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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139609
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】吐出容器
(51)【国際特許分類】
   B41K 1/50 20060101AFI20230927BHJP
   B41K 1/02 20060101ALI20230927BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
B41K1/50 B
B41K1/02 M
B65D83/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045221
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】390017891
【氏名又は名称】シヤチハタ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小出 託也
【テーマコード(参考)】
3E014
【Fターム(参考)】
3E014PA01
3E014PC04
3E014PD23
3E014PE25
(57)【要約】
【課題】
本発明は、手のひらへのマーキングと、洗浄剤の供給を同時に行う事で通常の手洗いと同じ作業性を維持することができるとともに、洗浄剤の供給時にマーク形成部へ洗浄剤が侵入し、マーク形成部が汚損されることを確実に防ぐことができる吐出容器を提供する。
【解決するための手段】
洗浄剤を収容する収容部と、前記洗浄剤を吐出する吐出部と、を備える前記洗浄剤を被付着面に向けて吐出するための吐出容器であって、前記吐出部はインキを含侵したマーク形成部と、前記マーク形成部の周囲に、被付着面と全周に亘って当接するシール部と、前記シール部の外側に設け、前記洗浄剤を吐出する吐出孔と、前記吐出孔と前記被付着面との距離を一定に保つスペーサと、を備えていることを特徴とする吐出容器である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄剤を収容する収容部と、
前記洗浄剤を吐出する吐出部と、
を備える前記洗浄剤を被付着面に向けて吐出するための吐出容器であって、
前記吐出部はインキを含侵したマーク形成部と、
前記マーク形成部の周囲に、被付着面と全周に亘って当接するシール部と、
前記シール部の外側に設け、前記洗浄剤を吐出する吐出孔と、
前記吐出孔と前記被付着面との距離を一定に保つスペーサと、
を備えていることを特徴とする吐出容器。
【請求項2】
前記シール部の側面に、前記吐出孔と連通し洗浄剤吐出方向に延伸したガイド溝を更に有することを特徴とする請求項1に記載の吐出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄剤を被付着面に付着させるための吐出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ノロウイルスやインフルエンザなどの感染症や食中毒を予防するために、石けんを使った丁寧な手洗いが厚生労働省から推奨されている。また、正しい手洗い試験結果(感染症予防対策情報研究サイト)によれば、手洗い前に付着していた723個の菌は、30秒間手洗いした後には98個にまで減少し、また、大手石鹸メーカーによれば、子どもの手洗いを促進させるため、オリジナルの「手洗いのうた」を用意するなど、30 秒程度石鹸で手洗いすることを推奨している。
そこで本件特許出願人は、スタンプ等により手のひらに捺印した印影を市販の石鹸を用いて30秒程度洗うと消失する皮膚用水性インキについて先に特許出願している(例えば、特許文献1)。当該インキは、手洗いの指標・基準として使用することができるものの、実際の使用場面においては、手のひらにマーキングを行った後、従来の洗浄剤吐出容器(例えば、特許文献2)により手のひらに洗浄剤を供給してから手洗いを開始する必要がある為、通常の手洗いと比較して工程数が多く、煩わしさがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許6763329号公報
【特許文献2】特許6975753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記問題点を解決すべくなされたものであって、手のひらへのマーキングと、洗浄剤の供給を同時に行う事で通常の手洗いと同じ作業性を維持することができるとともに、洗浄剤の供給時にマーク形成部へ洗浄剤が侵入し、マーク形成部が汚損されることを確実に防ぐことができる吐出容器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために完成された本発明は、洗浄剤を収容する収容部と、前記洗浄剤を吐出する吐出部と、を備える前記洗浄剤を被付着面に向けて吐出するための吐出容器であって、前記吐出部はインキを含侵したマーク形成部と、前記マーク形成部の周囲に、被付着面と全周に亘って当接するシール部と、前記シール部の外側に設け、前記洗浄剤を吐出する吐出孔と、前記吐出孔と前記被付着面との距離を一定に保つスペーサと、を備えていることを特徴とする吐出容器である。
