(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013961
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】零交差補償を伴う電気モータのためのPWM駆動方法
(51)【国際特許分類】
H02P 27/08 20060101AFI20230119BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20230119BHJP
【FI】
H02P27/08
H02M7/48 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022093602
(22)【出願日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】21185490
(32)【優先日】2021-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】502149218
【氏名又は名称】エテル・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエーレ・グアルコ
【テーマコード(参考)】
5H505
5H770
【Fターム(参考)】
5H505BB04
5H505DD03
5H505EE49
5H505GG01
5H505HA08
5H505HB01
5H505JJ03
5H505JJ29
5H505LL07
5H505LL22
5H505LL41
5H770BA01
5H770DA03
5H770DA41
5H770EA01
5H770EA25
5H770HA02Y
5H770LB02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】零交差時間補償を伴う電気モータを駆動するためのPWM駆動方法を提案する。
【解決手段】PWMモータ制御システム10は、3相ACモータ40と、電力インバータ30と、制御器20とを含む。制御器20は、第1、第2、および第3のPWM信号を生成するために、第1、第2、および第3の搬送波信号をそれぞれを生成するように構成される、第1、第2、および第3の搬送波生成器24a、24b、24cをそれぞれ有する、3つのPWM生成器21a、21b、21cを含む。各々のPWM生成器21a、21b、21cは、各々のPWM信号を、それぞれの半ブリッジの第1および第2のトランジスタT
1、T
2、T
3、T
4、T
5、T
6をそれぞれ制御するための、無駄時間を伴う、第1の方形波信号、および、第2の反転された方形波信号へと変換するように構成される無駄時間生成器22a、22b、22cをさらに含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
零交差補償を伴うPWMモータ制御システム(10)のためのPWM駆動方法であって、前記PWMモータ制御システムは、
3相ACモータ(40)と、
3つの半ブリッジを含む電力インバータ(30)であって、各々の半ブリッジは、共通の所与の電圧(VPWR)に接続される第1のトランジスタ(T1、T3、T5)と、基準点(GNDPWR)に接続される第2のトランジスタ(T2、T4、T6)とを含み、前記ACモータ(40)の、各々の相は、前記対応する半ブリッジの、それぞれのノード(n1、n2、n3)に接続される、電力インバータ(30)と、
第1、第2、および第3のPWM信号(PWM1、PWM2、PWM3)を生成するために、第1、第2、および第3の搬送波信号(PWMcar1、PWMcar2、PWMcar3)それぞれを生成するように構成される、第1、第2、および第3の搬送波生成器(24a、24b、24c)をそれぞれ含む、3つのPWM生成器(21a、21b、21c)を含む制御器(20)であって、各々のPWM生成器(21a、21b、21c)は、各々のPWM信号(PWM1、PWM2、PWM3)を、それぞれの半ブリッジの前記第1および第2のトランジスタ(T1、T2;T3、T4;T5、T6)をそれぞれ制御するための、無駄時間(td1、td2)を伴う、第1の方形波信号、および、第2の反転された方形波信号へと変換するように構成される無駄時間生成器(22a、22b、22c)をさらに含む、制御器(20)とを含み、前記方法は、少なくとも、前記ACモータの、それぞれの相において流れる電流(I1、I2、I3)が+/-10mAの間であるときに、前記それぞれの半ブリッジの前記ノード(n1、n2、n3)と前記基準点(GNDPWR)との間の電圧(Vph1、Vph2、Vph3)が、少なくとも前記電流(I1、I2、I3)が零と交差しているときに、前記それぞれのPWM信号(PWM1、PWM2、PWM3)がオフ状態にある各々の時間に、可変共通モード電圧(VCM)を達成するようにオフセットされるように、前記第1、第2、および第3の搬送波(PWMcar1、PWMcar2、PWMcar3)の各々の間の搬送波オフセットを生成するように、それぞれの第1、第2、および第3のPWM生成器(21a、21b、21c)の、各々の搬送波生成器(24a、24b、24c)を制御することに本質がある、PWM駆動方法。
