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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139627
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】作業時間算出システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/06 20230101AFI20230927BHJP
【FI】
G06Q10/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045247
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】390023249
【氏名又は名称】国際航業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】弁理士法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】今野 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】杉本 崇
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA06
(57)【要約】
【課題】本願発明の課題は、従来の問題を解決することであり、すなわち、対象物の形状や配置を考慮したうえで作業者に係る作業時間を算出することができる作業時間算出システムを提供することである。
【解決手段】本願発明の作業時間算出システムは、位置が変化する対象物に関する移動体の作業時間を算出するシステムであって、受信装置と対象物用電波装置、移動体用電波装置、平面位置算出手段、対象物記憶手段、移動体記憶手段、領域設定手段、作業判定手段を備えたものである。このうち領域設定手段は、対象物識別子に基づいて対応する対象物の平面形状を対象物記憶手段から読み出すとともに、平面位置算出手段が求めた対象物用電波装置の平面位置に基づいて対象物の位置を定めたうえで、配置領域と作業領域を設定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者又は作業用ロボットといった移動体が、位置が変化し得る対象物に対して作業を行った時間を算出するシステムであって、
電波を受信する受信装置と、
前記対象物に設置され、電波を発信する2以上の対象物用電波装置と、
前記移動体に設置され、電波を発信する移動体用電波装置と、
前記受信装置が受信した電波に応じて、電波を発信する平面位置を求める平面位置算出手段と、
前記対象物を特定する対象物識別子と、該対象物の平面形状と、を関連付けて記憶する対象物記憶手段と、
前記移動体を特定する移動体識別子と、該移動体の属性情報と、を関連付けて記憶する移動体記憶手段と、
前記対象物の平面位置及び平面形状に基づいて該対象物の配置領域を設定するとともに、該配置領域から拡張された作業領域を設定する領域設定手段と、
前記平面位置算出手段が求めた前記移動体用電波装置の平面位置が、前記作業領域内にあるときに、前記移動体が前記対象物に係る作業を行っている作業状態として判定する作業判定手段と、を備え、
前記領域設定手段は、前記対象物用電波装置に係る前記対象物識別子に基づいて対応する前記対象物の平面形状を前記対象物記憶手段から読み出すとともに、前記平面位置算出手段が求めた該対象物用電波装置の平面位置に基づいて該対象物の位置を定めたうえで前記配置領域及び前記作業領域を設定し、さらに2以上の該対象物用電波装置の位置に基づいて1又は2以上の基線を生成し、
また前記領域設定手段は、前回求められた前記基線の方位である前回基線方位と、今回求められた前記基線の方位である今回基線方位と、が相違するときであって、該前回基線方位と該今回基線方位との角度差があらかじめ定めた角度差閾値を下回るときは、該前回基線方位が変化していないとして該対象物の前記配置領域を設定し、
前記作業判定手段は、前記移動体用電波装置に係る前記移動体識別子に基づいて対応する前記移動体の属性情報を前記移動体記憶手段から読み出すとともに、前記作業状態として判定した時間を該移動体に係る作業時間として出力する、
ことを特徴とする作業時間算出システム。
【請求項2】
作業者又は作業用ロボットといった移動体が、位置が変化し得る対象物に対して作業を行った時間を算出するシステムであって、
電波を受信する発信装置と、
前記対象物に設置され、電波を受信する2以上の対象物用電波装置と、
前記移動体に設置され、電波を受信する移動体用電波装置と、
前記対象物用電波装置と前記移動体用電波装置が受信した電波に応じて、該対象物用電波装置と該移動体用電波装置が電波を受信する平面位置を求める平面位置算出手段と、
前記対象物を特定する対象物識別子と、該対象物の平面形状と、を関連付けて記憶する対象物記憶手段と、
前記移動体を特定する移動体識別子と、該移動体の属性情報と、を関連付けて記憶する移動体記憶手段と、
前記対象物の平面位置及び平面形状に基づいて該対象物の配置領域を設定するとともに、該配置領域から拡張された作業領域を設定する領域設定手段と、
前記平面位置算出手段が求めた前記移動体用電波装置の平面位置が、前記作業領域内にあるときに、前記移動体が前記対象物に係る作業を行っている作業状態として判定する作業判定手段と、を備え、
前記領域設定手段は、前記対象物用電波装置に係る前記対象物識別子に基づいて対応する前記対象物の平面形状を前記対象物記憶手段から読み出すとともに、前記平面位置算出手段が求めた該対象物用電波装置の平面位置に基づいて該対象物の位置を定めたうえで前記配置領域及び前記作業領域を設定し、さらに2以上の該対象物用電波装置の位置に基づいて1又は2以上の基線を生成し、
また前記領域設定手段は、前回求められた前記基線の方位である前回基線方位と、今回求められた前記基線の方位である今回基線方位と、が相違するときであって、該前回基線方位と該今回基線方位との角度差があらかじめ定めた角度差閾値を下回るときは、該前回基線方位が変化していないとして該対象物の前記配置領域を設定し、
