(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139715
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】リクライニング装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/225 20060101AFI20230927BHJP
A47C 1/025 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
B60N2/225
A47C1/025
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045398
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100129676
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一
(72)【発明者】
【氏名】石原 慶隆
(72)【発明者】
【氏名】小川 信彦
(72)【発明者】
【氏名】平松 龍一
【テーマコード(参考)】
3B087
3B099
【Fターム(参考)】
3B087BD03
3B099AA05
3B099BA04
3B099CA22
3B099CA34
3B099CB05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ロック時に外歯歯車と内歯歯車とが噛合している側が確実に噛合する程度に内歯歯車と外歯歯車との偏心方向の移動が可能であり、摺動時においても歯車の円筒ボスと多くの面積で接することによって摺動を安定化させることができるリクライニング装置を提供する。
【解決手段】本発明のリクライニング装置は、外歯歯車10と、内歯歯車20と、内周面側にくさび状カム収容部を有し、正面側に突起部36を有するリング30と、外歯歯車10と内歯歯車20の相対回転を許容する一対のくさび状カム50と、リング30の正面側に配置され、一対のくさび状カム50の間にスプリング70の端部を挿入するためのスプリング挿入部と、突起部を配置するための突起用切り欠き部を有するブッシュ45と、くさび状カムを付勢する付勢部材70と、駆動部材60と、駆動部材60に嵌合してリング30を回転させる回転シャフト40と、を備えている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションを構成するシートクッションフレームに対してシートバックを構成するシートバックフレームを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置であって、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの一方に対して直接又は間接的に取り付けられ、外周面に外歯が形成され、内周面に軸方向と同軸の円筒ボスが形成された外歯歯車と、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの他方に対して直接又は間接的に取り付けられ、内周面に少なくとも外歯よりも1つ以上多く設けられた前記外歯と噛合可能な内歯を有し、かつ軸方向と同軸の貫通孔が形成された内歯歯車と、
前記内歯歯車の前記貫通孔の内周と前記外歯歯車の前記円筒ボスの外周との間に配置され、円形に形成された外周面の中心と一部に形成された内周面を円とした場合の中心が偏心して形成されてなり、内周面側にくさび状カム収容部を有し、正面側に突起部を有するリングと、
前記リングのくさび状カム収容部に配置され、前記外歯歯車の前記円筒ボスの外周面と前記内歯歯車の前記貫通孔の内周面に接触することによって、前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を規制するとともに、前記外歯歯車の前記円筒ボスの前記外周面と前記内歯歯車の前記貫通孔の前記内周面を摺動させて前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を許容する一対のくさび状カムと、
前記リングの正面側に配置され、前記一対のくさび状カムの間にスプリングの端部を挿入するためのスプリング挿入部と、前記突起部を配置するための突起部用切り欠き部を有するブッシュと、
前記くさび状カムを離間する方向に付勢する付勢部材と、
前記外歯歯車の前記円筒ボスに同軸かつ回転自在に嵌挿され、内側に嵌合孔と、外周側に前記リングの突起部に係合する突出部と、を有する駆動部材と、
前記駆動部材に嵌合して駆動部材を介して前記リングを回転させる回転シャフトと、
を備えたことを特徴とするリクライニング装置。
【請求項2】
