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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139501
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】角パイプ
(51)【国際特許分類】
   H01T 19/00 20060101AFI20230927BHJP
   H05H 1/24 20060101ALN20230927BHJP
【FI】
H01T19/00
H05H1/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045064
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000183738
【氏名又は名称】春日電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002446
【氏名又は名称】弁理士法人アイリンク国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 正幹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】田村 豊
(72)【発明者】
【氏名】猿渡 真二
(72)【発明者】
【氏名】二木 大介
【テーマコード(参考)】
2G084
【Fターム(参考)】
2G084AA07
2G084BB14
2G084BB23
2G084BB32
2G084CC22
2G084CC34
2G084DD12
2G084DD21
2G084DD25
(57)【要約】
【課題】 保持し易く、高温になっても問題を発生しないセラミック製の角パイプを提供することである。
【解決手段】 断面が四角形のセラミック製の筒本体11aの対向する一対の外壁のそれぞれに、上記筒本体11aの軸方向に伸びる線状凸部11b,11bを備え、上記線状凸部11b,11bに対応する、線状凹部12b,12bを有する電極ホルダー12によって保持可能にされている。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面が四角形のセラミック製の筒本体の対向する一対の外壁のそれぞれに、上記筒本体の軸方向に伸びる線状凸部又は線状凹部を備え、
上記線状凸部又は線状凹部に対応する、線状凹部又は線状凸部を有する保持手段によって保持可能にされた角パイプ。
【請求項2】
上記筒本体内に、金属電極が収容される電極収容空間を備えた請求項1に記載の角パイプ。
【請求項3】
上記線状凸部又は線状凹部は、上記外壁の短辺の中心に設けられた請求項1又は2に記載の角パイプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、セラミック製の角パイプに関する。
【背景技術】
【0002】
コロナ放電を利用した表面改質装置用として、図5に示すように、セラミック製の丸パイプ2内に棒状の金属電極3が挿入された放電電極1が知られている。
この放電電極1は、処理対象であるフィルムFを搬送する接地された処理ローラRと対向するように設けられ、金属電極3に高電圧を印加すると、放電電極1の断面が円形の丸パイプ2と上記処理ローラRとの間で放電が発生するようにされている。
【0003】
フィルムFの表面は、上記放電のエネルギーによって改質されるため、放電電極1は、フィルムFの処理幅分の長さが必要である。
また、放電状態は、印加電圧の大きさや、放電電極1と処理ローラRとの間隔に依存し、均一な処理効果を得るためには、放電電極1と処理ローラRとの均一な間隔を維持することが必要である。
【0004】
そこで、丸パイプ2は、その全長を、図5に示した電極ホルダー4で保持され、この電極ホルダー4が連結部材5を介して、処理チャンバーなどに固定されている。
上記電極ホルダー4は、処理ローラRとの対向面側に丸パイプ2の外周に沿った半円以上の円弧状の保持凹部4aを備え、この保持凹部4aに丸パイプ2を挿通して摺動可能に保持する。そのため、放電電極1が熱膨張し軸方向で伸縮しても、その変位を軸方向の移動によって吸収でき、放電電極1が撓んで処理ローラRとの間隔が不均一になるようなことはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-032497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記丸パイプ2は円筒形であるが、セラミック製の角パイプ6を放電電極に用いることも考えられる。図6は、角パイプ6を放電電極に用いた例である。なお、ここでは角パイプ6内の金属電極は省略している。
