(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139626
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】エンジンの潤滑装置
(51)【国際特許分類】
F02D 43/00 20060101AFI20230927BHJP
F01M 1/08 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
F02D43/00 301Y
F01M1/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045246
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100133916
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 興
(72)【発明者】
【氏名】丸山 仁
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 智史
(72)【発明者】
【氏名】西尾 貴史
(72)【発明者】
【氏名】奥村 拓仁
(72)【発明者】
【氏名】居軒 めぐみ
【テーマコード(参考)】
3G313
3G384
【Fターム(参考)】
3G313AA07
3G313BA02
3G313BB33
3G313BB35
3G313BC02
3G313BC26
3G313EA01
3G313EA14
3G313EA16
3G313FA06
3G384AA07
3G384BA42
3G384BA47
3G384BA53
3G384DA48
3G384EB01
3G384EB02
3G384ED07
3G384ED08
3G384EG01
3G384FA81Z
(57)【要約】
【課題】ピストンに潤滑油を適切に噴射できるエンジンの潤滑装置を提供する。
【解決手段】
オイル通路から導入された潤滑油を前記ピストンに噴射するオイルジェットと、オイルジェットよりも上流側のオイル通路を開閉するソレノイド式の開閉弁と、ポンプ吐出圧変更装置および開閉弁を制御する制御装置とを設ける。ピストンに潤滑油を噴射する要求が出されると、制御装置に、オイルポンプの吐出圧が上昇するようにポンプ吐出圧変更装置を制御しつつ開閉弁に開弁指令を出す開弁制御を実施させるとともに、開閉弁を流れる電流に基づいて開閉弁が固着しているか否かを判定する固着判定を実施させ、開閉弁が固着していると判定されると開閉弁に閉弁指令を出す閉弁制御を実施させた後、開弁制御と閉弁制御を繰り返させる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気筒および当該気筒に摺動可能に収容されたピストンを有するエンジン本体と、潤滑油を貯留するオイルパンとを備えるエンジンの潤滑装置であって、
内側を潤滑油が流通するオイル通路と、
前記オイルパン内の潤滑油を前記オイル通路に圧送するオイルポンプと、
前記オイルポンプの吐出圧を変更可能なポンプ吐出圧変更装置と、
前記オイル通路から導入された潤滑油を前記ピストンに噴射するオイルジェットと、
前記オイルジェットよりも上流側の前記オイル通路を開閉するソレノイド式の開閉弁と、
前記ポンプ吐出圧変更装置および前記開閉弁を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記ピストンに潤滑油を噴射する潤滑油噴射要求が出されると、前記オイルポンプの吐出圧が上昇するように前記ポンプ吐出圧変更装置を制御しつつ前記開閉弁に開弁指令を出す開弁制御を実施し、
前記開弁制御の際に前記開閉弁を流れる電流に基づいて当該開閉弁が固着しているか否かを判定する固着判定を実施し、
前記固着判定により前記開閉弁が固着していると判定された場合に、前記開閉弁に閉弁指令を出す閉弁制御を実施し、その後、前記潤滑油噴射要求の有無にかかわらず前記開弁制御および前記閉弁制御を繰り返す、ことを特徴とするエンジンの潤滑装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエンジンの潤滑装置において、
前記制御装置は、
前記オイル通路内の潤滑油の圧力の目標値である目標油圧を設定して当該目標油圧が実現されるように前記ポンプ吐出圧変更装置を制御し、
前記開弁制御の実施時、前記目標油圧を上昇させるとともに、前記オイル通路内の潤滑油の圧力が前記目標油圧に到達した後に前記開閉弁に開弁指令を出す、ことを特徴とするエンジンの潤滑装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエンジンの潤滑装置において、
前記制御装置は、
2回目以降の前記開弁制御の後も前記固着判定を都度実施するとともに、当該固着判定により前記開閉弁が固着していると判定された場合に前記閉弁制御を実施し、