シートクッションを構成するシートクッションフレームに対してシートバックを構成するシートバックフレームを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置であって、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの一方に対して直接又は間接的に取り付けられ、外周面に外歯が形成され、内周面に軸方向と同軸の貫通孔が形成された外歯歯車と、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの他方に対して直接又は間接的に取り付けられ、内周面に少なくとも外歯よりも1つ以上多く設けられた前記外歯と噛合可能な内歯を有し、かつ軸方向と同軸の円筒ボスが形成された内歯歯車と、
前記外歯歯車の前記貫通孔の内周と前記内歯歯車の前記円筒ボスの外周との間に配置され、円形に形成された外周面の中心と一部に形成された内周面を円とした場合の中心が偏心して形成されてなり、内周面側にくさび状カム収容部を有し、正面側に突起部を有するリングと、
前記リングのくさび状カム収容部に配置され、前記内歯歯車の前記円筒ボスの外周面と前記外歯歯車の前記貫通孔の内周面に接触することによって、前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を規制するとともに、前記内歯歯車の前記円筒ボスの前記外周面と前記外歯歯車の前記貫通孔の前記内周面を摺動させて前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を許容する一対のくさび状カムと、
前記リングの正面側に配置され、前記一対のくさび状カムの間にスプリングの端部を挿入するためのスプリング挿入部と、前記突起部を配置するための突起部用切り欠き部を有するブッシュと、
前記くさび状カムを離間する方向に付勢する付勢部材と、
前記内歯歯車の前記円筒ボスに同軸かつ回転自在に嵌挿され、内側に嵌合孔と、外周側に前記リングの突起部に係合する突出部と、を有する駆動部材と、
前記駆動部材に嵌合して駆動部材を介して前記リングを回転させる回転シャフトと、
を備えたことを特徴とするリクライニング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リクライニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本権利者は、シートクッションに対して、シートバックを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置において、
シートクッション及びシートバックのいずれか一方に固定される第1フレームと、シートクッション及びシートバックの他方に固定される第2フレームと、
前記第1フレームに連結されて外周面に外歯が形成され、内周面に軸方向と同軸の外歯ボス部を備える外歯歯車と、
前記第2フレームに連結されて外周面に前記外歯に噛合可能な内歯が形成され、内周面に軸方向と同軸の円筒ボス部を備える内歯歯車と、
前記外歯歯車に同軸的かつ回転自在に嵌合すると共に、前記外歯歯車および前記内歯歯車のいずれか一方を他方の歯車軸を中心に公転させる回転軸と、を備え、
前記円筒ボス部と前記外歯ボス部との間に介挿され、前記円筒ボス部側と前記外歯ボス部とに同時に接触して前記円筒ボス部と前記外歯ボス部との回転を規制すると共に、前記円筒ボス部側と前記外歯ボス部側との少なくとも一方を摺動させ、前記円筒ボス部と前記外歯ボス部との回転を許容する一対のくさび状カムと、
前記一対のくさび状カムを前記円筒ボス部側と前記外歯ボス部側とに同時に接触させる方に付勢するバネ材と、
前記回転軸の回転に伴い回転する円盤状部材であって、軸方向に延在し、前記一対のくさび状カムを前記円筒ボス部側と前記外歯ボス部側との少なくとも一方から非接触にする方向へ押す当接面にテーパーの設けられたカム押し翼を一対備える円盤状部材と、
前記円盤状部材を前記一対のくさび状カム側に押し当て、前記テーパーの設けられた当接面を前記一対のくさび状カムへ当接させる板バネであって、付勢力は前記バネ材よりも弱く設定されている板バネと、を備えるものを提案している(特許文献1)。
【0003】
かかるリクライニング装置によれば、回転軸に連動する円盤状部材のカム押し翼によってくさび状カムを直接作動させるため、外歯歯車と、内歯歯車との間の回転抵抗が均一になり、外歯歯車と内歯歯車の回転をなめらかにすることができる、という効果を有する。
【0004】