角パイプ6を上記電極ホルダー4のような保持凹部で保持するためには、電極ホルダー7が、角パイプの外壁の4面を覆わなければならない(図6参照)。そのため、角パイプ6において処理ローラRに対向する面の一部が電極ホルダー7で覆われて、処理ローラRに近づけることができず、効率的な放電が生成できなくなってしまう。
【0007】
そこで、角パイプ6を用いる場合には、図7のように、角パイプ6のひとつの面に、例えば樹脂製の長板状の支持部材8を接着剤で接着し、この支持部材8を、図示しない装置本体側に固定された保持部材9に、止めねじ10で取り付けるようにしていた。
このように、角パイプ6を用いた放電電極では、角パイプ6の外周の一面全体が直接処理ローラRと対向するので、丸パイプと比べて放電面積を大きくすることができる。
【0008】
しかし、放電によって放電電極が高温になったとき角パイプ6と支持部材8との膨張率の違いや、熱による接着剤の劣化などから、角パイプ6が支持部材8から脱落してしまうことがあった。
この発明の目的は、保持し易く、高温になっても問題を発生しないセラミック製の角パイプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、断面が四角形のセラミック製の筒本体の対向する一対の外壁のそれぞれに、上記筒本体の軸方向に伸びる線状凸部又は線状凹部を備え、上記線状凸部又は線状凹部に対応する、線状凹部又は線状凸部を有する保持手段によって保持可能にされている。
【0010】
第2の発明は、上記筒本体内に、金属電極が収容される電極収容空間を備えている。
【0011】
第3の発明は、上記線状凸部又は線状凹部は、上記外壁の短辺の中心に設けられている。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によれば、外壁に形成された線状凸部又は線状凹部を、線状凹部又は線状凸部を有する保持手段によって保持することができる。また、角パイプを、保持手段に対し軸方向に摺動自在とすることができる。そのため、角パイプが、熱膨張しても、筒本体の軸方向に移動し、角パイプが撓むようなことはない。したがって、例えば、表面改質装置の放電電極に用いた場合に、対向電極との間隔を一定に保って、均一な処理を実現することができる。
【0013】
第2の発明によれば、保持し易く、直線性を保った放電電極を提供できる。また、角パイプの外壁の一つの面全体が保持手段から露出するので、放電電極に用いたとき、放電電極が対向電極と直接対向する面積が大きくなり、放電面積を大きくすることができる。
【0014】
第3の発明によれば、当該角パイプは、線状凸部又は線状凹部を境に上下を反対にしても、同じ保持手段で保持することができる。したがって、保持手段から露出した特定の外壁面が汚染したり傷付いたりした場合に、線状凸部又は線状凹部を境に向きを反転させて露出面を簡単に変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、第1実施形態の角パイプの断面図である。
図2図2は、第1実施形態の角パイプの側面図である。
図3図3は、第1実施形態の角パイプを利用した装置の側面図である。
図4図4は、第2実施形態の角パイプを利用した装置の側面図である。
図5図5は、従来の放電電極を用いた装置の側面図である。
図6図6は、従来の角パイプを利用した装置の側面図である。
図7図7は従来の角パイプの、図5とは別の利用例の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1実施形態]
図1~3を用いて、この発明の第1実施形態を説明する。図1は角パイプの断面図、図2は角パイプの側面図、図3は角パイプを利用した装置の側面図である。
第1実施形態の角パイプ11は、図1,2に示すように、断面が四角形セラミック製の筒本体11aを備え、その対向する一対の外壁のそれぞれに、筒本体11aの軸方向に伸びる線状凸部11b,11bを備えている。
【0017】
上記線状凸部11bは、断面形状が二等辺三角形で、その頂点が外壁の短辺aの中心に位置するように設けられている。上記短辺aとは、図2に示した通り、筒本体11aの軸方向に沿った長辺bに直交する辺である。すなわち、線状凸部11bが、当該線状凸部11bが形成される外壁の短辺aの中心に設けられている。そのため、上記線状凸部11bの頂点から一方の長辺bまでの距離L1と他方の長辺bまでの距離L2とは等しい。
