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特開2023-139759液体吐出ヘッド、当該吐出ヘッドを含む液体の供給システム及び当該供給システムを含む糸状食品製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139759
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、当該吐出ヘッドを含む液体の供給システム及び当該供給システムを含む糸状食品製造装置
(51)【国際特許分類】
   A23P 30/20 20160101AFI20230927BHJP
   B01J 4/00 20060101ALI20230927BHJP
   A23L 29/256 20160101ALN20230927BHJP
【FI】
A23P30/20
B01J4/00 103
A23L29/256
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045456
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】522105311
【氏名又は名称】株式会社F-グレイス
(74)【代理人】
【識別番号】100145953
【弁理士】
【氏名又は名称】真柴 俊一郎
(72)【発明者】
【氏名】原田 知親
(72)【発明者】
【氏名】金 鍾哲
(72)【発明者】
【氏名】三浦 健司
(72)【発明者】
【氏名】寺井 富美雄
【テーマコード(参考)】
4B041
4B048
4G068
【Fターム(参考)】
4B041LC10
4B041LD01
4B041LE10
4B041LH10
4B041LP12
4B041LP27
4B048PE05
4B048PM01
4B048PM12
4G068AA01
4G068AB13
4G068AC14
4G068AC20
4G068AD16
4G068AD21
4G068AF20
4G068AF40
(57)【要約】
【課題】粘度の高い原料を、泡がみが少なくかつ効率よく吐出できる吐出ヘッド、供給システム及びこれらを備えた糸状食品製造装置を得ること。
【解決手段】 穴12を有する本体部11、
前記穴12の底の略中央に設けられた、頂点を有する突起部13、
前記突起部13の底部外縁付近に設けられ、前記本体部の穴と外部とを連通する孔14、並びに
前記本体部に開けられた孔と連通し、本体部の外側に突出した管15、
を含む、液体を吐出するための吐出ヘッド。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穴を有する本体部、
前記穴の底の略中央に設けられた、頂点を有する突起部、
前記突起部の底部外縁付近に設けられ、前記本体部の穴と外部とを連通する孔、並びに
前記本体部に開けられた孔と連通し、本体部の外側に突出した管、
を含む、液体を吐出するための吐出ヘッド。
【請求項2】
さらに、
前記突起部の底部外縁付近に設けられた傾斜部A、及び
前記穴を形成する内壁の下端付近に設けられた傾斜部Bを含み、
本体部に開けられた前記孔が、前記傾斜部Aと傾斜部Bとが交差する箇所に位置する、請求項1に記載の吐出ヘッド。
【請求項3】
前記本体部の外側に突出した管の根元から先端までの長さが、前記管の内径の3倍以上である、請求項1又は2に記載の吐出ヘッド。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドに接続された、液体を供給する供給管と、を含み、
前記液体を供給する側における前記供給管をその軸方向から見た際に、供給管を通して吐出ヘッドにおける突起部の頂点が見える位置にある事を特徴とする、液体の供給システム。
【請求項5】
前記液体を供給する側における前記供給管の軸方向の中心が、吐出ヘッドにおける突起部の頂点に対応する位置にある、請求項4に記載の液体の供給システム。
【請求項6】
入口と出口とを備え所定の流路長が確保された反応管を含む糸状食品製造装置において、前記入口側に請求項4又は5に記載の供給システムを備えた事を特徴とする、糸状食品製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッド、当該吐出ヘッドを含む液体の供給システム及び当該供給システムを含む糸状食品製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
