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特開2023-139739自立運転システムおよび自立運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139739
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】自立運転システムおよび自立運転方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20230927BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230927BHJP
   H02J 15/00 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
H02J3/38 180
H02J3/38 120
H02J3/38 170
H02J7/00 B
H02J15/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045427
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山根 俊博
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5G066HA06
5G066HA15
5G066HB06
5G066HB07
5G066HB09
5G066JA02
5G066JB03
5G503AA01
5G503AA05
5G503AA06
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA08
5G503DA04
(57)【要約】
【課題】自立運転時の停電の発生を防止することができる自立運転システムおよび自立運転方法を提供する。
【解決手段】再生可能エネルギー発電設備PVと、この再生可能エネルギー発電設備PVの発電電力を蓄電する蓄電池BATと、水を電気分解することで水素を生成する水電解装置WEと、水素を使用して発電する燃料電池FCと、前記蓄電池BATの充電率に基づいて、前記水電解装置WEへ給電される電力と、前記燃料電池FCの出力を制御する制御手段14とを備えた自立運転システム10であって、前記制御手段14は、前記充電率の値が第一閾値以上のとき、前記水電解装置WEへ電力を給電し、前記充電率の値が前記第一閾値未満で、前記第一閾値より低い第二閾値以上のとき、前記水電解装置WEへの電力の給電を停止するように制御するようにする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能エネルギー発電設備と、この再生可能エネルギー発電設備の発電電力を蓄電する蓄電池と、水を電気分解することで水素を生成する水電解装置と、水素を使用して発電する燃料電池と、前記蓄電池の充電率に基づいて、前記水電解装置へ給電される電力と、前記燃料電池の出力を制御する制御手段と、を備えた自立運転システムであって、
前記制御手段は、前記充電率の値が第一閾値以上のとき、前記水電解装置へ電力を給電し、前記充電率の値が前記第一閾値未満で、前記第一閾値より低い第二閾値以上のとき、前記水電解装置への電力の給電を停止する、
ことを特徴とする自立運転システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記充電率の値が前記第一閾値より高い第三閾値以上のとき、前記充電率の値が前記第一閾値以上で前記第三閾値未満のときに比べ、前記水電解装置へ給電する電力を大きくする、
ことを特徴とする請求項1に記載の自立運転システム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記充電率の値が前記第一閾値未満で、前記前記第一閾値より低い第二閾値以上のとき、前記燃料電池の稼働を停止し、前記充電率の値が第二閾値未満のとき、前記燃料電池から電力を出力する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の自立運転システム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記充電率の値が前記第二閾値より低い第四閾値以下のとき、前記充電率の値が前記第四閾値以上で前記第二閾値未満のときに比べ、前記燃料電池から出力される電力を大きくする、
