(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139564
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】燃料電池セル
(51)【国際特許分類】
H01M 8/1004 20160101AFI20230927BHJP
H01M 8/0273 20160101ALI20230927BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20230927BHJP
【FI】
H01M8/1004
H01M8/0273
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045146
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071216
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 昌毅
(74)【代理人】
【識別番号】100130395
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】水谷 千晶
(72)【発明者】
【氏名】中澤 哲
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA02
5H126AA15
5H126BB06
5H126DD02
5H126DD05
5H126EE03
5H126HH01
5H126HH02
(57)【要約】
【課題】 燃料電池セルに於いて、膜電極接合体10を囲繞する枠部材16をセパレータ121、122で挟み、枠部材の部分を加熱圧着する工程に於いて、枠部材の熱膨張が生じた際の膜電極接合体の破損を回避する。
【解決手段】 電解質膜の両側に触媒電極層が積層された膜電極接合体と、膜電極接合体を挟持したガス拡散層151、152と、膜電極接合体とガス拡散層の周囲を囲繞する枠部材と、枠部材とガス拡散層とを両側から挟持し、ガス拡散層との間に反応ガスの供給と生成された水の排出のための流路を画定する一対のセパレータとを有し、枠部材とセパレータとが加熱圧着された燃料電池セルに於いて、膜電極接合体の周縁から、その全周に亙って外方へ延在し、電解質膜の両側の間のガスの流通を阻止するように枠部材に連結し、枠部材の熱膨張による面方向の拡張時に、膜電極接合体の周縁から外方へ拡張可能な膜状部材17を設ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜の両側に触媒電極層が積層された膜電極接合体と、前記膜電極接合体を挟持し接合された一対のガス拡散層と、前記膜電極接合体と前記ガス拡散層の周囲を囲繞するよう配置された枠部材と、前記枠部材と前記一対のガス拡散層とを両外側から挟持し、前記ガス拡散層の各々との間に反応ガスの供給と生成された水の排出のための流路を画定する一対のセパレータとを有し、前記枠部材と前記一対のセパレータとが加熱圧着された燃料電池セルであって、
前記膜電極接合体の周縁から、その全周に亙って外方へ延在し、前記電解質膜の両側の間のガスの流通を阻止するように前記枠部材に連結した膜状部材にして、前記枠部材の熱膨張による面方向の拡張時に、前記膜電極接合体の周縁から外方へ拡張可能な膜状部材を有する燃料電池セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池セルの構造に係り、より詳細には、燃料電池セルの製造時に於ける膜電極接合体の破損を防止するための構造に係る。
【背景技術】
【0002】
燃料電池セルは、基本的には、電解質膜をその両側から一対の触媒電極層にて挟持してなる膜電極接合体を、一対のガス拡散層が挟持し、更に、その両側にて酸素ガス(空気)、水素ガス或いは水のための流路を形成する一対のセパレータが挟持して成る構造を有する。かかる燃料電池セルに於ける膜電極接合体の破損を防止するために、種々の構成が提案されている。