【請求項2】
前記搬送波オフセットは、すべての時間において生成される、請求項1に記載のPWM駆動方法。
【請求項3】
前記搬送波オフセットは、前記3つの搬送波(PWMcar1、PWMcar2、PWMcar3)の各々の間で一定である、請求項1または2に記載のPWM駆動方法。
【請求項4】
前記搬送波オフセットは、0.4μsから8μsの間であり、好ましくは、およそ2μsである、請求項3に記載のPWM駆動方法。
【請求項5】
各々の信号搬送波の周波数は、5kHzから200kHzの間であり、好ましくは、およそ20kHzである、請求項1から4のいずれか一項に記載のPWM駆動方法。
【請求項6】
前記可変共通モード電圧(VCM)は、階段状のランプ電圧である、請求項1から5のいずれか一項に記載のPWM駆動方法。
【請求項7】
前記階段状のランプ電圧は、負のランプ傾斜と、正のランプ傾斜とを含む、請求項6に記載のPWM駆動方法。
【請求項8】
前記3相ACモータ(40)の、各々の相負荷に対する前記電流(I1、I2、I3)の電流符号を決定するステップをさらに含み、それぞれの第1、第2、および第3の半ブリッジの前記第1および第2のトランジスタ(T1、T2;T3、T4;T5、T6)をそれぞれ制御するための第1および第2の方形波制御信号(VgT1、VgT2;VgT3、VgT4;VgT5、VgT6)が、
前記3相ACモータ(40)の、それぞれの負荷相における前記電流(I1、I2、I3)の前記電流符号が正であるとき、前記第1の制御信号(VgT1、VgT3、VgT5)の立ち下がりエッジおよび立ち上がりエッジは、各々、それぞれの第1、第2、および第3の半ブリッジの前記第1のトランジスタ(T1、T3、T5)を制御するために、前記対応するPWM信号(PWM1、PWM2、PWM3)の対応する立ち下がりエッジおよび立ち上がりエッジについて、第1の無駄時間(td1)だけオフセットされ、一方で、前記第2の制御信号(VgT2、VgT4、VgT6)の立ち上がりエッジは、前記対応するPWM信号(PWM1、PWM2、PWM3)の対応する立ち下がりエッジについて、第2の無駄時間(td2)だけオフセットされ、前記第2の無駄時間(td2)は、前記第1の無駄時間(td1)より長く、好ましくは、2倍長く、前記第2の制御信号の立ち下がりエッジは、それぞれの第1、第2、および第3の半ブリッジの前記第2のトランジスタ(T2、T4、T6)を制御するために、前記対応するPWM信号の前記対応する立ち上がりエッジについてオフセットされず、
前記3相ACモータ(40)の、それぞれの負荷相における前記電流(I1、I2、I3)の前記電流符号が負であるとき、前記第1の制御信号(VgT1、VgT3、VgT5)の前記立ち下がりエッジは、前記対応するPWM信号(PWM1、PWM2、PWM3)の前記対応する立ち下がりエッジについてオフセットされず、前記第1の制御信号の前記立ち上がりエッジは、前記第2の無駄時間(td2)だけ、前記対応するPWM信号の前記対応する立ち上がりエッジについてオフセットされ、一方で、前記第2の制御信号の前記立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジは、各々、前記第2の無駄時間(td2)より短く、好ましくは、2倍短い、前記第1の無駄時間(td1)だけ、前記対応するPWM信号の前記対応する立ち下がりエッジおよび立ち上がりエッジについてオフセットされるように計算される、請求項1から7のいずれか一項に記載のPWM駆動方法。
【請求項9】
それぞれの半ブリッジの前記第2のトランジスタ(T2、T4、T6)を制御するための前記第2の制御信号(VgT2、VgT4、VgT6)は、前記3相ACモータ(40)の、それぞれの負荷相における前記電流(I1、I2、I3)の前記電流符号が負であるとき、前記第1、第2、および第3のPWM信号(PWM1、PWM2、PWM3)それぞれの反転され遅延された複製であり、それぞれの半ブリッジの前記第1のトランジスタを制御するための前記第1の制御信号は、前記3相ACモータ(40)の、それぞれの負荷相における前記電流(I1、I2、I3)の前記電流符号が正であるとき、第1、第2、および第3のPWM信号それぞれの遅延された複製である、請求項8に記載のPWM駆動方法。
