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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139440
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】車室内制御装置
(51)【国際特許分類】
   G10L 15/22 20060101AFI20230927BHJP
   G10L 15/00 20130101ALI20230927BHJP
【FI】
G10L15/22 453
G10L15/00 200J
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044976
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105980
【弁理士】
【氏名又は名称】梁瀬 右司
(74)【代理人】
【識別番号】100121027
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100178995
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 陽介
(72)【発明者】
【氏名】塩田 早希
(72)【発明者】
【氏名】中田 千秋
(72)【発明者】
【氏名】築道 真司
(57)【要約】
【課題】ユーザの発話に応じて車載機器を制御する場合に、ユーザの発話に含まれる数値の動作レベルと乖離しない制御を実行し、ユーザに違和感を与えないようにする。
【解決手段】エアコンユニット11を制御する場合に、制御可能範囲(18℃~32℃)の下限の第1閾値よりも小さい複数の数値それぞれに対応する発話コマンド、及び、上限の第2閾値よりも大きい複数の数値それぞれに対応する発話コマンドをメモリ22に記憶させ、音声認識部21の照合判定により、ユーザの発話に含まれる数値がメモリ22に記憶された第1閾値よりも小さい数値のうちのいずれかと一致すれば、空調温度を最低温度(第1閾値の温度)に制御する第1の制御を実行し、音声認識部21の照合判定より、ユーザの発話に含まれる数値がメモリ22に記憶された第2閾値よりも大きい数値のうちのいずれかと一致すれば、空調温度を最高温度(第2閾値の温度)に制御する第2の制御を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの発話を認識し、車室内に設置された車載機器を、認識した当該発話に含まれる数値に対応する動作レベルに制御する車室内制御装置において、
所定範囲内の連続する数値それぞれに対応する複数の動作レベルに前記車載機器を制御するために、前記複数の動作レベルそれぞれと対応する数値の発話コマンドを記憶した記憶部と、
前記ユーザの発話に含まれる数値を取得し、取得した前記ユーザの発話に含まれる数値が、前記記憶部に記憶された前記複数の発話コマンドの数値のうちのいずれかと一致するかどうか照合判定する判定部と、
前記判定部により取得された前記ユーザの発話に含まれる数値が、前記記憶部に記憶された前記複数の発話コマンドの数値のうちのいずれかと一致すると判定されたときに、前記判定部により取得された前記ユーザの発話に含まれる数値に対応する動作レベルに前記車載機器を制御する制御部とを備え、
前記記憶部は、
前記所定範囲の下限の数値である第1閾値よりも小さい複数の数値それぞれの発話コマンド、及び、前記所定範囲の上限の数値である第2閾値よりも大きい複数の数値それぞれの発話コマンドを記憶し、
前記制御部は、
前記判定部により、取得した前記ユーザの発話に含まれる数値が、前記記憶部に記憶された前記第1閾値よりも小さい数値のうちのいずれかと一致すると判定されたときに、前記車載機器を前記第1閾値に対応する動作レベルに制御する第1の制御、
及び、
前記判定部により、取得した前記ユーザの発話に含まれる数値が、前記記憶部に記憶された前記第2閾値よりも大きい数値のうちのいずれかと一致すると判定されたときに、前記車載機器を前記第2閾値に対応する動作レベルに制御する第2の制御
のうち少なくともいずれか一方を実行する