ことを特徴とする請求項3に記載の自立運転システム。
【請求項5】
再生可能エネルギー発電設備と、この再生可能エネルギー発電設備の発電電力を蓄電する蓄電池と、水を電気分解することで水素を生成する水電解装置と、水素を使用して発電する燃料電池とを備えた自立運転システムにおいて、前記蓄電池の充電率に基づいて、前記水電解装置へ給電される電力と、前記燃料電池の出力を制御する自立運転方法であって、
前記充電率の値が第一閾値以上のとき、前記水電解装置へ電力を給電し、前記充電率の値が前記第一閾値未満で、前記第一閾値より低い第二閾値以上のとき、前記水電解装置への電力の給電を停止する、
ことを特徴とする自立運転方法。
【請求項6】
前記制御手段は、前記充電率の値が前記第一閾値より高い第三閾値以上のとき、前記充電率の値が前記第一閾値以上で前記第三閾値未満のときに比べ、前記水電解装置へ給電する電力を大きくする、
ことを特徴とする請求項5に記載の自立運転方法。
【請求項7】
前記充電率の値が前記第一閾値未満で、前記前記第一閾値より低い第二閾値以上のとき、前記燃料電池の稼働を停止し、前記充電率の値が第二閾値未満のとき、前記燃料電池から電力を出力する、
ことを特徴とする請求項5または6に記載の自立運転方法。
【請求項8】
前記制御手段は、前記充電率の値が前記第二閾値より低い第四閾値以下のとき、前記充電率の値が前記第四閾値以上で前記第二閾値未満のときに比べ、前記燃料電池から出力される電力を大きくする、
ことを特徴とする請求項7に記載の自立運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素を活用した自立運転システムおよび自立運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、気候変動をもたらす温室効果ガスの大幅削減が求められる中、CO削減を目的として太陽光発電に代表される自然エネルギーの活用技術への取り組みが活発化している。太陽光発電は天候によって発電出力が大きく変動するため、負荷電力に対する過不足を調整するための蓄エネルギー装置が必要となる。こうした蓄エネルギー装置としては、蓄電池設備や水素利用設備などがある。
【0003】
例えば、自立運転時の蓄電池の残量を適切に保つための技術として、発電機出力を制御する方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-52497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、水素を利用した再生エネルギー活用システムについては、現在のところ、あまり検討されていないのが実情である。そこで本発明者は、図3に示す水素を利用した再生エネルギー活用システムの構成例を基に種々の検討を行った。この図に示すように、再生エネルギー活用システムは、建物に設置した太陽光発電設備PV等による発生電力を蓄電する蓄電池BATと、電力を利用して水素を生成する水電解装置WE、生成した水素を貯蔵する水素吸蔵合金タンクMH、貯蔵された水素を使用して電力を発生する燃料電池FCからなる水素利用システムとで構成される。各構成機器は、電力線3に接続され、制御システム4によって制御される。電力線3は、遮断器5を介して商用の電力系統6に接続される。この再生エネルギー活用システムにおいて、通常時(連系運転時)は、遮断器5を投入して建物負荷1と建物負荷2に電力を供給し、電力系統6の停電時(自立運転時)は、遮断器5を開放して自立運転範囲内の建物負荷2に電力を供給する。
【0006】
再生エネルギー活用システムの自立運転では、常に自立運転範囲内の電力の収支をゼロに保つ必要がある。図3の構成では、蓄電池BATがCVCF制御を行って系統の電圧・周波数を一定に保つとともに、自立運転範囲内の電力の収支を充放電により調整する。しかし、自立運転時に蓄電池BATが満充電、もしくは蓄電量がなくなると、停電が発生するという問題があった。
【0007】
