(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139751
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】見当制御装置、見当制御方法、見当制御プログラム、制御装置
(51)【国際特許分類】
B41F 33/00 20060101AFI20230927BHJP
B41F 13/02 20060101ALI20230927BHJP
G06F 3/16 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
B41F33/00 290
B41F13/02 263
G06F3/16 650
G06F3/16 630
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045445
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】平山 大介
【テーマコード(参考)】
2C250
【Fターム(参考)】
2C250EA43
2C250EA45
2C250EB29
(57)【要約】
【課題】見当制御を効率的に行える見当制御装置等を提供する。
【解決手段】見当制御装置30は、操作者OPの音声を認識する音声認識部32と、操作者OPの音声に応じて、ウェブ50に順次印刷する複数の印刷ユニット11A、11B、11C、11Dの刷版の見当制御に関する見当制御指令を、複数の印刷ユニット11A、11B、11C、11Dの少なくともいずれかに対して生成する制御部31と、を備える。見当制御指令は、各印刷ユニット11A、11B、11C、11Dの刷版が巻き付けられた版胴13A、13B、13C、13Dの位相を調整する版胴位相調整指令と、版胴13A、13B、13C、13Dの軸方向の位置を調整する版胴位置調整指令と、見当制御に関する見当制御状況を要求する見当制御状況要求指令を含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者の音声を認識する音声認識部と、
前記操作者の音声に応じて、被印刷物に順次印刷する複数の印刷ユニットの刷版の見当制御に関する見当制御指令を、前記複数の印刷ユニットの少なくともいずれかに対して生成する制御部と、
を備える見当制御装置。
【請求項2】
前記音声認識部は、前記操作者が装着可能なデバイスによって構成される、請求項1に記載の見当制御装置。
【請求項3】
前記見当制御指令は、前記各印刷ユニットの刷版が巻き付けられた版胴の位相を調整する版胴位相調整指令を含む、請求項1または2に記載の見当制御装置。
【請求項4】
前記見当制御指令は、前記各印刷ユニットの刷版が巻き付けられた版胴の軸方向の位置を調整する版胴位置調整指令を含む、請求項1から3のいずれかに記載の見当制御装置。
【請求項5】
前記見当制御指令は、前記見当制御に関する見当制御状況を要求する見当制御状況要求指令を含む、請求項1から4のいずれかに記載の見当制御装置。
【請求項6】
前記制御部によって認識された前記見当制御に関する見当制御状況を前記操作者に報知する報知音声を生成する報知音声生成部を更に備える、請求項1から5のいずれかに記載の見当制御装置。
【請求項7】
前記報知音声生成部は、前記操作者が装着可能なデバイスによって構成される、請求項6に記載の見当制御装置。
【請求項8】
前記デバイスは、前記見当制御状況の少なくとも一部を表示する見当制御状況表示部を備える、請求項7に記載の見当制御装置。
【請求項9】
前記報知音声生成部は、前記見当制御の正常時と異常時で態様が異なる前記報知音声を生成する、請求項6から8のいずれかに記載の見当制御装置。
【請求項10】
前記見当制御状況は、前記見当制御の異常を含む、請求項5から9のいずれかに記載の見当制御装置。
【請求項11】
操作者の音声を認識する音声認識ステップと、
前記操作者の音声に応じて、被印刷物に順次印刷する複数の印刷ユニットの刷版の見当制御に関する見当制御指令を、前記複数の印刷ユニットの少なくともいずれかに対して生成する制御ステップと、
を備える見当制御方法。
【請求項12】
操作者の音声を認識する音声認識ステップと、
前記操作者の音声に応じて、被印刷物に順次印刷する複数の印刷ユニットの刷版の見当制御に関する見当制御指令を、前記複数の印刷ユニットの少なくともいずれかに対して生成する制御ステップと、
をコンピュータに実行させる見当制御プログラム。
【請求項13】
操作者の音声を認識する音声認識部と、
前記操作者の音声に応じて、産業装置の制御に関する制御指令を、当該産業装置に対して生成する制御部と、
を備える制御装置。
【請求項14】
前記産業装置は、シート状の被搬送物を搬送する搬送装置である、請求項13に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は見当制御装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
巻取紙等の被印刷物に印刷する印刷装置である輪転機は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)等の各色を順次印刷する複数の印刷ユニットを備える。各色の刷版または絵柄の重ね合わせの精度を見当(register)といい、各色の刷版の位置を合わせることを「見当を合わせる」という。各色の刷版の位置ずれである見当誤差が小さくなるように、被印刷物の各部の送り速度等を調整する見当制御技術が知られている。
【0003】