かかるリクライニング装置は、円筒ボス部に対して半周以下の範囲でしかくさび状カムが当接していないため、車両シートのシートバックに大きな力が加わった場合に、リクライニング装置に加わる外力に対して、円筒ボス部とくさび状カムとの接触部でしか力を受けることができない、という問題点があった。そのため、加わる外力の方向に応じて一部に大きな力が加わったりした場合に、力をギア歯で受けなければならない場合もあり、このように力をギア歯で受けている場合、差動歯車となっているリクライニング装置ではスムーズに摺動回転させることができなくなるといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、こうした課題を鑑みてなされたものであり、リクライニング装置に加わる外力に対して、加わる外力の方向に応じてくさび状カムが円筒ボスと接することによって、摺動を安定化させることができるリクライニング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の目的を達成するために、以下の手段を採った。
【0008】
本発明のリクライニング装置は、
シートクッションを構成するシートクッションフレームに対してシートバックを構成するシートバックフレームを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置であって、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの一方に対して直接又は間接的に取り付けられ、外周面に外歯が形成され、内周面に軸方向と同軸の円筒ボスが形成された外歯歯車と、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの他方に対して直接又は間接的に取り付けられ、内周面に少なくとも外歯よりも1つ以上多く設けられた前記外歯と噛合可能な内歯を有し、かつ軸方向と同軸の貫通孔が形成された内歯歯車と、
前記内歯歯車の前記貫通孔の内周と前記外歯歯車の前記円筒ボスの外周との間に配置され、円形に形成された外周面の中心と一部に形成された内周面を円とした場合の中心が偏心して形成されてなり、内周面側にくさび状カム収容部を有し、正面側に突起部を有するリングと、
前記リングのくさび状カム収容部に配置され、前記外歯歯車の前記円筒ボスの外周面と前記内歯歯車の前記貫通孔の内周面に接触することによって、前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を規制するとともに、前記外歯歯車の前記円筒ボスの前記外周面と前記内歯歯車の前記貫通孔の前記内周面を摺動させて前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を許容する一対のくさび状カムと、
前記リングの正面側に配置され、前記一対のくさび状カムの間にスプリングの端部を挿入するためのスプリング挿入部と、前記突起部を配置するための突起用切り欠き部を有するブッシュと、
前記くさび状カムを離間する方向に付勢する付勢部材と、
前記外歯歯車の前記円筒ボスに同軸かつ回転自在に嵌挿され、内側に嵌合孔と、外周側に前記リングの突起部に係合する突出部と、を有する駆動部材と、
前記駆動部材に嵌合して駆動部材を介して前記リングを回転させる回転シャフトと、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明は、リングの正面側にくさび状カムを配置し、2段積みとすることによって、円筒ボスとの接触を確保するリングと、外歯歯車を内歯歯車に噛合させる方向へ移動させるくさび状カムとの機能を分離することによって、軸受けとなる円筒ボスの全周にリングを接触させつつ、外歯歯車を内歯歯車へ移動させて効果的に噛合させることができる。このため、摺動時においては、摺動が安定化し、スムーズな回転を確保することができるとともに、ロック状態におけるガタツキの発生を防止することができる。また、リングを回転させる際に、確実にくさび状カムを先に押圧しロックオフさせた後にリングを押すことで、作動を確実かつスムーズにすることができる。
【0010】
また、2段積みとすることによってくさび状カムによる押圧を円筒ボスの根元で受けることができるので、円筒ボスが傾倒する可能性を低減することができ、くさび状カムの押圧による力が逃げることを防止することができる。
【0011】
また、本発明にかかるリクライニング装置において、
シートクッションを構成するシートクッションフレームに対してシートバックを構成するシートバックフレームを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置であって、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの一方に対して直接又は間接的に取り付けられ、外周面に外歯が形成され、内周面に軸方向と同軸の貫通孔が形成された外歯歯車と、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの他方に対して直接又は間接的に取り付けられ、内周面に少なくとも外歯よりも1つ以上多く設けられた前記外歯と噛合可能な内歯を有し、かつ軸方向と同軸の円筒ボスが形成された内歯歯車と、
前記外歯歯車の前記貫通孔の内周と前記内歯歯車の前記円筒ボスの外周との間に配置され、円形に形成された外周面の中心と一部に形成された内周面を円とした場合の中心が偏心して形成されてなり、内周面側にくさび状カム収容部を有し、正面側に突起部を有するリングと、