前記作業判定手段は、前記移動体用電波装置に係る前記移動体識別子に基づいて対応する前記移動体の属性情報を前記移動体記憶手段から読み出すとともに、前記作業状態として判定した時間を該移動体に係る作業時間として出力する、
ことを特徴とする作業時間算出システム。
【請求項3】
前記平面位置算出手段は、定期的又は断続的に平面位置を求め、
前記作業判定手段は、あらかじめ定めた判定期間に求められた前記移動体用電波装置の平面位置を統計処理することによって統計作業体位置を求めるとともに、該統計作業体位置が前記作業領域内にあるときに前記作業状態として判定し、
また前記作業判定手段は、前記判定期間を移動させながら前記統計作業体位置を求めて前記作業状態を判定する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の作業時間算出システム。
【請求項4】
前記作業判定手段は、同一の前記移動体に係る前記作業状態があらかじめ定めた滞在回数閾値を上回るだけ連続して判定されるまでは暫定作業状態として設定し、同一の該移動体に係る該作業状態が該滞在回数閾値を上回るだけ連続して判定されたときに確定作業状態として設定する、
ことを特徴とする請求項3記載の作業時間算出システム。
【請求項5】
前記作業判定手段は、前記確定作業状態として設定した後に、同一の前記移動体に係る前記作業状態があらかじめ定めた退出回数閾値を上回るだけ連続して判定されないときは、該移動体が前記対象物に係る作業を行っていない非作業状態として判定する、
ことを特徴とする請求項4記載の作業時間算出システム。
【請求項6】
前記領域設定手段は、前記対象物記憶手段によって平面形状が記憶されていない前記対象物に対して、前記配置領域を設定することなく前記作業領域を設定する、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の作業時間算出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、作業対象となる物(以下、単に「対象物」という。)について作業した時間(以下、単に「作業時間」という。)を算出するための技術であり、より具体的には、対象物の形状(特に、平面視の形状)を利用して作業時間をカウントする作業時間算出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
擁壁やボックスカルバート、側溝などは、場所打ちコンクリート工法で構築されることもあるが、プレキャストコンクリート製品を利用することもある。このような製品は、一般的には工場で製造され、場合によっては移動しつつ種々の工程を経たうえで完成されることもある。また、各工程が行われる作業場所ではそれぞれ専門の作業者が配置され、すなわち製品が完成するまでには各作業場所を移動しながら様々な作業者が携わっている。
【0003】
製品の適切な単価を決定するには、材料費や機械損料のほかに作業者の人件費が重要であり、そのためどのような作業者がどの程度その製品の製造に関与したかを把握することが求められる。また、無駄な作業を見つけるなど作業の効率化を図るためにも、やはり作業者ごとの作業時間を測定する必要がある。
【0004】
対象物に対してどの作業者がどの程度作業を行ったか、つまり作業時間の実績を計上しようとする取り組みはこれまでにも種々行われてきた。例えば特許文献1では、作業者と被作業物(対象物)にそれぞれIDタグを設置し、これら両方が受信アンテナの受信可能領域内に入ってきたときに、当対象物に関する当該作業者の作業時間をカウントする技術について提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-115722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示される技術によれば、対象物に関わった作業時間を作業者ごとに記録することができるため、すなわち作業時間の実績を把握することが可能となるため、製品単価の決定や、作業効率化の検討、従業員の評価を実施する場面などで好適に活用することができる。
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示される技術は、受信アンテナの受信可能領域内に作業者(IDタグ)と対象物(IDタグ)が入ってきたことをもって作業時間をカウントするものであり、対象物の形や大きさ、その置かれた位置(配置)などには影響されない。したがって、作業者が対象物から離れているにもかかわらず、つまりその対象物に対してその作業者が何ら関与していないにもかかわらず、作業者と対象物が受信アンテナの受信可能領域内にあれば作業時間をカウントしてしまうという不都合が生じることとなる。
【0008】
本願発明の課題は、従来の問題を解決することであり、すなわち、対象物の形状や配置を考慮したうえで作業者に係る作業時間を算出することができる作業時間算出システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は、対象物を特定するとともに、当該対象物に対応する平面形状に基づいて作業領域を設定し、その作業領域の内側に作業者があるときに「作業状態」として判定する、という点に着目したものであり、従来にはなかった発想に基づいてなされた発明である。
【0010】
