(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139667
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】車両積載物の着脱構造
(51)【国際特許分類】
B60R 9/048 20060101AFI20230927BHJP
【FI】
B60R9/048
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045314
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】391021226
【氏名又は名称】株式会社カーメイト
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】青野 竜之
(72)【発明者】
【氏名】大森 琢也
(72)【発明者】
【氏名】中村 寿志
【テーマコード(参考)】
3D020
【Fターム(参考)】
3D020AB01
3D020AC02
(57)【要約】
【課題】車両積載物の着脱を簡易に実施可能としつつ、その固定を確実なものとすることのできる車両積載物の着脱構造を提供する。
【解決手段】積載物100に配置される第1係合部12並びに第2係合部14と、車両側に固定され、第1係合部12または第2係合部14のうちのいずれか一方の係合部を保持する固定保持手段16と、車両側に固定され、第1係合部12または第2係合部14のうちのいずれか他方の係合部を保持する可動保持手段22と、を有し、可動保持手段22は、他方の係合部を保持する固定位置と、他方の係合部から離間する開放位置とを遷移させる動作を可能とする可動部28と、固定位置において可動部28が開放位置へ遷移する動作を規制するロック機構30とを有することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積載物の第1主面周りの辺である一方の辺に沿って配置される第1係合部と、前記一方の辺に対向する位置に設けられた他方の辺に沿って配置される第2係合部と、
固定保持手段と第1の可動保持手段の組み合わせ、または第2の可動保持手段と第1の可動保持手段の組み合わせにより前記第1係合部と前記第2係合部の保持を成す保持手段と、を有し、
前記固定保持手段及び前記第2の可動保持手段は、車両側に固定され、前記第1係合部または前記第2係合部のうちのいずれか一方を保持し、前記第1の可動保持手段は、車両側に固定され、前記第1係合部または前記第2係合部のうちのいずれか他方を保持する構成とし、
前記第1の可動保持手段、及び前記第2の可動保持手段は、前記一方の係合部または前記他方の係合部を保持する固定位置と、前記一方の係合部または前記他方の係合部から離間する開放位置とを遷移させる動作を可能とする可動部と、前記固定位置において前記可動部が前記開放位置へ遷移する動作を規制するロック機構とを有することを特徴とする車両積載物の着脱構造。
【請求項2】
前記固定保持手段及び前記固定位置にある前記第2の可動保持手段は、前記積載物を積載した際、前記第1主面が配置される面に沿う方向に設けられた第1凹部を有し、
前記第1の可動保持手段は、前記固定位置において前記第1凹部の形成面に沿う方向に設けられた第2凹部を有し、
前記第1係合部及び前記第2係合部は、前記第1凹部または前記第2凹部に介入可能なピン、または凸部であることを特徴とする請求項1に記載の車両積載物の着脱構造。
【請求項3】
前記固定保持手段及び前記固定位置にある前記第2の可動保持手段は、前記積載物を積載した際、前記第1主面が配置される面に沿う方向に設けられた第1凸部を有し、
前記第1の可動保持手段は、前記固定位置において前記第1凸部の形成面に沿う方向に設けられた第2凸部を有し、
前記第1係合部及び前記第2係合部は、前記第1凸部または前記第2凸部を介入可能な凹部であることを特徴とする請求項1に記載の車両積載物の着脱構造。
【請求項4】
前記第1係合部及び前記第2係合部は、前記積載物に凹陥部を設け、
前記凹陥部は、前記固定保持手段または前記第2の可動保持手段が前記一方の係合部を保持する際、及び前記第1の可動保持手段が前記他方の係合部を保持する際、前記固定保持手段または前記第2の可動保持手段、及び前記第1の可動保持手段の少なくとも一部を介入させることを可能とすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両積載物の着脱構造。
