(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139459
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】魚釣用スピニングリール
(51)【国際特許分類】
A01K 89/01 20060101AFI20230927BHJP
【FI】
A01K89/01 E
A01K89/01 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045008
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】永井 諒
【テーマコード(参考)】
2B108
【Fターム(参考)】
2B108BD03
2B108BE04
(57)【要約】
【課題】ドライブギャ軸とハンドル軸との連結構造を簡単化できるとともに、コスト低減を図る。
【解決手段】魚釣用スピニングリール100は、リール本体1にハンドル3が着脱可能に構成されている。リール本体1に設けられたドライブギャ軸2と、ドライブギャ軸2に外嵌されドライブギャ軸2を回転自在に支持するボールベアリング15,16と、ハンドル3に設けられドライブギャ軸2に螺合されるハンドル軸31と、を備えている。ハンドル軸31には、ドライブギャ軸2への螺合によりボールベアリング15,16の内輪に当接する当接部36が一体に設けられている構成とした。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体にハンドルが着脱可能に構成された魚釣用スピニングリールであって、
前記リール本体に設けられたドライブギャ軸と、
前記ドライブギャ軸に外嵌され前記ドライブギャ軸を回転自在に支持するボールベアリングと、
前記ハンドルに設けられ前記ドライブギャ軸に螺合されるハンドル軸と、を備え、
前記ハンドル軸には、前記ドライブギャ軸への螺合により前記ボールベアリングの内輪に当接する当接部が一体に設けられていることを特徴とする魚釣用スピニングリール。
【請求項2】
前記ハンドル軸は、大径の基部と、前記基部よりも小径に形成され前記ドライブギャ軸に挿入される挿入部とを備えており、
前記当接部は、前記基部と前記挿入部との境界部分に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用スピニングリール。
【請求項3】
前記ハンドル軸は、前記ボールベアリングよりも強度が高い高強度材料からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の魚釣用スピニングリール。
【請求項4】
前記ドライブギャ軸の端部の外径は、前記ボールベアリングの内径よりも小さいことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の魚釣用スピニングリール。
【請求項5】
前記当接部は、前記ボールベアリングに対向する部分と前記ドライブギャ軸の端部に対向する部分とを備えており、これらの両部分に亘って平坦面をなしていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の魚釣用スピニングリール。
【請求項6】
前記当接部は、前記ドライブギャ軸に前記ハンドル軸を螺合する際に、前記ボールベアリングの内輪及び前記ドライブギャ軸の端面に同時に当接し、または前記ドライブギャ軸に前記ハンドル軸を螺合する際に、前記ドライブギャ軸の端面に当接した後にボールベアリングの内輪に当接することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の魚釣用スピニングリール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣用スピニングリールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リール本体にハンドルを着脱可能に構成した魚釣用スピニングリールが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1は、リール本体のドライブギャ軸にハンドル軸を螺合させることでハンドルが取り付けられるようになっており、ドライブギャ軸とハンドル軸との間に備わる筒状部材と、ドライブギャ軸を回転自在に支持するボールベアリングとを備えている。ドライブギャ軸は、ドライブギャを備え、ボールベアリングを介して回転自在に支持されている。