海藻類を主成分とする糸状食品の製造方法が従来から知られている。海藻類を主成分とする糸状食品は、低カロリーでありつつ歯ごたえのある食感が好まれており、刺身の付け合わせやサラダ等にして食されている。
【0003】
このような糸状食品を製造する方法について検討が重ねられている。例えば、特許文献1は、海藻類をゲル化した原料を、複数の吐出ノズルから凝固液中に押し出して製麺する海藻麺の製造方法を開示している。また、特許文献2は、入口と出口を備えた管を垂直軸まわりに巻回させながら積層することによって所定の流路長が確保され流体をその管内に通すように構成された巻管を含んだ糸状食品製造装置を開示している。特許文献2の製造装置を用いて海藻麺を製造する際には、凝固前の糸状海藻麺を供給して、前記巻管内を循環する凝固液で凝固させて製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-319098号公報
【特許文献2】特開2005-304381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2に開示されるいずれの方法においても、海藻由来の成分、例えばカラギーナンを含む水溶液を、アルギン酸ナトリウム水溶液等の凝固液中に供給する必要がある。しかしながら、特許文献1の方法により細い麺を押し出そうとすると、前記水溶液を供給するノズルが凝固液中に浸漬されているためノズルのつまりが発生しやすく、海藻麺の製造効率が低下する問題があった。
【0006】
また、特許文献2の製造装置において前記水溶液は、その下面に多数の小孔が形成された中空の円盤部材である吐出ノズルから吐出される。しかしながら、カラギーナンを含む水溶液はチクソ性を有する比較的高い粘度を有する液体である。したがって、前記液体が前記中空の円盤部材の内部壁に付着した場合、前記液体に剪断力がかからないため、壁に付着したままで残存してしまう。また、吐出ノズルの中空部で泡が発生すると、当該発生した泡がチクソ性の高い液中に保持されたままで抜けないため、当該液体が泡と共に吐出されてしまう。このように泡と共に吐出された液体がそのまま凝固液で固まると、糸状食品が泡を含んだ状態となるため、得られる糸状食品の見た目や食感に悪影響を及ぼす問題が発生していた。
したがって、上記のような問題を解消し得る技術が強く望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、特定構造の吐出ヘッドにより上記問題が解決できることを見いだし、本発明に至った。
すなわち本発明は、
[1]穴を有する本体部、
前記穴の底の略中央に設けられた、頂点を有する突起部、
前記突起部の底部外縁付近に設けられ、前記本体部の穴と外部とを連通する孔、並びに
前記本体部に開けられた孔と連通し、本体部の外側に突出した管、
を含む、液体を吐出するための吐出ヘッド、
[2]さらに、
前記突起部の底部外縁付近に設けられた傾斜部A、及び
前記穴を形成する内壁の下端付近に設けられた傾斜部Bを含み、
前記本体部に開けられた孔が、前記傾斜部Aと傾斜部Bとが交差する箇所に位置する、[1]に記載の吐出ヘッド、
[3]前記本体部の外側に突出した管の根元から先端までの長さが、前記管の内径の3倍以上である、[1]又は[2]に記載の吐出ヘッド、
[4][1]~[3]のいずれかに記載の吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドに接続された、液体を供給する供給管と、を含み、
前記液体を供給する側における前記供給管をその軸方向から見た際に、供給管を通して吐出ヘッドにおける突起部の頂点が見える位置にある事を特徴とする、液体の供給システム、
[5]前記液体を供給する側における前記供給管の軸方向の中心が、吐出ヘッドにおける突起部の頂点に対応する位置にある、[4]に記載の液体の供給システム、並びに
[6]入口と出口とを備え所定の流路長が確保された反応管を含む糸状食品製造装置において、前記入口側に[4]又は[5]に記載の供給システムを備えた事を特徴とする、糸状食品製造装置、