本願発明の作業時間算出システムは、位置が変化する「対象物」に関する「移動体(作業者と作業用ロボットとを含む)」の作業時間を算出するシステムであって、受信装置と対象物用電波装置、移動体用電波装置、平面位置算出手段、対象物記憶手段、移動体記憶手段、領域設定手段、作業判定手段を備えたものである。このうち受信装置は、電波を受信するものであり、対象物用電波装置は、対象物に設置され電波を発信するもの、移動体用電波装置は、移動体に設置され電波を発信するもの、平面位置算出手段は、受信装置が受信した電波に応じて「電波を発信する平面位置」を求める手段である。ただし、2以上の対象物用電波装置が対象物に設置される。また対象物記憶手段は、対象物を特定する対象物識別子とその対象物の平面形状とを関連付けて記憶する手段であり、移動体記憶手段は、移動体を特定する移動体識別子とその移動体の属性情報とを関連付けて記憶する手段、領域設定手段は、対象物の平面位置と平面形状に基づいて対象物の配置領域を設定するとともにその配置領域から拡張された作業領域を設定する手段、作業判定手段は、平面位置算出手段が求めた移動体用電波装置の平面位置が作業領域内にあるときに「作業状態(移動体が対象物に係る作業を行っている状態)」として判定する手段である。なお、領域設定手段は、対象物用電波装置に係る対象物識別子に基づいて、対応する対象物の平面形状を対象物記憶手段から読み出すとともに、平面位置算出手段が求めた対象物用電波装置の平面位置に基づいて対象物の位置を定め、2以上の対象物用電波装置の位置に基づいて1又は2以上の基線を生成し、配置領域と作業領域を設定する。また領域設定手段は、前回基線方位(前回求められた基線の方位)と今回基線方位(今回求められた基線の方位)が相違するときであって、前回基線方位と今回基線方位との角度差があらかじめ定めた角度差閾値を下回るときは、前回基線方位が変化していないとして対象物の配置領域を設定する。そして作業判定手段は、移動体用電波装置に係る移動体識別子に基づいて、対応する移動体の属性情報を移動体記憶手段から読み出すとともに、作業状態として判定した時間を移動体に係る作業時間として出力する。
【0011】
本願発明の作業時間算出システムは、受信装置に代えて発信装置を備えたものとすることもできる。この場合、対象物用電波装置と移動体用電波装置は発信装置からの電波を受信するものとされる。また平面位置算出手段は、対象物用電波装置と移動体用電波装置が受信した電波に応じて、「対象物用電波装置と移動体用電波装置が電波を受信する平面位置」を求める手段とされる。
【0012】
本願発明の作業時間算出システムは、「統計作業体位置」に基づいて作業状態を判定するものとすることもできる。この場合の平面位置算出手段は、定期的(あるいは断続的)に平面位置を求める。そして作業判定手段が、あらかじめ定めた判定期間に求められた移動体用電波装置の平面位置を統計処理することによって統計作業体位置を求めるとともに、統計作業体位置が作業領域内にあるときに作業状態として判定する。なお作業判定手段は、判定期間を移動させながら順次、統計作業体位置を求めていく。
【0013】
本願発明の作業時間算出システムは、同一の移動体に係る作業状態があらかじめ定めた滞在回数閾値を上回るだけ連続して判定されるまでは「暫定作業状態」として設定し、同一の移動体に係る作業状態が滞在回数閾値を上回るだけ連続して判定されたときに「確定作業状態」として設定するものとすることもできる。
【0014】
本願発明の作業時間算出システムは、確定作業状態として設定した後に、同一の移動体に係る作業状態があらかじめ定めた退出回数閾値を上回るだけ連続して判定されないときは、その移動体が対象物に係る作業を行っていない「非作業状態」として判定するものとすることもできる。
【発明の効果】
【0015】
本願発明の作業時間算出システムには、次のような効果がある。
(1)対象物の形状や配置に応じて作業者の作業状態を判定することから、より的確に作業時間の実績を把握することができる。
(2)対象物に対象物用電波装置を設置することから、対象物が移動したことも検知することができ、すなわち移動する対象物に関する作業時間も把握することができる。
(3)作業者ごとであって対象物ごとに作業時間の実績を記録することができ、その記録を活用することによって、製品単価の決定や、作業効率化の検討、従業員の評価などを合理的かつ効率的に実施することができる。
(4)前回基線方位と今回基線方位を対比してその較差が小さいときは前回から対象物が移動していないと判断することから、安定して対象物の平面位置を定めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本願発明の作業時間算出システムを使用している状況を模式的に示す平面図。
図2】本願発明の作業時間算出システムの主な構成を示すブロック図。
図3】(a)は長方形の対象物の配置領域に生成された基線に基づいて設定された配置領域を模式的に示す平面図、(b)はL字状の対象物の配置領域に生成された基線に基づいて設定された配置領域を模式的に示す平面図。
図4】平面位置算出手段によって求められた対象物の前回基線と今回基線を模式的に示す平面図。
図5】判定時刻と平面位置、判定結果、判定期間、滞在回数閾値、退出回数閾値との関係を模式的に示すモデル図。
図6】本願発明の作業時間算出システムの主な処理の流れの一例を示すフロー図。
図7】本願発明の作業時間算出システムの主な処理のうち、前回基線方位と今回基線方位を対比したうえで配置領域を設定する流れの一例を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本願発明の作業時間算出システムの一例を、図に基づいて説明する。
【0018】
本願発明の作業時間算出システムは、作業者や作業用ロボットなど移動しながら作業を行う主体(以下、単に「移動体」という。)が、その作業の対象となる客体(つまり、対象物)に対して行った作業時間を算出するものである。図1に示すように、本願発明の作業時間算出システム100を使用するにあたっては、対象物の近傍に受信装置101や発信装置を設置するとともに、対象物には2以上の対象物用電波装置102を設置し、さらに移動体には移動体用電波装置103をそれぞれ設置する。移動体用電波装置103を設置するにあたっては、例えば作業者(移動体)のヘルメットや衣服などに移動体用電波装置103を取り付けることができる。これら対象物用電波装置102や移動体用電波装置103は、電波を発信(あるいは、電波を受信する)することができるもので、一方の受信装置101は、(発信手段としての)対象物用電波装置102や移動体用電波装置103からの電波を受信することができるものであり、発信装置は(受信手段としての)対象物用電波装置102や移動体用電波装置103に電波を発信することができるものである。なお、作業時間算出システム100で取り扱う対象物は、作業場内の小運搬や、作業場外への搬出、作業に伴う位置調整など、その位置が変化し得るものである。
【0019】