【0003】
特許文献の筒状部材は、ドライブギャ軸の端部に対向する部分がその端部との間に間隙を有して対向している。一方、筒状部材は、ドライブギャ軸を支持しているボールベアリングに当接して座屈するように構成されている。これにより、特許文献1は、ハンドル軸をドライブギャ軸に螺合させる際のねじ込みによるハンドル軸の推力がドライブギャ軸に過剰に加わることを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、ドライブギャ軸とハンドル軸との間に設けた筒状部材によりドライブギャ軸に作用する負荷を防止する構造であるため、ドライブギャ軸とハンドル軸との連結構造が複雑になるとともに、各部品を高い寸法精度で製造する必要があり、コストアップに繋がるという課題があった。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するために創作されたものであり、ドライブギャ軸とハンドル軸との連結構造を簡単化できるとともに、コスト低減を図ることができる魚釣用スピニングリールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、リール本体にハンドルが着脱可能に構成された魚釣用スピニングリールである。前記リール本体に設けられたドライブギャ軸と、前記ドライブギャ軸に外嵌され前記ドライブギャ軸を回転自在に支持するボールベアリングと、前記ハンドルに設けられ前記ドライブギャ軸に螺合されるハンドル軸と、を備えている。前記ハンドル軸には、前記ドライブギャ軸への螺合により前記ボールベアリングの内輪に当接する当接部が一体に設けられている。
【0008】
この魚釣用スピニングリールでは、ハンドル軸をドライブギャ軸に螺合すると、ハンドル軸の当接部がボールベアリングの内輪に近づいて当て付けられ、ハンドル軸がドライブギャ軸に固定される。つまり、ハンドル軸の螺合による圧着力が、ボールベアリングの内輪に対する当接部の度当てによって抑制される状態で、ハンドル軸をドライブギャ軸に固定できる。これにより、ハンドル軸の螺合によりドライブギャの端部が座屈するのを防止できる。
【0009】
また、当接部がハンドル軸に一体に設けられているので、ドライブギャ軸とハンドル軸との間に従来のような筒状部材を介在させる必要がなくなる。したがって、ドライブギャ軸とハンドル軸との連結構造を簡単化できるとともに、コスト低減を図ることができる。
また、当接部がハンドル軸に一体に設けられているので、ハンドル軸を高い寸法精度で製造できるとともに、従来のような筒状部材を用いた場合に比べて、強度が高くなる。
また、ハンドル軸の過剰な締め込みにより、仮に、ボールベアリングが変形したとしても、ドライブギャ軸に比べて安価なボールベアリングを交換すればよいので、メンテナンスが容易であるとともに修理費用を低減できる。
【0010】
また、前記ハンドル軸は、大径の基部と、前記基部よりも小径に形成され前記ドライブギャ軸に挿入される挿入部とを備えていることが好ましい。この場合には、前記当接部が、前記基部と前記挿入部との境界部分に設けられていることが好ましい。
【0011】
この構成では、大径の基部と小径の挿入部との段差部分を利用して当接部を容易に形成することができ、ドライブギャ軸とハンドル軸との連結構造を簡単化できる。
【0012】
また、前記ハンドル軸は、前記ボールベアリングよりも強度が高い高強度材料からなることが好ましい。
【0013】
この構成では、ハンドル軸の過剰な締め込みが生じた場合に、ドライブギャ軸よりも安価なボールベアリングを変形させることができる。したがって、メンテナンスが容易であるとともに修理費用を低減できる。
【0014】
また、前記ドライブギャ軸の端部の外径は、前記ボールベアリングの内径よりも小さいことが好ましい。
【0015】