【請求項10】
前記電力インバータ(30)の、それぞれの半ブリッジの前記ノード電圧(Vph1、Vph2、Vph3)は、前記3相ACモータの、それぞれの相負荷における前記電流(I1、I2、I3)の前記電流符号が正または負であるとき、前記第1、第2、および第3のPWM信号(PWM1、PWM2、PWM3)それぞれの遅延された複製である、請求項8または9に記載のPWM駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、モータの駆動電流の求められない電流波歪みを低減するための零交差補償を伴う電気モータを駆動するためのパルス幅変調される(PWM)駆動方法に関するものである。開示される方法は、電流波歪みをさらに低減するための無駄時間(deadtime)補償をさらに含み得る。
【背景技術】
【0002】
[0002]PWMインバータ制御されるACモータ駆動機構では、インバータ半ブリッジの各々において短絡を防止するために、無駄時間または時間遅延がスイッチング信号内に挿入されなければならない。この時間遅延は、インバータの安全な動作を保証するが、出力電圧において相当な歪みを引き起こす。その歪みは、制御の瞬間的な喪失を結果的に生じさせ、出力電圧は、基準電圧から外れる。このことがあらゆるスイッチング動作に対して繰り返されるので、そのことの影響は著しくなり得る。この影響は、MOSFET、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、および他のものなどの高速スイッチング装置に関してでさえ、依然として明白である。したがって、望ましくない速度脈動、および、モータの所望の位置を中心としたリミットサイクル振動を、回避する、または、少なくとも低減するための、PWMインバータの性能の改善のための効率的な無駄時間補償に対する必要性が存する。
【0003】
[0003]いくつかの手法が、モータの駆動電流の求められない電流波歪みを低減するための無駄時間補償のために開発された。
[0004]例として、米国特許出願公開第2004/0037097号は、固体スイッチ装置において無駄時間非線形性を補償するための方法であって、第1の時間点においてPWM信号を受け取るステップと、固体スイッチ装置の出力から電流帰還を受け取るステップであって、固体スイッチ装置は複数のスイッチ構成要素を含む、ステップと、第2の時間点において帰還電流における極性変化を検出するステップと、第3の時間点においてPWM信号の立ち上がりエッジを検出するステップと、帰還電流が、検出される極性変化に引き続いて正の極性を有するか、負の極性を有するかを決定するステップと、帰還電流が、検出される極性変化に引き続いて正の極性を有する場合、第3の時間点の後のあらかじめ決定された遅延において、固体スイッチ装置の第1のスイッチ構成要素を作動させるための第1の制御信号を出力するステップとを含む、方法を開示する。
【0004】
[0005]米国特許出願公開第2004/0037097号は、無駄時間影響に起因して、電圧歪みが、「零交差」として、より一般に知られる、電流極性変化の時点において、より深刻になることを認知するが、零交差の負の影響は、それが無駄時間影響として電流波歪みの一因となるにもかかわらず、対処されない。
【0005】
[0006]L. Ben-Brahim、「On the Compensation of Dead Time and Zero-Current Crossing for a PWM-Inverter-Controlled AC Servo Drive」 [IEEE Transaction on industrial electronics 第51巻、第5号、2004年10月]は、角度領域繰り返し制御に基づく零交差および無駄時間補償の方法を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0037097号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】L. Ben-Brahim、「On the Compensation of Dead Time and Zero-Current Crossing for a PWM-Inverter-Controlled AC Servo Drive」 [IEEE Transaction on industrial electronics 第51巻、第5号、2004年10月]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
