(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139767
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】電力系統事故報告システムおよび電力系統事故報告プログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 13/00 20060101AFI20230927BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20230927BHJP
G06Q 50/06 20120101ALI20230927BHJP
【FI】
H02J13/00 301A
H02J13/00 301D
H02J3/00 160
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045467
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】舩越 俊巳
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
5L049
【Fターム(参考)】
5G064AA01
5G064AA04
5G064AC10
5G064AC11
5G064BA08
5G064BA09
5G064CB07
5G064CB17
5G064CB18
5G064DA02
5G066AA08
5G066AA09
5G066AE04
5G066AE05
5G066AE07
5G066AE09
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】電力系統事故の種類に応じた報告先へ、事故の種類および報告先に応じた報告事項および報告内容で事故報告を行うことが可能な電力系統事故報告システムおよび電力系統事故報告プログラムを提供する。
【解決手段】電力系統事故報告システム1は、電力系統設備の動作情報に基づいて、発生している電力系統事故の種類および発生場所を特定し、関連する事故情報を収集し、特定された電力系統事故の種類および発生場所に基づいて、事故報告の報告先および報告事項を決定し、決定された報告先および報告事項と、事故情報とに基づいて、事故報告を作成し、作成された事故報告を報告先へ送信する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統において発生した電力系統事故に関する事故報告を、前記電力系統事故に関連する報告先へ報告する電力系統事故報告システムであって、
前記電力系統を構成する電力系統設備の識別情報を含む動作情報を取得する動作情報取得手段と、
取得した前記動作情報に基づいて、発生している電力系統事故の種類および発生場所を特定する事故特定手段と、
特定された前記電力系統事故に関連する事故情報を収集する事故情報収集手段と、
特定された前記電力系統事故の種類および発生場所に基づいて、前記事故報告の報告先と、前記報告先に応じた報告事項とを決定する報告先決定手段と、
決定された前記報告先および前記報告事項と、収集された前記事故情報とに基づいて、前記報告事項の報告文を含む前記事故報告を作成する事故報告作成手段と、
作成された前記事故報告を、決定された前記報告先へ送信する事故報告送信手段と、
を備えることを特徴とする電力系統事故報告システム。
【請求項2】
前記報告先には、前記電力系統の運用・管理に関わる技術部門と、前記技術部門以外の非技術部門と、があり、
前記事故報告作成手段は、前記非技術部門の報告先向けに前記事故報告を作成する際に、前記電力系統の運用・管理で用いられる技術用語の代わりに、前記非技術部門の担当者が理解可能な一般用語を用いて前記報告文を作成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電力系統事故報告システム。
【請求項3】
前記報告先決定手段は、過去の電力系統事故における事故報告の報告先および報告事項の実績データと、前記過去の電力系統事故における前記事故報告の報告先および報告事項を決定するために用いられた電力系統事故の種類および発生場所の実績データと、に基づいて機械学習され、新たに発生した電力系統事故の種類および発生場所が入力されると、前記新たに発生した電力系統事故の事故報告の報告先および報告事項を決定して出力するように生成された報告先決定モデルを備える、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電力系統事故報告システム。
【請求項4】
前記事故報告作成手段は、過去の電力系統事故における事故報告の実績データと、前記過去の電力系統事故における前記事故報告を作成するために用いられた報告先、報告事項および事故情報の実績データと、に基づいて機械学習され、新たに発生した電力系統事故の報告先、報告事項および事故情報が入力されると、前記新たに発生した電力系統事故の事故報告を作成して出力するように生成された事故報告作成モデルを備える、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電力系統事故報告システム。
【請求項5】
前記動作情報取得手段により取得された前記電力系統設備の動作情報と、前記事故特定手段により特定された前記電力系統事故の種類および発生場所と、前記事故情報収集手段により収集された前記事故情報と、に基づいて、所定の報告事項を備えた事故報告書を作成する事故報告書作成手段を備え、
作成された前記事故報告書は、前記事故報告送信手段により、前記報告先決定手段により決定された前記報告先に送信される、
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の電力系統事故報告システム。
【請求項6】
電力系統において発生した電力系統事故に関する事故報告を、前記電力系統事故に関連する報告先へ報告する電力系統事故報告プログラムであって、
コンピュータを、
前記電力系統を構成する電力系統設備の識別情報を含む動作情報を取得する動作情報取得手段、
取得した前記動作情報に基づいて、発生している電力系統事故の種類および発生場所を特定する事故特定手段、
特定された前記電力系統事故に関連する事故情報を収集する事故情報収集手段、