この構成では、ドライブギャ軸の端部とボールベアリングの内輪との間に座屈変形した部分を逃がすスペースを形成できる。これにより、ハンドル軸の過剰な締め込みにより、仮に、ドライブギャ軸の端部に座屈が生じたとしても、その影響を座屈変形用のスペース内に収めることができる。これにより、ボールベアリング交換等のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0016】
また、前記当接部は、前記ボールベアリングに対向する部分と前記ドライブギャ軸の端部に対向する部分とを備えており、これらの両部分に亘って平坦面をなしていることが好ましい。
【0017】
この構成では、ハンドル軸の加工性が向上するので、コスト低減を図ることができる。
【0018】
また、前記当接部は、前記ドライブギャ軸に前記ハンドル軸を螺合する際に、前記ボールベアリングの内輪及び前記ドライブギャ軸の端面に同時に当接することが好ましく、または前記ドライブギャ軸に前記ハンドル軸を螺合する際に、前記ドライブギャ軸の端部に当接した後にボールベアリングの内輪に当接することが好ましい。
【0019】
ボールベアリングの内輪及びドライブギャ軸の端部に当接部が同時に当接する構成では、ハンドル軸の螺合による圧着力が、ボールベアリングの内輪及びドライブギャ軸の端部に対する当接部の度当てによって抑制される状態で、ハンドル軸をドライブギャ軸に固定できる。つまり、ハンドル軸の螺合による軸力を支える部位(面積)を増加させることができ、強度向上を図ることができる。
また、ドライブギャ軸の端部に当接部が当接してからボールベアリングの内輪に当接部が当接する構成では、当接部の当接によりドライブギャ軸の端部を座屈させてからボールベアリングの内輪に当接部が当接する。したがって、この場合にも、ハンドル軸の螺合による軸力を支える部位を最終的に増加させることができるため、強度向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ドライブギャ軸とハンドル軸との連結構造を簡単化できるとともに、コスト低減を図ることができる魚釣用スピニングリールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る魚釣用スピニングリールの全体構成を示す側面図である。
【
図2】
図1のII-II線で切った断面を矢印方向から視た端面図である。
【
図3】左ハンドル時のドライブギャ軸とハンドル軸との連結構造を示す部分拡大断面図である。
【
図4】ドライブギャ軸の右側の構造を示す部分拡大断面図である。
【
図5】右ハンドル時のドライブギャ軸とハンドル軸との連結構造を示す拡大断面図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る魚釣用スピニングリールにおける左ハンドル時のドライブギャ軸とハンドル軸との連結構造を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
各実施形態に係る魚釣用スピニングリール100について図面を参照しながら説明する。以下の説明において、「前後」「上下」を言うときは
図1に示した方向を基準とし、「左右」を言うときは
図2に示す方向を基準とする。
【0023】
(第1実施形態)
はじめに魚釣用スピニングリール100の基本構造について説明する。
図1に示すように、魚釣用スピニングリール100は、ハンドル3が取り付けられたリール本体1と、リール本体1の前側に設けられハンドル3の巻き取り操作により回転するロータ4と、ロータ4の前側に設けられハンドル3の巻き取り操作により前後方向に往復運動するスプール5とを備える。
【0024】
リール本体1は、左側に向って開口する側部開口部11が形成されたボディ10と、ボディ10の上部から上方に延びて釣竿に装着される竿取付部12aを先端に有する脚部12と、側部開口部11を塞ぐ蓋部材13と、ボディ10の後部に取り付けられた保護カバー14とを備える。
【0025】
リール本体1には、ボディ10の前部から前方に突出するように、駆動軸筒(不図示)及びスプール軸8(
