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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139518
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】テープタイプ使い捨て吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/494 20060101AFI20230927BHJP
   A61F 13/532 20060101ALI20230927BHJP
   A61F 13/493 20060101ALI20230927BHJP
   A61F 13/49 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
A61F13/494 200
A61F13/532 200
A61F13/493
A61F13/49 315A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045086
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青地 晃平
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BA12
3B200BB11
3B200CA02
3B200CA06
3B200DA01
3B200DA02
3B200DA16
3B200DA21
3B200DB05
(57)【要約】
【課題】ファスニングテープを外し、腹側部分を展開するときにおける前側からの漏れを防止又は抑制する。
【解決手段】上記課題は、吸収体30と、この吸収体30の表面側に設けられた液透過性のシートと、前記吸収体30の裏面側に設けられた液不透過性シート1と、背側両側に設けられ腹側部分の外面と連結されるファスニングテープとを有するテープタイプ使い捨て吸収性物品において、長手方向両側部に着用者側に起き上がるサイド起き上がりギャザーが設けられ、少なくとも、吸収性物品の長手方向中央から腹側寄りであって、前記サイド起き上がりギャザーの起き上がり部分4fに対応する前後方向位置に、幅方向に沿い、かつ前記吸収体3位置の少なくとも一部を横切って収縮する伸縮手段20が設けられている、使い捨ておむつにより解決される。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収体と、この吸収体の表面側に設けられた液透過性のシートと、前記吸収体の裏面側に設けられた液不透過性シートと、背側両側に設けられ腹側部分の外面と連結されるファスニングテープとを有するテープタイプ使い捨て吸収性物品において、
前記物品の長手方向に関し、背側部分と、腹側部分とを有し、
さらに前記物品の長手方向両側部に着用者側に起き上がるサイド起き上がりギャザーが設けられ、
少なくとも、前記吸収性物品の長手方向中央から腹側寄りであって、前記サイド起き上がりギャザーの起き上がり部分に対応する前後方向位置に、幅方向に沿い、かつ前記吸収体位置の少なくとも一部を横切って収縮する伸縮手段が設けられている、
ことを特徴とするテープタイプ使い捨て吸収性物品。
【請求項2】
前記腹側部分の外面にフロントターゲットが設けられ、前記収縮手段の位置は、前記フロントターゲットと前記クロッチ部分の長手方向中央との間の腹側寄りである、請求項1記載のテープタイプ使い捨て吸収性物品。
【請求項3】
前記伸縮手段は長手方向に間隔をおいて複数設けられ、前記背側部分の端側の伸縮手段の伸長率が、前記クロッチ部分の長手方向中央側の伸縮手段の伸長率より高い、請求項1記載のテープタイプ使い捨て吸収性物品。
【請求項4】
前記伸縮手段は基体シートに前記幅方向に沿う弾性部材が伸長状態で一体化されたものである、請求項1~3のいずれか1項に記載のテープタイプ使い捨て吸収性物品。
【請求項5】
前記伸縮手段は、その中央側が前記腹側に膨出する形態で設けられている、請求項1記載のテープタイプ使い捨て吸収性物品。
【請求項6】
前記吸収体にスリット、凹溝及びエンボスの群から選ばれた前記幅方向に沿う易変形部が形成され、この易変形部の少なくとも一部は、前記伸縮手段の収縮力の作用部位の前後方向10mm以内の位置にある、請求項1記載のテープタイプ使い捨て吸収性物品。