特定された前記電力系統事故の種類および発生場所に基づいて、前記事故報告の報告先と、前記報告先に応じた報告事項とを決定する報告先決定手段、
決定された前記報告先および前記報告事項と、収集された前記事故情報とに基づいて、前記報告事項の報告文を含む前記事故報告を作成する事故報告作成手段、
および、作成された前記事故報告を、決定された前記報告先へ送信する事故報告送信手段、
として機能させることを特徴とする電力系統事故報告プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力系統事故の発生時に関係箇所へ報告を行う電力系統事故報告システムおよび電力系統事故報告プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統を構成する発電機、変圧器および送電線などの電力系統設備が故障すると、電力の発電支障や供給支障などの電力系統事故が発生することがある。このような電力系統事故が発生した場合、故障した電力系統設備を管轄する制御所の担当者は、電力復旧を迅速に行うために、関係箇所へ電力系統事故についての報告書の作成・送信、電話、電子メールなどによる事故報告を行う。
【0003】
特許文献1には、発変電所に設置されたデータ収集装置から発変電所の機器の動作状況を示す動作データを取得し、動作データに不具合があるか否かを判定し、動作データに不具合があると判定された場合に、動作データに係る情報(例えば、動作データの種類、および発電所名または変電所名)を所定箇所(機器のメンテナンス業者、事業本部など)へ配信する情報提供システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電力系統事故には、例えば、発電所事故、変電所事故および送電線事故など、様々な種類があり、これらの電力系統事故の種類に応じて事故報告の報告先は異なっている。また、電力系統事故の種類および報告先に応じて、事故報告の報告事項が異なっている。報告先は多岐にわたり、報告先ごとに異なる複数の報告事項を整理し、各報告事項の報告内容を変える必要がある。そのため、事故報告を行う担当者の負担は非常に大きく、報告先への報告漏れや報告忘れ、報告事項や報告内容の漏れなどが発生するリスクがあった。
【0006】
特許文献1に記載の発明では、動作データに係る情報を自動で所定箇所へ配信するため、報告漏れなどは発生しない。しかしながら、特許文献1に記載の発明では、電力系統事故の種類に応じた報告先へ、事故の種類および報告先に応じた報告事項および報告内容で事故報告を行うことはできない。
【0007】
そこでこの発明は、電力系統事故の種類に応じた報告先へ、事故の種類および報告先に応じた報告事項および報告内容で事故報告を行うことが可能な電力系統事故報告システムおよび電力系統事故報告プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、電力系統において発生した電力系統事故に関する事故報告を、前記電力系統事故に関連する報告先へ報告する電力系統事故報告システムであって、前記電力系統を構成する電力系統設備の識別情報を含む動作情報を取得する動作情報取得手段と、取得した前記動作情報に基づいて、発生している電力系統事故の種類および発生場所を特定する事故特定手段と、特定された前記電力系統事故に関連する事故情報を収集する事故情報収集手段と、特定された前記電力系統事故の種類および発生場所に基づいて、前記事故報告の報告先と、前記報告先に応じた報告事項とを決定する報告先決定手段と、決定された前記報告先および前記報告事項と、収集された前記事故情報とに基づいて、前記報告事項の報告文を含む前記事故報告を作成する事故報告作成手段と、作成された前記事故報告を、決定された前記報告先へ送信する事故報告送信手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
この電力系統事故報告システムでは、電力系統設備の動作情報に基づいて、発生している電力系統事故の種類および発生場所を特定し、関連する事故情報を収集し、特定された電力系統事故の種類および発生場所に基づいて、事故報告の報告先および報告事項を決定し、決定された報告先および報告事項と、事故情報とに基づいて、事故報告を作成し、作成された事故報告を報告先へ送信する。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載の電力系統事故報告システムにおいて、前記報告先には、前記電力系統の運用・管理に関わる技術部門と、前記技術部門以外の非技術部門と、があり、前記事故報告作成手段は、前記非技術部門の報告先向けに前記事故報告を作成する際に、前記電力系統の運用・管理で用いられる技術用語の代わりに、前記非技術部門の担当者が理解可能な一般用語を用いて前記報告文を作成する、ことを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の電力系統事故報告システムにおいて、前記報告先決定手段は、過去の電力系統事故における事故報告の報告先および報告事項の実績データと、前記過去の電力系統事故における前記事故報告の報告先および報告事項を決定するために用いられた電力系統事故の種類および発生場所の実績データと、に基づいて機械学習され、新たに発生した電力系統事故の種類および発生場所が入力されると、前記新たに発生した電力系統事故の事故報告の報告先および報告事項を決定して出力するように生成された報告先決定モデルを備える、ことを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電力系統事故報告システムにおいて、前記事故報告作成手段は、過去の電力系統事故における事故報告の実績データと、前記過去の電力系統事故における前記事故報告を作成するために用いられた報告先、報告事項および事故情報の実績データと、に基づいて機械学習され、新たに発生した電力系統事故の報告先、報告事項および事故情報が入力されると、前記新たに発生した電力系統事故の事故報告を作成して出力するように生成された事故報告作成モデルを備える、ことを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の電力系統事故報告システムにおいて、前記動作情報取得手段により取得された前記電力系統設備の動作情報と、前記事故特定手段により特定された前記電力系統事故の種類および発生場所と、前記事故情報収集手段により収集された前