【請求項5】
前記固定保持手段または前記第2の可動保持手段と、前記第1の可動保持手段とは、前記積載物を介して対向する位置にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の車両積載物の着脱構造。
【請求項6】
前記固定保持手段または前記第2の可動保持手段と、前記第1の可動保持手段は、前記積載物の重量を支承可能なベースに固定され、
前記第1の可動保持手段及び前記第2の可動保持手段は、前記開放位置とした際、その上端面が前記ベースの支承面と平行となるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の車両積載物の着脱構造。
【請求項7】
前記ベースは、枠状のフレームを有し、
前記固定保持手段または前記第2の可動保持手段、及び前記第1の可動保持手段は、前記フレームに沿って配置位置を変更可能としていることを特徴とする請求項6に記載の車両積載物の着脱構造。
【請求項8】
前記ベースは、前記フレームに沿って配置位置を変更可能とする取付金具を介して、前記車両に固定されたキャリアバーに取付けられることを特徴とする請求項7に記載の車両積載物の着脱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積載物の着脱構造に係り、特に、車両のルーフやリアハッチ(バックドア)などに対する積載物の着脱に好適な構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の積載スペースの容量を増やす目的、あるいは車両の乗車スペースを有効活用可能にすることを目的として、車両のルーフやリアハッチに対して積載用のボックスを取り付ける場合がある。従来、こうした収納ボックスは、単に積載容量の増加を図ることを目的としていたため、車両に固定した状態で使用されていた。このため、収納ボックスの固定方法は外部から容易に着脱ができないような構造とされていた。
【0003】
しかし近年、キャンプなどのアウトドアを始めとして、目的地において多くの荷物を持ち運ぶケースが増え、特許文献1や2に開示されているように、車両に取り付けた収納ボックスを簡易に着脱し、この収納ボックスごと持ち運ぶという技術が注目を集めている。
【0004】
特許文献1に開示されている技術は、リアハッチに設けられたスペアタイヤの取り付けベースに対し、収納ボックスを固定するための取付ベースを固定し、この取付ベースに対して収納ボックスを着脱可能としたというものである。取付ベースに対する収納ボックスの着脱は、取付ベースの周縁に設けられたフランジの下端縁と、両側縁に設けられた係合部に対する凹凸嵌合である。
【0005】
確かにこのような構造であれば、収納ボックスの着脱を容易とし、かつ収納ボックスごと持ち運ぶことが可能となると考えられる。しかし、特許文献1では係合部の構造が明確では無く、着脱がスムーズに成され、かつ確実に固定可能であるのかに不安が残る。
【0006】
特許文献2に開示されている技術は、ルーフに固定したキャリアバーに載せる収納ボックスを着脱自在とするためのものである。具体的には、車両の幅方向に掛け渡された前後2本のキャリアバーに掛け渡すように、一対の固定金具を配置する。一対の固定金具のうちの一方には係止爪が、他方には受け孔がそれぞれ形成されている。収納ボックスの裏面(固定金具との対向面)には、係止爪が係合する係止孔を備えた受け金具と、受け孔に挿入可能なフック金具がそれぞれ配置されている。そして、係止孔に係止爪を挿入すると共に、受け孔にフック金具を挿入し、受け孔に設けられた締付ボルトを締め付けることで、収納ボックスの固定が完了する。
【0007】
このような構造によれば、外部から締付ボルトを操作するだけで収納ボックスの着脱が可能となる。しかし、特許文献2に開示されている技術では、係止のための爪と固定のための爪をそれぞれ異なる方向から受け孔に挿入する必要があり、収納ボックス等の積載物を立体的に移動させなければならない。このため、積載物の重量が増した場合には、着脱のための動作が困難になる場合がある。また、手締めにより操作される締付ボルトは、走行時の振動や揺れによって緩む可能性がある。さらに、締付状態が良好であるか否かの判断がつき辛いといった懸念もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10-211851号公報