本発明は、本発明者の検討の結果、見出された問題に鑑みてなされたものであって、自立運転時の停電の発生を防止することができる自立運転システムおよび自立運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る自立運転システムは、再生可能エネルギー発電設備と、この再生可能エネルギー発電設備の発電電力を蓄電する蓄電池と、水を電気分解することで水素を生成する水電解装置と、水素を使用して発電する燃料電池と、前記蓄電池の充電率に基づいて、前記水電解装置へ給電される電力と、前記燃料電池の出力を制御する制御手段と、を備えた自立運転システムであって、前記制御手段は、前記充電率の値が第一閾値以上のとき、前記水電解装置へ電力を給電し、前記充電率の値が前記第一閾値未満で、前記第一閾値より低い第二閾値以上のとき、前記水電解装置への電力の給電を停止する、ことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る他の自立運転システムは、上述した発明において、前記制御手段は、前記充電率の値が前記第一閾値より高い第三閾値以上のとき、前記充電率の値が前記第一閾値以上で前記第三閾値未満のときに比べ、前記水電解装置へ給電する電力を大きくする、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る他の自立運転システムは、上述した発明において、前記制御手段は、前記充電率の値が前記第一閾値未満で、前記前記第一閾値より低い第二閾値以上のとき、前記燃料電池の稼働を停止し、前記充電率の値が第二閾値未満のとき、前記燃料電池から電力を出力する、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る他の自立運転システムは、上述した発明において、前記制御手段は、前記充電率の値が前記第二閾値より低い第四閾値以下のとき、前記充電率の値が前記第四閾値以上で前記第二閾値未満のときに比べ、前記燃料電池から出力される電力を大きくする、ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る自立運転方法は、再生可能エネルギー発電設備と、この再生可能エネルギー発電設備の発電電力を蓄電する蓄電池と、水を電気分解することで水素を生成する水電解装置と、水素を使用して発電する燃料電池とを備えた自立運転システムにおいて、前記蓄電池の充電率に基づいて、前記水電解装置へ給電される電力と、前記燃料電池の出力を制御する自立運転方法であって、前記充電率の値が第一閾値以上のとき、前記水電解装置へ電力を給電し、前記充電率の値が前記第一閾値未満で、前記第一閾値より低い第二閾値以上のとき、前記水電解装置への電力の給電を停止する、ことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る他の自立運転方法は、上述した発明において、前記制御手段は、前記充電率の値が前記第一閾値より高い第三閾値以上のとき、前記充電率の値が前記第一閾値以上で前記第三閾値未満のときに比べ、前記水電解装置へ給電する電力を大きくする、ことを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る他の自立運転方法は、上述した発明において、前記充電率の値が前記第一閾値未満で、前記前記第一閾値より低い第二閾値以上のとき、前記燃料電池の稼働を停止し、前記充電率の値が第二閾値未満のとき、前記燃料電池から電力を出力する、ことを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る他の自立運転方法は、上述した発明において、前記制御手段は、前記充電率の値が前記第二閾値より低い第四閾値以下のとき、前記充電率の値が前記第四閾値以上で前記第二閾値未満のときに比べ、前記燃料電池から出力される電力を大きくする、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る自立運転システムによれば、再生可能エネルギー発電設備と、この再生可能エネルギー発電設備の発電電力を蓄電する蓄電池と、水を電気分解することで水素を生成する水電解装置と、水素を使用して発電する燃料電池と、前記蓄電池の充電率に基づいて、前記水電解装置へ給電される電力と、前記燃料電池の出力を制御する制御手段と、を備えた自立運転システムであって、前記制御手段は、前記充電率の値が第一閾値以上のとき、前記水電解装置へ電力を給電し、前記充電率の値が前記第一閾値未満で、前記第一閾値より低い第二閾値以上のとき、前記水電解装置への電力の給電を停止するので、蓄電池が満充電に近づいて電力が余剰した際の停電の発生を防止することができる。このため、自立運転時の停電の発生を防止することができるという効果を奏する。
