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特開2023-139448製剤、製剤の作成方法及びイオン液体製剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139448
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】製剤、製剤の作成方法及びイオン液体製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/375 20060101AFI20230927BHJP
   A61K 31/4415 20060101ALI20230927BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230927BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20230927BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20230927BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
A61K31/375
A61K31/4415
A61K9/08
A61K9/06
A61K9/70 401
A61P39/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044989
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】522114656
【氏名又は名称】杉林 堅次
(71)【出願人】
【識別番号】522113121
【氏名又は名称】草野 京司
(74)【代理人】
【識別番号】100141427
【弁理士】
【氏名又は名称】飯村 重樹
(72)【発明者】
【氏名】押坂 勇志
(72)【発明者】
【氏名】森 健二
(72)【発明者】
【氏名】武井 千弥
(72)【発明者】
【氏名】杉林 堅次
(72)【発明者】
【氏名】河原 清章
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA08
4C076AA14
4C076AA72
4C076BB21
4C076BB31
4C076CC24
4C076DD38
4C076FF34
4C076FF36
4C076FF65
4C086AA01
4C086BA18
4C086BC18
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA56
4C086MA63
4C086NA03
4C086NA11
4C086ZC37
(57)【要約】
【課題】アスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体の安定性が向上された製剤、製剤の作成方法及びイオン液体製剤を提供する。
【解決手段】アスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体であるアニオン性物質とカチオン性物質とを含有するものであって、カチオン性物質が含有されることによって、水や有機溶媒中では不安定なアスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体が安定化されることから、アスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体を含有した製剤を容易に作成することができる。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体であるアニオン性物質とカチオン性物質とを含有する製剤。
【請求項2】
前記カチオン性物質は、ビタミンに分類されるものである、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記アニオン性物質と前記カチオン性物質との混合比が0.1:0.9~0.9 :0.1である、請求項1または2に記載の製剤。
【請求項4】
前記アニオン性物質と前記カチオン性物質とを有機溶媒に溶解した後、該有機溶媒を留去して得られる、請求項1~3のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項5】
皮膚、粘膜、皮下、皮内、筋肉のうちの少なくともいずれか1に投与される、請求項1~4のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項6】
アスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体であるアニオン性物質とカチオン性物質とを有機溶媒に溶解し、溶解した前記有機溶媒を留去して製剤を作成する、製剤の作成方法。
【請求項7】
アスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体であるアニオン性物質とカチオン性物質とを含有する製剤が有機溶媒、脂溶性物質、テープ基剤、軟膏剤のうちの少なくともいずれか1に含有される、イオン液体製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製剤、製剤の作成方法及びイオン液体製剤、特に、アスコルビン酸およびアスコルビン酸誘導体であるアニオン性物質を用いた製剤、製剤の作成方法及びイオン液体製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、アニオン性物質とカチオン性物質とを有機溶媒に溶解した後、有機溶媒を留去することで得られる塩は、融解温度が100℃未満となることが知られている(非特許文献1及び2)。
【0003】
これらアニオン性物質及びカチオン性物質の粉体は、有機溶媒に溶解した後で有機溶媒を留去することで、溶媒がない条件下でも液体となるという性質を有する。
【0004】
さらに、アニオン性物質及びカチオン性物質は共に水溶性の物質であり、有機溶媒もしくは脂溶性物質に溶けにくい性質を有する一方、アニオン性物質及びカチオン性物質を有機溶媒に溶解した後で有機溶媒を留去することで、融解温度が100℃未満の塩を形成することから、有機溶媒もしくは脂溶性物質に溶解する性質を有する。
【0005】
アニオン性物質及びカチオン性物質のこれらの特徴を利用すれば、胃からの吸収性(非特許文献3)あるいは皮膚からの吸収性(非特許文献4)等、物質を投与した各部位からの吸収性を促進する効果があることも知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Walden P., Molecular weights and electrical conductivity of several fused salts, Bull. Acad. Sci. St. Petersburg, 1800,405-422(1914).
【非特許文献2】Wilkes J.S., Zaworotko M.J., Air and water stable 1-ethyl-3-methylimidazolium based ionic liquids, Chem. Commun., 13, 965-967(1992).
【非特許文献3】Baner Jee A., Ibsen K., Brown T., Chen R., Agatemor C., Mitragotri S., Ionic liquids for oral insulin delivery, Proc. Natl. Acad. Sci. USA,115, 7296-7301(2018).
