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特開2023-139491括れ型シリカ粒子連結体、それを複数含む括れ型シリカ粒子連結体分散液およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139491
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】括れ型シリカ粒子連結体、それを複数含む括れ型シリカ粒子連結体分散液およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/18 20060101AFI20230927BHJP
   C01B 33/146 20060101ALI20230927BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20230927BHJP
   C09G 1/02 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
C01B33/18 E
C01B33/146
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
C09G1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045053
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100160864
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 政治
(72)【発明者】
【氏名】中山 和洋
(72)【発明者】
【氏名】碓田 真也
【テーマコード(参考)】
4G072
【Fターム(参考)】
4G072AA28
4G072BB05
4G072BB20
4G072CC01
4G072DD05
4G072EE01
4G072GG01
4G072GG03
4G072HH18
4G072JJ42
4G072LL06
4G072MM01
4G072PP02
4G072PP20
4G072RR07
4G072RR12
4G072TT01
4G072TT02
4G072TT30
4G072UU30
(57)【要約】
【課題】研磨用組成物として用いた場合に優れた研磨性を示す括れ型シリカ粒子連結体の提供。
【解決手段】5~50個のシリカ一次粒子が連結していて、下記(A)~(C)の要件を満たす、括れ型シリカ粒子連結体。(A)前記シリカ一次粒子の平均粒子径が5~600nmである。(B)前記シリカ一次粒子の粒子径変動係数(CV値)が15~90%である。(C)粒子径がa、b、cの各々である3つの前記シリカ一次粒子がこの順に連結していてa>bかつc>bを満たしている特定連結部を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5~50個のシリカ一次粒子が連結していて、下記(A)~(C)の要件を満たす、括れ型シリカ粒子連結体。
(A)前記シリカ一次粒子の平均粒子径が5~600nmである。
(B)前記シリカ一次粒子の粒子径変動係数(CV値)が15~90%である。
(C)粒子径がa、b、cの各々である3つの前記シリカ一次粒子がこの順に連結していてa>bかつc>bを満たしている特定連結部を有する。
【請求項2】
さらに下記(D)の要件を満たす、請求項1に記載の括れ型シリカ粒子連結体。
(D)a―b≧(b/10)かつc―b≧(b/10)を満たす。
【請求項3】
さらに下記(E)の要件を満たす、請求項1または2に記載の括れ型シリカ粒子連結体。
(E)前記特定連結部を2以上含む。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の括れ型シリカ粒子連結体が少なくとも一部を構成する粒子群が分散媒に分散しており、
前記粒子群の動的光散乱法によって測定される平均粒子径が50~600nmである、括れ型シリカ粒子連結体分散液。
【請求項5】
前記粒子群に占める前記括れ型シリカ粒子連結体の存在割合(個数比率)が10~100%である、請求項4に記載の括れ型シリカ粒子連結体分散液。
【請求項6】
粒子径がa、b、cの各々である3つのシリカ一次粒子がこの順に連結していてa>bかつc>bを満たしている特定連結部を有する括れ型シリカ粒子連結体が少なくとも一部を構成する粒子群が分散媒に分散してなり、下記[1]~[4]の要件を満たす、括れ型シリカ粒子連結体分散液。
[1]前記粒子群の少なくとも一部を構成する複数の前記括れ型シリカ粒子連結体における前記シリカ一次粒子の粒子径が、平均で5~600nmである。
[2]前記粒子群の少なくとも一部を構成する複数の前記括れ型シリカ粒子連結体における前記シリカ一次粒子の粒子径変動係数(CV値)が、平均で15~90%である。
[3]前記粒子群の少なくとも一部を構成する複数の前記括れ型シリカ粒子連結体において、1つの前記括れ型シリカ粒子連結体を構成する前記シリカ一次粒子の個数が、平均で5~50個である。
[4]動的光散乱法によって測定される平均粒子径が50~600nmである。
【請求項7】
さらに下記[5]の要件を満たす、請求項6に記載の括れ型シリカ粒子連結体分散液。
[5]前記粒子群に含まれる前記括れ型シリカ粒子連結体の存在割合(個数比率)が10~100%である。
【請求項8】
平均粒子径が10%以上異なる2種類のシリカ一次粒子が分散している分散液を各々用意し、これらを混合して準備用分散液を得る準備工程と、
前記準備用分散液にカチオン性有機高分子成分を添加する添加工程と、
を備え、請求項4~7のいずれかに記載の括れ型シリカ粒子連結体分散液が得られる、括れ型シリカ粒子連結体分散液の製造方法。
【請求項9】
前記添加工程において、
前記準備用分散液に前記カチオン性有機高分子成分を添加した後、さらに珪酸液を添加してネック部を成長させる、請求項8に記載の括れ型シリカ粒子連結体分散液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、括れ型構造を有するシリカ粒子連結体、即ち、括れ型シリカ粒子連結体と、係る括れ型シリカ粒子連結体が溶媒に分散している括れ型シリカ粒子連結体分散液およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカ微粒子分散液(シリカゾル)のうち、シリカ微粒子が球状以外の形状からなるシリカ微粒子分散液としては、シリカ微粒子の外形が鎖状、数珠状、長球状又は粒子連結体(粒子連結型シリカ微粒子)のものが知られている。特にシリカ微粒子が粒子連結体(シリカ粒子連結体)のものは、粒子連結型シリカ微粒子分散液と呼ばれ、研磨砥粒分散液として、ハードディスク基材の研磨を始め各種基材の研磨用途に適用されている。
【0003】
特許文献1には、画像解析法により測定される平均粒子径が5~300nmの範囲にあるアルミナ-シリカ複合一次粒子が2個以上結合した構造を含む粒子連結型アルミナ-シリカ複合微粒子が分散媒に分散してなる粒子連結型アルミナ-シリカ複合ゾルおよびその製造方法の発明が開示されている。特許文献1では、この粒子連結型アルミナ-シリカ複合微粒子が、アルミナ-シリカ複合一次粒子として、表面に複数の疣状突起を有する球状粒子を含むことを特徴とする。この発明は、通常の粒子連結型シリカ微粒子または非球状アルミナ-シリカ複合微粒子とは異なる特異な構造を有する。このため、例えば、研磨材および研磨用組成物として有用であり、特に高研磨速度の効果において優れるものとされている。しかし、アルミニウムは研磨基板の種類によっては汚染物質となってしまうため、好ましくない。
【0004】
特許文献2には、画像解析法により測定される平均粒子径が5~300nmの範囲にあるシリカ一次粒子が2個以上結合した構造を含む粒子連結型シリカ微粒子が分散媒に分散してなる粒子連結型シリカゾルおよびその製造方法の発明が開示されている。特許文献2では、この粒子連結型シリカ微粒子が、シリカ一次粒子として、表面に複数の疣状突起を有する球状粒子を含むことを特徴とする。この発明は、通常の粒子連結型シリカ微粒子または非球状シリカ微粒子とは異なる特異な構造を有することから、例えば、研磨材および研磨用組成物として有用であり、特に高研磨速度の効果において優れるものであるとされている。しかし、結合様態としてテトラポット型を含み、さらには疣状突起を含むことにより局所的な研磨基板への応力集中が発生しやすいためか、スクラッチ等の研磨傷を生じやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-155180号公報
【特許文献2】特開2011-016702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、研磨用組成物として用いた場合に優れた研磨性を示す括れ型シリカ粒子連結体、それを複数含む括れ型シリカ粒子連結体分散液およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意検討し、本発明を完成させた。本発明は以下の(1)~(9)である。
(1)5~50個のシリカ一次粒子が連結していて、下記(A)~(C)の要件を満たす、括れ型シリカ粒子連結体。
(A)前記シリカ一次粒子の平均粒子径が5~600nmである。
(B)前記シリカ一次粒子の粒子径変動係数(CV値)が15~90%である。
(C)粒子径がa、b、cの各々である3つの前記シリカ一次粒子がこの順に連結していてa>bかつc>bを満たしている特定連結部を有する。
(2)さらに下記(D)の要件を満たす、上記(1)に記載の括れ型シリカ粒子連結体。
(D)a―b≧(b/10)かつc―b≧(b/10)を満たす。
(3)さらに下記(E)の要件を満たす、上記(1)または(2)に記載の括れ型シリカ粒子連結体。
(E)前記特定連結部を2以上含む。
(4)上記(1)~(3)のいずれかに記載の括れ型シリカ粒子連結体が少なくとも一部を構成する粒子群が分散媒に分散しており、
前記粒子群の動的光散乱法によって測定される平均粒子径が50~600nmである、括れ型シリカ粒子連結体分散液。
(5)前記粒子群に占める前記括れ型シリカ粒子連結体の存在割合(個数比率)が10~100%である、上記(4)に記載の括れ型シリカ粒子連結体分散液。
(6)粒子径がa、b、cの各々である3つのシリカ一次粒子がこの順に連結していてa>bかつc>bを満たしている特定連結部を有する括れ型シリカ粒子連結体が少なくとも一部を構成する粒子群が分散媒に分散してなり、下記[1]~[4]の要件を満たす、括れ型シリカ粒子連結体分散液。
[1]前記粒子群の少なくとも一部を構成する複数の前記括れ型シリカ粒子連結体における前記シリカ一次粒子の粒子径が、平均で5~600nmである。
[2]前記粒子群の少なくとも一部を構成する複数の前記括れ型シリカ粒子連結体における前記シリカ一次粒子の粒子径変動係数(CV値)が、平均で15~90%である。
[3]前記粒子群の少なくとも一部を構成する複数の前記括れ型シリカ粒子連結体において、1つの前記括れ型シリカ粒子連結体を構成する前記シリカ一次粒子の個数が、平均で5~50個である。
[4]動的光散乱法によって測定される平均粒子径が50~600nmである。
(7)さらに下記[5]の要件を満たす、上記(6)に記載の括れ型シリカ粒子連結体分散液。
[5]前記粒子群に含まれる前記括れ型シリカ粒子連結体の存在割合(個数比率)が10~100%である。
(8)平均粒子径が10%以上異なる2種類のシリカ一次粒子が分散している分散液を各々用意し、これらを混合して準備用分散液を得る準備工程と、
前記準備用分散液にカチオン性有機高分子成分を添加する添加工程と、
