(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139661
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】電源システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/10 20060101AFI20230927BHJP
H02J 7/04 20060101ALI20230927BHJP
H02J 9/04 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
H02J7/10 A
H02J7/04 C
H02J9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045303
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】593063161
【氏名又は名称】株式会社NTTファシリティーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】石橋 拓
(72)【発明者】
【氏名】小野原 隼人
【テーマコード(参考)】
5G015
5G503
【Fターム(参考)】
5G015GA04
5G015HA16
5G015JA06
5G015JA52
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB02
5G503CA08
5G503CB06
5G503EA05
(57)【要約】
【課題】過充電を防いで二次電池の長寿命化を図ることが可能な、汎用性のある簡易な構成の電源システムを提供する。
【解決手段】入力された電力を所望の電力に変換し、変換した電力の少なくとも一部を、出力側に接続された二次電池3に供給する充電部12と、充電部12の制御を行う制御部31と、充電出力を測定する測定部21を備え、制御部31は、二次電池3の充電状態を示すSOC値を測定値に基づいて推定し、推定したSOC値が予め設定された閾値以上の場合には、充電出力の電力値を、SOC値が100%の場合の充電出力の電力値として予め記憶されている第1電力値に設定する制御を行う電源システム1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された電力を所望の電力に変換し、変換した電力の少なくとも一部を、出力側に接続された二次電池に供給する充電部と、
前記充電部の制御を行う制御部と、
前記充電部の出力である充電出力を測定する測定部と、
を備え、
前記制御部は、前記二次電池の充電状態を示すSOC値を前記測定部の測定値に基づいて推定し、推定した前記SOC値が予め設定された閾値以上の場合には、前記充電出力の電力値を、前記SOC値が100%の場合の前記充電出力の電力値として予め記憶されている第1電力値に設定する制御を行う、
電源システム。
【請求項2】
任意の前記SOC値と、それぞれの前記SOC値に対応する前記充電出力の電力値を紐付けて記憶する記憶部を更に備え、
前記制御部は、前記測定値に基づいて前記記憶部を参照して前記SOC値を推定する、
請求項1に記載の電源システム。
【請求項3】
前記第1電力値は、前記二次電池の前記SOC値を所定の値で維持するために必要となる前記充電出力の電力値である、請求項1又は請求項2に記載の電源システム。
【請求項4】
前記充電部は、所定の時間間隔で前記制御部による設定に対応した大きさの前記充電出力を出力する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電源システム。
【請求項5】
入力された電力を所望の電力に変換し、前記二次電池が電力を供給する負荷に直接電力を供給する直送部を更に備えた請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二次電池を充電する機能を備えた電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
外部からの電力供給が途絶えた際でも、負荷に電力の供給が行えるように、二次電池を備えた電源装置が知られている。また、二次電池を内蔵したノートPCなどの製品も広く用いられるようになっている。このような電源装置や製品等に用いられる二次電池は、充電装置から電気的に切り離された状態で時間が経過すると、自己放電などによって蓄えられた電力が自然と低下してしまう。このため、二次電池を、必要とされる電力をいつでも供給できるようにしておくためには、その充電状態が一定のレベルとなるように適宜充電を行う必要がある。以降において、二次電池の充電状態をSOC(State Of Charge)とも記載する。また、その充電状態を示す数値をSOC値とも記載する。
