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特開2023-139500評価配光パターン生成システム、評価配光パターン生成方法、プログラム、仮想光源生成システム、及び情報処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139500
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】評価配光パターン生成システム、評価配光パターン生成方法、プログラム、仮想光源生成システム、及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/06 20060101AFI20230927BHJP
   G01J 1/00 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
G01M11/06
G01J1/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045063
(22)【出願日】2022-03-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)令和3年9月6日 CIE2021の予稿集にて公開 (2)令和3年9月28日 CIE2021のポスターセッションにて公開
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】大野 雅典
(72)【発明者】
【氏名】平井 経太
(72)【発明者】
【氏名】田村 太幹
【テーマコード(参考)】
2G065
【Fターム(参考)】
2G065AA10
2G065AB27
2G065BA05
2G065BB48
2G065BC11
2G065BC13
2G065BC35
2G065DA05
(57)【要約】
【課題】複数の検出器(カメラ)を用いることなく、車両用前照灯の評価配光パターン(評価用の配光パターン)を生成することができる評価配光パターン生成システム等を提供する。
【解決手段】車両用灯具20の光軸AX20方向に移動可能に設けられ、前記車両用灯具の光軸方向に移動することにより、前記車両用灯具からの距離が互いに異なる複数位置それぞれに配置される投影面40と、前記投影面が前記複数位置に配置されるごとに、前記車両用灯具が照射する光により前記投影面に形成される照射パターンを含む画像を撮像する撮像装置60と、仮想空間内に、仮想光源、仮想投影面及び仮想評価投影面を設定する機能を有する情報処理装置70と、を備える評価配光パターン生成システム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用灯具に対して当該車両用灯具の光軸方向に移動可能に設けられ、前記車両用灯具に対して当該車両用灯具の光軸方向に移動することにより、前記車両用灯具からの距離が互いに異なる複数位置それぞれに配置される投影面と、
前記投影面が前記複数位置に配置されるごとに、前記車両用灯具が照射する光により前記投影面に形成される照射パターンを含む画像を撮像する撮像装置と、
仮想空間内に、仮想光源、仮想投影面及び仮想評価投影面を設定する機能を有する情報処理装置と、を備え、
前記仮想光源は、前記車両用灯具に対応する仮想光源で、複数の光源点及び前記複数の光源点から出射する複数の光線それぞれの出射角度が設定されており、
前記仮想投影面は、前記投影面に対応する仮想投影面で、複数の区画領域を含み、かつ、前記複数位置に対応する前記仮想光源からの距離が互いに異なる複数位置それぞれに配置されており、
前記仮想評価投影面は、複数の区画領域を含み、かつ、前記仮想光源から所定距離離れた位置に配置されており、
前記情報処理装置は、
前記撮像装置により撮像された前記画像に基づき、前記仮想投影面ごとに、当該仮想投影面を区画する前記複数の区画領域それぞれの明るさを算出する機能と、
前記仮想投影面ごとかつ当該仮想投影面を区画する前記複数の区画領域ごとに、前記仮想光源の前記複数の光源点から出射する前記複数の光線のうち当該区画領域を通過する少なくとも1つの光線を特定し、当該区画領域の明るさ=前記特定した光線の明るさの総和となる方程式を生成する機能と、
前記方程式を所定のアルゴリズムを用いて解くことにより、前記複数の光線それぞれの明るさを算出する機能と、
前記仮想評価投影面を区画する前記複数の区画領域ごとに、前記仮想光源の前記複数の光源点から出射する前記複数の光線のうち当該区画領域を通過する少なくとも1つの光線を特定し、当該特定した光線の明るさの総和を当該区画領域の明るさとして算出する機能と、を備える評価配光パターン生成システム。
【請求項2】
前記車両用灯具からの距離が互いに異なる複数位置は、前記車両用灯具から25m未満離れた位置であり、
前記仮想光源から所定距離離れた位置は、前記仮想光源から25m離れた位置である請求項1に記載の評価配光パターン生成システム。
【請求項3】
仮想空間内に、複数の光源点、前記複数の光源点から出射する複数の光線それぞれの出射角度及び明るさが設定された仮想光源を設定するステップと、
仮想空間内に、複数の区画領域を含み、かつ、前記仮想光源から所定距離離れた位置に配置される仮想評価投影面を設定するステップと、
前記仮想評価投影面を区画する前記複数の区画領域ごとに、前記仮想光源の前記複数の光源点から出射する前記複数の光線のうち当該区画領域を通過する少なくとも1つの光線を特定し、当該特定した光線の明るさの総和を当該区画領域の明るさとして算出するステップと、を備える評価配光パターン生成方法。
【請求項4】
情報処理装置に、