[0007]本発明の目的は、零交差時間補償を伴う電気モータを駆動するための代替的なPWM駆動方法を提案することである。
[0008]本発明の別の目的は、無駄時間の負の影響をさらに補償するPWM駆動方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[0009]上記目的は、とりわけ、零交差補償を伴うPWMモータ制御システムのためのPWM駆動方法の手段により達成される。PWMモータ制御システムは、3相ACモータと、3つの半ブリッジを含む電力インバータであって、各々の半ブリッジは、共通の所与の電圧に接続される第1のトランジスタと、基準点に接続される第2のトランジスタとを含み、ACモータの、各々の相負荷は、対応する半ブリッジの、それぞれのノードに接続される、電力インバータと、制御器とを含む。制御器は、第1、第2、および第3のPWM信号を生成するために、第1、第2、および第3の搬送波それぞれを生成するように構成される、第1、第2、および第3の搬送波生成器をそれぞれ有する、3つのPWM生成器を含む。各々のPWM生成器は、各々のPWM信号を、それぞれの半ブリッジの上記第1および第2のトランジスタをそれぞれ制御するための、無駄時間を伴う、第1の方形波制御信号、および、第2の反転された方形波制御信号へと変換するように構成される無駄時間生成器をさらに含む。
【0010】
[0010]本方法は、少なくとも、ACモータの、それぞれの相において流れる電流が-10mAから+10mAの間であるときに、それぞれの半ブリッジのノードと基準点との間の電圧が、少なくとも上記電流が零と交差しているときに、それぞれのPWM信号がオフ状態にある各々の時間に、可変共通モード電圧を達成するようにオフセットされるように、上記第1、第2、および第3の搬送波の各々の間の搬送波オフセットを生成するように、それぞれの第1、第2、および第3のPWM生成器の、各々の搬送波生成器を制御することに本質がある。
【0011】
[0011]本開示の文脈の中での用語「オフセット」は、時間における遅延と理解されるべきである。本開示の文脈の中での用語「電流が零と交差しているとき」は、電流が+/-10mAの間であるときと理解されるべきである。
【0012】
[0012]実施形態において、搬送波オフセットは、モータが動作しているときのすべての時間において生成される。
[0013]実施形態において、搬送波オフセットは、3つの搬送波の各々の間で一定である。
【0013】
[0014]実施形態において、搬送波オフセットは、0.4μsから8μsの間であり、好ましくは、およそ2μsである。
[0015]実施形態において、各々の信号搬送波の周波数は、5kHzから200kHzの間であり、好ましくは、およそ20kHzである。
【0014】
[0016]実施形態において、可変共通モード電圧は、階段状のランプ電圧である。
[0017]実施形態において、階段状のランプ電圧は、負のランプ傾斜と、正のランプ傾斜とを含む。
【0015】
[0018]実施形態において、PWM駆動方法は、3相ACモータの、各々の相負荷に対する電流の電流符号を決定するステップをさらに含む。それぞれの第1、第2、および第3の半ブリッジの第1および第2のトランジスタをそれぞれ制御するための第1および第2の方形波制御信号が、以下のように計算される。
【0016】
3相ACモータの、それぞれの相負荷における電流の電流符号が正であるとき、第1の制御信号の立ち下がりエッジおよび立ち上がりエッジは、各々、それぞれの第1、第2、および第3の半ブリッジの第1のトランジスタを制御するために、対応するPWM信号の対応する立ち下がりエッジおよび立ち上がりエッジについて、第1の無駄時間だけオフセットされる。第2の制御信号の立ち上がりエッジは、対応するPWM信号の対応する立ち下がりエッジについて、第2の無駄時間だけオフセットされる。第2の無駄時間は、第1の無駄時間より長く、好ましくは、2倍長い。第2の制御信号の立ち下がりエッジは、それぞれの第1、第2、および第3の半ブリッジの第2のトランジスタを制御するために、対応するPWM信号の対応する立ち上がりエッジについてオフセットされない。
【0017】