【0003】
一般に二次電池は、過充電を行うと電極が劣化するなどして、その寿命が短くなってしまう。即ち、満充電状態(以降においてSOC値が100%の状態とも記載する。)であるにもかかわらず、同一の条件で充電を継続した場合には、電極が劣化するなどして二次電池の寿命が短くなってしまう。近年広く用いられているリチウムイオン電池などにおいては、特にその影響が顕著である。
【0004】
このような問題を解決するために、二次電池のSOCに応じた充電が行われる充電機能を備えた電源装置が知られている(例えば特許文献1参照。)。この電源装置では、二次電池のSOC値が100%以下の場合には、通常の充電が行われ、SOC値が100%になると、二次電池に入力される電力が、二次電池の自己放電による電力を補う程度の大きさに制限される。このようにすることで、二次電池の劣化を防ぎながら、そのSOC値が100%で維持されるようにしている。
【0005】
また、市販のノートPCなどにおいて、内蔵されている二次電池の長寿命化のために、そのSOC値が80%程度になると充電を停止する機能など、二次電池のSOCに応じた充電抑制機能を備えた製品も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような従来の技術では、二次電池のSOCを検出するとともに、検出したSOCに応じて充電装置の制御を行う必要がある。このため、専用の二次電池とそのための専用の充電装置をそれぞれ開発する必要があり、開発コストが増加してしまうという問題があった。また、二次電池と充電装置との間で情報のやり取りを行うため、専用の通信インタフェースを備える必要があり、装置のコストも増加してしまうという問題があった。
【0008】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであって、二次電池の過充電による劣化を防ぎ、汎用が可能な簡易な構成の電源システムの一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本開示は、以下の手段を提供する。
本開示の電源システムは、入力された電力を所望の電力に変換し、変換した電力の少なくとも一部を、出力側に接続された二次電池に供給する充電部と、前記充電部の制御を行う制御部と、前記充電部の出力である充電出力を測定する測定部とを備え、前記制御部は、前記二次電池の充電状態を示すSOC値を前記測定部の測定値に基づいて推定し、推定した前記SOC値が予め設定された閾値以上の場合には、前記充電出力の電力値を、前記SOC値が100%の場合の前記充電出力の電力値として予め記憶されている第1電力値に設定する制御を行う。
【0010】
本開示の電源システムによれば、測定部による充電部の出力の測定値に基づいて、その出力側に接続されている二次電池のSOC値が推定される。そして推定されたSOC値が所定の閾値以上の場合には、充電部の充電出力の電力値が、二次電池のSOCが100%の状態、つまり二次電池が満充電状態である場合の充電出力の電力値として予め記憶されている値に設定される。即ち、測定部による充電出力の測定値に基づいて、接続されている二次電池が一定のレベル以上に充電されたと推定されると、充電部の出力が、二次電池が満充電状態である場合の充電出力と同じ大きさとなるように設定される。
【0011】
上記においては、任意の前記SOC値と、それぞれの前記SOC値に対応する前記充電出力の電力値を紐付けて記憶する記憶部を更に備え、前記制御部は、前記測定値に基づいて前記記憶部を参照して前記SOC値を推定することが好ましい。
【0012】
このようにすることにより、制御部は、充電部の出力の測定値に基づいて、SOC値と充電出力の電力値が紐付けて記憶された記憶部を参照し、二次電池のSOC値を推定する。このため、制御部は、二次電池のSOC値をより正確に推定することができる。
【0013】
上記においては、前記第1電力値は、前記二次電池の前記SOC値を所定の値で維持するために必要となる前記充電出力の電力値であることが好ましい。
【0014】
