IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マクセルイズミ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-電動工具 図1
  • 特開-電動工具 図2
  • 特開-電動工具 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139613
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】電動工具
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/00 20060101AFI20230927BHJP
【FI】
B25F5/00 A
B25F5/00 D
B25F5/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045225
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】519157727
【氏名又は名称】マクセルイズミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】上條 敬一郎
(72)【発明者】
【氏名】河内山 勝利
【テーマコード(参考)】
3C064
【Fターム(参考)】
3C064AA20
3C064AB01
3C064AC02
3C064AC05
3C064AC08
3C064BA01
3C064BA02
3C064BA04
3C064BA06
3C064BA12
3C064BB01
3C064BB41
3C064BB72
3C064CA03
3C064CA06
3C064CA54
3C064CA87
3C064CB08
3C064CB17
3C064CB33
3C064CB34
3C064CB63
3C064CB73
(57)【要約】
【課題】モータが高温になって作動効率が低下することを防止しつつ、電力消費を抑えて長時間の作業を行うことが可能な小型軽量で油圧式の電動工具を提供することを目的とする。
【解決手段】電動工具1は、オイルタンク3と、作動油3cをシリンダ部4に送液する油圧ポンプ7と、油圧ポンプ7を駆動するモータ8とを有する本体2と、本体2に連結された状態でシリンダ部4におけるピストンの押圧力によって作動する工具ヘッド9とを備え、オイルタンク3はモータケース8cを覆っている構成である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ部と、オイルタンクと、前記オイルタンク内の作動油を前記シリンダ部に送液する油圧ポンプと、前記油圧ポンプを駆動するモータとを有する本体と、前記本体に連結された状態で前記シリンダ部におけるピストンの押圧力によって作動する工具ヘッドとを備え、前記モータにおけるモータケースは、前記オイルタンクに覆われている構成であること
を特徴とする電動工具。
【請求項2】
前記オイルタンクは、一端部が前記モータケースに係止しているとともに、他端部が前記油圧ポンプに係止していること
を特徴とする請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
前記モータは、ブラシレスモータであり、減速機を介して前記油圧ポンプに連結していること
を特徴とする請求項1または2に記載の電動工具。
【請求項4】
前記モータにおける前記モータケースにフィンが設けられており、前記フィンは前記オイルタンク内の前記作動油に接触可能な構成であること
を特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項5】
前記油圧ポンプは、前記モータの駆動軸を通る軸線周りに回転する斜板カムと、前記シリンダ部における前記駆動軸を通る軸線の周りに配されて前記斜板カムに接しつつ往復動する複数のプランジャと、チェック弁とを有し、前記チェック弁を経由して前記オイルタンクから前記シリンダ部に前記作動油を送液する構成であること
を特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項6】
前記モータに電力を供給する二次電池と、前記二次電池を前記本体に接続するアダプタとを備えること