【請求項7】
前記物品の長手方向両側部であって、前記に着用者側に起き上がるサイド起き上がりギャザーが設けられ、前記サイド起き上がりギャザーの起き上がり領域より外側に平面ギャザーが設けられ、
前記伸縮手段の収縮力の作用部位は前記平面ギャザーより外側には越えない位置関係にある、請求項1記載のテープタイプ使い捨て吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープタイプ使い捨て吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつにおいては、表面の幅方向両側に、身体側に突出するサイド起き上がりギャザーがそれぞれ前後方向に沿って延在しているものが一般的となっている(例えば特許文献1参照)。このようなサイド起き上がりギャザーを備えることによって、両サイド起き上がりギャザー間に排泄物が留まり、特に着用者の脚周り部からの排泄物の漏れが防止される。
【0003】
他方、特に成人用の使い捨ておむつにおいては、パッドを併用し、ある程度使用したならばパッドを交換する使用形態が 汎用されている。パッドの交換時には着用者が仰向け寝の状態でファスニングテープを外し、腹側部分を展開する。
また、幼児用の場合において、排泄の有無を確認する際などにおいても、着用者が仰向け寝の状態でファスニングテープを外し、腹側部分を展開することが行われる。
【0004】
このようにファスニングテープを外し、腹側部分を展開したとき、例えば図6に示すように、吸収体で吸収できなかった尿や軟便が、装着中の足圧や臀部圧によって生じた吸収体の皺に沿って前側端に流れ、その前側端から漏れて寝具を汚してしまうことがある。符号Q参照。
【0005】
また、ファスニングテープを外し、腹側部分を展開するときには、腹側部分を両外方に開くように展開することになるので、装着中は着用者側に起立していた起き上がりギャザーが平坦化した寝た状態になり、その結果、起き上がりギャザーを越えて横漏れが発生しやすくなる。
【0006】
なお、これらの現象は、吸収体の厚みが薄く、剛性に乏しいほど顕著にあらわれる傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6764360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明の主たる課題は、ファスニングテープを外し、腹側部分を展開するときにおける前側からの漏れを防止又は抑制したテープタイプ使い捨て吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決した本発明の代表的態様は以下のとおりである。
【0010】
<代表的態様>
吸収体と、この吸収体の表面側に設けられた液透過性のシートと、前記吸収体の裏面側に設けられた液不透過性シートと、背側両側に設けられ腹側部分の外面と連結されるファスニングテープとを有するテープタイプ使い捨て吸収性物品において、
前記物品の長手方向に関し、背側部分と、腹側部分とを有し、
さらに前記物品の長手方向両側部に着用者側に起き上がるサイド起き上がりギャザーが設けられ、
少なくとも、前記吸収性物品の長手方向中央から腹側寄りであって、前記サイド起き上がりギャザーの起き上がり部分に対応する前後方向位置に、幅方向に沿い、かつ前記吸収体位置の少なくとも一部を横切って収縮する伸縮手段が設けられている、
ことを特徴とするテープタイプ使い捨て吸収性物品。
【0011】
吸収性物品の長手方向中央から腹側寄りであって、前記サイド起き上がりギャザーの起き上がり部分に対応する前後方向位置に、幅方向に沿い、かつ吸収体位置の少なくとも一部を横切って収縮する伸縮手段が設けられていると、吸収体を幅方向に収縮させようすとする収縮力が作用する。
このとき、サイド起き上がりギャザーの先端側は、その長手方向の収縮力により起き上がるようになる。したがって、吸収体を幅方向に収縮させようとする伸縮手段による収縮力は、サイド起き上がりギャザーの収縮力による起き上がり方向と反対側の裏面側方向に、吸収体を変形させて突出させるように作用する。
その結果、吸収性物品の長手方向中央から腹側寄りの腹側部分が、裏面側方向に突出するようになる。さらに、このような腹側部分の、裏面側方向への突出に伴って、サイド起き上がりギャザーの先端部と前記腹側部分の表面との離間距離が長くなるようになる。