3相ACモータの、それぞれの相負荷における電流の電流符号が負であるとき、第1の制御信号の立ち下がりエッジは、対応するPWM信号の対応する立ち下がりエッジについてオフセットされず、第1の制御信号の立ち上がりエッジは、第2の無駄時間だけ、対応するPWM信号の対応する立ち上がりエッジについてオフセットされる。第2の制御信号の立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジは、各々、第2の無駄時間より短く、好ましくは、2倍短い、第1の無駄時間だけ、対応するPWM信号の対応する立ち下がりエッジおよび立ち上がりエッジについてオフセットされる。
【0018】
[0019]実施形態において、3相ACモータの、それぞれの相負荷における電流の電流符号が負であるとき、それぞれの半ブリッジの第2のトランジスタを制御するための第2の制御信号は、第1、第2、および第3のPWM信号それぞれの反転され遅延された複製である。ならびに、3相ACモータの、それぞれの相負荷における電流の電流符号が正であるとき、それぞれの半ブリッジの第1のトランジスタを制御するための第1の制御信号は、第1、第2、および第3のPWM信号それぞれの遅延された複製である。
【0019】
[0020]実施形態において、電力インバータの、それぞれの半ブリッジのノード電圧は、3相ACモータの、それぞれの相負荷における電流の電流符号が正または負であるとき、第1、第2、および第3のPWM信号それぞれの遅延された複製である。
【0020】
[0021]本発明は、例として与えられる、および、図により例解される、いくつかの実施形態の説明の助けによって、より良好に理解されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の例示的な実施形態のPWMモータ制御システムの部分的な概略図を示す図である。
【
図2】従来技術による、PWMインバータの1相レグにおける短絡を防止するための、PWM信号における無駄時間の挿入を伴うPWM信号を示す図である。
【
図3】
図3aは、モータの、1つの相負荷における電流の極性が正であるときの、従来技術による、無駄時間を伴うPWM信号を、本発明の例示的な実施形態による、無駄時間補償を伴う修正されたPWM信号と対比して示す図である。
図3bは、モータの、1つの相負荷における電流の極性が負であるときの、従来技術による、無駄時間を伴うPWM信号を、本発明の例示的な実施形態による、無駄時間補償を伴う修正されたPWM信号と対比して示す図である。
【
図4】
図4aは、PWM信号の期間、ならびに、ある筋書、その筋書における
図2の従来型のPWM方式に対する、対応する共通モード電圧、電力インバータの1つの半ブリッジのノード電圧、1つの相負荷をまたぐ電圧、および、その相において結果的に生じる電流を示す図である。
図4bは、零交差補償アルゴリズムが、本発明の例示的な実施形態によって使用される筋書に対する、
図4aの同様の図を示す図である。
図4cは、零交差補償アルゴリズムが、本発明の例示的な実施形態によって、
図3aおよび3bに基づく無駄時間補償アルゴリズムと一緒に使用される筋書に対する、
図4bの同様の図を示す図である。
【
図5】
図5aは、本発明の実施形態による、一定のオフセットだけ互いにオフセットされる、それぞれのPWM生成器の、3つの搬送波を示す図である。
図5bは、
図5aにおいて示されるように3つの搬送波をオフセットするときの、それぞれの半ブリッジのノード電圧を示す図である。
図5cは、ACモータの、結果的に生じる共通モード電圧を示す図である。
【
図6a】無駄時間および零交差アルゴリズム補償を伴わない、3相電気モータの、各々の誘導性負荷に関して測定される電流曲線のグラフを示す図である。
【
図6b】無駄時間補償アルゴリズムが、
図4bにおいて示される例示的な実施形態によって使用されるときの、
図6aの同様のグラフを示す図である。
【
図6c】無駄時間補償アルゴリズムが、
図4cにおいて示される例示的な実施形態によって、零交差補償アルゴリズムと一緒に使用されるときの、
図6bの同様のグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[0022]PWMモータ制御システム10が、