を備え、上記(4)~(7)のいずれかに記載の括れ型シリカ粒子連結体分散液が得られる、括れ型シリカ粒子連結体分散液の製造方法。
(9)前記添加工程において、
前記準備用分散液に前記カチオン性有機高分子成分を添加した後、さらに珪酸液を添加してネック部を成長させる、上記(8)に記載の括れ型シリカ粒子連結体分散液の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、研磨用組成物として用いた場合に優れた研磨性を示す括れ型シリカ粒子連結体、それを複数含む括れ型シリカ粒子連結体分散液およびその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の連結体を透過型電子顕微鏡にて20万倍で観察して得る写真または画像を模擬的に示した図である
図2】本発明の連結体を透過型電子顕微鏡にて20万倍で観察して得る写真または画像を模擬的に示した別の図である
図3図3(a)は、本発明の連結体を透過型電子顕微鏡にて20万倍で観察して得られた画像であり、図3(b)は図3(a)に示される本発明の連結体の輪郭を写し取って示した図である。
図4】本発明の連結体を透過型電子顕微鏡にて20万倍で観察して得る写真または画像を模擬的に示したさらに別の図である
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明について説明する。
本発明は、5~50個のシリカ一次粒子が連結していて、下記(A)~(C)の要件を満たす、括れ型シリカ粒子連結体である。
(A)前記シリカ一次粒子の平均粒子径が5~600nmである。
(B)前記シリカ一次粒子の粒子径変動係数(CV値)が15~90%である。
(C)粒子径がa、b、cの各々である3つの前記シリカ一次粒子がこの順に連結していてa>bかつc>bを満たしている特定連結部を有する。
このような1粒の括れ型シリカ粒子連結体を、以下では「本発明の連結体」ともいう。
【0011】
また、本発明は、本発明の連結体が少なくとも一部を構成する粒子群が分散媒に分散しており、動的光散乱法によって測定される平均粒子径が50~600nmである、括れ型シリカ粒子連結体分散液である。
このような括れ型シリカ粒子連結体分散液を、以下では「本発明の第1の分散液」ともいう。
【0012】
また、本発明は、粒子径がa、b、cの各々である3つのシリカ一次粒子がこの順に連結していてa>bかつc>bを満たしている特定連結部を有する括れ型シリカ粒子連結体が少なくとも一部を構成する粒子群が分散媒に分散してなり、下記[1]~[4]の要件を満たす、括れ型シリカ粒子連結体分散液である。
[1]前記粒子群の少なくとも一部を構成する複数の前記括れ型シリカ粒子連結体における前記シリカ一次粒子の粒子径が、平均で5~600nmである。
[2]前記粒子群の少なくとも一部を構成する複数の前記括れ型シリカ粒子連結体における前記シリカ一次粒子の粒子径変動係数(CV値)が、平均で15~90%である。
[3]前記粒子群の少なくとも一部を構成する複数の前記括れ型シリカ粒子連結体において、1つの前記括れ型シリカ粒子連結体を構成する前記シリカ一次粒子の個数が、平均で5~50個である。
[4]動的光散乱法によって測定される平均粒子径が50~600nmである。
このような括れ型シリカ粒子連結体分散液を、以下では「本発明の第2の分散液」ともいう。
【0013】
本発明の第1の分散液と本発明の第2の分散液とは、同一となる場合がある。
【0014】
また、以下において単に「本発明の分散液」と記した場合、「本発明の第1の分散液」と「本発明の第2の分散液」との両方または一方を指しているものとする。
【0015】
また、本発明は、平均粒子径が10%以上異なる2種類のシリカ一次粒子が分散している分散液を各々用意し、これらを混合して準備用分散液を得る準備工程と、前記準備用分散液にカチオン性有機高分子成分を添加する添加工程と、を備え、本発明の分散液が得られる、括れ型シリカ粒子連結体分散液の製造方法である。
このような括れ型シリカ粒子連結体分散液の製造方法を、以下では「本発明の製造方法」ともいう。
【0016】
<本発明の連結体>
本発明の連結体について説明する。
1粒の本発明の連結体は、シリカ一次粒子が連結しているものである。
シリカ一次粒子と、別のシリカ一次粒子との間の連結は、物理的および/または化学的な結合を伴い、例えば、各々のシリカ一次粒子の表面のシラノール基同士の縮合反応により生じたシロキサン結合等の化学的結合による。
【0017】
なお、シリカ一次粒子の形状は特に限定されず、球状または略球状であることが好ましいが、卵型、棒状等であってもよい。
【0018】
<シリカ一次粒子が連結している個数>
本発明の連結体は1粒あたり5~50個のシリカ一次粒子が連結している。
【0019】
1粒の本発明の連結体においてシリカ一次粒子が連結している個数(以下では「連結個数」ともいう)が5~50個であると、本発明の連結体を多数含んだ分散液を研磨用砥粒として用いた場合に、研磨速度に優れ、かつディフェクトの発生も抑制でき優れた研磨性能を示す。連結個数が5個未満であると、本発明の連結体を多数含んだ分散液を研磨用砥粒として用いた場合に、研磨対象物に対する動的な接触面積が十分に得られずに所望の研磨速度が得られない可能性がある。一方、連結個数が50個を超えると、本発明の連結体を含んだ分散液を研磨用砥に用いた場合に、ディフェクト等の原因となり得る。
【0020】
連結個数は5~15個であることが好ましい。
【0021】
なお、1粒の本発明の連結体における連結個数は、本発明の連結体を透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡にて20万倍で観察することで測定することができる。
【0022】
<シリカ一次粒子の平均粒子径>
1粒の本発明の連結体を構成するシリカ一次粒子の平均粒子径は5~600nmであり、5~400nmであることが好ましく、10~300nmであることがより好ましい。
この平均粒子径が5~600nmの範囲であると、本発明の連結体を多数含んだ分散液を研磨用砥粒として用いた場合に優れた研磨速度が発揮される。これは本発明の連結体は、係る粒子径範囲の場合、連結体それぞれ単粒子状であり、分散液における連結粒子の個数比率が適切な範囲となり、更に研磨対象物と充分な接触面積を維持できているものと推察される。
この平均粒子径が5nm未満であると、本発明の連結体が塊状になる傾向があり、その結果、研磨用途においては、研磨基板への応力集中が得られないためか、十分な研磨速度が得られない場合がある。
一方、この平均粒子径が600nmを超えると、例えば、研磨用途において、研磨対象物(例えば基板)と本発明の連結体との間の接触面積が低下し、研磨速度が低下する場合がある。また、研磨対象物の研磨面にスクラッチ(線状痕)が発生する場合がある。
【0023】
1粒の本発明の連結体を構成するシリカ一次粒子の平均粒子径の求め方について、図1を用いて説明する。
初めに、1粒の本発明の連結体を透過型電子顕微鏡にて20万倍で観察し、写真または画像を得る。図1はこのようにして得られる写真または画像に示される本発明の連結体を模擬的に示した図である。本発明の連結体は立体構造を有するものであってもよいが、図1に示すような透過型電子顕微鏡で観察した写真または画像では、2次元において扱われる。
図1に例示する本発明の連結体では8個のシリカ一次粒子が連結している。また、ここでは図1に示すように8個のシリカ一次粒子の各々をP1、P2、P3、P4、P5、P6、P7、P8とし、図1に示すようにP1~P6までがこの順に連結し、P5からP7およびP8が枝分かれして連結しているものとする。
なお、本発明の連結体は図1に示す態様に限定されず、例えば枝分かれしていない態様であってもよい。
本発明の連結体を透過型電子顕微鏡にて20万倍で観察して得た写真または画像において、図1に示すように、隣り合う2つのシリカ一次粒子の両方に接する接線を2つ引く。まず、P1とP2との両方に接する2本の接線を引き、各々をC12a、C12bとする。そして、P1において2つの接線(C12a、C12b)と接する2つの接点を結び、その線分の長さを測定して粒子径L1とする。同様に、P2において2つの接線(C12a、C12b)と接する2つの接点を結び、その線分の長さを測定して粒子径L2aとする。
次に、P2とP3との両方に接する2本の接線(C23a、C23b)を引く。そして、P2において2つの接線(C23a、C23b)と接する2つの接点を結び、その線分の長さを測定して粒子径L2bとする。同様に、P3において2つの接線(C23a、C23b)と接する2つの接点を結び、その線分の長さを測定して粒子径L3aとする。
同様にして、他のシリカ一次粒子についても、隣り合う2つのシリカ一次粒子の両方に接する接線を2つ引き、2つの接線と接する2つの接点を結び、その線分の長さを測定して、そのシリカ一次粒子の粒子径とする。
図1に示すP5のように3つのシリカ一次粒子(P4、P6、P7)と接する場合は、粒子径が3つ(L5a、L5b、L5c)測定される。図1の場合には含まれていないが、4以上のシリカ一次粒子と接する場合も同様であり、接するシリカ一次粒子の個数と同数の粒子径が測定される。
このように、隣り合う2つのシリカ一次粒子の両方に接する2つの接線を引き、2つの接点の線分長さを測定してくと、本発明の連結体を構成するシリカ一次粒子のうち、最端に存在するもの、つまり図1の場合であればP1、P6およびP8については、各々、1つずつの線分長さ(粒子径L1、粒子径L6および粒子径L7)が測定される。また、このような最端に存在するもの以外、つまり図1の場合であればP2~P5およびP7であれば、各々、2以上ずつの線分長さが測定される。例えばP2であれば粒子径L2aおよび粒子径L2bが測定され、P5であれば粒子径L5a、粒子径L5bおよび粒子径L5cが測定される。
ここに示したP1、P6およびP8のように、本発明の連結体を構成するシリカ一次粒子のうち最端に存在するものについては、1つの線分長さである粒子径L1、粒子径L6および粒子径L8を、各々のシリカ一次粒子(P1、P6およびP8)の粒子径とする。そして、ここに示したP2~P5およびP7のように、本発明の連結体を構成するシリカ一次粒子のうち最端に存在するもの以外については、2以上の線分長さの平均値をそのシリカ一次粒子の粒子径とする。例えばP2の場合であれば、粒子径L2aと粒子径L2bとの単純平均値をP2の粒子径とする。また、例えばP5であれば粒子径L5a、粒子径L5bおよび粒子径L5cの単純平均値をP5の粒子径とする。4以上のシリカ一次粒子と接する場合も同様であり、接するシリカ一次粒子の個数と同数の粒子径が測定されるので、それらを単純平均した値をそのシリカ一次粒子の粒子径とする。
このようにして本発明の連結体を構成する全てのシリカ一次粒子の粒子径を求めた後、それらの値を単純平均して求めたものを、その1粒の本発明の連結体を構成するシリカ一次粒子の平均粒子径とする。
なお、透過型電子顕微鏡写真に代えて走査型電子顕微鏡写真であっても差しつかえない。
【0024】
<シリカ一次粒子の粒子径変動係数(CV値)>
1粒の本発明の連結体を構成するシリカ一次粒子の粒子径変動係数(CV値)は15~90%であり、15~60%であることが好ましく、15~50%であることがより好ましい。
粒子径変動係数(CV値)が上記の範囲であると、本発明の連結体を構成するシリカ一次粒子の粒子径の大きさに適切な差が生じているので、応力集中の低下を抑制しながらも動的な接触面積を上昇させるという点で好ましい。変動係数が上記範囲よりも小さい場合は連結粒子を構成する一次粒子と研磨対象物との静的な接触面積が増加し、応力集中の低下を招くためか所望の研磨速度が得られない。また変動係数が上記範囲よりも大きい場合は連結粒子を構成する一次粒子と研磨基板との静的な接触面積が低下し、応力集中の増加を招くためか研磨対象物の研磨面にスクラッチ(線状痕)が発生する場合があり、好ましくない。