記事故情報と、に基づいて、所定の報告事項を備えた事故報告書を作成する事故報告書作成手段を備え、作成された前記事故報告書は、前記事故報告送信手段により、前記報告先決定手段により決定された前記報告先に送信される、ことを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明は、電力系統において発生した電力系統事故に関する事故報告を、前記電力系統事故に関連する報告先へ報告する電力系統事故報告プログラムであって、コンピュータを、前記電力系統を構成する電力系統設備の識別情報を含む動作情報を取得する動作情報取得手段、取得した前記動作情報に基づいて、発生している電力系統事故の種類および発生場所を特定する事故特定手段、特定された前記電力系統事故に関連する事故情報を収集する事故情報収集手段、特定された前記電力系統事故の種類および発生場所に基づいて、前記事故報告の報告先と、前記報告先に応じた報告事項とを決定する報告先決定手段、決定された前記報告先および前記報告事項と、収集された前記事故情報とに基づいて、前記報告事項の報告文を含む前記事故報告を作成する事故報告作成手段、および、作成された前記事故報告を、決定された前記報告先へ送信する事故報告送信手段、として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1および請求項6の発明によれば、電力系統事故の発生時に、電力系統事故の種類に応じて関連する報告先および報告事項を決定し、事故報告を自動作成して送信することができるので、事故報告を迅速に関係各所に送信することができ、電力系統事故への対応を早めることが可能である。また、事故報告の報告先および報告事項の選択、事故報告の作成、送信などに人員を割く必要がなくなるので、事故復旧への対応に集中することができ、より早期に供給支障、発電支障を解消することが可能である。さらに、事故報告を手作業によって行う際のリスクとなっていた、報告時間、報告内容のばらつき、報告先への報告漏れや報告忘れ、報告事項や報告内容の漏れなどを防ぐことが可能である。
【0016】
請求項2の発明によれば、広報などの非技術部門向けに事故報告を作成する際に、電力系統の運用・管理で用いられる技術用語の代わりに、一般用語を用いて報告文を作成するので、非技術部門の担当者であっても事故報告を迅速、かつ、容易に理解することができる。したがって、事故についての広報活動に早期に開始することができ、需要家などの不安を解消することが可能である。
【0017】
請求項3の発明によれば、報告先および報告事項の決定に、過去の実績データに基づいて機械学習された報告先決定モデルを利用するので、精度よく、かつ、迅速に電力系統事故の種類に応じた報告先および報告事項を決定することができる。これにより、より早期に供給支障、発電支障を解消することが可能である。
【0018】
請求項4の発明によれば、事故報告の作成に、過去の実績データに基づいて機械学習された事故報告作成モデルを利用するので、精度よく、かつ、迅速に電力系統事故の種類に応じた事故報告を作成することができる。これにより、より早期に供給支障、発電支障を解消することが可能である。
【0019】
請求項5の発明によれば、集約された各種情報に基づいて、所定の報告事項を備えた事故報告書を自動で作成して送信するので、事故報告書を迅速に関係各所に送信することができ、電力系統事故への対応を早めることが可能である。また、事故報告書の報告先の選択、事故報告書の作成、送信などに人員を割く必要がなくなるので、事故復旧への対応に集中することができ、より早期に供給支障、発電支障を解消することが可能である。さらに、事故報告書を手作業によって行う際のリスクとなっていた、報告時間、報告内容のばらつき、報告先への報告漏れや報告忘れ、報告事項や報告内容の漏れなどを防ぐことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】この発明の実施の形態に係る電力系統事故報告システムを利用し、電力系統事故の種類に応じて、関連する施設および部署へ事故報告を送信する状態を示す概念図である。
【
図2】
図1の電力系統事故報告システムの概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図2の設備情報データベースのデータ構成を示す図である。
【
図4】
図2の事故情報データベースのデータ構成を示す図である。
【
図5】
図2の実績データベースのうち、送電線事故の実績データのデータ構成を示す図である。
【
図6】
図5の送電線事故の実績データの続きを示す図である。
【
図7】
図2の実績データベースのうち、変電所事故の実績データのデータ構成を示す図である。
【
図8】
図7の変電所事故の実績データの続きを示す図である。
【
図9】
図2の実績データベースのうち、発電所事故の実績データのデータ構成を示す図である。
【
図10】
図9の発電所事故の実績データの続きを示す図である。
【
図12】
図2の報告先決定モデルの概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図13】
図2の事故報告作成モデルの概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図14】電力系統事故の事故報告を作成・送信する手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0022】
図1は、この発明の実施の形態に係る電力系統事故報告システム1の機能を示す概念図である。本実施形態の電力系統事故報告システム1は、電力系統において発生した電力系統事故に関する事故報告を、電力系統事故に関連する報告先へ報告するためのシステムである。なお、電力系統事故報告システム1は、電力事業者の本社または事業所、あるいは各制御所などに設置してもよいし、クラウドサーバに設置してもよい。
【0023】
電力系統事故報告システム1は、発電所や変電所などの電気所2に設置されている発電機、変電器、送電線および遮断器などの電力系統設備の動作情報および識別情報を、電気所2に設置されている遠隔監視制御装置や、制御中継所に設置された情報集配信装置(図示せず)から受信する。電力系統事故報告システム1は、受信した識別情報に基づいて、動作情報がどの電気所のどの電力系統設備から送信されたかを特定し、動作情報が通常状態(電力系統事故が発生していない状態)と異なっている場合に、電力系統事故が発生しているものと判定する。