例えば、特許文献1に於いては、膜電極接合体を支持フレームで囲繞し、それらの両側から一対のセパレータで挟持した状態で、支持フレームと一対のセパレータとを加熱圧着して燃料電池セルを製造する方法に於いて、支持フレームと膜電極接合体との間及び膜電極接合体とガス拡散層との間を接着する接着剤層が上記の加熱圧着の工程にて熱膨張する際に、膜電極接合体が接着剤層に追従して変形して破損してしまうことを防止するために、上記の加熱圧着の工程の前に於ける接着剤層の硬化の程度が、支持フレームと膜電極接合体との間の領域以外の領域に於いて、支持フレームと膜電極接合体との間の領域よりも低下させておくことが提案されている。また、特許文献2に於いては、燃料電池の使用中に、膜電極接合体の電解質膜が乾燥状態となると、湿潤時よりも収縮し、これにより、電解質膜に張力がかかって破損してしまうことを防止するために、電解質膜が、湿潤状態にあるときに、セル内で弛みができるような寸法にて、膜電極接合体を形成することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-109964
【特許文献2】特開2014-072165
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の如き膜電極接合体を一対のガス拡散層と一対のセパレータとで挟持して封止する構造の燃料電池セルの製造に於いて、一つの態様として、膜電極接合体の周囲を枠部材により囲繞し、その枠部材を一対のセパレータで挟み、セパレータと枠部材とを加熱圧着する工程が実行される。その際、膜電極接合体のアノード側とカソード側とのガスが混合しないようにする必要があるので、膜電極接合体の周縁部は、電解質膜の両側が互いに隔離されるように枠部材に対して封止される。そのような膜電極接合体の周縁部の封止構造に於いて、膜電極接合体が直接に枠部材に接着又は接合されていると、一対のセパレータと枠部材とを加熱圧着する工程で、枠部材が熱膨張によって面方向に拡張し、これにより、膜電極接合体に面方向に引張る応力がかかり、膜電極接合体が破損してしまう場合がある。そこで、膜電極接合体の周縁部の構成に於いて、そのような枠部材の熱膨張が生じても、膜電極接合体の破損を回避できるようになっていると有利である。
【0005】
かくして、本発明の一つの課題は、燃料電池セルに於いて、膜電極接合体の周囲を囲繞する枠部材を一対のセパレータで挟み、セパレータと枠部材とを加熱圧着する工程に於いて、枠部材の熱膨張が生じても膜電極接合体の破損が回避できる構成を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、上記の課題は、電解質膜の両側に触媒電極層が積層された膜電極接合体と、前記膜電極接合体を挟持し接合された一対のガス拡散層と、前記膜電極接合体と前記ガス拡散層の周囲を囲繞するよう配置された枠部材と、前記枠部材と前記一対のガス拡散層とを両外側から挟持し、前記ガス拡散層の各々との間に反応ガスの供給と生成された水の排出のための流路を画定する一対のセパレータとを有し、前記枠部材と前記一対のセパレータとが加熱圧着された燃料電池セルであって、前記膜電極接合体の周縁から、その全周に亙って外方へ延在し、前記電解質膜の両側の間のガスの流通を阻止するように前記枠部材に連結した膜状部材にして、前記枠部材の熱膨張による面方向の拡張時に、前記膜電極接合体の周縁から外方へ拡張可能な膜状部材を有する燃料電池セルによって達成される。
【0007】
上記の構成に於いて、「燃料電池セル」は、所謂「固体高分子形燃料電池」の単セルであってよく、電解質膜、触媒電極層、ガス拡散層、セパレータ及び枠部材は、燃料電池セルに通常用いられる形態のものであってよい。また、特に、本発明の燃料電池セルは、一対のセパレータが、電解質膜、触媒電極層、ガス拡散層及び枠部材を、間に挟持した状態で、通常の態様にて、一対のセパレータが枠部材の両側に対して加熱圧着にて接合された状態となっている。そして、かかる燃料電池セルの構成に於いて、本発明に於いては、特に、上記の如く、膜電極接合体の周縁から、その全周に亙って外方へ延在して枠部材に連結し、電解質膜の両側の間のガスの流通を阻止する膜状部材であって、枠部材の熱膨張による面方向の拡張時には、膜電極接合体の周縁から外方へ拡張可能な膜状部材が設けられる。
【0008】