【特許文献2】登録実用新案第3020403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明では、上記課題を解決し、車両積載物の着脱を簡易に実施可能としつつ、その固定を確実なものとすることのできる車両積載物の着脱構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る車両積載物の着脱構造は、積載物の第1主面周りの辺である一方の辺に沿って配置される第1係合部と、前記一方の辺に対向する位置に設けられた他方の辺に沿って配置される第2係合部と、固定保持手段と第1の可動保持手段の組み合わせ、または第2の可動保持手段と第1の可動保持手段の組み合わせにより前記第1係合部と前記第2係合部の保持を成す保持手段と、を有し、前記固定保持手段及び前記第2の可動保持手段は、車両側に固定され、前記第1係合部または前記第2係合部のうちのいずれか一方を保持し、前記第1の可動保持手段及び前記第2の可動保持手段は、車両側に固定され、前記第1係合部または前記第2係合部のうちのいずれか他方を保持する構成とし、前記第1の可動保持手段、及び前記第2の可動保持手段は、前記一方の係合部または前記他方の係合部を保持する固定位置と、前記一方の係合部または前記他方の係合部から離間する開放位置とを遷移させる動作を可能とする可動部と、前記固定位置において前記可動部が前記開放位置へ遷移する動作を規制するロック機構とを有することを特徴とする。
【0011】
また、上記特徴を有する車両積載物の着脱構造において前記固定保持手段及び前記固定位置にある前記第2の可動保持手段は、前記積載物を積載した際、前記第1主面が配置される面に沿う方向に設けられた第1凹部を有し、前記第1の可動保持手段は、前記固定位置において前記第1凹部の形成面に沿う方向に設けられた第2凹部を有し、前記第1係合部及び前記第2係合部は、前記第1凹部または前記第2凹部に介入可能なピン、または凸部とすることができる。このような特徴を有する事によれば、係合部と保持手段とを一定方向から凹凸嵌合させることができ、簡易かつ確実に積載物を固定することが可能となる。
【0012】
また、上記特徴を有する車両積載物の着脱構造において前記固定保持手段及び前記固定位置にある前記第2の可動保持手段は、前記積載物を積載した際、前記第1主面が配置される面に沿う方向に設けられた第1凸部を有し、前記第1の可動保持手段は、前記固定位置において前記第1凸部の形成面に沿う方向に設けられた第2凸部を有し、前記第1係合部及び前記第2係合部は、前記第1凸部または前記第2凸部を介入可能な凹部であるようにしても良い。このような特徴を有する事によっても、係合部と保持手段とを一定方向から凹凸嵌合させることができ、簡易かつ確実に積載物を固定することが可能となる。
【0013】
また、上記特徴を有する車両積載物の着脱構造において前記第1係合部及び前記第2係合部は、前記積載物に凹陥部を設け、前記凹陥部は、前記固定保持手段または前記第2の可動保持手段が前記一方の係合部を保持する際、及び前記第1の可動保持手段が前記他方の係合部を保持する際、前記固定保持手段または前記第2の可動保持手段、及び前記第1の可動保持手段の少なくとも一部を介入させることを可能とすることが望ましい。このような特徴を有する事によれば、固定保持手段や可動保持手段により積載物を固定した際、積載物の外周に突出する部位が少なくなる。このため、車両が走行した際の風切り音等の騒音を低減する事が可能となる。
【0014】
また、上記特徴を有する車両積載物の着脱構造において前記固定保持手段または前記第2の可動保持手段と、前記第1の可動保持手段とは、前記積載物を介して対向する位置にそれぞれ設けられているようにすると良い。このような特徴を有する事によれば、積載物を搭載した際、積載物の後方に位置することとなる保持手段が視認する事ができなくなった場合でも、可動保持手段の配置位置を目印として位置合わせを行うことが可能となる。
【0015】
また、上記特徴を有する車両積載物の着脱構造において前記固定保持手段または前記第2の可動保持手段と、前記第1の可動保持手段は、前記積載物の重量を支承可能なベースに固定され、前記第1の可動保持手段及び前記第2の可動保持手段は、前記開放位置とした際、その上端面が前記ベースの支承面と平行となるように構成されているようにすると良い。このような特徴を有する事によれば、積載物をベースに搭載した際、積載物が可動保持手段を跨ぐような状態となった場合であっても、積載物を安定して搭載し、スライドさせることが可能となる。