このようにすることにより、SOC値が所定の閾値以上になったと推定されると、充電出力の電力値が、二次電池のSOC値を所定の値で維持するために必要とされる電力値に設定される。即ち、二次電池が所定のレベルまで充電されたと推定されると、充電部が、二次電池の充電レベルを一定の状態に維持するために必要となる電力を出力するように設定される。このようにされると、二次電池の充電状態が、一定のレベルで維持されるようになる。ここで二次電池の充電状態を一定のレベルで維持するために必要とされる電力とは、二次電池が自然放電などによって消費する電力の他、測定部や制御部など、システムの作動時に充電部が電力を供給する部分が消費する電力も含まれる。
【0015】
上記においては、前記充電部は、所定の時間間隔で前記制御部による設定に対応した大きさの前記充電出力を出力することが好ましい。
【0016】
このようにすることにより、制御部による設定に対応した充電出力が所定の時間間隔で出力される。即ち、制御部による制御に従って、所定の大きさの充電出力が充電部から間欠的に出力される。このため、例えば低負荷の装置などが接続されているような場合においても、充電部から効率的に二次電池の電力の供給を行うことができるようになる。
【0017】
上記においては、入力された電力を所望の電力に変換し、前記二次電池が電力を供給する負荷に直接電力を供給する直送部を更に備えることが好ましい。
【0018】
このようにすることにより、負荷に対して直送部から直接電力が供給されるとともに、二次電池に電力を供給する充電部の出力が、測定部による測定値に基づいて推定されたSOC値に従って制御される。
【発明の効果】
【0019】
本開示の電源システムによれば、過充電を防いで二次電池の長寿命化を図ることが可能な、汎用性のある簡易な構成の電源システムを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本開示の第1の実施形態にかかる電源システムを説明するブロック図である。
【
図2】
図2(a)は、記憶部に予め記憶されているSOC値と充電出力値の関係を示す関係情報の一例を示す図である。
図2(b)は、記憶部に予め記憶されている充電出力値の時間変化を示す時間変化情報の一例を示す図である。
【
図3】
図3(a)は、充電部の実際の出力(充電出力)の時間変化の一例を示す図である。
図3(b)は、SOC値の時間変化の一例を示す図である。
【
図4】本開示の第2の実施形態にかかる電源システムを説明するブロック図である。
【
図5】
図5(a)は、記憶部に予め記憶されている充電部の出力の時間変化を示す時間変化情報の一例を示す図である。
図5(b)は、実際の充電出力の時間変化の一例を示す図である。
【
図6】充電出力の時間変化の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔第1の実施形態〕
以下、本開示の第1の実施形態に係る電源システム1について主に
図1から
図3を参照しながら説明を行う。
【0022】
1-1 構成の説明
本実施形態にかかる電源システム1は、商用電源から供給される交流電力を直流電力に変換して、通信設備などの設備に電力を供給する電源システムである。設備には、直流電力によって稼働する様々な機器が備えられている。
【0023】
この設備には、停電時などにおいて必要な電力を供給するための二次電池3が設けられている。即ち二次電池3は、停電時などに設備に電力を供給する非常用の電源である。電源システム1は、この二次電池3に電力を供給して充電を行う機能も備えている。以降において、この電源システム1が電力を供給する設備を負荷4とも記載する。
【0024】
本実施形態において二次電池3には、負荷4に一定の時間の間、電力を供給することができるだけの充電容量を備えたリチウムイオン電池が用いられている場合を例に以降の説明を行う。なお、二次電池3は他の公知の二次電池が用いられていてよく、特にその種類が限定されることはない。
【0025】
電源システム1は、電力変換部10、測定部21、逆流防止部22、制御ユニット30から主に構成されている。
【0026】
電力変換部10は、商用の電源2から供給される交流電力を所望の直流電力に変換する部分である。電力変換部10は、直送部11と充電部12を備えている。直送部11と充電部12は、入力された交流電力を所望の直流電力に変換してそれぞれ出力する公知の電力変換装置である。
【0027】
直送部11は、変換した直流電力を負荷4に直接供給する部分である。本実施形態において直送部11には、負荷4が必要とする電力を供給可能な出力定格の公知の電力変換装置が用いられている場合を例に以降の説明を行う。