【0017】
また、本発明に係る他の自立運転システムによれば、前記制御手段は、前記充電率の値が前記第一閾値より高い第三閾値以上のとき、前記充電率の値が前記第一閾値以上で前記第三閾値未満のときに比べ、前記水電解装置へ給電する電力を大きくするので、蓄電池が満充電に近づいて電力が余剰した際の停電の発生をより確実に防止することができるという効果を奏する。
【0018】
また、本発明に係る他の自立運転システムによれば、前記制御手段は、前記充電率の値が前記第一閾値未満で、前記前記第一閾値より低い第二閾値以上のとき、前記燃料電池の稼働を停止し、前記充電率の値が第二閾値未満のとき、前記燃料電池から電力を出力するので、蓄電池の蓄電残量がなくなって電力が不足した際の停電の発生を防止することができるという効果を奏する。
【0019】
また、本発明に係る他の自立運転システムによれば、前記制御手段は、前記充電率の値が前記第二閾値より低い第四閾値以下のとき、前記充電率の値が前記第四閾値以上で前記第二閾値未満のときに比べ、前記燃料電池から出力される電力を大きくするので、蓄電池の蓄電残量がなくなって電力が不足した際の停電の発生をより確実に防止することができるという効果を奏する。
【0020】
また、本発明に係る自立運転方法によれば、再生可能エネルギー発電設備と、この再生可能エネルギー発電設備の発電電力を蓄電する蓄電池と、水を電気分解することで水素を生成する水電解装置と、水素を使用して発電する燃料電池とを備えた自立運転システムにおいて、前記蓄電池の充電率に基づいて、前記水電解装置へ給電される電力と、前記燃料電池の出力を制御する自立運転方法であって、前記充電率の値が第一閾値以上のとき、前記水電解装置へ電力を給電し、前記充電率の値が前記第一閾値未満で、前記第一閾値より低い第二閾値以上のとき、前記水電解装置への電力の給電を停止するので、蓄電池が満充電に近づいて電力が余剰した際の停電の発生を防止することができる。このため、自立運転時の停電の発生を防止することができるという効果を奏する。
【0021】
また、本発明に係る他の自立運転方法によれば、前記制御手段は、前記充電率の値が前記第一閾値より高い第三閾値以上のとき、前記充電率の値が前記第一閾値以上で前記第三閾値未満のときに比べ、前記水電解装置へ給電する電力を大きくするので、蓄電池が満充電に近づいて電力が余剰した際の停電の発生をより確実に防止することができるという効果を奏する。
【0022】
また、本発明に係る他の自立運転方法によれば、前記充電率の値が前記第一閾値未満で、前記前記第一閾値より低い第二閾値以上のとき、前記燃料電池の稼働を停止し、前記充電率の値が第二閾値未満のとき、前記燃料電池から電力を出力するので、蓄電池の蓄電残量がなくなって電力が不足した際の停電の発生を防止することができるという効果を奏する。
【0023】
また、本発明に係る他の自立運転方法によれば、前記制御手段は、前記充電率の値が前記第二閾値より低い第四閾値以下のとき、前記充電率の値が前記第四閾値以上で前記第二閾値未満のときに比べ、前記燃料電池から出力される電力を大きくするので、蓄電池の蓄電残量がなくなって電力が不足した際の停電の発生をより確実に防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明に係る自立運転システムおよび自立運転方法の実施の形態を示す図である。
図2図2は、本実施の形態における状態遷移図である。
図3図3は、再生エネルギー活用システムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明に係る自立運転システムおよび自立運転方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0026】
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1について説明する。