特許文献1における各印刷ユニットは、見当誤差の検出のためのレジスタマークを被印刷物の所定の位置に印刷する。見当誤差がない場合は隣接する二つの印刷ユニットが同じ被印刷物に印刷する二色のレジスタマークの間隔は一定値となるが、見当誤差がある場合の隣接色のレジスタマークの間隔は当該一定値からずれる。このような隣接色のレジスタマークを同時に検出できるように、同様の間隔で配置された二つの光検出素子を備えるマークセンサが利用される。このマークセンサによって検出できる隣接色のレジスタマークの実際の間隔と所期の一定値の差が見当誤差であり、それが小さくなるように見当制御が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の典型的な印刷装置では、操作者が見当制御に関する操作を行うための操作パネルが、見当制御対象である版胴やマークセンサから離れた位置に設置されている。例えば、操作者は、マークセンサや版胴の余分なインキを掻き取るドクターブレードの位置等の調整を両手で行った後に、それに応じた見当制御のパラメータを設定するために離れた操作パネルまで移動する必要がある。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、見当制御を効率的に行える見当制御装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の見当制御装置は、操作者の音声を認識する音声認識部と、操作者の音声に応じて、被印刷物に順次印刷する複数の印刷ユニットの刷版の見当制御に関する見当制御指令を、複数の印刷ユニットの少なくともいずれかに対して生成する制御部と、を備える。
【0008】
この態様によれば、操作者の音声に応じて印刷ユニットに対する見当制御指令が生成されるため、操作者の場所によらずに見当制御を効率的に行える。
【0009】
本発明の別の態様は、見当制御方法である。この方法は、操作者の音声を認識する音声認識ステップと、操作者の音声に応じて、被印刷物に順次印刷する複数の印刷ユニットの刷版の見当制御に関する見当制御指令を、複数の印刷ユニットの少なくともいずれかに対して生成する制御ステップと、を備える。
【0010】
本発明の更に別の態様は、制御装置である。この装置は、操作者の音声を認識する音声認識部と、操作者の音声に応じて、産業装置の制御に関する制御指令を、当該産業装置に対して生成する制御部と、を備える。
【0011】
この態様によれば、操作者の音声に応じて産業装置に対する制御指令が生成されるため、操作者の場所によらずに制御を効率的に行える。
【0012】
なお、以上の構成要素の任意の組合せや、これらの表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラム等に変換したものも、本発明に包含される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、見当制御等を効率的に行える。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】見当制御装置によって制御される印刷装置の構成を模式的に示す。
【
図4】マークセンサの二つの光検出素子が、各色のレジスタマークを検出する例を模式的に示す。
【
図6】制御部が操作者の音声に応じて生成する見当制御指令の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(以下では実施形態ともいう)について詳細に説明する。説明および/または図面においては、同一または同等の構成要素、部材、処理等に同一の符号を付して重複する説明を省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明の簡易化のために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施形態に記載される全ての特徴やそれらの組合せは、必ずしも本発明の本質的なものであるとは限らない。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る見当制御装置30によって制御される印刷装置10の構成を模式的に示す。印刷装置10は、巻取紙またはウェブを被印刷物とする図示されるような輪転機でもよいし、紙に限定されない任意の被印刷物に印刷を施す装置でもよいし、任意の被処理物にエンボス加工等の形状固定処理を施す広義の印刷装置でもよい。輪転機である印刷装置10は、シアン(C)の印刷を行う第1印刷ユニット11Aと、マゼンタ(M)の印刷を行う第2印刷ユニット11Bと、イエロー(Y)の印刷を行う第3印刷ユニット11Cと、ブラック(K)の印刷を行う第4印刷ユニット11Dと、見当制御装置30を備える。以下では、第1印刷ユニット11A、第2印刷ユニット11B、第3印刷ユニット11C、第4印刷ユニット11Dを総称して印刷ユニット11ともいう。各印刷ユニット11の印刷色は上記のCMYKに限らず、任意の印刷色を任意の順序で各印刷ユニット11に割り当てられる。より多くの色を印刷するため、印刷ユニットを5個以上設けてもよい。
【0017】
第1印刷ユニット11Aは、第1版胴13Aと、第1圧胴17Aと、第1駆動モータ19Aと、第1エンコーダ21Aと、第1マークセンサ23Aを備える。第2印刷ユニット11Bは、第2版胴13Bと、第2圧胴17Bと、第2駆動モータ19Bと、第2エンコーダ21Bと、第2マークセンサ23Bを備える。第3印刷ユニット11Cは、第3版胴13Cと、第3圧胴17Cと、第3駆動モータ19Cと、第3エンコーダ21Cと、第3マークセンサ23Cを備える。第4印刷ユニット11Dは、第4版胴13Dと、第4圧胴17Dと、第4駆動モータ19Dと、第4エンコーダ21Dと、第4マークセンサ23Dを備える。以下では、第1版胴13A、第2版胴13B、第3版胴13C、第4版胴13Dを総称して版胴13ともいい、第1圧胴17A、第2圧胴17B、第3圧胴17C、第4圧胴17Dを総称して圧胴17ともいい、第1駆動モータ19A、第2駆動モータ19B、第3駆動モータ19C、第4駆動モータ19Dを総称して駆動モータ19ともいい、第1エンコーダ21A、第2エンコーダ21B、第3エンコーダ21C、第4エンコーダ21Dを総称してエンコーダ21ともいい、第1マークセンサ23A、第2マークセンサ23B、第3マークセンサ23C、第4マークセンサ23Dを総称してマークセンサ23ともいう。