【0028】
充電部12は、変換した直流電力をその出力側に接続された二次電池3に供給して、その充電を行う部分である。本実施形態において充電部12には、二次電池3の充電容量に適合した出力定格を備えた公知の電力変換装置が用いられている場合を例に以降の説明を行う。充電部12は、詳細は後述する制御部31からの制御に従った大きさの電力を出力する機能を備えている。以降の説明において、充電部12から出力される電力を「充電出力」とも記載する。
【0029】
測定部21は、充電部12の充電出力の大きさを測定し、その測定値を出力する部分である。本実施形態において測定部21は、所定の時間間隔で随時電力の測定を行い、その測定値を電気信号として出力する機能を備えた公知の電力計が用いられている場合を例に以降の説明を行う。
【0030】
逆流防止部22は、直送部11から出力された電力が、二次電池3に向かって流れることを防止する整流器である。本実施形態において逆流防止部22は、直送部11の出力に対応した定格の公知のダイオードから構成されており、直送部11の出力側と二次電池の間に配置されている。逆流防止部22は、必要な整流が行えるものであれば、他の公知の整流器が用いられていてもよい。
【0031】
制御ユニット30は、主に電力変換部10の制御を行う部分である。より具体的には、電力変換部10の充電部12の制御を主に行う部分である。制御ユニット30は、制御部31、I/F部32、記憶部33、及び情報入力部34を備えている。
【0032】
本実施形態において、制御ユニット30は、公知のPCやサーバ装置等の電子計算機器に専用のソフトウェアがインストールされたものである場合を例に説明を行う。即ち、ソフトウェアと、PCなどの電子計算機器が備えるCPUやメモリなどのハードウェアが協働して、以降にて説明する各部の機能が実現されている場合を例に説明を行う。なお制御ユニット30は、各部の機能を備えた専用のハードウェアから構成されたものであってもよい。
【0033】
記憶部33は、電力変換部10の制御に必要な情報を主に記憶する部分である。本実施形態において記憶部33は、ハードディスクやメモリデバイスなどの公知の記憶デバイスが用いられている場合を例に以降の説明を行う。
【0034】
記憶部33には、二次電池3のSOC値と充電部12の充電出力との関係を示す情報が記憶されている。具体的に説明を行うと、記憶部33には、0~100%の間の二次電池3の任意のSOC値と、それぞれのSOC値に対応した充電出力の電力値がそれぞれ紐付けて記憶されている。ここで電力値とは、電力の大きさを示す数値のことをいう。以降において、充電出力の電力値を、「充電出力値」とも記載する。
【0035】
一般に充電の際に二次電池に入力される電力は、二次電池の充電状態、即ちそのSOC値によって異なる。即ち記憶部33は、二次電池3の充電状態と充電出力の関係を、SOC値とその際の充電出力値を紐付けて記憶している。
【0036】
本実施形態では、二次電池3のSOC値と充電部12の充電出力値が、
図2(a)に示すような関係を有している場合を例に説明を行う。即ち、記憶部33が、
図2(a)に示されているような、SOC値と充電出力値に関する情報(以降において「関係情報」とも記載する。)を予め記憶している場合を例に以降の説明を行う。換言すれば、二次電池3のSOC値が0~80%の充電状態では、充電出力値は一定(PO)であり、二次電池3のSOC値が80%を上回るようになると、充電出力値はSOC値の増加に伴って減少し、SOC値が100%になると、充電出力値がPLとなるといった関係情報を記憶部33が記憶している場合を例に、以降の説明を行う。記憶部33は、
図2(a)の関係情報を、テーブルやその他の公知のデータベースなどの形式で記憶している。この充電出力値が減少を開始する境目となるSOC値(80%)が閾値の一例である。
【0037】
ここでPLは、二次電池3が満充電状態である際に、即ちSOC値が100%である場合に、充電部12から所定の時間の間に出力される電力の電力値である。一般に二次電池では、満充電まで充電を行っても、自己放電などによって充電された電力が自然と減少する。このため、SOC値を一定に保つためには、自然に減少する電力と同じ大きさの電力を継続的に入力して充電を行う必要がある。また充電部12が、二次電池3以外の部分に電力を供給している場合には、充電部12はそれらの部分にも所定の大きさの電力を継続的に供給する。即ちPLは、自己放電などによって二次電池3が所定の時間の間に消費する電力と、充電部12が電力を供給している部分が同じ時間の間に消費する電力を加えた電力の電力値である。