図2に一部図示)が組み付けられている。駆動軸筒の前端には、ロータ4が取り付けられている。スプール軸8の前端には、スプール5が取り付けられている。
【0026】
蓋部材13は、
図2に示すように、側部開口部11の内側に挿入される円筒状の挿入部13aを備えている。挿入部13aの外周面には、雄ねじ部が形成されている。雄ねじ部は、側部開口部11の内周面に形成された雌ねじ部と螺合している。この螺合により、ボディ10と蓋部材13とが一体になっている。
【0027】
ボディ10内には、ハンドル3の操作に連動して駆動軸筒及びスプール軸8を駆動させるための構成として、左右方向に延在するドライブギャ軸2と、スプール往復動装置60とが備わる。
ドライブギャ軸2は、
図2に示すように、ドライブギャ21及び歯車22を備えている。ドライブギャ軸2は、左右のボールベアリング15,16を介して蓋部材13及びボディ10に回転自在に支持されている。ドライブギャ軸2には、ハンドル3に備わるハンドル軸31が螺合により装着されている。これにより、ハンドル3とドライブギャ軸2とが一体に回転する。ドライブギャ軸2及びハンドル3の詳細は、後記する。
【0028】
スプール往復動装置60は、摺動子61と、連動歯車62とを備え、ボディ10の前後方向に延びるガイド軸(不図示)に沿って、摺動子61が前後方向に移動するように構成されている。摺動子61は、スプール軸8の後端に固定されており、右側に開口する案内溝61aを備えている。連動歯車62は、ボディ10の右側壁10aに設けられた支持部材63に支持され、ドライブギャ軸2の歯車22に噛合して回転する。連動歯車62は、摺動子61の案内溝61aに係合する偏芯突部62aを備えている。
【0029】
以上から、ハンドル3の巻き取り操作によってドライブギャ軸2及び歯車22が回転すると、連動歯車62が回転し、その回転運動が偏芯突部62a及び案内溝61aを介して摺動子61の前後運動に変換される。これにより、スプール軸8(スプール5)が前後方向に往復移動する。
【0030】
次にドライブギャ軸2、ハンドル3及びこれらの連結構造について詳細に説明する。
ドライブギャ軸2は、
図2に示すように、略円筒状を呈しており、中心軸O1に沿う段付き円形の外周面及び左右に開口する螺合穴23,23を有している。左側の螺合穴23によりハンドル3を左側に取り付けることができ、また、右側の螺合穴23によりハンドル3を右側に取り付けることができる(
図5参照)。
【0031】
各螺合穴23は、開口側に形成された大径内周面23aと、大径内周面23aの奥側に形成され大径内周面23aよりも小径とされた小径内周面23bとを有している。このうち、左側の大径内周面23a及び右側の小径内周面23bには、ハンドル軸31を螺合するための雌ねじがそれぞれ形成されている。左側の大径内周面23aの雌ねじは、正ねじとは逆向きの逆ねじである。一方、右側の小径内周面23bの雌ねじは、正ねじである。
【0032】
ドライブギャ軸2の外周面には、左右方向の中心部から左側に偏倚した位置に、ドライブギャ21が一体的に形成されている。また、ドライブギャ軸2の左右方向の中心部から右側に偏倚した位置には、歯車22が一体に形成されている。ドライブギャ軸2及びドライブギャ21は、アルミニウム合金で形成されている。なお、高い負荷が作用する状況下で釣糸を巻き取る高負荷巻き取り操作に対応した魚釣用スピニングリール(以下、「高負荷用の魚釣用スピニングリール」という)100においては、アルミニウム合金に代えてドライブギャ軸2を、例えば、ステンレス鋼や鉄鋼で形成してもよい。
【0033】
次に
図3を参照して、ドライブギャ軸2の左側における連結構造について詳細に説明する。
ドライブギャ軸2の左側外周面には、ドライブギャ21の左側に連続する第1外周部24と、第1外周部24の左側に連続し第1外周部24よりも小径とされた第2外周部25とが形成されている。第1外周部24と第2外周部25との間には、中心軸O1(
図2参照、以下同じ)に直交するリング状の段差面25aが形成されている。第2外周部25の外周面は、左ボールベアリング15が外嵌される座面として機能している。また、段差面25aは、環状のワッシャ24aを介して左ボールベアリング15の内輪15aの右側面が位置決めされる位置決め面として機能している。