これらの収縮力の関係により、腹側部分の伸縮手段が設けられている近傍に、いわばポケットが形成される。
【0012】
吸収体で吸収できなかった尿や軟便がトップシートに残留していたとしても、この排泄物は前記ポケットに入り込み、腹側部分の前側端への移行が阻止される。また、サイド起き上がりギャザートの先端側が、トップシートとの離間距離がより長くなった結果、つまり、ポケットのサイド方向の深さが深くなった結果、排泄物の横方向の移動は阻止され、サイド起き上がりギャザートの先端側を越えて横漏れを生じることがなくなる又は抑制される。
【発明の効果】
【0013】
以上のとおり、本発明によれば、ファスニングテープを外し、腹側部分を展開するときにおける前側からの漏れを防止又は抑制できるなどの利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】テープタイプ使い捨ておむつの展開状態の内面側を示す平面図である。
図2】テープタイプ使い捨ておむつの展開状態の外面側を示す平面図である。
図3図1の3-3断面図である。
図4図1の4-4断面図である。
図5】使用前のほぼ自然長の状態を示す、テープタイプ使い捨ておむつの斜視図である。
図6】従来例の腹側部分からの排泄物の漏れを示す概要部分斜視図である。
図7】本発明に係る第1の実施の形態における使い捨ておむつの展開状態の外面側からの部分平面図である。
図8】第1の実施の形態における腹側部分からの排泄物の漏れ防止形態を示す概要部分斜視図である。
図9】その縦断面図である。
図10】(a)は横断面図であり、(b)は他のサイド起き上がりギャザーを示す横断面図である。
図11】本発明に係る他の実施の形態における使い捨ておむつの展開状態の外面側からの部分平面図である。
図12】別の実施の形態における使い捨ておむつの展開状態の外面側からの部分平面図である。
図13】異なる実施の形態における使い捨ておむつの展開状態の外面側からの部分平面図である。
図14】さらに異なる実施の形態における使い捨ておむつの展開状態の外面側からの部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しつつ詳説する。なお、ホットメルト接着剤による接着箇所のうち説明上必要と認めた箇所については、平面図中には斜線模様を、また断面図中には点模様をそれぞれ付している。
本発明のテープタイプ使い捨て吸収性物品としては、成人用の使い捨ておむつ、とりわけパッドを併用するテープタイプ使い捨てのほか、幼児用使い捨ておむつなども含む。
【0016】
<使い捨ておむつの例>
図1図4は、前後方向LD及び幅方向WDを有する成人用のテープタイプ使い捨ておむつの一例を示しており、この使い捨ておむつは、液不透過性シート1の内面と、透液性トップシート2との間に、吸収体3が介在されているものである。
また、背側部Bと前側部Fと、着用者のクロッチ部分に対応する幅方向内方に括れたクロッチ部Cとを有している。テープタイプ使い捨ておむつの前後方向LDの中心LCは、一般的にクロッチ部Cの前後方向LDの中心LCとほぼ同じに設計される。
【0017】
(吸収体)
吸収体3としては、パルプ繊維の積繊体、セルロースアセテート等のフィラメントの集合体、あるいは不織布からなる繊維集合層を単層又は複数層有する基本構造を有し、必要に応じて粒子状などの高吸収性ポリマーを繊維集合層中に混合したり、繊維集合層中又は繊維集合層の表面に固着したり、繊維集合層間に層状に介在させたりしたもの等、公知のものを特に限定なく用いることができる。図示形態の吸収体3は一層構造とされているが、下層吸収体とその上に積層された上層吸収体とからなる二層構造であっても良い。また、必要に応じて、吸収体3はクレープ紙(図示省略)により包むことができる。また、吸収体3の形状は適宜定めることができるが、図示のようにクロッチ部分を含む前後方向LDの中間部分の幅がその前後両側よりも狭い砂時計形状(括れ形状)の他、長方形等のように、クロッチ部分の前側から後側まで延在する形状が好適である。吸収体3におけるパルプ目付けは100~500g/m2程度、厚みは1~15mm程度であるのが望ましい。また、高吸収性ポリマーの目付けは0~300g/m2程度であるのが望ましい。高吸収性ポリマーの含有率が少な過ぎると、十分な吸収能を与えることができず、多過ぎるとパルプ繊維間の絡み合いが無くなり、ヨレや割れ等が発生し易くなる。