【0006】
上記構成において、前記シール部の側面に、前記吐出孔と連通し洗浄剤吐出方向に延伸したガイド溝を更に有することが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、洗浄剤を収容する収容部と、前記洗浄剤を吐出する吐出部と、を備える前記洗浄剤を被付着面に向けて吐出するための吐出容器であって、前記吐出部はインキを含侵したマーク形成部と、前記マーク形成部の周囲に、被付着面と全周に亘って当接するシール部と、前記シール部の外側に設け、前記洗浄剤を吐出する吐出孔と、前記吐出孔と前記被付着面との距離を一定に保つスペーサと、を備えている為、手のひらへのマーキングと、洗浄剤の供給を同時に行う事で通常の手洗いと同じ作業性を維持することができるとともに、マーク形成部への洗浄剤の侵入を確実に防ぐことができる。
【0008】
前記シール部の側面に、前記吐出孔と連通し洗浄剤吐出方向に延伸したガイド溝を更に有する為、吐出孔から吐出された洗浄剤がガイド溝を伝って被付着面に吐き出される為、吐出された洗浄剤は、手のひらに接触した後、ガイド溝から放射状に外側に向かって流動し、スペーサの側面に付着する洗浄剤の量を最小限に抑えることができ、吐出部を清潔に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施形態による吐出容器の斜視図である。
図2】本発明の第1の実施形態による吐出容器の断面図である。
図3】本発明の第1の実施形態による吐出容器の動作を説明する為の図である。
図4】本発明の第2の実施形態による吐出部の斜視図である。
図5】本発明の第2の実施形態による吐出部の断面図である。
図6】被付着面に対して洗浄剤吐出及びマーキングがなされた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔第1の実施形態〕
まず、図1図3を用いて第1の実施形態に係る吐出容器について説明する。
尚、本発明において「下方」「下端」とは、洗浄剤を吐出する側を指し、「上方」「上端」とは、その反対側を指す。
【0011】
第1の実施形態に係る吐出容器1は、洗浄剤Cを収容する収容部2と、被付着面H(手のひら)に、手洗いの指標・基準となるマーキングを施す為のマーク形成部3e及び、洗浄剤Cの吐出を行う為の吐出孔3cからなる吐出部3で構成されており、収容部2を押圧することで洗浄剤Cの吐出と、マーキングを同時に行うための吐出容器である。
【0012】
収容部2は、図1図2に示すように、洗浄剤Cを収容可能な有底円筒状であり、洗浄剤Cを収容可能な収容空間2aと、該収容空間2aの下端に開口部2bを有する、弾性変形可能な熱可塑性樹脂製の透明部材である。また、収容部2は、被付着面Hへの洗浄剤吐出とマーキングする際の持ち手部分として機能する部材である。開口部2b周縁の外周には雄ネジ部2cが形成されており、該雄ネジ部2cには後述する吐出部3が螺合により装着されている。また、収容部2には吐出部3を覆うようにキャップ(図示なし)が装着される。
【0013】
洗浄剤Cとしては、流動性を有するものであれば、従来から公知のものを適宜使用できる。特に、吐出した洗浄剤Cを被付着面Hに付着させる場合は、例えば、高い粘着性を有する硬めのゲル状の洗浄剤Cを用いることが好ましい。またゲル状とすることで、吐出孔3cより吐出された洗浄剤Cは、所定の目的形状に形成されるようになっている。
【0014】
吐出部3は、図1図3に示すように、上端に収容部2と連結する為の開口部3b、下端に洗浄剤Cを吐出する為の吐出孔3cからなる円筒状の本体部3a並びに、該本体部3aに設けられたマーク形成部3e及びシール部3fから構成される熱可塑性樹脂製の部材である。開口部3b周縁の内側には雌ネジ部3dが形成されており、収容部2の雄ネジ部2cとの螺合により吐出部3は収容部2に連結されている。また、本体部3aの下端底面の中央には後述するマーク形成部3eが装着されており、該マーク形成部3eの周囲に、被付着面Hと全周に亘って当接する円筒状のシール部3fが下方に突出して形成されている。シール部3fの下端面は被付着面Hと面接触する為の平面部3hを有しており、該平面部3hは被付着面Hと全周に亘って同時に接触するように同一平面上に形成されている。また、平面部3hはゴム等の弾性部材で形成すると被付着面Hへの密着性が強固なものとなり、シール性がより期待できる。
【0015】
更に、図1に示すように、シール部3fより外側の本体部3aの下端底面には洗浄剤Cを吐出する為の円形の吐出孔3cが等間隔で複数形成されている。また、前記シール部3fはマーキング時における吐出孔3cと被付着面Hとの距離を一定に保つためのスペーサ3gとしても機能している。
尚、本実施形態において洗浄剤Cを印影Mの周囲に均等に吐出する為に複数の吐出孔3cを形成しているが、その数は適宜変更可能であり、1つだけでも問題ない。この場合、シール部3fの外周に沿うように円環状の吐出孔3cを設ければよい。
また、吐出孔3cの形状は円形以外に三角形、四角形、楕円形等に適宜変更可能であり、大きさについても同様である。
【0016】
