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  • 特開-粉砕装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139662
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】粉砕装置
(51)【国際特許分類】
   B02C 23/30 20060101AFI20230927BHJP
   B02C 13/286 20060101ALI20230927BHJP
   B02C 18/22 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
B02C23/30
B02C13/286
B02C18/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045304
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 美之
(72)【発明者】
【氏名】赤瀬 幸助
(72)【発明者】
【氏名】河島 睦泰
【テーマコード(参考)】
4D065
4D067
【Fターム(参考)】
4D065AA12
4D065CA05
4D065EB01
4D065EB07
4D065EB14
4D065ED06
4D065ED14
4D065ED24
4D065ED32
4D065EE07
4D065EE08
4D065EE20
4D067EE01
4D067EE23
4D067EE38
4D067GA01
4D067GA13
4D067GA16
(57)【要約】
【課題】低風量運転であっても、回転テーブル下方のテーブル下空間への被処理物の落ち込みを防いで安定した運転を維持しながら被処理物の粉砕を行えるようにする。
【解決手段】被処理物を粉砕する粉砕部16をロータ12の回転テーブル12aの外周縁部に有する粉砕室11に気流を導入する気流導入路20を設ける。この気流導入路20として、回転テーブル12aの下方に設けたテーブル下空間21と、テーブル下空間21に空気を導入する気流導入口22と、テーブル下空間21と回転テーブル12aの外周縁との間に形成され、テーブル下空間21から粉砕室11への気流を導入するラビリンスシール部23とを設ける。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部ケーシングと、
上記外部ケーシング内の仕切られた空間を形成する内部ケーシングと、
被処理物を上記内部ケーシング内に投入する投入口と、
上記内部ケーシングの下方に設けられて上記被処理物を粉砕する粉砕部をロータの回転テーブルの外周縁部に有する粉砕室と、
上記粉砕室に気流を導入する気流導入路と、
上記内部ケーシングと上記外部ケーシングとの間に形成され、上記粉砕室で粉砕されて吹き上げられた被処理物を通過させる吹き上げ通路とを備え、
上記気流導入路は、
上記回転テーブルの下方に設けたテーブル下空間と、
上記テーブル下空間に空気を導入する気流導入口と、
上記テーブル下空間と上記回転テーブルの外周縁との間に形成され、該テーブル下空間から上記粉砕室への気流を導入するラビリンスシール部とを備えている
ことを特徴とする粉砕装置。
【請求項2】
上記ラビリンスシール部は、
上記回転テーブルの外周縁と、
上記回転テーブルの真下に固定された断面L字状のリング部材との隙間で構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の粉砕装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉砕室で粉砕されて吹き上げられた被処理物を通過させる吹き上げ通路を有する、粉砕装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、樹脂や鉱物、食品原料を粉砕する、様々な粉砕装置が使用されている。この種の粉砕装置では、例えば、特許文献1のように、外部ケーシングと、外部ケーシング内の仕切られた空間を形成する内部ケーシングと、この内部ケーシングに被処理物を内部ケーシング内に投入する投入口と、内部ケーシングの下方に設けられて被処理物を粉砕する粉砕部を備えた粉砕室と、この粉砕室に気流を導入する気流導入口と、内部ケーシングと外部ケーシングとの間に形成され、粉砕室で粉砕されて吹き上げられた被処理物を通過させる吹き上げ通路と、内部ケーシングの上部に設けられ、吹き上げ通路から気流搬送された被処理物を分級する分級部とを備え、粉砕が十分でない被処理物を分級部から内部ケーシングを通じて粉砕室へ還流する粉砕装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-51420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図4に示すように、従来の衝撃式粉砕機の通気機構では、外部ケーシング101aの下部外周のダクト101dを通して粉砕室111内へ空気を送り込んでいた。