【0025】
1粒の本発明の連結体を構成するシリカ一次粒子の粒子径変動係数(CV値)の測定方法について説明する。
初めに、前述のシリカ一次粒子の平均粒子径の求め方において図1を用いて説明した方法によって、本発明の連結体を構成するシリカ一次粒子の粒子径を各々求める。図1に示した例の場合であれば、P1~P8のシリカ一次粒子について、各々、粒子径を求める。
そして、それらの値から標準偏差を求めた後、前述の図1を用いて説明したシリカ一次粒子の平均粒子径の求め方によって求められた平均粒子径の値によって標準偏差を除し、得られた商を粒子径変動係数(CV値)とする。
【0026】
<特定連結部>
本発明の連結体は、上記のようにシリカ一次粒子が連結しているものであるが、その一部として特定連結部を有する。
特定連結部とは、粒子径がa、b、cの各々である3つのシリカ一次粒子がこの順に連結していてa>bかつc>bを満たしている部分を指す。
【0027】
特定連結部について図2図3を用いて説明する。
図2は、本発明の連結体を透過型電子顕微鏡にて20万倍で観察して得られる写真または画像を模擬的に示した図である。前述のシリカ一次粒子の平均粒子径の求め方において図1を用いて説明した方法によって、本発明の連結体を構成するシリカ一次粒子の粒子径を各々求めた場合に、3つのシリカ一次粒子(p1、p2、p3)の各々の粒子径がa、b、cであったとする。
そして、図2に示すように、a>bかつc>bを満たしている場合、本発明の連結体を構成するシリカ一次粒子のうち、これら3つのシリカ一次粒子(p1、p2、p3)は特定連結部を構成しているものとする。
【0028】
次に、図3(a)は、本発明の連結体を透過型電子顕微鏡にて20万倍で観察して得られた画像であり、図3(b)は図3(a)に示される本発明の連結体の輪郭を写し取って示した図である。
図3において示される連結したシリカ一次粒子を、図3に示すようにp1~p8とする。
そして、前述のシリカ一次粒子の平均粒子径の求め方において図1を用いて説明した方法によって、これらp1~p8の各々のシリカ一次粒子について、粒子径を求めたところ、p1は48.0nm、p2は45.0nm、p3は45.0nm、p4は45.0nm、p5は26.0nm、p6は47.0nm、p7は41.0nm、p8は44.0nmであった。
そうすると、p4、p5、p6の各々の粒子径をa、b、cとすると、a>bかつc>bを満たすことになる。したがって、p4、p5、p6は特定連結部を構成していることとなる。
また、p6、p7、p8の各々の粒子径をa、b、cとすると、a>bかつc>bを満たすことになる。したがって、p6、p7、p8は特定連結部を構成していることとなる。
【0029】
本発明の連結体は上記のような特定連結部を有するので、これを含む粒子群が分散媒に分散している分散液を用いて研磨対象物を研磨すると、研磨時には粒子径が大きいシリカ一次粒子が基板との接触点となりやすく、応力集中を受け取りやすいので研磨速度の増進に寄与することができる。また、特定連結部におけるシリカ一次粒子径がa>bかつc>bを満たすことで、連結粒子自身の強度を高めることができるためか、研磨時の粒子崩壊を抑制し、所望の研磨性能を得る事ができる。
【0030】
さらに、p4、p5、p6からなる特定連結部と、p6、p7、p8からなる特定連結部とは、いずれも、a―b≧(b/10)かつc―b≧(b/10)を満たす。
本発明の連結体ではa―b≧(b/10)かつc―b≧(b/10)を満たすことは必須ではないが、a―b≧(b/10)かつc―b≧(b/10)を満たすことが好ましい。このような場合、前述の連結粒子の崩壊を抑制し、所望の研磨性能を得るという点で好ましい。
【0031】
本発明の連結体は、上記のような特定連結部を図3に例示するもののように2以上含むことが好ましい。このような場合、粒子崩壊を抑制しつつ高い研磨速度を得るという点で好ましい。
【0032】
<ネック部およびその深さ>
1粒の本発明の連結体を構成するシリカ一次粒子のうちの1つと、それに直接結合している別のシリカ一次粒子との結合部分をネック部という。ネック部の深さは珪酸液等による補強の程度等によって異なる。
【0033】
ここでネック部およびネック部の深さについて図4を用いて説明する。
図4は1粒の本発明の連結体を透過型電子顕微鏡にて20万倍で観察して得られる写真または画像を模擬的に示した図である。図4に例示する本発明の連結体は5個のシリカ一次粒子が連結しているものである。
また、ここでは図4に示すように5個のシリカ一次粒子の各々をP1、P2、P3、P4、P5とし、これらがこの順に連結しているものとする。
初めに、本発明の連結体を透過型電子顕微鏡にて20万倍で観察して得た写真または画像において、図4に示すように、隣り合う2つのシリカ一次粒子の両方に接する接線を2つ引く。まず、P1とP2との両方に接する2本の接線を引き、各々をC12a、C12bとする。そして、2つの接線(C12a、C12b)の各々からP1およびP2の外縁を示す輪郭へ垂線を引いたとき、その垂線の長さが最も長くなる場合に、その垂線が交わる当該輪郭はP1とP2との境界を示しており、その境界がネック部の端であるものとする。また、その最も長い垂線の長さ(図4においてLm12a、Lm12bで示される長さ)をP1とP2とのネック部の深さとする。
他のシリカ一次粒子においても同様であり、隣り合う2つのシリカ一次粒子の両方に接する接線を2つ引き、2つの接線の各々から2つのシリカ一次粒子の外縁を示す輪郭へ垂線を引いたとき、その垂線の長さが最も長くなる場合に、その垂線が交わる当該輪郭は2つのシリカ一次粒子の境界を示しており、その境界がそれら2つのシリカ一次粒子のネック部の端であり、その最も長い垂線の長さをそれら2つのシリカ一次粒子におけるネック部の深さ(Lm)とする。
【0034】
そして、前述の図1を用いて説明した方法によって求めたシリカ一次粒子の平均粒子径をFとした場合、LmはF/3以下であること好ましく、F/6未満であることがより好ましく、F/9未満であることがさらに好ましい。
この場合、互いに結合している2つのシリカ一次粒子の結合強度が高くなる傾向があるため、このような本発明の連結体を含む粒子群が分散媒に分散している分散液を用いて研磨対象物を研磨したときに、研磨荷重を受けても全体の連結構造が保持され、本発明の連結体と研磨基板との高接触面積が得られ、所望の研磨性能を得やすい。
【0035】
<ネック部の深さの変動係数>
前述の方法によって、本発明の連結体における全てのネック部の深さを測定する。例えば図4に示したように5つのシリカ一次粒子が連結した態様であればネック部が4つ存在することになるので、ネック深さ(Lm)は8カ所において測定されることになる。
そして、これらネック深さ(Lm)の変動係数(図4に示した態様であれば8つのネック深さの変動係数)が0~40%であることが好ましく、0~35%であることがより好ましく、0~30%であることがさらに好ましい。
このような本発明の連結体を含む粒子群が分散媒に分散している分散液を用いて研磨対象物を研磨すると、研磨中の粒子崩壊が発生し難く、研磨速度が安定する。また、本発明の連結体と研磨対象物との接触面積が一定となり、研磨速度が高まり、スクラッチ等の欠陥が発生し難い。
【0036】
なお、ネック部の深さの変動係数は、1粒の本発明の連結体における全てのネック深さ(Lm)(図4に示した態様であれば8つのネック深さ)の値から標準偏差および単純平均値を求め、標準偏差を単純平均値によって除して得られる値を意味するものとする。
【0037】
<カチオン性有機高分子成分>
本発明の連結体は内部にカチオン性有機高分子成分を内包することが好ましい。
通常、カチオン性有機高分子成分がシリカ微粒子と共存した場合、シリカ微粒子の表面へ吸着する。このようにカチオン性有機高分子成分が表面に吸着したシリカ微粒子を研磨砥粒として使用した場合、カチオン性有機高分子成分が研磨対象物(基板等)とシリカ微粒子との間でクッション層として働くためか、研磨速度を低下させる場合がある。また、シリカ微粒子の表面から脱離したカチオン性有機高分子成分が研磨対象物に吸着して汚染する好ましくない。
これに対し、本発明の連結体はカチオン性有機高分子成分の大部分を内包するために、上述の研磨速度低下や、基板の汚染を生じないという利点がある。
本発明の連結体が内部にカチオン性有機高分子成分を内包すると、カチオン性官能基の存在が影響し、本発明の連結体の表面電荷を好ましく制御することができる。
【0038】
なお、本発明の連結体を含む粒子群が分散媒に分散している分散液においては、カチオン性有機高分子成分の少なくとも一部が分散媒中に移動していてもよい。
【0039】
本発明の連結体がカチオン性有機高分子成分をその内部に内包しているか否かは、過マンガン酸カリウムによる化学的酸素要求量(COD)を測定して確認できる。
逆に言うと、本発明の連結体について以下に説明する過マンガン酸カリウムによる化学的酸素要求量(COD)を測定し、特定値以上であった場合、本発明の連結体はカチオン性有機高分子成分をその内部に内包しているものとする。
初めに、本発明の連結体の100gを三角フラスコ300mLにとり、水を加えて100mLとし、硫酸(1+2)(体積比で硫酸1:水2)10mLを加え、硝酸銀溶液(200g/L)5mLを加えて振り混ぜた後、5mmol/L過マンガン酸カリウム溶液10mLを加えて、沸騰水浴中にフラスコを入れ30分間加熱する。
このとき沸騰水浴の面は、つねに試料面より上部にあるようにする。
次に、しゅう酸ナトリウム溶液(12.5mmol/L)10mLを加え、50~60℃に保ちながら5mmol/L過マンガン酸カリウム溶液で逆滴定し、液の色がうすい紅色を呈した点を終点とする。
また、別に、同一条件で水を用いた空試験を行う。
そして、次式によって、過マンガン酸カリウムによる酸素消費量のmgO/Lを算出する。
COD=(a-b)×f×1000/V×0.2
COD:過マンガン酸カリウムによる酸素消費量(mgO/L)
a:滴定に要した5mmol/L過マンガン酸カリウム溶液量(mL)
b:空試験の滴定に要した5mmol過マンガン酸カリウム溶液量(mL)
f:5mmol/L過マンガン酸カリウム溶液のファクタ
V:試料量(mL)
0.2:5mmol/L過マンガン酸カリウム溶液1mLの酸素相当量(mg)
このようにして求めたCODの値が1000mg/L以上である場合、本発明の連結体はカチオン性有機高分子成分をその内部に内包しているものとする。
【0040】
本発明の連結体が内包し得るカチオン性有機高分子成分は特に限定されない。その分子構造も限定されず直鎖状、平面分岐上、立体分岐状のいずれでもよい。
【0041】
カチオン性有機高分子成分は、カチオン性官能基を含んでいるが、さらにアニオン性官能基およびノニオン性官能基からなる群から選ばれる少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0042】
カチオン性有機高分子成分の重量平均分子量は、300以上10000以下であることが好ましく、300以上5000以下であることがより好ましく、300以上2000以下であることが特に好ましい。カチオン性有機高分子成分の重量平均分子量が上記範囲を下回る場合、本発明の連結体の凝集を進行させるために大量のカチオン性有機高分子成分が必要なり、経済上好ましくない。また、カチオン性有機高分子成分の重量平均分子量が上記範囲を超える場合、本発明の連結体の凝集を制御し難く、所望の粒子を得難い傾向にある。
【0043】
ここでカチオン性有機高分子成分の重量平均分子量は、従来公知の方法によって測定される。従来公知の方法としては、例えば光散乱法、水系サイズ排除クロマトグラフィー法(SEC)、ゲル浸透クロマトグラフィー法(GPC)、沸点上昇法が挙げられる。また、供給者からの情報提供により分子量が明らかな場合、その情報を利用しても構わない。
