(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139480
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】車両用負荷制御装置、車両用負荷制御方法
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20230927BHJP
F02N 11/08 20060101ALI20230927BHJP
B60Q 1/04 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
B60R16/02 650P
F02N11/08 X
B60Q1/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045038
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】510123839
【氏名又は名称】ニデックモビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101786
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 秀行
(72)【発明者】
【氏名】石神 貴識
(72)【発明者】
【氏名】荒貝 隆
【テーマコード(参考)】
3K339
【Fターム(参考)】
3K339AA02
3K339AA22
3K339AA38
3K339BA09
3K339BA11
3K339BA22
3K339BA28
3K339CA01
3K339CA30
3K339EA04
3K339GB01
3K339GB26
3K339JA21
3K339KA02
3K339KA38
3K339MA05
3K339MC17
3K339MC48
3K339MC49
3K339MC56
3K339MC65
3K339MC68
(57)【要約】
【課題】駆動部においてスイッチング素子にON故障が発生し、その後、このスイッチング素子にOFF故障が発生した場合でも、車両を安全な状態に維持できる車両用負荷制御装置を提供する。
【解決手段】車両用負荷制御装置101は、車両に装備された負荷201を駆動するための第1駆動信号を出力する第1駆動部10と、負荷201を駆動するための第2駆動信号を出力する第2駆動部20と、外部から入力される所定の信号に基づいて、第1駆動部10および第2駆動部20の動作を制御する制御部1とを備えている。制御部1は、車両が停車した状態で負荷201を停止させる操作が行われた後、負荷201を動作させる操作が行われずに車両が走行状態となった場合に、第1駆動部10に対して、第1駆動信号の出力を指令する第1制御信号を出力するとともに、第2駆動部20に対して、第2駆動信号の出力を指令する第2制御信号を出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に装備された負荷を駆動するための第1駆動信号を出力する第1駆動部と、
前記負荷を駆動するための第2駆動信号を出力する第2駆動部と、
外部から入力される所定の信号に基づいて、前記第1駆動部および前記第2駆動部の動作を制御する制御部と、を備えた車両用負荷制御装置において、
前記制御部は、
車両が停車した状態で前記負荷を停止させる操作が行われた後、当該負荷を動作させる操作が行われずに、車両が走行状態となった場合に、
前記第1駆動部に対して、前記第1駆動信号の出力を指令する第1制御信号を出力するとともに、前記第2駆動部に対して、前記第2駆動信号の出力を指令する第2制御信号を出力する、ことを特徴とする車両用負荷制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用負荷制御装置において、
前記制御部は、
前記第1駆動部および前記第2駆動部の出力状態を監視するための出力監視信号を取り込み、
車両が停車した状態で前記負荷を停止させる操作が行われた後、車両が走行状態となるまでに、前記出力監視信号の内容と、前記第1制御信号および前記第2制御信号の内容とが整合しているか否かを判定し、
前記整合がとれていない場合は、前記第1駆動部へ前記第1制御信号を出力し、前記第2駆動部へ前記第2制御信号を出力する、ことを特徴とする車両用負荷制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用負荷制御装置において、
前記制御部は、
前記第1駆動部の出力状態を監視するための第1出力監視信号と、前記第2駆動部の出力状態を監視するための第2出力監視信号とを取り込み、