上記の本発明の構成によれば、電解質膜の両側の間のガスの流通を阻止する膜状部材であって、膜電極接合体の周縁から外方へ拡張可能な膜状部材が、枠部材と膜電極接合体の周縁との間に架渡された状態となっているので、電解質膜、触媒電極層及びガス拡散層の周囲を囲繞する枠部材を一対のセパレータにより挟持して加熱圧着にて接合する際に、枠部材が熱膨張により面方向の拡張した場合には、膜状部材が枠部材に伴って拡張することとなり、膜電極接合体に面方向の力が殆ど作用せず、膜電極接合体の破損が回避できることとなる。また、かかる構成に於いては、膜状部材が、電解質膜の両側の間のガスの流通が阻止されるように電解質膜の両側の空間を分離しつつ、膜電極接合体の周縁から枠部材まで延在させるだけでよいので、構造は極めて簡単であり、燃料電池セルの製造工程をさほどに複雑にすることがない点でも有利である。
【0009】
上記の本発明の構成の一つの態様に於いて、膜状部材は、任意の樹脂などから形成される可撓性のフィルムであってよい。この場合、フィルムは、末広がりの筒状の形状、中空の角錐台の形状或いは中央領域が除去されたシート形状を有し、膜電極接合体を囲繞し、内側の周縁が膜電極接合体に接合され、外側の周縁が枠部材に接合される。より具体的には、フィルムの内側の周縁が、膜電極接合体とガス拡散層との間に挟持されて接合され、フィルムの外側の周縁が枠部材とセパレータとの間に接合されてよい。また、フィルムの接合は、接着剤などを用いて、或いは、熱圧着により、達成されてよい。
【0010】
実施の形態の一つに於いて、フィルムは、内側の周縁と外側の周縁との距離が、膜電極接合体と(熱膨張していない状態の)枠部材との間より長く、従って、内側の周縁と外側の周縁との間が撓んだ状態又は屈曲した状態で、膜電極接合体と(熱膨張していない状態の)枠部材との間に架け渡されていてよい。その場合、枠部材が熱膨張して面方向外方に拡張すると、フィルムの撓みが伸ばされ、これにより、枠部材の内縁と膜電極接合体の外縁との間の距離の増大がフィルムの伸びにより吸収されて、膜電極接合体の拡張を抑制できることとなる。
【0011】
また、別の実施の形態として、フィルムは、枠部材の熱膨張率よりも大きな熱膨張率を有する材料にて形成されていてもよい。その場合、枠部材が熱膨張して面方向外方に拡張したとき、フィルムは、枠部材よりも大きく拡張することとなり、これにより、枠部材の内縁と膜電極接合体の外縁との間の距離の増大がフィルムの伸びにより吸収されて、膜電極接合体の拡張を抑制できることとなる。
【0012】
更に、上記の本発明の構成の別の態様としては、膜状部材は、膜電極接合体に於ける電解質膜を拡張して枠部材の内縁に接合することにより形成されてもよい。この場合、膜電極接合体の外周縁と枠部材の内縁までに於いて電解質膜が撓むように、電解質膜が形成されてよい。かかる構成に於いても、枠部材が熱膨張して面方向外方に拡張したとき、電解質膜の撓みが伸ばされ、これにより、枠部材の内縁と膜電極接合体の外縁との間の距離の増大が吸収されて、膜電極接合体の拡張を抑制できることとなる。
【発明の効果】
【0013】
かくして、上記の本発明の構成によれば、膜電極接合体の周囲を囲繞する枠部材を一対のセパレータで挟んだ構成の燃料電池セルに於いて、枠部材と膜電極接合体とを直接に接合するのではなく、枠部材から膜電極接合体への応力の伝達を緩和する作用のある膜状部材を介して接合することにより、枠部材とセパレータとを加熱圧着により接合する工程に於いて、枠部材の熱膨張が生じても膜電極接合体に引張り応力が殆どかからず、これにより、膜電極接合体が殆ど拡張せず、膜電極接合体の破損が回避できることとなる。かかる構成は、枠部材と膜電極接合体との間に膜状部材を配置するだけで簡便に達成可能である点でも有利である。
【0014】
本発明のその他の目的及び利点は、以下の本発明の好ましい実施形態の説明により明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本実施形態による燃料電池セルの一つの態様に於ける膜電極接合体とガス拡散層との縁部付近の模式的な断面図である。
【
図2】
図2(A)は、本実施形態による燃料電池セルに於ける膜電極接合体、枠部材及び接合フィルムの模式的な平面図である。
図2(B)は、本実施形態による燃料電池セルに於ける接合フィルムの模式的な斜視図である。
【
図3】
図3(A)、(B)及び(C)は、本実施形態による燃料電池セルの別の態様に於ける膜電極接合体とガス拡散層との縁部付近の模式的な断面図である。
【
図4】
図4は、
図1の本実施形態による燃料電池セルに於いて、枠部材が熱膨張したときの膜電極接合体とガス拡散層との縁部付近の模式的な断面図である。
【
図5】