【非特許文献4】Zakrewsky M., Lovejoy K.S., Kern T.L., Miller T.E., Le V., Nagy A., Goumas A.M., Iyer R.S., Sesto R.E.D., Koppisch A.T., Fox D.T., Mitragotri S., Ionic liquids as a class of materials for transdermal delivery and pathogen neutralization, Proc. Natl. Acid. Sci. USA, 111, 13313-13318(2014).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ビタミンCであるアスコルビン酸およびアスコルビン酸誘導体は、高い抗酸化作用や美白効果を有する化合物であるところ、これらアスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体は、水や有機溶媒中で不安定であって、すぐに分解してしまうという性質を有することから、アスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体を含有した製剤を作成することは困難であった。
【0008】
製剤化に不向きなこの種の物質には、製剤pHの変更、添加剤の変更あるいは添加剤の追加等といった基剤の変更、生理活性物質の塩酸塩化、あるいはプロドラッグ化等といった種々の施与が試みられてきた。
【0009】
しかし、基剤を変更した製剤や、プロドラッグ化した生理活性物質は、吸収性が悪化したり、プロドラッグ化後の生理活性物質の効果がプロドラッグ化前の生理活性物質の効果に対して低下したりすることが懸念される。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、アスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体の安定性が向上された製剤、製剤の作成方法及びイオン液体製剤を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明に係る製剤は、アスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体であるアニオン性物質とカチオン性物質とを含有するものであって、カチオン性物質が含有されることによって、水や有機溶媒中では不安定なアスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体が安定化されることから、アスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体を含有した製剤を容易に作成することができる。
【0012】
この製剤に含有されるカチオン性物質は、ビタミンに分類されるものであってもよい。
【0013】
この製剤に含有されるアニオン性物質とカチオン性物質との混合比は、0.1:0.9~0.9 :0.1であることが好ましい。
【0014】
さらに、この製剤は、アニオン性物質とカチオン性物質とを有機溶媒に溶解した後、有機溶媒を留去して得られるものである。
【0015】
一方、この製剤は、皮膚、粘膜、皮下、皮内、筋肉のうちの少なくともいずれか1に投与されるものである。
【0016】
上記目的を達成するための本発明に係る製剤の作成方法は、アスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体であるアニオン性物質とカチオン性物質とを有機溶媒に溶解し、溶解した有機溶媒を留去して製剤を作成するものである。
【0017】
上記目的を達成するための本発明に係るイオン液体製剤は、アスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体であるアニオン性物質とカチオン性物質とを含有する製剤が有機溶媒、脂溶性物質、テープ基剤、軟膏剤のうちの少なくともいずれか1に含有されるものである。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、水や有機溶媒中では不安定なアスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体が安定化された製剤を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の比較例1における安定性試験の結果を示す図である。
図2】本発明の比較例2における安定性試験の結果を示す図である。
図3】本発明の比較例3における安定性試験の結果を示す図である。
図4】本発明の比較例3における安定性試験の結果を示す図である。
図5】本発明の実施例1における安定性試験の結果を示す図である。
図6】本発明の実施例1における安定性試験の結果を示す図である。
図7】本発明の実施例1における安定性試験の結果を示す図である。
図8】本発明の実施例1における安定性試験の結果を示す図である。
図9】本発明の実施例2における安定性試験の結果を示す図である。
図10】本発明の実施例2における安定性試験の結果を示す図である。