【0018】
この第1実施形態の角パイプ11を、表面改質装置の放電電極に用いた場合について説明する。
図3は、放電エネルギーを利用してフィルムの表面を改質するための表面改質装置の側面図である。フィルムを搬送支持する処理ローラRに対向して放電電極が設置されるが、この放電電極は、上記角パイプ11とその筒本体11aの内部に挿入された図示しない金属電極とからなる。上記筒本体11a内の空間が、電極収容空間である。
【0019】
上記放電電極の角パイプ11の筒本体11aは、保持手段である樹脂製の電極ホルダー12で保持され、連結部材13を介して図示しない装置本体に固定されている。
電極ホルダー12は、コの字状の保持凹部12aを備え、内壁の対向面にそれぞれ線状凹部12b,12bを備えている。
【0020】
上記線状凹部12b,12bは筒本体11aの外壁に形成された線状凸部11b,11bを摺動可能に保持する形状である。そして、上記電極ホルダー12は、筒本体11aの軸方向に長さを有するが、その長さは筒本体11aより短い。したがって、複数の電極ホルダー12を筒本体11aに沿って所定の間隔を保って配置することによって、上記筒本体11aが当該複数の電極ホルダー12によって複数個所で保持されている。
【0021】
なお、この実施形態では、1個の電極ホルダー12に、対向する処理ローラRの周方向に沿って3つの保持凹部12aが形成され、3本の角パイプ11がそれぞれ、電極ホルダー12によって処理ローラRに対向するように保持されている。
また、符号12cは、電極ホルダー12の外壁から上記保持凹部12aまで貫通するねじ孔で、このねじ孔12cに図示していない止めビスをねじ込んでその先端で筒本体11aを押さえられるようにしている。
【0022】
[作用・効果等]
上記のような角パイプ11の筒本体11aは、線状凸部11b,11bがコの字状の保持凹部12aに形成した線状凹部12b,12bにはめ込まれて保持されるため、処理ローラRと対向する側の外壁を電極ホルダー12から大きく露出させることができる。これにより、筒本体11aは、処理ローラRに対向する側の外壁面を処理ローラRに近づけて対向させることができる。したがって、放電電極に角パイプを用いた場合には、丸パイプよりも、放電面積を大きくすることができる。
また、この角パイプ11の筒本体11aは、放電によって放電電極が高温になり熱膨張したとしても、線状凹部12b,12bに対して線状凸部11b,11bが摺動するので、撓んで部分的に処理ローラRとの距離が変化してしまうようなことがない。したがって、均一な表面改質処理を実現することができる。
【0023】
さらに、上記線状凸部11b,11bは、それが形成された外壁面において、短辺aの中心に設けられている。そのため、180°反転させた状態でも、図3と同様に筒本体11aを電極ホルダー12で保持することができる。
放電によって、電極ホルダー12から露出した処理ローラRとの対向面が劣化してしまった場合、上記対向面を保持凹部12a側に変更して、新たな側面を処理ローラRの対向面とすることができる。つまり、放電電極の寿命を2倍に伸ばすことができる。
【0024】
[第2実施形態]
図4は、この発明の第2実施形態で角パイプ14を放電電極に利用した表面改質装置の側面図である。
第2実施形態の角パイプ14は、セラミック製の筒本体14aの外壁の対向する一対の外壁のそれぞれに、筒本体14aの軸方向に伸びる線状凹部14b,14bを備えている。
【0025】
上記線状凹部14bは、断面形状が二等辺三角形で、その頂点が外壁の短辺の中心に位置するように設けられている。上記短辺とは、筒本体14aの軸方向に沿った長辺に直交する辺である(図2参照)。すなわち、線状凹部14bが、当該線状凹部14bが形成される外壁の短辺の中心に設けられている。そのため、上記線状凹部14bの中心から一方の長辺までの距離と他方の長辺までの距離とは等しい。
【0026】
図4は、放電エネルギーを利用してフィルムの表面を改質するための表面改質装置の側面図である。フィルムを搬送支持する処理ローラRに対向して放電電極が設置されるが、この放電電極は、上記角パイプ14とその筒本体14aの内部に挿入された図示しない金属電極とからなる。上記筒本体14a内の空間が、電極収容空間である。
【0027】