【0018】
(液不透過性シート)
液不透過性シート1は、吸収体3の周囲より外側に延在しており、吸収体3に吸収された排泄物の裏側への移動を遮断するものである。液不透過性シート1としては、ポリエチレンフィルム等のプラスチックフィルムの他、ムレ防止の点から遮水性を損なわずに透湿性を備えたシートも用いることができる。この遮水・透湿性シートは、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸又は二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートを用いることができる。液不透過性シート1の単位面積あたりの重量は13~40g/m2であるのが好ましく、厚みは0.01~0.1mmであるのが好ましい。
【0019】
おむつ外面を布のような外観及び肌触りとするために、液不透過性シート1の裏面全体は外装シート12で覆われており、両シート1,12の外周縁はおむつの外周縁まで及んでいる。外装シート12としては各種の不織布を用いることができるが、スパンボンド不織布が好適である。外装シート12は省略することもできる。
【0020】
(トップシート)
トップシート2としては、有孔又は無孔の不織布や穴あきプラスチックシートなどが用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。また、不織布の加工方法としては、スパンレース法、スパンボンド法、SMS法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等の公知の方法を用いることができる。透液性トップシート2に用いる不織布の繊維目付けは15~30g/m2であるのが好ましく、厚みは0.05~1mmであるのが好ましい。
【0021】
トップシート2は、吸収体3の周囲より外側に延在しており、吸収体3側縁より外側に延在する部分が液不透過性シート1にホットメルト接着剤等により固定されている。
【0022】
(サイド起き上がりギャザー)
図1及び図4にも示されるように、物品内面の両側部(図示形態ではトップシート2の側縁部表面からその側方に延在する液不透過性シート1の表面)には、サイド起き上がりギャザー4を構成するサイド起き上がりギャザーシート4sの幅方向WDの外側の付根部分4xが前後方向LDの全体にわたり貼り付けられている。サイド起き上がりギャザーシート4sは、各種不織布(スパンボンド不織布が好適である)の他、液不透過性シートに用いられるものと同様のプラスチックフィルム、又はこれらの積層シートを用いることができるが、肌への感触性の点で、撥水処理を施した不織布が好適である。
【0023】
サイド起き上がりギャザーシート4sの幅方向WDの中央側の突出部分4cは、前後方向LDの両端部では倒伏状態で物品内面(図示形態ではトップシート2表面)にホットメルト接着剤等の手段により固定され、固定部分4eとされている。これに対し、前後の固定部分4e、4eの間の長手方向中間部は非固定であり、おむつ着用時における変形により自由に着用者の肌側に起き上がる起き上がり部分4fとなっている。図1などが参照さされる符合40は、起き上がり部分4fと固定部分4eとの境界を示している。
ギャザーシート4sの少なくとも先端部(展開状態における幅方向WDの中央側の端部)は、幅方向WDの中央側で折り返された二層構造となっており、起き上がり部分4fの少なくとも先端部における層間には、細長状の弾性部材4Gが前後方向LDに沿って伸長した状態でホットメルト接着剤等により固定されている。
【0024】
この弾性部材4Gは図示例では所定の間隔を空けて複数本設けられているが、一本でも良い。弾性部材4G(他の弾性部材も同様)としては、糸状、紐状、帯状等に形成された天然ゴム又は合成ゴム、具体的にはスチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコン、ポリエステル等、通常使用される素材を用いることができる。この起き上がり部分4fは、弾性部材4Gの収縮力が作用する結果、図4に示されるように、物品内面(図示形態ではトップシート2表面)に対して起立する。この起き上がり部分4fの基端4bはサイド起き上がりギャザー4における幅方向WDの外側の固定部分4xと突出部分4cとの境に位置する。なお、図1中の右斜め上がりの斜線部分はサイド起き上がりギャザー4の固定部分を示しており、左斜め上がりの斜線部分は後述するウエストギャザーシート30の固定部分を示している。