前記リングのくさび状カム収容部に配置され、前記内歯歯車の前記円筒ボスの外周面と前記外歯歯車の前記貫通孔の内周面に接触することによって、前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を規制するとともに、前記内歯歯車の前記円筒ボスの前記外周面と前記外歯歯車の前記貫通孔の前記内周面を摺動させて前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を許容する一対のくさび状カムと、
前記リングの正面側に配置され、前記一対のくさび状カムの間にスプリングの端部を挿入するためのスプリング挿入部と、前記突起部を配置するための突起用切り欠き部を有するブッシュと、
前記くさび状カムを離間する方向に付勢する付勢部材と、
前記内歯歯車の前記円筒ボスに同軸かつ回転自在に嵌挿され、内側に嵌合孔と、外周側に前記リングの突起部に係合する突出部と、を有する駆動部材と、
前記駆動部材に嵌合して駆動部材を介して前記リングを回転させる回転シャフトと、
を備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明は、上述した発明に対し、内歯歯車に円筒ボスが設けられ、外歯歯車に貫通孔が形成されている点が異なるが、同様に、リングの正面にくさび状カムを配置した2段積みの構成とすることによって、円筒ボスとの接触を確保するリングと、外歯歯車を内歯歯車に噛合させる方向へ移動させるくさび状カムとの機能を分離することによって、ロック状態におけるガタツキの発生を防止するとともに、摺動時においては、摺動が安定化し、スムーズな回転を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、第1実施形態にかかるリクライニング装置100が取り付けられる車両用シート200の模式図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態にかかるリクライニング装置100の内部構造を示す正面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態にかかるリクライニング装置100の分解斜視図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態にかかるリクライニング装置100のA-A断面図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態にかかるリクライニング装置100のリング30と、くさび状カム50の関係を示す正面図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態にかかるリクライニング装置100のブッシュ45を示す正面図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態にかかるリクライニング装置100の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態にかかるリクライニング装置100を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、車両用シート200の模式図であり、
図2は、リクライニング装置100の内部構造を示す正面図であり、
図3は、リクライニング装置100の分解斜視図である。なお、以下に説明する実施形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではない。なお、各図において対応する構成要素には同一又は類似の符号が付されている。また、
図3において、図中の矢印に示された方向をそれぞれ「正面」、「背面」という。
【0015】
(第1実施形態)
第1実施形態にかかるリクライニング装置100は、
図1に示すように、車両用シート200のシートクッション210と、このシートクッション210に対して、傾動可能に取り付けられるシートバック220の傾動の中心位置に取り付けられ、シートバック220に傾動機能を与える装置である。具体的には、シートクッション210の内部に配置されるシートクッションフレームと、シートバック220の内部に配置されるシートバックフレームとの間に直接又は他の取付用プレート230(以下「取付用プレート等」という。)を介して間接的に取り付けられて使用される。
【0016】
本発明にかかるリクライニング装置100は、主として、
図2及び
図3に示すように、外歯歯車10、内歯歯車20、リング30、回転シャフト40、ブッシュ45、くさび状カム50、駆動部材60、弾性体としてスプリング70、プレートカバー80を備えている。なお、
図2では、内部構造を見やすくするため、回転シャフト40は省略されている。
【0017】
外歯歯車10は、