前記開弁制御および前記閉弁制御の繰り返し回数が所定の判定回数以上になると、前記開閉弁の固着判定を確定し、前記開弁制御および前記閉弁制御の繰り返しを終了する、ことを特徴とするエンジンの潤滑装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの潤滑装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等に搭載されるエンジンでは、冷却あるいは潤滑を目的として、ピストンに潤滑油を噴射するオイルジェットが設けられる場合がある。例えば、特許文献1には、内側を潤滑油が流通するオイル通路と、オイル通路から潤滑油が導入されるオイルジェットと、オイル通路に潤滑油を圧送するオイルポンプとを備えるエンジンが開示されている。また、このようなエンジンにおいて、適切なタイミングでピストンに潤滑油が噴射されるように、オイルジェットよりも上流側のオイル通路にオイル通路を開閉するソレノイド式の開閉弁を設けることが検討されている。
【0003】
ここで、上記開閉弁をエンジンに設けた場合には、これが固着しているか否かを判定することが求められる。ソレノイド式の開閉弁の固着判定としては、特許文献2に開示されているように、ソレノイド式の開閉弁を流れる電流に基づいて行うことが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6163831号公報
【特許文献2】特開2004-309374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、オイルジェットを有するエンジンにおいて、オイルジェットよりも上流側のオイル通路にオイル通路を開閉するソレノイド式の開閉弁を設ければ、より確実に適切なタイミングでピストンに潤滑油を噴射できる。しかしながら、上記開閉弁を設けると、当該開閉弁の開弁時にオイル通路内の油圧が低下する。この結果、オイルジェットから噴射される潤滑油が適切量よりも少なくなるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、ピストンに潤滑油を適切に噴射できるエンジンの潤滑装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためのものとして、本発明は、気筒および当該気筒に摺動可能に収容されたピストンを有するエンジン本体と、潤滑油を貯留するオイルパンとを備えるエンジンの潤滑装置であって、内側を潤滑油が流通するオイル通路と、前記オイルパン内の潤滑油を前記オイル通路に圧送するオイルポンプと、前記オイルポンプの吐出圧を変更可能なポンプ吐出圧変更装置と、前記オイル通路から導入された潤滑油を前記ピストンに噴射するオイルジェットと、前記オイルジェットよりも上流側の前記オイル通路を開閉するソレノイド式の開閉弁と、前記ポンプ吐出圧変更装置および前記開閉弁を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記ピストンに潤滑油を噴射する潤滑油噴射要求が出されると、前記オイルポンプの吐出圧が上昇するように前記ポンプ吐出圧変更装置を制御しつつ前記開閉弁に開弁指令を出す開弁制御を実施し、前記開弁制御の際に前記開閉弁を流れる電流に基づいて当該開閉弁が固着しているか否かを判定する固着判定を実施し、前記固着判定により前記開閉弁が固着していると判定された場合に、前記開閉弁に閉弁指令を出す閉弁制御を実施し、その後、前記潤滑油噴射要求の有無にかかわらず前記開弁制御および前記閉弁制御を繰り返す、ことを特徴とする。
【0008】
この構成では、オイルジェットよりも上流側のオイル通路にオイル通路を開閉するソレノイド式の開閉弁が設けられて、ピストンに潤滑油を噴射する潤滑油噴射要求が出されると上記の開閉弁に開弁指令が出される。そのため、より適切なタイミングでオイルジェットからピストンに潤滑油を噴射させることができる。しかも、この構成では、潤滑油噴射要求が出されるとオイルポンプの吐出圧が高められる。そのため、開閉弁の開弁に伴ってオイル通路内の油圧が過度に低い圧力まで低下するのを抑制でき、オイルジェットから適切な量の潤滑油を確実に噴射させることができる。
【0009】
また、この構成では、開閉弁に開弁指令時に開閉弁を流れる電流に基づいて当該開閉弁が固着しているか否かを判定しており、開閉弁の固着を適切に判定できる。さらに、開閉弁の固着が判定された場合は、開閉弁に閉弁指令が出された後、オイルポンプの吐出圧を高めつつ開閉弁に開弁指令を出す制御と閉弁指令を出す制御とが交互に実施される。つまり、開閉弁に高い圧力がかけられた状態で開閉弁の開閉が試みられることになる。そのため、開閉弁に付着したデポジットを除去できる可能性を高くできる。
【0010】
前記構成において、好ましくは、前記制御装置は、前記オイル通路内の潤滑油の圧力の目標値である目標油圧を設定して当該目標油圧が実現されるように前記ポンプ吐出圧変更装置を制御し、前記開弁制御の実施時、前記目標油圧を上昇させるとともに、前記オイル通路内の潤滑油の圧力が前記目標油圧に到達した後に前記開閉弁に開弁指令を出す(請求項2)。
【0011】
この構成によれば、より確実に、オイル通路内の潤滑油の圧力が上昇した後に開閉弁を開弁できる。そのため、開閉弁の開弁時にオイル通路内の潤滑油の圧力が低下するのをより確実に防止できる。
【0012】