仮想空間内に、複数の光源点、前記複数の光源点から出射する複数の光線それぞれの出射角度及び明るさが設定された仮想光源を設定するステップと、
仮想空間内に、複数の区画領域を含み、かつ、前記仮想光源から所定距離離れた位置に配置される仮想評価投影面を設定するステップと、
前記仮想評価投影面を区画する前記複数の区画領域ごとに、前記仮想光源の前記複数の光源点から出射する前記複数の光線のうち当該区画領域を通過する少なくとも1つの光線を特定し、当該特定した光線の明るさの総和を当該区画領域の明るさとして算出するステップと、を実行させるためのプログラム。
【請求項5】
車両用灯具に対して当該車両用灯具の光軸方向に移動可能に設けられ、前記車両用灯具に対して当該車両用灯具の光軸方向に移動することにより、前記車両用灯具からの距離が互いに異なる複数位置それぞれに配置される投影面と、
前記投影面が前記複数位置に配置されるごとに、前記車両用灯具が照射する光により前記投影面に形成される照射パターンを含む画像を撮像する撮像装置と、
仮想空間内に、仮想光源を設定する機能を有する情報処理装置と、を備え、
前記仮想光源は、前記車両用灯具に対応する仮想光源で、複数の光源点及び前記複数の光源点から出射する複数の光線それぞれの出射角度が設定されており、
前記仮想投影面は、前記投影面に対応する仮想投影面で、複数の区画領域を含み、かつ、前記複数位置に対応する前記仮想光源からの距離が互いに異なる複数位置それぞれに配置されており、
前記情報処理装置は、
前記撮像装置により撮像された前記画像に基づき、前記仮想投影面ごとに、当該仮想投影面を区画する前記複数の区画領域それぞれの明るさを算出する機能と、
前記仮想投影面ごとかつ当該仮想投影面を区画する前記複数の区画領域ごとに、前記仮想光源の前記複数の光源点から出射する前記複数の光線のうち当該区画領域を通過する少なくとも1つの光線を特定し、当該区画領域の明るさ=前記特定した光線の明るさの総和となる方程式を生成する機能と、
前記方程式を所定のアルゴリズムを用いて解くことにより、前記複数の光線それぞれの明るさを算出する機能と、を備える仮想光源生成システム。
【請求項6】
仮想空間内に、複数の光源点を備え、車両用灯具と同様の配光特性を有するように前記複数の光源点から出射する複数の光線それぞれの出射角度及び明るさが設定された仮想光源を生成する情報処理装置。
【請求項7】
情報処理装置に、
仮想空間内に、複数の光源点を備え、車両用灯具と同様の配光特性を有するように前記複数の光源点から出射する複数の光線それぞれの出射角度及び明るさが設定された仮想光源を生成するステップを実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、評価配光パターン生成システム、評価配光パターン生成方法、プログラム、仮想光源生成システム、及び情報処理装置に関し、特に、複数の検出器(カメラ)を用いることなく、車両用前照灯の評価配光パターンを生成することができる評価配光パターン生成システム、評価配光パターン生成方法、プログラム、仮想光源生成システム、及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の検出器(カメラ)を用いて光源(車両用前照灯)の配光特性を測定するシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5944719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1においては、複数の検出器(カメラ)を用いなければならず、システム構成が複雑になるという課題がある。
【0005】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであり、複数の検出器(カメラ)を用いることなく、車両用前照灯の評価配光パターン(評価用の配光パターン)を生成することができる評価配光パターン生成システム、評価配光パターン生成方法、プログラム、仮想光源生成システム、及び情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示にかかる評価配光パターン生成システムは、車両用灯具に対して当該車両用灯具の光軸方向に移動可能に設けられ、前記車両用灯具に対して当該車両用灯具の光軸方向に移動することにより、前記車両用灯具からの距離が互いに異なる複数位置それぞれに配置される投影面と、前記投影面が前記複数位置に配置されるごとに、前記車両用灯具が照射する光により前記投影面に形成される照射パターンを含む画像を撮像する撮像装置と、仮想空間内に、仮想光源、仮想投影面及び仮想評価投影面を設定する機能を有する情報処理装置と、を備え、前記仮想光源は、前記車両用灯具に対応する仮想光源で、複数の光源点及び前記複数の光源点から出射する複数の光線それぞれの出射角度が設定されており、前記仮想投影面は、前記投影面に対応する仮想投影面で、複数の区画領域を含み、かつ、前記複数位置に対応する前記仮想光源からの距離が互いに異なる複数位置それぞれに配置されており、前記仮想評価投影面は、複数の区画領域を含み、かつ、前記仮想光源から所定距離離れた位置に配置されており、前記情報処理装置は、前記撮像装置により撮像された前記画像に基づき、前記仮想投影面ごとに、当該仮想投影面を区画する前記複数の区画領域それぞれの明るさを算出する機能と、前記仮想投影面ごとかつ当該仮想投影面を区画する前記複数の区画領域ごとに、前記仮想光源の前記複数の光源点から出射する前記複数の光線のうち当該区画領域を通過する少なくとも1つの光線を特定し、当該区画領域の明るさ=前記特定した光線の明るさの総和となる方程式を生成する機能と、前記方程式を所定のアルゴリズムを用いて解くことにより、前記複数の光線それぞれの明るさを算出する機能と、前記仮想評価投影面を区画する前記複数の区画領域ごとに、前記仮想光源の前記複数の光源点から出射する前記複数の光線のうち当該区画領域を通過する少なくとも1つの光線を特定し、当該特定した光線の明るさの総和を当該区画領域の明るさとして算出する機能と、を備える。