なお、左ボールベアリング15の外輪15bは、中心軸O1を中心とする蓋部材13の円形状の内周面に嵌入されている。
【0034】
第2外周部25の左端部は、左ボールベアリング15の内輪15aの左側面よりも左側方に突出する大きさを有している。第2外周部25の左端外周面25bは、左端に向けて窄まるテーパ状の傾斜面とされており、左ボールベアリング15の内輪15aから離間している。これにより、ドライブギャ軸2の左端部の外径は、左ボールベアリング15の内径よりも小さくなっている。
ここで、左右のボールベアリング15,16は、ステンレス鋼で形成されている。
【0035】
次に
図4を参照して、ドライブギャ軸2の右側における連結構造について詳細に説明する。
ドライブギャ軸2の右側外周面には、歯車22の右側に連続する第3外周部26が形成されている。第3外周部26の外周面には、径方向外側に突出する位置決め突起27が形成されている。位置決め突起27の右側において、第3外周部26の外周面は、右ボールベアリング16が外嵌される座面として機能している。また、位置決め突起27の右側面27aは、右ボールベアリング16の内輪16aの左側面が位置決めされる位置決め面として機能している。
なお、右ボールベアリング16の外輪16bは、リール本体1の右側壁10aにおいて、中心軸O1を中心とする環状の内周部10bの左側方にワッシャ10cを介して嵌入されている。また、右側壁10aには、カバー部材17が装着されている(
図2参照)。
【0036】
第3外周部26の右端部は、右ボールベアリング16の内輪16aの右側面よりも右側方に突出する大きさを有している。第3外周部26の右端外周面26bは、前記した左端外周面25bと同様に、右端に向けて窄まるテーパ状の傾斜面とされており、右ボールベアリング16の内輪16aから離間している。これにより、第3外周部26の右端部の外径は、右ボールベアリング16の内径よりも小さくなっている。
【0037】
次に、ハンドル3について説明する。ハンドル3は、
図2に示すように、アーム部32と、アーム部32に連結され中心軸О1に沿う段付き円形の外周面を備えたハンドル軸31とを備えている。アーム部32とハンドル軸31との連結部には、カバー部材3aが取り付けられている。
【0038】
ハンドル軸31は、アーム部32に連結される大径の基部33と、基部33に連続し基部33よりも小径に形成され、ドライブギャ軸2の螺合穴23に挿入される小径の挿入部34とを備えている。ハンドル軸31は、ドライブギャ軸2よりも強度が高い高強度材料、例えば、ステンレス鋼や鉄鋼で形成されている。なお、ハンドル軸31は、その他の高強度材料、例えば、チタン合金やアルミニウム合金を用いてもよい。
ここで、ドライブギャ軸2、ボールベアリング15,16及びハンドル軸31の材料の強度の関係は、ハンドル軸31>ボールベアリング15,16>ドライブギャ軸2となっている。なお、高負荷用の魚釣用スピニングリール100では、これらの強度の関係を、ハンドル軸31≒ドライブギャ軸2>ボールベアリング15,16として設定することができる。また、その他の強度の関係として、ボールベアリング15,16>ハンドル軸31≒ドライブギャ軸2として設定することができる。このように、ボールベアリング15,16の強度をハンドル軸31やドライブギャ軸2よりも高めた設定では、ボールベアリング15,16の損傷を抑えてハンドル3の回転フィーリングを長期間に亘って良好に維持できる。特に、高負荷用の魚釣用スピニングリール100では、ドライブギャ軸2に作用する負荷が高いため、ボールベアリング15,16の強度を高めることが好ましい。
【0039】
基部33は、アーム部32側に開口を有する略有底円筒状を呈しており、内側が中空とされている。挿入部34は、略円柱状を呈しており、基部33の底部に連続する第1挿入部34aと、第1挿入部34aに連続する第2挿入部34bとを備えている。第1挿入部34aは、基部33よりも小径とされた外周面を備えている。基部33と第1挿入部34aとの境界部分には、当接部36が一体に設けられている。
【0040】
当接部36は、