作業時間算出システム100は、移動体が対象物の周辺に滞在している期間を作業時間として推定することを一つの技術的特徴としている。対象物に対して何らかの作業を行っている間、移動体はその対象物の周辺にいると考えるわけである。そして「対象物の周辺に滞在しているか」を判定するにあたっては、図1に示すように、配置された対象物が占める領域(以下、単に「配置領域」という。)を設定するとともに、その配置領域から拡張された(いわば、バッファを設けた)領域(以下、「作業領域」という。)を設定し、その作業領域内に移動体が滞在している期間を作業時間としてカウントすることとしている。
【0020】
図2は、本願発明の作業時間算出システム100の主な構成を示すブロック図である。この図に示すように作業時間算出システム100は、受信装置101(あるいは、発信装置)と対象物用電波装置102、移動体用電波装置103、平面位置算出手段104、領域設定手段105、作業判定手段106、対象物記憶手段108、移動体記憶手段109を含んで構成され、さらにディスプレイやプリンタといった出力手段107を含んで構成することもできる。
【0021】
作業時間算出システム100を構成する平面位置算出手段104、領域設定手段105、作業判定手段106は、専用のものとして製造することもできるし、汎用的なコンピュータ装置を利用することもできる。このコンピュータ装置は、CPU等のプロセッサ、ROMやRAMといったメモリを具備しており、さらにマウスやキーボード等の入力手段やディスプレイ(出力手段107)を含むものもあり、例えばパーソナルコンピュータ(PC)やクラウドサーバなどによって構成することができる。
【0022】
また、対象物記憶手段108や移動体記憶手段109は、汎用的コンピュータ(例えば、パーソナルコンピュータや外付けハードディスクドライブ等)の記憶装置を利用することもできるし、データベースサーバに構築することもできる。データベースサーバに構築する場合、ローカルなネットワーク(LAN:Local Area Network)に置くこともできるし、インターネット経由で保存するクラウドサーバとすることもできる。
【0023】
以下、本願発明の作業時間算出システム100を構成する主な要素ごとに詳しく説明する。
【0024】
(対象物用電波装置と移動体用電波装置)
受信装置を設置するケースでは、対象物用電波装置102と移動体用電波装置103は、定期的(あるいは、断続的)に電波を発信するいわゆるトランスミッタと呼ばれるデバイスとすることができる。なお、後述する「基線」を生成するため、対象物には2以上の対象物用電波装置102が設置される。これら対象物用電波装置102と移動体用電波装置103としては、例えばBLEタグや、Beacon(ビーコン)、WiFi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)などを挙げることができる。なお、対象物用電波装置102や移動体用電波装置103が発信する電波には、そのデバイスを特定し得るユニークな識別子(以下、「発信装置ID」という。)が含まれている。つまり、対象物用電波装置102から発信された電波(以下、便宜上ここでは「対象物電波」という。)に含まれる発信装置IDによって、その対象物用電波装置102が設置された対象物を特定することができる。同様に、移動体用電波装置103から発信された電波(以下、便宜上ここでは「移動体電波」という。)に含まれる発信装置IDによって、その移動体用電波装置103が設置された移動体を特定することができる。便宜上ここでは、対象物電波に含まれ対象物を特定することができる発信装置IDのことを特に「対象物識別子」と、移動体電波に含まれ移動体を特定することができる発信装置IDのことを特に「移動体識別子」ということとする。
【0025】
一方、発信装置を設置するケースでは、対象物用電波装置102と移動体用電波装置103は、発信装置からの対象物電波を受信し得るいわゆるレシーバと呼ばれるデバイスとすることができる。もちろん対象物用電波装置102と移動体用電波装置103は、対発信装置が定期的(あるいは、断続的)に発信するたびにその電波を受信する。これら対象物用電波装置102と移動体用電波装置103としては、例えばスマートフォンあるいはタブレットといった携帯端末や、高精度リアルタイム位置測位「Quuppa Intelligent Locating System(登録商標)」に使用される専用のロケータなどを挙げることができる。なおこの場合は、電波を受信する対象物用電波装置102が対象物識別子を、電波を受信する移動体用電波装置103が移動体識別子をそれぞれ有している。
【0026】
(受信装置と発信装置)
既述したとおり受信装置101は、対象物の近傍に設置され、対象物用電波装置102からの対象物電波や、移動体用電波装置103からの移動体電波を受信し得るいわゆるレシーバと呼ばれるデバイスである。もちろん受信装置101は、対象物用電波装置102や移動体用電波装置103が定期的(あるいは、断続的)に発信するたびにその電波を受信する。受信装置101としては、例えばスマートフォンあるいはタブレットといった携帯端末や、高精度リアルタイム位置測位「Quuppa Intelligent Locating System(登録商標)」に使用される専用のロケータなどを挙げることができる。また発信装置は、対象物の近傍に設置され、対象物用電波装置102や移動体用電波装置103に対して定期的(あるいは、断続的)に電波を発信するいわゆるトランスミッタと呼ばれるデバイスである。
【0027】
(対象物記憶手段)
対象物記憶手段108は、複数種類の対象物に関する情報を記憶するものであり、対象物の属性情報と、その対象物に係る対象物識別子とを関連付けた(紐づけた)うえで記憶する手段である。ここで対象物の属性情報とは、対象物の名称や種類、顧客情報、材質、重量などのほか、立体的な形状を表す寸法や角度(特に、内角)、平面的な形状を表す寸法や角度(以下、「平面形状」という。)を含むことができ、さらにその対象物に設置される対象物用電波装置102の数量(ただし、2以上)や設置位置も含むことができる。なお対象物用電波装置102の設置位置とは、対象物の平面形状(外形と大きさ)における相対的な位置のことであり、後述する対象物用電波装置102の平面位置と区別するため、便宜上ここでは「相対配置」ということとする。対象物用電波装置102の相対配置と設置数は、対象物の平面形状に応じてあらかじめ定めておくことができ、例えば、対象物の平面形状が長方形であれば、2以上の対象物用電波装置102を長軸方向の中心線上の特定位置に設置することとするわけである。