【0007】
このような構成により、複数の検出器(カメラ)を用いることなく、車両用前照灯の配光パターンを生成することができる。
【0008】
上記評価配光パターン生成システムにおいて、前記車両用灯具からの距離が互いに異なる複数位置は、前記車両用灯具から25m未満離れた位置であり、前記仮想光源から所定距離離れた位置は、前記仮想光源から25m離れた位置であってもよい。
【0009】
本開示にかかる評価配光パターン生成方法は、仮想空間内に、複数の光源点、前記複数の光源点から出射する複数の光線それぞれの出射角度及び明るさが設定された仮想光源を設定するステップと、仮想空間内に、複数の区画領域を含み、かつ、前記仮想光源から所定距離離れた位置に配置される仮想評価投影面を設定するステップと、前記仮想評価投影面を区画する前記複数の区画領域ごとに、前記仮想光源の前記複数の光源点から出射する前記複数の光線のうち当該区画領域を通過する少なくとも1つの光線を特定し、当該特定した光線の明るさの総和を当該区画領域の明るさとして算出するステップと、を備える。
【0010】
本開示にかかるプログラムは、情報処理装置に、仮想空間内に、複数の光源点、前記複数の光源点から出射する複数の光線それぞれの出射角度及び明るさが設定された仮想光源を設定するステップと、仮想空間内に、複数の区画領域を含み、かつ、前記仮想光源から所定距離離れた位置に配置される仮想評価投影面を設定するステップと、前記仮想評価投影面を区画する前記複数の区画領域ごとに、前記仮想光源の前記複数の光源点から出射する前記複数の光線のうち当該区画領域を通過する少なくとも1つの光線を特定し、当該特定した光線の明るさの総和を当該区画領域の明るさとして算出するステップと、を実行させるためのプログラムである。
【0011】
本開示にかかる仮想光源生成システムは、車両用灯具に対して当該車両用灯具の光軸方向に移動可能に設けられ、前記車両用灯具に対して当該車両用灯具の光軸方向に移動することにより、前記車両用灯具からの距離が互いに異なる複数位置それぞれに配置される投影面と、前記投影面が前記複数位置に配置されるごとに、前記車両用灯具が照射する光により前記投影面に形成される照射パターンを含む画像を撮像する撮像装置と、仮想空間内に、仮想光源を設定する機能を有する情報処理装置と、を備え、前記仮想光源は、前記車両用灯具に対応する仮想光源で、複数の光源点及び前記複数の光源点から出射する複数の光線それぞれの出射角度が設定されており、前記仮想投影面は、前記投影面に対応する仮想投影面で、複数の区画領域を含み、かつ、前記複数位置に対応する前記仮想光源からの距離が互いに異なる複数位置それぞれに配置されており、前記情報処理装置は、前記撮像装置により撮像された前記画像に基づき、前記仮想投影面ごとに、当該仮想投影面を区画する前記複数の区画領域それぞれの明るさを算出する機能と、前記仮想投影面ごとかつ当該仮想投影面を区画する前記複数の区画領域ごとに、前記仮想光源の前記複数の光源点から出射する前記複数の光線のうち当該区画領域を通過する少なくとも1つの光線を特定し、当該区画領域の明るさ=前記特定した光線の明るさの総和となる方程式を生成する機能と、前記方程式を所定のアルゴリズムを用いて解くことにより、前記複数の光線それぞれの明るさを算出する機能と、を備える。
【0012】
本開示にかかる情報処理装置は、仮想空間内に、複数の光源点を備え、車両用灯具と同様の配光特性を有するように前記複数の光源点から出射する複数の光線それぞれの出射角度及び明るさが設定された仮想光源を生成する。
【0013】
本開示にかかる別のプログラムは、情報処理装置に、仮想空間内に、複数の光源点を備え、車両用灯具と同様の配光特性を有するように前記複数の光源点から出射する複数の光線それぞれの出射角度及び明るさが設定された仮想光源を生成するステップを実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0014】
本開示により、複数の検出器(カメラ)を用いることなく、車両用前照灯の評価配光パターン(評価用の配光パターン)を生成することができる評価配光パターン生成システム、評価配光パターン生成方法、プログラム、仮想光源生成システム、及び情報処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】評価配光パターン生成システム10のシステム構成図である。
図2】情報処理装置70の構成例である。
図3】仮想空間内に設定された仮想光源D、仮想投影面Q1、Q2及び仮想評価投影面Qsを表す図である。
図4】光源点の変形例である。
図5】仮想投影面Q1、Q2及び仮想評価投影面Qsの変形例である。
図6】評価配光パターン生成システム10の動作例のフローチャートである。
図7】(a)算出された仮想投影面Q1を区画する複数の区画領域それぞれの明るさの例、(b)算出された仮想投影面Q2を区画する複数の区画領域それぞれの明るさの例、(c)算出された仮想評価投影面Qsを区画する複数の区画領域それぞれの明るさの例(すなわち、評価配光パターンの例)である。