図1において示される。PWMモータ制御システムは、例えばフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)制御器であり得る制御器20と、電力インバータ30と、3相ACモータ40とを含む。制御器20は、3相ACモータ40の、各々の相負荷を駆動するための、PWM生成器と、無駄時間生成器とを含む。制御器20は、モータ40に印加されるとき所望の電流およびトルクが生成されるように、電力インバータ30の外で必要な電圧を発生させるように構成および接続される。これらの電圧は、モータの位置および速度に関係付けられるので、回転子の位置および速度が決定される。回転子位置エンコーダ(図示せず)が、回転子の位置を検出するためにモータ40に接続される。位置エンコーダの信号は、必要に応じて、PWM信号を適合させるために制御機構に帰還される。
【0023】
[0023]電力インバータ30は、例えば正のバス電圧であり得る、共通の所与の電圧に接続される第1のトランジスタT1;T3;T5と、接地であり得る基準点に接続される第2のトランジスタT2、T4、T6とを各々が含む、3つの半ブリッジを含む。各々の半ブリッジの基準点は、代替的な実施形態によれば、負のバス電圧に一緒に接続され得る。電力インバータ30の、それぞれの半ブリッジの第1および第2の両方のトランジスタT1、T2;T3、T4;T5、T6のゲートは、電力インバータ30の第1、第2、および第3のゲートドライバ32a、32b、32cにより駆動される。
【0024】
[0024]制御器20は、3つのPWM生成器21a、21b、21cと、3つの無駄時間生成器22a、22b、22cとを、すなわち、相負荷ごとに、1つの生成器と、1つの無駄時間生成器とを含む。各々のPWM生成器は、比較器からPWM信号PWM1、PWM2、PWM3を出力するために、基準信号α1、α2、α3と一緒に比較器に送り込まれる搬送波PWMcar1、PWMcar2、PWMcar3を生成するように構成される搬送波生成器24a、24b、24cを含む。基準信号α1、α2、α3は、典型的には、モータ速度およびトルクを制御するためのプロセッサ(図示せず)により計算される正弦波形である。基準信号α1、α2、α3は、適切に3相モータ40の、各々の相負荷を制御するために、互いに120°だけずらされなければならない。
【0025】
[0025]無駄時間生成器22a、22b、22cは、
図3a、3bにおいて描写されるように、対応するPWM信号PWM
1、PWM
2、PWM
3を、無駄時間t
d1、t
d2を伴う、第1の方形波制御信号、および、第2の反転された方形波制御信号へと変換するように構成される。第1および第2の制御信号の大きさは、3つの半ブリッジの各々の第1および第2のトランジスタT
1、T
2;T
3、T
4;T
5、T
6をそれぞれ制御するために、電力インバータ30の、それぞれのゲートドライバ32a、32b、32cにより増大される。
【0026】
[0026]先に述べられたように、無駄時間生成器は、インバータの半ブリッジを通るいかなる短絡も回避するために、各々の半ブリッジの2つのトランジスタの両方の出力がカットオフモードへと駆動され、両方が「オフ」であるときに、スイッチング転移の間の期間を確保するために不可欠である。無駄時間は、例えば、100nsから2μsの間であり、好ましくは、およそ500nsであり得るものであり、選択されるトランジスタ型に基づいて決定されるべきである。
【0027】
[0027]
図2において示されるように、モータ40の、1つの相負荷を制御するために、1つの半ブリッジのトランジスタT
1およびT
2を交番で駆動するための従来型のPWM信号の、灰色で示される無駄時間t
dの間、ノード出力電圧は、電流符号により、したがって、負荷電流によりオンで駆動されるダイオードにより決定される。
【0028】
[0028]電圧損失に対処するために、および、電力インバータ30の出力における信号を線形化するために、制御器20は、以下の修正されたPWM方式にしたがって、無駄時間の負の影響を補償するように、従来型のPWM方式を修正する。それぞれの負荷相において流れる電流I
1、I
2、I
3の電流符号が、最初に決定され、PWM方式が、そのことに応じて、実施形態によって、
図3aおよび3bにおいて示されるように修正される。電流I
1、I
2、I
3は、典型的には、インバータノードとモータ相負荷との間に挿入される電流センサを使用して測定される。
【0029】
[0029]
図3aを参照すると、それぞれの負荷相における電流の極性が正であるとき、3相ACモータ40の対応する相を制御する各々の半ブリッジの第1のトランジスタT
1;T
3;T
5のオン時間が増大される。このことは、第1のトランジスタT
1のゲートに印加される第1の制御信号V
gT1が、例えば500ns持続し得る、第1の無駄時間t
d1だけ、PWM
