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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139684
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】シート状ヒートパイプ
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/02 20060101AFI20230927BHJP
   F28D 15/04 20060101ALI20230927BHJP
   H01L 23/427 20060101ALI20230927BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
F28D15/02 102A
F28D15/02 101H
F28D15/02 106A
F28D15/02 102G
F28D15/04 D
H01L23/46 B
H05K7/20 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045344
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】390010168
【氏名又は名称】東芝ホームテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻川 光
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 将人
(72)【発明者】
【氏名】松田 遼佑
(72)【発明者】
【氏名】山本 勝彦
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322DB08
5E322DB10
5E322EA11
5F136CC14
5F136FA01
5F136FA03
5F136GA02
5F136GA04
5F136GA40
(57)【要約】
【課題】外周辺の接合部(接合シロ)の範囲が狭いシート状ヒートパイプを提供する。
【解決手段】本発明のSHP1は、1枚のシート体を折曲部7で折り曲げることにより内部に収容空間を有して形成され、外周辺の一部が折曲部7であることにより、外周辺の接合部(接合シロ)12の範囲を狭くする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1枚のシート体を折曲部で折り曲げることにより内部に収容空間を有して形成され、
外周辺の一部が前記折曲部であることを特徴とするシート状ヒートパイプ。
【請求項2】
前記シート体は外周部分に接合部と前記接合部でない開口用縁部を有し、
前記シート体を前記折曲部で折り曲げることにより、前記接合部同士が当接し、
当接した前記接合部を接合することにより形成され、
前記接合部の幅が2mm以下であり、
前記開口用縁部により前記収容空間の内外が連通されることを特徴とする請求項1に記載のシート状ヒートパイプ。
【請求項3】
前記シート体の本体部の内面部には複数の支柱が設けられ、
隣り合う前記支柱の間隔が20mm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のシート状ヒートパイプ。
【請求項4】
前記収容空間に作動流体を注入し、前記収容空間の内部を真空引きするためのノズル部を複数有することを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のシート状ヒートパイプ。
【請求項5】
前記接合部が、ロウ付け、レーザー溶接又は拡散接合の何れかで接合されることを特徴とする請求項2に記載のシート状ヒートパイプ。
【請求項6】
前記シート体の本体部は、前記折曲部の両側がそれぞれ凹形状であることを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載のシート状ヒートパイプ。
【請求項7】
前記シート体が、ステンレス、チタン、銅又はそれらを主成分とする合金の何れかで形成されていることを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載のシート状ヒートパイプ。
【請求項8】
前記収容空間に収容されるウィックは、直径が0.05mm以下の銅、ステンレス又はチタンを主成分とする金属線で形成され、