車両が停車した状態で前記負荷を停止させる操作が行われた後、車両が走行状態となるまでに、前記第1出力監視信号の内容と前記第1制御信号の内容とが整合しているか否か、および、前記第2出力監視信号の内容と前記第2制御信号の内容とが整合しているか否か、をそれぞれ判定し、
前記いずれかの整合がとれていない場合は、前記第1駆動部へ前記第1制御信号を出力し、前記第2駆動部へ前記第2制御信号を出力する、ことを特徴とする車両用負荷制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の車両用負荷制御装置において、
前記負荷は、車両の走行駆動源であるエンジンまたはモータであり、
前記制御部は、
車両が停車した状態で前記走行駆動源を停止させる操作が行われた後、前記走行駆動源を動作させる操作が行われずに、車両が走行状態となった場合に、前記第1駆動部へ前記第1制御信号を出力し、前記第2駆動部へ前記第2制御信号を出力する、ことを特徴とする車両用負荷制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の車両用負荷制御装置において、
前記負荷は、車両に装備されたヘッドランプであり、
前記制御部は、
車両が停車した状態で前記ヘッドランプを消灯させる操作が行われた後、前記ヘッドランプを点灯させる操作が行われずに、車両が走行状態となった場合に、前記第1駆動部へ前記第1制御信号を出力し、前記第2駆動部へ前記第2制御信号を出力する、ことを特徴とする車両用負荷制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載の車両用負荷制御装置において、
前記制御部は、
前記第1制御信号を前記第1駆動部へ出力し、前記第2制御信号を前記第2駆動部へ出力した後、警報信号を出力することを特徴とする車両用負荷制御装置。
【請求項7】
車両に装備された負荷を駆動するための第1駆動信号を出力する第1駆動部と、前記負荷を駆動するための第2駆動信号を出力する第2駆動部と、外部から入力される所定の信号に基づいて、前記第1駆動部および前記第2駆動部の動作を制御する制御部と、を備えた車両用負荷制御装置における負荷の制御方法であって、
車両が停車状態であることを示す第1外部信号を前記制御部に入力する手順と、
前記負荷を停止させる操作が行われたことを示す第2外部信号を前記制御部に入力する手順と、
前記第1外部信号および前記第2外部信号が前記制御部に入力された後、前記負荷を動作させる操作が行われないまま、車両が走行状態であることを示す第3外部信号を前記制御部に入力する手順と、
前記第3外部信号が入力された場合に、前記制御部が、前記第1駆動部に対して前記第1駆動信号の出力を指令する第1制御信号を出力する手順と、
前記第3外部信号が入力された場合に、前記制御部が、前記第2駆動部に対して前記第2駆動信号の出力を指令する第2制御信号を出力する手順と、
前記第1駆動部が、前記第1制御信号に基づいて、前記第1駆動信号を出力する手順と、
前記第2駆動部が、前記第2制御信号に基づいて、前記第2駆動信号を出力する手順と、を含むことを特徴とする車両用負荷制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に装備された負荷を制御するための制御装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、エンジンやヘッドランプなどの各種の負荷が装備されており、それらを制御するための負荷制御装置が搭載されている。この負荷制御装置は、一般に制御部と駆動部とを備えている。制御部は、外部から入力される各種の信号に基づいて、負荷を制御するための制御信号を出力する。駆動部は、制御部からの制御信号に基づいて、負荷を駆動するための駆動信号を出力する。特許文献1には、このような負荷制御装置の例が示されている。
【0003】
車両用の負荷制御装置において、駆動部に故障が発生すると、制御部から駆動部へ制御信号が与えられているにもかかわらず、駆動部から駆動信号が出力されず、負荷が動作しないという事態が生じる。そこで、信頼性を確保するために駆動部を2系統とし、一方の駆動部が故障しても他方の駆動部が駆動信号を出力することで、負荷が正常に動作するようにした負荷制御装置が従来から知られている。特許文献2および特許文献3には、このような2系統の駆動部を備えた車両用負荷制御装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-181458号公報