【0028】
(移動体記憶手段)
移動体記憶手段109は、複数の移動体に関する情報を記憶するものであり、移動体の属性情報と、その移動体に係る移動体識別子とを関連付けた(紐づけた)うえで記憶する手段である。ここで移動体の属性情報とは、作業者の氏名や職種、経歴、年齢、作業時間履歴、あるいは作業ロボットの種別や型番、対応可能作業、稼働時間履歴などを含むことができる。また移動体記憶手段109は、作業時間算出システム100によって出力された作業時間を移動体ごと(つまり、移動体識別子ごと)に記憶することができ、さらにその作業時間を作業時間履歴や稼働時間履歴に加算した(つまり、更新した)うえで記憶することもできる。なお、対象物記憶手段108と移動体記憶手段109は、それぞれ異なるデータベースサーバ(あるいは、汎用的コンピュータの記憶装置)に構築してもよいし、1つのデータベースサーバを兼用して構築してもよい。
【0029】
(平面位置算出手段)
平面位置算出手段104は、受信装置101が受信した電波(到達角度、あるいは電波強度など)に基づいて、対象物用電波装置102や移動体用電波装置103が設置された位置座標を求める手段である。なお平面位置算出手段104は、受信装置101などが電波を受信するたびに演算処理する仕様とすることもできるし、ある程度受信間隔をあけて(受信回数を間引いて)演算処理する仕様とすることもできる。一般的に、接近した場所で発信された電波は高強度で受信され、逆に離れた場所で発信された電波は低強度で受信される。したがって、受信した電波強度に応じてその距離を推定することができ、さらにその電波を発信した地点(以下、単に「発信点」という。)の座標を求めることもできる。すなわち、受信装置101などが受信した電波を利用すれば、対象物用電波装置102や移動体用電波装置103の座標を求めることができ、これにより対象物の位置や移動体の位置を把握することができる。なお、後述するように受信装置101が受信した電波の強度に基づいて、対象物用電波装置102や移動体用電波装置103の2次元座標を求めることもできるし、3次元座標を求めることもできる。ここで、2次元座標とは水平面に投影した位置を示す座標であり、一方、3次元座標とは2次元座標に加え鉛直方向の位置(つまり、高さ)を示す座標である。便宜上ここでは、2次元座標のことを「平面位置」ということとする。
【0030】
受信装置101を設置する場合、平面位置算出手段104が発信点の平面位置を求めるにあたっては、上記した「Quuppa Intelligent Locating System(以下、略して「QILS」という。)」によるAoA(Angle of Arrival)方式を利用することができる。より詳しくは、受信装置101(QILS用のロケータ)が対象物電波や移動体電波を受信すると、電波の方位角(水平面上に投影された電波の方向)、電波の仰角(鉛直上に投影された電波の方向)を取得し、受信装置101からこれらの情報を受け取った平面位置算出手段104が、電波の方位角と仰角、から発信点の平面位置を算出する。また、受信した電波強度に基づいて相応の距離(以下、「受信距離」という。)を求めるとともに、その受信距離も与条件としたうえで発信点の平面位置を算出してもよい。なお、1の受信装置101を設置した場合は、発信点の設置高さ(例えば、標高)をあらかじめ仮定したうえで発信点の平面位置を算出し、2以上の受信装置101を設置した場合は、発信点の3次元座標を求めるなかで平面位置を算出することができる。ただし、原則として受信装置101は移動することなく固定され、その設置された位置(3次元座標)は既知とされる。
【0031】
また、QILSに限らず、他の手法によって発信点の平面位置を求めることもできる。例えば、2以上の受信装置101を設置するとともに、これら受信装置101が受信した発信点(対象物用電波装置102や移動体用電波装置103)からの電波強度に基づいて、その平面位置を求めることができる。より詳しくは、それぞれの受信装置101に係る受信距離を求め、受信装置101の設置位置を中心とする受信距離が半径の円を描くとともに、2以上の円が交差する点を発信点の平面位置とするわけである。この場合、同一平面上に受信装置101と発信点があると仮定できれば2箇所の受信装置101で足り、そのような仮定が成立しない場合は3以上の箇所に受信装置101を設置する必要がある。またこの場合も、原則として受信装置101は移動することなく固定され、その設置された位置(3次元座標)は既知とされる。
【0032】
一方、発信装置を設置する場合、対象物用電波装置102や移動体用電波装置103が受信する位置(以下、「受信点」という。)の座標を、平面位置算出手段104が求めるにあたっては、QILSによるAoD(Angle of Departure)方式を利用することができる。より詳しくは、発信装置側にある複数のアンテナから発信された電波を、対象物用電波装置102や移動体用電波装置103のシングルアンテナが受信すると、その受信した電波の位相差を見ることで角度を算出することができ、上記したAoA方式と同様の要領で受信点の平面位置を算出する。この場合も、原則として発信装置は移動することなく固定され、その設置された位置(3次元座標)は既知とされる。
【0033】
また発信装置を設置する場合も、QILSに限らず他の手法によって発信点の平面位置を求めることもできる。例えば、2以上の発信装置を設置するとともに、これら発信装置からの電波の電波強度に基づいて、その受信点の平面位置を求めることができる。より詳しくは、それぞれ対象物用電波装置102や移動体用電波装置103に係る受信距離を求め、発信装置の設置位置を中心とする受信距離が半径の円を描くとともに、2以上の円が交差する点を受信点の平面位置とするわけである。この場合、同一平面上に発信装置と受信点があると仮定できれば2箇所の発信装置で足り、そのような仮定が成立しない場合は3以上の箇所に発信装置を設置する必要がある。この場合も、2以上の発信装置を設置することとし、原則としてこの発信装置は移動することなく固定され、その設置された位置(3次元座標)は既知とされる。