ことを特徴とする車室内制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記判定部により、取得した前記ユーザの発話に含まれる数値が、前記記憶部に記憶された前記第1閾値よりも小さい数値のうちのいずれかと一致すると判定されたときに、前記車載機器を、前記第1の制御に代えて、予め設定された前記第1閾値よりも小さい数値に対応する動作レベルに制御する第3の制御、
及び、
前記判定部により、取得した前記ユーザの発話に含まれる数値が、前記記憶部に記憶された前記第2閾値よりも大きい数値のうちのいずれかと一致すると判定されたときに、前記車載機器を、前記第2の制御に代えて、予め設定された前記第2閾値よりも大きい数値に対応する動作レベルに制御する第4の制御
のうち少なくともいずれか一方を実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の車室内制御装置。
【請求項3】
前記車載機器は空調装置であり、
前記記憶部に記憶された前記複数の発話コマンドと対応する前記数値は、前記空調装置による車室内の空調温度である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車室内制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ユーザの発話を認識し、車室内に設置された車載機器を、認識した当該発話に含まれる数値に対応する動作レベルに制御する車室内制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人(ユーザ)の発する音声を認識する音声認識装置において、例えば特許文献1に記載のように、ユーザが発した音声を認識する際に、ユーザの口周辺を撮影した平面画像、及び立体画像を用いて、音声認識することにより母音及び子音を推定して音声認識の精度の向上を図ることが行われている。
【0003】
ところで、車両用の空調装置(以下、エアコンともいう)には、車両ユーザの音声により車室内の空調制御を行えるようにしたものがある。この種の装置の例として、特許文献1に記載のような音声認識部と、該音声認識部が認識した操作指示に従って空調制御を行う制御部とを備えたものがある。
【0004】
近年では、ディスプレイオーディオ(Display Audio/以下、DAとも称する)と呼ばれるディスプレイを備えたカーオーディオシステムが車両に搭載されるようになっており、このDAによって、チューナがFM・AMラジオ放送を受信してスピーカから出力し、USB機器に保存した動画をディスプレイに表示し音楽を再生して出力するほか、スマートホン内の指定のアプリをBluetooth(登録商標)で接続してスピーカから出力し、さらにはスマートホン内の対応するナビアプリを音声で操作してディスプレイにナビ画像を表示するとともに音声でナビ経路をガイダンスするなどの機能を備えたものもある。そして、上記したDAの操作を音声入力で行うことも可能であることから、このようなDAの音声入力機能を、上記した車室内の空調制御の操作に利用することも考えられている。
【0005】
この場合、一般的に車載通信として搭載されるCAN(Controller Area Network)プロトコルによる通信システムが使用され、DAの制御を司るDAECU(Electronic Control Unit)と、車室内の空調制御を司るエアコンECUとの間において、通信バスを介して所定の通信周期で行われるシリアル通信により、音声入力された空調温度にエアコンが制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-60693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、音声入力された空調温度にエアコンを制御する場合の音声認識において、上記した特許文献1に記載のように、ユーザの口周辺の平面画像及び立体画像から母音成分が同じ異なる子音を推定することによって誤認を抑制するとしても、日本語の発音・読みの紛らわしさに起因する誤認が生じ得る。
【0008】
例えば、「10(じゅう)」と「20(にじゅう)」は発音・読みが紛らわしいことから、口周辺の平面画像及び立体画像をもってしても、音声入力された「17℃(じゅう・なな・ど)」を「27℃(にじゅう・なな・ど)」に誤認したり、「16℃(じゅう・ろく・ど)」を「26℃(にじゅう・ろく・ど)」と誤認したりする。