前記構成において、好ましくは、前記制御装置は、2回目以降の前記開弁制御の後も前記固着判定を都度実施するとともに、当該固着判定により前記開閉弁が固着していると判定された場合に前記閉弁制御を実施し、前記開弁制御および前記閉弁制御の繰り返し回数が所定の判定回数以上になると、前記開閉弁の固着判定を確定し、前記開弁制御および前記閉弁制御の繰り返しを終了する(請求項3)。
【0013】
この構成によれば、開閉弁の固着を適切に判定しつつ、開弁制御と閉弁制御が過度に繰り返されるのを回避できる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明のエンジンの潤滑装置によれば、ピストンに適切に潤滑油を噴射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係るエンジンの概略構成を示す断面図である。
【
図2】潤滑油供給システムの概略構成を示す図である。
【
図3】エンジンに形成されたオイル経路を示す概略斜視図である。
【
図4】エンジンの制御構成を示すブロック図である。
【
図5】潤滑油制御の手順を示すフローチャートである。
【
図7】オイルジェット用バルブに流れる電流の様子を示した図である。
【
図8】オイルジェット用バルブ開弁時の各パラメータの時間変化を示したタイムチャートである。
【
図9】オイルジェット用バルブの固着判定が確定した時の各パラメータの時間変化を示したタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(エンジンの構成)
以下、図面に基づいて、本発明に係る潤滑装置の実施形態を詳細に説明する。
図1は、潤滑装置が適用されるエンジンEの概略構成を示す断面図である。エンジンEは、例えば、走行用の動力源として車両に搭載される。
【0017】
エンジンEは、
図1の紙面に垂直な方向に並ぶ複数の気筒6(
図1ではそのうちの一つのみを示す)を有する多気筒エンジンである。エンジンEは、エンジン本体10と、エンジン本体10の各部を潤滑する潤滑油が貯留されるオイルパン4(
図2、
図3)と、エンジン本体10に導入される吸気が流通する吸気通路70と、エンジン本体10から導出される排気が流通する排気通路60とを有する。
【0018】
エンジン本体10は、気筒6が形成されたシリンダブロック2と、シリンダブロック2の下面に取り付けられたクランクケース3と、シリンダブロック2の上面に取り付けられたシリンダヘッド1とを有する。気筒6には、ピストン5が往復摺動可能に収容されている。ピストン5の上方には燃焼室11が区画されている。各ピストン5は、それぞれコネクティングロッド7を介してクランク軸8と連結されている。燃焼室11には、不図示の燃料供給装置から燃料が供給され、当該燃料と空気との混合気が燃焼室11で燃焼することでピストン5は上下方向に往復動する。クランク軸8は、ピストン5の往復動に伴ってクランク軸8の中心軸回りに回転する。
【0019】
シリンダヘッド1には、各燃焼室11とそれぞれ連通する吸気ポート13および排気ポート12が形成されているとともに、各吸気ポート13をそれぞれ開閉する吸気弁15および各排気ポート12をそれぞれ開閉する排気弁14が組み付けられている。各吸気弁15はシリンダヘッド1に設けられた吸気動弁機構15Aによって開閉駆動され、各排気弁14はシリンダヘッド1に設けられた排気動弁機構14Aによって開閉駆動される。
【0020】
シリンダブロック2には、内側を潤滑油がそれぞれ流通するメインギャラリ32およびサブギャラリ35が形成されている。メインギャラリ32は、気筒6を区画するシリンダブロック2のエンジン幅方向(気筒6の配列方向である気筒配列方向と直交する方向)の一方側の壁に気筒配列方向に延びるように形成されている。サブギャラリ35は、シリンダブロック2のエンジン幅方向の他方側の壁に気筒配列方向に延びるように形成されている。本実施形態では、メインギャラリ32は吸気側(吸気ポート13が形成された側)の側壁に設けられており、サブギャラリ35は排気側(排気ポート12が形成された側)の側壁に設けられている。
【0021】
シリンダヘッド1には、クランク軸8の回転速度つまりエンジン回転数を検出するクランク角センサSN1が取り付けられている。
【0022】
吸気通路70は、各吸気ポート13と連通するようにエンジン本体10の一側面に接続されている。排気通路60は、各排気ポート12と連通するようにエンジン本体10の他側面に接続されている。
【0023】
(潤滑油供給システム)
エンジンEにおける潤滑油の供給システムについて次に説明する。
図2は、潤滑油供給システムの概略構成を示す図である。
図3は、エンジンEに形成されたオイル経路を示す概略斜視図である。潤滑油をエンジン本体10の各部に潤滑するための装置として、エンジンEは、上記のオイルパン4、メインギャラリ32、サブギャラリ35およびオイルジェット42に加えて、オイルポンプ21、ポンプ用バルブ51、オイルジェット用バルブ52を有する。ポンプ用バルブ51は、請求項の「ポンプ吐出圧変更装置」に相当し、オイルジェット用バルブ52は、請求項の「開閉弁」に相当する。
【0024】