【0025】
使い捨ておむつの前後方向LD両端部では、液不透過性シート1、外装シート12、透液性トップシート2及びサイド起き上がりギャザーシート4sが吸収体3の前後端よりも前後両側にそれぞれ延在され、吸収体3の存在しないエンドフラップ部EFが形成されている。一方、使い捨ておむつの左右両側部では、液不透過性シート1、外装シート12、透液性トップシート2及びサイド起き上がりギャザーシート4sが吸収体3の側縁よりも側方にそれぞれ延在され、吸収体3の存在しないサイドフラップ部SFが形成されている。サイドフラップ部SFのうち腹側部分Fのウエスト側部分及び背側部分Bのウエスト側部分にそれぞれ位置する部分は、脚開口の縁Leを有するクロッチ部分Cよりも側方に延出されており、これらの部分が、おむつの胴周り部分となる。
【0026】
(ウエスト起き上がりギャザー)
他方、図示形態の使い捨ておむつの背側部分B(後端部:図示例の場合はエンドフラップ部EF)には、おむつ内面(図示形態ではトップシート2表面)から起き上がるウエスト起き上がりギャザー30が設けられている。
このウエスト起き上がりギャザー30は、図1の左斜め上がりの斜線部分で示すように、ウエスト側の付根部分33が、トップシート2表面にホットメルト接着剤等の接合手段により接合されており、この付根部分33と、この付根部分33から長手方向LD中間側に突出する突出部分34とを有している。
突出部分34のうち幅方向WDの両端部はトップシート2とサイド起き上がりギャザーシート4sとの間に挟まれて両シートに対してホットメルト接着剤等の接合手段により接合されている。
図示形態では、ウエスト起き上がりギャザー30の突出部分34とサイド起き上がりギャザー4の起き上がり部分4fと重なる部分が相互に接合されているが、非接合でもよい。
【0027】
また、図示のウエスト起き上がりギャザー30では、ウエスト起き上がりギャザーシート32を折り返した二層構造となっており、その突出部分34の少なくとも先端部(股間側の端部)における層間には、細長状のウエスト起き上がりギャザー弾性部材31が幅方向WDに沿って伸長した状態でホットメルト接着剤等の固定手段により固定されている。ウエスト起き上がりギャザー弾性部材31は図示例では所定の間隔を空けて複数本設けられているが、一本でも良い。この突出部分34は、弾性部材31の収縮力が作用する結果、図5に示すように、おむつ表面(図示形態ではトップシート2表面)から起き上がる。図1が参照されるように、この起き上がる突出部分34の基端はウエスト起き上がりギャザー30における付根部分33との境に位置する。
【0028】
さらに、背側部分Bにおけるウエスト起き上がりギャザー30より後側(図示例の場合はウエスト側の端部であるエンドフラップ部EF)には、幅方向WDの中間部が幅方向WDに弾性伸縮するウエスト伸縮部40が設けられている。
【0029】
図示例のウエスト伸縮部40は幅方向WDの中央部にのみ設けられているが、幅方向WDの全体にわたり設けたり、幅方向WDの両側部にのみ設けたりすることもでき、また幅方向中央線WCに関して線対称に設けられているのが好ましい。
より詳細には、ウエスト起き上がりギャザー30の付根部分33は、ウエストギャザーシート30を折り返した二層構造となっており、この層間に細長状の弾性部材41が幅方向WDに沿って伸長した状態でホットメルト接着剤等の固手段により固定されている。この弾性部材41は一本でも良いが図示例のように所定の間隔を空けて複数本設けるのが好ましい。
ウエスト伸縮部40を有することにより、おむつ背側部分Bにおけるウエスト側の端部が装着者の背中に弾力的に押し当てられ、おむつと装着者の背中との間に隙間が発生し難くなる。
【0030】
(平面ギャザー)
サイドフラップ部SFの前後方向LDの中間部には、液不透過性シート1と外装シート12との間に細長状の弾性部材7が前後方向LDに沿って伸長状態でホットメルト接着剤等により固定されており、この弾性部材7の収縮によりサイドフラップ部SFにはいわゆる平面ギャザーが形成されている。この平面ギャザーにより、おむつの側部が弾性伸縮して脚周りにフィットするようになる。