【0009】
また、車載用のエアコンによっては、制御可能な空調温度が所定温度範囲(例えば18℃~32℃)に制限し、特許文献1に記載のような音声認識装置よりも簡易な構成のローカル音声認識装置を搭載して、入力音声におり制御可能なエアコンの構成の簡素化を図ることも行われている。この種のローカル音声認識装置では、所定温度範囲である18℃~32℃の数値それぞれに対応する動作レベルにエアコンを制御するために、複数の動作レベルそれぞれと対応する18~32の数値それぞれの発話コマンドを記憶部に予め記憶させておき、ユーザの発話に含まれる数値を取得して、取得したユーザの発話に含まれる数値が、記憶部に記憶された18~32の数値のうちのいずれかと一致するかどうか照合判定し、いずれかと一致すると判定したときに、一致すると判定した数値(空調温度)に対応する動作レベルにエアコンを制御する。
【0010】
ところが、ローカル音声認識装置による制御機能を有するエアコンを搭載した車両の場合、車両に乗車しているユーザが当該車両用のエアコンが所定温度範囲内でしか温度制御できないことを知らないことが多々あるため、所定温度範囲外の下側や上側に超える空調温度を音声で指示したときに、音声入力された温度に制御しようとしても入力された音声を誤認して、エアコンがユーザの意図しない間違った空調温度に制御されてしまうおそれがある。
【0011】
具体的には、外気温に応じて車室内温度が高くなっていて車室内を急冷したいために、車両に乗車しているユーザが空調温度を所定温度範囲の下限値である18℃よりも低い17℃に下げるべく「17℃」と発話したときに、上記したように「17℃(じゅう・なな・ど)」と「27℃(にじゅう・なな・ど)」とが紛らわしい上に、ローカル音声認識装置の記憶部には制御可能な温度範囲である18℃~32℃の数値に対応する発話コマンドしか記憶されていないため、ローカル音声認識装置は、ユーザが発した「17℃」を、発音・読みが近く記憶部に記憶されている「27℃」と誤判定し、その結果、エアコンがユーザの意図する17℃ではなく27℃に制御されてしまい、車室内温度がいっこうに下がらないことからユーザがエアコンの故障を疑ったり違和感を覚えたりするという不都合が生じる。
【0012】
また、乗車中のユーザが空調温度を所定温度範囲の下限値である18℃よりも更に低い16℃や15℃,14℃に下げたいと思って「16℃」、「15℃」、「14℃」と発話したときにも、同様の不都合が生じる。
【0013】
本発明は、ユーザの発話に応じて、所定範囲内の連続する数値それぞれに対応する複数の動作レベルに車載機器を制御する場合に、ユーザの発話に含まれる数値の動作レベルと乖離しない制御を実行し、ユーザに違和感を与えないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記した目的を達成するために、本発明の車室内制御装置は、ユーザの発話を認識し、車室内に設置された車載機器を、認識した当該発話に含まれる数値に対応する動作レベルに制御する車室内制御装置において、所定範囲内の連続する数値それぞれに対応する複数の動作レベルに前記車載機器を制御するために、前記複数の動作レベルそれぞれと対応する数値の発話コマンドを記憶した記憶部と、前記ユーザの発話に含まれる数値を取得し、取得した前記ユーザの発話に含まれる数値が、前記記憶部に記憶された前記複数の発話コマンドの数値のうちのいずれかと一致するかどうか照合判定する判定部と、前記判定部により取得された前記ユーザの発話に含まれる数値が、前記記憶部に記憶された前記複数の発話コマンドの数値のうちのいずれかと一致すると判定されたときに、前記判定部により取得された前記ユーザの発話に含まれる数値に対応する動作レベルに前記車載機器を制御する制御部とを備え、前記記憶部は、前記所定範囲の下限の数値である第1閾値よりも小さい複数の数値それぞれの発話コマンド、及び、前記所定範囲の上限の数値である第2閾値よりも大きい複数の数値それぞれの発話コマンドを記憶し、前記制御部は、前記判定部により、取得した前記ユーザの発話に含まれる数値が、前記記憶部に記憶された前記第1閾値よりも小さい数値のうちのいずれかと一致すると判定されたときに、前記車載機器を前記第1閾値に対応する動作レベルに制御する第1の制御、及び、前記判定部により、取得した前記ユーザの発話に含まれる数値が、前記記憶部に記憶された前記第2閾値よりも大きい数値のうちのいずれかと一致すると判定されたときに、前記車載機器を前記第2閾値に対応する動作レベルに制御する第2の制御のうち少なくともいずれか一方を実行することを特徴としている。