【0038】
本実施形態では、充電部12は、二次電池3の他に、測定部21、及び制御ユニット30に電力の供給を行っている場合を例に以降の説明を行う。即ちPLが、二次電池3が自己放電によって所定の時間当たりに消費する電力の電力値PL2と、測定部21と制御ユニット30がその間に消費する電力の電力値PL3を加えた値PL1(=PL2+PL3)である場合を例に以降の説明を行う。このPL1が第1電力値の一例である。
【0039】
記憶部33は、上記の関係情報に代えて、あるいは上記の関係情報とともに、
図2(b)に示すような、充電出力値の時間変化に関する情報を予め記憶してもよい。即ち、二次電池3をSOC値が0%の状態から充電を行った際の充電出力値の時間変化に関する情報(以降において「時間変化情報」とも記載する。)を予め記憶していてもよい。
【0040】
図2(b)において時間t
1は、SOC値が80%となる時間であり、時間t
2はSOC値が100%となる時間である。即ち、記憶部33は、二次電池3の充電を開始した時から時間t
1を経過するまでは、充電出力値が一定の値POで保たれ、時間t
1から時間t
2の間は、充電出力値が時間の経過とともにPL
1まで減少し、時間t
2以降は、充電出力値がPL
1で維持されるといった充電出力値の時間変化に関する情報を予め記憶していてもよい。なお
図2(a)や
図2(b)は、説明のために簡易に示した例示であって、関係情報や時間変化情報は、それらの図に例示されている内容に限定される訳ではない。
【0041】
本実施形態において記憶部33は、使用者が、詳細は後述する情報入力部34を操作して入力した情報に基づいて関係情報を記憶する場合を例に説明を行う。即ち使用者が、二次電池3の仕様や、測定部21、及び制御ユニット30の仕様などに基づいて入力した情報に基づいて、記憶部33が関係情報を記憶する場合を例に説明を行う。
【0042】
一方、上記とは異なる方法で、関係情報や時間変化情報を記憶部33に記憶させてもよい。例えば、電源システム1を用いて実際に二次電池3を、そのSOC値が0%の状態から充電を行い、その際の充電出力を測定部21が所定の時間間隔で測定し、その測定値を時間に関する情報と紐づけて時間変化情報として記憶部33に記憶させてもよい。あるいは、そのようにして得られた情報にからSOC値と充電出力値の関係を公知の算出方法によって算出し、関係情報として記憶させてもよい。
【0043】
更に記憶部33は、充電出力値が減少を開始するSOC値を、閾値として記憶する。また、二次電池3のSOC値を100%の際の充電出力の電力値(PL)を第1電力値として記憶する。
【0044】
情報入力部34は、キーボードやマウスといった公知の入力デバイスである。I/F部32は、電力変換部10や測定部21と通信を行って信号の入出力を行うインタフェースである。
【0045】
制御部31は、測定部21による測定値に基づいて主に充電部12の制御を行う部分である。制御部31は、測定部21の測定値に基づいて記憶部33を参照し、二次電池3のSOC値を推定する機能を備えている。具体的に説明を行うと制御部31は、測定部21から入力された測定値に基づいて、記憶部33が記憶している関係情報や時間経過情報を参照し、その時点における二次電池3のSOC値を推定する処理を行う。
【0046】
更に制御部31は、推定したSOC値と、記憶部33に記憶されているSOC値の閾値を比較して、推定されたSOC値が閾値を上回る場合に、充電部12の充電出力値を記憶部33に予め記憶されている第1電力値(PL)に設定する制御を行う機能も備えている。
【0047】
1-2 作用の説明
続いて本実施形態の電源システム1の作用について、実際の使用に従って説明を行う。
【0048】
(1)使用開始前の事前準備
使用者は、事前準備として、記憶部33に電源システム1を稼働させるために必要となる所定の情報を記憶させる操作を行う。具体的には、使用者は、情報入力部34を操作して、二次電池3のSOC値と充電出力値に関する所定の情報を入力して記憶部33に関係情報を記憶させる。また使用者は、SOC値の閾値に関する情報と、SOC値が100%の際の充電出力値である第1電力値に関する情報を入力し、それぞれを記憶部33に記憶させる。本実施形態において使用者は、SOC値の閾値として「80%」を、第1電力値として「PL1」を入力して記憶部33に記憶させる。
【0049】
(2)使用開始から時間t1を経過するまでの間