【0024】
電力系統事故報告システム1は、電力系統事故が発生していると判定すると、その判定の基となった電力系統設備の種類、設置場所に応じて、電力系統事故の種類(例えば、送電線事故、変電所事故および発電所事故など)と発生場所とを特定する。電力系統事故報告システム1は、特定した電力系統事故の種類および発生場所に基づき、発生している電力系統事故に関する事故情報を収集する。
【0025】
電力系統事故報告システム1は、特定された電力系統事故の種類および発生場所に基づいて、事故報告の報告先と、報告先に応じた報告事項とを決定する。また、電力系統事故報告システム1は、決定された報告先および報告事項と、収集された事故情報とに基づいて、報告事項の報告文を含む事故報告を作成する。すなわち、電力系統事故報告システム1は、電力系統事故の種類および発生場所に応じて、事故に関する情報の確認や、何らかの対処が必要な施設および部署へ、確認や対処に必要な報告事項を含む事故報告を送信する。
【0026】
なお、作成される事故報告には、事故報告を周知の音声合成装置により生成した音声データと、所定の報告事項を備えた事故報告書(事故速報または第一報ともいう)とが含まれる。
【0027】
また、音声データからなる事故報告については、送信先の担当者の技術レベルに応じて内容が異なる。すなわち、報告先には、電力系統の運用・管理に関わる技術部門と、技術部門以外の非技術部門(例えば、広報などがあり、非技術部門の報告先向けに事故報告を作成する際に、電力系統の運用・管理で用いられる技術用語の代わりに、非技術部門の担当者が理解可能な一般用語を用いて報告文が作成される。
【0028】
電力系統事故報告システム1は、作成された事故報告を決定された報告先に送信する。
図1は、電力系統事故の種類に応じて、事故報告の報告先が異なっていることを示している。電力系統事故報告システム1は、電力事業者の運転制御ネットワークNWを介して、中央給電指令所3と、基幹給電制御所4と、電力系統事故に関連する制御所5と、運転制御センタ6と、変電課7と、送電課8と、水力電気課9と、土木課10と、広報11とに接続されている。
【0029】
例えば、図中において破線で示す送電線事故の事故報告は、中央給電指令所3と、基幹給電制御所4と、電力系統事故に関連する制御所5と、運転制御センタ6と、変電課7と、送電課8と、水力電気課9と、土木課10と、広報11とに送信される。
【0030】
また、図中において一点鎖線で示す変電所事故の事故報告は、中央給電指令所3と、基幹給電制御所4と、電力系統事故に関連する制御所5と、運転制御センタ6と、変電課7と、水力電気課9と、土木課10と、広報11とに送信される。
【0031】
さらに、図中において二点鎖線で示す発電所事故の事故報告は、中央給電指令所3と、基幹給電制御所4と、電力系統事故に関連する制御所5と、運転制御センタ6と、水力電気課9と、土木課10と、広報11とに送信される。
【0032】
中央給電指令所3は、電力の需給運用・管理を行い、基幹給電制御所4は、電力系統の運用・管理を行う施設である。複数の制御所5は、それぞれ電気所2を制御・管理する施設である。運転制御センタ6は、周知の配電自動化システムを運用して、配電系統の自動最適化を行う施設である。
【0033】
変電課7、送電課8、水力電気課9、および土木課10は、電力事業者の各事業所などに設置された部署である。変電課7は、変電所の保守・管理を行う。送電課8は、送電線や鉄塔、地中送電設備などの保守・管理を行う。なお、送電線は多数の事業所の管轄エリアを跨がって設置されている。そのため、送電線事故が発生した場合には、該当する送電線を設備主管箇所とする全ての事業所の送電課8に事故報告が送信される。水力電気課9は、水力発電所の発電機の保守・管理を行う部署である。送電線事故および変電所事故においては、事故が水力発電所に影響を及ぼす場合に、事故報告が送信される。土木課10は、水力発電所のダムや、ダムに流れ込む河川などの土木設備の保守・管理を行う部署であり、事故が土木設備に影響を及ぼす場合に、事故報告が送信される。
【0034】
広報11は、電力事業者の活動内容や商品などの情報発信を行う部署であり、例えば、電力事業者の本社に設置されている。広報11は、電力系統事故に関する情報を電力の需要家などへ配信する。
【0035】
図2は、電力系統事故報告システム1の概略構成を示す機能ブロック図である。電力系統事故報告システム1は、主として、入力部14、表示部15、記憶部16、メモリ17、通信部18、メインタスク19、およびこれらを制御などする中央処理部20を備える。
【0036】
電力系統事故報告システム1は、例えば、パーソナルコンピュータなどに、装置全体の制御プログラム(オペレーションシステム)や、事故報告の報告先および報告事項を決定して事故報告を作成し、作成した事故報告を報告先へ送信するための各種処理を行うアプリケーション(電力系統事故報告プログラム161)がインストールされて構成される。
【0037】
入力部14は、利用者の命令などを受けて電力系統事故報告システム1へ情報を入力する機能を備えるインターフェースであり、例えばキーボードやマウスによって構成される。
【0038】
表示部15は、入力部14を介して入力される情報を表示したり、電力系統事故報告システム1としての処理結果を表示したり、などする機能を備え、例えば液晶ディスプレイによって構成される。
【0039】
記憶部16は、各種の情報、プログラム、およびデータなどを記憶する機能を備える記憶領域/記憶装置であり、例えばハードディスクによって構成される。記憶部16には、電力系統事故報告システム1全体の制御プログラムや電力系統事故報告プログラム161が格納されるとともに、設備情報データベース(以下、データベースをDBともいう)162、事故情報データベース163、実績データベース164、報告先決定モデル165、および事故報告作成モデル166などが格納される。
【0040】
なお、詳しくは図示しないが、記憶部16には、事故報告が送信される各報告先の電話番号、FAX番号、メールアドレスなどが記憶された報告先データベースが記憶されている。事故報告を各報告先へ送信する際には、この報告先データベースに記憶されているデータが利用される。
【0041】
設備情報DB162は、電力系統設備に関する情報を記憶したデータベースである。設備情報DB162は、