【0016】
また、上記特徴を有する車両積載物の着脱構造において前記ベースは、枠状のフレームを有し、前記固定保持手段または前記第2の可動保持手段、及び前記第1の可動保持手段は、前記フレームに沿って配置位置を変更可能とすると良い。このような特徴を有する事によれば、積載物の大きさに関わらず、積載物の固定が可能となる。
【0017】
さらに、上記特徴を有する車両積載物の着脱構造において前記ベースは、前記フレームに沿って配置位置を変更可能とする取付金具を介して、前記車両に固定されたキャリアバーに取付けられるようにすると良い。このような特徴を有する事によれば、キャリアバーの配置位置(幅)に関わらず、キャリアバーに対するベースの取り付けを行う事ができるようになる。
【発明の効果】
【0018】
上記のような特徴を有する車両積載物の着脱構造によれば、車両積載物の着脱を簡易に実施可能としつつ、その固定を確実なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】着脱構造の基本形態である固定保持手段と可動保持手段、及び第1係合部と第2係合部を備えた積載物の関係を示す側断面図である。
【
図3】固定位置における可動保持手段の形態を示す側断面図である。
【
図4】開放位置における可動保持手段の形態を示す側断面図である。
【
図5】実施形態に係る着脱構造による積載物の固定、開放の様子を説明するための図である。
【
図6】ベースとキャリアバー、及び固定保持手段、可動保持手段の配置関係を示す斜視図である。
【
図7】ベースに対する取付金具の固定状態を説明するための部分断面図である。
【
図8】矩形断面を有するキャリアバーに適用される取付金具の形態を示す斜視図である。
【
図9】上面にT溝が設けられたキャリアバーに適用される取付金具の形態を示す斜視図である。
【
図10】T字溝を設けたキャリアバーに対してベースを固定した場合の例を示す斜視図である。
【
図11】実施形態に係る着脱構造の第1変形例を示す図である。
【
図13】実施形態に係る着脱構造の第2変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の車両積載物の着脱構造に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
[基本実施形態:構成]
まず、
図1から
図10を参照して、車両積載物の着脱構造(以下、単に着脱構造10と称す)の基本的な実施形態について説明する。なお、図面において
図1は、着脱構造の基本形態である固定保持手段と可動保持手段、及び第1係合部と第2係合部を備えた積載物の関係を示す側断面図である。
図2は、固定保持手段の形態を示す側面図であり、
図3は、固定位置における可動保持手段の形態を示す側断面図である。また、
図4は、開放位置における可動保持手段の形態を示す側断面図である。また、
図5は、実施形態に係る着脱構造による積載物の固定、開放の様子を説明するための図である。
図6は、ベースとキャリアバー、及び固定保持手段、可動保持手段の配置関係を示す斜視図である。
図7は、ベースに対する取付金具の固定状態を説明するための部分断面図である。
図8は、矩形断面を有するキャリアバーに適用される取付金具の形態を示す斜視図である。
図9は、上面にT溝が設けられたキャリアバーに適用される取付金具の形態を示す斜視図である。
図10は、T字溝を設けたキャリアバーに対してベースを固定した場合の例を示す斜視図である。
【0021】
本実施形態に係る着脱構造10は、第1係合部12と、第2係合部14、固定保持手段16、及び可動保持手段(第1の固定保持手段)22を基本として構成されている。なお、本実施形態に係る着脱構造10は、車両のルーフに取付けられるキャリアバー60に固定されるベース50を介して、固定保持手段16と可動保持手段22の位置決めが成されている(
図6参照)。本実施形態に係るベース50は、矩形枠状に組み付けられたフレーム52から成り、詳細を後述する取付金具54を介して、車両に固定されたキャリアバーに取付けられている。また、第1係合部12と第2係合部14は、積載物の外装部に配置されている。
【0022】