【0031】
左右各側における弾性部材7の本数は適宜定めることができるが、1~10本程度、より好ましくは3~8本程度が適当であり、複数本とする場合には、その間隔は2~15mm程度、特に6~10mm程度とするのが好ましい。また、各弾性部材7としては、糸状、紐状、帯状等に形成された、スチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコン、ポリエステル等、通常使用される素材を用いることができ、太さとしては500~1500dtex程度、天然ゴムの場合0.1~3mm程度、特に0.5~3mm程度が好ましい。また、各弾性部材7の固定時の伸長率は150~250%程度であるのが好ましい。
【0032】
(ファスニングテープ)
背側部分Bのサイドフラップ部SFには、その側縁からそれぞれ突出するファスニングテープ5が取り付けられるとともに、腹側部分Fの胴周り部表面に幅方向WDに沿ってフロントターゲット6が貼着されており、身体への装着に際しては、おむつを身体にあてがった状態で、両側のファスニングテープ5を腰の各側から腹側外面に回してフロントターゲット6に止着する。フロントターゲット6は省略することもでき、その場合にはファスニングテープ5はおむつ外面(図示形態の場合外装シート12)に直に止着される。おむつ外面としては、不織布が使用されるので、その不織布の繊維にファスニングテープ5のフック材(雄材)9を係止することにより、ファスニングテープ5の止着が可能である。
【0033】
図3に示されるように、ファスニングテープ5は、背側部分Bのウエスト側サイドフラップ部SFにおけるシート間にホットメルト接着剤等の手段により固定された固定部5fと、サイドフラップ部SFの側縁のシート間から幅方向WDの外側に突出する突出部5eとを有しており、この突出部5eは先端部5pと、この先端部5pよりも基端側の本体部5bとを有している。ファスニングテープ5の先端部5pの内面には、フロントターゲット6との連結のための連結部として、表面にフック状突起を多数有するフック材(メカニカルファスナー(面ファスナー)の雄材)9,9がそれぞれ取り付けられており、フロントターゲット6としてフック状突起が着脱可能に掛止される表面を有するもの(メカニカルファスナー(面ファスナー)の雌材)6が取り付けられている。
前述のように、おむつ外面の素材自体(例えば不織布)をフロントターゲット6の代わりに用いたり、フック材9に代えて粘着剤層を用いるとともに、フロントターゲット6として粘着性に富むような表面が平滑な樹脂テープを用いたりすることができる。
【0034】
また、図1に示されるように、ファスニングテープ5には、前後方向LDの中間部における幅方向WDの外側縁から本体部5b内まで幅方向WDに沿うミシン目10が設けられており、このミシン目10を切り離すことにより、図9に示すように各々が固定部、本体部、先端部及び連結部を備えた上段部及び下段部に分離することができるものである。ミシン目10に代えて、予め切断等により分離されていても良い。このようなファスニングテープ5は、上段部と下段部とを交差させた状態で、腹側部分Fのフロントターゲット6に着脱自在に連結することができる。もちろん、このような上下2段分割タイプに限られず、2段分割しないタイプ等、他の公知のファスニングテープに応用することもできる。
【0035】
上記構成の使い捨ておむつをアウターとしてその表面に吸収パッドを敷くときには、ウエスト起き上がりギャザー30を持ち上げ、ウエスト起き上がりギャザー30とトップシート2との間に吸収パッド(図示せず)を挿入する。
【0036】
上述の使い捨ておむつと併用する吸収パッド50は特に限定されるものではなく、例えば特開2014-068852号公報記載のものや、特開2012-245304号公報記載のものなど、公知のものを特に限定なく利用することができる。
【0037】
一方、使い捨ておむつの腹側部分Fに注目すると次のとおりである。
既述のとおり、成人用の使い捨ておむつ、あるいは幼児用の使い捨ておむつにおいて、着用者が仰向け寝の状態でファスニングテープを外し、腹側部分Fを展開することが比較的頻繁に行われる。
【0038】