【0044】
カチオン性有機高分子成分は特に限定されないが、例えば、ポリジエチルアミノエチルメタクリレート(PDEAEM)、ポリジメチルジアリルアンモニウムクロリド(PDMDAAC)、およびポリアルキレンイミン、コラーゲンが挙げられる。
ここでポリアルキレンイミンとは、例えば、エチレンイミン、プロピレンイミン、ブチレンイミン、ジメチルエチレンイミン、ペンチレンイミン、ヘキシレンイミン、ヘプチレンイミン、オクチレンイミンといった炭素数2~8のアルキレンイミンを重合して得られるポリマー、並びに、これらを種々の化合物と反応させて化学的に変性させたポリマーを意味する。また、コラーゲンとは、例えばアテロコラーゲン、ゼラチン、コラーゲンペプチド、並びにこれらを種々の化合物と反応させて化学的に変性させたコラーゲン誘導体を意味する。
【0045】
<Ca、Mg、AlおよびFeの割合>
本発明の連結体は、Ca、Mg、AlおよびFeからなる群から選ばれる少なくとも1つを含んでよい。ただし、本発明の連結体におけるCa、Mg、AlおよびFeの合計含有量は150ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましく、25ppm以下がさらに好ましい。
また、本発明の連結体におけるCa含有量は10ppm以下であることが好ましい。
また、本発明の連結体におけるMg含有量は10ppm以下であることが好ましい。
また、本発明の連結体におけるAl含有量は60ppm以下であることが好ましい。
また、本発明の連結体におけるFe含有量は20ppm以下であることが好ましい。
【0046】
本発明の連結体ではシリカ一次粒子同士が直接結合したものである。例えば、シロキサン結合等の化学的結合によって結合したものである。すなわち、シリカ一次粒子同士はCaO、MgO、AlおよびFe等の結合剤成分によって結合したものではない。
本発明の連結体がCaO、MgO、AlおよびFe等を含まないと、これを含む粒子群が分散媒に分散している分散液を半導体基板や配線基板等の半導体デバイスの研磨用途に適用した場合、これらの結合剤成分に起因する金属汚染の問題を生じるおそれが低い。
【0047】
<本発明の第1の分散液>
本発明の第1の分散液について説明する。
本発明の第1の分散液は、上記のような本発明の連結体を複数(通常は多数)含む粒子群が分散媒に分散しているものである。
粒子群は、その全てが本発明の連結体であってもよい。
つまり、本発明の第1の分散液における粒子群は、本発明の連結体に該当しないものを含んでいてもよい。
粒子群が含む本発明の連結体に該当しないものとして、シリカ粒子、シリカ凝集体またはシリカ粒子の連結体などであるが本発明の連結体には該当しないものが挙げられる。具体的には、例えば単体としてシリカ微粒子や、シリカ微粒子が連結しているものの、その連結個数が4以下であるもの等が挙げられる。
【0048】
前記粒子群に占める前記括れ型シリカ粒子連結体の存在割合(個数比率)が10~100%であることが好ましい。更に30~100%であることがより好ましく、50~100%がさらに好ましい。
この存在割合(個数比率)は、粒子群を走査型電子顕微鏡にて20万倍で観察して、ランダムに選んだ100個の粒子について括れ型シリカ粒子連結体に該当するか否かを決定し、算出するものとする。
【0049】
分散媒は特に限定されず、例えば水、有機溶媒、これらの混合溶媒であってよい。有機溶媒としては、アルコール類(メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等)、エーテル類、エステル類およびケトン類等の水溶性の有機溶媒が挙げられる。
【0050】
本発明の第1の分散液における粒子群の動的光散乱法によって測定される平均粒子径は50~600nmであり、60~400nmであることが好ましく、70~200nmであることがより好ましい。
【0051】
この平均粒子径は、本発明の連結体が少なくとも一部を構成する粒子群が分散媒に分散している分散液へ0.58%アンモニア水を加え、SiO2に換算したシリカ濃度を1質量%に調整し、レーザーパーティクルアナライザーを用いて測定する。
レーザーパーティクルアナライザーとして、例えば大塚電子株式会社製、型番「ゼータ電位・粒径測定システム ELSZ-1000」が挙げられる。
測定条件は、光源波長を665.70nmとし、温度調整範囲を10~90℃として、セルとして10mm角のプラスチックセルを用いる。
【0052】
本発明の第1の分散液における固形分濃度は2~50質量%であることが好ましく、5~30質量%であることがより好ましい。この範囲であると経時での粒子の沈降が生じ難く、貯蔵安定性に優れる。
固形分濃度が高すぎると、粒子の凝集およびそれに伴う沈降が生じやすくなる。この場合、本発明の第1の分散液を研磨用途に適用した場合、研磨速度や研磨効率を低下させる場合がある。また、研磨処理のために研磨砥粒分散液を保管する容器内あるいは供給する工程で、容器あるいは供給装置内の内壁に付着した研磨砥粒分散液は、容易に乾燥して凝集物となり、再度研磨砥粒分散液に混入して、研磨処理により傷(スクラッチ)発生の原因となることがある。
固形分濃度が低すぎると、本発明の第1の分散液を各種用途に適用するにあたり濃縮が必要となる。
【0053】
ここで本発明の第1の分散液における固形分濃度は、1000℃灼熱減量を行って秤量により求めることができる。
【0054】
<本発明の第2の分散液>
本発明の第2の分散液について説明する。
本発明の第2の分散液は、3以上のシリカ一次粒子が連結しており、そのうちの3つが特定連結部を構成している括れ型シリカ粒子連結体が少なくとも一部を構成する粒子群が分散媒に分散してなり、かつ、特定の要件を満たす、括れ型シリカ粒子連結体分散液である。
【0055】
本発明の第2の分散液は、粒子群が分散媒に分散してなるものである。
また、粒子群は特定連結部を有する括れ型シリカ粒子連結体を複数(通常、多数)含む。粒子群は、その全てが括れ型シリカ粒子連結体であってもよい。
【0056】
本発明の第2の分散液における粒子群は、特定連結部を有する括れ型シリカ粒子連結体に該当しないものを含んでいてもよい。
特定連結部を含む括れ型シリカ粒子連結体に該当しないものとして、単体としてシリカ粒子、シリカ凝集体またはシリカ粒子の連結体であるが特定連結部を有さないもの等が挙げられる。
【0057】
本発明の第2の分散液が含む括れ型シリカ粒子連結体の各々において、シリカ一次粒子は少なくとも3以上、連結している。
シリカ一次粒子と、別のシリカ一次粒子との間の連結は、物理的および/または化学的な結合を伴い、例えば、各々のシリカ一次粒子の表面のシラノール基同士の縮合反応により生じたシロキサン結合等の化学的結合による。
【0058】
なお、シリカ一次粒子の形状は特に限定されず、球状または略球状であることが好ましいが、卵型、棒状等であってもよい。
【0059】
<特定連結部>
本発明の第2の分散液が含む括れ型シリカ粒子連結体は、上記のようにシリカ一次粒子が連結しているものであるが、その一部として特定連結部を有する。
この特定連結部は、前述の本発明の連結体が有する特定連結部と同一であり、粒子径がa、b、cの各々である3つのシリカ一次粒子がこの順に連結していてa>bかつc>bを満たしている部分を指す。
シリカ一次粒子の粒子径(a、b、c等)の測定方法についても、前述の本発明の連結体の場合と同じである。
【0060】
このような特定連結部を有する括れ型シリカ粒子連結体を含む本発明の第2の分散液を用いて研磨対象物を研磨すると、研磨時には粒子径が大きいシリカ一次粒子が基板との接触点となりやすく、応力集中を受け取りやすいので研磨速度の増進に寄与することができる。また、括れ型シリカ粒子連結体の回転運動により、研磨基板との動的な接触面積を増大するので、これも研磨速度の増大に寄与することができる。
【0061】
前述の本発明の連結体の場合と同様に、a―b≧(b/10)かつc―b≧(b/10)を満たすことが好ましい。
【0062】
また、前述の本発明の連結体の場合と同様に、1つの括れ型シリカ粒子連結体が2以上の特定連結部を含むことが好ましい。
【0063】
<シリカ一次粒子が連結している個数>
本発明の第2の分散液における粒子群の少なくとも一部を構成する複数の前記括れ型シリカ粒子連結体において、1つの前記括れ型シリカ粒子連結体を構成する前記シリカ一次粒子の個数は、平均で5~50個であり、5~15個であることが好ましい。
この個数が5未満であると、本発明の第2の分散液を研磨用砥粒として用いた場合に、研磨対象物に対する動的な接触面積が十分に得られずに所望の研磨速度が得られない可能性がある。一方、この個数が50個を超えると、本発明の第2の分散液を研磨用砥に用いた場合に、ディフェクト等の原因となり得る。
【0064】
本発明の第2の分散液における粒子群の少なくとも一部を構成する複数の前記括れ型シリカ粒子連結体における、1つの前記括れ型シリカ粒子連結体を構成する前記シリカ一次粒子の個数は、次のように測定するものとする。
初めに、本発明の第2の分散液に分散している粒子群を走査型電子顕微鏡にて20万倍で観察して、前述の特定連結部を含む粒子を200個特定する。
次に、特定された200個の粒子の各々について、それを構成するシリカ一次粒子の個数を計測する。
そして、200個の粒子の各々におけるシリカ一次粒子の個数の平均値を算出し、得られた値を当該個数とする。
【0065】
<シリカ一次粒子の平均粒子径>
前記粒子群の少なくとも一部を構成する複数の前記括れ型シリカ粒子連結体における前記シリカ一次粒子の粒子径は、平均で5~600nmであり、5~400nmであることが好ましく、10~300nmであることがより好ましい。
この粒子径の平均が5nm未満であると、本発明の第2の分散液に含まれる括れ型シリカ粒子連結体が塊状になる傾向があり、その結果、研磨用途においては、研磨基板への応力集中が得られないためか、十分な研磨速度が得られない場合がある。
一方、この粒子径の平均値が600nmを超えると、例えば、研磨用途において、研磨対象物(例えば基板)と本発明の第2の分散液に含まれる括れ型シリカ粒子連結体との間の接触面積が低下し、研磨速度が低下する場合がある。また、研磨対象物の研磨面にスクラッチ(線状痕)が発生する場合がある。
【0066】
前記粒子群の少なくとも一部を構成する複数の前記括れ型シリカ粒子連結体における前記シリカ一次粒子の粒子径の平均値は、次のように測定するものとする。
初めに、本発明の第2の分散液に分散している粒子群を走査型電子顕微鏡にて20万倍で観察して、前述の特定連結部を含む粒子を100個特定する。
次に、特定された100個の粒子の各々について、透過型電子顕微鏡にて20万倍で観察し、写真または画像を得る。
次に、特定された100個の粒子の各々において、全てのシリカ一次粒子の粒子径を測定する。ここで粒子径の測定方法は、前述の本発明の連結体におけるシリカ一次粒子の粒子径の測定方法と同一である。
そして、特定された100個の粒子に含まれる全てのシリカ一次粒子の粒子径を得た後、これらを単純平均することで、前記粒子群の少なくとも一部を構成する複数の前記括れ型シリカ粒子連結体における前記シリカ一次粒子の粒子径の平均値を求める。
【0067】
<シリカ一次粒子の粒子径変動係数(CV値)>
前記粒子群の少なくとも一部を構成する複数の前記括れ型シリカ粒子連結体における前記シリカ一次粒子の粒子径変動係数(CV値)は、平均で15~90%であり、15~60%であることが好ましく、15~50%であることがより好ましい。
粒子径変動係数(CV値)が上記の範囲であると前述の前述の本発明の連結体と同様の理由で好ましい。
【0068】