【0018】
印刷装置10は、被印刷物としてのウェブ50または巻取紙の移動方向(
図1において概ね左から右に向かう方向)に沿って設置される各印刷ユニット11によって、ウェブ50に各色の印刷を施す。複数のガイドローラ25および各圧胴17によって形成される移動経路に沿って移動するウェブ50に対して、各印刷ユニット11の各版胴13に巻き付けられた刷版による各色の絵柄が順次印刷される。
【0019】
各版胴13には、見当制御に用いられるレジスタマーク等の各色のマークをウェブ50に印刷するマーク印刷部15が設けられる。
図2(a)は、各版胴13の刷版の位置ずれである見当誤差がない時の第1レジスタマーク53A、第2レジスタマーク53B、第3レジスタマーク53C、第4レジスタマーク53D(以下では総称してレジスタマーク53ともいう)の位置関係を示し、
図2(b)は、ウェブ50の移動方向(
図2における上下方向)における見当誤差がある時の各色のレジスタマーク53の位置関係を示す。
【0020】
以下では、
図2(b)に示されるようなウェブ50の移動方向における見当誤差を縦見当誤差ともいい、当該縦見当誤差が小さくなるように見当制御装置30によって各版胴13の位相(回転角度)を調整することを縦見当制御ともいう。また、図示は省略するが、各色のレジスタマーク53の位置は、ウェブ50の移動方向に垂直な方向(
図2における左右方向)にずれることもある。このようなウェブ50の移動方向に垂直な方向における見当誤差を以下では横見当誤差ともいい、当該横見当誤差が小さくなるように見当制御装置30によって各版胴13の軸方向の位置を調整することを横見当制御ともいう。
【0021】
図2(a)に示される基準マーク52(
図2(b)では不図示)は、一次印刷が施されたウェブ50に二次印刷を施す追刷を印刷装置10が行う場合等に印刷される。具体的には、一次印刷における最初の色を印刷する第1印刷ユニット11Aのマーク印刷部15が、第1レジスタマーク53Aと共に基準マーク52をウェブ50に印刷する。基準マーク52は、印刷完了後のウェブ50の裁断位置を示す場合もあることから、カットマークとも呼ばれる。なお、トンボとも呼ばれるトリムマークを、基準マーク52および/またはレジスタマーク53として利用してもよい。
【0022】
第1レジスタマーク53Aは、第1版胴13Aのマーク印刷部15によってウェブ50における所定の第1位置に印刷され、第2レジスタマーク53Bは、第2版胴13Bのマーク印刷部15によってウェブ50における所定の第2位置に印刷され、第3レジスタマーク53Cは、第3版胴13Cのマーク印刷部15によってウェブ50における所定の第3位置に印刷され、第4レジスタマーク53Dは、第4版胴13Dのマーク印刷部15によってウェブ50における所定の第4位置に印刷される。
【0023】
各レジスタマーク53の第1位置(53A)、第2位置(53B)、第3位置(53C)、第4位置(53D)は、
図2における上下方向であるウェブ50の移動方向に沿って略等間隔に配置される。また、各色のマーク印刷部15は、各版胴13が一回転する度に各レジスタマーク53を(追刷の一次印刷等の際は基準マーク52も)一回ウェブ50に印刷する。このため、ウェブ50には、各版胴13の外周または円周(典型的には全ての版胴13A、13B、13C、13Dで等しい)に相当する所定間隔で、各色のレジスタマーク53および基準マーク52が移動方向に沿って印刷される。例えば、図示は省略するが、
図2(a)における第1レジスタマーク53Aおよび基準マーク52の上方および下方には、第1版胴13Aの外周分だけ離れた位置に同様の第1レジスタマーク53Aおよび基準マーク52がウェブ50に印刷されている。
【0024】
見当誤差がない
図2(a)では、各レジスタマーク53がウェブ50の移動方向(
図2における上下方向)に沿った正規の位置に等間隔L1で印刷されている。すなわち、第1レジスタマーク53Aが印刷されている第1位置と第2レジスタマーク53Bが印刷されている第2位置の相対距離、第2レジスタマーク53Bが印刷されている第2位置と第3レジスタマーク53Cが印刷されている第3位置の相対距離、第3レジスタマーク53Cが印刷されている第3位置と第4レジスタマーク53Dが印刷されている第4位置の相対距離が、いずれも所定間隔L1に等しくなっている。
【0025】
一方、(縦)見当誤差がある
図2(b)では、少なくとも一つのレジスタマーク53が正規の位置からずれて印刷されている。図示の例では、第2レジスタマーク53Bが正規の位置からずれて印刷されている。この場合、第1レジスタマーク53Aと第2レジスタマーク53Bの相対距離は正規の間隔L1より小さくなっており、その差が(縦)見当誤差となる。同様に、第2レジスタマーク53Bと第3レジスタマーク53Cの相対距離は正規の間隔L1より大きくなっており、その差が(縦)見当誤差となる。
【0026】
基準マーク52は、前述のように、追刷の一次印刷等の際に第1印刷ユニット11Aのマーク印刷部15によって、第1レジスタマーク53Aと同じ色で印刷される。各色のレジスタマーク53A~53Dがウェブ50の移動方向(
図2における上下方向)に延びる帯状領域51内に略等間隔で印刷されるのに対し、基準マーク52は帯状領域51外に印刷される。第1印刷ユニット11Aのマーク印刷部15によって略同時に印刷される基準マーク52と第1レジスタマーク53Aは、ウェブ50の移動方向における略同じ位置に印刷されるのが好ましい。図示の例では、矩形状の基準マーク52の下辺と直角三角形状の第1レジスタマーク53Aの下辺が、左右方向(移動方向に垂直な方向)の同一直線上にある。
【0027】
