線G2も示されている。近似曲線G1は、Z軸位置と焦点評価値との関係を示すプロット点に基づいて算出され、近似曲線G2は、Z軸位置と投影像幅との関係を示すプロット点に基づいて算出される。
【0073】
焦点評価値は、Z軸位置が焦点位置P0となるときに最大値をとる。そこで、まず、制御部50は焦点評価値が最大値となるZ軸位置(つまり、焦点位置P0)を求める。例えば、制御部50は複数のZ軸位置にそれぞれ対応した複数の焦点評価値に基づいて、最小二乗法などの近似手法により、近似曲線G1を算出する。そして、制御部50は近似曲線G1において焦点評価値が最大値FmaxとなるときのZ軸位置を焦点位置P0として算出する。
【0074】
次に、制御部50は焦点位置P0における投影像幅LWを求める。まず、制御部50は撮像画像IM1ごとに投影像幅を求める。これにより、複数のZ軸位置にそれぞれ対応した複数の投影像幅を得ることができる。次に、制御部50は複数のZ軸位置および複数の投影像幅に基づいて、最小二乗法などの近似手法により、近似曲線G2を算出する。そして、制御部50は近似曲線G2と焦点位置P0とに基づいて、焦点位置P0における投影像幅LWを算出する。
【0075】
次に、制御部50はマスク特性(ここでは投影像幅LW)に基づいてフォトマスク80の良否を判定する(ステップS4)。例えば、制御部50は、投影像幅LWと目標幅との差が所定の幅許容値以下であるか否かを判定し、該差が幅許容値よりも大きいときに、フォトマスク80は不良品であると判定する。幅許容値は例えば予め設定され、記憶部に記憶される。
【0076】
<実施の形態における効果>
以上のように、フォトマスク検査装置1によれば、照明部10は、露光装置1000の光に模した光L2を出射しており、また、フォトマスク検査装置1のシグマが露光装置1000のシグマと同じに設定される。これにより、露光装置1000における基板W上の光(投影像)を、イメージセンサ25の受光面で疑似的に再現することができる。このため、フォトマスク検査装置1は、基板W上の投影像に基づいて、フォトマスク80の良否を判定することができる。
【0077】
しかも、フォトマスク検査装置1によれば、混合部14が、互いに異なるピーク波長を有する複数の光L1を混合する。そして、照明部10がその混合光である光L2を、フォトマスク80に照射し、フォトマスク80を透過した光L2がイメージセンサ25の受光面に入射する。よって、撮像画像IM1には、複数のピーク波長を有する光L2によるフォトマスク80の投影像が含まれる。つまり、一度の撮像により、複数のピーク波長を有する光L2による投影像を含んだ撮像画像IM1を得ることができる。
【0078】
このため、特許文献1のように、互いに異なるピーク波長を有する光を順次に照射して得られた複数の撮像画像を合成する必要がない。よって、特許文献1とは異なって、撮像画像IM1においてピーク波長ごとの位置ばらつきが原理的に生じない。したがって、制御部50は高い精度で投影像幅を算出することができ、より高い検査精度でフォトマスク80を検査することができる。
【0079】
しかも、フォトマスク検査装置1によれば、各光源12が単一の半導体発光素子121を含んでいる。このため、特許文献2のようなダイオードアレイでの波長または位相のばらつきが原理的に生じず、各光源12はよりコヒーレントな光L1を出射することができる。よって、露光装置1000における回折現象と同等な回折現象を、フォトマスク80を透過する光L2に生じさせることができる。したがって、制御部50はより高い検査精度でフォトマスク80を検査することができる。
【0080】
また、単一の半導体発光素子121を含む光源12には、出射方向のばらつきも原理的に生じないので、ライトガイド16に入射する光のばらつきも抑制することができる。これによっても、制御部50はより高い検査精度でフォトマスク80を検査することができる。しかも、光源12の信頼性も高い。
【0081】
<マスク特性:欠陥輝度>
上述の例では、マスク特性として投影像幅を採用して、検査方法を説明した。しかしながら、マスク特性として、欠陥輝度を採用してもよい。図10は、欠陥D1を含む撮像画像IM1の一例を概略的に示す図である。図10では、欠陥D1は、フォトマスク80に形成された遮光膜の欠陥である。具体的には、欠陥D1は、遮光膜が適切に形成されずに光L2が透過した欠陥であり、白欠陥とも呼ばれる。
【0082】
ここでは、欠陥D1の輝度値を求める。以下では、欠陥D1の輝度値を欠陥輝度とも呼ぶ。この欠陥輝度も保持部90のZ軸方向の位置によって変動するので、制御部50は、投影像幅と同様に、複数の撮像画像IM1に基づいて欠陥輝度を求めるとよい。
【0083】
具体的には、ステップS3において、まず、制御部50は欠陥輝度および焦点評価値を撮像画像IM1ごとに求める。これにより、複数のZ軸位置にそれぞれ対応した複数の欠陥輝度、および、複数のZ軸位置にそれぞれ対応した複数の焦点評価値を得ることができる。図11は、Z軸位置と焦点評価値との関係、および、Z軸位置と欠陥輝度との関係を示すグラフである。図11の例では、近似曲線G1および近似曲線G3も示されている。近似曲線G3は、Z軸位置と欠陥輝度とのプロット点に基づいて算出される。
【0084】