図5は、本実施形態による燃料電池セルに於いて、電解質膜が膜状部材として形成されている態様の膜電極接合体とガス拡散層との縁部付近の模式的な断面図である。
【符号の説明】
【0016】
1…燃料電池セル
10…膜電極接合体
11…電解質膜
111、112…触媒電極層
151、152…ガス拡散層
121、122…セパレータ
131、132…流路
16…枠部材
17…接合フィルム
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を好ましい実施形態について詳細に説明する。図中、同一の符号は、同一の部位を示す。
【0018】
燃料電池セルの基本構造
図1を参照して、燃料電池セル1の基本構造に於いては、電解質膜11が一対の触媒電極層111、112に挟持され(膜電極接合体10)、更に、一対のガス拡散層151、152に挟持された積層体が形成され、この積層体と、その周囲を囲繞するように配置された枠部材16とが一対のセパレータ121、122に挟持される。電解質膜11は、典型的には、高分子電解質材料により形成されたプロトン伝導性のある厚み数μm程度のイオン交換膜であり、例えば、側鎖末端にスルホ基を有するパーフルオロスルホン酸ポリマーなどから形成されてよい。触媒電極層111、112は、水の生成反応を進行する触媒金属(例えば、白金若しくは白金とルテニウムなどの他の金属とから成る白金合金など)を担持するカーボン粒子とプロトン伝導性を有する高分子電解質とを含む材料が、厚み数μm程度の層状に適用されて形成される。ガス拡散層151、152は、カーボンクロスやカーボンペーパなどのカーボン製材料にて多孔質性材料から成る層である。そして、セパレータ121、122のガス拡散層151、152に面する側には、それぞれ、流体が流通する通路(流路)131、132が設けられ、枠部材16は、電解質膜11の両側を互いに絶縁し且つガスの流通を阻止するように膜電極接合体に対して封止され、セパレータ151、152の間に介装される。枠部材16は、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂などで形成されてよく、図示していないが、両面が熱融着する任意の材料で被覆されていてよい。セパレータ151、152は、カーボンペーパや金属板にて形成されていてよい。
【0019】
上記の燃料電池セルの発電作動に於いては、空気と水素ガスとが、それぞれ、酸素極側流路131、水素極側流路132を通して供給され、ガス拡散層151、152を経て、触媒電極層111、触媒電極層112に到達し、触媒電極層112にて、水素ガスが電子を放出して、プロトンとなって、電解質膜11を通って触媒電極層111に到達し、そこに於いて、空気中の酸素と反応して、水を生成し、生成された水は、酸素極側流路131へ回収されて排出されることとなる。
【0020】
枠部材と膜電極接合体との間の封止構造
上記の燃料電池セルの製造工程に於いては、端的に述べれば、膜電極接合体10の両側にガス拡散層151、152が積層された状態の積層体が、枠部材16にて囲繞された状態で、セパレータの一方152上に載置され、それらの上にセパレータのもう一方151を重ね、枠部材16の部分に於いて、セパレータ151、152が両側から加熱圧着される。ところで、膜電極接合体の電解質膜11のそれぞれの側には、水素ガスと空気とがそれぞれ供給されるところ、これらのガスが混ざらないように、電解質膜11と枠部材16との間は、ガスが透過しないように封止される。この点に関し、上記の如く燃料電池セルの製造工程に於いてセパレータ151、152を枠部材16に対して加熱圧着したとき、温度が180~200℃近くまでに達するので、枠部材16が熱膨張により、その面方向に拡張されるところ、電解質膜11と枠部材16との間を封止するべく、膜電極接合体10が枠部材16に対して直接に接合されている構造の場合、膜電極接合体10に対して枠部材16から引張り力がその面方向にかかって膜電極接合体10が破断又は破損してしまう場合がある。
【0021】
そこで、本実施形態に於いては、例えば、
図1に模式的に描かれている如く、膜電極接合体10と枠部材16との間が、枠部材16の熱膨張による面方向の拡張時に、膜電極接合体の周縁から外方へ拡張可能な膜状部材である接合フィルム17により接続されて、膜電極接合体10と枠部材16との間が封止される。