図11】本発明の実施例3における安定性試験の結果を示す図である。
図12】本発明の実施例3における安定性試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施の形態に係る製剤について説明する。
【0021】
本実施の形態の製剤は、水や有機溶媒中で不安定なアスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体であるアニオン性物質と、カチオン性物質とを有機溶媒に溶解し、溶解したこの有機溶媒を留去することによって得られる。
【0022】
有機溶媒を留去する際に塩が形成されることから、得られた製剤では、アスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体が安定化されている。
【0023】
一方、この作成方法によって、アスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体の安定性の向上のみならず、アスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体とカチオン性物質とを有機溶媒や脂溶性物質に溶解させることができることから、剤型としては、皮膚や粘膜に施与することが可能な剤型、注射によって投与することが可能な剤型、及び経口投与することが可能な剤型であることが好ましい。
【0024】
アスコルビン酸は、水溶性の栄養素であるビタミンCとして作用するラクトン構造を有する有機化合物であって、結合タンパク質であるコラーゲンの生成に必須の化合物である。
【0025】
このアスコルビン酸は、高い抗酸化作用や美白効果を有する化合物であって、エーテルやベンゼンには溶けにくい一方で、水や有機溶媒中では不安定であって、すぐに溶けてしてしまうという性質がある。
【0026】
本実施の形態で用いられるカチオン性物質としては、カチオン性物質である治療用あるいは診断用の医薬品に該当するもの、化粧品、サプリメントや栄養ドリンクなどの健康食品に該当するものが挙げられるものであって、本実施の形態では、ビタミンに分類されるものであることが好ましい。
【0027】
本実施の形態の製剤に用いられるカチオン性物質であって生理活性作用があるものとしては、例えば、プロプラノロール、ビソプロロール、ネオスチグミン、ピリドスチグミン、ジスチグミン、アセチルコリン、メチルフェニデート、リドカイン、セロトニン、ピリドキシン、L-ヒスチジン、葉酸等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0028】
アスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体とカチオン性物質との混合比は、本実施の形態では、0.1:0.9~0.9:0.1の範囲であることが好ましく、0.7:0.3~0.3:0.7の範囲であることがより好ましい。
【0029】
本実施の形態の製剤は、有機溶媒や脂溶性物質に溶解させることができることから、有機溶媒や脂溶性物質を使用した基剤に含有することができる。特に、本実施の形態では、製剤は液状であることから、例えばテープ基剤あるいは軟膏剤等の脂溶性基剤として用いることができる。
【0030】
したがって、本実施の形態の製剤は、皮膚に施与する製剤、胃や腸や鼻等といった粘膜に施与する製剤、血管内、皮内、皮下、筋肉内、眼内等に注射で投与する製剤等であることが好ましい。
【0031】
例えば、イオン液体のみの製剤、パップ剤、テープ剤、軟膏剤、硬膏剤、クリーム剤、ゲル剤、リニメント剤、ローション剤、スプレー剤、硬カプセル剤及び軟カプセル剤等が想定される。
【0032】
本実施の形態の製剤に用いられる添加剤としては、アジピン酸やアスコルビン酸等といった安定化剤、グリセリン脂肪酸エステルやポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等の界面活性剤、マクロゴール等の可塑剤、流動パラフィン等の可溶化剤、リン酸塩等の緩衝剤、ワセリンやゼラチン、ポリアクリル酸塩、ポリイソブチレン、天然ゴムラテックス、1,3-ブタンジオール等の基剤、アラビアゴム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム等の懸濁化剤、アクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体、アクリル酸エステル・酢酸ビニルコポリマー、アクリル酸2-エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体溶液、アクリル酸2-エチルヘキシル・メタクリル酸2-エチルヘキシル・メタクリル酸ドデシル共重合体溶液、アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合樹脂エマルジョン、シスポリイソプレンゴム、ジブチルヒドロキシトルエン、脂肪族炭化水素樹脂、ジメチルポリシロキサン、水素添加ロジングリセリンエステル、スチレンイソプレンゴム、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、スチレンブタジエンゴム、メチルビニルエーテル・無水マレイン酸共重合体、ポリアクリル酸水溶液(20%)、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸部分中和物、ポリイソブチレン、ポリビニルアルコール等の粘着剤、キサンタンガム、ゼラチン等の粘稠剤、安息香酸、クロロブタノール等の防腐剤・保存剤が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0033】
