(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139607
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】持ち運びできる沈砂槽
(51)【国際特許分類】
B01D 21/02 20060101AFI20230927BHJP
【FI】
B01D21/02 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045214
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】516312981
【氏名又は名称】株式会社K.tool
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小峯 隆二
(57)【要約】
【課題】
公知の沈砂槽は
図9のように泥水を沈砂槽の本体1nの第1室に通すことにより、泥水に含まれる砂は仕切板2nを使い、泥水を溜めて砂を沈下させて満水になった水を仕切体頂部のVノッチ3nにより表面の水を流していく構造である。水量が多ければ多い程、また水の勢いが強い程大掛かりな設備を必要とする。
【解決手段】
沈砂槽本体(1)の上流側平面に被せた覆板(2)に流入口(3)を設け、槽本体(1)の内部に仕切体(4)を取り外しできるように設けると共に当該仕切体(4)の下部に泥水の有孔板付き連通口(5)を設け、且つ仕切体と覆板(2)とを一体化し、槽本体(1)の下流側の前面にフランジソケット(6a)付き流出口(6)を設け、又はその第1の槽本体(1)の下流側前面に配置し、当該下流側前面上部の流出口から第2の槽本体(1′)の平面から内部に流入し、下流側前面上部の流出口(6′)から上澄み水を流出するようにした構成。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱型の沈砂槽本体(1)の上流側平面に被せた覆板(2)に流入口(3)を設け、沈砂槽本体(1)の内部に仕切体(4)を取り外しできるように設けると共に当該仕切体(4)の下部に泥水の有孔板付き連通口(5)を設け、且つ仕切板と覆板(2)とを一体化し、沈砂槽本体(1)の下流側の前面にフランジソケット(6a)付き流出口(6)を設けたことを特徴とする持ち運びできる沈砂槽。
【請求項2】
第1の沈砂槽本体(1)の下流側の前面に第1の沈砂槽本体(1)と同型の第2の沈砂槽本体(1′)を、高低差をつけて配置すると共に、上流側の後面を第1の沈砂槽本体(1)の下流側前面に配置し、当該下流側前面上部の流出口(6)から第2の沈砂槽本体(1′)の平面から内部に流入し、下流側前面上部の流出口(6′)から上澄み水を流出するようにした請求項1記載の持ち運びできる沈砂槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、持ち運びできる沈砂槽に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、泥水には、砂などの重い粒子が含まれていることが多い。これが曝気槽などの深い槽に入ると、槽本体の底部に沈殿して機能に支障をきたす。そして、このような沈殿物は重たいためにこれを除去する作業に困難を生じる。このような困難を防ぐために泥水処理施設の最初に設けるのが沈砂槽である。
【0003】
在来公知の沈砂槽は、泥水Wを槽本体1nのような構造物を通すことにより、水に含まれる砂等を
図9及び
図10のような仕切板2nを使い、泥水を溜めて砂等を沈下させて満水になった水は仕切板頂部のVノッチ(切欠き、くぼみ)3nにより水面W′の泥水を槽外部に排水W″をしていくという構造である。泥水量が多ければ多い程、また泥水の勢いが強い程大掛かりな設備を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-041366号公報
【特許文献2】特開2012- 45455号公報
【特許文献3】実公昭58-58807号公報
【0005】
特許文献1は、水処理において水中の土砂等を除去する沈砂槽及びこれを備えた洗車機用排水設備に関し、沈砂槽において、槽本体の上面を塞ぐ蓋体の下面に仕切体を保持する仕切ガイドを備えるとともに、前記仕切体の上部には人が前記仕切板を持つための手掛孔を有し、前記仕切ガイドの下端は前記手掛孔の下端よりも下に位置し、前記蓋体が前記槽本体部の上面を塞いだ際には前記仕切ガイドが前記手掛孔を覆う構成である。
【0006】
特許文献1の沈砂槽はその上流側後面板の上部に水の流入口と下流側前面板の上部に流出口が設けられ、且つ沈砂槽内部を仕切る複数枚の仕切板の上部に上流から下流に流れる水の流通路を設けてある。
【0007】