図8】ディスプレイ(図示せず)に表示される評価配光パターン(CG)の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施形態である評価配光パターン生成システム10(仮想光源生成システム)について添付図面を参照しながら説明する。各図において対応する構成要素には同一の符号が付され、重複する説明は省略される。
【0017】
図1は、評価配光パターン生成システム10のシステム構成図である。
【0018】
評価配光パターン生成システム10は、情報処理装置70が所定プログラムを実行することにより、仮想空間内に、車両用灯具20に対応する仮想光源D、仮想光源Dから所定距離W3(例えば、W3=25m)離れた位置に配置される仮想評価投影面Qsを設定し(図3参照)、仮想光源Dの光源点(複数)から出射する光線(複数)により仮想評価投影面Qs上に形成される評価配光パターンP(図5図7(c)、図8参照)を生成する。
【0019】
図1に示すように、評価配光パターン生成システム10は、配光パターン評価対象の車両用灯具20が載置される雲台30、投影面40、駆動装置50、撮像装置60、情報処理装置70を備えている。これらが設置されているベース80の長さW4は4m程度である。
【0020】
車両用灯具20は、例えば、ロービーム用又はハイビーム用の車両用前照灯である。車両用灯具20は、プロジェクタ型の車両用灯具であってもよいし、リフレクタ型の車両用灯具であってもよいし、ダイレクトプロジェクション型(直射型)の車両用灯具であってもよいし、導光体(導光棒、導光板等)を用いた車両用灯具であってもよいし、その他構成の車両用灯具であってもよい。なお、車両用灯具20は、車両用前照灯以外の車両用信号灯具であってもよい。
【0021】
雲台30は、例えば、ゴニオ雲台である。
【0022】
投影面40は、車両用灯具20に対して当該車両用灯具20の光軸AX20方向に移動可能に設けられている。例えば、投影面40は、図示しないガイドレールに沿って車両用灯具20の光軸AX20方向にスライド移動可能に設けられている。投影面40は、車両用灯具20の光軸AX20に対して直交する状態で配置されている。投影面40は、車両用灯具20に対して当該車両用灯具20の光軸AX20方向に移動することにより、車両用灯具20からの距離が互いに異なる複数位置(例えば、車両用灯具20からの距離がW1の位置、車両用灯具20からの距離がW2の位置)それぞれに配置される。
【0023】
駆動装置50は、投影面40を車両用灯具20の光軸AX20方向に移動させ上記複数位置に配置するための装置である。駆動装置50は、情報処理装置70からの制御に従い、投影面40を車両用灯具20に対して当該車両用灯具20の光軸AX20方向に移動させるための機構(サーボモータ等)を含む。
【0024】
撮像装置60は、CCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子を含む。撮像装置60の光軸AX60は、車両用灯具20の光軸AX20に対して平行である。撮像装置60は、情報処理装置70からの制御に従い、投影面40が上記複数位置に配置されるごとに、車両用灯具20が照射する光により投影面40に形成される照射パターンを含む画像を撮像する。撮像された画像は、情報処理装置70に入力される。
【0025】
図2は、情報処理装置70の構成例である。
【0026】
情報処理装置70は、例えば、ワークステーションである。図2に示すように、情報処理装置70は、CPU等のプロセッサ71、RAM等のメモリ72、ハードディスクやSSD等の記憶装置73を備えている。情報処理装置70は、プロセッサ71が記憶装置73からメモリ72に読み込まれた所定プログラム73aを実行することにより以下の各機能を実現する。
【0027】
情報処理装置70の機能としては、例えば、仮想空間内に、仮想光源D、仮想投影面Q1、Q2及び仮想評価投影面Qsを設定する機能、撮像装置60により撮像された画像に基づき、仮想投影面Q1、Q2ごとに、当該仮想投影面Q1、Q2を区画する複数の区画領域それぞれの明るさを算出する機能、仮想投影面Q1、Q2ごとかつ当該仮想投影面Q1、Q2を区画する複数の区画領域ごとに、仮想光源Dの複数の光源点から出射する複数の光線のうち当該区画領域を通過する少なくとも1つの光線を特定し、当該区画領域の明るさ=特定した光線の明るさ(未知数)の総和となる方程式を生成する機能、この方程式を所定のアルゴリズムを用いて解くことにより、複数の光線それぞれの明るさを算出する(仮想光源Dを生成する)機能、仮想評価投影面Qsを区画する複数の区画領域ごとに、仮想光源Dの複数の光源点から出射する複数の光線のうち当該区画領域を通過する少なくとも1つの光線を特定し、当該特定した光線の明るさの総和を当該区画領域の明るさとして算出する(評価配光パターンを生成する)機能がある。
【0028】
また、情報処理装置70は、駆動装置50及び撮像装置60に電気的に接続されており、駆動装置50及び撮像装置60を制御する。
<評価配光パターン生成の原理>
以下、評価配光パターンを形成する原理について図3を用いて説明する。
【0029】
図3は、仮想空間内に設定された仮想光源D、仮想投影面Q1、Q2及び仮想評価投影面Qsを表す図である。以下、説明を分かりやすくするため、仮想光源Dの光源点から出射する光線、仮想投影面Q1、Q2及び仮想評価投影面Qsは、同一水平面内に含まれているものとする。
【0030】
仮想光源Dは、車両用灯具20に対応する仮想光源である。図3に示すように、仮想光源Dは、複数の光源点d-1、d、d+1及び複数の光源点d-1、d、d+1から出射する複数の光線P(d-1,θ-1)、P(d,θ-1)、P(d+1,θ-1)、P(d-1,θ)、P(d,θ)、P(d+1,θ)、P(d-1,θ+1)、P(d,θ+1)、P(d+1,θ+1)それぞれの出射角度(θ-1、θ、θ+1)が設定されている。角度θ-1、θ、θ+1は、仮想光源Dの光軸AXに対する角度である。角度θ-1、θ+1は例えば1°、角度θは例えば0°である。