【0034】
(領域設定手段)
領域設定手段105は、対象物の配置領域を設定するとともに、その作業領域を設定する手段である。なお領域設定手段105は、平面位置算出手段104が発信点や受信点の平面位置を求めるたびに各領域を設定する仕様とすることもできるし、ある程度間隔をあけて(平面位置算出手段104による演算結果を間引いて)各領域を設定する仕様とすることもできる。以下、領域設定手段105が配置領域と作業領域を設定する処理手順について説明する。
【0035】
受信装置101を設置する場合、受信装置101が対象物用電波装置102からの対象物電波を受信すると、領域設定手段105はその対象物電波に含まれる対象物識別子を取得する。一方、送信装置を設置する場合、対象物用電波装置102が送信装置からの電波を受信すると、領域設定手段105は対象物用電波装置102が有する対象物識別子を取得する。対象物識別子を取得した領域設定手段105は、対象物記憶手段108に対してその対象物識別子で照会し、対応する対象物の平面形状や、対象物用電波装置102の相対配置、その設置数(ただし、2以上)を読み出す。また領域設定手段105は、平面位置算出手段104によって求められた2以上の対象物用電波装置102の平面位置と対象物識別子をそれぞれ取得する。そして領域設定手段105は、2以上の対象物用電波装置102を結ぶ線分(以下、「基線」という。)を生成し、その基線から拡張することによって当該対象物の配置領域を特定する。
【0036】
既述したとおり対象物には2以上の対象物用電波装置102が設置されていることから、図3に示すように2以上の対象物用電波装置102を結ぶ基線を生成することができる。例えば図3(a)のケースでは、外形が長方形の対象物に対して、その長軸方向における中心線の両端に2つの対象物用電波装置102が設置されていることから、長軸方向の中心線である基線を生成することができる。また図3(b)のケースでは、外形がL字状の対象物に対して、そのL字状の中心線の両端と中間に3つの対象物用電波装置102が設置されていることから、L字状の中心線である基線を生成することができる。なお、図3(b)の例で2つの基線を生成するにあたっては、基線を生成する対象物用電波装置102の組み合わせを属性情報として記憶させることもできるし、生成可能な3線分のうち短い2つの線分(つまり、最長となる線分を除いた2線分)を基線とすることもできる。
【0037】
このように基線を生成することができれば、対象物が置かれた位置(つまり、平面位置やその軸方向)を特定することができ、さらにその平面形状(外形と寸法)が既知であればどの程度の平面領域を支配しているかを特定することができる。例えば図3(a)のケースでは、基線の平面位置に加えて対象物の寸法の一部(この場合は、長方形の短辺長)が分かれば、基線を中心に両側(図では上下)に拡張することによって対象物の配置領域を設定することができる。同様に、図3(b)のケースでは、基線の平面位置に加えて対象物の寸法の一部(この場合は、幅方向の長さ)が分かれば、基線を中心に両側(図では上下と左右)に拡張することによって対象物の配置領域を設定することができる。
【0038】
対象物の配置領域を設定すると、領域設定手段105はその配置領域に基づいて対象物の作業領域を設定する。具体的には、図3に示すように、配置領域の周囲に所定の寸法(以下、「拡張量」という。)だけ拡張することによって作業領域を設定する。なおこの拡張量は、対象物にかかわらず共通の値とすることもできるし、対象物の種類(例えば、平面形状)に応じて個別に設定することもできる。その場合、拡張量を対象物の属性情報としたうえで、対象物記憶手段108に記憶させるとよい。
【0039】
ところで、対象物によっては(レコードによっては)、その属性情報として平面形状(平面的な形状を表す寸法や角度)が記憶されていない(つまり、NULLである)ケースも考えられる。この場合、領域設定手段105は、その対象物について配置領域を設定することなく作業領域を設定する仕様にするとよい。すなわち、対象物用電波装置102の数量や相対配置に応じて、直接的に作業領域を設定するわけである。例えば、対象物用電波装置102が2個所に設置されているケースでは、その2点を結ぶ線分を中心に拡張した長方形を作業領域とする。あるいは、対象物用電波装置102が3個所に設置されているケースでは、それぞれ2点を結ぶ3つの線分を生成するとともにそれぞれの線分を中心に拡張した領域を作業領域としたり、3つの線分のうち短い2つの線分(つまり、最長となる線分を除いた2線分)を中心に拡張したL字状領域を作業領域としたりすることによって設定する。ただし、配置領域を設定することなく直接的に作業領域を設定するときは、対象物用電波装置102の数量や相対配置に基づいて作業領域を設定する条件も、対象物の属性情報として対象物記憶手段108に記憶させる。
【0040】
(作業判定手段)
作業判定手段106は、移動体が作業を行っている状態(以下、「作業状態」という。)を判定する手段である。なお作業判定手段106は、平面位置算出手段104が移動体用電波装置103の平面位置を求めるたびに判定する仕様とすることもできるし、ある程度間隔をあけて(平面位置算出手段104による設定結果を間引いて)判定する仕様とすることもできる。以下、作業判定手段106が作業状態を判定する処理手順について説明する。
【0041】
受信装置101を設置する場合、受信装置101が移動体用電波装置103からの移動体電波を受信すると、作業判定手段106はその移動体電波に含まれる移動体識別子を取得する。一方、送信装置を設置する場合、移動体用電波装置103が送信装置からの電波を受信すると、作業判定手段106は移動体用電波装置103が有する移動体識別子を取得する。移動体識別子を取得した作業判定手段106は、移動体記憶手段109に対してその移動体識別子で照会し、対応する移動体の属性情報を読み出す。また作業判定手段106は、平面位置算出手段104によって求められた移動体用電波装置103の平面位置と移動体識別子を取得するとともに、領域設定手段105によって設定された作業領域を取得する。そして作業判定手段106は、移動体用電波装置103の平面位置が作業領域の内側にあるとき、その移動体用電波装置103に係る移動体が当該対象物に対して作業状態にあると判定する。また作業判定手段106は、作業状態にあると判定された時間(定期的に判定する場合は、判定回数)を、当該移動体の当該対象物に対する作業時間として出力するとともに、対象物記憶手段108に記憶させる。