特許文献2は、沈砂槽における原水貯留部と上澄み貯留部との水位差による仕切板への負荷を軽減することの可能な沈砂槽であり、仕切板の下部には、原水貯留部と上澄み貯留部とを連通させる下連通部が構成されている。原水貯留部と上澄み貯留部の水位さが大きくなり、下連通部における原水貯留部と上澄み貯留部の水圧差が作動値を超えると、下連通部を通って原水貯留部から上澄み貯留部へ水が流出する。
【0008】
特許文献3は、沈砂等の除去作業の簡便化、沈砂等として除去する量の減少化、スライドゲート等の使用によるトラブル発生の未然防止及び沈砂槽内部に残留する泥水・汚物を任意に取り出すこと等を目的として考案されたものである。
【0009】
そして、上記特許文献3は、仕切板に相当する壁板の上部に泥水・汚物の流出口を設けると共に、壁板下部に倒置できるフレシキブルホースを設置して上澄み水を流出させるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
緊急漏水工事現場及び新設布設工事現場等において掘削時において、掘削時に出た水をポンプで揚水した後にそのまま排水に流してしまうと泥水ごと流すことになる。そこで、自治体によってポンプ使用時に沈砂槽使用という指示がある場合もあるが、必ずしも大掛かりな設備(1t/2t槽)を設置できるスペースがなかったりもする。そして、
図9及び
図10のように仕切板2nの頂部にVノッチ3nをつけても槽本体1nのスペースが狭いため、当該槽本体の上部から入った泥水は、一旦満水になると砂等を下に落とすことなく上水だけ排水口へ引っ張られて行ってしまう。
【0011】
一方、上記の特許文献1に対して本発明は、上流側の後部平面部流入口を設け、下流側前部の上部に流出口を設け、且つ沈砂槽内部を仕切る仕切体の下部に上流から下流に流れる水の流通路を設けてある。従って、沈砂槽内部を仕切る仕切板流通路の構造が異なる。
【0012】
特許文献2に対して、仕切体の上部と下部に水の連通部を設けてある点が本発明の下部に連通口を設けた仕切体の構造とは異なる。
【0013】
特許文献3は、壁板の上部に泥水・汚物の流出口を設けると共に、壁板下部に倒置できるフレシキブルホースを設置して上澄み泥水を流出させるようになっている構造が仕切体の下面に連通口を設けてある本発明の構造と異なる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1は、持ち運びできる沈砂槽において、箱型の沈砂槽本体の上流側平面に被せた覆板に流入口を設け、沈砂槽本体の内部に仕切体を取り外しできるように設けると共に当該仕切体の下部に泥水の連通口を設け、且つ仕切板と覆板とを一体化したものである。
【0015】
本発明の第2は、第1の発明に係る持ち運びできる沈砂槽において、第1の沈砂槽本体の下流側の前面に第1の沈砂槽本体と同型の第2の沈砂槽本体を、高低差をつけて配置すると共に、上流側の後面を第1の沈砂槽本体の下流側前面に配置し、当該下流側前面上部の流出口から第2の沈砂槽本体の平面から内部に流入し、下流側前面上部の流出口から上澄み泥水を流出するようにしたものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上記の構成であるから、次のような効果がある。第1に、仕切体の下部に
揚水された泥水の勢いを和らげるための直径8mm程度の孔を設けた有孔板を連通口に設けると共に、当該仕切体の上部を泥水流入口に設けた覆板と一体にしたことにより、部品点数の少数化に適し、且つ作業終了後に沈砂槽内に収納できるから片付けが便利である。
【0017】
第2に、仕切体の下部に流入側の室と流出側の室に直径8mm程度の孔を設けた有孔板付連通口を設けたことにより、槽に流入する泥水に含まれる砂等異物が流入側の室に滞留し、砂等の細かい異物は有孔板付き連通口を通って流出側の室に入るが大きな異物は有孔板で阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る持ち運びできる沈砂槽の斜視図である。
【
図3】
図1の仕切板付きの流通口アダプター体を沈砂槽本体内に収納した状態に斜視図である。
【
図4】
図3の沈砂槽本体平面に収納蓋を被せた状態の斜視図である。
【
図6】
図5の沈砂槽を分解した状態を示す模式斜視図である。
【
図7】本発明に係る沈砂槽の使用状態を示す模式図である。
【
図8】
図7の沈砂槽の他の使用状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、持ち運びできる沈砂槽において、第1の形態は箱型の沈砂槽本体の上流側開口部の略2分の1の平面に被せた覆板に排水の流入口を設け、沈砂槽本体の内部に開口面迄届く高さの仕切体を取り外しできるように設けると共に、当該仕切体の下部に小径の有孔板付きの連通口を設け、且つ仕切板と覆板とを一体化し、槽本体の下流側の前面にフランジソケット付き流出口を設けたものである。
【0020】