【0022】
上記の接合フィルム17の一つの態様としては、
図1に描かれている如く、接合フィルム17は、膜電極接合体10と枠部材16との間にて、セパレータ151、152の加熱圧着前に、適当な撓みを有するように屈曲されて形成されてよい。より具体的には、
図2(A)、(B)に模式的に描かれている如く、接合フィルム17は、末広がりの筒状又は中空の錐台状であって、内縁17iと、それよりも周長の長い外縁17oとの間に撓み或いは屈曲構造を有するよう形成され、内縁17iが電解質膜11の外周縁11iに接合され、外縁17oが枠部材16の内周縁16oに接合される。なお、かかる接合について、
図1に描かれている如く、内縁17iは、ガス拡散層151と電解質膜11との間に挟持されるよう接合され(触媒電極層111を封止した状態とされる。)、外縁17oは、枠部材16とセパレータ122との間に挟持されるよう接合されてよい。実施の態様に於いて、接合フィルム17は、具体的には、任意のガスを透過しない樹脂、例えば、ポリケトン、高密度ポリエチレン、ポリアミド系合成樹脂、PPSU、PP/PE共重合体などの樹脂から成る、厚みが60~80μm程度の膜状部材であってよい。接合フィルムの枠部材16又は膜電極接合体への接合は、接着剤を用いて或いは熱融着により達成されてよい。
【0023】
なお、接合フィルム17は、
図1のように設けられるほか、
図3(A)の如く、電解質膜11とガス拡散層152との間と、枠部材16とセパレータ122との間とにそれぞれ接合されてもよく、
図3(B)の如く、電解質膜11とガス拡散層151との間と、枠部材16とにそれぞれ接合されてもよく、
図3(C)の如く、電解質膜11とガス拡散層152との間と、枠部材16とにそれぞれ接合されてもよい。
【0024】
作動に於いては、
図4に模式的に描かれている如く、セパレータ151、152の加熱圧着前の枠部材16(点線にて表示)が、セパレータ151、152の加熱圧着中に図示の如く熱膨張により拡張し、図中、矢印mにて示されている如く、面方向外方へ変位し、その際、接合フィルム17の撓みが伸長し、これにより、枠部材16の変位が電解質膜11に殆ど伝達されず、引張り力が作用しないので、電解質膜11又は膜電極接合体10の破断が回避されることとなる。従って、接合フィルム17の内縁17iと外縁17oとの間の撓みは、枠部材16の内周縁の加熱圧着前からの加熱圧着後の変化幅よりも長く拡張できるように、即ち、枠部材16の内周縁の拡張分を吸収できるように設けられる。具体的には、例えば、室温で電解質膜11の外周縁と枠部材16の内周縁と間の幅が1mmのとき、枠部材16の加熱圧着時には、0.1m程度拡張するので、内縁17iと外縁17oとの間の撓みは、10%以上拡張できるように形成されてよい。
【0025】
上記の接合フィルム17の別の態様としては、接合フィルム17に撓みを設けるのではなく、接合フィルム17を、枠部材16の熱膨張率よりも熱膨張率が大きい材料にて形成されてもよい。その場合、セパレータ151、152の加熱圧着中に枠部材16が熱膨張により拡張したとき、接合フィルム17は更に拡張することができるので、枠部材16の変位が電解質膜11に殆ど伝達されず、これにより、電解質膜11に引張り力が作用せず、電解質膜11又は膜電極接合体10の破断が回避されることとなる。
【0026】
ところで、枠部材16と膜電極接合体10との間を封止しつつ、枠部材16の熱膨張による面方向の拡張時に膜電極接合体10の周縁から外方へ拡張可能な膜状部材は、
図5に模式的に描かれている如く、電解質膜11の外縁を外方に更に延在させることにより形成されてもよい。この点に関し、セパレータの加熱圧着時には、電解質膜11は、殆ど湿潤しておらず、ほぼ乾燥状態であるので、電解質膜11を外方に更に延在させて膜状部材を形成する場合には、電解質膜11は、その外周縁11exに於いて、湿潤していない状態で、図示の如く撓みを有するように形成され、枠部材16に接合されてよい。かかる接合は、接着剤を用いて達成されてよい。
【0027】
以上の説明は、本発明の実施の形態に関連してなされているが、当業者にとつて多くの修正及び変更が容易に可能であり、本発明は、上記に例示された実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の概念から逸脱することなく種々の装置に適用されることは明らかであろう。