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の吐出ヘッドは、凝固液に浸漬させることなく、凝固対象となる液体を凝固液に供給できるため、液体を細長く吐出する場合においても、吐出ヘッドの孔詰まりを極力防止できる。また、本発明の吐出ヘッドは、その構造により凝固対象となる液体に発生した泡をヘッド内部で除去できるため、粘度の高い液体を吐出した場合においても吐出された液体に含まれる泡の量を減少させ、製造される糸状食品の不良発生の可能性を極力抑えることができる。また、粘度の高い液体、例えばチクソ性を有する液体を吐出する場合においても、前記液体が吐出ヘッド内部、例えば内壁に付着する事によりヘッド内部に残存する量を極力減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(A)本発明の吐出ヘッドの正面図、(B)平面図、(C)裏面図及び(D)(B)におけるA-B断面図である。
図2図1とは別の形態の吐出ヘッドの断面図である。
図3図1及び2とは別の形態の吐出ヘッドの断面図、(B)(A)における点線部の拡大図及び(C)(B)とは別の形態の拡大図である。
図4図1、2及び3とは別の形態の吐出ヘッドの断面図である。
図5】(A)供給管の正面図、(B)平面図及び(C)裏面図である。
図6】(A)供給システムの正面図、(B)平面図及び(C)(B)におけるC-D断面図である。
図7】(A)糸状食品製造装置の正面模式図及び(B)平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面等を参照しながら、具体的な実施形態に基づいて本発明を説明する。なお、図面及び以下の説明はあくまでも本発明の一形態を説明するものであり、本発明の範囲に何ら制限を加えるものではない。また、文中における「上下」、「前後」及び「左右」は、各図面に記載の方向を意味する。
【0011】
1.吐出ヘッド1
本発明の吐出ヘッドの一形態が、図1に示されている。本発明の吐出ヘッド1は、穴12を有する本体部11と、前記穴12の底の略中央に設けられた、頂点を有する突起部13と、前記突起部13の底部外縁付近に設けられ、前記本体部11の穴12と外部とを連通する孔14と、前記本体部11に開けられた孔14と連通し、本体部11の外側に突出した管15とを含む。以下に、構成ごとに説明する。
【0012】
(1)本体部11
本体部11の形状について特に制限は無く、吐出対象となる液体の種類、粘度並びに吐出ヘッド1を取り付ける機器の用途、目的及び大きさ等に応じて適宜変更可能である。具体的な形状としては、平面方向から見た形状が、楕円を含む円又は三角形、四角形、五角形及び六角形等の多角形である厚みを有する板状であって良い。図1の例においては、厚みを有する円盤状となっている。本体部11の大きさについても特に制限は無く、吐出対象となる液体の種類、粘度並びに吐出ヘッド1を取り付ける機器の用途、目的及び大きさ等に応じて適宜変更可能である。糸状食品製造装置で使用する吐出ヘッド1として図1に記載する円盤状の吐出ヘッド1を使用する場合の具体的な大きさは、例えば、直径約100mmで厚さが約40mmである。
【0013】
本体部11を形成する素材についても特に制限は無く、吐出対象となる液体の種類、粘度並びに吐出ヘッド1を取り付ける機器の用途、目的及び大きさ等に応じて適宜変更可能である。このような素材の具体例として、例えば、鉄、アルミ又はステンレス等の金属素材、又はシリコーン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂等の合成樹脂等が挙げられる。吐出ヘッド1を糸状食品製造装置に使用する場合には、シリコーン樹脂により本体部11を形成することで、製造される糸状食品に関する食品衛生上の問題を最小限に抑えることができる。
【0014】
(2)穴12
穴12は、本体部11に開けられている。図1の例において、穴12は、本体部11の平面方向から見て略中央に厚さ方向(図1(A)における上下方向)に向けて開けられている。本体部11に開けられた穴12は、本体部11を貫通せず、底部121を有している。本体部11における穴12の位置に特に制限は無いが、吐出ヘッド1の取り付けをより容易に行う事ができるため、本体部11の平面方向から見て中央に穴12が開けられることがより好ましい。穴12の大きさについても特に制限は無く、吐出対象となる液体の種類及び粘度、吐出ヘッド1を取り付ける機器の用途、目的及び大きさ、本体部11の素材並びに吐出ヘッド1に求められる強度等に応じて適宜変更可能である。