オイルポンプ21は、オイルパン4に貯留されている潤滑油をエンジン本体10の各部に圧送するポンプである。本実施形態では、オイルポンプ21として可変容量式のものが用いられる。可変容量式のオイルポンプ21の構成は従来から知られており、ここでは簡単に説明する。オイルポンプ21は、所定の軸回りに回転駆動されるロータ21Rと、ロータ21Rの外周側にロータ21Rに対して偏心可能に配設されて当該ロータ21Rとともに作動油室であるポンプ室を区画するカムリング21Aと、吸入口21Bと、吐出口21Cとを有し、吸入口21Bからポンプ室に導入されたオイルをロータ21Rの回転によって加圧して吐出口21Cから吐出する。また、オイルポンプ21は、外部から潤滑油が導入される圧力室21Dを有するとともに、圧力室21Dに導入される潤滑油の量の増減によってカムリング21Aが揺動してポンプ室の容積が変更されるように構成されており、オイルポンプ21の吐出圧は圧力室21Dに導入される潤滑油の量に応じて変更されるようになっている。
【0025】
オイルポンプ21の圧力室21Dには、これに潤滑油を供給するためのリターン通路39が接続されている。ポンプ用バルブ51は、リターン通路39を開閉するソレノイド式のバルブである。ポンプ用バルブ51は、後述するコントローラ100からの給電によってその開度が変更されるようになっている。ポンプ用バルブ51の開度が大きいほどリターン通路39を通じて圧力室21Dに導入される潤滑油の量は多くなり、オイルポンプ21の吐出圧は高められる。
【0026】
オイルポンプ21の吸入口21Bには、オイルパン4に臨むオイルストレーナ22が連結されている。オイルポンプ21には、オイルストレーナ22により比較的大きな異物が除去された潤滑油が導入される。オイルポンプ21の吐出口21Cには、第1油路31が接続されている。第1油路31には、上流側から順に、オイルフィルタ23、オイルクーラ24が配設されている。潤滑油は第1油路31の通過中に、オイルフィルタ23によりろ過され、オイルクーラ24にて冷却される。
【0027】
第1油路31の下流端には上記のメインギャラリ32に接続されており、オイルポンプ21から第1油路31に吐出された潤滑油は、オイルフィルタ23およびオイルクーラ24を通過した後、メインギャラリ32に導入される。
【0028】
本実施形態では、第1油路31はメインギャラリ32の長手方向の途中部に接続されており、この接続部分において潤滑油はメインギャラリ32の長手方向の一方側と他方側に分岐する。
【0029】
メインギャラリ32からは、複数のベアリング用オイル供給部41が下向きに延びている。ベアリング用オイル供給部41は、各コネクティングロッド7を回転自在に連結するクランク軸8のクランクピンに配置されたメタルベアリングにそれぞれ潤滑油を供給する通路である。本実施形態では、6つのコネクティングロッド7に対応して、メインギャラリ32に6つのベアリング用オイル供給部41が気筒配列方向(メインギャラリ32の長手方向)に等間隔に配設されている。メインギャラリ32に導入された潤滑油は、これらベアリング用オイル供給部41にそれぞれ導入される。
【0030】
メインギャラリ32の長手方向の一方側の端部には、上記のリターン通路39が接続されている。メインギャラリ32の長手方向の他方側の端部には、シリンダヘッド1に向かう第2油路34が接続されている。第2油路34は、吸気動弁機構15Aおよび排気動弁機構14Aと連通しており、第2油路34に導入された潤滑油はこれら動弁機構14A、15Aに供給される。
【0031】
メインギャラリ32には、メインギャラリ32内の潤滑油の圧力である油圧を検出する油圧センサSN4が取り付けられている。油圧センサSN4は、メインギャラリ32とリターン通路39との接続部分付近に設けられている。
【0032】
メインギャラリ32の途中部には、メインギャラリ32とサブギャラリ35とを連通する連通路33が接続されている。サブギャラリ35には、連通路33を通じてメインギャラリ32から潤滑油が供給される。
【0033】
サブギャラリ35からは、各ピストン5にそれぞれ潤滑油を噴射する複数のオイルジェット42が延びている。本実施形態では6つのピストン5に対応して6つのオイルジェット42がサブギャラリ35に設けられている。各オイルジェット42は、その先端がそれぞれ各ピストン5の下方に位置するように、気筒配列方向(サブギャラリ35の長手方向)に並設されている。各オイルジェット42は、その先端部から対応するピストン5の下面に潤滑油をそれぞれ噴射する。ピストン5は、オイルジェット42からのオイル噴射を受けて冷却される。
【0034】
連通路33には、連通路33を開閉するソレノイド式のオイルジェット用バルブ52が設けられている。オイルジェット用バルブ52は、後述するコントローラ100からの給電によって連通路33を開閉する。オイルジェット用バルブ52が開弁すると、連通路33を通じて潤滑油がサブギャラリ35および各オイルジェット42に供給される。各オイルジェット42にはチェックバルブ42Aが設けられている。オイルジェット用バルブ52が開弁してサブギャラリ35に潤滑油が供給され、サブギャラリ35内の圧力が所定値以上になるとチェックバルブ42Aが開弁して潤滑油がピストン5に噴射される。
【0035】