電源システム1が電源2に接続されて、その作動が開始されると、電力変換部10に交流電流が入力される。直送部11は、入力された交流電力を所定の大きさの直流電力に変換して負荷4に出力する。
【0050】
充電部12は、入力された交流電力を変換して充電出力を出力し、二次電池3の充電を行う。充電部12は、その出力を開始してから時間t1になるまでは、充電出力値がPOの充電出力を出力する。測定部21は、所定の時間間隔で充電出力を測定し、測定値を制御ユニット30に出力する。
【0051】
I/F部32は、測定部21から測定値が入力されると、必要な処理を行って入力された測定値を制御部31に引き渡す。制御部31は、測定値に基づいて記憶部33を参照し、測定が行われた時点における二次電池3のSOC値を推定する処理を行う。制御部31は、測定部21の測定値が「PO」であるため、SOC値は80%以下であると推定する。推定されたSOC値は、閾値(80%)よりも小さな値であるため、制御部31は、充電部12の充電出力値を設定する制御は行わない。
【0052】
充電部12が電力を供給すると、二次電池3は、供給された電力によって充電され、時間の経過に伴って、二次電池3のSOC値は増加する(
図3(b)参照。)。なお、
図3(b)では、SOC値が時間の経過に伴って直線的に増加する様子を記載しているが、これは説明のための例示であって、図に例示されている内容に限定される訳ではない。
【0053】
(3)時間t1経過後
電源システム1が電力の供給を開始してから時間t1を経過すると、充電部12の充電出力は低下してPOよりも小さな大きさとなる。測定部21は、その際の充電電力を測定し、測定値を制御ユニット30に出力する。
【0054】
制御部31は、測定部21が出力した測定値に基づいて記憶部33を参照し、その際の二次電池3のSOC値を推定する処理を行う。制御部31は、測定値がPOよりも小さな値であることから、SOC値が80%よりも大きな値になったと推定する。そして制御部31は、推定されたSOC値が、記憶部33に記憶されている閾値(80%)を上回るため、充電部12の充電出力値をPL1に設定する処理を行う。
【0055】
制御部31による設定が行われると、充電部12から、充電出力値PL
1に対応した大きさの充電出力が出力される。充電部12は、充電出力値PL
1が設定されると、充電出力を設定された大きさに維持する(
図3(a)参照。)。充電出力が、充電出力値PL
1に対応した大きさで維持されると、二次電池3のSOC値は、充電出力値PL
1が設定された時点におけるSOC値で維持される。即ち、二次電池3のSOC値は、80%で維持される(
図3(b)参照。)。
【0056】
上記の電源システム1によれば、制御部31が、測定部21が実際に測定を行った充電出力の測定値(電力値)に基づいて、二次電池3のSOC値を推定する。そして制御部31は、推定したSOC値が予め設定された閾値以上の場合には、充電部12の充電出力の電力値を、二次電池3のSOC値が100%の場合の充電出力の電力値として予め記憶されている電力値に設定する制御を行う。より具体的には、制御部31は、推定したSOC値が80%以上の場合には、充電出力値をPL1に設定する制御を行う。
【0057】
このようにされると、二次電池3は、SOC値が80%になるまで充電されると、その後はその充電状態が維持される。即ち二次電池3は、SOC値が80%の状態が維持されて、過充電が行われることがない。このため、二次電池3の劣化が防がれてその長寿命化を図ることができる。
【0058】
更に制御部31は、測定部21による測定値から二次電池3のSOC値を推定する。即ち、二次電池3のSOC値を測定したりするための測定デバイスや、二次電池3と制御部31が情報のやり取りを行うための専用の通信インタフェースなどを設ける必要がない。このため簡易な構成の電源システムを提供することができる。また、専用の二次電池を用いる必要がないため、汎用性の高い電源システムを提供することができる。
【0059】
また、二次電池3のSOC値と対応する充電出力は紐づけられ、関係情報として記憶部33に予め記憶されている。そして制御部31は、測定部21の測定値に基づいて記憶部33を参照して二次電池3のSOC値を推定する。このため、制御部31は、より正確に二次電池3のSOC値を推定することができる。即ち、正確に推定されたSOC値に基づいて充電出力の制御が行われるため、二次電池3の長寿命化を図ることができる。
【0060】