【0015】
(3)突起部13
突起部13は、前記穴12の底部121の略中央に設けられた、頂点を有する突起である。頂点を有する突起部13を設ける事により、後述するように比較的粘度の高い液体、特にチクソ性を有する液体を前記頂点に流し込むことにより、突起部13の傾斜による剪断力が働き、前記液体が突起部13の表面に留まることなく、前記液体を穴12の底部121にまで効率よく流し込むことができる。また、突起部13の傾斜を流れる間に、液体中に含まれる気泡が液体内を上昇して除去されることにより、吐出ヘッド1から吐出される液体に含まれる泡の数を大きく減少させることができる。
【0016】
突起部13を形成する素材に特に制限は無く、吐出対象となる液体の種類、粘度並びに吐出ヘッド1を取り付ける機器の用途、目的及び大きさ等に応じて適宜変更可能である。このような素材の具体例として、例えば、鉄、アルミ又はステンレス等の金属素材、又はシリコーン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂等の合成樹脂等が挙げられる。吐出ヘッド1を糸状食品製造装置に使用する場合には、シリコーン樹脂により本体部11を形成することで、製造される糸状食品に関する食品衛生上の問題を最小限に抑えることができる。また、本体部11と突起部13とを同一の素材として、一体に形成することで、吐出ヘッド1をより効率よく製造できる。
【0017】
突起部13の数は、1又は2以上であっても良い。しかしながら、後述するように粘度の高い液体を吐出する場合には、突起部13の数を1つ、言い換えれば頂点の数1を一つにする事で、液体の流れをよりスムーズにし、突起部13が複数設けられた場合に生じる突起部間での液体の滞留をより抑制できる。突起部13の形状については、頂点を有する形状であることを条件として、特に制限は無い。図1(C)に示すように、突起部13は頂点から底部に向けて傾斜を有する事により、突起部13の表面を流れる液体に剪断力を生じさせてチクソ性を有する液体であってもスムーズに流すことができ、発生した泡の除去をより容易に行える。突起部13に傾斜を設ける場合において傾斜の角度に特に制限はない。具体的な角度の例として、例えば、底部121に対する突起部13の傾斜の角度が内角で25~35°である。
【0018】
このような突起部13の具体的な形状として、例えば、三角錐、四角錐、五角錐又は六角錐等の多角形錐形状や、楕円を含む円錐形状があげられる。図1においては、突起部13の形状は円錐形である。図1に示すように、突起部13の頂点から発生した傾斜が穴12の底部121まで続いていても良いし、図2に示すように傾斜を途中で終わらせて、傾斜の末端から穴12の底部121までが垂直の壁となるようにしても良い。
【0019】
(4)孔14
孔14は、前記突起部13の底部外縁付近に設けられ、前記本体部11の穴12と外部とを連通する孔である。図1に示すように、孔14は、穴12の底部121において、突起部13の底部、言い換えれば突起部13の傾斜と底部121の交差する箇所付近に、穴12と本体部11の外部とが連通するように開けられる。このような箇所に孔14を開けることにより、穴12内に供給された液体が、突起部13の表側を流れ落ちて孔14に流れ込み、吐出ヘッド1による液体の供給をより効率よく行う事ができる。孔14の大きさについては特に制限は無く、吐出対象となる液体の種類、粘度並びに吐出ヘッド1を取り付ける機器の用途、目的及び大きさ等に応じて適宜変更可能である。具体的な孔14の断面積として、例えば、3.14~78.5mmが例示される。孔14の断面形状についても特に制限は無く、吐出対象となる液体の種類、粘度並びに吐出ヘッド1を取り付ける機器の用途、目的及び大きさ等に応じて適宜変更可能である。孔14の具体的な断面形状として、例えば、三角形、四角形、五角形又は六角形等の多角形や、楕円を含む円形があげられる。孔14を開ける方向については、吐出ヘッド1から液体の供給が過度に妨げられないことを条件として、特に制限されない。例えば、図1に示すように、吐出ヘッド1の上下方向(垂直方向)に開けることにより、吐出ヘッド1からの液体の吐出をよりスムーズに行う事ができる。