【0031】
仮想光源Dの光軸AXは、仮想光源Dの発光面の中心をとおり、かつ、仮想光源Dの発光面に対して直交する方向に延びている。仮想光源Dの光軸AXは、車両用灯具20の光軸AX20に対応する。
【0032】
複数の光源点d-1、d、d+1は、仮想光源Dの光軸AXに直交する面(光源面)上に配置されている。
【0033】
光線P(d-1,θ-1)は、光源点d-1から出射角度θ-1方向に出射された光線を表す。光線P(d-1,θ-1)以外の光線P(d,θ-1)~光線P(d+1,θ+1)についても同様である。
【0034】
仮想投影面Q1は、投影面40に対応する仮想投影面である。仮想投影面Q1は、仮想光源Dの光軸AXに対して直交する状態で配置されている。仮想投影面Q1は、複数の区画領域q1-2、q1-1、q1、q1+1、q1+2を含み、かつ、車両用灯具20から距離W1離れた位置に対応して仮想空間において仮想光源Dから距離W1離れた位置に配置されている。距離W1は、例えば、0.3mである。
【0035】
仮想投影面Q2は、投影面40に対応する仮想投影面である。仮想投影面Q2は、仮想光源Dの光軸AXに対して直交する状態で配置されている。仮想投影面Q2は、複数の区画領域q2-2、q2-1、q2、q2+1、q2+2を含み、かつ、車両用灯具20から距離W2離れた位置に対応して仮想空間において仮想光源Dから距離W2離れた位置に配置されている。距離W2は、例えば、0.5mである。
【0036】
仮想評価投影面Qsは、複数の区画領域qs-2、qs-1、qs、qs+1、qs+2を含み、かつ、仮想光源Dから所定距離W3離れた位置に配置されている。距離W3は、例えば、25mである。仮想評価投影面Qsは、仮想光源Dの光軸AXに対して直交する状態で配置されている。
【0037】
以上の各パラメータ、すなわち、複数の光源点d-1、d、d+1及び複数の光源点から出射する複数の光線P(d-1,θ-1)、P(d,θ-1)、P(d+1,θ-1)、P(d-1,θ)、P(d,θ)、P(d+1,θ)、P(d-1,θ+1)、P(d,θ+1)、P(d+1,θ+1)それぞれの出射角度(θ-1、θ、θ+1)、区画領域q1-2、q1-1、q1、q1+1、q1+2、区画領域q2-2、q2-1、q2、q2+1、q2+2、区画領域qs-2、qs-1、qs、qs+1、qs+2、距離W1~W3等は、予め設定されている。
【0038】
以上を前提として、評価配光パターンを形成する原理について説明する。
【0039】
まず、仮想光源Dの光源点から出射する光線の明るさを算出する(仮想光源Dを生成する)。
【0040】
まず、仮想光源Dの光源点から出射する光線と仮想投影面Q1との関係について説明する。
【0041】
仮想光源Dの光源点d-1、d、d+1から出射する光線P(d-1,θ-1)、P(d,θ-1)、P(d+1,θ-1)、P(d-1,θ)、P(d,θ)、P(d+1,θ)、P(d-1,θ+1)、P(d,θ+1)、P(d+1,θ+1)は、仮想投影面Q1を区画する区画領域q1-2、q1-1、q1、q1+1、q1+2に入射する。この関係は次の式1により表される。
【0042】
【数1】
左辺の列ベクトル「2,6,13,5,1」は、仮想投影面Q1を区画する区画領域q1-2、q1-1、q1、q1+1、q1+2それぞれの明るさに対応する。左辺の列ベクトル「2,6,13,5,1」は、車両用灯具20が照射する光により車両用灯具20から距離W1離れた位置に配置された投影面40に形成される照射パターンを含む画像(撮像装置60により撮像される)に基づき算出できる。
【0043】
右辺の列ベクトル「P1、P2、P3、P4、P5、P6、P7、P8、P9」は、仮想光源Dの光源点d-1、d、d+1から出射する光線P(d-1,θ-1)、P(d,θ-1)、P(d+1,θ-1)、P(d-1,θ)、P(d,θ)、P(d+1,θ)、P(d-1,θ+1)、P(d,θ+1)、P(d+1,θ+1)それぞれの光束(明るさ。未知数)に対応する。
【0044】
右辺の5×9の行列は、仮想投影面Q1用の伝達関数である。この仮想投影面Q1用の伝達関数は、上記のように各パラメータを予め設定することにより幾何的に算出することができる。
【0045】
仮想投影面Q1用の伝達関数の1~5行は、仮想投影面Q1の区画領域q1-2、q1-1、q1、q1+1、q1+2それぞれに対応する。仮想投影面Q1用の伝達関数の1~9列は、仮想光源Dの光源点d-1、d、d+1から出射する光線P(d-1、θ-1)、光線P(d-1、θ)、光線P(d-1、θ+1)、光線P(d、θ-1)、光線P(d、θ)、光線P(d、θ+1)、光線P(d+1、θ-1)、光線P(d+1、θ)、光線P(d+1、θ+1)それぞれに対応する。
【0046】
仮想投影面Q1用の伝達関数中の成分「1」は、この成分「1」が所属する列に対応する光線がこの成分「1」が所属する行に対応する区画領域を通過することを表す。
【0047】
例えば、仮想投影面Q1用の伝達関数中の1行1列の成分「1」は、この成分「1」が所属する列に対応する光線P(d-1,θ-1)がこの成分「1」が所属する行に対応する区画領域q1-2を通過することを表す。
【0048】
一方、仮想投影面Q1用の伝達関数中の成分「0」は、この成分「0」が所属する列に対応する光線がこの成分「0」が所属する行に対応する区画領域を通過しないことを表す。例えば、仮想投影面Q1用の伝達関数中の2行1列の成分「0」は、この成分「0」が所属する列に対応する光線P(d-1,θ-1)がこの成分「0」が所属する行に対応する区画領域q1-1を通過しないことを表す。