第1係合部12と第2係合部14は、詳細を後述する固定保持手段16と可動保持手段22により保持される要素であり、本実施形態では、第1係合部12と第2係合部14との構造を同一としている。具体的には、実施形態に係る第1係合部12と第2係合部14は、積載物100の第1主面100a(積載物100を車両に積載する車両と対向配置されることとなる面)周りの一方の辺100a1と、この一方の辺100a1に対向配置される他方の辺100a2に沿って設けられた凹陥部12b,14bと、この凹陥部12b,14bに対して第1主面100aを構成する辺の配置方向に沿うように設けられたピン12a,14aにより構成されている。
【0023】
固定保持手段16は、上記第1係合部12、または第2係合部14のうちのいずれか一方(以下、本実施形態では、一方を第1係合部12、他方を第2係合部14と仮定する)を係合させるための要素である。本実施形態では、固定部18と保持部20とを有する構成とし、固定部18を介してベース50のフレーム52に対して垂直に立設されるように固定されている。積載物100は、第1主面100aがベース50のフレーム52に沿うように積載される。このため、固定保持手段16をフレーム52に垂直に立設することで、フレーム52に対してスライドさせた積載物100を堰き止め、位置決めを図ることができるようになる。
【0024】
保持部20は、積載物100の第1主面100aが配置される面に沿う方向(矢印Aで示す方向)に設けられた凹部により構成されている。凹部の開口は、詳細を後述する可動保持手段22の配置方向を向くように配置されている。このような構成とすることで、固定保持手段16と可動保持手段22との間に積載物100を挟み込む事ができるようになる。保持部20を構成する凹部には、第1係合部12を構成するピン12aが介入する。このため、保持部20は、フレーム52に積載物100を載せた際にピン12aが位置する高さに設けるようにする。このような構成とすることで、フレーム52に載せた積載物100を固定保持手段16側へスライドさせるだけで、第1係合部12を構成するピン12aを保持部20(凹部)に介入させることができるようになる。
【0025】
可動保持手段22は、上記第1係合部12、または第2係合部14のうちのいずれか他方(本実施形態においては第2係合部14)を係合させるための要素である。本実施形態では、固定部24と保持部26、可動部28、及びロック機構30を備え、固定部24を介してベース50のフレーム52に固定されている。可動部28は、可動保持手段22における保持部26を固定位置と開放位置とに遷移させる回動要素である。ここで、固定位置とは、可動部28がフレーム52に対して垂直に立設する位置を言う。一方、開放位置とは、可動部28がフレーム52に対して垂直となる位置から外れた位置にある状態を言い、本実施形態では特に、可動部28がフレーム52と平行となる位置を開放位置としている。可動部28の開放位置をフレーム52と平行となる位置とすることで、積載物100をベース50のフレーム52に載せる際、積載物100が可動保持手段22を跨ぐように載せられたとしても、積載物100が可動保持手段22に乗り上げて傾いた状態となる虞が無い。このため、積載物100の安定状態を保ったまま固定保持手段16側へスライドさせることができるようになる。
【0026】
ロック機構30は、可動部28が固定位置にある場合に、この位置を維持、すなわち開放位置へ遷移する動作を規制する役割を担う要素である。ロック機構30は、その機能を満たせば具体的な構成を問うものでは無い。一例としては
図3、
図4に示すように、カム30aとストッパ30b、及び解除レバー30cとを有すれば良い。カム30aは、可動部28の回動動作(矢印Bで示す方向の動作)に伴って回転(矢印Cで示す方向の動作)する要素であり、その外周の一部に段差部30a1を有する。ストッパ30bは、可動部28が固定位置に来た際、カム30aの段差部30a1に介入し、カム30aの回転、すなわち可動部28の回動を妨げる要素である。解除レバー30cは、段差部30a1に介入したストッパ30bを段差部30a1から引き揚げ、カム30aの回動を可能とするための要素である。本実施形態では、解除レバー30cを支点30dに対して回動(矢印Dで示す方向の動作)可能なレバーとし、このレバーをカム30a側に付勢させている。そしてこの解除レバー30cに対してストッパ30bを付帯させる構成としている。このような構成とすることで、可動部28が固定位置に来た際には、解除レバー30cに対する付勢力により自動で、ストッパ30bが段差部30a1に介入し、可動部28の回動動作が規制される。そして、可動部28の回動動作が規制されている状態では、解除レバー30cを操作することにより、ストッパ30bが段差部30a1から引き揚げられ、可動部28の回動が可能となる。