オイルジェット用バルブ52には、電流センサSN3が内蔵されており、電流センサSN3はオイルジェット用バルブ52を流れる電流を検出する。
【0036】
上記のようにして各動弁機構14A、15A、メタルベアリングおよびピストン5に供給された潤滑油はこれらを潤滑後滴下してオイルパン4に流入する。
【0037】
ここで、本実施形態では、潤滑油が内側を流通する上記の各油路のうち、少なくとも、上記の第1油路31、メインギャラリ32、連通路33およびサブギャラリ35を含む油路が、請求項の「オイル通路」に相当する。また、メインギャラリ32は、潤滑油の流れ方向についてサブギャラリ35およびオイルジェット42よりも上流側に位置しており、オイルジェット用バルブ52は、潤滑油が流れる油路において、オイルジェット42よりも上流側の部分に設けられている。
【0038】
(制御系統)
エンジンEの制御構成を、
図4のブロック図に基づいて説明する。エンジンEは、コントローラ100によって統括的に制御される。コントローラ100は、CPU、ROM、RAM等から構成される。コントローラ100は、請求項の「制御装置」に相当する。
【0039】
コントローラ100には、エンジンEに設けられた各種センサからの検出信号が入力される。コントローラ100には、上記のセンサSN1~SN4によって検出された情報(エンジン回転数、吸気量、オイルジェット用バルブ52を流れる電流、油圧)等が逐次入力される。コントローラ100は、上記各情報に基づいて種々の判定や演算等を実行しつつエンジンEの各部を制御する。すなわち、コントローラ100は、オイルポンプ21(ポンプ用バルブ51)およびオイルジェット用バルブ52等と電気的に接続されており、上記演算の結果等に基づいてこれらの機器にそれぞれ制御用の信号を出力する。上記のように、コントローラ100は、ポンプ用バルブ51およびオイルジェット用バルブ52に給電するとともに、給電量を変更することでポンプ用バルブ51の開度を変更するとともにオイルジェット用バルブ52を開閉する。
【0040】
(オイルジェットの制御)
次に、本発明の特徴的な構成である潤滑油の制御について説明する。
図5は、コントローラ100によって実施される潤滑油の制御の手順を示すフローチャートである。
【0041】
まず、コントローラ100は、オイルジェット42からピストン5に潤滑油を噴射させる潤滑油噴射要求が出されたか否かを判定する(ステップS2)。つまり、潤滑油噴射要求のない状態からある状態に切り替わったか否かを判定する。コントローラ100は、エンジンEが所定の潤滑油噴射領域内で運転されているときに潤滑油噴射要求があると判定する。これより、コントローラ100は、エンジンEの運転ポイントが潤滑油噴射領域外から当該領域内に切り替わると潤滑油噴射要求が出されたと判定する。
【0042】
図6は、潤滑油噴射領域を示したマップである。本実施形態では、潤滑油噴射領域は、エンジン回転数が所定の回転数以下でエンジン負荷が所定のエンジン負荷の低速低負荷領域A1に設定されており、エンジンEの運転ポイントが低速低負荷領域A1内のポイントであるときにコントローラ100は潤滑油噴射要求があると判定する。コントローラ100は、エンジン回転数と、吸気量とに基づいてエンジン負荷を算出しており、算出したエンジン負荷と、クランク角センサSN1により検出されたエンジン回転数とに基づいてこの判定を行う。なお、上記の所定の回転数および所定の負荷は予め設定されてコントローラ100に記憶されている。
【0043】
ステップS2の判定がNOであって潤滑油噴射要求が出されたタイミングではない場合(潤滑油噴射要求がない、あるいは、既に潤滑油噴射要求が出されておりこれが維持されている場合)、コントローラ100は、オイルジェット用バルブ52を閉弁あるいは開弁状態に維持して(ステップS20)処理を終了する(ステップS1に戻る)。具体的に、コントローラ100はオイルジェット用バルブ52への給電停止を維持してこれの閉弁を維持し、給電を継続してこれの開弁を維持する。
【0044】
一方、ステップS2の判定がYESであって潤滑油噴射要求が出された場合、コントローラ100は、油圧の目標値である目標油圧を上昇させるとともに、目標油圧が実現されるようにオイルポンプ21の吐出圧を上昇させる(ステップS3)。
【0045】
具体的に、コントローラ100は、潤滑油噴射要求の有無に関わらず、目標油圧を設定し、当該目標油圧が実現されるように、ポンプ用バルブ51の開度を変更してオイルポンプ21の吐出圧を制御している。コントローラ100は、潤滑油噴射要求が出されたタイミングではない場合(潤滑油噴射要求がない、あるいは、既に潤滑油噴射要求が出されておりこれが維持されている場合)は、エンジンの運転状態(エンジン回転数とエンジン負荷等)に基づいて目標油圧を設定する。これに対して、ステップS2の判定がYESであって潤滑油噴射要求が出された場合は、コントローラ100は、潤滑油噴射要求が出されたタイミングではない通常時の目標油圧よりも所定の増圧量分高い圧力を目標油圧に設定する。ここで、コントローラ100の制御(ポンプ用バルブ51の開度の変更)により目標油圧はほぼ実現される。これより、ステップS3では、現在の油圧よりも高い油圧が目標油圧に設定されることになる。なお、上記の増圧量は予め設定されてコントローラ100に記憶されている。