【0015】
このような構成によれば、制御可能な所定範囲の下限の数値である第1閾値よりも小さい複数の数値それぞれに対応する発話コマンド、及び、所定範囲の上限の数値である第2閾値よりも大きい複数の数値それぞれに対応する発話コマンドを記憶部に記憶させておき、判定部により、取得したユーザの発話に含まれる数値が、記憶部に記憶された第1閾値よりも小さい数値のうちのいずれかと一致すると照合判定されたときに、車載機器を第1閾値に対応する動作レベルに制御する第1の制御、及び、判定部により、取得したユーザの発話に含まれる数値が、記憶部に記憶された第2閾値よりも大きい数値のうちのいずれかと一致すると照合判定されたときに、車載機器を第2閾値に対応する動作レベルに制御する第2の制御のうち、少なくともいずれか一方の制御が制御部により実行される。
【0016】
そのため、判定部による照合判定の結果、第1の制御及び第2の制御の少なくともいずれか一方の制御が制御部により実行されることから、所定範囲内の連続する数値それぞれに対応する複数の動作レベルに車載機器を制御する場合に、ユーザの発話に含まれる数値の動作レベルと乖離しない制御を実行することが可能になり、ユーザが車載機器の故障を疑ったり違和感を覚えたりするなどの不都合を防止できる。このとき、制御部より、第1の制御及び第2の制御の両方の制御を実行するようにしてもよい。
【0017】
また、前記制御部は、前記制御部は、前記判定部により、取得した前記ユーザの発話に含まれる数値が、前記記憶部に記憶された前記第1閾値よりも小さい数値のうちのいずれかと一致すると判定されたときに、前記車載機器を、前記第1の制御に代えて、予め設定された前記第1閾値よりも小さい数値に対応する動作レベルに制御する第3の制御、及び、前記判定部により、取得した前記ユーザの発話に含まれる数値が、前記記憶部に記憶された前記第2閾値よりも大きい数値のうちのいずれかと一致すると判定されたときに、前記車載機器を、前記第2の制御に代えて、予め設定された前記第2閾値よりも大きい数値に対応する動作レベルに制御する第4の制御のうち少なくともいずれか一方を実行するとしてもよい。
【0018】
このような構成によれば、判定部による照合判定の結果、第1の制御及び第2の制御に代えて、第3の制御及び第4の制御の少なくともいずれか一方の制御が制御部により実行されるため、所定範囲内の連続する数値それぞれに対応する複数の動作レベルに車載機器を制御する場合に、ユーザの発話に含まれる数値の動作レベルと乖離しない制御を実行することができ、ユーザに違和感を与えるのを防止することができる。このとき、制御部より、第3の制御及び第4の制御の両方の制御を実行するようにしてもよい。
【0019】
また、前記車載機器は空調装置であり、前記記憶部に記憶された前記複数の発話コマンドと対応する前記数値は、前記空調装置による車室内の空調温度であるとよい。
【0020】
こうすると、車載用空調装置を、所定の温度範囲内の連続する温度である数値それぞれに対応する複数の動作レベルに制御する場合に、ユーザの発話に含まれる温度である数値が、所定の温度範囲の下限を下回ったり、上限を上回ったりしていても、車載用空調装置を、ユーザの発話に含まれる数値の空調温度と乖離しない状態に制御することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ユーザの発話に応じて、所定範囲内の連続する数値それぞれに対応する複数の動作レベルに車載機器を制御する場合に、ユーザの発話に含まれる数値が、所定範囲の下限を下回ったり、上限を上回ったりしていても、ユーザの発話に含まれる数値の動作レベルと乖離しない制御を実行することができ、ユーザに違和感を与えるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の車室内制御装置の一実施形態のブロック図である。
図2図1の動作説明図である。
図3図1の動作説明図である。
図4図1の動作説明用フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の車室内制御装置の一実施形態について、図1ないし図4を参照して詳述する。