図3に示すように、円板状に形成されており、外周面には外歯11が形成され、中央には、
図3に示すように、円筒ボス12が設けられている。外歯歯車10には、突出部13が設けられており、取付用プレート等230に設けられた嵌合孔と嵌合した状態で溶接等によって車両用シートに取り付けられる。
【0018】
内歯歯車20は、外歯歯車10よりも大きな直径を有する円板状に形成されており、外歯歯車10を内側に装着可能となるように円筒状の凹部が形成され、この凹部の内周面に内歯21(
図2参照)が形成されている。内歯は、外歯歯車10の外歯11の歯数よりも少なくとも1つ以上多く形成されており、外歯歯車10と内歯歯車20は、
図2に示すように、それぞれ外歯歯車10の中心C
1と内歯歯車20の中心C
2が矢印dのように偏心するように内歯21と外歯11に対して噛合している。従って、外歯歯車10と内歯歯車20は差動歯車を形成し、内歯歯車20が外歯11の周りを1周すると、内歯21と外歯11の歯の差分だけ回転が進むことになる。すなわち、例えば、歯が1つだけ異なる場合、外歯歯車10が内歯歯車20の周囲を1周すると歯1つ分回転することになる。内歯歯車20の中心には、
図3に示すように、貫通孔22が設けられている。この内歯歯車20には突出部23が設けられており、取付用プレート等230に設けられた嵌合孔と嵌合した状態で溶接等によって車両用シートに取り付けられる。
【0019】
リング30は、内歯歯車20の貫通孔22の内周面と外歯歯車10の円筒ボス12の外周面12aとの間に配置されている円環状の部材であり、
図5に示すように、円形に形成された外周面33の中心C
3と円形に形成された内周面34が全周にあったと仮定した場合の中心C
4が、外歯歯車10の中心と内歯歯車20の中心の偏心量と同等になるように偏心して形成されている。リング30の内周側には、くさび状カム収容部35が形成されていて、
図5に示すように、後述する一対のくさび状カム50のそれぞれ隙間を有するように配置されている。リング30は、外歯歯車10の円筒ボス12に対しては隙間がなるべくできないように接して形成することが好ましく、内歯歯車20の貫通孔22に対しては、外歯歯車10と内歯歯車20の中心同士の偏心方向に外歯歯車10が移動可能な隙間が設けられるように配置することが好ましい。このように作製することによって、円筒ボス12に対しては、外周面のほぼ全周を接することになるため、摺動時においては、摺動が安定化しスムーズな回転を確保することができ、一方で内歯歯車20を後述するくさび状カム50によって、偏心方向へ移動させることができるので、ロック状態におけるガタツキの発生を防止することができる。リング30は、くさび状カム収容部35の中心に対して反対側に2つの突起部36が設けられており、この2つの突起部36の間に駆動部材60の一部が係止されて回転シャフト40の回転によって駆動部材60を介してリング30が可動することになる。
【0020】
くさび状カム50aとくさび状カム50bは、
図3又は
図5に示すように、面対称に形成されており、くさび状カム50の凹面51(内側の面)は、円筒ボス12の外周面12aの曲面と同一の曲面を有し、凸面52(外側の面)は肉厚が互いに向かい合った側から徐々に薄くなるように形成されている。このくさび状カム50aとくさび状カム50bは、肉厚の厚い側である近接側端部53が互いに向き合うように、かつ前述したように、リング30のくさび状カム収容部35内に、内歯歯車20の貫通孔22の内周面22aに接触するように配設されている。
【0021】
ブッシュ45は、リング30とくさび状カム50の正面側に配置される部材であり、
図6に示すように、略C字状に形成される。ブッシュ45の外周面46は、リング30の外周面とほぼ同様の大きさとなるように円形に形成され、内周面47は、リング30の内周とくさび状カム50の凹面51と沿うように形成されており、外周面46の中心と内周面47の中心は、偏心して形成されている。くさび状カム50aとくさび状カム50bとのそれぞれの近接側端部53との間に配置される部分は、くさび状カム50にスプリング70を挿入することができるように、凹状のスプリング挿入部48が形成されている。また、ブッシュ45のC字の突起部用切り欠き部49は、リング30に形成された突起部36が挿入される。
【0022】
回転シャフト40は、外歯歯車10の円筒ボス12に対して同軸上で回転自在に配置されるものである。回転シャフト40は、シートバック220の傾動を調整する際に回転駆動されるものであり、傾動用モータの回転力を受けるために内筒面には、セレーション41が設けられている。回転シャフト40は、後述する駆動部材60に挿入されるように筒状に形成されるシャフト部42を有しており、駆動部材60と同期回転するように複数の係止部43が設けられている。
【0023】