前記粒子群の少なくとも一部を構成する複数の前記括れ型シリカ粒子連結体における前記シリカ一次粒子の粒子径変動係数(CV値)の平均は、次のように測定するものとする。
前述のように粒子群の少なくとも一部を構成する複数の前記括れ型シリカ粒子連結体における前記シリカ一次粒子の粒子径の平均値を求める。
ここで特定された200個の粒子に含まれる全てのシリカ一次粒子の粒子径が得られているので、これらの値から標準偏差を求める。
そして、この標準偏差を平均値で除し、得られた商を粒子径変動係数(CV値)とする。
【0069】
<ネック部およびその深さ>
ネック部およびその深さの定義については、前述の本発明の連結体におけるものと同一である。
上記の通り、本発明の第2の分散液において、前記粒子群の少なくとも一部を構成する複数の前記括れ型シリカ粒子連結体における前記シリカ一次粒子の粒子径は、平均で5~600nmであるが、この平均値をF´とし、ネック部深さの平均値をLm´とした場合、Lm´はF´/3以下であること好ましく、F´/6未満であることがより好ましく、F´/9未満であることがさらに好ましい。
この場合、互いに結合している2つのシリカ一次粒子の結合強度が高くなる傾向があるため、このような本発明の第2の分散液を用いて研磨対象物を研磨したときに、研磨荷重を受けても全体の連結構造が保持され、本発明の第2の分散液に含まれる粒子群と研磨基板との高接触面積が得られ、所望の研磨性能を得やすい。
【0070】
ここでネック部深さの平均値をLm´の測定方法について説明する。
初めに、本発明の第2の分散液に分散している粒子群を走査型電子顕微鏡にて20万倍で観察して、前述の特定連結部を含む粒子を200個特定する。
次に、特定された200個の粒子の各々について、透過型電子顕微鏡にて20万倍で観察し、写真または画像を得る。
次に、特定された200個の粒子の各々において、前述の本発明の連結体における場合と同じ方法で、全てのネック部の深さを測定する。
そして、特定された200個の粒子に含まれる全てのネック部の深さを単純平均することで、平均値Lm´を求める。
【0071】
<ネック部の深さの変動係数>
上記の方法によって、特定された200個の粒子の各々における全てのネック部の深さを測定した後、それらからネック深さ(Lm)の標準偏差を求め、それを上記の平均値Lm´で除して求めた変動係数が0~40%であることが好ましく、0~35%であることがより好ましく、0~30%であることがさらに好ましい。
このような本発明の第2の分散液を用いて研磨対象物を研磨すると、研磨中の粒子崩壊が発生し難く、研磨速度が安定する。また、本発明の第2の分散液に含まれる粒子群と研磨対象物との接触面積が一定となり、研磨速度が高まり、スクラッチ等の欠陥が発生し難い。
【0072】
<カチオン性有機高分子成分>
本発明の第2の分散液が含む括れ型シリカ粒子連結体は、前述の本発明の連結体と同様、内部にカチオン性有機高分子成分を内包することが好ましい。
その理由も前述の本発明の連結体と同様である。
【0073】
括れ型シリカ粒子連結体が内包するカチオン性有機高分子成分の少なくとも一部が、本発明の第2の分散液に移動していてもよい。
【0074】
本発明の第2の分散液が含む括れ型シリカ粒子連結体は、カチオン性有機高分子成分をその内部に内包しているか否かは、前述の本発明の連結体と同様、
過マンガン酸カリウムによる化学的酸素要求量(COD)を測定して確認できる。
本発明の連結体の場合と同じ方法によって、過マンガン酸カリウムによる化学的酸素要求量(COD)を測定し、特定値以上であった場合、本発明の第2の分散液が含む括れ型シリカ粒子連結体はその内部に内包しているものとする。
【0075】
本発明の第2の分散液が含む括れ型シリカ粒子連結体が内包し得るカチオン性有機高分子成分の態様(立体構造、種類、含んでよい官能基、重量平均分子量等)は、前述の本発明の連結体と同様であってよい。
カチオン性有機高分子成分の重量平均分子量の特定方法についても、前述の本発明の連結体と同様である。
【0076】
<Ca、Mg、AlおよびFeの割合>
本発明の第2の分散液が含む粒子群(括れ型シリカ粒子連結体を含む)は、Ca、Mg、AlおよびFeからなる群から選ばれる少なくとも1つを含んでよい。ただし、本発明の第2の分散液が含む粒子群におけるCa、Mg、AlおよびFeの合計含有量は150ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましく、25ppm以下がさらに好ましい。
また、本発明の第2の分散液が含む粒子群におけるCa含有量は10ppm以下であることが好ましい。
また、本発明の第2の分散液が含む粒子群におけるMg含有量は10ppm以下であることが好ましい。
また、本発明の第2の分散液が含む粒子群におけるAl含有量は60ppm以下であることが好ましい。
また、本発明の第2の分散液が含む粒子群におけるFe含有量は20ppm以下であることが好ましい。
【0077】
これら成分の測定方法は次の通りである。
初めに、本発明の第2の分散液について、固形分濃度を20質量%に調整して測定用の試料とする。
次に、試料の1gを白金皿に精秤する。
次に、リン酸3mL、硝酸5mLおよび弗化水素酸10mLを加えて、サンドバス上で加熱する。そして、乾固したら、少量の水と硝酸50mLを加え溶解させて、100mLのメスフラスコにおさめ、水を加えて、100mLにする。
次に、100mLにおさめた溶液から分液10mLを20mLのメスフラスコに採取する操作を5回繰り返し、分液10mLを5個得る。そして、これを用いて、ICPプラズマ発光分析装置(例えばSII製、品番SPS5520)にて、標準添加法で測定を行う。
次に、同様の方法でブランクを測定し、ブランク分を差し引いて調整し、各元素における測定値とする。
次に、上記測定値から、粒子連結型シリカ微粒子分散液に含まれるシリカ微粒子の単位質量あたりに含まれる各元素(Ca、Mg、AlおよびFe)の質量の割合を求める。
【0078】
本発明の第2の分散液が含む括れ型シリカ粒子連結体ではシリカ一次粒子同士が直接結合したものである。例えば、シロキサン結合等の化学的結合によって結合したものである。すなわち、シリカ一次粒子同士はCaO、MgO、AlおよびFe等の結合剤成分によって結合したものではない。
本発明の第2の分散液が含む括れ型シリカ粒子連結体がCaO、MgO、AlおよびFe等を含まないと、これを含む粒子群が分散媒に分散している分散液を半導体基板や配線基板等の半導体デバイスの研磨用途に適用した場合、これらの結合剤成分に起因する金属汚染の問題を生じるおそれが低い。
【0079】
本発明の第2の分散液における粒子群に占める、特定連結部を有する括れ型シリカ粒子連結体の存在割合(個数比率)が10~100%であることが好ましく、30~100%であることがより好ましく、50~100%がさらに好ましい。
この存在割合(個数比率)は粒子群を走査型電子顕微鏡にて20万倍で観察して、ランダムに選んだ200個の粒子について、特定連結部を含む括れ型シリカ粒子連結体に該当するか否かを決定し、算出するものとする。
【0080】
本発明の第2の分散液における分散媒は特に限定されず、本発明の第1の分散液における分散媒と同様であってよい。
【0081】
本発明の第2の分散液における粒子群の動的光散乱法によって測定される平均粒子径は50~600nmである。更に60~400nmであることが好ましく、70~300nmであることがより好ましい。
【0082】
この平均粒子径は、本発明の第1の分散液における粒子群の動的光散乱法によって測定される平均粒子径と同様の方法によって測定する。
【0083】
本発明の第2の分散液における固形分濃度は2~50質量%であることが好ましく、5~30質量%であることがより好ましい。この範囲であると経時での粒子の沈降が生じ難く、貯蔵安定性に優れる。
固形分濃度が高すぎると、粒子の凝集およびそれに伴う沈降が生じやすくなる。この場合、本発明の第2の分散液を研磨用途に適用した場合、研磨速度や研磨効率を低下させる場合がある。また、研磨処理のために研磨砥粒分散液を保管する容器内あるいは供給する工程で、容器あるいは供給装置内の内壁に付着した研磨砥粒分散液は、容易に乾燥して凝集物となり、再度研磨砥粒分散液に混入して、研磨処理により傷(スクラッチ)発生の原因となることがある。
固形分濃度が低すぎると、本発明の第2の分散液を各種用途に適用するにあたり濃縮が必要となる。
【0084】
ここで本発明の第2の分散液における固形分濃度は、前述の本発明の第1の分散液における固形分濃度と同じ方法によって測定するものとする。
【0085】
<研磨用組成物>
本発明の分散液そのもの、これに各種成分を添加したもの、または、本発明の分散液を含む液体は研磨用組成物として用いることができる。
研磨用組成物は、研磨促進剤、界面活性剤、親水性化合物、複素環化合物、pH調整剤およびpH緩衝剤から選ばれる1以上の成分を含んでよい。
【0086】
研磨促進剤の例としては、硫酸、硝酸、リン酸、シュウ酸、フッ酸等の酸、あるいはこれら酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩およびこれらの混合物等が挙げられる。これらの研磨促進剤を含む研磨用組成物の場合、複合成分からなる被研磨材を研磨する際に、被研磨材の特定の成分についての研磨速度を促進することにより、最終的に平坦な研磨面を得ることができる。
【0087】
研磨用組成物が研磨促進剤を含有する場合、その含有量としては、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。界面活性剤および/または親水性化合物研磨用組成物の分散性や安定性を向上させるためにカチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性系の界面活性剤または親水性化合物を添加することができる。
【0088】
界面活性剤と親水性化合物は、いずれも被研磨面への接触角を低下させる作用を有し、均一な研磨を促す作用を有する。界面活性剤および/または親水性化合物としては、例えば、以下の群から選ばれるものを使用することができる。
【0089】
陰イオン界面活性剤として、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、およびリン酸エステル塩等が挙げられる。カルボン酸塩として、石鹸、N-アシルアミノ酸塩、ポリオキシエチレンまたはポリオキシプロピレンアルキルエーテルカルボン酸塩、およびアシル化ペプチド等が挙げられる。スルホン酸塩として、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンおよびアルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、およびN-アシルスルホン酸塩等が挙げられる。硫酸エステル塩として、硫酸化油、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンまたはポリオキシプロピレンアルキルアリルエーテル硫酸塩、およびアルキルアミド硫酸塩等が挙げられる。リン酸エステル塩として、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンまたはポリオキシプロピレンアルキルアリルエーテルリン酸塩等が挙げられる。
【0090】
陽イオン界面活性剤として、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、およびイミダゾリニウム塩等が挙げられる。両性界面活性剤として、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン、レシチン、およびアルキルアミンオキサイド等が挙げられる。
【0091】