各色のレジスタマーク53が印刷される帯状領域51には、不図示の他の絵柄や情報も印刷されうる。このため、移動方向に隣接するレジスタマーク53を帯状領域51において検出する後述のマークセンサ23では、帯状領域51内の他の絵柄や情報による誤検出を防止するために検出可能時間帯がゲートによって制限される。一方、基準マーク52は帯状領域51外に印刷され、それを含む帯状領域には他の絵柄や情報が印刷されない。このため、基準マーク52を検出するマークセンサ23その他のマーク検出部では、検出可能時間帯をゲートによって制限する必要がない。
【0028】
なお、以上の例では追刷の一次印刷等の際に第1印刷ユニット11Aのマーク印刷部15が基準マーク52を印刷したが、他の印刷ユニット11B~11Dのマーク印刷部15が追刷の一次印刷等の際に基準マーク52を印刷してもよい。また、基準マーク52を印刷するマーク印刷部が、レジスタマーク53を印刷するマーク印刷部15とは別に設けられてもよい。更に、基準マーク52は帯状領域51外の任意の位置に印刷されればよく、図示の例のように基準マーク52とレジスタマーク53がウェブ50の移動方向における略同じ位置に印刷されなくてもよい。また、基準マーク52は、一次印刷前のウェブ50に予め印刷されたものでもよい。
【0029】
図1に戻り、各印刷ユニット11は同じ周長の各版胴13を一回転させることで各色の絵柄を一回分ウェブ50に印刷し、その繰り返しで連続的に印刷する。各版胴13は、それぞれに併設される各駆動モータ19によって回転駆動される。印刷装置10の印刷動作中、各駆動モータ19は互いに電気的に同期を取りながら、各版胴13を略同じ回転速度で回転させる。
【0030】
各駆動モータ19の回転軸等に併設される各エンコーダ21は、例えばインクリメンタル方式のエンコーダである。このエンコーダ21は、所定回数(複数)のA相、B相のパルス信号と一回のZ相のパルス信号を、版胴13の一回転毎に出力する。A相、B相のパルス信号はカウンタによって計数され、Z相のパルス信号によって計数値がリセットされる。版胴13の各回転において増加するA相、B相のパルス信号の計数値は、版胴13の位相または回転位置を表す。なお、エンコーダ21は、アブソリュート方式等の他の任意の方式の位相検出器または回転位置検出器でもよい。
【0031】
図3は各印刷ユニット11の構成を模式的に示す。ウェブ50の移動方向における版胴13の下流側(
図3における右上側)に設けられるマークセンサ23は、複数(
図3の例では二つ)の光検出素子T1、T2を備える。四つの印刷ユニット11A~11Dのマークセンサ23A~23Dでは、二つの光検出素子T1、T2がウェブ50の移動方向(
図3における上下方向)に沿って離れて配置される。具体的には、上流側の第1光検出素子T1と下流側の第2光検出素子T2の移動方向に沿った間隔は、
図2における所定間隔L1と略等しい。このため、所定間隔L1で印刷された移動方向に隣接するレジスタマーク53A~53Dが、二つの光検出素子T1、T2によって略同時に検出される。
【0032】
一色目の印刷ユニット11Aのマークセンサ23Aでは、二つの光検出素子T1、T2がウェブ50の移動方向に垂直な方向(
図3における左右方向)に沿って離れて配置されてもよい。レジスタマーク検出部としての第1光検出素子T1は、
図2の帯状領域51内のレジスタマーク53A~53Dを検出し、基準マーク検出部としての第2光検出素子T2は、
図2の帯状領域51外の基準マーク52を検出する。なお、追刷の一次印刷の際に第1マークセンサ23Aの検出領域を通過するウェブ50には、第1レジスタマーク53Aおよび基準マーク52のみが印刷されており、後続のレジスタマーク53B~53Dは未だ印刷されていない。一方、追刷の二次印刷の際に第1マークセンサ23Aの検出領域を通過するウェブ50には、二次印刷による第1レジスタマーク53Aと共に一次印刷による四つのレジスタマーク53A~53Dおよび基準マーク52が印刷されているため、第1マークセンサ23Aの二つの光検出素子T1、T2によって検出できる。
【0033】
第1マークセンサ23Aにおける第1光検出素子T1と第2光検出素子T2の間隔は、
図2における第1レジスタマーク53Aと基準マーク52の左右方向の距離に合わせて調整される。なお、レジスタマーク53Aと基準マーク52の距離が所定間隔L1より小さい場合は、第1マークセンサ23Aにおける第1光検出素子T1と第2光検出素子T2の間隔を、他のマークセンサ23B~23Dと同様の所定間隔L1のままとしてもよい。この場合、二つの光検出素子T1、T2の間隔がL1である第1マークセンサ23Aを
図3における紙面内で回転させ、上下方向のウェブ50に対して0度と90度の間の適当な角度で傾斜配置することで、二つの光検出素子T1、T2の左右方向の距離を第1レジスタマーク53Aと基準マーク52の左右方向の距離に一致させられる。このように、レジスタマーク53Aと基準マーク52の距離が所定間隔L1以下の場合は、二つの光検出素子T1、T2の間隔がL1のマークセンサ23B~23Dを、第1マークセンサ23Aとしてそのまま利用できる。
【0034】
図1における見当制御装置30は、各マークセンサ23(特に第2マークセンサ23B~第4マークセンサ23D)で検出された隣接色の間の縦見当誤差(
図2における上下方向の見当誤差)が小さくなるように、対応する各版胴13の回転角度(位相)を各駆動モータ19によって調整する。具体的には、第2マークセンサ23Bは、第1色の第1レジスタマーク53Aと第2色の第2レジスタマーク53Bの間隔を検出し、それと正規の間隔L1の差が第1色と第2色の間の縦見当誤差となる。第3マークセンサ23Cは、第1色の第1レジスタマーク53Aと第2色の第2レジスタマーク53Bの間隔、第2色の第2レジスタマーク53Bと第3色の第3レジスタマーク53Cの間隔を検出し、それぞれと正規の間隔L1の差が第1色と第2色の間の縦見当誤差、第2色と第3色の間の縦見当誤差となる。第4マークセンサ23Dは、第1色の第1レジスタマーク53Aと第2色の第2レジスタマーク53Bの間隔、第2色の第2レジスタマーク53Bと第3色の第3レジスタマーク53Cの間隔、第3色の第3レジスタマーク53Cと第4色の第4レジスタマーク53Dの間隔を検出し、それぞれと正規の間隔L1の差が第1色と第2色の間の縦見当誤差、第2色と第3色の間の縦見当誤差、第3色と第4色の間の縦見当誤差となる。なお、追刷の二次印刷では、当該二次印刷によるレジスタマーク53と先の一次印刷によるレジスタマーク53の間の縦見当誤差をマークセンサ23によって検出してもよい。