【0024】
(構成)
本実施形態における車室内制御装置は、図1に示すように構成されている。すなわち、車室内制御装置1は、ディスプレイオーディオ(Display Audio/以下では、DAと称する)の制御を司るDA制御手段であるマイクロコンピュータ構成のDAECU2と、エアコンの制御を司るエアコン制御手段であるマイクロコンピュータ構成のエアコンECU3と、DAECU2とエアコンECU3との間においてCAN(Controller Area Network)プロトコルによる所定の通信周期(60msec)でのシリアル通信(以下では、CAN通信とも称する)を行うための通信バス4とを備える。なお、エアコン(車載用空調装置)による空調温度の制御範囲は18℃~32℃に制限されており、エアコンECU3により、空調温度が18℃~32℃の範囲で1℃ごとの動作レベルである空調温度になるよう、エアコンが制御される。
【0025】
また、DAECU2は、マイク6を通して入力されるユーザの発話を認識し発話に含まれる空調温度の数値を照合判定する音声認識部21(本発明における「判定部」に相当)と、空調温度に対応する数値それぞれの発話コマンドを予め記憶したメモリ22(本発明における「記憶部」に相当)と、スピーカ7を介して音声合成した音声を出力する音声出力部23と、通信バス4を介して情報を送受信するCANプロトコルによるCAN通信を行うDA通信部24とを備える。ここで、マイク6は、車両のハンドル等に配置されたマイクスイッチの操作により動作可能になる。
【0026】
メモリ22には、図2に示すように、空調温度の制御範囲である18℃~32℃の1℃ごとに対応する数値それぞれの発話コマンドが予め記憶されている。マイク6を通してユーザにより制御すべき空調温度の数値を含む音声が発せられると、音声認識部21により、発話に含まれる空調温度の数値が認識され、メモリ22に記憶された発話コマンドの数値のうちのいずれかと一致するかどうか音声認識部21により照合判定され、一致すると判定された数値(空調温度)情報がDA通信部24により、CAN通信の送信情報として通信バス4を介して要送信される。
【0027】
このとき、メモリ22には、図2に示すように、空調温度の制御範囲である18℃~32℃の数値18~32の発話コマンドであるコマンド18~コマンド32のほか、制御範囲の下限の第1閾値である18よりも小さい17~10の発話コマンドであるコマンド17~コマンド10、及び、制御範囲の上限の第2閾値である32よりも大きい33~39の発話コマンドであるコマンド33~コマンド39も記憶されている。なお、発話コマンドは、16ビット等の複数のビット構成であるとよく、必ずしも複数のビット構成の発話コマンドに限定されるものでもない。
【0028】
エアコンECU3は本発明における「制御部」に相当し、このエアコンECU3は、通信バス4を介して情報を送受信するCANプロトコルによるシリアル通信を行うAC通信部31を備え、このAC通信部31により、DA通信部24から送信される音声認識部21による照合判定結果の数値(空調温度)に関する情報を受信し、車室内温度を検出する温度センサ9による検出温度情報を取り込み、インストルメントパネルなどに配置されたエアコン操作部10のスイッチ操作に応じて車載機器である車載用空調装置に相当するエアコンユニット11の制御を行うほか、音声認識部21によりユーザの発話に含まれる空調温度の数値が認識されて、DA通信部24からAC通信部31にその数値情報(空調温度)が送信されると、AC通信部31が受信した数値情報(空調温度)に応じて、エアコンユニット11を制御する。
【0029】
DAECU2は基本的にオーディオシステム8の制御を行うものであり、音楽を再生してスピーカ7から出力させ、オーディオシステム8が備えるディスプレイ8aにオーディオ情報を表示させるオーディオ制御、ナビゲーションの音声ガイダンスをスピーカ7から出力させ、ディスプレイ8aにナビゲーション経路を地図上に表示させるナビゲーション制御や、その他の音声出力や画面表示の制御を行う。
【0030】