駆動部材60は、ブッシュ45の厚さとほぼ同様で、かつブッシュ45の内周面47とほぼ同様の大きさの外周に形成されており、このブッシュ45の内周面47に配置されている。駆動部材60の内周には、回転シャフト40の係止部43と嵌合するように嵌合穴61が設けられており、回転シャフト40の回転に伴って回転させられる。また、ブッシュ45には、ブッシュ45の突起部用切り欠き部49内に延設されてなる延設部62からリング30に形成される2つの突起部36内に突出して形成されている突出部63を有している。そのため、回転シャフト40の回転によって回転させられた駆動部材60は、突出部63によってリング30の突起部36を押圧して回転させることができる。
【0024】
付勢部材としてのスプリング70は、弾性体で作製されており、
図3に示すように、環状部71と、この環状部71から90°折れるように立ち上がった端部72a、72bとを有している。端部72a、72bは、それぞれくさび状カム50の近接側端部53に接しており、一対のくさび状カム50a及びくさび状カム50bが離間する方向に付勢している。
【0025】
プレートカバー80は、外歯歯車10、内歯歯車20、リング30、回転シャフト40、ブッシュ45、くさび状カム50、駆動部材60、弾性体としてスプリング70が外れないように固定する部材であり、特にその形態は限定するものではない。
【0026】
以上のように構成されたリング30とブッシュ45は、外歯歯車10の円筒ボス12及び内歯歯車20の貫通孔22の間に形成される空間に2段重ねになるように背面側からリング30,ブッシュ45の順に配置される。リング30側には、くさび状カム収容部35にそれぞれ一対のくさび状カム50が配置される。ブッシュ45側には、内周側に突出部63が突起部36の間に配置されるように駆動部材60に配置された後、スプリング70の端部72a、72bがスプリング挿入部48を介して一対のくさび状カム50a及びくさび状カム50bが離間する方向となるように配置し、回転シャフト40を駆動部材60に嵌合させて組み立てられる。
【0027】
こうして作製されたリクライニング装置100は、以下のようにして作動する。回転シャフト40に力を加えず、回転させていない状態では、一対のくさび状カム50a及びくさび状カム50bが離間する方向にスプリング70によって付勢され、外歯歯車10の円筒ボス12の外周面12aと、リング30のくさび状カム収容部35で押圧し、リング30を内歯歯車20の貫通孔22の内周面22aに押圧接触させている。このため、内歯歯車20と外歯歯車10の相対運動はロックされており、シートバック220はロック状態にある。
【0028】
このロック状態から、回転シャフト40を、例えば
図2において、反時計方向に回転させると、まず、回転シャフト40に嵌合されている駆動部材60が回転し、駆動部材60の回転力が突出部63から突起部36に伝わってリング30が回転することになる。なお、この際に、ブッシュ45も突起部36に押されて同様に回転することになる。この回転により、くさび状カム50bとリング30のくさび状カム収容部35の内壁に対して、クサビ角が設定してあり、クサビ角内壁はくさび状カム50と接触している。リング30の回転により、クサビ角内壁とくさび状カム50の間にスキマが発生しクサビが外れる。この結果、リング30と円筒ボス12及びリング30と内歯歯車20の貫通孔22との間に隙間が発生し、外歯歯車10が内歯歯車20に対して回転可能になる。これに伴い、スプリング70の付勢力によってくさび状カム50aがこの隙間を埋めるように、反時計周りに回転する。くさび状カム50は、回転シャフト40、リング30、ブッシュ45とともに摺動するように反時計周りに回転することになる。こうして、外歯歯車10、内歯歯車20及び回転シャフト40は、差動歯車機構を構成することになる。なお、時計方向の回転も同様にして回転させることができる。
【0029】
こうして作製されたリクライニング装置100は、リング30がリング状に形成され、ブッシュ45もほぼリング状に形成されているため、内歯歯車20又は外歯歯車10に外力が加わった時、外力方向又は反力方向に内歯歯車20又は外歯歯車10を動かそうとするが、動こうとした方向に対して、外歯歯車10の円筒ボス12の外周面12aと、内歯歯車20の貫通孔22に対して、垂直方法にブッシュが挟まり、分力成分を極小に抑えて軸受けとなることができるため、摺動が安定化し、スムーズな回転を確保することができる。
【0030】
また、回転シャフト40を回転させた場合に、ブッシュ45の突起部36の回転方向に対しては隙間のない突出部63で嵌合させているので、タイムラグがなく直ちに歯車機構を稼働させることができる。この際に、リング30は、突出部63から突起部36に伝わって回転するので、内歯歯車20と外歯歯車10の偏心方向に追従するように回転し、回転の間、ブッシュ45によって円筒ボス12の外周面12aの大部分と接触させた状態となり、摺動時においては、摺動が安定化し、スムーズな回転を確保することができる。一方で、くさび状カム50によって外歯歯車10を内歯歯車20との偏心方向へ移動するように付勢されているため、ロック状態におけるガタツキの発生を防止することができる。