【0035】
また、見当制御装置30は、各マークセンサ23(特に第2マークセンサ23B~第4マークセンサ23D)で検出された隣接色の間の横見当誤差(
図2における左右方向の見当誤差)が小さくなるように、対応する各版胴13の軸方向(
図1または
図3における紙面に垂直な方向)の位置を各駆動モータ19その他の駆動部によって調整する。具体的には、第2マークセンサ23Bは、第1色の第1レジスタマーク53Aと第2色の第2レジスタマーク53Bの横方向のずれを第1色と第2色の間の横見当誤差として検出する。第3マークセンサ23Cは、第1色の第1レジスタマーク53Aと第2色の第2レジスタマーク53Bの横方向のずれを第1色と第2色の間の横見当誤差として検出し、第2色の第2レジスタマーク53Bと第3色の第3レジスタマーク53Cの横方向のずれを第2色と第3色の間の横見当誤差として検出する。第4マークセンサ23Dは、第1色の第1レジスタマーク53Aと第2色の第2レジスタマーク53Bの横方向のずれを第1色と第2色の間の横見当誤差として検出し、第2色の第2レジスタマーク53Bと第3色の第3レジスタマーク53Cの横方向のずれを第2色と第3色の間の横見当誤差として検出し、第3色の第3レジスタマーク53Cと第4色の第4レジスタマーク53Dの横方向のずれを第3色と第4色の間の横見当誤差として検出する。なお、追刷の二次印刷では、当該二次印刷によるレジスタマーク53と先の一次印刷によるレジスタマーク53の間の横見当誤差をマークセンサ23によって検出してもよい。
【0036】
図4は、見当制御装置30による縦見当制御の際に、第4印刷ユニット11Dにおける第4マークセンサ23Dの二つの光検出素子T1、T2が、各色のレジスタマーク53A~53Dを検出する例を模式的に示す。本図において、横軸は時間(厳密には第4版胴13Dのアドレスまたは位相)を表し、縦軸は各光検出素子T1、T2の検出光量を表す。
【0037】
第1光検出素子T1には、第1レジスタマーク53Aを検出するための第1ゲートG411と、第2レジスタマーク53Bを検出するための第2ゲートG412と、第3レジスタマーク53Cを検出するための第3ゲートG413と、第4レジスタマーク53Dを検出するための第4ゲートG414が設定されている。第2光検出素子T2には、第1レジスタマーク53Aを検出するための第1ゲートG421と、第2レジスタマーク53Bを検出するための第2ゲートG422と、第3レジスタマーク53Cを検出するための第3ゲートG423と、第4レジスタマーク53Dを検出するための第4ゲートG424が設定されている。
【0038】
第1光検出素子T1の第2ゲートG412および第2光検出素子T2の第1ゲートG421、第1光検出素子T1の第3ゲートG413および第2光検出素子T2の第2ゲートG422、第1光検出素子T1の第4ゲートG414および第2光検出素子T2の第3ゲートG423は、それぞれ略同じタイミングに設定されている。このため、二つの光検出素子T1/T2は、隣接色のレジスタマーク53B(G412)/53A(G421)、53C(G413)/53B(G422)、53D(G414)/53C(G423)を、それぞれ略同時に検出できる。
【0039】
上記の同タイミングのゲートの組毎に、隣接色間の縦見当誤差が検出される。具体的には、各ゲートにおける信号の立ち上がり位置(時刻)等の比較に基づいて隣接色間の縦見当誤差が検出される。隣接色間に縦見当誤差がない場合は、比較対象の二つのゲート(
図6の例では、G412とG421、G413とG422、G414とG423)における信号の立ち上がり位置等が一致する。隣接色間に縦見当誤差がある場合は、比較対象の二つのゲートにおける信号の立ち上がり位置等が一致せず、その差が縦見当誤差を表す。例えば、第1光検出素子T1の第2ゲートG412における第2レジスタマーク53Bの立ち上がり位置と、第2光検出素子T2の第1ゲートG421における第1レジスタマーク53Aの立ち上がり位置がずれている場合、見当制御装置30は第2レジスタマーク53Bに対応する第2版胴13Bおよび/または第1レジスタマーク53Aに対応する第1版胴13Aの回転角度(位相)を第2駆動モータ19Bおよび/または第1駆動モータ19Aによって調整することで、当該縦見当誤差を小さくする縦見当制御を行う。なお、横見当制御における見当制御装置30は、対応する各版胴13の回転角度の代わりに軸方向の位置を各駆動モータ19その他の駆動部によって調整する。
【0040】
図5は、本発明の実施形態に係る見当制御装置30を、印刷ユニット11A~11D、ユニット操作パネル40A~40D、メイン操作パネル40、データロガー41と共に模式的に示す。第1ユニット操作パネル40Aは第1印刷ユニット11Aに併設される。操作者OPは第1ユニット操作パネル40Aによって、第1印刷ユニット11Aの見当制御のパラメータ(例えば、第1版胴13Aの位相や軸方向の位置)の設定や、第1印刷ユニット11Aの見当制御状況(例えば、
図4のような第1マークセンサ23Aのマーク検出状況)の確認を行える。なお、簡素化のために第1ユニット操作パネル40Aと第1版胴13Aの間の矢印のみを模式的に図示し、第1ユニット操作パネル40Aと第1マークセンサ23A等の間の矢印の図示は省略した。
【0041】
同様に、第2~第4ユニット操作パネル40B~40Dは、それぞれ第2~第4印刷ユニット11B~11Dに併設される。操作者OPは第2~第4ユニット操作パネル40B~40Dによって、第2~第4印刷ユニット11B~11Dの見当制御のパラメータ(例えば、第2~第4版胴13B~13Dの位相や軸方向の位置)の設定や、第2~第4印刷ユニット11B~11Dの見当制御状況(例えば、