ところで、AC通信部31からDA通信部24に送信される情報には、図3に示すようなエアコンユニット11の設定温度に関する音声フィードバック情報が含まれている。例えば、ユーザがエアコンユニット11による空調温度を23℃に制御するために「23℃」と発話すると、エアコンECU3により空調温度が23℃になるようにエアコンユニット11が制御され、AC通信部31からDA通信部24に送信されるフィードバック音声情報に基づき、「23℃に設定します」というフィードバック音声が音声出力部23により合成されてスピーカ7から出力される。
【0031】
このような構成の車室内制御装置1より、ユーザの発話に基づきエアコンユニット11を制御する場合、例えばユーザがエアコンユニット11による空調温度を20℃に制御するために「20℃」と発話すると、メモリ22に記憶された発話コマンドのうち、当該発話に含まれる数値「20」の発話コマンドと一致するものがあるかどうか音声認識部21により判定され、「20」の数値(空調温度)が一致することから、数値「20」に関する情報がDA通信部24からAC通信部31に送信され、AC通信部31により「20」の数値(空調温度)に関する情報が受信されると、温度センサ9による車室内温度が20℃でない場合には、エアコンECU3により空調温度が20℃になるようにエアコンユニット11が制御され、AC通信部31からDA通信部24に「20℃に設定します」というフィードバック音声情報が送信され、「20℃に設定します」というフィードバック音声が音声出力部23により合成されてスピーカ7からユーザに向けて出力される。
【0032】
また、ユーザがエアコンユニット11による空調温度を下限の第1閾値である18℃に制御するために「18℃」と発話すると、上記した「20℃」の制御と同様にして、エアコンユニット11が空調温度を制御可能な最低温度である18℃に制御されるとともに、音声出力部23により「最低温度に設定します」という音声が合成されてスピーカ7からユーザに向けて出力される。さらに、ユーザがエアコンによる空調温度を第2閾値である32℃に制御するために「32℃」と発話すると、上記した「20℃」の制御と同様にして、エアコンユニット11が空調温度を制御可能な最高温度である32℃に制御されるとともに、音声出力部23により「最高温度に設定します」という音声が合成されてスピーカ7からユーザに向けて出力される。
【0033】
一方、ユーザがエアコンユニット11による空調温度を下限の第1閾値である18℃よりも低い例えば17℃に制御するために「17℃」と発話すると、メモリ22に記憶された発話コマンドのうち、当該発話に含まれる数値「17」の発話コマンドと一致するものがあるかどうか音声認識部21により判定され、「17」の数値(空調温度)が一致することから、数値「17」に関する情報がDA通信部24からAC通信部31に送信され、AC通信部31により「17」の数値(空調温度)に関する情報が受信されると、受信された「17」という空調温度の数値が制御可能な温度範囲の下限の第1閾値である18℃を下回る数値であることから、エアコンECU3により、空調温度を制御可能な最低温度である18℃になるようエアコンユニット11に対する第1の制御が実行されるとともに、図3に示すように、音声出力部23により「最低温度に設定します」というフィードバック音声が合成されてスピーカ7からユーザに向けて出力される。
【0034】
なお、ユーザがエアコンによる空調温度を下限の第1閾値である18℃よりも低い16℃,15℃,14℃,…,10℃に制御するために、「16℃」、「15℃」、…、「10℃」と発話した場合も、上記した「17℃」を発話した場合と同様に18℃に制御する第1の制御が実行され、音声出力部23により「最低温度に設定します」というフィードバック音声が合成されてスピーカ7からユーザに向けて出力される。
【0035】
さらに、ユーザがエアコンユニット11による空調温度を上限の第2閾値である32℃よりも高い例えば33℃に制御するために「33℃」と発話すると、メモリ22に記憶された発話コマンドのうち、当該発話に含まれる数値「33」の発話コマンドと一致するものがあるかどうか音声認識部21により判定され、「33」の数値(空調温度)が一致することから、数値「33」に関する情報がDA通信部24からAC通信部31に送信され、AC通信部31により「33」の数値(空調温度)に関する情報が受信されると、受信された「33」という空調温度の数値が制御可能な温度範囲下の上の第2閾値である32℃を上回る数値であることから、エアコンECU3により、空調温度を制御可能な最高温度である32℃になるようエアコンユニット11に対する第2の制御が実行されるとともに、図3に示すように、音声出力部23により「最高温度に設定します」というフィードバック音声が合成されてスピーカ7からユーザに向けて出力される。