【0046】
次に、コントローラ100は、油圧センサSN4により検出された油圧が、ステップS3で設定した目標油圧以上になったか否かを判定する(ステップS4)。この判定がNOであって油圧が目標油圧未満の場合はステップS4を繰り返し、この判定がYESになるとステップS5に進む。つまり、コントローラ100は、油圧センサSN4により検出された油圧が目標油圧に到達するのを待ってステップS5を実施する。
【0047】
ステップS5にて、コントローラ100は、オイルジェット用バルブ52に開弁指令を出す。具体的に、コントローラ100は、オイルジェット用バルブ52への給電を開始する。また、ステップS5にて、コントローラ100は目標油圧を低下させる。具体的に、コントローラ100は、目標油圧を通常時の目標油圧まで低下させる。
【0048】
次に、コントローラ100は、電流センサSN3により検出された電流に基づいて、オイルジェット用バルブ52に逆起電力が生じたか否かを判定する(ステップS6)。
【0049】
ステップS6の判定結果は、オイルジェット用バルブ52が固着しているか否かの判定に用いられる。
図7は、オイルジェット用バルブ52に給電を行ったときにオイルジェット用バルブ52に流れる電流を示した図であり、実線は正常時(固着していない時)の電流、鎖線は固着時の電流である。オイルジェット用バルブ52が正常であるときは、給電されることでオイルジェット用バルブ52は開弁し、オイルジェット用バルブ52の弁体は移動する。これより、オイルジェット用バルブ52には逆起電力が生じる。この結果、オイルジェット用バルブ52が正常である場合、
図7の実線に示すように、オイルジェット用バルブ52に流れる電流は給電後に上昇した後、一旦低下し、その後再び上昇する。一方、オイルジェット用バルブ52が固着しているときは、逆起電力が生じないため、
図7の鎖線に示すように、オイルジェット用バルブ52に流れる電流は、給電後、低下することなく増加していく、つまり、単調増加していく。
【0050】
上記より、コントローラ100は、オイルジェット用バルブ52への給電開始後、電流センサSN3により検出された電流が低下しなかった場合は、オイルジェット用バルブ52に逆起電力が生じなかったと判定する。そして、オイルジェット用バルブ52に逆起電力が生じなかったと判定した場合(ステップS6の判定がNOの場合)、コントローラ100は、オイルジェット用バルブ52は正常であると判定する(ステップS30)。また、コントローラ100は、後述する仮固着カウンタを0にリセットする。また、ステップS30の実施時点で潤滑油噴射要求がまだ出されている場合は、コントローラ100は、オイルジェット用バルブ52に給電を行ってオイルジェット用バルブ52を開弁させ、ステップS30の実施時点で潤滑油噴射要求がなくなった場合は、コントローラ100は、オイルジェット用バルブ52への給電停止およびオイルジェット用バルブ52の閉弁を維持する。
【0051】
一方、コントローラ100は、オイルジェット用バルブ52への給電開始後、電流センサSN3が一旦低下した場合は、オイルジェット用バルブ52に逆起電力が生じたと判定する。そして、オイルジェット用バルブ52に逆起電力が生じなかったと判定した場合(ステップS6の判定がNOの場合)、コントローラ100は、オイルジェット用バルブ52が固着していると仮判定する(ステップS7)。
【0052】
ステップS7の次は、コントローラ100は、オイルジェット用バルブ52に閉弁指令を出す(ステップS8)。次に、コントローラ100は、オイルジェット用バルブ52への給電を停止する。また、コントローラ100は、仮固着カウンタをカウントアップ(1を足す)する(ステップS9)。このように、仮固着カウンタは、オイルジェット用バルブ52の固着が仮判定されるとカウントアップされるカウンタであり、上記のようにオイルジェット用バルブ52が正常であると判定されると0にリセットされる。また、仮固着カウンタは、エンジンEが停止すると0にリセットされる。
【0053】
ステップS9の後は、コントローラ100は、仮固着カウンタが所定の判定回数以上になったか否かを判定する(ステップS10)。判定回数は2以上の回数に予め設定されてコントローラ100に記憶されている。本実施形態では、判定回数は6回に設定されている。
【0054】
ステップS10の判定がNOであって仮固着カウンタが判定回数未満の場合、コントローラ100は、ステップS3に戻り、ステップS3以降を繰り返す。つまり、目標油圧を現在の油圧よりも高い圧力に設定して、この目標油圧が実現されるようにオイルポンプ用バルブ51の開度を変更し、油圧が目標油圧に到達すると目標油圧を低下させるとともにオイルジェット用バルブ52に開弁指令を出して、このときにオイルジェット用バルブ52に逆起電力が生じたか否かを判定する。そして、逆起電力が生じた場合はオイルジェット用バルブ52が正常であると判定して仮固着カウンタをリセットするとともに潤滑油噴射要求に応じてオイルジェット用バルブ52を開閉する。また、逆起電力が生じなかった場合はオイルジェット用バルブ52が固着していると判定して仮固着カウンタをカウントアップする。
【0055】