図1に示すように、本発明の実施の形態1に係る自立運転システム10は、建物に設置した太陽光発電設備PV(再生可能エネルギー発電設備)と、太陽光発電設備PVによる余剰電力(発電電力)を蓄電する蓄電池BATと、水素利用システム12とで構成される。蓄電池BATは、蓄電した蓄電量を用いて放電電力として出力する。水素利用システム12は、水電解装置WEと、水素吸蔵合金タンクMHと、燃料電池FCとからなる。水電解装置WEは、供給される電力(余剰電力および放電電力)を利用して水を酸素と水素に電気分解し、水素を生成する装置である。水素吸蔵合金タンクMHは、水電解装置WEで生成された水素を貯蔵するタンクである。燃料電池FCは、水素吸蔵合金タンクMHに貯蔵された水素を利用して発電する。発電した電力は建物負荷1、2に供給可能である。
【0027】
上記の各構成機器(太陽光発電設備PV、蓄電池BAT、水電解装置WE、水素吸蔵合金タンクMH燃料電池FC)は、電力線3に接続される。各構成機器の動作状態は、コンピュータからなる制御装置14(制御手段)によって制御される。電力線3は、遮断器5を介して電力系統6に接続される。電力系統6は建物外部から交流電力を供給する商用系統である。この自立運転システム10において、通常時(連系運転時)は、遮断器5を投入して建物負荷1と建物負荷2に、商用の電力系統6の停電時(自立運転時)は、遮断器5を開放して自立運転範囲内の建物負荷2に電力を供給する。
【0028】
制御装置14は、蓄電池のSOC(State Of Charge)[%](充電率)に基づいて、水電解装置WEへ給電される電力と、燃料電池FCの出力を制御する。なお、SOCは、満充電状態を100%、完全放電状態を0%と定義し、図示しない測定手段により所定の時間間隔で蓄電池BATから取得されるものとする。
【0029】
次に、制御装置14による制御方法について説明する。
本実施の形態1では、水電解装置WEと燃料電池FCの出力を蓄電池BATの蓄電量SOC[%]の測定値に応じて制御する。具体的には、SOCの値がSOC(第一閾値)以上のとき、水電解装置WEへ電力を給電し、SOCの値がSOC未満で、SOCより低いSOC(第二閾値)以上のとき、水電解装置WEへの電力の給電を停止する。例えば、下記の(1)~(3)のように制御することにより、蓄電池BATのSOC[%]がSOC~SOCの範囲内となるようにしてもよい。
【0030】
(1)SOC<SOCの場合→ FC:PFC[kW] 、WE:0[kW](停止)
(2)SOC≦SOC<SOCの場合→ FC:0[kW](停止) 、WE:0[kW](停止)
(3)SOC≦SOCの場合→ FC:0[kW](停止) 、WE:PWE[kW]
【0031】
本実施の形態1によれば、上記のように制御することで、自立運転時の停電の発生を防止することができる。
【0032】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について説明する。
上記の実施の形態1の制御方法では、以下のような問題が生じるおそれがある。
まず、上記(1)の際に電力が不足すると、蓄電池BATが放電して蓄電量がなくなり、水素吸蔵合金タンクMHに水素が残っていた場合でも停電が発生する。
逆に(3)の際に電力が余剰すると、蓄電池BATが充電して満充電となり、水素吸蔵合金タンクMHに水素を蓄える余力があった場合でも停電が発生する。
【0033】
そこで、本実施の形態2では、制御装置14が、あらかじめ段階的に設定された複数の閾値と、取得されたSOCの値とを比較して、SOCの値が属する閾値範囲を判定し、判定した閾値範囲が100%に近いものほど、水電解装置WEへ給電される電力が大きくなるように段階的に制御する。また、判定した閾値範囲が0%に近いものほど、燃料電池FCの出力が大きくなるように段階的に制御する。
【0034】
次に、制御装置14による制御方法の一例について説明する。
図2は、本実施の形態2の実施例を示した遷移状態図である。図の横軸は蓄電池BATのSOC[%]、縦軸は水電解装置WEの電力PWE[kW]と燃料電池FCの出力PFC[kW]を示しており、PWEとPFCは任意に設定可能である。SOC、SOC、SOC、SOC、SOCは水電解装置WEや燃料電池FCの出力変更のために段階的に設定された閾値である。
【0035】
ここでは簡単のため、水電解装置WEの電力PWEと燃料電池FCの出力PFCを2段階(PWEと2×PWE、もしくはPFCと2×PFC)に変更制御するものとして説明するが、本発明はこれに限るものではなく、システムの構成等に応じで3段階以上とすることも可能である。
【0036】
図2に示すように、制御装置14が、取得した蓄電池BATの現在のSOCに応じて水電解装置WEや燃料電池FCの出力を変更する制御を行う。より具体的には、以下のような制御を行う。