非イオン界面活性剤として、エーテル型、エーテルエステル型、エステル型、含窒素型が挙げられ、エーテル型として、ポリオキシエチレンアルキルおよびアルキルフェニルエーテル、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルが挙げられ、エーテルエステル型として、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビトールエステルのポリオキシエチレンエーテル、エステル型として、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリンエステル、ポリグリセリンエステル、ソルビタンエステル、プロピレングリコールエステル、ショ糖エステル、含窒素型として、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミド等が例示される。その他に、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。
【0092】
界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤もしくは非イオン系界面活性剤が好ましい。また、塩としては、アンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩等が挙げられ、特にアンモニウム塩およびカリウム塩が好ましい。
【0093】
さらに、その他の界面活性剤、親水性化合物等としては、エステル(グリセリンエステル、ソルビタンエステルおよびアラニンエチルエステル等)、エーテル(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコールアルケニルエーテル、アルキルポリエチレングリコール、アルキルポリエチレングリコールアルキルエーテル、アルキルポリエチレングリコールアルケニルエーテル、アルケニルポリエチレングリコール、アルケニルポリエチレングリコールアルキルエーテル、アルケニルポリエチレングリコールアルケニルエーテル、ポリプロピレングリコールアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールアルケニルエーテル、アルキルポリプロピレングリコール、アルキルポリプロピレングリコールアルキルエーテル、アルキルポリプロピレングリコールアルケニルエーテル、およびアルケニルポリプロピレングリコール等)、多糖類(アルギン酸、ペクチン酸、カルボキシメチルセルロース、カードランおよびプルラン等)、アミノ酸塩(グリシンアンモニウム塩およびグリシンナトリウム塩等)、ポリカルボン酸およびその塩(ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリリシン、ポリリンゴ酸、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸アンモニウム塩、ポリメタクリル酸ナトリウム塩、ポリアミド酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、ポリフマル酸、ポリ(p-スチレンカルボン酸)、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、アミノポリアクリルアミド、ポリアクリル酸アンモニウム塩、ポリアクリル酸ナトリウム塩、ポリアミド酸、ポリアミド酸アンモニウム塩、ポリアミド酸ナトリウム塩およびポリグリオキシル酸等)、ビニル系ポリマ(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンおよびポリアクロレイン等)、スルホン酸およびその塩(メチルタウリン酸アンモニウム塩、メチルタウリン酸ナトリウム塩、硫酸メチルナトリウム塩、硫酸エチルアンモニウム塩、硫酸ブチルアンモニウム塩、ビニルスルホン酸ナトリウム塩、1-アリルスルホン酸ナトリウム塩、2-アリルスルホン酸ナトリウム塩、メトキシメチルスルホン酸ナトリウム塩、エトキシメチルスルホン酸アンモニウム塩、3-エトキシプロピルスルホン酸ナトリウム塩等)、およびアミド等(プロピオンアミド、アクリルアミド、メチル尿素、ニコチンアミド、コハク酸アミドおよびスルファニルアミド等)が挙げられる。
【0094】
なお、適用する被研磨基材がガラス基板等である場合は何れの界面活性剤であっても好適に使用できるが、半導体集積回路用シリコン基板等の場合であって、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはハロゲン化物等による汚染の影響を嫌う場合にあっては、酸もしくはそのアンモニウム塩系の界面活性剤を使用することが望ましい。
【0095】
研磨用組成物が界面活性剤および/または親水性化合物を含有する場合、その含有量は、総量として、研磨用組成物の1L中、0.001g以上10g以下とすることが好ましく、0.01g以上5g以下とすることがより好ましく0.1g以上3g以下とすることが特に好ましい。
【0096】
界面活性剤および/または親水性化合物の含有量は、充分な効果を得る上で、研磨用組成物の1L中、0.001g以上が好ましく、研磨速度低下防止の点から10g以下が好ましい。
【0097】
界面活性剤または親水性化合物は1種のみでもよいし、2種以上を使用してもよく、異なる種類のものを併用することもできる。
【0098】
研磨用組成物については、被研磨基材に金属が含まれる場合に、金属に不動態層または溶解抑制層を形成させて、被研磨基材の侵食を抑制する目的で、複素環化合物を含有させても構わない。ここで、「複素環化合物」とはヘテロ原子を1個以上含んだ複素環を有する化合物である。ヘテロ原子とは、炭素原子、または水素原子以外の原子を意味する。複素環とはヘテロ原子を少なくとも一つ持つ環状化合物を意味する。ヘテロ原子は複素環の環系の構成部分を形成する原子のみを意味し、環系に対して外部に位置していたり、少なくとも一つの非共役単結合により環系から分離していたり、環系のさらなる置換基の一部分であるような原子は意味しない。ヘテロ原子として好ましくは、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、テルル原子、リン原子、ケイ素原子、およびホウ素原子等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。複素環化合物の例として、イミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、テトラゾール等を用いることができる。より具体的には、1,2,3,4-テトラゾール、5-アミノ-1,2,3,4-テトラゾール、5-メチル-1,2,3,4-テトラゾール、1,2,3-トリアゾール、4-アミノ-1,2,3-トリアゾール、4,5-ジアミノ-1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0099】
研磨用組成物に複素環化合物を配合する場合の含有量については、0.001質量%以上1.0質量%以下であることが好ましく、0.001質量%以上0.7質量%以下であることがより好ましく、0.002質量%以上0.4質量%以下であることがさらに好ましい。
【0100】
上記各添加剤の効果を高めるため等に必要に応じて酸または塩基を添加して研磨用組成物のpHを調節することができる。
【0101】
研磨用組成物をpH7以上に調整するときは、pH調整剤として、アルカリ性のものを使用する。望ましくは、水酸化ナトリウム、アンモニア水、炭酸アンモニウム、エチルアミン、メチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルアミン等のアミンが使用される。
【0102】
研磨用組成物をpH7未満に調整するときは、pH調整剤として、酸性のものが使用される。例えば、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グリセリン酸等のヒドロキシ酸類が使用される。
【0103】
研磨用組成物のpH値を一定に保持するために、pH緩衝剤を使用しても構わない。pH緩衝剤としては、例えば、リン酸2水素アンモニウム、リン酸水素2アンモニウム、4ホウ酸アンモ四水和水等のリン酸塩およびホウ酸塩または有機酸等を使用することができる。
【0104】
研磨用組成物については、必要に応じて溶媒を用いることができる。溶媒としては通常、水を用いるが、必要に応じてメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類を用いることができ、他にエーテル類、エステル類、ケトン類等水溶性の有機溶媒を用いることができる。また、水と有機溶媒からなる混合溶媒であってもよい。
【0105】
研磨用組成物中の研磨用粒子の濃度は、0.5質量%以上50質量%以下、さらには5質量%以上30質量%以下の範囲にあることが好ましい。濃度が0.5質量%未満の場合は、基材や絶縁膜の種類によっては濃度が低すぎて研磨速度が遅く生産性が問題となることがある。研磨用粒子の濃度が50質量%を超えると研磨材の安定性が不充分となり、研磨速度や研磨効率がさらに向上することもなく、また研磨処理のために分散液を供給する工程で乾燥物が生成して付着することがあり傷(スクラッチ)発生の原因となることがある。
【0106】
<本発明の製造方法>
本発明の製造方法について説明する。
本発明の製造方法は準備工程と、添加工程と、を備える。
【0107】
<準備工程>
準備工程では、平均粒子径が10%以上異なる2種類のシリカ一次粒子が分散している分散液を各々用意する。
例えば平均粒子径がαであるシリカ一次粒子の分散液と、平均粒子径がβであるシリカ一次粒子の分散液とを用意する。
2種類のシリカ一次粒子が分散している分散液は、例えば従来公知のシリカゾルであってよい。
【0108】
ここで平均粒子径は、次に説明する走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定した値を意味するものとする。
初めに、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、シリカ一次粒子の任意の箇所を倍率3000倍で1視野当たり1.1×10-3mm2の面積で15視野撮影する。そして、各視野において撮影された個々の画像に含まれる全てのシリカ一次粒子について、画像上において直径が最も長くなる箇所を長軸とし、その長軸の長さを長径(DL)とする。また、長軸上にて長軸を2等分する点を定め、それに直交する直線がシリカ一次の外縁と交わる2点を求め、その2点間の長さを測定して短径(DS)とする。そして、それらの比(短径/長径比)を求める。このようにして、上記15視野内の全てのシリカ一次粒子について当該比を求め、単純平均値を求め、得られた値を平均粒子径とする。
【0109】
用意する2つのシリカ一次粒子の分散液における平均粒子径は、10%以上異なる。
例えば平均粒子径がαであるシリカ一次粒子の分散液と、平均粒子径がβであるシリカ一次粒子の分散液とを用意した場合、α<βとすると、β/αが1.1以上となる。
【0110】
このように準備工程では、平均粒子径が10%以上異なる2種類のシリカ一次粒子を用意するが、2種類のシリカ一次粒子の分散液のうちの一方の平均粒子径が20~300nmであることが好ましい。また、2種類のシリカ一次粒子の分散液のうちの他方の平均粒子径が5~100nmであることが好ましい。
【0111】
また、2種類のシリカ一次粒子の分散液のうちの一方(大粒子)と他方(小粒子)とにおけるシリカ一次粒子の質量比は100質量部:10~200質量部であることが好ましく、100質量部:20~100質量部であることがより好ましい。
【0112】