【0049】
上記式1を展開すると、次の式1.1~式1.5に示す5つの連立方程式が得られる。
【0050】
【数2】
次に、仮想光源Dの光源点から出射する光線と仮想投影面Q2との関係について説明する。
【0051】
仮想光源Dの光源点d-1、d、d+1から出射する光線P(d-1,θ-1)、P(d,θ-1)、P(d+1,θ-1)、P(d-1,θ)、P(d,θ)、P(d+1,θ)、P(d-1,θ+1)、P(d,θ+1)、P(d+1,θ+1)は、仮想投影面Q2を区画する区画領域q2-2、q2-1、q2、q2+1、q2+2に入射する。この関係は次の式2により表される。
【0052】
【数3】
左辺の列ベクトル「4,7,8,6,2」は、仮想投影面Q2を区画する区画領域q2-2、q2-1、q2、q2+1、q2+2それぞれの明るさに対応する。左辺の列ベクトル「4,7,8,6,2」は、車両用灯具20が照射する光により車両用灯具20から距離W2離れた位置に配置された投影面40に形成される照射パターンを含む画像(撮像装置60により撮像される)に基づき算出できる。
【0053】
右辺の列ベクトル「P1、P2、P3、P4、P5、P6、P7、P8、P9」は、仮想光源Dの光源点d-1、d、d+1から出射する光線P(d-1,θ-1)、P(d,θ-1)、P(d+1,θ-1)、P(d-1,θ)、P(d,θ)、P(d+1,θ)、P(d-1,θ+1)、P(d,θ+1)、P(d+1,θ+1)それぞれの光束(明るさ。未知数)に対応する。
【0054】
右辺の5×9の行列は、仮想投影面Q2用の伝達関数である。この仮想投影面Q2用の伝達関数は、上記のように各パラメータを予め設定することにより幾何的に算出することができる。
【0055】
仮想投影面Q2用の伝達関数の1~5行は、仮想投影面Q2の区画領域q2-2、q2-1、q2、q2+1、q2+2それぞれに対応する。仮想投影面Q2用の伝達関数の1~9列は、仮想光源Dの光源点d-1、d、d+1から出射する光線P(d-1、θ-1)、光線P(d-1、θ)、光線P(d-1、θ+1)、光線P(d、θ-1)、光線P(d、θ)、光線P(d、θ+1)、光線P(d+1、θ-1)、光線P(d+1、θ)、光線P(d+1、θ+1)それぞれに対応する。
【0056】
仮想投影面Q2用の伝達関数中の成分「1」は、この成分「1」が所属する列に対応する光線がこの成分「1」が所属する行に対応する区画領域を通過することを表す。例えば、仮想投影面Q2用の伝達関数中の1行1列の成分「1」は、この成分「1」が所属する列に対応する光線P(d-1,θ-1)がこの成分「1」が所属する行に対応する区画領域q2-2を通過することを表す。
【0057】
一方、仮想投影面Q2用の伝達関数中の成分「0」は、この成分「0」が所属する列に対応する光線がこの成分「0」が所属する行に対応する区画領域を通過しないことを表す。例えば、仮想投影面Q2用の伝達関数中の2行1列の成分「0」は、この成分「0」が所属する列に対応する光線P(d-1,θ-1)がこの成分「0」が所属する行に対応する区画領域q2-1を通過しないことを表す。
【0058】
上記式2を展開すると、次の式2.1~式2.5に示す5つの連立方程式が得られる。
【0059】
【数4】
上記式1.1~式1.5及び式2.1~式2.5の連立方程式を所定のアルゴリズム(例えば、伝達関数の逆行列を用いたアルゴリズム、QR分解を用いたアルゴリズム)を用いて解くことにより、次のように仮想光源Dの複数の光線それぞれの未知数である明るさP1~P9を算出することができる。これにより、複数の光源点d-1、d、d+1、複数の光源点d-1、d、d+1から出射する複数の光線それぞれの出射角度θ-1、θ、θ+1及び明るさP1~P9が設定された仮想光源Dが生成(設定)されたことになる。以上のようにして、仮想空間内に、複数の光源点d-1、d、d+1を備え、車両用灯具と同様の配光特性を有するように複数の光源点d-1、d、d+1から出射する複数の光線それぞれの出射角度θ-1、θ、θ+1及び明るさP1~P9が設定された仮想光源Dが生成される。
【0060】
【数5】
以上のようにして、仮想光源Dの光源点から出射する光線の明るさP1~P9を算出することができる。
【0061】
次に、仮想空間内において仮想光源Dから出射する光線P(d-1,θ-1)、P(d,θ-1)、P(d+1,θ-1)、P(d-1,θ)、P(d,θ)、P(d+1,θ)、P(d-1,θ+1)、P(d,θ+1)、P(d+1,θ+1)により仮想評価投影面Qs上に形成される評価配光パターンを生成する。
【0062】
仮想空間内において仮想光源Dから出射する光線P(d-1,θ-1)、P(d,θ-1)、P(d+1,θ-1)、P(d-1,θ)、P(d,θ)、P(d+1,θ)、P(d-1,θ+1)、P(d,θ+1)、P(d+1,θ+1)により仮想評価投影面Qs上に形成される評価配光パターンは、次の式3により生成(算出)される。
【0063】
【数6】
右辺の列ベクトル「2,4,2,2,8,1,3,4,1」は、上記算出された光線P(d-1,θ-1)、P(d,θ-1)、P(d+1,θ-1)、P(d-1,θ)、P(d,θ)、P(d+1,θ)、P(d-1,θ+1)、P(d,θ+1)、P(d+1,θ+1)それぞれの明るさP1~P9に対応する。
【0064】
右辺の5×9の行列は、仮想評価投影面Qs用の伝達関数である。この仮想評価投影面Qs用の伝達関数は、仮想投影面Q1、Q2用の伝達関数と同様、上記のように各パラメータを予め設定することにより幾何的に算出することができる。