このような本実施の形態の製剤は、水や有機溶媒中では不安定なアスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体が安定化されることから、アスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体を含有した製剤を容易に作成することができる。
【0034】
さらに、水や有機溶媒を用いないで液体にすることができることから、基剤を用いないでヒトに施与することが可能であって、基剤を用いないことで、アスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体とカチオン性物質とを高濃度でヒトに施与することができる。
【0035】
しかも、水溶性のアスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体とカチオン性物質とを、有機溶媒や脂溶性物質に溶解させることができるし、水溶性のアスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体とカチオン性物質とを溶解して得た塩を脂溶性基剤として用いることもできる。
【実施例0036】
以下、実施例によって本発明を説明する。
【0037】
〔試薬〕
アスコルビン酸及び添加剤としての1,3-ブタンジオールは、東京化成工業株式会社(東京、日本)から購入したもの、カチオン性物質としてのピリドキシンは、Sigma Aldrich(St.Louis,MO,USA)から購入したものを試薬として用いた。
【0038】
〔試験方法及び評価方法〕
水基剤にイオン液体を含有した製剤、イオン液体のみの製剤、イオン液体を1,3-ブタンジオールに溶解した製剤、イオン液体を50%1,3-ブタンジオール水溶液に溶解した製剤を、それぞれ作成した。
【0039】
作成した製剤を、5℃、25℃及び40℃の条件下で7日間に亘って保管して、分解しないで製剤中に残っていた生理活性物質の含有量を測定し、残っていた生理活性物質の含有量と調製直後の各製剤の生理活性物質の含有量とに基づいて、製剤が分解されているか否かを評価した(安定性試験)。
【0040】
具体的には、アニオン性の生理活性物質としてアスコルビン酸を選択し、かつカチオン性の生理活性物質としてピリドキシンを選択して、以下の実施例1~実施例3及び比較例1~比較例3のように調製し、安定性試験を実施した。
【0041】
なお、アニオン性のアスコルビン酸とカチオン性のピリドキシンのイオン液体とは、アスコルビン酸:ピリドキシンが1mol:1molとなるように混合し、メタノールで溶解した後、エバポレータを用いて減圧留去することでイオン液体を調製した。
【0042】
(実施例1)
イオン液体(アスコルビン酸、ピリドキシンのみの製剤)
【0043】
(実施例2)
イオン液体(アスコルビン酸、ピリドキシンを1,3-ブタンジオールに溶解した製剤)(2mg/mL)
【0044】
(実施例3)
イオン液体(アスコルビン酸、ピリドキシンを50%1,3-ブタンジオール水溶液に溶解した製剤)(2mg/mL)
【0045】
(比較例1)
アスコルビン酸水溶液(100μg/mL)
【0046】
(比較例2)
ピリドキシン水溶液(100μg/mL)
【0047】
(比較例3)
アスコルビン酸、ピリドキシン混合水溶液(アスコルビン酸 ; 100μg/mL、ピリドキシ ; 100μg/mL)
【0048】
上記の実施例1~実施例3及び比較例1~比較例3の各製剤を、5℃、25℃及び40℃の条件下で7日間に亘って保管した。保管中において、各製剤の調製直後、保管1日目、2日目、3日目、4日目及び7日目の6回に亘って、アスコルビン酸もしくはピリドキシンの濃度を高速液体クロマトグラフィ(High Performance Liquid Chromatography:HPLC)によって測定した。
【0049】
アスコルビン酸及びピリドキシンの定量には、Inertsil(登録商標)NH(粒子径5μm、カラムサイズ4.6×250mm、GL Sciences、東京、日本)を使用した。
【0050】
リン酸(0.1%)を含有した55v/v%アセトニトリル水溶液(流速1.0mL/min)で溶出させ、アスコルビン酸は245nm、ピリドキシンは290nmにおける吸光度を測定して定量した。
【0051】
図1に、比較例1の水基剤におけるアスコルビン酸の安定性試験の結果を示す。図示のように、40℃、25℃及び5℃の順で安定性が悪く、40℃の条件で7日間保管した場合、96.8%のアスコルビン酸が分解していた。
【0052】