【0005】
この構造で、通常の風量よりも少ない低風量で運転をすると、粉砕動力が不安定となり、ロータの回転テーブル112aの下方のテーブル下空間121への原料の落ち込みが発生し、安定した運転を維持することが厳しい状況であった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、低風量運転であっても、回転テーブル下方のテーブル下空間への被処理物の落ち込みを防いで安定した運転を維持しながら被処理物の粉砕を行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明では、回転テーブルの真下にラビリンスシール部を設けた。
【0008】
具体的には、第1の発明では、粉砕装置は、
外部ケーシングと、
上記外部ケーシング内の仕切られた空間を形成する内部ケーシングと、
被処理物を上記内部ケーシング内に投入する投入口と、
上記内部ケーシングの下方に設けられて上記被処理物を粉砕する粉砕部をロータの回転テーブルの外周縁部に有する粉砕室と、
上記粉砕室に気流を導入する気流導入路と、
上記内部ケーシングと上記外部ケーシングとの間に形成され、上記粉砕室で粉砕されて吹き上げられた被処理物を通過させる吹き上げ通路とを備え、
上記気流導入路は、
上記回転テーブルの下方に設けたテーブル下空間と、
上記テーブル下空間に空気を導入する気流導入口と、
上記テーブル下空間と上記回転テーブルの外周縁との間に形成され、該テーブル下空間から上記粉砕室への気流を導入するラビリンスシール部とを備えている。
【0009】
上記の構成によると、回転テーブルと、その下方のテーブル下空間との間にラビリンスシール部が設けられているので、このラビリンスリール部を通って粉砕室に低風量の気流が導入されると共に、ラビリンスシール部によって適度に塞がれているので、低風量運転においても、テーブル下空間に被処理物が落ち込まない。このため、低風量運転であっても安定した運転を維持できる。
【0010】
第2の発明では、第1の発明において、
上記ラビリンスシール部は、
上記回転テーブルの外周縁と、
上記回転テーブルの真下に固定された断面L字状のリング部材との隙間で構成されている。
【0011】
上記の構成によると、簡単な構成で、ラビリンスシール部の隙間調整も容易である。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、低風量運転であっても、回転テーブルの下部への被処理物の落ち込みを防いで安定した運転を維持しながら被処理物の粉砕を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る粉砕装置のラビリンスシール部及びその周辺を拡大して示す断面図である。
図2】粉砕装置を示す断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る粉砕装置を含む粉砕システムを示す概略図である。
図4】従来技術に係るダクト及びその周辺を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
-粉砕システムの構成-
図3は本発明の実施形態の粉砕装置1を含む粉砕システム10の概要を示し、この粉砕システム10は、粉砕装置1に原料を供給する供給機2を備えている。供給機2から供給される被処理物としての原料は、供給用ロータリバルブ3を介し、粉砕装置1の投入口11aに供給されるように構成されている。この原料は、樹脂、鉱物、食品原料等特に限定されないが、本実施形態は、2次電池材料のカーボンなど低風量運転に適したものが考えられる。
【0016】
粉砕装置1には、所定圧力の大気が気流導入口22に導入される。大気は、エアコンプレッサなどで高圧にされたり、温度調整されていたりしてもよい。
【0017】
一方、粉砕装置1で粉砕された被処理物は、排気ファン6による気流と共にバグフィルタ4に搬送される。
【0018】