【0036】
なお、ユーザがエアコンユニット11による空調温度を、上限の第2閾値である32℃よりも高い34℃,35℃,36℃,…,39℃に制御するために、「34℃」、「35℃」、…、「39℃」と発話した場合も、上記した「33℃」を発話した場合と同様に32℃に制御する第2の制御が実行され、図3に示すように音声出力部23により「最高温度に設定します」というフィードバック音声が合成されてスピーカ7からユーザに向けて出力される。
【0037】
(動作)
上記した構成の車室内制御装置1によるエアコンの制御手順について、図4を参照して説明する。
【0038】
いま、図4に示すように、ユーザによりエアコンユニット11による空調温度を制御する音声が発話されると、音声認識部21によりユーザが発話した音声の認識処理が行われ(ステップS1)、ユーザの発話に空調温度を表わす数値が含まれているか否かが判定され(ステップS2)、空調温度を表わす数値が含まれておらずステップS2の判定結果がNOであれば、ステップS1に戻り、空調温度を表わす数値が含まれ、ステップS2の判定結果がYESであれば、その空調温度を表わす数値が、メモリ22に記憶された発話コマンドのうち制御可能な温度範囲の下限に相当する第1閾値である「18」以上の数値か否かの照合判定がなされる(ステップS3)。
【0039】
そして、ステップS2で判定された数値が制御可能な温度範囲の下限の第1閾値である「18」以上であれば、ステップS3の判定結果がYESとなり、次のステップS4に移行し、ステップS2で判定された数値が制御可能な温度範囲の上限に相当する第2閾値である「32」以下か否かの判定がなされ(ステップS4)、ステップS2で判定された数値が制御可能な温度範囲の上限の第2閾値である「32」以下であれば、ステップS4の判定結果がYESとなり、ステップS5に移行する。
【0040】
ステップS5では、温度センサ9により検出される車室内温度が、ユーザが制御を希望して発話した空調温度であるかどうかの判定がなされ(ステップS5)、この判定結果がYESつまり、現在の車室内温度がユーザの希望温度であるため、エアコン制御を行う必要がないことからエアコン制御は行われず、そのまま動作は終了する。
【0041】
一方、温度センサ9による現在の車室内温度がユーザの希望温度でなければ、ステップS5の判定結果がNOとなり、空調温度がユーザの希望温度である例えば25℃になるように、エアコンECU3によりエアコンユニット11が制御されて、空調温度がユーザの希望温度になるよう制御され(ステップS6)、エアコンECU3のAC通信部31からDAECU2のDA通信部24にフィードバック音声情報が送信され、スピーカ7から「25℃に設定します」といったフィードバック音声が出力され(ステップS7)、その後動作は終了する。
【0042】
ところで、ステップS2で判定された数値が制御可能な温度範囲の下限の第1閾値である「18」よりも小さく、ステップS3の判定結果がNOの場合には、ステップS8に移行し、空調温度が制御可能な温度範囲の最低温度である18℃(第1閾値)になるように、エアコンECU3によりエアコンユニット11が制御され、第1の制御が実行された後(ステップS8)、ステップS7に移行して、エアコンECU3のAC通信部31からDAECU2のDA通信部24にフィードバック音声情報が送信され、スピーカ7から「最低温度に設定します」というフィードバック音声が出力され(ステップS7)、その後動作は終了する。
【0043】
また、ステップS2で判定された数値が制御可能な温度範囲の上限の第2閾値である「32」よりも大きく、ステップS4の判定結果がNOの場合には、ステップS9に移行し、空調温度が制御可能な温度範囲の最高温度である32℃(第2閾値)になるように、エアコンECU3によりエアコンユニット11が制御され、第2の制御が実行された後(ステップS9)、ステップS7に移行して、エアコンECU3のAC通信部31からDAECU2のDA通信部24にフィードバック音声情報が送信され、スピーカ7から「最高温度に設定します」というフィードバック音声が出力され(ステップS7)、その後動作は終了する。
【0044】