【0065】
左辺の列ベクトル「7,0,16,0,4」は、仮想評価投影面Qsを区画する区画領域qs-2、qs-1、qs、qs+1、qs+2それぞれの明るさに対応する。すなわち、左辺の列ベクトル「7,0,16,0,4」が、評価配光パターンに対応する。すなわち、上記式3により、仮想空間内において仮想光源Dから出射する光線P(d-1,θ-1)、P(d,θ-1)、P(d+1,θ-1)、P(d-1,θ)、P(d,θ)、P(d+1,θ)、P(d-1,θ+1)、P(d,θ+1)、P(d+1,θ+1)により仮想評価投影面Qs上に形成される評価配光パターンが生成(設定)されたことになる。
【0066】
以上、評価配光パターンを形成する原理について、仮想光源Dの光源点から出射する光線、仮想投影面Q1、Q2及び仮想評価投影面Qsが同一水平面内に含まれている場合を例にして説明したが、これに限らない。
【0067】
例えば、仮想光源Dの光源点から出射する光線は、図4に示すように、仮想光源Dの光源点から三次元方向に出射する光線であってもよい。また、1つの光源点から出射する光線は、3本に限らず、2又は4本以上の複数本であってもよい。図4は、光源点の変形例である。
【0068】
また、仮想投影面Q1、Q2及び仮想評価投影面Qsは、例えば、図5に示すように、矩形の投影面であってもよい。図5は、仮想投影面Q1、Q2及び仮想評価投影面Qsの変形例である。
【0069】
また、仮想投影面Q1、Q2及び仮想評価投影面Qsは、例えば、図5に示すように、格子状に区画された区画領域(図5中、3×5の区画領域を例示)を含んでいてもよい。
【0070】
また、2つの仮想投影面Q1、Q2を用いた例について説明したが、これに限らず、3つ以上の仮想投影面を用いてもよい。
【0071】
また、3つの光源点d-1、d、d+1を用いた例について説明したが、これに限らず、2又は4以上の光源点を用いてもよい。また、光源点(複数)は、二次元的に配置されていてもよいし、三次元的に配置されていてもよい。また、光源点(複数)は、平面上に配置されていてもよいし、曲面上に配置されていてもよい。また、光源点(複数)の配置間隔(ピッチ)は、任意に設定してよい。
【0072】
次に、評価配光パターン生成システム10の動作例について説明する。
【0073】
図6は、評価配光パターン生成システム10の動作例のフローチャートである。
【0074】
以下の処理は、主にプロセッサ71が記憶装置73からメモリ72に読み込まれた所定プログラム73aを実行することにより実現される。
【0075】
まず、各種パラメータを設定する(ステップS10)。
【0076】
例えば、各種パラメータとして、仮想光源Dに関するパラメータ(光源面のサイズ、光源点の数、光源点から出射する光線の数、光線の出射角度等)、仮想投影面Q1に関するパラメータ(距離W1、仮想投影面Q1を区画する区画領域の数等)、仮想投影面Q2に関するパラメータ(距離W2、仮想投影面Q2を区画する区画領域の数等)、仮想評価投影面Qsに関するパラメータ(距離W3、仮想投影面Q2を区画する区画領域の数等)を設定する。これらのパラメータは、例えば、情報処理装置70に接続されたキーボードやマウス等の入力装置(図示せず)を介して入力され情報処理装置70に設定される。
【0077】
次に、仮想投影面Q1、Q2用の伝達関数を算出する(ステップS11)。
【0078】
仮想投影面Q1、Q2用の伝達関数は、ステップS10で設定された各種パラメータに基づき所定演算を行うことにより、幾何的に算出される。
【0079】
次に、撮像装置60により撮像された画像に基づき、仮想投影面Q1、Q2ごとに、当該仮想投影面Q1、Q2を区画する複数の区画領域それぞれの明るさを算出する(ステップS12)。
【0080】
具体的には、まず、投影面40が車両用灯具20からの距離がW1の位置に配置されるように、情報処理装置70が駆動装置50を制御することにより、投影面40を車両用灯具20の光軸AX20方向に移動させ車両用灯具20からの距離がW1の位置に配置する。
【0081】
次に、車両用灯具20が照射する光により上記位置に配置された投影面40に照射パターンを形成する。
【0082】
次に、情報処理装置70が撮像装置60を制御することにより、上記位置に配置された投影面40に形成される照射パターンを含む画像を撮像する。
【0083】
次に、情報処理装置70が、この撮像された画像に基づき所定の画像処理を実行することにより、仮想投影面Q1を区画する複数の区画領域それぞれの明るさを算出する。図7(a)は、算出された仮想投影面Q1を区画する複数の区画領域それぞれの明るさの例である。
【0084】
次に、投影面40が車両用灯具20からの距離がW2の位置に配置されるように、情報処理装置70が駆動装置50を制御することにより、投影面40を車両用灯具20の光軸AX20方向に移動させ車両用灯具20からの距離がW2の位置に配置する。
【0085】
次に、車両用灯具20が照射する光により上記位置に配置された投影面40に照射パターンを形成する。
【0086】
次に、情報処理装置70が撮像装置60を制御することにより、上記位置に配置された投影面40に形成される照射パターンを含む画像を撮像する。
【0087】
次に、情報処理装置70が、この撮像された画像に基づき所定の画像処理を実行することにより、仮想投影面Q2を区画する複数の区画領域それぞれの明るさを算出する。図7(b)は、算出された仮想投影面Q2を区画する複数の区画領域それぞれの明るさの例である。
【0088】
次に、仮想光源Dの光源点から出射する光線(複数)の明るさを算出する(仮想光源Dを生成する)(ステップS13)。
【0089】