開き目が200μm以下で編まれたメッシュ形状であることを特徴とする請求項1~7の何れか1項に記載のシート状ヒートパイプ。
【請求項9】
前記収容空間に収容されるウィックは、厚みが0.1mm以下の銅、ステンレス又はチタンを主成分とする金属箔で形成され、
前記ウィックには、エッチング又はプレス成型により形成した交差した溝と孔が形成されていることを特徴とする請求項1~7の何れか1項に記載のシート状ヒートパイプ。
【請求項10】
前記収容空間に収容されるウィックは、銅、ステンレス又はチタンを主成分とする金属により形成された多孔質体であり、
前記ウィックは、厚みが0.1mm以下のシート形状であることを特徴とする請求項1~7の何れか1項に記載のシート状ヒートパイプ。
【請求項11】
前記収容空間に収容されるウィックは、直径が0.03mm以下の金属線を密度が100~350g/mとなるように絡み合わせた不織布であることを特徴とする請求項1~7の何れか1項に記載のシート状ヒートパイプ。
【請求項12】
前記収容空間に収容されるウィックは、複数のシート部材を重ねたものであることを特徴とする請求項1~7の何れか1項に記載のシート状ヒートパイプ。
【請求項13】
前記支柱が前記本体部と別体に形成されていることを特徴とする請求項3に記載のシート状ヒートパイプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スマートフォンやタブレット端末などの携帯機器に搭載可能であり、小型でありながら十分な熱輸送量が得られるシート状ヒートパイプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来この種のヒートパイプとして、特許文献1に記載された平面型ヒートパイプが知られている。特許文献1に記載された平面型ヒートパイプ(1)は、中空の空洞部(13)を有する平面型のコンテナ(10)と、空洞部(13)内に封入された作動流体(図示せず)とを有し、空洞部(13)内には、毛細管力を有するウィック構造体(15)が収納されて構成されている。
【0003】
そして、平面型ヒートパイプ(1)のコンテナ(10)は、対向する2枚の板状部材である一方の板状部材(11)と他方の板状部材(12)が積層されて形成されている。また、空洞部(13)の外周部、すなわち、コンテナ(10)の周縁部が、例えば、レーザー溶接やシーム溶接等の熱溶着手段、超音波溶接、ロウ溶接等を用いて接合されることで空洞部(13)が封止され、空洞部(13)に気密性が付与されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-120416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、薄型化・小型化が進むスマートフォンやタブレット端末などの携帯機器に搭載されるヒートパイプも薄型化・小型化が求められているが、2枚の板状部材(11)、(12)を接合する構成では、コンテナ(10)の周縁部を全て接合する必要があり、周縁部の全周に溶接シロを設ける必要がある。この溶接シロを多く設けることは、ヒートパイプの小型化に逆行するものであり、ヒートパイプを小型化するために溶接シロの範囲を可能な限り減らさなければならないという課題があった。
【0006】
そこで、本発明は、以上の課題を解決し、外周辺の一部を折曲部とすることで、接合部(接合シロ)の範囲が狭いシート状ヒートパイプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のシート状ヒートパイプは、1枚のシート体を折曲部で折り曲げることにより形成され、外周辺の一部が前記折曲部であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本願発明によれば、接合部の面積を小さくすることができ、その結果としてシート状ヒートパイプ全体としての大きさを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態のシート状ヒートパイプの(a)平面図と(b)右側面図と(c)底面図である。
図2】本発明の一実施形態のシート体の折り曲げ前の(a)平面図と(b)A-A線断面図と(c)右側面図と(d)B-B線断面図である。
図3】本発明の一実施形態のシート状ヒートパイプの製造手順を示す図である。
図4】本発明の一実施形態のノズル部を封止・切断する前のシート体の平面図である。
図5】本発明の一実施形態のメッシュ体によるウィックの部分拡大図である。