【0042】
ここまで説明したように作業判定手段106は、領域設定手段105が作業領域を設定するたびなど繰り返し判定を行い、その都度、作業状態にあるか、そうではない状態(以下、「非作業状態」という。)にあるかを決定する。ところで、既述したとおり作業時間算出システム100で取り扱う対象物は、作業場内の小運搬や、作業場外への搬出、作業に伴う位置調整など、その位置が変化し得るものである。したがって、領域設定手段105は対象物の移動に応じて配置領域と作業領域を設定し、作業判定手段106は移動した作業領域に基づいて移動体の作業状態や非作業状態の判定を行うこととなる。つまり領域設定手段105は、配置領域と作業領域を繰り返し設定するが、各領域が移動していたり元の位置に戻ったりするなど結果が不安定となることもあり、場合によっては本来、対象物が移動していないにもかかわらず作業領域が変化したものとして作業判定手段106が作業状態を判定することもある。
【0043】
そこで、対象物の変化がそれほど大きくないときは、その対象物は移動していないものとして取り扱う仕様とすることもできる。より詳しくは、領域設定手段105によって対象物の基線が繰り返し生成されるわけであるが、前回の基線(以下、「前回基線」)の方位(以下、「前回基線方位」)と、今回の基線(以下、「今回基線」)の方位(以下、「今回基線方位」)とを照らし合わせ、前回基線方位と今回基線方位が相違し、しかもその差分(以下、「基線角度差」という。)があらかじめ定めた閾値(以下、「角度差閾値」という。)を下回る(あるいは、角度差閾値以下である)とき、領域設定手段105は前回基線(つまり前回の対象物の平面位置)が変化していないとしてその対象物の配置領域を設定する(つまり、前回基線に基づく配置領域を維持する)。例えば図4では、平面位置算出手段104によって前回求められた対象物用電波装置102aの平面位置によって前回基線が生成されているとともに、今回求められた対象物用電波装置102bの平面位置によって今回基線が生成されている。そして、前回基線方位と今回基線方位によって基線角度差を求めたうえで、この基線角度差が角度差閾値以下であるときに領域設定手段105は前回基線に基づいて配置領域を設定し、一方、この基線角度差が角度差閾値を上回っているときに領域設定手段105は今回基線位置に基づいて配置領域を設定する。あるいは、基線角度差が角度差閾値を下回っているときに領域設定手段105は前回基線に基づいて配置領域を設定し、一方、この基線角度差が角度差閾値以上であるときに領域設定手段105は今回基線位置に基づいて配置領域を設定することもできる。
【0044】
上記したとおり作業判定手段106は、平面位置算出手段104が移動体用電波装置103の平面位置を求めるたびなど繰り返し判定を行い、その都度、作業状態や非作業状態を決定する。したがって、作業状態と非作業状態が繰り返し判定されるなど結果が不安定となることもあり、場合によっては本来、非作業状態であるにもかかわらず作業状態として判定されることもある。そこで、一度でも移動体用電波装置103の平面位置が作業領域内にあるとされたときに作業状態として判定する仕様とすることもできるが、あらかじめ定めた回数だけ連続して移動体用電波装置103が作業領域内にあるとされたときに作業状態と判定する仕様とすることもできるし、さらにあらかじめ定めた期間(以下、「判定期間」という。)内に所定回数だけ移動体用電波装置103が作業領域内にあるとされたときに作業状態と判定する仕様とすることもできる。
【0045】
あるいは、判定期間に得られた複数回の移動体用電波装置103の平面位置を統計処理して得られる値(以下、「統計作業体位置」という。)に基づいて、作業状態あるいは非作業状態を判定する仕様とすることもできる。例えば図5では、受信装置101が3回分の電波を受信する期間(例えば、判定時刻T01~判定時刻T03)を判定期間としており、その間に平面位置算出手段104が3回分の移動体用電波装置103の平面位置(例えば、平面位置P01~平面位置P03)を求めている。したがってこの場合は、3回分の平面位置を統計処理することで統計作業体位置を算出し、その統計作業体位置に基づいて(統計作業体位置が作業領域内か否かに応じて)作業状態あるいは非作業状態を判定する。
【0046】
作業判定手段106は繰り返し作業状態や非作業状態の判定を行うことから、当然ながら時間の経過とともに判定期間も遷移していく。そのため作業判定手段106は、図5に示すように判定期間を移動させながら統計作業体位置を求め、その結果に応じて作業状態や非作業状態の判定を行う。なおここでの統計処理としては、単純平均値や加重平均値を求めたり、中央値を求めたり、最頻値を求めるなど、種々の統計手法を採用することができる。また、作業判定手段106によって作業状態が判定されると、判定期間のうち開始時刻を作業状態の起点とすることもできるし、判定期間のうち終了時刻を作業状態の起点とすることも、判定期間の中央時刻を作業状態の起点とすることもできる。
【0047】
統計作業体位置に基づいて作業状態や非作業状態の判定を行う仕様であっても、一度の作業状態の判定でその結果を確定する仕様とすることもできるが、あらかじめ定めた回数(以下、「滞在回数閾値」という。)に応じて作業状態を確定する仕様とすることもできる。具体的には、滞在回数閾値を上回る(あるいは、滞在回数閾値以上となる)だけ連続して作業状態と判定されるまでは「暫定作業状態(暫定的な作業状態)」として設定し、滞在回数閾値を上回る(あるいは、滞在回数閾値以上となる)だけ連続して作業状態と判定されると「確定作業状態(確定された作業状態)」として設定するとよい。例えば図5では、滞在回数閾値を3回としており、4回連続して作業状態(図では、判定結果J24~判定結果J27)と判定された時点(図では、判定時刻T27)で確定作業状態として設定される。