【特許文献2】特開2011-195101号公報
【特許文献3】特開2006-256562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
負荷制御装置の駆動部には、FETなどのスイッチング素子が設けられているが、短絡などが原因でスイッチング素子にON故障(素子が常時ON状態となる故障)が発生する場合がある。ON故障が発生すると、制御部からの制御信号に関係なく、駆動部は駆動信号を出力し続ける。しかしながら、ON故障が発生した後も、常にON故障の状態が維持されるとは限らない。たとえば、ON故障によりスイッチング素子に電流が流れ続けて素子自体が熱破壊すると、当該スイッチング素子はOFF故障(素子が常時OFF状態となる故障)の状態に変化する。この場合、駆動部は、制御部からの制御信号に関係なく、駆動信号を出力しない。
【0006】
このように、負荷制御装置の駆動部のスイッチング素子が、ON故障の状態からOFF故障の状態へ変化すると、負荷によっては、車両の走行の安全が脅かされる事態に至ることがある。詳細は後述するが、たとえば、負荷がエンジンである場合は、車両を停車させてエンジンの停止操作を行っても、スイッチング素子がON故障していると、駆動部から駆動信号が出力されているので、エンジンは停止しない。このため、エンジンが動作した状態で車両を再発車させると、その後の走行中に、このスイッチング素子にOFF故障が発生して、当該素子の状態がON故障状態からOFF故障状態に変化した場合、駆動部から駆動信号が出力されなくなるので、動作中のエンジンが急停止して走行の安全が脅かされる。
【0007】
本発明の課題は、駆動部においてスイッチング素子にON故障が発生し、その後、このスイッチング素子にOFF故障が発生したことにより、スイッチング素子がON故障状態からOFF故障状態に変化した場合でも、車両を安全な状態に維持できる車両用負荷制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る車両用負荷制御装置は、車両に装備された負荷を駆動するための第1駆動信号を出力する第1駆動部と、同負荷を駆動するための第2駆動信号を出力する第2駆動部と、外部から入力される所定の信号に基づいて、第1駆動部および第2駆動部の動作を制御する制御部とを備えている。制御部は、車両が停車した状態で負荷を停止させる操作が行われた後、負荷を動作させる操作が行われずに、車両が走行状態となった場合に、第1駆動部に対して、第1駆動信号の出力を指令する第1制御信号を出力するとともに、第2駆動部に対して、第2駆動信号の出力を指令する第2制御信号を出力する。
【0009】
このようにすれば、第1駆動部または第2駆動部においてON故障が発生し、その後、このON故障がOFF故障へ変化した場合でも、第1駆動部と第2駆動部の一方から駆動信号が出力されるので、車両の走行中に負荷が停止することはなく、安全性が確保される。
【0010】
本発明において、制御部は、第1駆動部および第2駆動部の出力状態を監視するための出力監視信号を取り込んでもよい。この場合、制御部は、車両が停車した状態で負荷を停止させる操作が行われた後、車両が走行状態となるまでに、出力監視信号の内容と、第1制御信号および第2制御信号の内容とが整合しているか否かを判定する。そして、整合がとれていない場合は、制御部は、第1駆動部へ第1制御信号を出力し、第2駆動部へ第2制御信号を出力する。
【0011】
本発明において、制御部は、第1駆動部の出力状態を監視するための第1出力監視信号と、第2駆動部の出力状態を監視するための第2出力監視信号とを取り込んでもよい。この場合、制御部は、車両が停車した状態で負荷を停止させる操作が行われた後、車両が走行状態となるまでに、第1出力監視信号の内容と第1制御信号の内容とが整合しているか否か、および、第2出力監視信号の内容と第2制御信号の内容とが整合しているか否かをそれぞれ判定する。そして、いずれかの整合がとれていない場合は、制御部は、第1駆動部へ第1制御信号を出力し、第2駆動部へ第2制御信号を出力する。
【0012】
本発明において、負荷は、車両の走行駆動源であるエンジンまたはモータであってもよい。この場合、制御部は、車両が停車した状態で走行駆動源を停止させる操作が行われた後、走行駆動源を動作させる操作が行われずに、車両が走行状態となると、第1駆動部へ第1制御信号を出力し、第2駆動部へ第2制御信号を出力する。
【0013】
本発明において、負荷は、車両に装備されたヘッドランプであってもよい。この場合、制御部は、車両が停車した状態でヘッドランプを消灯させる操作が行われた後、ヘッドランプを点灯させる操作が行われずに、車両が走行状態となると、第1駆動部へ第1制御信号を出力し、第2駆動部へ第2制御信号を出力する。