図3に示すように、電力系統設備の識別情報(例えば、と、種類(遮断器、変圧器、発電機および送電線など)と、設置場所と、通常の動作状態などが記憶されている。例えば、遮断器301CBの場合、通常の動作状態は「閉」となっている。そのため、電力系統事故報告システム1に送信された動作情報が「開」である場合、何らかの異常による電力系統事故が発生しているものと推定することができる。
【0042】
事故情報DB163は、電力系統事故の発生時に電力系統事故報告システム1が収集した事故情報を記憶したデータベースである。事故情報DB163は、
図4に示すように、電力系統事故ごとに付与された事故IDごとに、事故箇所、事故発生時刻、天候、発雷の有無、作業の有無、供給支障の有無、発電支障の有無、事故回線以外の潮流状況、事故に起因する状態変化、瞬時電圧低下の有無、故障点(送電線事故の場合)、電力需要者の状況、土木設備の状況などが記憶されている。
【0043】
上記の事故箇所には、電力系統事故が発生している場所の他、設備や機器の動作状況などが含まれる。事故箇所に関する情報は、各電気所2の遠隔監視制御装置や、制御中継所の情報集配信装置などから取得される。
【0044】
事故発生時刻には、秒単位までの発生時刻が含まれる。事故発生時刻は、遠隔監視制御装置や制御中継所の情報集配信装置などから取得してもよいし、異常な動作情報が送信された時刻を事故発生時刻としてもよい。
【0045】
発雷の有無は、事故発生時の発雷の有無であり、発雷があった場合には、発生場所も含めて情報取得される。発雷の有無および発生場所については、周知の落雷位置標定システムなどから取得される。
【0046】
作業の有無は、事故発生時の保守作業などの有無であり、作業が行われていた場合には、作業内容も含めて情報取得される。これは、保守作業などが事故の原因となる場合もあるためである。なお、作業の有無および内容については、変電課7、送電課8などに設置されている作業管理システムなどから取得される。
【0047】
供給支障の有無は、電力系統事故に起因して電力の供給支障が発生しているのか否か、発生している場合、供給支障箇所と、供給支障量とが情報取得される。また、発電支障の有無は、電力系統事故に起因して発電支障が発生しているのか否か、発生している場合、発電支障箇所と、発電支障量とが情報取得される。
【0048】
供給支障箇所および発電支障箇所に関する情報は、例えば、中央給電指令所3、基幹給電制御所4および制御所5などの制御システムなどから取得される。また、供給支障量および発電支障量については、設備情報DB162に記憶されている各電力系統設備の通常時の供給量および発電量と、制御所5などの制御システムから取得した現在の供給量および発電量と、事故発生時刻から事故収束時刻までの時間とに基づいて、例えば、メインタスク19の事故情報収集タスク192にて算出される。
【0049】
事故回線以外の潮流状況、電力系統事故により、運用容量超過が発生しているのか否かが情報取得される。運用容量が超過している場合、電力系統の系統切替や、発電機の増発または抑制などが行われる。事故回線以外の潮流状況は、例えば、中央給電指令所3、基幹給電制御所4および制御所5の制御システムなどから取得される。
【0050】
事故に起因する状態変化は、設備や機器の状態変化の他、事故様相(例えば、1、2、3相の短絡・地絡)、制御所などの制御システムの故障表示内容、発生した全ての警報、表示の変化などが含まれる。事故に起因する状態変化は、例えば、中央給電指令所3、基幹給電制御所4および制御所5の制御システムなどから取得される。
【0051】
瞬時電圧低下の有無は、瞬時電圧低下が発生しているのか否か、発生している場合、発生場所が情報取得される。瞬時電圧低下の有無は、例えば、中央給電指令所3、基幹給電制御所4および制御所5の制御システムなどから取得される。
【0052】
故障点は、送電線事故の場合に、送電線における故障の発生場所を示す情報である。故障点の位置については、周知の故障点標定システムから取得される。
【0053】
電力需要者の状況は、停電や電圧低下などが発生している需要家の地域などに関する情報である。電力需要者の状況は、例えば、運転制御センタ6の配電自動化システムなどから取得される。土木設備の状況は、電力系統事故に関係するダムや河川の状況であり、例えば、設備主管箇所である土木課10などから取得される。
【0054】
実績DB164は、過去の電力系統事故における事故報告の報告先および報告事項の実績データと、過去の電力系統事故における事故報告の報告先および報告事項を決定するために用いられた電力系統事故の種類および発生場所の実績データとが対応付けて記憶されたデータベースであり、報告先決定モデル165および事故報告作成モデル166を機械学習に生成・更新するための教師データとして用いられる。
【0055】
実績DB164には、電力系統事故(送電線事故、変電所事故および発電所事故など)の実績データが事故IDごとに記憶されている。
図5および
図6は、送電線事故(事故ID:0143)の実績データを示している。この実績データから分かるように、送電線事故では、事故報告は、送電線事故についての情報確認や、何らかの対処が必要な施設および部署として、中央給電指令所3と、基幹給電制御所4と、電力系統事故に関連する制御所5と、運転制御センタ6と、変電課7と、送電課8と、水力電気課9と、土木課10と、広報11とに送信される。
【0056】
また、各報告先に報告される事故報告の報告事項は、報告先において、送電線事故についての情報確認や、何らかの対処が必要な事項が設定されている。なお、各報告事項の内容については、事故情報DB163に記憶されている事故情報がそれぞれ適用される。
【0057】
図5および
図6に示す報告内容は、報告事項をもとにして作成される事故報告の内容を示している。例えば、中央給電指令所3に送信される事故報告では、「110kVの○△線1Lの送電線事故について報告します。事故発生時刻は、2月13日、14時21分。天候は雨、発雷は無し。この事故に起因して、501CBがトリップ(地絡)しています。」となっている。報告内容は、全ての報告事項の内容を含み、かつ、報告先の技術者が迅速、かつ、容易に理解できるように、電力系統の運用・管理で用いられる技術用語が使用される。
【0058】
これに対し、非技術部門である広報11に対しては、電力系統の運用・管理で用いられる技術用語の代わりに、広報の担当者が理解可能な一般用語を用いて報告文が作成される。例えば、