そして、バグフィルタ4内で気流と粉砕製品が分離され、バグフィルタ用ロータリバルブ5を運転して粉砕製品を取り出すことができるようになっている。排気ファン6は、バグフィルタ4の下流側に接続されており、粉砕システム10内の空気が大気中に排出されるように構成されている。
【0019】
図1及び図2に示すように、粉砕装置1は、円筒状の外部ケーシング1aを有し、その内部に、それよりも小径の円筒状の内部ケーシング1bが同軸上に固定されている。内部ケーシング1bの下方に粉砕室11が、同じく同軸に結合されている。
【0020】
粉砕室11下部の底部ケーシング1dには、ロータ12が回転可能に内蔵されている。ロータ12は、粉砕室11の下方に設けた駆動部7(図3にのみ示す)で駆動されるようになっている。詳しくは図示しないが、粉砕用電動モータ13の下端に設けた駆動側プーリに掛けられたVベルトに駆動された従動側プーリによって回転軸14が回転され、この回転軸14に回転一体に連結されたロータ12が回転されるように構成されている。そして、粉砕室11の内周面には、円筒状(リング状)の粉砕用ライナ15が固定されている。一方、ロータ12上面の回転テーブル12aの外周縁部には、先端が粉砕用ライナ15に近接するように、複数の粉砕部16が取り付けられている。粉砕部16の形状は特に限定されず、ハンマ状のものであってもよいし、切断して破砕するような刃形状のものでもよい。
【0021】
また、内部ケーシング1bの上部には、例えば、分級用電動モータ17aで駆動され、粉砕された被処理物を分級する分級部17が配置されている。
【0022】
そして、内部ケーシング1bと外部ケーシング1aとの間には、粉砕室11で粉砕されて吹き上げられた被処理物を通過させる吹き上げ通路1cが形成されている。分級部17と粉砕室11の間において、内部ケーシング1b内に連通するように、被処理物を内部ケーシング1b内に投入する投入口11aが設けられている。投入口11aは、外部ケーシング1aに対して適度な投入角を有するように挿入された円筒体の内部に形成されている。
【0023】
一方、分級部17の下面からは被処理物を排出する排出管11cが、内部ケーシング1bを貫通して外部ケーシング1aの外側まで延びている。
【0024】
上述したように、粉砕部16は、回転する回転テーブル12aの外周縁部に設けられ、投入口11aから投入された被処理物及び分級部17から環流してきた被処理物を粉砕するように構成されている。
【0025】
そして、本実施形態の特徴として、粉砕装置1には、粉砕室11に気流を導入する気流導入路20が設けられている。この気流導入路20は、回転テーブル12aの下方に設けたテーブル下空間21を有する。このテーブル下空間21は、底部ケーシング1d内の回転軸14のある、外気と遮断された空間である。
【0026】
また、気流導入路20は、このテーブル下空間21に空気を導入する気流導入口22を備えている。この気流導入口22は、底部ケーシング1dの外周に設けられた、例えば閉鎖可能なパイプ状部材によって形成されている。
【0027】
さらに、気流導入路20は、テーブル下空間21と回転テーブル12aの外周縁との間に形成され、テーブル下空間21から粉砕室11への気流を導入するラビリンスシール部23を備えている。このラビリンスシール部23は、回転テーブル12aの外周縁と、回転テーブル12aの真下に固定された断面L字状のリング部材24との隙間で構成されている。リング部材24は、皿ビス25などで、回転テーブル12aの下方に脱着可能となっており、その外周面の肉厚調整により、ラビリンスシール部23の隙間の調整を行えるようになっている。例えば、リング部材24の円筒状部分の高さが40mm程度で厚さが5mm程度である。このリング部材24の内周面と回転テーブル12aの外周面との間の半径方向の隙間は、例えば1mmである。また、リング部材24の上面と、回転テーブル12aの外周縁底面との隙間は、例えば1mmである。このように、本実施形態では、簡単な構成で、ラビリンスシール部23の隙間調整も容易となっている。ラビリンスシール部23の隙間部分は、周方向に連続していてもよいし、一部途切れていてもよい。
【0028】
気流導入口22からの気流は、ラビリンスシール部23の隙間を通って粉砕室11へ向かい、被処理物を舞い上げながら外部ケーシング1aとその内部を区切る内部ケーシング1bとの間に形成した吹き上げ通路1cを通るようになっている。
【0029】
-粉砕システムの作動-
このように構成した粉砕システム10では、図2に示すように、供給機2に投入された被処理物は、供給機2より粉砕室11上部の投入口11aへ投入される。
【0030】