図4のような第2~第4マークセンサ23B~23Dのマーク検出状況)の確認を行える。なお、簡素化のために第2~第4ユニット操作パネル40B~40Dと第2~第4版胴13B~13Dの間の矢印のみを模式的に図示し、第2~第4ユニット操作パネル40B~40Dと第2~第4マークセンサ23B~23D等の間の矢印の図示は省略した。
【0042】
メイン操作パネル40は、いずれの印刷ユニット11A~11Dからも離れた位置に設置されている。操作者OPはメイン操作パネル40によって、全ての印刷ユニット11A~11Dの見当制御のパラメータの設定や、全ての印刷ユニット11A~11Dの見当制御状況の確認を行える。なお、簡素化のためにメイン操作パネル40と各印刷ユニット11A~11Dの間の矢印の図示は省略した。
【0043】
データロガー41は、各印刷ユニット11A~11Dおよび/または印刷装置10に関する各種のデータを収集して保存する。例えば、各印刷ユニット11A~11Dの印刷制御や見当制御等のパラメータ、印刷時間、印刷量、印刷内容等の履歴、各印刷ユニット11A~11Dおよび/または印刷装置10の内部または外部に設置される各種のセンサの測定データ(例えば、温度、湿度、被印刷物の張力)等がデータロガー41によって収集および保存される。
【0044】
見当制御装置30は、制御部31と、音声認識部32と、報知音声生成部33と、見当制御状況表示部34を備える。これらの機能ブロックは、コンピュータの中央演算処理装置、メモリ、入力装置、出力装置、コンピュータに接続される周辺機器等のハードウェア資源と、それらを用いて実行されるソフトウェアの協働により実現される。コンピュータの種類や設置場所は問わず、上記の各機能ブロックは、単一のコンピュータのハードウェア資源で実現してもよいし、複数のコンピュータに分散したハードウェア資源を組み合わせて実現してもよい。
【0045】
音声認識部32は、操作者OPの音声を認識する。音声認識部32は、操作者OPが装着可能なデバイスおよび/または操作者OPが携帯可能なデバイス等によって構成される。操作者OPが装着可能なデバイスとしては、操作者OPが頭部に装着して音声の入出力を行えるヘッドセットHSや、操作者OPが頭部に装着して音声の入出力等と共に画像の確認も行えるスマートグラスSG等が例示される。操作者OPが携帯可能なデバイスとしては、操作者OPが携帯して音声の入出力等と共に画像の確認も行えるスマートフォンSP、パーソナルコンピュータPC、タブレット(不図示)等が例示される。
【0046】
制御部31は、音声認識部32が認識した操作者OPの音声に応じて、複数の印刷ユニット11A~11Dの刷版の見当制御に関する見当制御指令を、複数の印刷ユニット11A~11Dの少なくともいずれかに対して生成する。ここで、操作者OPは見当制御指令の生成対象の一または複数の印刷ユニット11A~11Dを音声で指定するのが好ましい。例えば「第3印刷ユニット11Cの見当制御を開始する」という旨の音声を操作者OPが発した場合、制御部31は以降の見当制御指令を第3印刷ユニット11Cに対して生成する。
【0047】
図6は、制御部31が操作者OPの音声に応じて生成する見当制御指令(および後述する報知音声)の例を示す。見当制御指令は、各印刷ユニット11A~11Dの見当制御の調整や設定に関するものと、各印刷ユニット11A~11Dの見当制御状況のモニタに関するものに大別される。
【0048】
見当制御の調整や設定に関する第1の見当制御指令は、縦見当制御の自動化に関する。例えば「第3印刷ユニット11Cの自動縦見当制御を開始する」という旨の音声を操作者OPが発した場合、制御部31は当該第3印刷ユニット11Cの自動縦見当制御を「ON」とし、「第3印刷ユニット11Cの自動縦見当制御を終了する」という旨の音声を操作者OPが発した場合、制御部31は当該第3印刷ユニット11Cの自動縦見当制御を「OFF」とする。
【0049】
見当制御の調整や設定に関する第2の見当制御指令は、各版胴13の位相を調整することで縦見当制御を行う版胴位相調整指令である。なお、図示の「オフセット」とは、操作者OPの音声によって指示される各版胴13の位相の調整量である。例えば「第3印刷ユニット11Cを正方向に0.1だけオフセットする」という旨の音声を操作者OPが発した場合、制御部31は当該第3印刷ユニット11Cの第3駆動モータ19Cを介して、第3版胴13Cの位相(回転位置)を正方向(例えば時計回り方向)に指定されたオフセット量「0.1」だけ変化させる。同様に、「第3印刷ユニット11Cを負方向に0.3だけオフセットする」という旨の音声を操作者OPが発した場合、制御部31は当該第3印刷ユニット11Cの第3駆動モータ19Cを介して、第3版胴13Cの位相(回転位置)を負方向(例えば反時計回り方向)に指定されたオフセット量「0.3」だけ変化させる。
【0050】
このような縦見当制御では、後述するように、縦見当誤差が所望範囲内に収まったことが連続音等の音声で操作者OPに報知されるため、音声認識部32および後述する報知音声生成部33を構成する各種の音声入出力デバイスを通じて操作者OPは縦見当誤差の調整(すなわち縦見当制御)を効率的に完了できる。
図5に模式的に示されるように、操作者OPは見当制御対象の印刷ユニット(11D)のマークセンサ(23D)や版胴(13D)の余分なインキを掻き取るドクターブレードの位置等の調整を両手で行うこともあるが、このように両手が塞がっている状況でも操作者OPは音声入出力デバイスを通じて効率的に見当制御を継続できる。また、操作者OPは両手等でのマークセンサやドクターブレードの調整の良否を後述する報知音声によって即座に知ることができるため、見当制御の効率性が従来に比べて飛躍的に高まる。
【0051】