図6】本発明の一実施形態の金属箔によるウィックの平面図である。
図7】本発明の一実施形態の金属箔によるウィックの右側面図である。
図8】本発明の一実施形態の金属箔によるウィックの底面図である。
図9図6のY-Y線断面図である。
図10】本発明の一実施形態の金属線を焼結した後の不織布によるウィックを示す写真である。
図11図10に示す不織布の(a)ウェブ繊維側と(b)直線繊維側の各表面を部分的に拡大した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明における好ましい実施形態について、スマートフォンやタブレット端末などの携帯機器に搭載されるシート状ヒートパイプ(以下、「SHP」という。)を例にして説明する。以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態におけるSHP1の外観を示している。SHP1は、シート体2と、折り曲げて容器状としたシート体2の内部に収容されるウィック3(図3参照)及び作動流体(図示せず)と、を有して構成される。
【0012】
本実施形態のシート体2は、1枚の薄い金属板で形成されている。なおシート体2は、例えば、ステンレス、チタン、銅や、これらの金属を主成分とする合金を薄い板状にしたものである。
【0013】
図2に示すように、シート体2は、略矩形状の本体部4と、本体部4の一方の短辺部5から突出して形成されたノズル部6と、を有し、仮想線Lを中心に線対称形状を有している。シート体2は、SHP1を形成する過程で、シート体2の短手方向の中央線部である折曲部7で折り曲げて内部に収容空間S(図3(d)、(e)参照)を有する容器状とされる。本体部4の他方の短辺部8と、一方の長辺部9と、他方の長辺部10は、直線状に形成されている。
【0014】
シート体2は、本体壁部11と、接合部12と、本体壁部11と接合部12を接続する接続壁部13と、を有している。接合部12は、ノズル部6の先端部14を除くシート体2の外周部に形成されている。また、図3に示すように、接続壁部13は傾斜しており、本体壁部11と接合部12が同一平面上に位置しないようになっている。すなわち、シート体2の本体部4は、折曲部7の両側がそれぞれ凹形状となっている。
【0015】
図2に示すように、本体壁部11のうち折曲部7を中心に他側部11Bには、外面部15から内面部16方向に突出した複数の支柱17が形成されている。支柱17は絞り加工により形成されている。隣り合う支柱17の間隔Mは20mm以下となっている。なお、支柱17を形成するのは、本体壁部11のうち折曲部7を中心に一側部11Aであってもよい。本実施形態の支柱17は、内面部16側が凸形状、外面部15側が凹形状となっているが、外面部15が凹形状とならないように、シート体2とは別体の円柱形状、角柱形状、円錐台形状等の支柱(図示せず)を内面部16に設けてもよい。また、本実施形態の支柱17は、半球状に形成されているが、後述するように、ウィック3を挟持できる形状であれば、例えば、すり鉢状や円錐状であってもよい。
【0016】
ノズル部6は、収容空間Sに作動流体を注入し収容空間S内を真空引きするものである。ノズル部6は、折曲部7の両側に本体壁部11、その外側に接続壁部13、その外側に接合部12が形成されている。本体壁部11は、ノズル部6の先端部14にまで延設されており、上述のとおり、ノズル部6の先端部14には接合部12が形成されていない開口用縁部18が形成されている。なお、本実施形態のシート体2にはノズル部6が1箇所にのみ形成されているが、複数箇所に形成してもよい。
【0017】
ウィック3は、液相の作動流体に強い毛細管力を生じさせるために、微細な隙間を全体に満遍なく有して構成されたものである。ウィック3として、例えば、金属線を縦横に整列配置して編み込んだ平板状のメッシュ体22や、表面に毛細管力を生じる微細な縦横に交差した溝26と、溝26の適所に等間隔で配置される孔27とを有する平板状の金属箔25や、不織布等を用いることができる。詳細については、以下に説明する。
【0018】