を特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧式の電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧式の電動工具が知られている(特許文献1:特開2018-086696号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-086696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動工具は、切断、締付、圧縮または圧着などの工具ヘッドの動作を短時間に繰り返すと、モータが高温になって作動効率が低下する。モータが高温になった状態で電動工具を更に使用し続けるとモータ焼損に至る虞がある。従来、冷媒を用いた空冷構造や水冷構造にして、モータを強制冷却することでモータ焼損を防止する構造が提案されている。しかしながら、空冷構造はハウジングに風窓を設けなければならず、塵埃や水滴等の異物浸入によって故障しやすくなるため使用環境が大幅に制限される。風窓を設けない場合は冷却効果が著しく低下するため連続使用が困難になる。水冷構造は大型で重くなるため小型の電動工具には適さない。そのため、工具ヘッドの動作を短時間で繰り返しても、高温になってモータ効率が低下することを防止しつつ、電力消費を抑えて長時間の作業を行うことが可能な小型軽量で油圧式の電動工具が市場から求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、モータが高温になって作動効率が低下することを防止しつつ、電力消費を抑えて長時間の作業を行うことが可能な小型軽量で油圧式の電動工具を提供することを目的とする。
【0006】
一実施形態として、以下に開示する解決策により、前記課題を解決する。
【0007】
本発明に係る電動工具は、シリンダ部と、オイルタンクと、前記オイルタンク内の作動油を前記シリンダ部に送液する油圧ポンプと、前記油圧ポンプを駆動するモータとを有する本体と、前記本体に連結された状態で前記シリンダ部におけるピストンの押圧力によって作動する工具ヘッドとを備え、前記モータにおけるモータケースは、前記オイルタンクに覆われている構成であることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、オイルタンク内の作動油がモータからの排熱を吸収する構成によってモータが高温になって作動効率が低下することを防止できる。また、本体内の油圧ポンプ用の作動油を利用しているので部品点数を増やすことなく小型軽量にできる。尚且つ、モータからの排熱を利用して作動油の温度を上げることで作動油の粘度を下げることができるので、低温環境下であっても、より効率的な油圧動作が可能な構成にできる。
【0009】
前記モータへの電力供給は、前記モータの種別に応じて、二次電池、直流電源接続ケーブル、ACアダプタまたは商用電源接続ケーブルのいずれか一種以上を用いて行われる。一例として、前記モータに電力を供給する二次電池と、前記二次電池を前記本体に接続するアダプタとを備える構成である。この構成によれば、電源コードが不要になって作業範囲が拡大できる。例えば前記二次電池を電池パックの状態で前記アダプタに接続することで、使用可能時間を延ばすことが容易にできる。
【0010】
前記モータは、ブラシレスモータであることが好ましい。この構成により、電磁ノイズが少なく、より長寿命かつ高効率化が実現できるとともに、速度制御が容易にできる。ここで、ブラシレスモータと永久磁石同期モータとは同義である。一例として、前記モータは、減速機を介して前記油圧ポンプに連結している構成である。これにより、ブラシレスモータを高速回転させつつ、減速機を介してハイパワーにすることが容易にできる。前記減速機は前記オイルタンク内に配されており、オイルタンク内の作動油が減速機からの排熱を吸熱するのでブラシレスモータと減速機との組み合わせにおける良好な作動効率が得られるとともに、より静音化を図ることが容易にできる。前記オイルタンク内にはマグネット式フィルタが配されているので、減速機の潤滑が容易にできるとともに、減速機の摩耗粉の除去が容易にできる。
【0011】
一例として、前記モータにおける前記モータケースにフィンが設けられており、前記フィンは前記オイルタンク内の前記作動油に接触可能な構成である。この構成により、モータケースの表面積を拡大し放熱効率を高めることが容易にできる。前記フィンにおけるフィンピッチは前記作動油が通過可能な隙間が形成されるピッチに設定される。前記フィンはアルミニウム、鉄、真鍮または既知の合金等で形成され、必要に応じてアルマイト処理などの表面処理が施される。
【0012】
一例として、前記オイルタンクの一端部は前記モータケースの外周面に接している構成である。一例として、前記オイルタンク内の作動油は前記モータケースの外周面に接触可能な構成である。一例として、前記オイルタンクは前記モータケースにおける外周面の軸方向長さの0.5倍以上を覆っている構成である。一例として、前記オイルタンク内の作動油は前記モータケースにおける外周面の軸方向長さの0.5倍以上の長さのエリアに接触可能な構成である。一例として、前記モータケースにおける駆動軸側の反対側は前記オイルタンクから突出している構成である。一例として、前記モータケースにおける駆動軸側の反対側は前記オイルタンク内の作動油が接触しない構成である。一例として、前記モータにおける給電線は前記オイルタンク内の作動油が接触しない構成である。