図2に、比較例2の水基剤におけるピリドキシンの安定性試験の結果を示す。図示のように、5℃、25℃及び40℃のいずれの保管条件においても、保管7日目まではほぼ分解しないで安定していた。
【0053】
図3に、比較例3の水基剤におけるアスコルビン酸及びピリドキシンを混合したときのアスコルビン酸の安定性試験の結果を示す。図示のように、アスコルビン酸においては、比較例1と同様に40℃、25℃及び5℃の順で安定性が悪く、40℃の条件で7日間保管した場合、99.4%のアスコルビン酸が分解していた。
【0054】
図4に、比較例3の水基剤におけるアスコルビン酸およびピリドキシンを混合したときのピリドキシンの安定性試験の結果を示す。図示のように、ピリドキシンについては、比較例2と同様に5℃、25℃及び40℃のいずれの保管条件においても保管7日目までは、ほぼ分解しないで安定していた。
【0055】
図5に、実施例1のアニオン性物質であるアスコルビン酸とカチオン性物質であるピリドキシンをイオン液体化させ、イオン液体のみで5℃、25℃及び40℃の条件で7日間に亘って保管したときのアスコルビン酸の安定性試験の結果を示す。
【0056】
図示のように、アスコルビン酸については、比較例1及び比較例3とは異なり、イオン液体とすることで5℃、25℃及び40℃のいずれの保管条件においても分解しないことが分かった。
【0057】
図6に、実施例1のアニオン性物質であるアスコルビン酸とカチオン性物質であるピリドキシンをイオン液体化させ、イオン液体のみで5℃、25℃及び40℃の条件で7日間に亘って保管したときのピリドキシンの安定性試験の結果を示す。
【0058】
図示のように、ピリドキシンについては、比較例2及び比較例3と同様に5℃、25℃及び40℃のいずれの保管条件においても保管7日目までは、ほぼ分解しないで安定していた。
【0059】
図7に、実施例1のアニオン性物質であるアスコルビン酸とカチオン性物質であるピリドキシンをイオン液体化させ、イオン液体のみで5℃、25℃及び40℃の条件で28日間に亘って保管したときのアスコルビン酸の安定性試験の結果を示す。
【0060】
比較例1及び比較例3の結果では、アスコルビン酸水溶液を40℃で7日間に亘って保管すると、アスコルビン酸は7日目でほぼ分解するのに対して、アスコルビン酸をピリドキシンとイオン液体とともに保管すると、28日目に至っても、5℃、25℃及び40℃の条件でほぼ分解しなないで安定していた。
【0061】
図8に、実施例1のアニオン性物質であるアスコルビン酸とカチオン性物質であるピリドキシンをイオン液体化させ、イオン液体のみで5℃、25℃及び40℃の条件で28日間に亘って保管したときのピリドキシンの安定性試験の結果を示す。図示のように、ピリドキシンとアスコルビン酸とによってイオン液体を形成し、5℃、25℃及び40℃の条件で保管した場合でも分解しなかった。
【0062】
図9に、実施例2のアニオン性物質であるアスコルビン酸とカチオン性物質であるピリドキシンをイオン液体化させ、イオン液体を1,3-ブタンジオールに溶解させて5℃、25℃及び40℃の条件で7日間に亘って保管したときのアスコルビン酸の安定性試験の結果を示す。
【0063】
図示のように、5℃、25℃及び40℃の保管条件では、アスコルビン酸は、ほとんど分解しないことが分かった。40℃の保管条件では、アスコルビン酸に分解が観られたものの、7日目においても約6割のアスコルビン酸が分解しないで製剤中に含まれていることが分かった。
【0064】
図10に、実施例2のアニオン性物質であるアスコルビン酸とカチオン性物質であるピリドキシンをイオン液体化させ、イオン液体を1,3-ブタンジオールに溶解させて5℃、25℃及び40℃の条件で7日間に亘って保管したときのピリドキシンの安定性試験の結果を示す。1,3-ブタンジオールにイオン液体を溶解させたときのピリドキシンは、5℃、25℃及び40℃の条件下で保管した場合でも分解しなかった。
【0065】
図11に、実施例3のアニオン性物質であるアスコルビン酸とカチオン性物質であるピリドキシンをイオン液体化させ、イオン液体を50%1,3-ブタンジオール水溶液に溶解させて、5℃、25℃及び40℃の条件で7日間に亘って保管したときのアスコルビン酸の安定性試験の結果を示す。
【0066】
比較例1と実施例3のアスコルビン酸の含有量とを比較すると、図示のように、イオン液体を50%1,3-ブタンジオール水溶液に溶解させたときのアスコルビン酸の分解量は少なくなった。
【0067】
図12に、実施例3のアニオン性物質であるアスコルビン酸とカチオン性物質であるピリドキシンをイオン液体化させ、イオン液体を1,3-ブタンジオールに溶解させて5℃、25℃及び40℃の条件で7日間に亘って保管したときのピリドキシンの安定性試験の結果を示す。
【0068】
比較例2と実施例3のピリドキシンの含有量とを比較すると、図示のように、ピリドキシンは、どのような保管条件においても分解をほとんどしないことが分かった。
【0069】
このように、本実施例によれば、比較例1~比較例3の試薬に対して、実施例1~実施例3の試薬のほうが安定していることが概ね認められた。
【0070】
なお、本発明は上記実施の形態及び上記実施例に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12