【0037】
まず、現在のSOCが閾値SOC未満であると仮定した場合、WE:0[kW](停止)、FC:2×PFC[kW]の第1制御モードで制御する。その後、SOCが閾値SOCを超過してSOCに達した際に制御モードを遷移し、WE:0[kW](停止)、FC:PFC[kW]の第2制御モードで制御する。また、SOCが閾値SOCに達した際に制御モードを遷移し、WE:0[kW](停止)、FC:0[kW](停止)の第3制御モードで制御する。また、SOCが閾値SOCに達した際に制御モードを遷移し、WE:PWE[kW]、FC:0[kW](停止)の第4制御モードで制御する。また、SOCが閾値SOCに達した際に制御モードを遷移し、WE:2×PWE[kW]、FC:0[kW](停止)の第5制御モードで制御する。この場合、SOCは第四閾値、SOCは第二閾値、SOCは第一閾値、SOCは第三閾値に相当する。
【0038】
また、現在のSOCが閾値SOC以上であると仮定した場合、WE:2×PWE[kW]、FC:0[kW](停止)の第5制御モードで制御する。その後、SOCが閾値SOCを下回って閾値SOCに達した際に制御モードを遷移し、WE:PWE[kW]、FC:0[kW](停止)の第4制御モードで制御する。また、SOCが閾値SOCを下回った際に制御モードを遷移し、WE:0[kW](停止)、FC:0[kW](停止)の第3制御モードで制御する。また、SOCが閾値SOCを下回った際に制御モードを遷移し、WE:0[kW](停止)、FC:PFC[kW]の第2制御モードで制御する。また、SOCが閾値SOCを下回った際に制御モードを遷移し、WE:0[kW](停止)、FC:2×PFC[kW]の第1制御モードで制御する。
【0039】
また、現在のSOCがSOC≦SOC<SOCであると仮定した場合、現在の制御モードと閾値に応じて、他の閾値に達した際に遷移する制御モードを決定する。例えば、SOC≦SOC<SOCであり、現在の制御モードが第2制御モードである場合は、SOCが閾値SOCを下回って閾値SOCに達した際に制御モードを遷移し、WE:0[kW](停止)、FC:2×PFC[kW]の第1制御モードで制御する。また、SOCが閾値SOCに達した際に制御モードを遷移し、WE:0[kW](停止)、FC:0[kW](停止)の第3制御モードで制御する。
【0040】
一方、SOC≦SOC<SOCであり、現在の制御モードが第3制御モードである場合は、SOCが閾値SOCに達した際に制御モードを遷移し、WE:0[kW](停止)、FC:PFC[kW]の第2制御モードで制御する。また、SOCが閾値SOCを上回ってSOCに達した際に制御モードを遷移し、WE:PWE[kW]、FC:0[kW](停止)の第4制御モードで制御する。
【0041】
このような制御により、蓄電池BATの満充電や残量ゼロによる停電を防止することが可能である。したがって、本実施の形態によれば、蓄電池BATが満充電に近づいて電力が余剰した際の停電の発生を防止することができる。また、蓄電池BATの蓄電残量がなくなって電力が不足することによって生じる停電の発生を防止することができる。このため、自立運転時の停電の発生を防止することができる。また、自立運転時に太陽光発電設備のような再生可能エネルギー発電設備の余剰電力を最大限活用することができ、安定した自立運転が可能となる。
【0042】
加えて本発明では、出力変更の制御にSOCの閾値に幅を持たせたヒステリシスを設けることにより、水電解装置WEや燃料電池FCの起動・停止が繰り返される、いわゆるハンチングを防止することができる。本発明のヒステリシスとは、制御モードを遷移する制御の経路が、SOCが上昇して所定の閾値になった場合と、SOCが低下して所定の閾値になった場合とで異なることを意味している。具体的には、SOCが閾値SOCに達した際、電解装置WEへの電力の給電を開始する一方、SOCが閾値SOCより低い閾値SOCを下回った際、電解装置WEへの電力の給電を停止する。またSOCが閾値SOCを下回った際、燃料電池FCからの電力の出力を開始する一方、SOCが閾値SOCより高い閾値SOCに達した際、燃料電池FCからの電力の出力を停止する。このように、現在の状態からの変化を極力抑制する制御を行うものである。
【0043】