制御部50は上記と同様に、近似曲線G1に基づいて焦点評価値が最大値Fmaxとなる焦点位置P0を求める。次に、制御部50は複数のZ軸位置および複数の欠陥輝度に基づいて、最小二乗法などの近似手法により、近似曲線G3を算出する。そして、制御部50は近似曲線G3と焦点位置P0とに基づいて、焦点位置P0における欠陥輝度DLを算出する。
【0085】
次に、ステップS4にて、制御部50はマスク特性(ここでは欠陥輝度DL)に基づいてフォトマスク80の良否を判定する。例えば、制御部50は、欠陥輝度DLが所定の欠陥許容値以下であるか否かを判定し、欠陥輝度DLが欠陥許容値よりも大きいときに、フォトマスク80は不良品であると判定する。
【0086】
以上のように、フォトマスク検査装置1は欠陥D1の輝度値に基づいてフォトマスク80の良否を判定することができる。なお、上述の例では、欠陥D1として白欠陥を採用して説明したが、欠陥D1として例えば黒欠陥などの種々の欠陥を採用することもできる。
【0087】
<露光装置1000における投影像のばらつき>
フォトマスク検査装置1は、露光装置1000における基板W上のパターン状の光の輝度分布(投影像)を、イメージセンサ25の受光面に疑似的に再現する。つまり、フォトマスク検査装置1において焦点ずれが生じたときの撮像画像IM1は、露光装置1000において同様の焦点ずれが生じたときの基板W上の投影像に相当する。このため、焦点ずれに起因した基板W上の投影像のばらつきを、フォトマスク検査装置1で評価することもできる。
【0088】
例えば、図9のZ軸位置と投影像幅との関係は、露光装置1000におけるZ軸位置と投影像幅との関係とみなすことができる。つまり、露光装置1000において、対物レンズ1210に対するフォトマスク80の位置(Z軸位置)と、基板W上の投影像幅との関係は、図9の関係に相当する。
【0089】
露光装置1000の機械誤差等によって生じ得る焦点ずれ量ΔZ(最大値)は、予め求めることができるので、露光装置1000において生じる投影像幅のばらつきを、図9の関係に基づいて求めることができる。焦点ずれ量ΔZは例えば予め設定されて、記憶部に記憶されてもよく、あるいは、ユーザが不図示の入力デバイス(例えばキーボードもしくはマウス)を用いて焦点ずれ量ΔZを入力してもよい。
【0090】
制御部50は、焦点位置P0から-Z側に焦点ずれ量ΔZだけずれた位置と、焦点位置P0から+Z側に焦点ずれ量ΔZだけずれた位置との間の範囲における、投影像幅の最大値LWmaxと最小値LWminとを、近似曲線G2に基づいて算出する。この最小値LWminから最大値LWmaxまでの範囲が、露光装置1000において生じる投影像幅のばらつきに相当する。
【0091】
制御部50は投影像幅の最小値LWminおよび最大値LWmaxに基づいて、フォトマスク80の良否を判定してもよい。具体的には、制御部50は最小値LWminが基板W上の投影像幅のばらつきの許容下限値以上であるか否か、および、最大値LWmaxが許容上限値以下であるか否かを判定する。制御部50は、最小値LWminが許容下限値未満であるとき、および/または、最大値LWmaxが許容上限値よりも大きいときに、フォトマスク80が不良品であると判定する。
【0092】
同様に、制御部50は、焦点ずれ量ΔZに起因した欠陥輝度のばらつきを算出してもよい。具体的には、制御部50は、焦点位置P0から-Z側に焦点ずれ量ΔZだけずれた位置と、焦点位置P0から+Z側に焦点ずれ量ΔZだけずれた位置との間の範囲における、欠陥輝度の最大値DLmaxと最小値DLminとを、近似曲線G3に基づいて算出する(図11も参照)。この最小値DLminから最大値DLmaxまでの範囲が、露光装置1000において生じる欠陥輝度のばらつきに相当する。
【0093】
制御部50は、欠陥輝度の最大値DLmaxに基づいて、フォトマスク80の良否を判定してもよい。具体的には、制御部50は、最大値DLmaxが欠陥許容値以下であるか否かを判定する。制御部50は、最大値DLmaxが欠陥許容値よりも大きいときに、フォトマスク80が不良品であると判定してもよい。
【0094】
ここで、課題を解決するための手段の欄における用語と、発明を実施するための形態の欄における用語を対応付けておく。第1光源は光源12a~12cのいずれか一つに相当し、第2光源は光源12a~12cのうち第1光源とは異なる一つに相当する。第1半導体発光素子は、第1光源に属する半導体発光素子121に相当し、第2半導体発光素子は、第2光源に属する半導体発光素子121に相当する。第1光は、第1半導体発光素子が出射する光L1に相当し、第2光は、第2半導体発光素子が出射する光L1に相当する。
【0095】
以上のように、フォトマスク検査装置1は詳細に説明されたが、上記した説明は、全ての局面において例示であって、この開示がそれに限定されるものではない。また、上述した各種変形例は、相互に矛盾しない限り組み合わせて適用可能である。そして、例示されていない多数の変形例が、この開示の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0096】
1 フォトマスク検査装置
10 照明部
12,12a~12c 第1光源、第2光源(光源)
121 第1半導体発光素子、第2半導体発光素子
14 混合部
17 照明光学系
21 結像光学系
22 対物レンズ
25 イメージセンサ
50 演算処理部(制御部)
80 フォトマスク
90 保持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11