【0014】
本発明において、制御部は、第1制御信号を第1駆動部へ出力し、第2制御信号を第2駆動部へ出力した後、警報信号を出力してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、駆動部においてスイッチング素子にON故障が発生し、その後、このスイッチング素子にOFF故障が発生したことにより、スイッチング素子がON故障状態からOFF故障状態に変化した場合でも、車両を安全な状態に維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態を示したブロック図である。
【
図2】第1実施形態の動作を示したフローチャートである。
【
図3】第1実施形態における正常時および故障時の状態遷移を示した表である。
【
図4】従来例における故障時の状態遷移を示した表である。
【
図5】本発明の第2実施形態を示したブロック図である。
【
図6】第2実施形態の動作を示したフローチャートである。
【
図7】第2実施形態における故障時の状態遷移を示した表である。
【
図8】本発明の第3実施形態を示したブロック図である。
【
図9】第3実施形態の動作を示したフローチャートである。
【
図10】本発明の第4実施形態を示したブロック図である。
【
図11】第4実施形態の動作を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のいくつかの実施形態につき、図面を参照しながら説明する。各図を通して、同一の部分または対応する部分には、同一の符号を付してある。
【0018】
図1は、第1実施形態による車両用負荷制御装置(以下、単に「負荷制御装置」という。)を示している。負荷制御装置101は、ECU(電子制御ユニット)から構成されていて、自動四輪車などの車両に搭載されている。負荷制御装置101には、CPUなどから構成される制御部1と、FETなどのスイッチング素子およびその駆動回路などから構成されるメイン側の第1駆動部10と、同じくFETなどのスイッチング素子およびその駆動回路などから構成されるサブ側の第2駆動部20とが備わっている。
【0019】
負荷制御装置101の出力側には、負荷201が接続される。本実施形態では、負荷201は車両のエンジンである(厳密にはエンジン駆動回路に設けられたリレーが負荷であるが、便宜上エンジンを負荷とする)。負荷制御装置101の入力側には、シフトポジション信号、アクセル信号、車速信号、および負荷操作信号の各信号線が接続される。負荷制御装置101は、これらの信号に基づいて、負荷201を制御する。
【0020】
シフトポジション信号は、運転席のシフトレバーの切替位置を示す信号である。アクセル信号は、アクセルペダルが踏まれたか否かを示す信号である。車速信号は、車両に装備された車速センサが出力する車両の速度を示す信号である。負荷操作信号は、負荷201を動作または停止させる操作が行われたことを示す信号である。
【0021】
ここで、車速がゼロであることを示す車速信号、およびシフトポジションがP(パーキング)であることを示すシフトポジション信号は、請求項7における「第1外部信号」に相当する。また、負荷201を停止させる操作が行われたことを示す負荷操作信号は、請求項7における「第2外部信号」に相当する。さらに、アクセルペダルが踏まれたことを示すアクセル信号、および車速がゼロでないことを示す車速信号は、請求項7における「第3外部信号」に相当する。
【0022】
上述したシフトポジション信号、アクセル信号、車速信号、および負荷操作信号の4つの信号は、外部から制御部1に入力される。制御部1は、これらの信号に基づいて、第1駆動部10および第2駆動部20のそれぞれの動作を制御する。詳しくは、制御部1は、第1駆動部10へ第1制御信号を出力し、第2駆動部20へ第2制御信号を出力する。これらの第1制御信号および第2制御信号は、いずれもONとOFFの2つの状態をとる。
【0023】
ONの第1制御信号は、第1駆動部10に対して、第1駆動信号を出力することを指令する信号であり、OFFの第1制御信号は、第1駆動部10に対して、第1駆動信号を出力しないことを指令する信号である。また、ONの第2制御信号は、第2駆動部20に対して、第2駆動信号を出力することを指令する信号であり、OFFの第2制御信号は、第2駆動部20に対して、第2駆動信号を出力しないことを指令する信号である。
【0024】