図5は、シート部材としてのメッシュ体22によるウィック3を拡大して示したものである。同図において、ウィック3は、0.05mm以下の直径D1を有する金属線23を縦横に整列配置して、開き目Hが200μm以下となるように編み込んだ平板状のメッシュ体22により構成される。金属線23は、銅、ステンレス又はチタンを主成分とする金属により形成されている。メッシュ体22の構成要素となる金属線23の直径D1を0.05mm以下に細径化することで、これをウィック3として利用した場合に強い毛細管力を得ることができ、併せてSHP1の厚みT1(図1(b)参照)を0.3mm以下に薄型化しても、ウィック3を無理なく収容空間Sに収納できる。また開き目Hは、隣り合う一方の金属線23の内端から他方の金属線23の内端までの距離であり、開き目Hを200μm以下とすることで、金属線23の間に形成された隙間24による強い毛細管力を発揮させることができる。なお、厚み等を調整することにより、メッシュ体22を複数枚重ね合わせて収容空間Sに収納してもよい。
【0019】
図6図9は、シート部材としての金属箔25によるウィック3を各々示したものである。同図において、ウィック3は、0.1mm以下の厚みT2を有し、その表面に毛細管力を生じる微細な縦横に交差した溝26と、溝26の適所に等間隔で配置される孔27とを有する平板状の金属箔25により構成される。溝26と孔27は、エッチング又はプレス成型により形成される。凹状の溝26は、金属箔25の表面にのみ格子状に整列して設けられているが、毛細管力を増すために、金属箔25の裏面にも同様に設けて構わない。金属箔25の表面と裏面とを貫通する孔27は、メッシュ体22の隙間24に相当するもので、毛細管力で溝26に沿って流動する液相の作動流体を、さらに強い毛細管力で孔27に導き、金属箔25の裏面側から全体に拡散させることが可能となり、溝26と孔27との組み合わせによる強い毛細管力を発揮させることができる。また、金属箔25の厚みT2を0.1mm以下にすることで、SHP1の厚みT1を0.3mm以下に薄型化しても、金属箔25(ウィック3)を無理なく収容空間Sに収容できる。なお、厚み等を調整することにより、金属箔25を複数枚重ね合わせて収容空間Sに収納してもよい。
【0020】
図10及び図11は、シート部材としての不織布28によるウィック3を各々示したものである。同図において、ウィック3は、0.03mm以下の直径D2を有する金属線29、30を、100g/m~350g/mの密度で配置した不織布28により構成される。金属線29、30は、銅、ステンレス、チタン、又はこれらの金属を主成分とする合金により形成されている。不織布28は、ほぼ一方向に均一に並ぶ長い直線繊維としての金属線29と、この金属線29よりも短く、ランダムな方向に配置されるウェブ繊維としての金属線30をほぼ均一に重ね合せ、これらの金属線29、30を編むのではなく、絡み合わることでシート状に形成される。これは、網状に縦と横の金属線23を編むメッシュ体22とは異なる。また、金属線29、30を単に絡み合わせただけでは、ウェブ繊維の金属線30が直線繊維の金属線29から外れやすいので、金属線29、30を焼結により互いに接合させた不織布28としてもよい。不織布28の構成要素となる金属線29、30の直径D2を、何れも0.03mm以下に細径化することで、これをウィック3として利用した場合に強い毛細管力を得ることができ、併せてSHP1の厚みT1(図1(b)参照)を0.3mm以下に薄型化しても、不織布28(ウィック3)を無理なく収容空間Sに収容できる。また、金属線29、30を組み合わせた不織布28には、金属線29、30の密度に応じた適切な範囲の大きさの隙間31が形成されるので、毛細管力で金属線29、30の間に沿って流動する液相の作動流体を、さらに強い毛細管力で隙間31に導いて、不織布28の全体に拡散させることが可能となり、ウィック3として強い毛細管力を発揮させることができる。なお、厚み等を調整することにより、不織布28を複数枚重ね合わせて収容空間Sに収納してもよい。
【0021】
その他、ウィック3は、銅、ステンレス又はチタンを主成分とする金属の粉体を焼結して形成した多孔質体(図示せず)を厚み0.1mm以下のシート形状としたものであってもよい。こうしたウィック3をSHP1の収容空間Sに配設することで、ウィック構造体の高い毛細管力による十分な熱拡散性能が得られる。なお、厚み等を調整することにより、このウィック3を複数枚重ね合わせて収容空間Sに収納してもよい。
【0022】