準備工程では、このような2種類のシリカ一次粒子を用意し、これらを混合して準備用分散液を得る。
【0113】
ここで、さらに別の平均粒子径のシリカ一次粒子の分散液(第3の分散液)を準備用分散液に加えてもよい。
【0114】
準備用分散液に含まれるシリカ一次粒子が含有するCa、Mg、AlおよびFe濃度は、シリカ微粒子の単位質量あたり、Ca、Mg、AlおよびFeの質量として、下記のとおりであることが好ましい。
Ca:25ppm以下
Mg:25ppm以下
Al:150ppm以下
Fe:50ppm以下
これらの含有率は従来公知の誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置を用いて測定した値を意味するものとする。
【0115】
準備用分散液におけるSiO2濃度は1.5~30質量%である好ましく、4~18質量%であることがより好ましい。この場合、これに含まれるシリカ一次粒子が連結しやすくなる傾向がある。
【0116】
準備用分散液はNaを全く含まないものであってもよい。
準備用分散液からNaを除去する方法として、陽イオン交換樹脂で、NaイオンをHイオンに交換する方法が挙げられる。
陽イオン交換樹脂としては、強酸性陽イオン交換樹脂または弱酸性陽イオン交換樹脂等が挙げられ、-SOHまたは-COOH等に置換した構造を有する樹脂が挙げられる。
【0117】
準備用分散液におけるpHの値は、シリカ一次粒子の分散液が安定する範囲内であればよい。例えばpHは2~12であってよい。
pH調整は、例えば、Na+のイオン交換より行うことができる。
【0118】
準備用分散液には、pH緩衝剤および/またはpH調整剤を添加してもよい
pH緩衝剤としては、公知の無機系または有機系のpH緩衝剤を使用することが望ましい。
【0119】
pH緩衝剤の例としては、酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸二カリウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、四ホウ酸ナトリウム(ホウ砂)、四ホウ酸カリウムおよび水酸化アンモニウム等が挙げられる。これらのうち、酢酸アンモニウムまたは酢酸ナトリウムが特に好ましい。
【0120】
また、pH調整剤としては、公知の無機系または有機系のpH調整剤を使用することが望ましい。
pH調整剤の例としては、酸としては、酢酸、ギ酸、炭酸、塩酸、硝酸、リン酸、次亜リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、硫酸、ホウ酸、フッ化水素酸、オルトリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、メタリン酸およびヘキサメタリン酸等が挙げられる。
塩基の例としては、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物およびアンモニア等が挙げられる。これらの中でも、入手容易性から水酸化カリウムまたはアンモニアが好ましい。
【0121】
得られた準備用分散液を、次の添加工程に供する前に、加熱することが好ましい。
上記のpH緩衝材および/またはpH調整剤を添加し、上記の範囲のpHに調整した後の準備用分散液を加熱して、液温を40℃~98℃とすることが好ましい。
加熱することにより、隣接するシリカ一次粒子の間にSiO2による結合が形成しやすくなり、連結粒子が生成しやすくなる。液温を高くしすぎるとシリカ一次粒子が凝集してしまう傾向がある。
【0122】
また、準備用分散液を上記の温度調整した後、0.5~64時間保持することが好ましい。
シリカ一次粒子の連結反応が進行するからである。保持時間が長すぎると経済的に好ましくない。
【0123】
<添加工程>
添加工程では、上記のようにして得た準備用分散液にカチオン性有機高分子成分を添加する。
【0124】
準備用分散液を40~98℃に加熱した後にカチオン性有機高分子成分を添加することが好ましい。
【0125】
カチオン性有機高分子成分としては、前述の本発明の連結体が内包してもよいカチオン性有機高分子成分と同様のものを用いることができる。カチオン性有機高分子成分の態様(立体構造、種類、含んでよい官能基、重量平均分子量等)は、前述の本発明の連結体と同様であってよい。
カチオン性有機高分子成分の重量平均分子量の特定方法についても、前述の本発明の連結体と同様である。
【0126】
カチオン性有機高分子成分の添加量は特に限定されないが、準備用分散液に含まれるSiO2換算のシリカ質量(g)をWS1、ここに添加するカチオン性有機高分子成分の添加量(質量(g))をWAとしたとき、0.01≦WA/WS1≦0.3が成り立つことが好ましく、0.015≦WA/WS1≦0.07が成り立つことがより好ましい。

WA/WSが上記範囲であるとシリカ一次粒子が連結しやすくなる傾向がある。WA/WSが高すぎると、粒子の凝集が生じやすくなる傾向がある。
【0127】
カチオン性有機高分子成分の全量添加後のpHは、9.0以上12.0以下の範囲にあることが好ましい。
【0128】
添加工程では、準備用分散液に前記カチオン性有機高分子成分を添加した後、さらに珪酸液を添加してネック部を成長させることが好ましい。
【0129】
準備用分散液に前記カチオン性有機高分子成分を添加した液のpHを10.0以上に調整した後に、珪酸液を添加することが好ましい。
pHの調製は、例えばアンモニアや水ガラス等のアルカリ性成分を添加して行うことができる。
【0130】
準備用分散液に前記カチオン性有機高分子成分を添加した液におけるシリカ濃度(SiO2換算)は1~30質量%であることが好ましい。
【0131】
珪酸液の添加量は特に限定されないが、準備用分散液に含まれるSiO2換算のシリカ質量(g)をWS2、添加する珪酸液におけるSiO2換算のシリカ質量(g)をWFとしたときに、0.01≦WF/WS2≦20が成り立つことが好ましい。
このような範囲であると、本発明の製造方法によって得た括れ型シリカ粒子連結体分散液を研磨用砥に用いた場合、所望の研磨特性が得られやすい。WF/WS2が低すぎると、シリカ一次粒子同士の連結部分の成長が不十分であるためか、所望の研磨特性が得られ難い傾向がある。また、WF/WS2が高すぎると本発明の製造方法によって得た括れ型シリカ粒子連結体分散液に含まれるシリカ粒子の形状が球に近づき、連結形状を保ち難くなる傾向がある。
【0132】
添加工程において、準備用分散液に前記カチオン性有機高分子成分を添加し、さらに珪酸液を添加した後の液の温度は70~98℃であることが好ましい。
【0133】
珪酸液は酸性珪酸液であることが好ましい。
酸性珪酸液は、珪酸アルカリ金属(珪酸ナトリウム等)を水に溶解させ、アルカリ金属イオンを水素イオンに交換したものである。アルカリ金属イオンを水素イオンに交換する方法としては、陽イオン交換樹脂を使用する方法が挙げられる。酸性珪酸液は、pHが6以下であれば使用することができる。酸性珪酸液のSiO2濃度としては、1質量%以上6質量%以下のものを使用することができる。
SiO2濃度が1質量%未満であると、添加する酸性珪酸液が多量に必要となるため、経済上好ましくない。また、6質量%以上であると、酸性珪酸液自体が不安定であるため、好ましくない。SiO2濃度は、1質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0134】
なお、本発明の製造方法においては、従来公知の無機系凝集剤を用いないことが好ましい。
有機高分子成分、特にカチオン性の官能基を含む有機高分子成分を用いることで、シリカ一次粒子の表面の電荷を制御することができる。そして、無機系凝集剤を用いることなく所望のモルフォロジーを有する括れ型シリカ粒子連結体を得ることができる。さらには、従来公知の手法により得られるシリカ微粒子と比較して、金属不純分の含有量を低くした場合、特に半導体研磨用途においては研磨基盤または研磨装置の汚染を防ぐことができるために好適である。
なお、本発明のメカニズムについて発明者らは以下のように解釈している。
本発明の製造方法の準備工程において、シリカ一次粒子が分散している準備用分散液に添加した有機高分子成分は、そのシリカ一次粒子の表面を部分的または全面に被覆し、更にカチオン性有機高分子成分の一部は溶媒中にも存在する。カチオン性有機高分子成分に被覆されたシリカ一次粒子は、カチオン性有機高分子成分の作用で粒子間の反発力が低下し、その表面電位の絶対値が小さくなり、より不安定で凝集し易い状態になる。更に準備工程において加熱した場合、カチオン性有機高分子成分によって被覆されたシリカ一次粒子どうしの会合が進行し、分岐および立体的構造を有したシリカ一次粒子の会合体(分岐および立体的構造を有した粒子連結型シリカ微粒子)が生成する。
本発明の製造方法の添加工程において、前記の分岐および立体的構造を有したシリカ一次粒子会合体に所定条件下での珪酸を添加した場合、分岐および立体構造を有するシリカ一次粒子会合体における隣接シリカ微粒子間のネックを埋めつつ粒子成長が進行する。
このようにシリカ一次粒子会合体に所定条件下での珪酸を添加した場合、シリカ一次粒子の表面に吸着したカチオン性有機高分子成分の上にシリカ成分が沈着するため、結果として粒子内部にカチオン性有機高分子成分に由来する有機成分が内包された括れ型シリカ粒子連結体が得られる。
一方、粒子成長中の粒子表面に対し、分散媒中に存在したカチオン性有機高分子成分の吸着が進行することで表面電位の増大が生じ、粒子成長中においてもシリカ一次粒子の会合が進行する二次会合が生じる。このため、本発明の連結体および本発明の第2の分散液が含む括れ型シリカ粒子連結体は、分岐・立体的構造の発達が更に促進される。なお、必ずしもカチオン性有機高分子成分の全てが本発明の連結体または本発明の第2の分散液が含む括れ型シリカ粒子連結体に内包される必要はなく、粒子表面に吸着された状態も存在する。
【実施例0135】
[実施例および比較例で用いた分析方法]
後述する実施例1~3にて得られた括れ型シリカ粒子連結体分散液(1)~(3)について、次に示す各種分析を行った。
【0136】
<1粒の括れ型シリカ粒子連結体について>
[I]括れ型シリカ粒子連結体(1)~(3)の各々に含まれる1粒の括れ型シリカ粒子連結体について、前述のように、透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡にて20万倍で観察して、連結個数を測定した。
具体的にはそれぞれの括れ型シリカ粒子連結体分散液[固形分濃度0.1質量%]を、走査型電子顕微鏡[超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡 S-5500(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)]を用いて20万倍の画像又は写真を用意し、下記要件を満たす括れ型シリカ粒子連結体のシリカ一次粒子の連結個数を測定した。
要件 粒子径がa、b、cの各々である3つのシリカ一次粒子がこの順に連結していてa>bかつc>bを満たしている特定連結部を有すること。
【0137】
[II]括れ型シリカ粒子連結体分散液(1)~(3)の各々に含まれる1粒の括れ型シリカ粒子連結体について、前述の図1を用いて説明した方法でシリカ一次粒子の平均粒子径を測定した。
なお、透過型電子顕微鏡としては、超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡 S-5500(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)]を用いた。
【0138】
[III]括れ型シリカ粒子連結体分散液(1)~(3)の各々に含まれる1粒の括れ型シリカ粒子連結体について、前述の方法でシリカ一次粒子の粒子径変動係数(CV値)を測定した。