以上説明したように、本発明に係る自立運転システムによれば、再生可能エネルギー発電設備と、この再生可能エネルギー発電設備の発電電力を蓄電する蓄電池と、水を電気分解することで水素を生成する水電解装置と、水素を使用して発電する燃料電池と、前記蓄電池の充電率に基づいて、前記水電解装置へ給電される電力と、前記燃料電池の出力を制御する制御手段と、を備えた自立運転システムであって、前記制御手段は、前記充電率の値が第一閾値以上のとき、前記水電解装置へ電力を給電し、前記充電率の値が前記第一閾値未満で、前記第一閾値より低い第二閾値以上のとき、前記水電解装置への電力の給電を停止するので、蓄電池が満充電に近づいて電力が余剰した際の停電の発生を防止することができる。このため、自立運転時の停電の発生を防止することができる。
【0044】
また、本発明に係る他の自立運転システムによれば、前記制御手段は、前記充電率の値が前記第一閾値より高い第三閾値以上のとき、前記充電率の値が前記第一閾値以上で前記第三閾値未満のときに比べ、前記水電解装置へ給電する電力を大きくするので、蓄電池が満充電に近づいて電力が余剰した際の停電の発生をより確実に防止することができる。
【0045】
また、本発明に係る他の自立運転システムによれば、前記制御手段は、前記充電率の値が前記第一閾値未満で、前記前記第一閾値より低い第二閾値以上のとき、前記燃料電池の稼働を停止し、前記充電率の値が第二閾値未満のとき、前記燃料電池から電力を出力するので、蓄電池の蓄電残量がなくなって電力が不足した際の停電の発生を防止することができる。
【0046】
また、本発明に係る他の自立運転システムによれば、前記制御手段は、前記充電率の値が前記第二閾値より低い第四閾値以下のとき、前記充電率の値が前記第四閾値以上で前記第二閾値未満のときに比べ、前記燃料電池から出力される電力を大きくするので、蓄電池の蓄電残量がなくなって電力が不足した際の停電の発生をより確実に防止することができる。
【0047】
また、本発明に係る自立運転方法によれば、再生可能エネルギー発電設備と、この再生可能エネルギー発電設備の発電電力を蓄電する蓄電池と、水を電気分解することで水素を生成する水電解装置と、水素を使用して発電する燃料電池とを備えた自立運転システムにおいて、前記蓄電池の充電率に基づいて、前記水電解装置へ給電される電力と、前記燃料電池の出力を制御する自立運転方法であって、前記充電率の値が第一閾値以上のとき、前記水電解装置へ電力を給電し、前記充電率の値が前記第一閾値未満で、前記第一閾値より低い第二閾値以上のとき、前記水電解装置への電力の給電を停止するので、蓄電池が満充電に近づいて電力が余剰した際の停電の発生を防止することができる。このため、自立運転時の停電の発生を防止することができる。
【0048】
また、本発明に係る他の自立運転方法によれば、前記制御手段は、前記充電率の値が前記第一閾値より高い第三閾値以上のとき、前記充電率の値が前記第一閾値以上で前記第三閾値未満のときに比べ、前記水電解装置へ給電する電力を大きくするので、蓄電池が満充電に近づいて電力が余剰した際の停電の発生をより確実に防止することができる。
【0049】
また、本発明に係る他の自立運転方法によれば、前記充電率の値が前記第一閾値未満で、前記前記第一閾値より低い第二閾値以上のとき、前記燃料電池の稼働を停止し、前記充電率の値が第二閾値未満のとき、前記燃料電池から電力を出力するので、蓄電池の蓄電残量がなくなって電力が不足した際の停電の発生を防止することができる。
【0050】
また、本発明に係る他の自立運転方法によれば、前記制御手段は、前記充電率の値が前記第二閾値より低い第四閾値以下のとき、前記充電率の値が前記第四閾値以上で前記第二閾値未満のときに比べ、前記燃料電池から出力される電力を大きくするので、蓄電池の蓄電残量がなくなって電力が不足した際の停電の発生をより確実に防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上のように、本発明に係る自立運転システムおよび自立運転方法は、水素を利用した自立運転型の再生可能エネルギーシステムに有用であり、特に、自立運転時の停電の発生を防止するのに適している。
【符号の説明】
【0052】
10 自立運転システム
12 水素利用システム
14 制御装置(制御手段)
PV 太陽光発電設備(再生可能エネルギー発電設備)
BAT 蓄電池
WE 水電解装置
MH 水素吸蔵合金タンク
FC 燃料電池
図1
図2
図3