第1駆動部10は、制御部1から入力される第1制御信号の状態に応じて、負荷201を駆動するための第1駆動信号を出力し、またはその出力を禁止する。詳しくは、制御部1からONの第1制御信号が入力された場合は、第1駆動部10のスイッチング素子がONして、第1駆動部10から第1駆動信号が出力される。また、制御部1からOFFの第1制御信号が入力された場合は、第1駆動部10のスイッチング素子がOFFして、第1駆動部10から第1駆動信号は出力されない。
【0025】
同様に、第2駆動部20は、制御部1から入力される第2制御信号の状態に応じて、負荷201を駆動するための第2駆動信号を出力し、またはその出力を禁止する。詳しくは、制御部1からONの第2制御信号が入力された場合は、第2駆動部20のスイッチング素子がONして、第2駆動部20から第2駆動信号が出力される。また、制御部1からOFFの第2制御信号が入力された場合は、第2駆動部20のスイッチング素子がOFFして、第2駆動部20から第2駆動信号は出力されない。
【0026】
第1駆動部10から出力される第1駆動信号は、負荷201に与えられる。また、第2駆動部20から出力される第2駆動信号も、負荷201に与えられる。したがって、負荷201は、第1駆動信号と第2駆動信号の少なくとも一方が入力された場合に動作し、第1駆動信号と第2駆動信号のいずれもが入力されない場合に停止する。このように駆動部を2系統にしたことで、第1駆動部10と第2駆動部20の一方が故障しても、他方から出力される駆動信号により、負荷201を動作させることができる。
【0027】
次に、上述した負荷制御装置101の動作につき、
図2のフローチャートを参照しながら説明する。
図2に示した一連の手順は、制御部1によって実行され、車両が停車してIG(イグニッション)スイッチがOFFに操作された時点から開始される。太線で示したステップS4およびS6が、第1実施形態の特徴となる部分である。
【0028】
ステップS1では、外部から入力される車速信号とシフトポジション信号に基づいて、車速がゼロかつシフトレバー位置がP(パーキング)であるか否か、すなわち車両が停車状態か否かが判定される。車両が停車状態であれば、ステップS1の判定はYESとなり、ステップS2へ進む。ステップS2では、外部から入力される負荷操作信号がOFF状態か否か、が判定される。負荷201がエンジンの場合、負荷操作信号はIGスイッチの操作に基づいて生成される。詳しくは、IGスイッチのONにより負荷操作信号はON状態となり、IGスイッチのOFFにより負荷操作信号はOFF状態となる。
【0029】
負荷操作信号がOFF状態であれば、ステップS2の判定はYESとなり、ステップS3へ進む。ステップS3では、制御部1から第1駆動部10へ出力される第1制御信号がOFFとなり、制御部1から第2駆動部20へ出力される第2制御信号もOFFとなる。一方、ステップS1の判定がNOの場合、およびステップS2の判定がNOの場合は、ステップS8へ進む。ステップS8では、制御部1から出力される第1制御信号および第2制御信号は、ともにONに維持される。
【0030】
次に、ステップS4において、外部から入力されるアクセル信号がOFF状態(アクセルペダルが踏まれていない状態)で、かつ車速がゼロであるか否か、が判定される。アクセル信号がOFFで車速がゼロであれば、車両は停車状態を維持しており、この場合はステップS4の判定がYESとなって、ステップS5へ進む。ステップS5では、制御部1から出力される第1制御信号および第2制御信号は、ともにOFFに維持される。
【0031】
一方、ステップS4において、アクセル信号がON状態(アクセルペダルが踏まれた状態)で、かつ車速がゼロでなければ、車両は停車状態から走行状態へ移ったことになる。この場合は、ステップS4の判定はNOとなって、ステップS6へ進む。ステップS6では、制御部1から出力される第1制御信号と第2制御信号が、ともにOFF(ステップS3)からONに変化する。このようにしたのは、以下のような理由による。
【0032】
ステップS2において、負荷操作信号がOFF状態であれば、第1駆動部10および第2駆動部20から駆動信号が出力されず、負荷201であるエンジンは停止しているはずである。しかるに、たとえば第1駆動部10のスイッチング素子がON故障していると、第2駆動部20から第2駆動信号が出力されなくても、第1駆動部10から第1駆動信号が出力され続けるため、エンジンは動作したままとなる。このため、運転手は、IGスイッチをONすることなく(すなわちエンジンを動作させる操作を行うことなく)、車両を再発車させることができる。
【0033】