また、本発明は、持ち運びできる沈砂槽において、第2の形態は第1の沈砂槽本体の下流側の前面に第1の沈砂槽本体と同型の第2の沈砂槽本体を、流出口に高低差をつけて配置すると共に、上流側の背面を第1の槽本体の下流側正面に配置し、当該下流側正面上部の流出口から第2の沈砂槽本体の平面から内部に流入し、下流側正面上部の流出口から上澄み水を流出するようにしたものである。
【実施例0021】
図において、1は長方形の箱型を成す沈砂槽本体であり、持ち運びが簡便にできるように材質は硬質プラスチックを可とし、
図1~
図4の沈砂槽本体1の大きさは外寸656mm×456mm×470mmで、内容量は112リットル程度に設定してある。2は沈砂槽本体1の長方形平面の略半分を塞ぐ覆体、3は覆板2に設けた泥水の流入口であり、これに後述の流通口アダプターを装着してある。当該流通口アダプターには、一端に流入口に装着する取付具と、先端に送水ホースと結合するカムロックソケットが設けられている。
【0022】
4は仕切体であり、図示例は覆板2と一体に成形してある。また、覆板2の仕切り体4と反対側の縁辺を下向きに折り曲げた位置決め部2′を成形してある。5は仕切体4の下部に比較的小径の孔を設けた泥水連通口であり、その連通口5には複数のパンチング孔等の直径8mm程度の小孔を設けた有孔板を設けてある。6は沈砂槽本体1の下流側の前面に設けた流出口であり、内径65mmのフランジソケット6aを設けてある。
【0023】
7は流通口アダプターであり、その一端の取付け具7bを覆板2の流通口3に装着し、他端を送水ホースの先端を結合するようになっている。
図1において、流通口アダプター7側の他端にカムロックソケット7aを設け、これを送水ホース先端のアダプターに結合するものとする。
図4において、8は沈砂槽本体1の開口面を塞ぐ蓋体である。
【0024】
9は小型携帯可能な排水ポンプであり、下部の一方に上向きの吐出口9aを設け、他方に吸水口9bを設けてある(
図7)。10は泥水を排水するために沈砂槽本体1に泥水を送るための送水ホースであり、その先端を流通口アダプター7のカムロックソケット7aに接続して流通口3に通じさせてある。また、送水ホース10の基端は排水ポンプ9の上向き吐出口9aに接続してある。
図8において、11は第1の沈砂槽本体1を第2の沈砂槽本体1′と高低差を付けるための台座を示す。
【0025】
[具体的な組立例]
本発明に係る第1の沈砂槽にあっては、
図2及び
図5に示すように沈砂槽本体1と、流通口アダプター7付きの覆板2と、直径8mm程度の孔を設けた有孔板付きの連通口5を有する仕切体4からなり、覆板2と仕切板4は直角に結合して一体化してある。その仕切板4付き覆板2を沈砂槽本体1の開口平面の後半部の半分程被せると、仕切板4が沈砂槽本体1の長さ方向の中程で垂直に仕切られる。このとき、有孔板付きの連通口5は沈砂槽本体1の内底近くに位置するようになっている。
【0026】
上記覆板2の一端に取付け具7bを用いて取り付けてある流通口アダプター7の先端カムロックソケット7aに排水のための送水ホース10の先端部を接続すると共に、ホース基端部を排水用水中ポンプ9の上向き吐出口9aに接続してある。
【0027】
本発明に係る第2の沈砂槽にあっては、
図8の沈砂槽本体1の前面に第2の沈砂槽本体1′を配置し、第1の沈砂槽本体1の底面を所定厚さtの台座11上に設置して第2の沈砂槽本体1′と高低差をつけてある。
【0028】
[具体的な使用例]
本発明に係る沈砂槽を使用例は次のとおりである。
図7に示すように、目的の現場において、排水用水中ポンプ9を泥水や泥土などを除去するための水源地に没入し、水中ポンプ9の駆動により泥水を吸い込み口9bから吸引してホース10を通じて沈砂槽本体1の仕切体4で仕切られた第1室αに送水する。そして、第1室α内の泥水は直径8mm程度の孔を設けた有孔板付連通口5から第2室βに移流する。ここで泥水に含まれる砂は沈砂槽本体1の内底部に滞留する。
【0029】
第2室βの泥水は、小径の有孔板付きの連通口5を通過した砂を内底部に滞留して沈砂槽本体1の上部流出口6から外部にきれいな状態で排水する。
【0030】
図8のように、第1の沈砂槽の前面に第2の沈砂槽を配置したものにあっては、沈砂槽本体1の上部流出口6から流出する排水は第2の沈砂槽本体1′に送水した後は、第1の沈砂槽本体1と同じ順路で泥水を送り、第2の沈砂槽本体の流出口6′からは第1の沈砂槽本体1の排水よりさらにきれいになった排水が行われる。
本発明は、緊急漏水工事現場及び新設布設工事等において掘削時に出た泥水を配水ポンプを用いて揚水した泥水をそのまま排水管に流さずに一旦沈砂させて砂等を排水管へ極力流さないための環境に配慮した持ち運びできる沈砂槽であるので、短期契約現場等においては大掛かりな装置の設置に比べて設置場所が小スペースであり、設置時間においても短時間で可能であり、安価で対応できるので経費の節減が図れる。