1信号の対応する立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジについて遅延された、立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジを伴う、PWM
1信号の複製であるように、第1の無駄時間t
d1だけ、それぞれのPWM
1、PWM
2、PWM
3信号(
図1)の立ち下がりエッジおよび立ち上がりエッジを遅延させることにより達成される。第2の制御信号V
gT2の立ち上がりエッジは、第2の無駄時間t
d2だけ、PWM
1信号の対応する立ち下がりエッジについて遅延され、その第2の無駄時間t
d2の長さは、例えば第1の無駄時間t
d1の長さの2倍であり得るものであり、その第2の無駄時間t
d2は、例えば1μs持続し得るものであり、一方で、第2の制御信号の立ち下がりエッジは、PWM
1信号の対応する立ち上がりエッジについてオフセットされない。
【0030】
[0030]
図3bを参照すると、それぞれの負荷相における電流I
1、I
2、I
3の極性が負であるとき、第1の制御信号V
gT1の立ち下がりエッジは、PWM
1信号の対応する立ち下がりエッジについてオフセットされず、上記第1の制御信号の立ち上がりエッジは、PWM
1信号の対応する立ち上がりエッジについて、第2の無駄時間t
d2だけオフセットされる。第2の制御信号V
gT2の立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジは、各々、上記第2の無駄時間t
d2より短く、好ましくは、2倍短い、第1の無駄時間t
d1だけ、PWM
1信号の対応する立ち下がりエッジおよび立ち上がりエッジについてオフセットされる。
【0031】
[0031]上述されたように、各々のトランジスタのゲートを制御することは、
図3aおよび3bにおいて示されるようなノード電圧V
ph1が、常に、PWM
1信号の遅延された複製であることを確実にする。信号PWM
2およびPWM
3は、個々に制御されるが、第2の半ブリッジのトランジスタT
3およびT
4のゲートに、ならびに、第3の半ブリッジのトランジスタT
5およびT
6のゲートに印加される電圧波形は、
図3aおよび3bにおいて描写されるような、正および負の電流に対する、第1の半ブリッジの第1および第2のトランジスタT
1、T
2に印加される電圧波形V
gT1およびV
gT2と同様である。これらの駆動波形は、PWMデューティサイクル入力と、達成される電圧出力との間の非線形性を著しく低減する。
【0032】
[0032]すでに述べられたように、より一般に零交差と称される極性変化の時点において電圧歪みも生じる。電流が零と交差しているとき、無駄時間tdの間、還流ダイオードD1~D6は、ターンオンすることができない。この状況において、半ブリッジの出力ノードは浮動的であり、その出力ノードの電圧は、設計寄生(design parasitic)により決定される。そのことは、モータが停止の様態にあり、すべての相が、50%デューティサイクルを伴うPWMにしたがってパルス化しているときに、問題をはらむものになる。PWMモータシステム10は均衡が保たれるので、共通モード電圧Vcmは、常に、負荷相電圧Vph1、Vph2、Vph3と同じ波形を有することになる。
【0033】
[0033]この状況において、電圧は、
図4aにおいて示されるように、印加され得ない。電流I
1が零であると、出力ノードは、無駄時間t
dの間、浮動的であり、そのことは、出力電流I
1が、第2のパルスが生成されるまで零電流においてのままであることを引き起こす。しかしながら、第2のパルスは時間において依然として小さいので、第2のパルスの間に生成される電流の大きさは、次の転移における電流をもたらすのに十分ではなく、問題が再び繰り返す。
【0034】
[0034]この問題を克服するために、それぞれの半ブリッジのノードn1、n2、n3と接地GND
PWRとの間の電圧V
ph1、V
ph2、V
ph3が、それぞれのPWM信号PWM
1、PWM
2、PWM
3がオフ状態にある各々の時間に、可変共通モード電圧V
CMを達成するようにオフセットされる(
図5b)ように、
図5aにおいて示されるように、第1、第2、および第3の搬送波PWM
car1、PWM
car2、PWM
car3の各々の間の搬送波オフセットを生成するように、それぞれの第1、第2、および第3のPWM生成器21a、21b、21cの、各々の搬送波生成器24a、24b、24cが制御される。
【0035】