その場合、車両の走行中に第1駆動部10のスイッチング素子にOFF故障が発生して、当該素子がON故障状態からOFF故障状態に変化すると、第1駆動部10から第1駆動信号が出力されなくなって、エンジンが急停止し、走行中の車両の安全が脅かされる。そこで、ステップS6の処理を行うことで、第1駆動部10から第1駆動信号が出力されなくても、第2制御信号のONにより第2駆動部20から第2駆動信号が出力されるため、エンジンは動作状態を維持し、車両の安全を確保することができる。
【0034】
ステップS6の処理が完了すると、ステップS7に進む。ステップS7では、制御部1から、図示しない信号線を介して警報信号が出力される。この警報信号に基づいて、たとえば、車室内のディスプレイに、IGスイッチの操作なしに車両が再発車したことや、エンジンの急停止を回避する処理が行われたことなどのメッセージが表示される。あるいは、これらのメッセージを音声で出力してもよい。
【0035】
図3は、上述した第1実施形態の負荷制御装置101における、信号状態や動作状態の遷移を示している。
【0036】
図3(a)は、正常時の状態遷移である。正常時には、負荷操作信号がON状態になると、第1駆動部10および第2駆動部20から、それぞれ第1駆動信号および第2駆動信号が出力され(ONと表示)、エンジンは動作状態となる。また、負荷操作信号がOFF状態になると、第1駆動部10および第2駆動部20から第1駆動信号および第2駆動信号が出力されず(OFFと表示)、エンジンは停止状態となる。
【0037】
図3(b)は、故障時の状態遷移である。左側の欄外に示されている符号は、
図2のステップのうち対応するステップを表している。第1駆動部10にON故障が発生すると、負荷操作信号がOFF状態になっても、第1駆動信号が出力され続け(ON故障と表示)、エンジンは動作したままとなる。一方、故障の発生していない第2駆動部20は、負荷操作信号がOFF状態になると、第2駆動信号の出力を停止する(OFFと表示)。
【0038】
この状態で、エンジン始動操作(IGスイッチのON)がされないまま車両が再発車すると、制御部1は、ONの第1制御信号を第1駆動部10へ出力し、ONの第2制御信号を第2駆動部20へ出力する。このため、車両の走行中に第1駆動部10のON故障がOFF故障に変化した場合、第1駆動部10からは第1駆動信号が出力されないが(OFF故障と表示)、第2駆動部20から第2駆動信号が出力されるので(ONと表示)、エンジンは停止することなく動作状態を維持する。
【0039】
図4は、従来の負荷制御装置における状態遷移を示している。従来においては、第1駆動部10にON故障が発生し、その後の車両走行中に、第1駆動部10のON故障がOFF故障に変化した場合、第1駆動部10からも第2駆動部20からも駆動信号が出力されなくなるので、走行中の車両のエンジンが急停止して、安全が脅かされることになる。
【0040】
以上述べたように、第1実施形態の負荷制御装置101によれば、第1駆動部10または第2駆動部20においてON故障が発生し、その後、このON故障がOFF故障へ変化した場合でも、第1駆動部10と第2駆動部20の一方から駆動信号が出力されるので、車両の走行中にエンジンが停止することはなく、安全性が確保される。また、ON故障やOFF故障の発生を検出しないので、故障検出回路が不要となり、装置を安価に構成することができる。
【0041】
図5は、第2実施形態による負荷制御装置102を示している。
図5において
図1と異なる点は、第1駆動部10が出力する第1駆動信号と、第2駆動部20が出力する第2駆動信号とが、両駆動部10、20の出力状態を監視するための出力監視信号として、制御部1に取り込まれる構成となっている点である。その他の構成については、
図1と同じであるので、重複する部分の説明は省略する。
【0042】
図6は、
図5の負荷制御装置102の動作を示したフローチャートである。
図6において
図2と異なる点は、ステップS4の次にステップS4aが追加されている点である。その他のステップについては、
図2と同じであるので、重複するステップの説明は省略する。太線で示したステップS4、S4a、およびS6が、第2実施形態の特徴となる部分である。
【0043】
図6のステップS4において、アクセル信号がOFF状態であり、車速がゼロであると判定された場合、すなわち車両が走行状態となるまでは、ステップS4aへ進む。ステップS4aでは、制御部1に取り込まれた出力監視信号(第1駆動信号および第2駆動信号)の内容と、制御部1から出力された第1制御信号および第2制御信号の内容とが整合しているか否かを判定する。
【0044】