具体的には、まず、仮想投影面Q1、Q2ごとかつ当該仮想投影面Q1、Q2を区画する複数の区画領域ごとに、仮想光源Dの複数の光源点から出射する複数の光線のうち当該区画領域を通過する少なくとも1つの光線を特定し、当該区画領域の明るさ=特定した光線の明るさ(未知数)の総和となる方程式を生成する。すなわち、上記式1、式1.1~式1.5、式2、式2.1~式2.5と同様の処理を実行する。
【0090】
次に、この方程式を所定のアルゴリズム(例えば、伝達関数の逆行列を用いたアルゴリズム、QR分解を用いたアルゴリズム)を用いて解くことにより、複数の光線それぞれの明るさを算出する(仮想光源Dを生成する)。これにより、複数の光源点、複数の光源点から出射する複数の光線それぞれの出射角度及び明るさが設定された仮想光源Dが生成(設定)されたことになる。以上のようにして、仮想空間内に、複数の光源点を備え、車両用灯具と同様の配光特性を有するように複数の光源点から出射する複数の光線それぞれの出射角度及び明るさが設定された仮想光源が生成される。
【0091】
次に、仮想評価投影面Qs用の伝達関数を算出する(ステップS14)。
【0092】
仮想評価投影面Qs用の伝達関数は、ステップS10で設定された各種パラメータに基づき所定演算を行うことにより、幾何的に算出される。
【0093】
次に、ステップS13で算出した光線(複数)の明るさ及びステップS14で算出した仮想評価投影面Qs用の伝達関数を用いて評価配光パターンを生成する(ステップS15)。
【0094】
具体的には、仮想評価投影面Qsを区画する複数の区画領域ごとに、仮想光源Dの複数の光源点から出射する複数の光線のうち当該区画領域を通過する少なくとも1つの光線を特定し、当該特定した光線の明るさの総和を当該区画領域の明るさとして算出する(評価配光パターンを生成する)。すなわち、上記式3と同様の処理を実行する。図7(c)は、算出された仮想評価投影面Qsを区画する複数の区画領域それぞれの明るさの例(すなわち、評価配光パターンの例)である。この評価配光パターンは、記憶装置73等に記憶される。
【0095】
この評価配光パターンは、例えば、情報処理装置70に接続されたディスプレイ(図示せず)に表示することができる。図8は、ディスプレイ(図示せず)に表示される評価配光パターン(CG)の一例である。なお、図8に示す評価配光パターンを生成する際に用いた各種パラメータは次のとおりである。すなわち、仮想光源Dのサイズとして、光軸AXに直交する光源面(3cm×3cmの正方形)を設定した。また、仮想光源Dを構成する光源点(光源面内に配置される光源点)の個数として、16(4×4の格子状に配置)を設定した。また、各々の光源点から出射する光線の範囲として、水平方向及び垂直方向ともに±20°を設定した。また、各々の光源点から出射する光線の本数として、41(水平方向)×41(垂直方向)を設定した。また、仮想投影面として、仮想光源Dから50~500cmの範囲に50cm刻みで配置される合計10の仮想投影面を設定した。また、仮想投影面(及び仮想評価投影面)の区画領域として、41×41の区画領域を設定した。なお、評価配光パターンは、明るさが同じ(又は略同じ)領域を表す等光度線も同時に表示してもよい。また、評価配光パターンは、明るさごとに色分けして表示してもよい。ユーザは、このディスプレイに表示される評価配光パターンを視認することより、実際に25m先に投影することなく、車両用灯具20の配光パターンを評価することができる。
【0096】
以上説明したように、本実施形態によれば、複数の検出器(カメラ)を用いることなく、車両用灯具20(例えば、車両用前照灯)の評価配光パターン(評価用の配光パターン)を生成することができる。
【0097】
また、本実施形態によれば、車両用灯具20(例えば、車両用前照灯)の評価配光パターン(評価用の配光パターン)の生成に適した、車両用灯具20と同様の配光特性を有する仮想光源Dを生成することができる。
【0098】
また、本実施形態によれば、実際に25m先に投影しなくてもよいため、評価配光パターン生成システム10を小型化でき、評価配光パターン生成システム10の設置面積を小さくできる。
【0099】
また、本実施形態によれば、ゴニオ雲台を可動させて照度計でスキャンしていくタイプに比べて、測定時間が短くなるという利点もある。
【0100】
上記実施形態において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、DVD(Digital Versatile Disc)、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0101】
上記各実施形態で示した各数値は全て例示であり、これと異なる適宜の数値を用いることができるのは無論である。
【0102】
上記各実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。上記各実施形態の記載によって本開示は限定的に解釈されるものではない。本開示はその精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0103】
10…評価配光パターン生成システム、20…車両用灯具、30…雲台、40…投影面、50…駆動装置、60…撮像装置、70…情報処理装置、71…プロセッサ、72…メモリ、73…記憶装置、73a…所定プログラム、AX20、AX60、AX…光軸、D…仮想光源、P…光線、P1~P9…明るさ、Q1…仮想投影面、Q2…仮想投影面、Qs…仮想評価投影面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8