【0027】
保持部26は、可動部28が固定位置にある際、積載物100の第1主面100aが配置される面に沿う方向(矢印Aで示す方向)に設けられた凹部により構成されている。凹部の開口は、上述した固定保持手段16の配置方向を向くように構成している。このような構成とすることで、固定保持手段16と可動保持手段22との間に積載物100を挟み込む事ができるようになる。保持部26を構成する凹部には、第2係合部14を構成するピン14aが介入する。このため、保持部26は、フレーム52に積載物100を載せた際にピン14aが位置する高さに設けるようにする。このような構成とすることで、フレーム52に積載物100を載せた状態で、可動部28を開放位置から固定位置へ遷移させるだけで、第2係合部14を構成するピン14aを保持部26(凹部)に介入させることができるようになる。
【0028】
ここで、固定保持手段16の保持部20は、凹部をストレート構造としているが、可動保持手段22の保持部26を構成する凹部は、
図3、
図4に詳細を示すように上下に波打つような側面形状を有する。このような構成とすることで、可動部28の回動動作に伴い、保持部26の開口側から介入したピン14aと凹部の上面との間に隙間が生じにくくなる。よって、固定した積載物100のガタツキを抑えることができるようになる。
【0029】
また、本実施形態に係る着脱構造10では、可動保持手段22に対して、解除レバー30cの操作を妨げるためのカバー32を設けるようにし、このカバー32には、カバー32の開閉動作を規制するための鍵32aが設けられている。このような構成とすることで、着脱構造10は、悪戯や誤作動等により解除レバー30cの操作が成され、可動保持手段22が開放位置へ遷移してしまう事を防ぐことができる。
【0030】
また、本実施形態に係る着脱構造10では、可動部28に当接部34を設け、可動部28を開放位置とした際、当接部34が固定部24の外装に当接し、荷重を伝達するように構成している。このような構成とすることで、開放位置にある可動部28に負荷された垂直荷重が、当接部34を介して固定部の外装に伝達されることとなる。このため、例えば開放位置にある可動部28に積載物100が載せられるような大きな荷重がかかった場合であっても、可動部28の破損を防ぐことができるようになる。
【0031】
本実施形態に係るベース50のフレーム52は、
図7に示すように断面をほぼ三角形とし、枠状を成すようにフレーム52を組み付けて構成されるベース50の内周に位置する辺にガイド溝52aが形成されている。取付金具54は、このガイド溝52aにナット56とボルト58を介して配置されることで、フレーム52の配置形態に沿った移動と位置決めを可能としている。
【0032】
なお、取付金具54は、
図8に示すような、棒状のキャリアバー60を挟み込むタイプの他、
図9に示すようなT字溝付きのキャリアバー60a(
図10参照)に対応したものとすることもできる。なお、
図8に示す取付金具54では、下半部に設けた一対のサイドフレーム54a間に掛け渡したかんぬき54bの上部に通したキャリアバー60を、押さえボルト54cで押さえ込むことで、キャリアバー60への固定が成される。また、
図9に示す固定金具54では、ナット54dをキャリアバー60aのT字溝に介入させ、締付ボルト54eでナット54dを引き上げ、T字溝に押し付けることでキャリアバー60aへの固定が成される。
【0033】
[作用]
次に、
図5を参照して、上記のような構成の着脱構造10による積載物100の固定、及び開放について説明する。上記のような構成の着脱構造10では、まず、
図5(A)に示すように、可動保持手段22の可動部28を開放位置とした上で、ベース50のフレーム52上に積載物100を配置する。次に、
図5(B)に示すように、フレーム52上に配置した積載物100を固定保持手段16側にスライドさせ、第1係合部12のピン12aを固定保持手段16の保持部20に介入させる。第1係合部12のピン12aを保持部20に介入させた後、