このようにファスニングテープ5を外し、腹側部分Fを展開したとき、例えば図6に示すように、吸収体3で吸収できなかった尿や軟便が、装着中の足圧や臀部圧によって生じた吸収体3の皺に沿って腹側部分Fの前側端に流れ、その前側端から漏れて寝具を汚してしまうことがある。これを概念的に符号Qで示す。
【0039】
また、ファスニングテープ5を外し、腹側部分を展開するときには、腹側部分を両外方に開くように展開することになるので、装着中は着用者側に起立していた起き上がりギャザー4が平坦化した寝た状態になり、その結果、起き上がりギャザー4を越えて横漏れが発生しやすくなる。
【0040】
かかる問題点に対し、実施の形態では、例えば図7に示すように、少なくとも、吸収性物品(使い捨ておむつ)の長手方向LD中央から腹側寄りであって、前記サイド起き上がりギャザーの起き上がり部分に対応する前後方向位置に、幅方向WDに沿い、かつ吸収体3の位置の少なくとも一部を横切って収縮する伸縮手段20が設けられる。
【0041】
図7図10の例では、伸縮手段20として、細帯状の弾性部材(例えばいわゆる糸ゴム)が使用され、不透過性シート1と外装シート12との間に介在され、吸収体3の全幅を横切って適宜の固定手段(例えばホットメルト接着剤による固定手段)により液不透過性シート1及び外装シート12の少なくとも液不透過性シート1に対して固定される。
【0042】
上記の実施の形態においては、伸縮手段20の収縮により、吸収体3を幅方向に収縮させようすとする収縮力が作用する。
このとき、典型的に図9が参照されるように、サイド起き上がりギャザー4の先端側は、その前後方向の収縮力により白抜き矢印で示す方向に起き上がるようになる。
実施の形態においては、吸収体3を幅方向に収縮させようとする伸縮手段20による収縮力は、伸縮手段20に配置領域において着床者の肌側に吸収体3を変形させながら近接するように作用する。
サイド起き上がりギャザー4の先端側の収縮力の作用により、サイド起き上がりギャザー4の先端部がトップシート2の表面との離間距離が長くなるように起き上がり、サイド起き上がりギャザー4の先端側の収縮力(前後方向の距離を短くするように作用する力)が、伸縮手段20に配置領域より中央側に作用する結果、逆に、吸収体3を裏面側に押し出すように変形させる力となり、伸縮手段20に配置領域より中央側に、いわばポケットPを形成させる(図8及び図9参照)。かかる形状(特に図9にあらわれたS字状の変形形状)は、ファスニングテープを外し、腹側部分を両外方に開くように展開した状態において典型的にあらわれる。
なお、図8の右側のサイド起き上がりギャザー4については、敢えて折り返した状態で基端4bを図示している。
【0043】
かくして、吸収体3で吸収できなかった尿や軟便がトップシートに残留していたとしても、この排泄物Q1はポケットPに入り込み、腹側部分Fの前側端への移行が阻止される。また、サイド起き上がりギャザート4の先端側が、トップシートとの離間距離がより長くなった結果、つまり、図9のポケットPで示すように、縦断面で見た、ギャザート4の基端4bまでのサイド方向の深さが深くなった結果、排泄物Q1の横方向の移動は阻止され、サイド起き上がりギャザート4の先端側を越えて横漏れを生じることがなくなる又は抑制される。
【0044】
サイド起き上がりギャザート4は上記例のほか、図10(b)に概略を示すように、いわゆるZ字折りタイプのサイド起き上がりギャザート4であってもよい。
【0045】
実施の形態のように、伸縮手段20の前後方向LDの数は2本のほか、1本、3本以上でもよい。また、伸縮手段20が吸収体3の全幅を横切ることが必須ではなく、図11に示すように、両側部に分離して設けられてもよい。
伸縮手段20の前後方向LDの位置としては、長手方向LD中央から腹側寄りであって、サイド起き上がりギャザー4の起き上がり部分4fに対応する前後方向位置に、であればよく、限定はされないが、クロッチ部分Cに位置させるのが望ましい。クロッチ部分Cから腹側部分Fは、幅広部分であり、また、特に吸収体3の幅広部分でもあり、吸収体3の縦断面方向の変形が難しい部分であるので、吸収体3の縦断面方向の変形が容易なクロッチ部分Cに位置させるのが望ましい。
【0046】
他方、先に説明したように、サイド起き上がりギャザー4は、長手方向LD中間から腹側部分Fにかけて、図1中の右斜め上がりの斜線部分が参照されるように、吸収体3の側縁より外方の位置において、起き上がり部分4fの基端4bを有している。