ここで、SHP1の製造手順について説明する。図3に示すように、シート体2を折曲部7で約90度に折り曲げ、ウィック3を本体壁部11の一側部17Aの内面部16に配設する。そして、シート体2を折曲部7でさらに折り曲げ、折曲部7を中心として線対称となっている接合部12同士を当接させる。また、ウィック3は、収容空間S内に配置され本体壁部11の一側部17Aと支柱17により挟持される。その後、図3(e)及び図4に示す接合位置Wをロウ付け、レーザー溶接又は拡散接合により接合する。次に、ノズル部6から収容空間S内に純水などの作動流体の注入し収容空間S内の脱気を行う。その後、本体部4とノズル部6の本体壁部12の連通部分である封入部19を溶接して封止し、ノズル部6を切断・除去することでSHP1が形成される。そして、短辺部5、折曲部7、短辺部8、一方の長辺部9、他方の長辺部10がSHP1の外周辺をなす。
【0023】
なお、接合部12をレーザー溶接する場合には、シート体2を保持する押さえ治具(図示せず)を使用する。従来のように、外周部の全体を溶接する場合には、シート体2の外周部全体を押さえ治具で保持し、シート体2の中央部分には溶接用の開口が必要であるため、押さえ治具を配置できなかった。これに対し、本実施形態では、折曲部7に接合部12が形成されないことから、折曲部7を接合する必要がない。そのため、折曲部7とシート体2の中央部分にも押さえ治具を配置することができ、シート体2を確実に保持し、高精度で溶接を行うことができる。
【0024】
次に、上記構成のSHP1を、薄型の携帯機器に実装した場合の作用効果について説明する。本実施形態のSHP1は、携帯機器の筐体内部に設置される。このとき、SHP1の一側面は、その一部が受熱部として、筐体内部に設置したCPUを含むマザーボード(何れも図示せず)と接触して熱接続され、熱源となるCPUから離れた部位に放熱部(図示せず)が形成される。そして、筐体の内部でCPUなどが発熱して温度が上昇すると、そのCPUからの熱がSHP1の受熱部(図示せず)に伝わり、受熱部では作動流体が蒸発して、SHP1の内部に形成された中空の蒸気通路20を通して、受熱部から温度の低い放熱部に向かって蒸気が流れ、SHP1の内部で熱輸送が行われる。この放熱部に輸送された熱はSHP1の広い平面状の領域に熱拡散され、SHP1の裏表両面からそれぞれ放熱される。これにより携帯機器は、CPUなどに発生する熱を広い領域に熱拡散することができるため、携帯機器の外郭表面に生ずるヒートスポットが緩和され、CPUの温度上昇も抑制することができる。
【0025】
一方、SHP1の放熱部では、蒸気が凝縮して作動流体が溜まるが、SHP1の内部で蒸気通路20に対向配置されたウィック3の強い毛細管力により、作動流体が放熱部から受熱部へと戻される。ウィック3は、上述したメッシュ体22、金属箔25、不織布28のいずれの構成であっても、強い毛細管力で作動流体を放熱部から受熱部へと流動させるため、薄型のウィック3でありながら高い毛細管力が得られ、SHP1として高い熱拡散性能が確保される。したがって、受熱部で作動流体が無くなることはなく、ここで作動流体が再び蒸発して蒸気通路20を伝わり、放熱部に導かれることで熱輸送が継続し、SHP1としての本来の性能が発揮される。
【0026】
以上のように、本実施形態のSHP1は、1枚のシート体2を折曲部7で折り曲げることにより内部に収容空間Sを有して形成され、外周辺の一部が折曲部7であることにより、折曲部7は接合が不要であり、接合部12が形成されないため、SHP1全体での接合部12の面積を小さくすることができ、その結果としてSHP1を小型化することができる。その結果、SHP1を搭載する携帯機器等の小型化も可能となる。
【0027】
また、本実施形態のSHP1は、シート体2の外周部分に接合部12と接合部12でない開口用縁部18を有し、シート体2を折曲部7で折り曲げることにより、接合部12同士が当接し、当接した接合部12を接合することにより形成され、接合部12の幅が2mm以下であり、開口用縁部18により収容空間Sの内外が連通される。そのため、シート体2を折曲部7で折り曲げることにより、ノズル部6を介して内外が連通する収容空間Sを形成することができる。また、接合部12の幅が2mm以下であるため、SHP1全体での接合部12の面積を小さくすることができる。
【0028】
また、本実施形態のSHP1は、シート体2の本体部4の内面部16には複数の支柱17が設けられ、隣り合う支柱17の間隔Mが20mm以下である。そのため、収容空間Sを真空引きすることで、大気圧により本体部4が変形することを防止できる。
【0029】
また、本実施形態のSHP1は、収容空間Sに作動流体を注入し、収容空間Sの内部を真空引きするためのノズル部6を複数有することにより、SHP1の製造工程において、異なる複数の箇所で、収容空間Sに作動流体を注入したり、収容空間Sを真空に引いたりすることが可能になる。また、SHP1の製造工程が終了した製品状態では、それぞれのノズル6に封止部19を設けることで、SHP1の内部を密閉状態に維持して、薄型でも高い熱拡散性能を確保できる。