図5(C)に示すように、可動保持手段22の可動部28を固定位置へと回動させて保持部26に第2係合部14のピン14aを介入させる。可動保持手段22が固定位置に遷移することで、保持部26に第2係合部14のピン14aが介入された状態でロック機構30が作用し、積載物100の固定が完了する。なお、積載物100の固定が完了した際、可動保持手段22に設けられたカバー32により解除レバー30cを封止して鍵32aをかけることで、悪戯や誤作動によるロック機構30の解除を防ぐことができるようになる。
【0034】
積載物100を降ろす場合(積載物100の固定状態を解除する場合)には、カバー32の鍵32aを開錠し、カバー32を開放した上で、ロック機構30の解除レバー30cを操作し、カム30aの段差部30a1からストッパ30bを引き上げることでロック機構30によるロック状態を解除する。ロック状態を解除することで、可動保持手段22の可動部28を固定位置から開放位置へと回動させることができるようになる。可動部28を開放位置へ遷移させた後、積載物100を固定保持手段16から離間させる方向へ移動させることで、保持部20から第1係合部12のピン12aが引き抜かれ、積載物100の固定が解除される。保持部20からピン14aが引き抜かれた後、積載物100をベース50から降ろすことで積載物100の荷下ろしが完了する。
【0035】
[効果]
上記のような特徴を有する着脱構造10によれば、積載物100をベース50に搭載した後は、これを平面上にスライドさせるだけで位置決め、固定、及び取り外しが可能となる。このため、積載物100の着脱を簡易に実施可能としつつ、その固定を確実なものとすることができる。また、固定保持手段16と可動保持手段22の配置位置を対向位置とすることで、積載物100をベース50に乗せた際、固定保持手段16が積載物100による死角に位置し、目視することができなくなったとしても、可動保持手段22の位置に第2係合部14を合わせるように位置決めすることで、第1係合部12のピン12aを固定保持手段16の保持部20に介入させることができるようになる。
【0036】
また、可動保持手段22の可動部28を開放位置に遷移させた際、その上端がベース50のフレーム52と平行となるようにしたことで、積載物100を安定して搭載し、スライドさせることが可能となると共に、可動保持手段22を積載物100を搭載する際の足掛かりとすることが可能となる。
【0037】
また、第1係合部12、及び第2係合部14を積載物100に設ける際、固定保持手段16や可動保持手段22の一部を介入させることを可能とする凹陥部14bを設けたことで、積載物100を固定した状態において外部に露出する部位を少なくすることができる。このため、車両走行時における風切り音等を抑制することが可能となる。
【0038】
また、固定保持手段16や可動保持手段22、取付金具54の固定位置をフレーム52に沿って変更自在とすることで、フレーム52の大きさの範囲において、積載物100の大きさやキャリアバー60の配置幅を問わず取付固定が可能となる。
【0039】
[第1変形例]
次に、
図11、
図12を参照して、実施形態に係る着脱構造10に関する第1の変形例について説明する。なお、本変形例における基本的な構造は、上述した基本形態に係る着脱構造10と同様である。よって、その機能を同一とする箇所については、図面に同一符号を付して詳細な説明を省略することとする。
【0040】
上記実施形態では、積載物100を箱型とし、第1係合部12と第2係合部14を積載物100の外装部に凹陥部14bとピン14aを配置することで構成する旨記載した。しかしながら、積載物100は箱型に限るものでは無い。例えば、
図11、
図12に示すような台車110であっても良い。台車110の形態は問わないが、
図11、
図12に示す例では、車輪114を備えた台車本体112と、この台車本体112の上部に設けられたガイドパイプ116とを有する。
【0041】
本変形例では、台車本体112の長手方向に沿って配置されている一対のメインフレーム112aに対して、第1係合部12と第2係合部14を配置する構成としている。このように、第1係合部12と第2係合部14とを積載物としての台車110から突出するように設けたとしても、積載物である台車110を安定して固定すると共に、着脱の容易性を確保することができる。
【0042】
[第2変形例]