上記放電電極の角パイプ14の筒本体14aは、保持手段である樹脂製の電極ホルダー15で保持され、連結部材13を介して図示しない装置本体に固定されている。
電極ホルダー15は、コの字状の保持凹部15aを備え、内壁の対向面にそれぞれ線状凸部15b,15bを備えている。
【0028】
これら線状凸部15b,15bは筒本体14aの外壁に形成された線状凹部14b,14bを摺動可能に保持する形状である。そして、この電極ホルダー15は、筒本体14aの軸方向に長さを有するが、その長さは筒本体14aより短い。そのため、複数の電極ホルダー15を筒本体14aに沿って所定の間隔を保って配置することによって、上記筒本体14aが当該複数の電極ホルダー15によって複数個所で保持されている。
【0029】
なお、この実施形態では、1個の電極ホルダー15に、対向する処理ローラRの周方向に沿って3つの保持凹部15aが形成され、3本の角パイプ14がそれぞれ、電極ホルダー15によって処理ローラRに対向するように保持されている。
また、符号15cは、電極ホルダー15の外壁から上記保持凹部15aまで貫通するねじ孔で、このねじ孔15cに図示していない止めビスをねじ込んでその先端で筒本体14aを押さえられるようにしている。
【0030】
[作用・効果等]
上記のように、この第2実施形態は、第1実施形態の筒本体11aの外壁面に形成された線状凸部11bを、線状凹部14bに代えた筒本体14aを備え、それに対応した電極ホルダー15を備えている。そのため、作用・効果は第1実施形態と同様である。
【0031】
すなわち、筒本体14aは、上記線状凹部14b,14bがコの字状の保持凹部15aに形成した線状凸部15b,15bがはめ込まれて保持されるため、処理ローラRと対向する側の外壁を電極ホルダー15から大きく露出させることができる。これにより、筒本体14aは、処理ローラRに対向する側の外壁面を処理ローラRに近づけて対向させることができる。したがって、放電電極に角パイプを用いた場合には、丸パイプよりも、放電面積を大きくすることができる。
また、筒本体14a一対の外壁面の線状凹部14b,14bを線状凸部15b,15bが摺動可能に保持することによって、筒本体14aの熱膨張の影響を抑えることができる。放電電極が熱膨張したとしても、線状凸部15b,15bに対して線状凹部14b,14bが摺動するので、放電電極が撓んで部分的に処理ローラRとの距離が変化してしまうようなことがない。したがって、均一な表面改質処理を実現することができる。
【0032】
さらに、上記線状凹部14b,14bは、それが形成された外壁面において、短辺の中心に設けられている。そのため、180°反転させた状態でも、図3と同様に筒本体14aを電極ホルダー15で保持することができる。
放電によって処理ローラRとの対向面が劣化してしまった場合、対向面を保持凹部15a側に変更して、新たな側面を処理ローラRの対向面とすることができる。つまり、放電電極の寿命を2倍に伸ばすことができる点も、第1実施形態と同じである。
【0033】
上記第1,2実施形態では、1個の電極ホルダーで複数の角パイプ11,14を保持するようにしているが、同時に保持される筒本体の数は、いくつでもよい。また、筒本体11a,14aに形成された線状凸部又は線状凹部を利用した構成であればよく、保持手段の形状等も上記実施形態に限定されない。
【0034】
また、上記角パイプ11,14は、放電電極以外に利用することもできる。例えば、ヒータの電熱線を覆うカバー部材として用いた場合も、カバー部材の線状凸部又は線状凹部を、それを保持する保持手段の線状凹部又は線状凸部によって保持するようにすれば、熱膨張による撓みを防止することができる。セラミック製のカバー部材が撓めば、部分的に応力が集中して破損の原因になったり、カバー部材内の電熱線が曲がって、部分的に過熱してしまったりする可能性もある。
また、筒本体の外壁を囲む保持手段を用いた場合に、角パイプは、丸パイプと比べて露出面積を大きくすることもできる。
なお、筒本体に形成する線状凸部又は線状凹部の形状は、特に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0035】
表面改質装置の放電電極として特に有用である。
【符号の説明】
【0036】
11,14 角パイプ
11a,14a 筒本体
11b 線状凸部
14b 線状凹部
12,15 (保持手段)電極ホルダー
12b (保持手段の)線状凹部
15b (保持手段の)線状凸部
a 短辺
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7