SOC値が80%になるまで充電が行われると、制御部31は、充電出力値をPL1に設定する制御を行う。即ちSOC値が80%になったと推定されると、充電部12からは電力値PL1に対応した充電出力が継続して出力される。この出力は、二次電池3のSOC値を一定の値(80%)に維持する際に、二次電池3、及び充電部12が電力を供給する二次電池3以外の部分が消費する電力である。このため、電源システム1を稼働させながら二次電池3を常に一定の充電状態で維持することができる。即ち、過充電を防ぎながら、所望のタイミングで必要な電力を供給可能な状態に二次電池3を維持することができる。
【0061】
更に電源システム1は、負荷4に電力を直接供給する直送部11を備えている。即ち充電部12が二次電池3の充電を行いつつ、直送部11が独立して負荷4に直接所望の電力を供給する。即ち、負荷4に安定的に電力を供給することができる。
【0062】
〔第2の実施形態〕
続いて、本開示の第2の実施形態に係る電源システム1Aについて主に
図4から
図5を参照しながら説明を行う。なお、本実施形態の電源システム1Aの基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、直送部11、及び逆流防止部22を備えていない点が相違する。よって、本実施形態では、第1の実施形態と同一の構成については同一の記号を付して詳細な説明を省略し、相違する構成等について主に説明を行う。
【0063】
2-1 構成の説明
本実施形態の電源システム1Aは、二次電池3Aを内蔵したPCなどの負荷4Aに電力を供給する電源システムである。電源システム1Aは、充電部12A、測定部21、制御ユニット30を主に備えている。
【0064】
充電部12Aは、電源2Aから入力された電力を所望の電力に変換して負荷4Aに出力する電力変換装置である。本実施形態において電源2Aは交流電源であり、充電部12Aは交流電力を直流電力に変換する電力変換装置である場合を例に以降の説明を行う。
【0065】
本実施形態において充電部12Aは、負荷4Aにのみ電力を供給し、他の部分には電力の供給を行わない場合を例に以降の説明を行う。即ち、測定部21や制御ユニット30が作動するために必要となる電力は、充電部12A以外の図示されていない他の電源から供給されている場合を例に以降の説明を行う。
【0066】
本実施形態において、記憶部33は、
図5(a)に示す時間変化情報を記憶している。即ち記憶部33が、負荷4Aの二次電池3AのSOC値が0%の状態から電源システム1Aを用いて充電を行った際の、時間経過に伴う充電部12Aの充電出力の変化に関する情報を記憶している。
図5(a)において時間t
12は、充電部12Aが充電出力の出力を開始して二次電池3AのSOC値が80%となる時間である。また時間t
22は、二次電池3AのSOC値が100%となる時間である。
【0067】
またPL4は、二次電池3AのSOC値が100%となった際に、充電部12Aから出力される電力の電力値である。本実施形態においてPL4は、二次電池3Aが自己放電などによって所定の時間の間に自然に消費する電力の電力値である場合を例に以降の説明を行う。なおPL4は、例えば負荷4Aの他の部分が定常的に消費する電力の電力値を含む値であってもよい。本実施形態におけるPL4が、第1電力値の一例である。
【0068】
2-2 作用の説明
続いて本実施形態の電源システム1Aの作用について、実際の操作方法に従って説明を行う。
【0069】
(1)使用開始前の事前準備
使用者は、事前準備として、記憶部33に電源システム1Aを稼働させるために必要となる所定の情報を記憶させる操作を行う。本実施形態では使用者が、電源システム1Aに負荷4Aを接続し、実際に二次電池3Aの充電を行って、記憶部33に時間変化情報を事前に記憶させる場合を例に以降の説明を行う。
【0070】
具体的に説明を行うと、使用者は、二次電池3AのSOC値が0%の負荷4Aを電源システム1Aに接続し、充電部12Aから電力を供給する。そして、測定部21に充電出力を逐次測定させて、その測定値を、時間に関する情報と紐づけて、記憶部33に記憶させる処理を行う。使用者は、二次電池3Aが満充電となり、更に所定の時間が経過したところで、処理を中止する。記憶部33は、この間の充電出力値の時間変化に関する情報を時間変化情報として記憶する(
図5(a)参照。)。
【0071】
(2)使用開始から時間t12を経過するまでの間