図6に示すように、広報11には、「○△地区の送電線事故について報告します。事故発生時刻は、2月13日、14時21分。天候は雨、発雷は無し。この事故に起因して、○△地区の一部が停電しています。」と報告される。この事故報告では、「110kVの○△線1L」や「501CBがトリップ(地絡)」などの技術用語の代わりに、「○△地区」、「一部停電」などの一般用語が用いられている。
【0059】
図7および
図8は、変電所事故(事故ID:0087)の実績データを示している。この実績データから分かるように、変電所事故では、事故報告は、変電所事故についての情報確認や、何らかの対処が必要な施設および部署として、中央給電指令所3と、基幹給電制御所4と、電力系統事故に関連する制御所5と、運転制御センタ6と、変電課7と、水力電気課9と、土木課10と、広報11とに送信される。また、各報告先に報告される事故報告の報告事項は、報告先において、変電所事故についての情報確認や、何らかの対処が必要な事項が設定されている。なお、各報告事項の内容については、送電事故の場合と同様に、事故情報DB163に記憶されている事故情報がそれぞれ適用される。
【0060】
また、変電所事故においても、中央給電指令所3などの技術部門に送信される事故報告に対し、広報11などの非技術部門に送信される事故報告の内容は異なっている。例えば、「023TR停止」などの技術用語の代わりに、「□△○地区の一部が停電」のように、一般用語が用いられている。
【0061】
図9および
図10は、発電所事故(事故ID:0162)の実績データを示している。この実績データから分かるように、発電所事故では、事故報告は、発電所事故についての情報確認や、何らかの対処が必要な施設および部署として、中央給電指令所3と、基幹給電制御所4と、電力系統事故に関連する制御所5と、運転制御センタ6と、水力電気課9と、土木課10と、広報11とに送信される。また、各報告先に報告される事故報告の報告事項は、報告先において、発電所事故についての情報確認や、何らかの対処が必要な事項が設定されている。なお、各報告事項の内容については、送電事故の場合と同様に、事故情報DB163に記憶されている事故情報がそれぞれ適用される。
【0062】
また、発電所事故においても、中央給電指令所3などの技術部門に送信される事故報告に対し、広報11などの非技術部門に送信される事故報告の内容は異なっている。例えば、「013G停止」などの技術用語の代わりに、「△○□地区の一部が停電」のように、一般用語が用いられている。
【0063】
上記のとおり、変電所事故では、報告先から送電課8が除かれている。また、発電所事故では、報告先から変電課7および送電課8が除かれている。さらに、送電線事故に対し、変電所事故および発電所事故における制御所5への報告事項からは、事故点に関する情報が除かれている。また、発電所事故における水力電気課9への報告事項は、送電線事故および変電所事故に比べて大幅に増えている。
【0064】
このように、電力系統事故の種類および発生場所に応じて、情報確認や、何らかの対処が必要な施設および部署が異なり、必要な情報も異なるため、電力系統事故の種類および発生場所に応じて、報告先および報告事項が決定される。
【0065】
設備情報DB162、事故情報DB163および実績DB164の一部もしくは全部がサーバなどの外部記憶装置に格納されるようにしてもよい。この場合には、電力系統事故報告システム1が、通信部18を介して外部記憶装置にアクセスして各種データや情報を取得するようにしてもよく、あるいは、種々の信号回線を介して外部記憶装置との間でデータや制御指令等の信号の送受信/入出力を行うための接続インターフェース(図示せず)を介して外部記憶装置にアクセスして各種データや情報を取得するようにしてもよい。
【0066】
報告先決定モデル165は、過去の電力系統事故における事故報告の報告先および報告事項の実績データと、過去の電力系統事故における事故報告の報告先および報告事項を決定するために用いられた電力系統事故の種類および発生場所の実績データと、に基づいて機械学習され、新たに発生した電力系統事故の種類および発生場所が入力されると、新たに発生した電力系統事故の事故報告の報告先および報告事項を決定して出力するように生成された学習済みモデルである。
【0067】
事故報告作成モデル166は、過去の電力系統事故における事故報告の実績データと、過去の電力系統事故における事故報告を作成するために用いられた報告先、報告事項および事故情報の実績データと、に基づいて機械学習され、新たに発生した電力系統事故の報告先、報告事項および事故情報が入力されると、新たに発生した電力系統事故の事故報告を作成して出力するように生成された学習済みモデルである。
【0068】
メモリ17は、中央処理部20が事故報告の報告先および報告事項の決定、事故報告の作成、および事故報告の送信に関わる処理を実行する際に生成される情報・データを一時的に記憶などするための作業領域となる機能を備える記憶領域/記憶装置であり、例えばRAM(Random Access Memory の略)により構成される。
【0069】
通信部18は、例えばLAN(Local Area Network の略)やWAN(Wide Area Network の略)を含む各種の無線/有線通信回線網を介して伝送される信号・情報の送受信/入出力を行う機能を備える通信インターフェースである。
【0070】
メインタスク19は、記憶部16に格納されている電力系統事故報告プログラム161が実行されることによって実現される、事故報告の作成・送信に関わる各種処理を実行するためのタスク群である。
【0071】
中央処理部20は、電力系統事故報告システム1を構成する各部を統制して制御などする機能を備え、例えば、中央演算処理装置(CPU:Central Processing Unit の略)を含んで構成される。中央処理部20は、記憶部16に格納されている制御プログラムや電力系統事故報告プログラム161に従って各機能を実現する。
【0072】