次いで、投入口11aから内部ケーシング1bに投入された被処理物は、粉砕室11に向かって落下する。そして、粉砕部16及び粉砕用ライナ15によって細かく粉砕された後、粉砕室11の底部のラビリンスシール部23から導入された気流によって舞い上げられる。
【0031】
次いで、吹き上げられた被処理物は、分級部17に到る。この分級部17では、所定粒度の被処理物は分級部17を通過し、内部ケーシング1bの排出管11cから排出される。
【0032】
次いで、排出管11cから排出された被処理物は、排気ファン6による気流と共にバグフィルタ4に搬送される。そして、バグフィルタ4内で気流と粉砕製品が分離され、バグフィルタ用ロータリバルブ5を運転して粉砕製品が取り出される。
【0033】
一方、分級部17で分級されて排出されずに粉砕室11に落下してきた被処理物は、粉砕部16及び粉砕用ライナ15によって細かく粉砕された後、気流導入口22から導入されてラビリンスシール部23を通って粉砕室11の底部から導入された気流によって舞い上げられ、吹き上げ通路1cを通って再び分級部17へと導入される。
【0034】
このように、本実施形態では、回転テーブル12aと、その下方のテーブル下空間21との間にラビリンスシール部23が設けられているので、テーブル下部への原料の落ち込むスペースがなくなり、低風量運転であっても、テーブル下空間21に被処理物が落ち込まない。このため、本実施形態の構成により、従来の標準風量に対する半分以下の風量である低風量運転が可能となる。故に本実施形態の粉砕装置1は、微粉砕の用途にも非常に適している。
【0035】
本発明によれば、低風量運転が可能となり、常温の導入空気を削減できるので、熱損失を抑えることが可能となるメリットがある。また、図4に示したようなダクト101dも必要ではなくなって装置構造の単純化により、製作コストの削減も可能となった。
【0036】
以上説明したように、低風量運転であっても、回転テーブルの下部への被処理物の落ち込みを防いで安定した運転を維持しながら被処理物の粉砕を行うことができる。そして、本実施形態の粉砕装置1は、通常の粉砕用途だけでなく、凍結粉砕の用途にも適用することができる。
【0037】
-実施例-
採用する風量は粉砕装置1の大きさに依存するが、実際に実機で試験した結果を以下に説明する。
【0038】
回転テーブル12aの直径D1がD1=300mmのとき、標準風量V0=10m/min、通常風量V1=8~15m/min、低風量V2=1~5 m/minとなった。
【0039】
また、D1=450mmのとき、標準風量V0=22.5m/min、低風量V2=2~11m/minとなり、
D1=680mmのとき、標準風量V0=51.4m/min、低風量V2=5~25m/minとなり、
D1=1000mmのとき、標準風量V0=111m/min、低風量V2=11~55m/minとなった。
【0040】
風量が少ないほど、細かく粉砕できるので、本発明の実施形態は、微粉砕の用途に適用される。例えば、被処理物としては、2次電池材料のカーボンが挙げられ、低風量によるその微粉砕に最適であることが分かった。
【0041】
標準風量V0と低風量V2で粉砕された場合の粒径については、風量の比の0.5乗倍で粒径が小さくなることから、例えば、風量が1/4に減ると、粒径が1/4の0.5乗倍で、1/2となることが分かる。
【0042】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0043】
すなわち、上記実施形態では、分級用電動モータ17aに駆動される分級部17を設け、分級用電動モータ17aの回転数によって分級する粒度を調整するようにしたが、動力を使わないで流入する風速を調整することにより、粒度を調整するサイクロン式分級部を設けてもよい。
【0044】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0045】
1 粉砕装置
1a 外部ケーシング
1b 内部ケーシング
1c 吹き上げ通路
1d 底部ケーシング
2 供給機
3 供給用ロータリバルブ
4 バグフィルタ
5 バグフィルタ用ロータリバルブ
6 排気ファン
7 駆動部
10 粉砕システム
11 粉砕室
11a 投入口
11c 排出管
12 ロータ
12a 回転テーブル
13 粉砕用電動モータ
14 回転軸
15 粉砕用ライナ
16 粉砕部
17 分級部
17a 分級用電動モータ
20 気流導入路
21 テーブル下空間
22 気流導入口
23 ラビリンスシール部
24 リング部材
25 皿ビス
図1
図2
図3
図4