【0020】
孔14の数についても特に制限は無く、吐出対象となる液体の種類、粘度並びに吐出ヘッド1を取り付ける機器の用途、目的及び大きさ等に応じて適宜変更可能である。孔14を2以上設ける事により、吐出ヘッド1による液体の吐出効率をより高めることができる。例えば、図1に示すように、突起部13の底部周囲を均等に取り囲むように8個開けても良い。
【0021】
前記突起部13の底部外縁付近に傾斜部A17を設け、及び前記穴12を形成する内壁の下端付近に傾斜部B18を設け、前記傾斜部A17と傾斜部B18が交差する箇所に孔14を設けても良い。図3に示すように、穴12を形成する本体部11の壁の下端付近に傾斜部A17を設け、突起部13の底部外縁付近、言い換えれば突起部13の傾斜が終了した付近の底部121に傾斜部B18を設ける。傾斜部A17と傾斜部B18とが交差する箇所に孔14が開けられている。このような構成とすることにより、比較的粘度が高いチクソ性を有する液体を穴12に供給した場合においても、前記傾斜部A17及び傾斜部B18に流れ込んだ液体に、前記傾斜による剪断力が働き、供給された液体が孔14に流れ込みやすくなる。図3(B)に示すように、傾斜部B18を、突起部13の傾斜と独立に形成しても良いし、突起部13の傾斜と傾斜部B18とを連続させても良い。また、傾斜部A17及び/又は傾斜部B18は、図3(B)に示すように直線を描く形状であっても良いし、図3(C)に示すように、曲線を描く(Rを有する)形状であっても良い。
【0022】
(5)管15
管15は、前記本体部11に開けられた孔14と連通し、本体部11の外側に突出した管である。図1に示すように、管15は、本体部11に開けられた孔14に対応した位置に設けられており、本体部11の外側に突出している。管15を本体部11に設ける際の方法に特に制限は無い。例えば、管15の一端を孔14の出口付近にシリコンコーキング等で接着させても良いし、図4に示すように管15を孔14に差し込んで固定しても良い。
【0023】
管15を形成する素材について特に制限は無く、吐出対象となる液体の種類、粘度並びに吐出ヘッド1を取り付ける機器の用途、目的及び大きさ等に応じて適宜変更可能である。このような素材の具体例として、例えば、鉄、アルミ又はステンレス等の金属素材、又はシリコーン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂等の合成樹脂等が挙げられる。吐出ヘッド1を糸状食品製造装置に使用する場合には、ステンレスにより管15を形成することで、より容易に管15を得ることができ、また製造される糸状食品に関する食品衛生上の問題を最小限に抑えることができる。
【0024】
管15の断面形状についても特に制限は無く、吐出対象となる液体の種類、粘度並びに吐出ヘッド1を取り付ける機器の用途、目的及び大きさ等に応じて適宜変更可能である。管15の具体的な断面形状として、例えば、三角形、四角形、五角形又は六角形等の多角形や、楕円を含む円形があげられる。管15の内径(断面形状が円形である場合には直径、楕円の場合には一番長い内径、多角形の場合には対角線の長さ)についても特に制限は無く、吐出対象となる液体の種類、粘度並びに吐出ヘッド1を取り付ける機器の用途、目的及び大きさ等に応じて適宜変更可能である。具体的な内径の値として、例えば、1.0~5.0mmが挙げられる。また、管15が本体部11から突出している長さ(図4におけるL1)についても特に制限は無く、吐出対象となる液体の種類、粘度並びに吐出ヘッド1を取り付ける機器の用途、目的及び大きさ等に応じて適宜変更可能である。具体的な突出した管15の長さの値として、例えば、30~100mmが挙げられる。
【0025】
なお、前記本体部11の外側に突出した管15の根元から先端までの長さ(図4におけるL1)が、その内径(図4におけるD1)の3倍以上であることにより、比較的粘度が低い液体を吐出した場合においても、液体が糸状で吐出され周囲に飛び散る恐れを極力排除できるためより好ましい。
【0026】
(6)ネジ穴16
本体部11の穴12を形成する壁に、1以上のネジ穴16を開けることができる。当該ネジ穴16は、吐出ヘッド1と後述する供給管2とをネジ締結により接続する際に使用できる。