見当制御の調整や設定に関する第3の見当制御指令は、縦見当制御の警報レベルに関する。後述するように、この警報レベルを各マークセンサ23によって検出される縦見当誤差が超過すると、その旨が音声によって操作者OPに報知される。例えば「第3印刷ユニット11Cの縦見当制御の警報レベルを0.3とする」という旨の音声を操作者OPが発した場合、制御部31は当該第3印刷ユニット11Cの縦見当制御における警報レベルを指定された「0.3」に設定する。なお、警報レベルの指定に用いられる数値と、前述のオフセットの指定に用いられる数値は、同じ単位とするのが好ましい。
【0052】
見当制御の調整や設定に関する第4の見当制御指令は、横見当制御の自動化に関する。例えば「第3印刷ユニット11Cの自動横見当制御を開始する」という旨の音声を操作者OPが発した場合、制御部31は当該第3印刷ユニット11Cの自動横見当制御を「ON」とし、「第3印刷ユニット11Cの自動横見当制御を終了する」という旨の音声を操作者OPが発した場合、制御部31は当該第3印刷ユニット11Cの自動横見当制御を「OFF」とする。
【0053】
見当制御の調整や設定に関する第5の見当制御指令は、各版胴13の軸方向の位置を調整することで横見当制御を行う版胴位置調整指令である。なお、図示の「オフセット」とは、操作者OPの音声によって指示される各版胴13の軸方向の位置の調整量である。例えば「第3印刷ユニット11Cを右方向に0.1だけオフセットする」という旨の音声を操作者OPが発した場合、制御部31は当該第3印刷ユニット11Cの第3駆動モータ19Cその他の駆動部を介して、第3版胴13Cの軸方向の位置を右方向(例えば
図5における紙面の手前に向かう方向)に指定されたオフセット量「0.1」だけ変化させる。同様に、「第3印刷ユニット11Cを左方向に0.3だけオフセットする」という旨の音声を操作者OPが発した場合、制御部31は当該第3印刷ユニット11Cの第3駆動モータ19Cその他の駆動部を介して、第3版胴13Cの軸方向の位置を左方向(例えば
図5における紙面の奥に向かう方向)に指定されたオフセット量「0.3」だけ変化させる。
【0054】
このような横見当制御でも、前述した縦見当制御と同様に、横見当誤差が所望範囲内に収まったことが連続音等の音声で操作者OPに報知されうるため(
図6では不図示)、音声認識部32および後述する報知音声生成部33を構成する各種の音声入出力デバイスを通じて操作者OPは横見当誤差の調整(すなわち横見当制御)を効率的に完了できる。
図5に模式的に示されるように、操作者OPは見当制御対象の印刷ユニット(11D)のマークセンサ(23D)や版胴(13D)の余分なインキを掻き取るドクターブレードの位置等の調整を両手で行うこともあるが、このように両手が塞がっている状況でも操作者OPは音声入出力デバイスを通じて効率的に見当制御を継続できる。また、操作者OPは両手等でのマークセンサやドクターブレードの調整の良否を後述する報知音声によって即座に知ることができるため、見当制御の効率性が従来に比べて飛躍的に高まる。
【0055】
見当制御の調整や設定に関する第6の見当制御指令は、横見当制御の警報レベルに関する。後述するように、この警報レベルを各マークセンサ23によって検出される横見当誤差が超過すると、その旨が音声によって操作者OPに報知される。例えば「第3印刷ユニット11Cの横見当制御の警報レベルを0.3とする」という旨の音声を操作者OPが発した場合、制御部31は当該第3印刷ユニット11Cの横見当制御における警報レベルを指定された「0.3」に設定する。なお、警報レベルの指定に用いられる数値と、前述のオフセットの指定に用いられる数値は、同じ単位とするのが好ましい。
【0056】
見当制御状況のモニタに関する第1~第3の見当制御指令は、見当制御に関する見当制御状況を要求する見当制御状況要求指令である。第1の見当制御状況要求指令は、各マークセンサ23の二つの光検出素子T1、T2による二つのチャンネルにおけるマークレベルに関する。例えば「第3印刷ユニット11Cのチャンネル2のマークレベルは?」という旨の音声を操作者OPが発した場合、制御部31は当該第3印刷ユニット11Cの第3マークセンサ23Cの第2光検出素子T2での検出光量(例えば、最大値や平均値)を取得する。このマークレベルに関する情報は、例えば、後述する報知音声生成部33および音声出力デバイスHS、SG、SP、PC等を通じて、操作者OPに音声で報知される。これに加えてまたは代えて、マークレベルに関する情報および/または
図4に示されるような各チャンネルの検出光量の波形が、見当制御状況表示部34および画像表示デバイスSG、SP、PC等を通じて、操作者OPに画像として提示されてもよい。
【0057】
第2の見当制御状況要求指令は、縦見当誤差に関する。例えば「第3印刷ユニット11Cの縦見当誤差は?」という旨の音声を操作者OPが発した場合、制御部31は当該第3印刷ユニット11Cの第3マークセンサ23Cで検出された縦見当誤差の値を取得する。この縦見当誤差量は、例えば、後述する報知音声生成部33および音声出力デバイスHS、SG、SP、PC等を通じて、操作者OPに音声で報知される。これに加えてまたは代えて、縦見当誤差量が
図4に示されるような各チャンネルの検出光量の波形に重畳されて、見当制御状況表示部34および画像表示デバイスSG、SP、PC等を通じて、操作者OPに画像として提示されてもよい。
【0058】
第3の見当制御状況要求指令は、横見当誤差に関する。例えば「第3印刷ユニット11Cの横見当誤差は?」という旨の音声を操作者OPが発した場合、制御部31は当該第3印刷ユニット11Cの第3マークセンサ23Cで検出された横見当誤差の値を取得する。この横見当誤差量は、例えば、後述する報知音声生成部33および音声出力デバイスHS、SG、SP、PC等を通じて、操作者OPに音声で報知される。これに加えてまたは代えて、見当制御状況表示部34および画像表示デバイスSG、SP、PC等を通じて、横見当誤差量が操作者OPに画像として提示されてもよい。
【0059】