電力系統事故報告システム1は、事故報告の報告先および報告事項の決定、事故報告の作成、および事故報告の送信するための各種処理を実行する。この処理は、記憶部16に格納されている電力系統事故報告プログラム161が実行されることにより構成される、メインタスク19によって行われる。メインタスク19は、動作情報取得タスク(動作情報取得手段)191、事故特定タスク(事故特定手段)192、事故情報収集タスク(事故情報収集手段)193、報告先決定タスク(報告先決定手段)194、事故報告作成タスク(事故報告作成手段)195、事故報告書作成タスク(事故報告書作成手段)196、事故報告送信タスク(事故報告送信手段)197、学習タスク198を含む。
【0073】
動作情報取得タスク191は、発電所や変電所などの電気所2に設置されている発電機、変電器、送電線および遮断器などの電力系統設備の動作情報および識別情報を、電気所2に設置されている遠隔監視制御装置や、制御中継所に設置された情報集配信装置(図示せず)から受信する。
【0074】
事故特定タスク192は、動作情報取得タスク191により受信した識別情報に基づいて、動作情報がどの電気所のどの電力系統設備から送信されたかを特定し、設備情報DB162を参照して、動作情報が通常状態(電力系統事故が発生していない状態)と異なっている場合に、電力系統事故が発生しているものと判定する。また、事故特定タスク192は、電力系統事故が発生していると判定すると、その判定の基となった電力系統設備の種類、設置場所に応じて、電力系統事故の種類(例えば、送電線事故、変電所事故および発電所事故など)と発生場所とを特定する。
【0075】
事故情報収集タスク193は、事故特定タスク192にて特定された電力系統事故の種類および発生場所に基づき、発生している電力系統事故に関する事故情報を収集し、事故IDを付して事故情報DB163に記憶する。なお、各事故情報の内容および収集先については、事故情報DB163の説明において詳述したため、ここでは省略する。
【0076】
報告先決定タスク194は、事故特定タスク192にて特定された電力系統事故の種類および発生場所に基づいて、事故報告の報告先と、報告先に応じた報告事項とを決定する。報告先決定タスク194は、この報告先および報告事項の決定に、上記の報告先決定モデル165を利用する。すなわち、報告先決定タスク194は、報告先決定モデル165に新たに発生した電力系統事故の種類および発生場所を入力し、報告先決定モデル165から、新たに発生した電力系統事故の事故報告の報告先および報告事項を決定して出力させる。
【0077】
事故報告作成タスク195は、報告先決定タスク194にて決定された報告先および報告事項と、事故情報収集タスク193にて収集された事故情報とに基づいて、報告事項の報告文を含む事故報告を作成する。事故報告作成タスク195は、この事故報告の作成に、上記の事故報告作成モデル166を利用する。すなわち、事故報告作成タスク195は、事故報告作成モデル166に新たに発生した電力系統事故の報告先、報告事項および事故情報を入力し、新たに発生した電力系統事故の事故報告を作成して出力させる。その際に、事故報告作成モデル166は、公報11向けに、技術用語の代わりに一般用語を用いた事故報告を作成する。なお、事故報告作成モデル166に入力される、新たに発生した電力系統事故の報告先、報告事項および事故情報とは、報告先決定タスク194にて決定された報告先および報告事項と、動作情報取得タスク191にて取得された事故情報である。
【0078】
事故報告書作成タスク196は、動作情報取得タスク191により取得された電力系統設備の動作情報と、事故特定タスク192により特定された電力系統事故の種類および発生場所と、事故情報収集タスク193により収集された事故情報と、に基づいて、所定の報告事項を備えた事故報告書を作成する。
【0079】
図11に、事故報告書作成タスク196により作成された事故報告書の一例を示す。事故報告書22は、予め報告事項が決まっており、これらの報告事項の欄に該当する動作情報、電力系統事故の種類および発生場所、および事故情報を入力して自動作成される。
【0080】
また、事故報告書22では、一部の所名が「****」で置き換えられて隠蔽されている。これは、近年の電気事業法改正による電力自由化により、特定規模電気事業者から特定規模電気事業に係る託送供給業務を受託することが可能となった。この改正後、電気事業法では、電力市場の公平な競争環境維持のため、一般電気事業者が託送供給業務において知り得た特定規模電気事業者及び電気の使用者に関する情報(以下、「他社契約情報」という)を託送供給業務以外の目的に利用し又は提供してはならないこととなっている。すなわち、他社契約情報を託送供給業務に直接関係のない部門(例えば、発電部門や営業部門)に提供することは法律で禁止される。そのため、事故報告書22では、一部の所名が「****」よって隠されている。
【0081】
なお、事故報告書22の自動作成および報告書内の所定部分の隠蔽については、本出願により出願された「特開2006-172126号公報」および「特開2008-005235号公報」にて開示されているため、詳しくは参照されたい。
【0082】
事故報告送信タスク197は、通信部18を利用して、報告先決定タスク194により決定された報告先へ、事故報告作成タスク195により作成された事故報告の音声データと、事故報告書作成タスク196により作成された事故報告書とを送信する。送信先に関する情報(電話番号やFAX番号、メールアドレスなど)については、記憶部16の報告先データベースが参照される。
【0083】
具体的には、事故報告送信タスク197は、報告先データベースに登録されている電話番号を利用して報告先の担当者などに自動的に電話をかけ、電話による音声通信を利用して事故報告の音声データを自動送信する。報告先の担当者などは、電話を利用して音声データの内容を聞くことにより、事故報告を確認することができる。
【0084】
また、事故報告送信タスク197は、報告先データベースに登録されているメールアドレスを利用し、報告先の担当者などへ、事故報告の音声データと、事故報告書とが添付されたメールを自動送信する。報告先の担当者などは、メールによって受信した音声データをコンピュータなどで再生して聞くことにより、事故報告を確認することができる。また、事故報告書をコンピュータのディスプレイに表示し、あるいは印刷することにより、事故報告を確認することができる。
【0085】
さらに、事故報告送信タスク197は、報告先データベースに登録されているFAX番号を利用して報告先のFAXへ自動的に電話をかけ、音声データの基となった事故報告の文字データや、事故報告書などをFAXで自動送信する。報告先の担当者などは、FAXにより受信した事故報告の文字データや事故報告書により、事故報告を確認することができる。なお、事故報告の文字データは、上記のようにメールに添付して送信してもよい。