【0013】
一例として、前記オイルタンクは、一端部が前記モータケースに係止しているとともに、他端部が前記油圧ポンプに係止している構成である。これにより、作動油の量を抑えつつ、作動油がモータからの排熱をより確実に吸熱できる構成となる。そして、作業者が把持するハンドルに近い位置に重心を合わせて、小型軽量で持ちやすい形状に容易にできる。
【0014】
一例として、前記油圧ポンプは、前記モータの駆動軸を通る軸線周りに回転する斜板カムと、前記シリンダ部における前記駆動軸を通る軸線の周りに配されて前記斜板カムに接しつつ往復動する複数のプランジャと、チェック弁とを有し、前記チェック弁を経由して前記オイルタンクから前記シリンダ部に前記作動油を送液する構成である。この構成により、斜板カムの回転速度に合わせて直線的に昇圧させることができるので、工具ヘッドの作動制御が容易にできる。一例として、前記油圧ポンプと前記シリンダ部との接続部には、前記オイルタンクから前記シリンダ部に前記作動油を送るための第1管路が形成されており、前記第1管路の途中にチェック弁を設けている。一例として、前記油圧ポンプと前記シリンダ部との接続部には、前記シリンダ部から前記油圧ポンプに前記作動油を戻すための第2管路が形成されており、一例として、前記第2管路の途中に戻し弁を設けている。一例として、前記油圧ポンプと前記シリンダ部との接続部には、前記シリンダ部から前記油圧ポンプに前記作動油を戻すための第3管路が形成されており、一例として、前記第3管路の途中にリリーフ弁を設けている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、モータが高温になって作動効率が低下することを防止しつつ、電力消費を抑えて長時間の作業を行うことが可能な小型軽量で油圧式の電動工具が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は本発明の実施形態に係る電動工具の例を示す概略の側面図である。
図2図2図1の電動工具における内部構造を示す概略の内部構造図である。
図3図3A図1の電動工具における駆動系の内部構造を側面側から示す概略の断面図であり、図3B図1の電動工具における駆動系の内部構造を平面側から示す概略の断面図であり、図3C図3BのC-C線断面図であり、図3D図3Bの視る角度を変えたときの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。本実施形態は、電動切断機、電動圧縮機、電動圧着機などの電動工具1である。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0018】
図1図2は、本実施形態に係る電動工具1の例を示す概略の図である。電動工具1は、本体2と、本体2に連結された状態で本体2のシリンダ部4におけるピストン4aの押圧力によって作動する工具ヘッド9と、本体2のモータ8に電力を供給する二次電池5bとを備え、現場で作業者が手に持って使用するコードレスタイプの油圧式電動工具である。ピストン4aは、モータ8の駆動軸8aの軸線P1に沿って往復動する。つまり、ピストン4aは、図中のY方向矢印の側に前進し、図中のY方向矢印の反対側に後退する。図1は、電動圧縮機用の工具ヘッド9を取付けた構成の電動工具1の例である。電動工具1は、工具ヘッド9を直結した専用式工具にする場合があり、工具ヘッド9を交換する多機能式工具にする場合がある。ここで、電動工具1の各部の位置関係を説明し易くするため、図中にX,Y,Zの矢印で向きを示している。なお、電動工具1は、いずれの向きにおいても正常に作動する。
【0019】
図2および図3A図3Cに示すように、本体2は、シリンダ部4と、シリンダ部4に連結し一体構造になった油圧ポンプ7と、油圧ポンプ7の外側に取り付けられているとともにモータ8の外側に取り付けられているオイルタンク3とを有する。シリンダ部4は、ピストン4aがピストン室4bに配されており、ピストン4aの軸心に合わせてピストン4aの外周に沿うようコイルバネ4cが配されている。油圧ポンプ7は、オイルタンク3に貯留された作動油3cをシリンダ部4のピストン室4bに送液する。
【0020】
本体2は、減速機6を介して油圧ポンプ7に連結して油圧ポンプ7を駆動するモータ8と、モータ8を駆動制御する制御回路27を有する。そして、モータ8と制御回路27とに電力供給する二次電池5bが電池パックの状態で本体2のアダプタ5aに接続されている。アダプタ5aは本体2の後端部に連結している。軸線P1方向に順に工具ヘッド9、本体2、アダプタ5a、二次電池5bが配されている。本体2における軸線P1方向の中央部には作業者が把持する持ち手部分としてハンドル2dが、本体2における筐体2aと一体構造で設けられている。ハンドル2dには、モータ8を起動させてオイルタンク3に貯留された作動油3cをシリンダ部4に送るための起動スイッチ2cと、作動油3cをシリンダ部4からオイルタンク3に戻すための戻しスイッチ2eとが配されている。ここでは、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の二次電池5bによって構成された電池パックが本体2のアダプタ5aに接続されており、アダプタ5aが本体2に連結している。この構成により、可搬性に優れた電動工具1になる。