図3に示すように、突出部36aと、当接面36bとを備えている。突出部36aは、円形環状を呈しており、基部33の外周縁部から右側方に突出している。突出部36aは、断面略矩形状を呈している。突出部36aは、左ボールベアリング15の内輪15aの左側面に対向しており、ハンドル軸31をドライブギャ軸2に締め付ける過程で内輪15aの左側面に当接するように構成されている。
【0041】
当接面36bは、突出部36aの径方向内側に連続しており、中心軸O1に直交するリング状の平坦面である。当接面36bは、ドライブギャ軸2の第2外周部25の左端面に対向しており、ハンドル軸31をドライブギャ軸2に締め付ける過程で第2外周部25の左端面に当接するように構成されている。
【0042】
本実施形態では、内輪15aの左側面に突出部36aが当接するタイミングで、第2外周部25の左端面に当接面36bが同時に当接するように設定されている。
つまり、当接部36の突出部36a及び当接面36bの両方を利用して、ドライブギャ軸2側の第2外周部25及び内輪15aに当接するように構成されている。
【0043】
突出部36aの径方向内側には、隙間部S1が形成されている。隙間部S1は、突出部36aの径方向の内周面と、当接面36bと、第2外周部25の左端外周面25bと、左ボールベアリング15の内輪15aとによって区画され、断面略三角形状を呈している。
【0044】
本実施形態では、前記したように、内輪15aの左側面に突出部36aが当接するタイミングで、第2外周部25の左端面に当接面36bが同時に当接するように設定したが、これに限られることはない。例えば、内輪15aの左側面に突出部36aが当接した際に、第2外周部25の左端面と当接面36bとの間に間隙が形成されるように構成してもよい。つまり、内輪15aに対する突出部36aの圧着で、ハンドル軸31がドライブギャ軸2に固定されるように構成してもよい。
【0045】
また、前記とは逆に、ドライブギャ軸2にハンドル軸31を締め込む過程で、先に、第2外周部25の左端面に当接面36bが当接し、その後、内輪15aの左側面に突出部36aが当接するように構成してもよい。
【0046】
この場合には、締め込む過程で、先に、第2外周部25の左端面に当接面36bが当接するので、高強度材料からなる当接部36の当接により、第2外周部25の左端部を積極的に座屈変形させつつ、内輪15aの左側面に突出部36aを圧着することができる。このとき、第2外周部25の左端部に形成される隙間部S1は、座屈変形した部分を逃がすスペースとして機能する。つまり、第2外周部25の左端部の好適な座屈変形を促しながら、内輪15aの左側面に突出部36aを圧着できる。
【0047】
図5は右ハンドル時のドライブギャ軸2とハンドル軸31との連結構造を示す拡大断面図である。
右ハンドル時には、螺合穴23の奥側の小径内周面23bにハンドル軸31の先端側の第2挿入部34bが螺合される。当接部36の突出部36aは、右ボールベアリング16の内輪16aの右側面に対向しており、ハンドル軸31をドライブギャ軸2に締め付ける過程で内輪16aの右側面に当接する。
【0048】
一方、当接面36bは、ドライブギャ軸2の第3外周部26の右端面に対向しており、ハンドル軸31をドライブギャ軸2に締め付ける過程で第3外周部26の右端面に当接する。この場合にも、内輪16aの右側面に突出部36aが当接するタイミングで、第3外周部26の右端面に当接面36bが同時に当接するように設定されている。
つまり、当接部36の左側面の全体を利用して、ドライブギャ軸2側の第3外周部26及び内輪16aに当接するように構成されている。
【0049】
右ハンドル時においても、突出部36aの径方向内側には、隙間部S1が形成されている。隙間部S1は、突出部36aの径方向の内周面と、当接面36bと、第3外周部26の右端外周面26bと、右ボールベアリング16の内輪16aとによって区画され、断面略三角形状を呈している。
【0050】
なお、前記したように、内輪16aの右側面に突出部36aが当接するタイミングで、第3外周部26の右端面に当接面36bが同時に当接するように設定したが、これに限られることはない。例えば、内輪16aの右側面に突出部36aが当接した際に、第3外周部26の右端面と当接面36bとの間に間隙が形成されるように構成してもよい。つまり、内輪16aの右側面に突出部36aが主として圧着することで、ハンドル軸31がドライブギャ軸2に固定されるように構成してもよい。