【0031】
このようにリング30とくさび状カム50を2段積みとなるように配置することによって、リング30は、円筒ボス12の外周面12aとの接触を確保することができ、くさび状カム50は外歯歯車10と内歯歯車20との偏心状態の保持と、それぞれの機能を分離させることができる。
【0032】
また、カムが背面側に配置されるため、
図4に示すように、カムの押圧力を円筒ボス12の根本側で荷重を受けることができるため、円筒ボス12に加わる荷重を低減することができ、円筒ボス12が傾倒することを防止することができる。
【0033】
(第2実施形態)
第2実施形態にかかるリクライニング装置100の分解斜視図が
図7に示されている。第2実施形態にかかるリクライニング装置100は、外歯歯車10に貫通孔15が形成されており、内歯歯車20に円筒ボス25が設けられている点が異なるのみでそれ以外の点は同一であるので、説明を省略する。
【0034】
外歯歯車10は、
図7に示すように、円板状に形成されており、外周面には外歯11が形成され、中央には、貫通孔15が設けられている。
【0035】
内歯歯車20は、外歯歯車10よりも大きな直径を有する円板状に形成されており、外歯歯車10を内側に装着可能となるように円筒状の凹部が形成され、この凹部の内周面に内歯21が形成されている。内歯は、外歯歯車10の外歯11の歯数よりも少なくとも1つ以上多く形成されており、外歯歯車10と内歯歯車20は、それぞれ外歯歯車10の中心と内歯歯車20の中心が偏心するように内歯21と外歯11に対して噛合している点は第1実施形態と同様である。内歯歯車20の中心には、
図7に示すように、円筒ボス25が設けられている。
【0036】
第2実施形態にかかるリクライニング装置100の可動方法は、第1実施形態と同様に、回転シャフト40に力を加えず、回転させていない状態では、一対のくさび状カム50a及びくさび状カム50bが離間する方向にスプリング70によって付勢され、ブッシュ45の内周面と、内歯歯車20の円筒ボス25の外周面25aとに接触している。このため、内歯歯車20と外歯歯車10の相対運動はロックされており、シートバック220はロック状態にある。このロック状態から回転シャフト40を、反時計方向に回転させると、まず、回転シャフト40に嵌合されている駆動部材60が回転し、駆動部材60の回転力が突出部63から突起部36に伝わってリング30が回転することになる。なお、この際に、ブッシュ45も突起部36に押されて同様に回転することになる。この回転により、くさび状カム50bとリング30のくさび状カム収容部35の内壁に対して、クサビ角が設定してあり、クサビ角内壁はくさび状カム50と接触している。リング30の回転により、クサビ角内壁はくさび状カム50の間にスキマが発生しクサビが外れる。この結果、リング30と内歯歯車20の円筒ボス25及びリング30と外歯歯車10の貫通孔15との間に隙間が発生し、外歯歯車10が内歯歯車20に対して回転可能になる。これに伴い、スプリング70の付勢力によってくさび状カム50aがこの隙間を埋めるように、反時計周りに回転する。くさび状カム50は、回転シャフト40、リング30、ブッシュ45とともに摺動するように反時計周りに回転することになる。こうして、外歯歯車10、内歯歯車20及び回転シャフト40は、差動歯車機構を構成することになる。なお、時計方向の回転も同様にして回転させることができる。なお、時計方向の回転も同様にして回転させることができる。
【0037】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施しうる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
上述した実施の形態で示すように、主として、車両用シートのリクライニング装置として産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0039】
10…外歯歯車、11…外歯、12…円筒ボス、12a…外周面、15…貫通孔、20…内歯歯車、21…内歯、22…貫通孔、22a…内周面、23…突出部、25…円筒ボス、25a…外周面、30…リング、33…外周面、34…内周面、35…くさび状カム収容部、36…突起部、40…回転シャフト、41…セレーション、42…シャフト部、43…係止部、45…ブッシュ、46…外周面、47…内周面、48…スプリング挿入部、49…突起部用切り欠き部、50…くさび状カム、50a…くさび状カム、50b…くさび状カム、51…凹面、52…凸面、53…近接側端部、60…駆動部材、61…嵌合穴、62…延設部、63…突出部、70…スプリング、71…環状部、72a、72b…端部、80…プレートカバー、100…リクライニング装置、200…車両用シート、210…シートクッション、220…シートバック、230…取付用プレート