【0027】
2.液体の供給システム3
本発明の液体供給システム3は、前記のような吐出ヘッド1と、
前記吐出ヘッド1に接続された、液体を供給する供給管2と、を含み、
前記液体を供給する側における前記供給管2をその軸方向から見た際に、供給管2を通して吐出ヘッド1における突起部13の頂点が見える位置にある事を特徴とするものである。以下に、構成ごとに説明する。
【0028】
(1)供給管2
供給管2の形態の具体例が、図5に示されている。図5に示す供給管2は、供給管21、液体を供給する出口である供給管21の開口部23側に設けられた接続部22を含む。供給管21は、図5に示すように、途中で折り曲げられても良いし、折り曲げられていない直線状であってもよい。供給管21を形成する素材について特に制限は無く、吐出対象となる液体の種類、粘度並びに供給システム3を取り付ける機器の用途、目的及び大きさ等に応じて適宜変更可能である。このような素材の具体例として、例えば、鉄、アルミ又はステンレス等の金属素材、又はシリコーン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂等の合成樹脂等が挙げられる。供給システム3を糸状食品製造装置に使用する場合には、ステンレスにより供給管21を形成することで、より容易に供給管21を得ることができ、また製造される糸状食品に関する食品衛生上の問題を最小限に抑えることができる。
【0029】
供給管21の内径についても特に制限は無く、吐出対象となる液体の種類、粘度並びに供給システム3を取り付ける機器の用途、目的及び大きさ等に応じて適宜変更可能である。具体的な内径の値として、例えば、20~100mmが挙げられる。後述するように、供給管21の出口(すなわち、開口部23)の軸方向から見た際に、供給管21(すなわち、開口部23)を通して吐出ヘッド1における突起部13の頂点が見える位置に接続される。このように接続することにより、供給管2から供給された液体が突起部13の頂点に供給され、頂点側から底部に向けて当該供給された液体が流れる事により、液体に剪断力が働き、粘度の高い液体、例えばチクソ性が高い液体を供給した場合であっても、当該液体が吐出ヘッド1内で過剰に留まることなく、また泡の発生を極力抑えながら液体を供給できる。供給管21の内径の値を、孔14―孔14のP.C.D(Pitch Circle Diameter)以内とすることにより、前記のような効果をより高めることができる。
【0030】
前記の通り、接続部22が、供給管21の開口部23側に設けられる。接続部22は後述するように、吐出ヘッド1と供給管2とをネジ締結等により接続するための部材である。接続部22の形状は、吐出ヘッド1と供給管2とを接続できる形状であることを条件として、特に制限されない。接続部22を平面方向から見た場合の形状の具体例として、例えば、三角形、四角形、五角形又は六角形等の多角形及び楕円を含む円等が挙げられる。図5において、接続部22は円板状の形態となっている。接続部22の厚みについても、吐出ヘッド1と供給管2とを接続できる厚みであることを条件として特に制限されない。接続部22の具体的な厚みの値として、例えば、12~28mmが挙げられる。接続部22には、1以上のネジ穴24が開けられており、ネジ穴24は、後述するように、吐出ヘッド1と供給管2とを接続する際に用いられる。
【0031】
接続部22を形成する素材について特に制限は無く、吐出対象となる液体の種類、粘度並びに供給システム3を取り付ける機器の用途、目的及び大きさ等に応じて適宜変更可能である。このような素材の具体例として、例えば、鉄、アルミ又はステンレス等の金属素材、又はシリコーン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂等の合成樹脂等が挙げられる。供給システム3を糸状食品製造装置に使用する場合には、ステンレスにより供給管21を形成することで、より容易に接続部22を得ることができ、また製造される糸状食品に関する食品衛生上の問題を最小限に抑えることができる。なお、供給管21と接続部22とを同一の素材で形成することにより、より容易に供給管2を得ることができる。
【0032】
接続部22における供給管21の位置、言い換えれば、接続部22における開口部23の位置について特に制限は無い。開口部23を接続部22の略中央に設ける事により、吐出ヘッド1と供給管2との接続をより容易に行う事ができる。