一方、ステップS10の判定がYESであって仮固着カウンタが判定回数以上の場合、コントローラ100は、オイルジェット用バルブ52が固着判定を確定して(ステップS11)、処理を終了する。なお、コントローラ100は、オイルジェット用バルブ52の固着判定を確定した場合、車両に設けられて乗員に異常等を報知する報知手段に対して、オイルジェット用バルブ52の故障を報知するように指令を出す。また、オイルジェット用バルブ52の固着判定を確定すると、コントローラ100は、ステップS1には戻らず、エンジンEが再始動されるまで上記のステップS1~S30の処理は停止する。
【0056】
ここで、上記のステップS3~S5の制御(ステップS5のうちの目標油圧を低下する制御を除く)が請求項の「開弁制御」に相当する。また、上記のステップS6、S7の制御が請求項の「固着判定」に相当し、上記のステップS8の制御が請求項の「閉弁制御」に相当する。また、上記の仮固着カウンタは請求項の「開弁制御および閉弁制御お繰り返し回数」に相当する。
【0057】
(作用等)
図8、
図9は、上記の制御を実施したときの各パラメータの時間変化を示したタイムチャートである。
図8は、オイルジェット用バルブ52が正常であると判定されたときのタイムチャートである。
図9は、オイルジェット用バルブ52の固着判定が確定したときのタイムチャートである。なお、
図8の電流(オイルジェット用バルブ52を流れる電流)のグラフにおける鎖線は、オイルジェット用バルブ52が固着したときのグラフである。また、
図8および
図9の潤滑油噴射要求フラグは、オイルジェット42からピストン5に潤滑油を噴射させる要求があった場合に1となり、当該要求がない場合に0となるフラグである。また、
図9の固着フラグは、オイルジェット用バルブ52の固着判定が確定すると1となり、その他の場合に0となるフラグである。また、
図9では、オイルジェット用バルブ52に対する開弁指令を単に開弁指令と表している。
【0058】
図8に示すように、時刻t1にてオイルジェット42からピストン5に潤滑油を噴射させる要求が出されて潤滑油噴射要求フラグが0から1になると、目標油圧が高められる。目標油圧が高められるとオイルポンプ21の吐出圧が高められる。これより、時刻t1後、油圧(メインギャラリ32内の油圧)は徐々に上昇する。時刻t2にて油圧が目標油圧に到達すると、コントローラ100からオイルジェット用バルブ52に対して開弁指令が出される。つまり、オイルジェット用バルブ52への給電が開始される。これより、オイルジェット用バルブ52に流れる電流は上昇する。このとき、実線で示すように、オイルジェット用バルブ52に流れる電流が一旦低下した後上昇していくと、オイルジェット用バルブ52は正常であると判定される。そして、オイルジェット用バルブ52が正常であると判定されることで、時刻t2後も(潤滑油要求フラグが1であることに伴い)オイルジェット用バルブ52は開弁状態に維持される。ここで、時刻t2にて油圧が目標油圧に到達してオイルジェット用バルブ52に対して開弁指令が出されると目標油圧は低減される。また、オイルジェット用バルブ52が正常に開弁すると、サブギャラリ35およびオイルジェット42に潤滑油が導入されるとともにオイルジェット42から潤滑油が噴射されることで、メインギャラリ32内の油圧は低下する。これより、時刻t2後、実油圧(実際のメインギャラリ32の油圧)は低下し、その後目標油圧に復帰する。
【0059】
図9に示すように、オイルジェット用バルブ52が固着している場合も、
図8と同様に、時刻t10にてオイルジェット42からピストン5に潤滑油を噴射させる要求が出されて潤滑油噴射要求フラグが1になると、目標油圧が高められ、油圧(メインギャラリ32内の油圧)が徐々に上昇する。また、時刻t11にて油圧が目標油圧に到達すると、コントローラ100からオイルジェット用バルブ52に対して開弁指令が出されて、オイルジェット用バルブ52に流れる電流が上昇する。ただし、
図9の例では、オイルジェット用バルブ52が固着していることで、オイルジェット用バルブ52に流れる電流は単調増加する。これより、
図9の例では、オイルジェット用バルブ52が固着していると仮判定され、仮固着カウンタがカウントアップされる。そして、オイルジェット用バルブ52に対して閉弁指令が出されてオイルジェット用バルブ52への給電が停止される。その後、再び、時刻t12にて目標油圧が高められ、油圧が目標油圧に到達した時刻13にてオイルジェット用バルブ52に開弁指令が出される。
図9の例では、時刻t13後においてもオイルジェット用バルブ52に流れる電流が単調増加となることで、オイルジェット用バルブ52が固着していると仮判定され、仮固着カウンタがカウントアップされる。このようにして、
図9の例では、その後も、目標油圧および油圧の上昇(時刻t14、t15,t16、t17)と、オイルジェット用バルブ52への開弁指令→閉弁指令が繰り返され、仮固着カウンタが6回となった時刻t18にてオイルジェット用バルブ52の固着判定が確定される。
【0060】