このように、エアコンユニット11を制御可能な温度範囲(18℃~32℃)の下限の数値である第1閾値「18」よりも小さい複数の数値それぞれに対応する発話コマンド、及び、上限の数値である第2閾値「32」よりも大きい複数の数値それぞれに対応する発話コマンドをメモリ22に記憶させておき、音声認識部21より、ユーザの発話に含まれる数値がメモリ22に記憶された第1閾値「18」よりも小さい数値のうちのいずれかと一致すると照合判定されたときには、エアコンユニット11による空調温度を第1閾値「18」、つまり最低温度に制御する第1の制御が実行され、音声認識部21より、ユーザの発話に含まれる数値がメモリ22に記憶された第2閾値「32」よりも大きい数値のうちのいずれかと一致すると照合判定されたときには、エアコンユニット11による空調温度を第2閾値「32」、つまり最高温度に制御する第2の制御が実行される。なお、音声認識部21より、ユーザの発話に含まれる数値がメモリ22に記憶された第1閾値「18」から第2閾値「32」の範囲内の発話コマンドと一致するときには、エアコンユニット11による空調温度が18℃~32℃の範囲内の温度になるよう制御される。
【0045】
したがって、上記した実施形態によれば、音声認識部21による照合判定の結果、第1の制御及び第2の制御がエアコンECU3により実行されるため、18℃~32℃の温度範囲内の数値それぞれに対応する空調温度になるようエアコンユニット11を制御する場合に、ユーザの発話に含まれる数値と対応する空調温度と乖離しない制御を実行することができ、ユーザがエアコンユニット11の故障を疑ったり違和感を覚えたりするなどの不都合を未然に防止することが可能になる。
【0046】
また、本発明の他の実施形態として、上記した第1の制御、第2の制御に代わり、
(1)音声認識部21より、ユーザの発話に含まれる数値がメモリ22に記憶された第1閾値「18」よりも小さい数値のうちのいずれかと一致すると照合判定されたときに、第1閾値「18」より小さい数値のうち予め設定された数値の温度(例えば、16℃)になるように、エアコンユニット11による空調温度を制御する第3の制御、
(2)音声認識部21より、ユーザの発話に含まれる数値がメモリ22に記憶された第2閾値「32」よりも大きい数値のうちのいずれかと一致すると照合判定されたときに、第2閾値「32」より大きい数値のうち予め設定された数値の温度(例えば、34℃)になるように、エアコンユニット11による空調温度を制御する第4の制御、
を実行するようにしてもよい。
【0047】
また、上記した第1の制御、第2の制御のうちいずれか一方の制御のみを実行するようにしてもよく、第3の制御、第4の制御のうちいずれか一方の制御のみを実行するようにしてもよい。
【0048】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行なうことが可能である。
【0049】
例えば、上記した実施形態では、車載機器である車載用空調装置に相当するエアコンユニット11を制御対象とした場合について説明したが、制御対象は空調装置に限定されるものではなく、車室内の照明装置であってその明るさを制御する場合のほか、DAECU2によるナビゲーションの音声ガイダンスの音量を制御する場合などにも、本発明を適用することが可能である。
【0050】
また、上記した実施形態では、エアコンECU3によりエアコンユニット11を制御した結果を、例えば「20℃に設定します」等のフィードバック音声をユーザに向けて出力するようにしたが、このようなフィードバック音声以外のメロディ音や警告音等でユーザにフィードバックするようにしてもよく、ディスプレイ8aの表示によりフィードバックするようにしてもよい。
【0051】
また、車室内制御装置1の構成は、図1に示すものに限定されないのは勿論であり、DAを用いた音声認識に限るものではない。
【0052】
そして、本発明は、ユーザの発話を認識し、車室内に設置された車載機器を、認識した当該発話に含まれる数値に対応する動作レベルに制御する車室内制御装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 …車室内制御装置
3 …エアコンECU(制御部)
11 …エアコンユニット(車載機器)
21 …音声認識部(判定部)
22 …メモリ(記憶部)
図1
図2
図3
図4