【0030】
また、本実施形態のSHP1は、接合部12が、ロウ付け、レーザー溶接又は拡散接合の何れかで接合されることにより、接合部12が複数の方法で接合可能であり、接合方法の自由度を高めることができる。
【0031】
また、本実施形態のSHP1は、シート体2の本体部4は、折曲部7の両側がそれぞれ凹形状である。そのため、シート体2を折曲部7で折り曲げることにより、本体部4の内側に収容空間Sが形成される。また、この凹形状の深さを調節することで、SHP1の厚みT1を調節することができる。そのため、SHP1の設計の自由度を高めることができる。
【0032】
また、本実施形態のSHP1は、シート体2が、ステンレス、チタン、銅又はそれらを主成分とする合金の何れかで形成されている。そのため、シート体2を複数種類の金属から選択した金属により形成することができ、SHP1の設計の自由度を高めることができる。
【0033】
また、本実施形態のSHP1は、収容空間Sに収容されるウィック3は、直径D2が0.05mm以下の銅、ステンレス又はチタンを主成分とする金属線23で形成され、開き目Hが200μm以下で編まれたメッシュ形状である。これにより、薄型のウィック3でありながらメッシュ体22による高い毛細管力が得られ、SHP1として高い熱拡散性能を確保できる。
【0034】
また、本実施形態のSHP1は、収容空間Sに収容されるウィック3は、厚みが0.1mm以下の銅、ステンレス又はチタンを主成分とする金属箔25で形成され、ウィック3には、エッチング又はプレス成型により形成した交差した溝26と孔27が形成されている。毛細管力で溝26に沿って流動する液相の作動流体を、さらに強い毛細管力で孔27に導き、金属箔25の裏面側から全体に拡散させることが可能となり、溝26と孔27との組み合わせによる強い毛細管力を発揮させることができる。その結果、薄型のウィック3でありながら金属箔25による高い毛細管力が得られ、SHP1として高い熱拡散性能を確保できる。
【0035】
また、本実施形態のSHP1は、収容空間Sに収容されるウィック3は、銅、ステンレス又はチタンを主成分とする金属により形成された多孔質体であり、ウィック3は、厚みが0.1mm以下のシート形状であることにより、多孔質体が液相の作動流体を高い毛細管力で流動させるウィック構造体として機能し、十分な熱拡散性能が得られるSHP1を提供できる。
【0036】
また、本実施形態のSHP1は、収容空間Sに収容されるウィック3は、直径が0.03mm以下の金属線29、30を密度が100~350g/mとなるように絡み合わせた不織布28であることにより、薄型のウィック3でありながら不織布28による高い毛細管力が得られ、SHP1として高い熱拡散性能を確保できる。
【0037】
また、本実施形態のSHP1は、収容空間Sに収容されるウィック3は、複数のシート部材を重ねたものであることにより、ウィック3の厚みを調節することができる。また、メッシュ体22と金属箔25や、金属箔25と不織布28や、不織布28と多孔質体等、異なる種類のウィック3を組み合わせて重ね合わせることにより、発生する毛細管力を調整することができる。
【0038】
また、本実施形態のSHP1は、支柱17が本体部4と別体に形成されていることにより、本体部4の外面部15を平坦とすることができ、発熱体との接触面積を多くすることができ、受熱効率を上げることができる。
【0039】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、SHP1の外形状は、図1図4に示されるものに限らず、設置される携帯機器の筐体の形状等に対応させた他の外形状とすることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 シート状ヒートパイプ(SHP)
2 シート体
3 ウィック
4 本体部
5 一方の短辺部(外周辺)
6 ノズル部
7 折曲部(外周辺)
8 他方の短辺部(外周辺)
9 一方の長辺部(外周辺)
10 他方の長辺部(外周辺)
12 接合部
16 内面部
17 支柱
18 開口用縁部
23 金属線
26 溝
27 孔
29 金属線
30 金属線
H 開き目
M 間隔
S 収容空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11