[0035]搬送波オフセットは、好ましくは、モータが動作しているときのすべての時間において生成されるが、その搬送波オフセットは、実施形態によれば、それぞれの負荷相における電流I1、I2、I3が零と交差しているとき、すなわち、電流が例えば+/-10mAの間であるときにのみ、生成されることがある。
【0036】
[0036]搬送波オフセットは、ずらされる方形波電圧V
ph1、V
ph2、V
ph3を達成するために、例えば、0.4μsから8μsの間であり、好ましくは、およそ2μsであり得る。搬送波オフセットは、典型的には、選択される無駄時間によって決定され、例えば、無駄時間の2倍から6倍の間であり、好ましくは、無駄時間のおよそ4倍である。結果的に生じる共通電圧V
CMは、
図5cにおいて示されるように、階段状のランプ電圧に似ている。
【0037】
[0037]今から
図4bを参照すると、相電圧V
ph1の立ち下がりエッジにおいて、電流I
1は依然として零である。しかしながら、共通モード電圧V
cmは、もはや相電圧V
ph1と同じでないので、電流パルスがモータ負荷上で生成され、そのことが、誤差を低減する。
【0038】
[0038]好まれる実施形態において、先に説明されたような無駄時間補償PWM方式、および、零交差補償の両方が、
図4cにおいて示されるように、電流が零と交差しているときに誤差をさらに低減するために適用される。
図4aから4cにおいて、無駄時間の負の影響なしに達成されることになる、理論的な負荷電圧が、無駄時間により誘導される浮動的なノードに起因して達成される現実の負荷電圧と対比して示される。
【0039】
[0039]無駄時間および零交差補償は、
図6aから6cにおいて示されるように、モータの駆動電流の求められない電流波歪みを著しく低減する。
図6bは、無駄時間補償アルゴリズムを単独で使用するときの、ACモータの、各々の誘導性負荷に関して測定される電流曲線が、無駄時間補償が遂行されないときの対応する電流曲線と比較されるときに、有意な、より少ない電流波歪みを有することを示す。
図6cは、無駄時間補償アルゴリズムを、零交差補償アルゴリズムと一緒に使用するときの、ACモータの、各々の誘導性負荷に関して測定される電流曲線が、無駄時間補償アルゴリズムのみが使用される
図6bの対応する曲線と比較されるときに、いっそう少ない電流波歪みを有することを示す。
【符号の説明】
【0040】
10 PWMモータ制御システム、PWMモータシステム
20 制御器
21a PWM生成器、第1のPWM生成器
21b PWM生成器、第2のPWM生成器
21c PWM生成器、第3のPWM生成器
22a 無駄時間生成器
22b 無駄時間生成器
22c 無駄時間生成器
24a 搬送波生成器、第1の搬送波生成器
24b 搬送波生成器、第2の搬送波生成器
24c 搬送波生成器、第3の搬送波生成器
30 電力インバータ
32a 第1のゲートドライバ
32b 第2のゲートドライバ
32c 第3のゲートドライバ
40 3相ACモータ、モータ、3相モータ
D1 還流ダイオード
D2 還流ダイオード
D3 還流ダイオード
D4 還流ダイオード
D5 還流ダイオード
D6 還流ダイオード
GNDPWR 接地、基準点
I1 電流
I2 電流
I3 電流
n1 ノード
n2 ノード
n3 ノード
PWM1 PWM信号、第1のPWM信号
PWM2 PWM信号、第2のPWM信号
PWM3 PWM信号、第3のPWM信号
PWMcar1 搬送波、第1の搬送波、第1の搬送波信号
PWMcar2 搬送波、第2の搬送波、第2の搬送波信号
PWMcar3 搬送波、第3の搬送波、第3の搬送波信号
T1 第1のトランジスタ、トランジスタ
T2 第2のトランジスタ、トランジスタ
T3 第1のトランジスタ、トランジスタ
T4 第2のトランジスタ、トランジスタ
T5 第1のトランジスタ、トランジスタ
T6 第2のトランジスタ、トランジスタ
td 無駄時間
td1 無駄時間、第1の無駄時間
td2 無駄時間、第2の無駄時間
VCM 可変共通モード電圧、共通電圧
Vcm 共通モード電圧
VgT1 第1の制御信号、電圧波形、第1の方形波制御信号
VgT2 第2の制御信号、電圧波形、第2の方形波制御信号
VgT3 第1の方形波制御信号、第1の制御信号
VgT4 第2の方形波制御信号、第2の制御信号
VgT5 第1の方形波制御信号、第1の制御信号
VgT6 第2の方形波制御信号、第2の制御信号
Vph1 ノード電圧、負荷相電圧、電圧、方形波電圧、相電圧
Vph2 負荷相電圧、電圧、方形波電圧
Vph3 負荷相電圧、電圧、方形波電圧
VPWR 共通の所与の電圧
α1 基準信号
α2 基準信号
α3 基準信号
【外国語明細書】