【0033】
(3)供給システム3
前述したように、本発明の供給システム3は、吐出ヘッド1と供給管2とを含む。図6に示すように、吐出ヘッド1と供給管2とは、それぞれのネジ穴16及び24を介して、ネジ31を用いてネジ締結することにより固定されている。供給管21の開口部23は、吐出ヘッド1の穴12と連通し、かつ開口部23を通して突起部13の頂点(図6(C)におけるV)が見える位置にある。開口部23と突起部13の頂点Vとが前記のような位置関係にあることにより、突起部13の頂点に供給された液体を均等に突起部13全体に流すことができるため、粘度の高い液体、例えばチクソ性が高い液体を供給した場合であっても、当該液体が吐出ヘッド1内で過剰に留まることなく、また泡の発生を極力抑えながら液体を供給できる効果を高めることができる。
【0034】
なお、図6(C)に示すように、供給管21の前記供給管2の軸方向の中心(図6(b)におけるCL)が、吐出ヘッド1における突起部13の頂点Vに対応する位置にする事もできる。このような位置にあることにより、突起部13の頂点Vに供給された液体をより均等に突起部13全体に流すことができるため、粘度の高い液体、例えばチクソ性が高い液体を供給した場合であっても、当該液体が吐出ヘッド1内で過剰に留まることなく、また泡の発生を極力抑えながら液体を供給できる効果をより高めることができる。
【0035】
3.糸状食品の製造装置4
本発明の糸状食品製造装置4は、入口411と出口412とを備え所定の流路長が確保された反応管41を含み、前記入口411側に前記供給システム3を備えた事を特徴とする。以下に、具体例に基づいて糸状食品製造装置4を詳細に説明する。
【0036】
図7に糸状食品製造装置4の形状の具体例が示されている。糸状食品製造装置4は、入口411と出口412とを備え所定の流路長が確保された反応管41を含んでいる。図7の例においては、前記入口411は上方向に開口しており、前記出口412は下方向に開口している。反応管41は、上側に備えられた入口411を起点とし、上下方向を軸方向として巻回しながら下側に備えられた出口412まで続いている。このように、反応管41が巻回していることにより、糸状食品製造装置4において反応管41が占める面積をできるだけ小さくしながら所定の流路長を確保できる。
【0037】
ここで、本発明における「所定の流路長」とは、糸状食品製造装置4において製造する食品の種類、言い換えれば、供給システム3により供給される原料と、反応管41を流れる原料とが反応して糸状食品を形成する事ができる程度の長さを意味する。また、前記「糸状食品を形成することができる」とは、反応管41の出口412から回収された糸状食品の内部まで反応が進行している状態を含むことはもちろんのこと、糸状食品の内部までは反応が進行していないが、回収等反応後に糸状食品に対して行う操作が行える程度にまでその外側が反応している状態を意味する。反応管41の具体的な流路長(長さ)については、反応管41内で反応させる原料の組み合わせ、原料の濃度及び温度等に基づいて適宜調整可能である。
【0038】
前記上方向に開口した入口411の上側に、供給システム3が備えられている。図7において備えられている供給システム3の数は1つであるが、勿論2以上備えることも可能である。供給システム3の供給管21は、供給システム3を介して供給される原料を貯蔵する原料タンクA42に接続されている。供給管21の途中には、前記原料タンクA42から供給システム3に原料を供給するためのポンプ43が備えられている。
【0039】
前記下方向に開口した出口412の下側に、原料タンクB44が備えられている。原料タンクB44と入口411側の反応管41とは、循環管45を介して接続されている。前記循環管45の途中には、ポンプB46が備えられている。
【0040】
4.糸状食品の製造
前記糸状食品製造装置4を用いて、カラギーナンとアルギン酸ナトリウムを反応させて得られる糸状食品を具体例として、その製造方法を説明する。勿論、本発明の糸状食品製造装置4は、前記以外の原料であって2つの原料が反応することにより得られる食品を製造するいかなる原料に対しても適用可能である。
【0041】