【0051】
また、前記とは逆に、ドライブギャ軸2にハンドル軸31を締め込む過程で、先に、第3外周部26の右端面に当接面36bが当接し、その後、内輪16aの右側面に突出部36aが当接するように構成してもよい。
【0052】
この場合には、締め込む過程で、先に、第3外周部26の右端面に当接面36bが当接するので、高強度材料からなる当接部36の当接により、第3外周部26の右端部を積極的に座屈変形させつつ、内輪16aの左側面に突出部36aを圧着することができる。このとき、第3外周部26の右端部に形成される隙間部S1は、座屈変形した部分を逃がすスペースとして機能する。つまり、第3外周部26の右端部の好適な座屈変形を促しながら、内輪16aの右側面に突出部36aを圧着できる。
【0053】
以上説明した本実施形態によれば、例えば、左ハンドル時に、ハンドル軸31をドライブギャ軸2に螺合すると、ハンドル軸31の当接部36(突出部36a)が左ボールベアリング15の内輪15aに近づいて当て付けられ、ハンドル軸31がドライブギャ軸2に固定される。つまり、ハンドル軸31の螺合による圧着力が、左ボールベアリング15の内輪15aに対する当接部36の度当てによって抑制される状態で、ハンドル軸31をドライブギャ軸2に固定できる。これにより、ハンドル軸31の螺合によりドライブギャ軸2の端部が座屈するのを防止できる。
【0054】
また、当接部36がハンドル軸31に一体に設けられているので、ドライブギャ軸2とハンドル軸31との間に従来のような筒状部材を介在させる必要がなくなる。したがって、ドライブギャ軸2とハンドル軸31との連結構造を簡単化できるとともに、コスト低減を図ることができる。
【0055】
また、当接部36がハンドル軸31に一体に設けられているので、ハンドル軸31を高い寸法精度で製造できるとともに、従来のような筒状部材を用いた場合に比べて、強度が高くなる。
【0056】
また、内輪15aの左側面に突出部36aが当接するタイミングで、第2外周部25の左端面に当接面36bが同時に当接するので、ハンドル軸31の螺合による軸力を支える部位(面積)を増加させることができ、強度向上を図ることができる。
【0057】
また、ハンドル軸31が、左ボールベアリング15よりも強度が高い高強度材料からなるので、内輪15aの左側面に突出部36aが当接した際に、第2外周部25の左端面と当接面36bとの間に間隙が形成されるように設定した場合に、次のような作用効果が得られる。すなわち、ハンドル軸31の過剰な締め込みにより、仮に、突出部36aに押されて左ボールベアリング15が変形したとしても、ドライブギャ軸2に比べて安価な左ボールベアリング15を交換すればよいので、メンテナンスが容易であるとともに修理費用を低減できる。
【0058】
また、これとは逆に、第2外周部25の左端面に当接面36bが先に当接し、その後、内輪15aの左側面に突出部36aが当接するように設定した場合には、当接部36の当接により第2外周部25の左端部を座屈変形させてから内輪15aに当接部36が当接するようになる。したがって、この場合にも、ハンドル軸31の螺合による軸力を支える部位を最終的に増加させることができるため、強度向上を図ることができる。
以上挙げた作用効果は、ドライブギャ軸2の右側にハンドル軸31を螺合した場合にも同様に得られる。
【0059】
(第2実施形態)
図6を参照して本発明の第2実施形態に係る魚釣用スピニングリールについて説明する。本実施形態が前記第1実施形態と異なるところは、当接部36Aを平らな面で構成した点にある。
【0060】
当接部36Aは、中心軸O1に直交する当接面37を備えている。当接面37は、内輪15aの左側面に対向する部分及び第2外周部25の左端面に対向する部分の両部分に亘って平坦面をなしている。
一方、内輪15aの左側面及び第2外周部25の左端面も、中心軸O1に直交する方向に面一とされており、当接部36Aの当接面37に対応して平らとなるように設定されている。
【0061】