また、実施形態に係る着脱構造10を適用する積載物は、必ずしも積載物を使用する際の着脱を意図するものでなくても良い。例えば
図13に示すように、自転車用キャリア120を積載物として、この自転車用キャリア120のベースフレームに第1係合部12(
図13には不図示)と第2係合部14を配置するようにしても良い。このように、特定の用途に特化したキャリアを着脱可能な構成とすることで、使用の用途に応じて専用キャリアを簡易かつ迅速に着脱することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
上記実施形態、及び変形例では、いずれも第1係合部12と第2係合部14とを積載物100に対して固定(常設)するように示している。しかしながら、第1係合部12や第2係合部14を確実に固定することが可能であれば、第1係合部12や第2係合部14を、積載物100に後付けで取り付けるようにしても良い。このような構成とした場合であっても、積載物100の着脱を簡易に実施可能としつつ、その固定を確実なものとすることができることに変わりが無いからである。また、このような構成とした場合には、第1係合部12や第2係合部14を複数の積載物100で共有使用することができるようになる。
【0044】
また、上記実施形態では、第1係合部12や第2係合部14をピン12a,14a(凸部)とし、固定保持手段16の保持部20や可動保持手段22の保持部26を凹状に形成し、保持部20,26に対してピン12a,14aを介入させる旨記載した。しかしながら、これらの凹凸関係は限定するものでは無い。図示しないが例えば、第1係合部12や第2係合部14を凹状に形成し(凹部を形成)、固定保持手段16の保持部20や可動保持手段22の保持部26を凸状に形成するようにしても良い(第1凸部、第2凸部を形成)。このような構成とした場合であっても、積載物100の着脱を行うための手順や労力に変化は無いからである。
【0045】
また、上記実施例、及び変形例では、着脱構造10は、固定保持手段16と可動保持手段22とによって、第1係合部12と第2係合部14を保持するように説明している。しかしながら、第1係合部12と第2係合部14を保持する保持手段を両方とも、可動保持手段22(第1可動保持手段と第2可動保持手段)としても、本発明に係る着脱構造10は成り立つこととなる。具体的には、固定保持手段16に替えて第2の可動保持手段を配置し、積載物100を第1の可動保持手段と、第2の可動保持手段とで挟み込むようにすれば良い。ここで、第1の可動保持手段と第2の可動保持手段の構成は共通とし、双方ともに上述した可動保持手段22と同様とすることができる。このような構成とした場合、積載物100の幅(長さ)が車両の幅と同等である場合に、車両の両側面から積載物10の揚げ降ろしを行う事が可能となる。
【0046】
また、上記実施例、及び変形例では、固定保持手段16、及び可動保持手段22は、車両のルーフに取付けられたキャリアバー60に固定されるベース50に固定されるように説明した。しかしながら、固定保持手段16、及び可動保持手段22は、車両の一部、あるいはこれに付帯する要素に固定されていれば、その固定部位を問うものではない。すなわち、リアハッチ部分や、車両の内装部などに固定保持手段16や可動保持手段22を配置するようにしても良い。
【符号の説明】
【0047】
10………着脱構造、12………第1係合部、12a………ピン、12b………凹陥部、14………第2係合部、14a………ピン、14b………凹陥部、16………固定保持手段、18………固定部、20………保持部、22………可動保持手段、24………固定部、26………保持部、28………可動部、30………ロック機構、30a………カム、30a1………段差部、30b………ストッパ、30c………解除レバー、30d………支点、32………カバー、32a………鍵、34………当接部、50………ベース、52………フレーム、52a………ガイド溝、54………取付金具、54a………サイドフレーム、54b………かんぬき、54c………押さえボルト、54d………ナット、54e………締付ボルト、56………ナット、58………ボルト、60,60a………キャリアバー、100………積載物、100a………第1主面、100a1………一方の辺、100a2………他方の辺、110………台車、112………台車本体、112a………メインフレーム、114………車輪、116………ガイドパイプ、120………自転車用キャリア。