なお、透過型電子顕微鏡としては、超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡 S-5500(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)]を用いた。
【0139】
前記[I]、[II]及び[III]の分析を行い、本発明の連結体が存在することを確認する。
【0140】
<動的光散乱法によって測定される平均粒子径>
括れ型シリカ粒子連結体分散液(1)~(3)の各々について、前述のように、動的光散乱法によって測定される平均粒子径を測定した。
なお、粒径測定装置(レーザーパーティクルアナライザー)として、大塚電子株式会社製、型番「ゼータ電位・粒径測定システム ELSZ-1000(測定原理:動的光散乱法、光源波長:665.70nm、セル:10mm角のプラスチックセル)」を用いた。具体的には括れ型粒子連結型シリカ微粒子分散液を0.58%アンモニア水にて希釈して、シリカ濃度1質量%に調整し、前記レーザーパーティクルアナライザーを用いて測定した。
【0141】
<粒子群に占める前記括れ型シリカ粒子連結体の存在割合(個数比率)>
括れ型シリカ粒子連結体分散液(1)~(3)の各々について、前述のように、粒子群を走査型電子顕微鏡にて20万倍で観察して、粒子群に占める前記括れ型シリカ粒子連結体の存在割合(個数比率)を求めた。
なお、走査型電子顕微鏡として、超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡 S-5500(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)]を用いた。
【0142】
<本発明の第2の分散液としてとらえた場合について>
括れ型シリカ微粒子連結体分散液(1)~(3)の各々について、前述の方法で、シリカ一次粒子の粒子径の平均値を求めた。
なお、走査型電子顕微鏡として、超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡 S-5500(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)]を用いた。
【0143】
括れ型シリカ粒子連結体分散液(1)~(3)の各々について、前述の方法で、シリカ一次粒子の子径変動係数(CV値)の平均値を求めた。
なお、走査型電子顕微鏡として、超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡 S-5500(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)]を用いた。
【0144】
括れ型シリカ粒子連結体分散液(1)~(3)の各々について、前述の方法で、1つの前記括れ型シリカ粒子連結体を構成する前記シリカ一次粒子の個数の平均値を求めた。
なお、走査型電子顕微鏡として、超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡 S-5500(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)]を用いた。
具体的には、それぞれの括れ型シリカ微粒子分散液[固形分濃度0.1質量%]を、走査型電子顕微鏡[超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡 S-5500(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)]を用いて20万倍の画像又は写真を用意し、下記要件を満たす括れ型シリカ粒子連結体のうち、無作為に選んだ括れ型シリカ粒子連結体100個について、それぞれシリカ一次粒子の連結個数を測定して、係る100個の平均値を算定し、該平均値を、括れ型シリカ粒子連結体分散液に含まれる括れ型シリカ粒子連結体のシリカ一次粒子の平均連結個数とした。
要件 粒子径がa、b、cの各々である3つのシリカ一次粒子がこの順に連結していてa>bかつc>bを満たしている特定連結部を有すること。
【0145】
[研磨試験]SiO2絶縁膜(厚み1μm)基板に対する研磨特性の評価方法と研磨用砥粒分散液の調製方法
[研磨用砥粒分散液の調製]
実施例および比較例の各々において得られた粒子連結型シリカ微粒子分散液あるいはシリカ微粒子分散液について、それぞれイオン交換水を加えて希釈し、いずれも固形分濃度1.0質量%に調整し、それぞれ硝酸水溶液(濃度5%)を添加してpH6.0に調整し、研磨用砥粒分散液とした。
[研磨試験方法]
被研磨基板として、熱酸化法により作製したSiO2絶縁膜(厚み1μm)基板を準備し、この被研磨基板を研磨装置(ナノファクター株式会社製、NF300)にセットし、研磨パッド(ニッタハース社製「IC-1000/SUBA400同心円タイプ」)を使用し、基板荷重0.04MPa、テーブル回転速度90rpmで研磨用砥粒分散液を200mL/分の速度で1分間供給して研磨を行った。
そして、研磨前後の被研磨基板の重量変化を求めて研磨速度(nm/min)を算定した。また、研磨基材の表面の平滑性(表面粗さ[Ra])を原子間力顕微鏡(AFM、株式会社日立ハイテクサイエンス社製)を用いて測定した。平滑性と表面粗さは概ね比例関係にあるため、表1には表面粗さを記載した。
【0146】
[実施例1]
2種類のシリカ一次粒子が分散している分散液として、「カタロイドSI―45P」(日揮触媒化成株式会社製、固形分濃度40質量%)と、「カタロイドSI-50」(日揮触媒化成株式会社製、固形分濃度48質量%)とを用意した。これらに含まれるシリカ一次粒子の平均粒子径を前述の走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた方法によって測定したところ、前者が45nm、後者が26nmであった。
次に、1.4gのカタロイドSI―45Pに純水33.5gを加えて希釈した後、ここへ0.06gのカタロイドSI-50を添加し、固形分濃度1.6質量%の準備用分散液(1)を得た。
次に得られた準備用分散液(1)へ、カチオン性有機高分子成分としてポリエチレンイミン水溶液(濃度0.3質量%)5.0gを添加した。添加後の分散液のpHは10.6であった。
次に。このカチオン性有機高分子成分を添加した後の液体を加熱し、98℃で60分保持した。
そして、括れ型シリカ粒子連結体分散液(1)を得た。
【0147】
このようにして得た括れ型シリカ粒子連結体分散液(1)について各種分析を行った。
前述のように透過型電子顕微鏡にて20万倍で観察したところ、連結している3つのシリカ一次粒子の粒子径が順に62nm、36nm、60nmであって特定連結部を構成している部分を有する括れ型シリカ粒子連結体が存在していることを確認した。なお、この特定連結部はa―b≧(b/10)かつc―b≧(b/10)を満たしている。また、この特定連結部を有する括れ型シリカ粒子連結体はさらにもう1つの特定連結部位を有することを確認した。
また、数値は異なるが、特定連結部に相当する部分を有する括れ型シリカ粒子連結体が複数、存在していることを確認した。
分析結果を表1に示す。
表1に示すように、括れ型シリカ粒子連結体分散液(1)は本発明の連結体を含む本発明の第1の分散液および本発明の第2の分散液に相当していることを確認した。
【0148】
[実施例2]
2種類のシリカ一次粒子が分散している分散液として、「カタロイドSI―45P」(日揮触媒化成株式会社製、固形分濃度40質量%)と、「カタロイドSI-40」(日揮触媒化成株式会社製、固形分濃度40質量%)とを用意した。これらに含まれるシリカ一次粒子の平均粒子径を前述の走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた方法によって測定したところ、前者が45nm、後者が18nmであった。
次に、86gのカタロイドSI―45Pに純水3366gを加えて希釈した後、ここへ5.83gのカタロイドSI-40を添加し、固形分濃度1.1質量%の準備用分散液(2)を得た。
次に得られた準備用分散液(2)へ水酸化ナトリウム水溶液(濃度4.86質量%)41gを添加してpH調整を行った。pH調整後の分散液のpHは11.5であった。
次に、pH調整後の準備用分散液(2)へ、カチオン性有機高分子成分としてポリエチレンイミン水溶液(濃度0.3%)250gを添加した。
次に。このカチオン性有機高分子成分を添加した後の液体を加熱し、90℃で60分保持した。
その後、さらに、酸性珪酸液(SiO2濃度4.55質量%)321gを、60分かけて添加した。
そして、括れ型シリカ粒子連結体分散液(2)(固形分濃度1.3%)を得た。
【0149】
このようにして得た括れ型シリカ粒子連結体分散液(2)について各種分析を行った。
前述のように透過型電子顕微鏡にて20万倍で観察したところ、連結している3つのシリカ一次粒子の粒子径が順に66nm、23nm、64nmであって特定連結部を構成している部分を有する括れ型シリカ粒子連結体が存在していることを確認した。なお、この特定連結部はa―b≧(b/10)かつc―b≧(b/10)を満たしている。また、この特定連結部を有する括れ型シリカ粒子連結体はさらにもう1つの特定連結部位を有することを確認した。
また、数値は異なるが、特定連結部に相当する部分を有する括れ型シリカ粒子連結体が複数、存在していることを確認した。
分析結果を表1に示す。
表1に示すように、括れ型シリカ粒子連結体分散液(2)は本発明の連結体を含む本発明の第1の分散液および本発明の第2の分散液に相当していることを確認した。
【0150】
[実施例3]
「カタロイドSI-40」の使用量を16.32gに変更した以外は、実施例2と同様に行った。
このようにして得た括れ型シリカ粒子連結体分散液(3)について各種分析を行った。
前述のように透過型電子顕微鏡にて20万倍で観察したところ、連結している3つのシリカ一次粒子の粒子径が順に66nm、25nm、61nmであって特定連結部を構成している部分を有する括れ型シリカ粒子連結体が存在してgbいることを確認した。なお、この特定連結部はa―b≧(b/10)かつc―b≧(b/10)を満たしている。また、この特定連結部を有する括れ型シリカ粒子連結体はさらにもう2つの特定連結部位を有することを確認した。
また、数値は異なるが、特定連結部に相当する部分を有する括れ型シリカ粒子連結体が複数、存在していることを確認した。
分析結果を表1に示す。
表1に示すように、括れ型シリカ粒子連結体分散液(3)は本発明の連結体を含む本発明の第1の分散液および本発明の第2の分散液に相当していることを確認した。
【0151】
[比較例1]
シリカ微粒子分散液「カタロイドSI-50」(平均粒子径30nm(SEMによる画像解析法)、固形分濃度48質量%、日揮触媒化成(株)製)について、各種測定を実施例1と同様に行った。また、分析結果を表1に示す。
【0152】
[比較例2]
シリカ微粒子分散液「カタロイドSI-45P」(平均粒子径50nm(SEMによる画像解析法)、固形分濃度40質量%、日揮触媒化成(株)製)について、各種測定を実施例1と同様に行った。また、分析結果を表1に示す。
【0153】
[比較例3]
ヒュームドシリカ(日本アエロジル社製、AEROSIL50)300gにイオン交換水3,986gを加え、φ0.25mmの高純度シリカビーズ(大研化学工業株式会社製、アシザワファインテック社製ビーズミルLMZ06)を用い、湿式解砕、粉砕をした。固形分濃度7質量%のシリカ微粒子分散液4,286gを得た。得られたシリカ微粒子分散液について、各種測定を実施例1と同様に行った。また、分析結果を表1に示す。
【0154】
【表1】
図1
図2
図3
図4