これにより、ドライブギャ軸2にハンドル軸31を締め込む過程で、当接部36Aの当接面37が、内輪15aの左側面及び第2外周部25の左端面に対して同時に当接する。このことは、右ハンドル時の連結構造においても同様である。
【0062】
なお、本実施形態では、第1実施形態で説明した隙間部S1に代えて、第2外周部25の左端部に形状の異なる隙間部S2を形成してある。隙間部S2は、第2外周部25の左端外周面25cを、小径の段付き面としたものである。
【0063】
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態で説明した作用効果と同様の作用効果に加えて、平坦面をなす当接面37を備えているので、ハンドル軸31の加工性が向上する。これにより、コスト低減を図ることができる。
【0064】
なお、本実施形態では、当接部36Aの当接面37が、内輪15aの左側面及び第2外周部25の左端面に対して同時に当接するように設定したが、これに限られることはない。例えば、内輪15aの左側面に当接面37が当接した際に、第2外周部25の左端面と当接面37との間に間隙が形成されるように設定してもよい。つまり、内輪15aに対する当接面37の圧着で、ハンドル軸31がドライブギャ軸2に固定されるように構成してもよい。この場合にも、当接面37が平坦面であるので、ハンドル軸31の加工性が向上し、コスト低減を図ることができる。
【0065】
また、ハンドル軸31の過剰な締め込みにより、仮に、当接部36Aに押されて左ボールベアリング15が変形したとしても、ドライブギャ軸2に比べて安価な左ボールベアリング15を交換すればよいので、メンテナンスが容易であるとともに修理費用を低減できる。
【0066】
また、これとは逆に、第2外周部25の左端面に当接面37が先に当接し、その後、内輪15aの左側面に当接面37が当接するように設定してもよい。この場合にも、当接面37が平坦面であるので、ハンドル軸31の加工性が向上し、コスト低減を図ることができる。
また、この場合には、当接面37の当接により第2外周部25の左端部を座屈変形させてから内輪15aに当接面37が当接するようになり、ハンドル軸31の螺合による軸力を支える部位を最終的に増加させることができるため、強度向上を図ることができる。
以上挙げた作用効果は、ドライブギャ軸2の右側にハンドル軸31を螺合した場合にも同様に得られる。
【0067】
以上、各実施形態について説明したが、本発明は実施形態で示した例に限定されない。
例えば、前記各実施形態では、ハンドル軸31の基部33と挿入部34との境界部分に形成される段差構造を利用して当接部36,36Aを構成したが、これに限られることはなく、ハンドル軸31の外周部に周方向外側に突出するフランジ状の周壁等を部分的に形成し、その側面を利用して内輪15a,16aに当接するように構成してもよい。この場合にも、前記各実施形態で説明した作用効果と同様の作用効果が得られる。
【0068】
また、前記各実施形態では、ドライブギャ軸2に隙間部S1,S2を形成したものを示したが、これに限られることはなく、座屈変形を生じない構成であれば必ずしも設けなくてもよい。また、隙間部S1,S2を形成するための、第2外周部25の左端部の形状及び第3外周部26の右端部の形状は、種々の形状のものを採用し得る。
【0069】
また、前記各実施形態では、前記ハンドル軸31がアーム部32に連結されるものを示したが、これに限られることはなく、ハンドル軸31がアーム部32に一体に設けられるものであってもよい。
【0070】
また、前記各実施形態では、側部開口部11に蓋部材13が螺合される魚釣用スピニングリール100について説明したが、これに限られることはなく、リール本体に蓋部材がねじやその他の固定手段を利用して固定される魚釣用スピニングリールについても本発明を好適に適用できる。
【符号の説明】
【0071】
1 リール本体
2 ドライブギャ軸
3 ハンドル
15 左ボールベアリング(ボールベアリング)
15a 内輪
16 右ボールベアリング(ボールベアリング)
16a 内輪
31 ハンドル軸
33 基部
34 挿入部
36,36A 当接部
100 魚釣用スピニングリール