詳しくは、制御部1からOFFの第1制御信号と、OFFの第2制御信号とが出力されている場合(ステップS3)に、出力監視信号がOFF状態であれば、制御信号と出力監視信号は整合している。しかし、出力監視信号がON状態であれば、制御信号と出力監視信号は整合していない。この場合は、第1駆動部10または第2駆動部20に、ON故障が発生していると考えられる。
【0045】
ステップS4aにおいて、出力監視信号と、第1制御信号および第2制御信号とが整合している場合は、判定はYESとなり、前述したステップS5へ進む。一方、ステップS4aにおいて、出力監視信号と、第1制御信号および第2制御信号とが整合していない場合は、判定はNOとなり、前述したステップS6へ進む。
【0046】
図7は、第2実施形態の負荷制御装置102における、故障時の信号状態や動作状態の遷移を示している。左側の欄外に示されている符号は、
図6のステップのうち対応するステップを表している。
図3(b)の第1実施形態の場合は、車両の走行後に第1制御信号と第2制御信号がONに切り替わったが、
図7の場合は、車両の走行前(停車中)に第1制御信号と第2制御信号がONに切り替わり、第1駆動部10と第2駆動部20から、第1駆動信号と第2駆動信号が出力される。
【0047】
上述した第2実施形態の負荷制御装置102によれば、第1駆動部10または第2駆動部20にON故障が発生していることを、車両の走行前に検出することができる。
【0048】
図8は、第3実施形態による負荷制御装置103を示している。
図8において
図1と異なる点は、第1駆動部10が出力する第1駆動信号が、第1駆動部10の出力状態を監視するための第1出力監視信号として制御部1に取り込まれ、また、第2駆動部20が出力する第2駆動信号が、第2駆動部20の出力状態を監視するための第2出力監視信号として制御部1に取り込まれる構成となっている点である。その他の構成については、
図1と同じであるので、重複する部分の説明は省略する。
【0049】
図9は、
図8の負荷制御装置103の動作を示したフローチャートである。
図9において
図2と異なる点は、ステップS4の次に、ステップS4bとステップS4cが追加されている点である。その他のステップについては、
図2と同じであるので、重複するステップの説明は省略する。太線で示したステップS4、S4b、S4c、およびS6が、第3実施形態の特徴となる部分である。
【0050】
図9のステップS4において、アクセル信号がOFF状態であり、車速がゼロであると判定された場合、すなわち車両が走行状態となるまでは、ステップS4bへ進む。ステップS4bでは、制御部1に取り込まれた第1出力監視信号(第1駆動信号)の内容と、制御部1から出力された第1制御信号の内容とが整合しているか否かを判定する。
【0051】
詳しくは、制御部1からOFFの第1制御信号が出力されている場合(ステップS3)に、第1出力監視信号がOFF状態であれば、第1制御信号と第1出力監視信号は整合している。しかし、第1出力監視信号がON状態であれば、第1制御信号と第1出力監視信号は整合していない。この場合は、第1駆動部10にON故障が発生していると考えられる。
【0052】
ステップS4bにおいて、第1出力監視信号と第1制御信号とが整合している場合は、判定はYESとなり、次のステップS4cへ進む。一方、ステップS4bにおいて、第1出力監視信号と第1制御信号とが整合していない場合は、判定はNOとなり、前述したステップS6へ進む。
【0053】
ステップS4cでは、制御部1に取り込まれた第2出力監視信号(第2駆動信号)の内容と、制御部1から出力された第2制御信号の内容とが整合しているか否かを判定する。
【0054】
詳しくは、制御部1からOFFの第2制御信号が出力されている場合(ステップS3)に、第2出力監視信号がOFF状態であれば、第2制御信号と第2出力監視信号は整合している。しかし、第2出力監視信号がON状態であれば、第2制御信号と第2出力監視信号は整合していない。この場合は、第2駆動部20にON故障が発生していると考えられる。
【0055】
ステップS4cにおいて、第2出力監視信号と第2制御信号とが整合している場合は、判定はYESとなり、前述したステップS5へ進む。一方、ステップS4cにおいて、第2出力監視信号と第2制御信号とが整合していない場合は、判定はNOとなり、前述したステップS6へ進む。
【0056】
上述した第3実施形態の負荷制御装置103によれば、第1駆動信号と第2駆動信号とを個別に監視することにより、第1駆動部10と第2駆動部20のいずれにON故障が発生しているかを、車両の走行前に検出することができる。
【0057】