以上のように、上記実施形態では、オイルジェット42が設けられたサブギャラリ35と、メインギャラリ32とをつなぐ連通路33であって潤滑油が流通する油路のうちのサブギャラリ35よりも上流側の通路に、この通路(連通路33)を開閉するオイルジェット用バルブ52が設けられて、ピストン5に潤滑油を噴射する要求が出されるとオイルジェット用バルブ52に開弁指令が出されるように構成されている。
【0061】
そのため、より適切なタイミングでオイルジェット42からピストン5に潤滑油を噴射させることができる。具体的に、仮にオイルジェット用バルブ52を設けない構成では、チェックバルブ42Aのみによってオイルジェット42からの潤滑油の噴射/停止が切り替えられるため、潤滑油の温度が低くその粘性が高いとき等において予期せず(オイルジェット42からピストン5に潤滑油を噴射させる要求がないにも関わらず)オイルジェット42から潤滑油が噴射されるおそれがある。これに対して、上記実施形態によれば、ピストン5に潤滑油を噴射する要求が出されるとオイルジェット用バルブ52が開弁され、上記要求がないときはオイルジェット用バルブ52が閉弁されるので、上記要求に応じて適切にオイルジェット42からピストン5に潤滑油を噴射することができる。
【0062】
また、上記実施形態では、ピストン5に潤滑油を噴射する要求が出されるとオイルポンプ21の吐出圧が高められる。そのため、オイルジェット用バルブ52の開弁に伴ってメインギャラリ32内の油圧が過度に低い圧力まで低下するのを抑制でき、オイルジェット42から適切な量の潤滑油を確実に噴射させることができる。つまり、上記のように、オイルジェット用バルブ52が開弁するとメインギャラリ32内の油圧は低下するが、オイルジェット用バルブ52の開弁前にオイルポンプ21の吐出圧が高められてメインギャラリ32内の油圧が高められていることで、メインギャラリ32内の油圧は比較的高い値に維持される。そのため、オイルジェット42への潤滑油の導入量が過度に少なくなるのを防止できる。
【0063】
特に、上記実施形態では、オイルジェット用バルブ52に開弁指令を出す際に、目標油圧を上昇させて、油圧センサSN4により検出された油圧が目標油圧に到達した後に開弁指令を出している。そのため、確実に、メインギャラリ32内の油圧が上昇した後にオイルジェット用バルブ52を開弁させることができ、オイルジェット42への潤滑油の導入量が過度に少なくなるのをより確実に防止できる。
【0064】
また、ソレノイド式のバルブでは、その開弁時に逆起電力が生じてこれを流れる電流が一旦低下する。上記実施形態では、これを利用して、ソレノイド式のオイルジェット用バルブ52を流れる電流に基づいてオイルジェット用バルブ52が開弁したか否かが判定される。従って、オイルジェット用バルブ52の固着を適切に判定できる。
【0065】
また、上記実施形態では、オイルジェット用バルブ52の固着が判定されると、オイルジェット用バルブ52に閉弁指令を出すという制御と、オイルポンプ21の吐出圧を高めつつオイルジェット用バルブ52に開弁指令を出すという制御とが交互に実施される。これより、オイルジェット用バルブ52周辺に付着したデポジットに対して、潤滑油から高い圧力をかけるとともにオイルジェット用バルブ52からその開閉方向の力を付与することができる。従って、デポジットを除去してオイルジェット用バルブ52の固着を解消できる可能性を高くできる。
【0066】
特に、上記実施形態では、オイルジェット用バルブ52に開弁指令が出された後、オイルポンプ21の吐出圧が一旦低減される。そのため、オイルジェット用バルブ52周辺に潤滑油の流動を生じさせてデポジットの除去をより促進できる。
【0067】
また、上記実施形態では、仮固着カウンタが判定回数以上となると、つまり、オイルポンプ21の吐出圧を高めつつオイルジェット用バルブ52に開弁指令を出すという制御と、オイルジェット用バルブ52に閉弁指令を出すという制御の繰り返し回数が判定回数以上になると、オイルジェット用バルブ52の固着判定が確定されて、上記制御の繰り返しが終了されてオイルジェット用バルブ52に閉弁指令が出される。これより、オイルジェット用バルブ52の固着を適切に判定しつつ、上記制御が過度に繰り返されるのを回避できる。
【0068】
(変形例)
上記実施形態では、エンジンが直列多気筒エンジンの場合を説明したが、エンジンの具体的な構成は上記に限られない。例えば、エンジンの気筒数は上記に限られない。
【0069】
また、上記実施形態では、オイルポンプ21が可変容量式のポンプであって、ポンプ用バルブ51によってオイルポンプ21の吐出圧が変更される場合を説明したが、オイルポンプの具体的構成およびオイルポンプの吐出圧を変更するための具体的構成は上記に限られない。例えば、オイルポンプとして電動式のものを用いて、オイルポンプへの通電電流の変更によってオイルポンプの吐出圧を変更してもよい。
【0070】
また、判定回数の具体的な値は上記に限られない。
【符号の説明】
【0071】
4 オイルパン
5 ピストン
6 気筒
10 エンジン本体
21 オイルポンプ
31 第1油路(オイル通路)
32 メインギャラリ(オイル通路)
33 連通路(オイル通路)
35 サブギャラリ(オイル通路)
42 オイルジェット
51 オイルポンプ用バルブ(ポンプ吐出圧変更装置)
52 オイルジェット用バルブ(開閉弁)
100 コントローラ(制御装置)