かかる位置としたのは、ある程度剛性のある吸収体3を変形させることなく、サイド起き上がりギャザー4単独で容易に起き上がらせるようにするためである。
【0047】
図示の形態では、図1が参照されるように、起き上がり部分4fの基端4bより外方に平面ギャザーの弾性部材7が配置され、前後方向に伸縮するようになっている。したがって、伸縮手段20のより望ましい配置形態は、その端が平面ギャザーの弾性部材7と交わらない位置とすることである。
【0048】
実施の形態においては、腹側部分Fの外面にフロントターゲット6が設けられている。かかる実施の形態において、収縮手段20の位置は、フロントターゲット6の領域と重なることなく、クロッチ部分Cの長手方向中央との間の腹側寄りであって、サイド起き上がりギャザー4の起き上がり部分4fに対応する前後方向位置に形成するのが望ましい。
すなわち、フロントターゲット6についても、ある程度剛性を有するので、吸収体3の変形を容易に行わせるために、フロントターゲット6の領域と重ならないようにするのが望ましい。
仮にフロントターゲット6の領域と重なる位置にすると、収縮手段20の収縮に伴ってフロントターゲット6にシワが発生し、ファスニングテープ5のフロントターゲット6への止着が阻害される。
【0049】
図7に示す実施の形態の伸縮手段20は長手方向に間隔をおいて複数設けられている。この場合において、腹側部分Fの端側(図7の上方端側)の伸縮手段20の伸長率が、クロッチ部分の長手方向中央側の伸縮手段20の伸長率より高いのが望ましい。この態様によれば、腹側部分Fの端側(図7の上方端側)の伸縮手段20が強く収縮するようになるので、ポケット部Pが裏面側により強く突出するようになる。
【0050】
長手方向LDにおける所定長さの幅全体で収縮機能を発揮させるために、図12に示すように、基体シート21aに幅方向に沿う複数本の弾性部材21bが伸長状態で一体化された収縮手段20Aを、例えば不透過性シート1と外装シート12との間に介在させて固定することができる。
【0051】
また、図13に示すように、伸縮手段20Bは、その中央側が腹側部分Fの端側(図7の上方端側)に膨出する形態で設けられていてもよい。この態様においてもポケット部Pが裏面側により強く突出する形態となる。
【0052】
他方、図14に示すように、吸収体3にスリット、凹溝及びエンボスの群から選ばれた易変形部3aが幅方向に沿って形成され、この易変形部3aの少なくとも一部は、伸縮手段20、20A、20Bの収縮力の作用部位の前後方向10mm以内の位置にある形態とすることができる。
吸収体3にスリット、凹溝又はエンボスを形成することにより、吸収体3が変形し易くなることは公知であり、その態様について図示を省略してある。
収縮手段の収縮により、易変形部3aが変形し、ポケット部Pが裏面側により強く突出する形態となる。
【0053】
使い捨ておむつが幼児用又は成人用などの種別によりサイズが異なるので、収縮手段20、20A、20Bの配置位置を絶対寸法で示すことはできないが、全体的なサイズを、例えば図1のサイド起き上がりギャザート4、4の起き上がり部分4f、4fの側縁間の展開状態における離間距離d1で代替すると、境界40(起き上がり部分4fと固定部分4eとの境界)と、収縮手段20、20A、20Bの配置端との離間距離d2は、d2/d1が(0.2~2.0)の数値範囲が望ましく、特に(0.5~1.4)の数値範囲を満たす配置位置とすることがより望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、上記例のようにテープタイプ使い捨ておむつに好適なものであり、パッド併用のものであるものに限定されない。
【符号の説明】
【0055】
B…背側部分、C…クロッチ部分、F…腹側部分、LD…前後方向、WD…幅方向、1…液不透過性シート、2…トップシート、3…吸収体、3a…易変形部、4、4X…サイド起き上がりギャザー、4f…起き上がり部分、5…ファスニングテープ、6…フロントターゲット、9…フック材、10…ミシン目、12…外装シート、20、20A、20B…収縮手段、30…ウエスト起き上がりギャザー、40…境界。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14