マーク形成部3eは、印字体とインキ吸蔵体から構成されており、図2に示すように、印字体の下端面はシール部3fの平面部3hより僅かに突出した状態でシール部3fの円筒体内に収納固定されている。印字体は、無数の連続気孔を有するスポンジゴム等の印材の一端(下端)に印面を形成してなる。この印字体の上面にインキ吸蔵体が積層されており、印字体に含浸されるインキの量がマーキングの繰り返しにより減少するのに伴って、インキ吸蔵体から印字体にインキが供給される構造となっている。
【0017】
マーク形成部3eに含侵するインキは手洗いの指標・基準となるよう、被付着面Hにマーキングした印影Mを、市販される洗浄剤Cを用いて30秒程度洗うと消失するものを使用する。具体的には、染料と、水と、多価アルコールと、リンタンパク質と、から少なくともなる皮膚用水性インキが挙げられる。
【0018】
当該皮膚用水性インキに用いられる多価アルコールは、蒸発性、染料溶解性、にじみ防止性等を考慮して、エチレングリコール、プロプレングリコール、ブチレングリコール、ペンチルグリコール、ヘキシルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の多価アルコールを使用することができ、これらのうちのいずれかを混合して用いることもできる。
また、リンタンパク質としては、脱脂粉乳、カゼイン、カゼインナトリウム、カゼインカルシウム、カゼインカリウム、カゼインマグネシウムから選ばれる1種又は2種以上を添加することができる。リンタンパク質を添加することにより、ヒトの皮膚に付着した場合であっても、容易に洗い落とすことができる。
尚、手洗いの指標・基準にできるものであれば上記インキに限定されず、例えば、所定時間の手洗い後に色が変わるインキでも問題なく使用できる。
【0019】
次に、上述した第1の実施形態に係る吐出容器1による動作及び効果について図3を参照して説明する。
収容部2を把持した状態でマーク形成部3eを下向きにし、被付着面Hに向けて押圧すると、印字体の下端面はシール部3fの平面部3hより僅かに突出している為、先ず印字面が被付着面Hに接触してマークが施され、その後、印字面が圧縮されることでシール部3fの平面部3hが被付着面Hに全周に亘って当接する(図3(a))。この状態で収容部2を指で押圧すると収容空間2aが弾性変形し、洗浄剤Cが吐出孔3cから吐出されるが、シール部3fの作用によりマーク形成部3eへの洗浄剤Cの侵入を防止できる為、マーク形成部3eが汚損されることを確実に防ぐことができる。(図3(b))。また、この時、被付着面Hと吐出孔3cとの距離をスペーサ3gによって一定に維持することができるため、吐出孔3cが被付着面Hで閉塞されずにスムーズに洗浄剤Cの吐出ができ、更に、洗浄剤Cを所定の目的形状に整形して吐出する場合には、被付着面H上に、より正確に目的形状の洗浄剤Cを形成しやすくなる。
【0020】
図3(b)の状態から、吐出容器1を上方に変位させることによりマーク形成部3eを被付着面Hから離間させると、図6に示されるように、被付着面H上に印影M、及び該印影Mの周囲に洗浄剤Cが立体的に形成される。
また、吐出孔3cの大きさ、数、形状を変更することで吐出される洗浄剤Cの形状を変更することができる為、手洗いに娯楽要素を付加することができ、子供の手洗いを促進させることができる。
【0021】
以上より、本実施形態では、被付着面Hへのマーキングと洗浄剤Cの供給を同時に行う事で通常の手洗いと同じ作業性を維持することができるとともに、洗浄剤Cの供給時にマーク形成部3eへ洗浄剤Cが侵入し、マーク形成部3eが汚損されることを確実に防ぐことができる。
【0022】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態の吐出容器1を図4図5に基づいて説明する。ここでは、前記した第1の実施形態と異なる点のみを説明する。
円筒状のシール部3f(スペーサ3g)の外側面に、それぞれの吐出孔3cと連通し洗浄剤C吐出方向に延伸したガイド溝3iを形成している。該ガイド溝3iは、吐出孔3cからシール部3f(スペーサ3g)の下端部に至るまで直線状に形成されており、その径は吐出孔3cと同径である。
【0023】
次に、本発明の第2の実施形態の作用・効果について説明する。ここでは、前記した第1の実施形態と異なる点のみを説明する。
収容部2を指で押圧すると、ガイド溝3iを伝って洗浄剤Cが吐出され、吐出された洗浄剤Cは、被付着面Hに接触した後、ガイド溝3iから放射状に外側に向かって流動する為、シール部3f(スペーサ3g)の外側面に付着する洗浄剤Cを最小限に留めることができ、吐出部3を清潔に保つことができる。
【0024】
以上、本発明に係る吐出容器の好ましい実施形態を説明したが、本発明の技術的思想は、ここで説明された実施形態に限定して解釈されるべきではない。当業者は、本発明の要旨又は技術思想から逸脱しない範囲で、この実施形態を適宜、変更又は改良を加えることができる。そのような変更又は改良を伴う吐出容器及び関連する周辺技術は、本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【符号の説明】
【0025】
1 吐出容器
2 収容部
2a 収容空間
2b 開口部
2c 雄ネジ部
3 吐出部
3a 本体部
3b 開口部
3c 吐出孔
3d 雌ネジ部
3e マーク形成部
3f シール部
3g スペーサ
3h 平面部
3i ガイド溝
C 洗浄剤
H 被付着面
M 印影
図1
図2
図3
図4
図5
図6