図10は、第4実施形態による負荷制御装置104を示している。
図10において
図1と異なる点は、負荷202が第1負荷202aおよび第2負荷202bからなる点と、負荷202がエンジンではなくヘッドランプである点と、制御部1へ車外明暗信号が入力される点である。第1負荷202aは右ヘッドランプであり、第1駆動部10から出力される第1駆動信号により動作(点灯)する。第2負荷202bは左ヘッドランプであり、第2駆動部20から出力される第2駆動信号により動作(点灯)する。各ヘッドランプは、車両の前側に装備されていて、車両前方へ光を投射する。制御部1へ入力される車外明暗信号は、車両に装備された照度センサが出力する車外の明暗を示す信号である。その他の構成については、
図1と同じであるので、重複する部分の説明は省略する。
【0058】
図11は、
図10の負荷制御装置104の動作を示したフローチャートである。
図11において
図2と異なる点は、
図2のステップS1がステップS1aに置き換わり、
図2のステップS4がステップS4dに置き換わっている点である。なお、ステップS2における負荷操作信号は、第4実施形態の場合、ヘッドランプを点灯または消灯させる操作に基づく信号である。その他のステップについては、
図2と同じであるので、重複するステップの説明は省略する。太線で示したステップS4dおよびS6が、第4実施形態の特徴となる部分である。
【0059】
図11のステップS1aにおいては、車速信号に基づいて車速がゼロか否かが判定され、車外明暗信号に基づいて車外が明るいか否かが判定される。照度センサで検出された照度が閾値以上であれば、車外は明るいと判定され、照度が閾値未満であれば、車外は暗いと判定される。車速がゼロで、かつ車外が明るい場合は、ステップS1aの判定はYESとなり、前述したステップS2へ進む。また、車速がゼロでない場合や、車外が暗い場合は、前述したステップS8へ進む。
【0060】
ステップS4dにおいては、アクセル信号がOFF状態で、車速がゼロで、かつ車外が明るいか否かが判定される。車両が停車した状態で車外が明るい場合は、ステップS4dの判定はYESとなり、前述したステップS5へ進む。また、車両が走行状態であって車外が暗い場合は、前述したステップS6へ進む。
【0061】
ところで、ステップS2において、負荷操作信号がOFF状態であれば、第1駆動部10および第2駆動部20から駆動信号が出力されず、負荷202の各ヘッドランプは消灯しているはずである。しかるに、たとえば第1駆動部10のスイッチング素子がON故障していると、第1駆動部10から第1駆動信号が出力され続けるため、第1負荷202aの右ヘッドランプは点灯したままとなる。このため、運転手は、ヘッドランプを点灯させる操作を行わずに、車両を再発車させる場合がある。
【0062】
その場合、車両の走行中に第1駆動部10のスイッチング素子にOFF故障が発生して、当該素子がON故障状態からOFF故障状態に変化すると、従来は、第1駆動部10から第1駆動信号が出力されなくなって、第1負荷202aの右ヘッドランプが消灯する。このため、左右のヘッドランプは共に消灯状態となり、車外が暗い場合に走行中の車両の安全が脅かされる。しかるに、第4実施形態の負荷制御装置104によれば、ステップS6の処理により、第2駆動部20から第2駆動信号が出力されるので、第2負荷202bの左ヘッドランプが点灯する。これにより、車外が暗い場合における走行中の車両の安全を確保することができる。
【0063】
本発明では、以上述べた実施形態以外にも、種々の実施形態を採用することができる。たとえば、
図10で示した負荷制御装置104において、
図5に示したような、出力監視信号を制御部1に取り込む構成や、
図8に示したような、第1出力監視信号および第2出力監視信号を制御部1に取り込む構成を採用してもよい。
【0064】
また、上述した第1ないし第3実施形態においては、負荷201として走行源であるエンジンを例に挙げたが、車両が電気自動車である場合は、負荷201は走行源であるモータとなる。
【0065】
また、上述した第4実施形態においては、負荷202としてヘッドランプを例に挙げたが、負荷202がワイパーの場合にも、本発明は適用が可能である。この場合は、車両に装備された雨滴センサの検出信号が、制御部1に入力される。
【符号の説明】
【0066】
1 制御部
10 第1駆動部
20 第2駆動部
101 車両用負荷制御装置(第1実施形態)
102 車両用負荷制御装置(第2実施形態)
103 車両用負荷制御装置(第3実施形態)
104 車両用負荷制御装置(第4実施形態)
201 負荷(エンジン)
202 負荷(ヘッドランプ)