【0048】
作業判定手段106は、移動体が確定作業状態として設定された後に、同一の移動体が当該対象物に対して非作業状態とされたことを判定することもできる。この場合、確定作業状態として設定した後に一度でも移動体用電波装置103(つまり、移動体)の平面位置(あるいは統計作業体位置)が作業領域の外にあるとされたときに非作業状態として判定する仕様とすることもできるが、あらかじめ定めた回数(以下、「退出回数閾値」という。)に応じて非作業状態を確定する仕様とすることもできる。具体的には、退出回数閾値を上回る(あるいは、退出回数閾値以上となる)だけ連続して移動体用電波装置103の平面位置(あるいは統計作業体位置)が作業領域の外にあるとされたとき、換言すれば退出回数閾値を上回る(あるいは、退出回数閾値以上となる)だけ連続して移動体用電波装置103の平面位置(あるいは統計作業体位置)が作業領域内にあるとされないとき、当該移動体は当該対象物に対して非作業状態とされたと判定する。例えば図5では、退出回数閾値を2回としており、判定時刻T27の時点で確定作業状態として設定された後、3回連続して移動体用電波装置103の統計作業体位置が作業領域外にある(図では、判定結果J48~判定結果J50)と判定され、その時点(図では、判定時刻T50)で当該移動体は非作業状態とされる。
【0049】
(処理の流れ)
以下、図6を参照しながら本願発明の作業時間算出システム100の主な処理について詳しく説明する。図6は、作業時間算出システム100の主な処理の流れの一例を示すフロー図である。なおこのフロー図では、中央の列に実施する行為を示し、左列にはその行為に必要なものを、右列にはその行為から生ずるものを示している。なお、便宜上ここでは受信装置101を設置する例で説明する。
【0050】
図6に示すように、まず受信装置101が対象物用電波装置102からの対象物電波を受信する(図6のStep210)。次いで平面位置算出手段104は、受信装置101が受信した対象物電波を取得するとともに、その対象物電波に係る情報(例えば、電波の強度や方位角、仰角)に基づいて対象物用電波装置102の平面位置を求め、さらに2以上の対象物用電波装置102の平面位置に基づいて対象物の基線を生成する(図6のStep220)。なお、ここで生成された基線は、所定の記憶手段に記憶される。
【0051】
対象物の基線が生成されると、領域設定手段105が対象物の配置領域を設定するとともに(図6のStep230)、その作業領域を設定する(図6のStep240)。このとき、前回基線方位と今回基線方位を照らし合わせて作業領域を設定することができる。具体的には図7に示すように、まず対象物用電波装置102の平面位置を求め(図7のStep221)、その結果に基づいて今回基線を生成する(図7のStep222)。そして、前回基線方位と今回基線方位を照らし合わせ、両者が同一とされるときは(図7のStep223のNo)、前回の配置領域を採用した(図7のStep232)うえで作業領域を設定する。一方、前回基線方位と今回基線方位が相違するときは(図7のStep223のYes)、基線角度差と角度差閾値を照らし合わせる。そして、基線角度差が角度差閾値を下回る(角度差閾値以下となる)ときは(図7のStep223のYes)、前回の配置領域を採用した(図7のStep232)うえで作業領域を設定し、基線角度差が角度差閾値以上となる(角度差閾値を上回る)ときは(図7のStep223のNo)、今回の配置領域を採用した(図7のStep231)うえで作業領域を設定する。
【0052】
また受信装置101は、移動体用電波装置103からの移動体電波を受信する(図6のStep250)。次いで平面位置算出手段104は、受信装置101が受信した移動体電波を取得するとともに、その移動体電波に係る情報に基づいて移動体用電波装置103の平面位置を求める(図6のStep260)。移動体用電波装置103の平面位置が定まると、作業判定手段106が移動体電波に係る属性情報に基づいて、移動体を特定する。
【0053】
対象物の作業領域と移動体用電波装置103の平面位置が得られると、作業判定手段106は作業状態や非作業状態の判定を行う。具体的には、移動体用電波装置103の平面位置が作業領域の内側にあるときは(図6のStep270のYes)、その移動体用電波装置103に係る移動体が当該対象物に対して作業状態にあると暫定的に判定し、一方、移動体用電波装置103の平面位置が作業領域の外側にあるときは(図6のStep270のNo)、その移動体用電波装置103に係る移動体が当該対象物に対して非作業状態にあると判定する。作業状態や非作業状態の判定が行われると、ここまでの一連の処理(図6のStep210~Step280)を繰り返し、滞在回数閾値を上回るだけ連続して作業状態と判定されると「確定作業状態」として設定する(Step280)。そして作業判定手段106は、作業状態として判定した時間を、その移動体に係る作業時間として出力手段107に出力する(図6のStep290)。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本願発明の作業時間算出システムは、工場や施工現場における製品の製造や、店頭に陳列された商品の並び替えや棚卸、あるいは宅配業者による対象物の搬送など、対象物と作業者の関係を把握したい様々な場面で利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
100 本願発明の作業時間算出システム
101 (作業時間算出システムの)受信装置
102 (作業時間算出システムの)対象物用電波装置
103 (作業時間算出システムの)移動体用電波装置
104 (作業時間算出システムの)平面位置算出手段
105 (作業時間算出システムの)領域設定手段
106 (作業時間算出システムの)作業判定手段
107 (作業時間算出システムの)出力手段
108 (作業時間算出システムの)対象物記憶手段
109 (作業時間算出システムの)移動体記憶手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7