図5における報知音声生成部33は、制御部31によって認識された見当制御に関する見当制御状況を操作者OPに報知する報知音声を生成する。なお、制御部31は、操作者OPの音声に応じた前述の見当制御状況要求指令によって各印刷ユニット11から見当制御状況を取得してもよいし、各印刷ユニット11を連続的または断続的に監視しながら操作者OPの音声によらずに自律的に各印刷ユニット11から見当制御状況を取得してもよい。報知音声生成部33は、操作者OPが装着可能なデバイス(ヘッドセットHS、スマートグラスSG等)および/または操作者OPが携帯可能なデバイス(スマートフォンSP、パーソナルコンピュータPC、タブレット等)等によって構成される。
【0060】
図6の下段は、報知音声生成部33が操作者OPに対して生成する見当制御状況の報知音声を生成する。ここでの報知音声とは、人間が発する音声に模したものに限られない任意の音および/または声である。図示の例における第1の報知音声はマークロスに関する。マークロスとは、縦見当誤差が大きすぎるために、少なくとも一つのレジスタマーク53がゲートを外れてしまう見当制御の異常である(
図4参照)。この状態では適切な縦見当制御を行えないため、その旨の警報を報知音声生成部33が操作者OPに対して生成する。この音声による警報に加えてまたは代えて、後述する見当制御状況表示部34がマークロスの発生の旨を画像表示デバイスSG、SP、PC等に表示させてもよい。
【0061】
図示の例における第2の報知音声は縦見当誤差に関する。縦見当誤差の大きさに応じて、報知音声の態様(例えば、大きさ、速さ、頻度、高低、音色)が変更される。特に、報知音声生成部33は、見当制御の正常時と異常時で態様が異なる報知音声を生成する。例えば、
図6の上段の見当制御指令によって設定された縦見当制御および/または横見当制御における「警報レベル」を、各マークセンサ23で検出された見当誤差が超過した場合が異常と判断される。図示の例では、縦見当誤差が警報レベルを超過した異常時には、間隔の長い間欠音が報知音声生成部33によって生成される。また、縦見当誤差が警報レベル以下の正常時には、間隔の短い間欠音が報知音声生成部33によって生成される。更に、縦見当誤差が所望範囲内に収まると、連続音が報知音声生成部33によって生成されるため、操作者OPは縦見当制御が正常に完了したと判断できる。
【0062】
見当制御状況表示部34は、制御部31によって認識された見当制御に関する見当制御状況の少なくとも一部を操作者OPに画像として表示する。見当制御状況表示部34は、操作者OPが装着可能なデバイス(スマートグラスSG等)および/または操作者OPが携帯可能なデバイス(スマートフォンSP、パーソナルコンピュータPC、タブレット等)等によって構成される。
【0063】
以上、印刷装置10の各印刷ユニット11を対象として、音声を介した見当制御を行う見当制御装置30について説明したが、本発明は印刷装置10の見当制御に限らず任意の産業装置の制御に適用可能である。具体的には、制御部31は、音声認識部32が認識した操作者OPの音声に応じて、産業装置の制御に関する制御指令を、当該産業装置に対して生成する。
【0064】
産業装置とは、各種の製品やサービスの生産や提供を行う産業現場において、特定の用途に使用される装置である。産業装置は、例えば、日本産業機械工業会が取り扱っているボイラ・原動機、鉱山機械、化学機械、環境装置、タンク、プラスチック機械、風水力機械、運搬機械、動力伝導装置、製鉄機械、業務用洗濯機等の企業の工場等の産業現場で使用される産業用機械、産業機械、産業機器等や、半導体等の製造装置、工作機械、印刷機、産業ロボットを含む。一方、パーソナルコンピュータやスマートフォン等の用途が限定されない汎用装置は産業装置に含まれない。
【0065】
また、産業装置にはシート状の被搬送物を搬送する搬送装置も包含され、紙等のシート状の被印刷物(ウェブ50)を搬送しながら印刷する印刷装置10はその一態様である。
図5におけるデータロガー41も産業装置の一態様である。データロガー41に対して、例えば「今から30秒間ウェブ50の張力のデータを収集して」という旨の音声を操作者OPが発した場合、制御部31は不図示の張力センサ等に30秒間に亘って連続的にウェブ50の張力の測定を行わせ、その結果を音声(報知音声生成部33に相当)、画像(見当制御状況表示部34に相当)、ファイル送信等の態様で操作者OPに提供する。また、データロガー41が自律的に収集したデータに基づいて印刷装置10の異常や見当制御の異常が検知された場合、制御部31は音声(報知音声生成部33に相当)および/または画像(見当制御状況表示部34に相当)によって操作者OPに報知する。
【0066】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明した。例示としての実施形態における各構成要素や各処理の組合せには様々な変形例が可能であり、そのような変形例が本発明の範囲に含まれることは当業者にとって自明である。
【0067】
実施形態では、被印刷物として巻取紙であるウェブ50を例示したが、印刷装置10は任意の被印刷物に印刷可能である。例えば、被印刷物は、任意の素材で形成されるシートでもよいし、容器や製品など任意の形状の個体の表面でもよい。
【0068】
なお、実施形態で説明した各装置や各方法の構成、作用、機能は、ハードウェア資源またはソフトウェア資源によって、あるいは、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働によって実現できる。ハードウェア資源としては、例えば、プロセッサ、ROM、RAM、各種の集積回路を利用できる。ソフトウェア資源としては、例えば、オペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【符号の説明】
【0069】
10 印刷装置、11 印刷ユニット、13 版胴、15 マーク印刷部、19 駆動モータ、23 マークセンサ、30 見当制御装置、31 制御部、32 音声認識部、33 報知音声生成部、34 見当制御状況表示部、41 データロガー、50 ウェブ、53 レジスタマーク。