【0021】
一例として、モータ8は、インナーロータ型のブラシレスモータである。一例として、モータ8におけるモータケース8cに放熱のためのフィン8dが設けられており、フィン8dはオイルタンク3に貯留している作動油3cに接触可能な構成である。
【0022】
図3Aに示すように、油圧ポンプ7は、減速機6が直結されたモータ8の駆動軸8a、または減速機6を有するモータ8の駆動軸8aに連結されて当該モータ8の駆動力によって回転する斜板カム7aと、シリンダ部4において駆動軸8aを通る軸線P1の周りに配されて斜板カム7aに接しつつ往復動する複数のプランジャ12とを有する。プランジャ12の二次側で油圧ポンプ7に近い位置(C-C線断面の位置)には、作動油3cのプランジャ12からオイルタンク3への逆流を防止する逆流防止弁16が配されている。
【0023】
オイルタンク3は耐油性で膨張および収縮可能なゴム材質からなる袋状体である。オイルタンク3は油圧ポンプ7とモータ8の両方に係止されており、モータケース8cは、オイルタンク3に覆われている構成である。図3A図3Dに示すように、油圧ポンプ7とシリンダ部4との接続部には、オイルタンク3からシリンダ部4に作動油3cを送るための第1管路21が形成されており、第1管路21の途中にチェック弁15を設けている。また、油圧ポンプ7とシリンダ部4との接続部には、シリンダ部4から油圧ポンプ7に作動油3cを戻すための第2管路22が形成されており第2管路22の途中に戻し弁26を設けている。そして、油圧ポンプ7とシリンダ部4との接続部には、シリンダ部4から油圧ポンプ7に作動油3cを戻すための第3管路23が形成されており、第3管路23の途中にリリーフ弁25を設けている。
【0024】
オイルタンク3は、一端部3aがモータケース8cに係止しており、他端部3bが油圧ポンプ7に係止している構成である。一例として、オイルタンク3の一端部3aは外向きにカールされており、Oリングなどのゴムリングや結束バンドなどの第1係止部材17aによってモータケース8cの外周溝に係止され固定されている。同様に、オイルタンク3の他端部3bは外向きにカールされており、Oリングなどのゴムリングや結束バンドなどの第2係止部材17bによって油圧ポンプ7の外周溝に係止され固定されている。
【0025】
本実施形態によれば、オイルタンク3の内部の作動油3cがモータ8や減速機6からの排熱を吸熱する構成によってモータ8や減速機6が高温になって作動効率が低下することを防止できる。また、本体2に既存の作動油3cを利用しているので部品点数を増やすことなく小型軽量にできる。尚且つ、モータ8や減速機6からの排熱を利用して作動油3cの温度を上げることで、低温環境下においても、作動油3cの粘度を下げることができるので、より効率的な油圧動作が可能な構成にできる。
【0026】
工具ヘッド9は、一例として、第1圧力に至る低圧段階で把持作業または仮把持作業もしくは把持準備作業等を行い、第2圧力に至る高圧段階にて圧縮作業や圧着作業を行う。そして、工具ヘッド9による所定の作業が完了すると、リリーフ弁25が開き、シリンダ部4の圧力を低下させる。ピストン4aの位置を戻すときは、戻しピン28を操作することで戻し弁26が開き、コイルバネ4cの復元力で作動油3cはオイルタンク3に戻る。電動工具1は、自動戻り機能を有する場合があり、自動戻り機能を有する構成においては、工具ヘッド9による所定の作業が完了すると、工具ヘッド9は作業前の状態に戻る。
【0027】
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更が可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 電動工具
2 本体、2a 筐体、2c 起動スイッチ、2d ハンドル、2e 戻しスイッチ
3 オイルタンク、3a 一端側、3b 他端側、3c 作動油
4 シリンダ部、4a ピストン、4b ピストン室、4c コイルバネ
5a アダプタ、5b 二次電池(電池パック)
6 減速機
7 油圧ポンプ、7a 斜板カム
8 モータ、8a 駆動軸、8c モータケース、8d フィン
9 工具ヘッド
12 プランジャ
16 チェック弁
17a 第1係止部材、17b 第2係止部材
21 第1管路
22 第2管路
23 第3管路
25 リリーフ弁
26 戻し弁
27 制御回路
28 戻しピン
P1 軸線
図1
図2
図3