カラギーナン水溶液を原料タンクA42に注ぎ入れる。前記カラギーナン水溶液は、海藻から抽出したカラギーナンを水道水等の水に溶解させて得られる。カラギーナン水溶液中におけるカラギーナン濃度は、最終的に求められる糸状食品の品質に応じて適宜変更可能である。また、カラギーナン水溶液の粘度は、前記水溶液中におけるカラギーナンの濃度が上昇するについて上昇する。本発明の糸状食品製造装置4においては、前記のような吐出ヘッド1を含む供給システム3を備えているため、比較的高い粘度、具体的には、例えば、100~150mPa・sの水溶液であっても、吐出される水溶液における泡の量を極力減少させながら、比較的スムーズに供給システム3から吐出できる。なお、カラギーナンの濃度が比較的低いことによりカラギーナン水溶液の粘度が低い、例えば、80Pa・s以上100Pa・s未満である場合には、本体部11の外側に突出した管15の根元から先端までの長さが、前記管15の内径の3倍以上である吐出ヘッド1を用いることにより、水溶液が過剰に周囲に飛び散らずに糸状に吐出されやすいという効果が得られる。
【0042】
一方、アルギン酸ナトリウム水溶液を、原料タンクB44に注ぎ入れる。前記水溶液中におけるアルギン酸ナトリウムの濃度は、最終的に求められる糸状食品の品質等に応じて適宜変更可能である。
【0043】
ポンプB46を駆動することにより、原料タンクB44に貯蔵されたアルギン酸ナトリウム水溶液が循環管45を介して反応管41に供給される。反応管41に供給されたアルギン酸ナトリウム水溶液は、巻回する反応管41の上側から下側に流れていき、反応管41の出口412から原料タンクB44に排出される。すなわち、アルギン酸ナトリウム水溶液は、原料タンクB44→循環管45→反応管41→原料タンクB44の順に循環する。アルギン酸ナトリウムが反応管を流れる速度、言い換えればアルギン酸ナトリウムの循環速度は、反応させる2つの原料の種類及び濃度等に基づいて適宜調整可能である。アルギン酸ナトリウムの循環速度は、ポンプB46の排出速度や反応管41の傾斜角度等を調整する事により、適宜調整可能である。
【0044】
ポンプB46を駆動させアルギン酸ナトリウム水溶液の循環を開始させた後、ポンプA43を駆動させる。ポンプA43を駆動させることにより、原料タンクA42に貯蔵されたカラギーナン水溶液が、供給システム3の管15から、上方向に開口した入口411を介して反応管41に供給される。管15から供給されたカラギーナン水溶液は、糸状に細長い状態で反応管41に供給される。反応管41に供給されたカラギーナン水溶液は、反応管41を循環するアルギン酸ナトリウム水溶液と反応を開始する。供給されたカラギーナン水溶液は、反応管41を循環するアルギン酸ナトリウムの流れと共に反応管41を入口411側から出口412側へと移動する。
【0045】
前記反応管41は所定の流路長を有しているため、反応管41を流れる間にカラギーナンとアルギン酸ナトリウムとが反応して糸状食品が形成される。形成した糸状食品は、循環するアルギン酸ナトリウム水溶液と共に出口412を介して原料タンクB44に排出される。原料タンクB44に排出された糸状食品を回収して、必要に応じて、洗浄、カット及びパッキング等を行える。糸状食品の製造を進めるに従って、循環するアルギン酸ナトリウム水溶液中におけるアルギン酸ナトリウムの濃度が低下していくため、濃度の確認を行いながら、適宜アルギン酸ナトリウムを原料タンクB44に添加することにより、循環するアルギン酸ナトリウム水溶液の濃度を調整できる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の吐出ヘッド、供給システム及び糸状食品の製造装置により、より容易にかつ高い効率で糸状食品を製造することが可能となる。
【符号の説明】
【0047】
1:吐出ヘッド、11:本体部、12:穴、121:底部、13:突起部、14:孔、15:管、16:ネジ穴、17:傾斜部A、18:傾斜部B
2:供給管、21 :供給管、22:接続部、23:開口部、24:ネジ穴
3:供給システム、31:ネジ
4:糸状食品製造装置、41:反応管、411:入口、412:出口、42:原料タンクA、43:ポンプA、44:原料タンクB、45:循環管 、46:ポンプB


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7