電源システム1Aが電源2Aに接続されて、その作動が開始されると、充電部12Aが電力を負荷4Aに出力する。負荷4Aの二次電池3Aは、充電部12Aからの電力によって充電される。充電部12Aは、時間t12を経過するまでの間は、電力値がPOaの充電出力を出力する。測定部21は、所定の時間間隔で充電出力の測定値を制御ユニット30に出力する。
【0072】
(3)時間t12経過後
電源システム1Aが電力の供給を開始してから時間t12を経過すると、充電部12Aの充電出力は低下してPOaよりも小さな大きさとなる。測定部21はその際の測定値を制御ユニット30に出力する。
【0073】
制御部31は、測定部21が出力した測定値に基づいて記憶部33を参照し、二次電池3AのSOC値が閾値(80%)を上回ったと推定する。そして制御部31は、充電部12Aの充電出力値をPL
4に設定する処理を行う。制御部31による処理が行われると、充電部12Aから設定された充電出力値PL
4に対応する大きさの充電出力が出力されて、その出力が維持される(
図5(b)参照。)。充電出力値がPL
4で維持されると、二次電池3AのSOC値は、制御部31による設定が行われた時点におけるSOC値で維持される。即ち二次電池3AのSOC値は、80%で維持される。
【0074】
上記の電源システム1Aによれば、制御部31が測定部21の測定値に基づいて二次電池3AのSOC値を推定して充電部12Aの制御を行う。このため、二次電池3AのSOC値の測定機能を備えていないような負荷4に対しても、過充電を防いで二次電池3Aの寿命を延ばすことができるように電力の供給を行うことができる。即ち、汎用性のある簡易な構成の電源システムを提供することができる。
【0075】
なお、上記の実施形態では、制御部31は、二次電池3のSOC値が80%になったと推定すると、充電出力値を所定の値に設定してその値を維持する制御を行う場合について説明を行った。一方、充電部12Aから二次電池3AのSOC値を一定に保つために必要な電力が供給されれば、上記以外の制御が行われてもよい。
【0076】
例えば、充電部12Aが、制御部31による設定に基づいて、二次電池3のSOC値を一定に保つために必要な電力を間欠的に出力するように制御が行われてもよい。具体的には、充電出力値の時間平均がPL4となるような充電出力を、所定の時間間隔で充電部12Aから出力させるような制御が行われてもよい。
【0077】
図6を参照して更に具体的に説明を行うと、制御部31が、二次電池3AのSOC値が80%を超えたと推定してから所定の時間経過後に、充電部12Aが、充電出力値が3PL
4の充電出力を時間Tの間出力する。即ち、充電部12Aが、PL
4の3倍の大きさの電力を時間Tの間出力する。その後、充電部12Aは、時間2T(3PL
4の充電出力が出力された時間の2倍の長さの時間)その出力を停止する。そして充電部12Aは、再びPL
4の3倍の充電出力を時間Tだけ出力し、以降同様の制御が繰り返し行われる。
【0078】
一般的に、低負荷の二次電池の充電を行う場合には、充電出力が小さくなるため、電力を供給する電源システムの稼働効率が悪くなってしまう。一方、上記のような制御を行えば、例えば二次電池3Aが低負荷の場合であっても、充電部12Aから一定の大きさの充電出力が出力されるようになり、充電部12Aを効率的に稼働させることができるようになる。
【0079】
なお、本開示の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記の実施形態においては、充電部12,12Aに交流電力が入力される場合について説明を行ったが、直流電源が入力される構成であってもよい。即ち、電源2,2Aが直流電源であり、充電部12,12Aが、入力された直流電力を所望の直流電力に変換するコンバータなどの電力変換装置であってもよい。
【0080】
上記の実施形態では制御部31が、測定部21の測定値に基づいて記憶部33を参照してSOC値を推定する場合について説明を行ったが、制御部31が、測定値の変化率に基づいてSOC値を推定する処理を行ってもよい。例えば、制御部31が、測定値の変化率が一定の割合以上となった際に、SOC値が所定の閾値を上回る値になったと推定する処理を行ってもよい。
【0081】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0082】
1,1A…電源システム 2,2A…電源 3,3A…二次電池
4,4A…負荷 10…電力変換部 11…直送部 12,12A…充電部
21…測定部 22…逆流防止部 30…制御ユニット 31…制御部
32…I/F部 33…記憶部 34…入力部