【0086】
学習タスク198は、上記の報告先決定モデル165、および事故報告作成モデル166を作成・更新するためのタスクである。
図12に示すように、学習タスク198は、実績DB164に記憶されている過去の電力系統事故における報告先、報告事項および報告内容を教師データとして、ニューラルネットワーク等の公知の機械学習、深層学習(ディープラーニング)の技術を利用し、報告先決定モデル165を生成する。具体的には、学習タスク198は、電力系統事故の種類および発生場所を入力層とし、電力系統事故の事故報告の報告先および報告事項を出力層とし、電力系統事故の種類および発生場所から事故報告の報告先および報告事項を得るための処理を行う中間層を含むニューラルネットワークとして、報告先決定モデル165を作成する。
【0087】
図13に示すように、学習タスク198は、報告先決定モデル165と同様に、実績DB164に記憶されている過去の電力系統事故における報告先、報告事項および報告内容を教師データとして、ニューラルネットワーク等の公知の機械学習、深層学習の技術を利用し、事故報告作成モデル166を生成する。具体的には、学習タスク198は、電力系統事故の報告先、報告事項および事故情報を入力層とし、事故報告を出力層とし、報告先、報告事項および事故情報から、事故報告を得るための処理を行う中間層を含むニューラルネットワークとして、事故報告作成モデル166を作成する。
【0088】
報告先決定モデル165にて決定された報告先および報告事項と、事故報告作成モデル166にて作成された事故報告とは、事故報告送信タスク197によって報告先に送信されるとともに、実績DB164に記憶され、学習タスク198による報告先決定モデル165および事故報告作成モデル166の更新に利用される。これにより、報告先決定モデル165および事故報告作成モデル166の処理精度が向上する。
【0089】
次に、上記実施の形態の作用について、
図14に示すフローチャートにしたがって説明する。本実施の形態に係る電力系統事故報告システム1の動作情報取得タスク191は、電気所2に設置されている発電機、変電器、送電線および遮断器などの電力系統設備の動作情報および識別情報を、電気所2に設置されている遠隔監視制御装置や、制御中継所に設置された情報集配信装置から受信する(ステップS1)。
【0090】
次いで、事故特定タスク192は、受信した識別情報に基づいて、動作情報がどの電気所のどの電力系統設備から送信されたかを特定し、動作情報が通常状態と異なっている場合に、電力系統事故が発生しているものと判定する。また、事故特定タスク192は、電力系統事故が発生していると判定すると、その判定の基となった電力系統設備の種類、設置場所に応じて、電力系統事故の種類と発生場所とを特定する(ステップS2)。
【0091】
事故情報収集タスク193は、特定された電力系統事故の種類および発生場所に基づき、発生している電力系統事故に関する事故情報を収集し、設備情報DB162に記憶する(ステップS3)。
【0092】
報告先決定タスク194は、事故特定タスク192にて特定された電力系統事故の種類および発生場所に基づいて、事故報告の報告先と、報告先に応じた報告事項とを決定する。報告先決定タスク194は、この報告先および報告事項の決定に、過去の実績データに基づいて機械学習された報告先決定モデル165を利用する(ステップS4)。
【0093】
事故報告作成タスク195は、報告先決定タスク194にて決定された報告先および報告事項と、事故情報収集タスク193にて収集された事故情報とに基づいて、報告事項の報告文を含む事故報告を作成する。事故報告作成タスク195は、この事故報告の作成に、過去の実績データに基づいて機械学習された事故報告作成モデル166を利用する(ステップS5)。
【0094】
事故報告書作成タスク196は、動作情報取得タスク191により取得された電力系統設備の動作情報と、事故特定タスク192により特定された電力系統事故の種類および発生場所と、事故情報収集タスク193により収集された事故情報と、に基づいて、所定の報告事項を備えた事故報告書22を作成する(ステップS6)。
【0095】
なお、事故報告作成タスク195による事故報告の作成と、事故報告書作成タスク196による事故報告書22の作成は、並行して行われ、どちらか先に作成されたものが、先に報告先へ送信される。これにより、事故報告をより迅速に行うことが可能である。
【0096】
事故報告送信タスク197は、記憶部16の報告先データベースを参照し、報告先決定タスク194により決定された報告先へ、事故報告作成タスク195により作成された事故報告の音声データと、事故報告書作成タスク196により作成された事故報告書とを、電話やFAX、メールなどを利用して自動送信する(ステップS7)。
【0097】
学習タスク198は、報告先決定モデル165にて決定された報告先および報告事項と、事故報告作成モデル166にて作成された事故報告とを実績DB164に記憶させ、この実績DB164を教師データとして、報告先決定モデル165および事故報告作成モデル166を更新する(ステップS8)。これにより、報告先決定モデル165および事故報告作成モデル166の処理精度が向上する。
【0098】
以上で説明したように、本実施の形態にかかる電力系統事故報告システム1によれば、電力系統事故の発生時に、電力系統事故の種類に応じて関連する報告先および報告事項を決定し、事故報告を自動作成して送信することができるので、事故報告を迅速に関係各所に送信することができ、電力系統事故への対応を早めることが可能である。また、事故報告の報告先および報告事項の選択、事故報告の作成、送信などに人員を割く必要がなくなるので、事故復旧への対応に集中することができ、より早期に供給支障、発電支障を解消することが可能である。さらに、事故報告を手作業によって行う際のリスクとなっていた、報告時間、報告内容のばらつき、報告先への報告漏れや報告忘れ、報告事項や報告内容の漏れなどを防ぐことが可能である。
【0099】
また、本実施の形態にかかる電力系統事故報告システム1によれば、広報11などの非技術部門向けに事故報告を作成する際に、電力系統の運用・管理で用いられる技術用語の代わりに、一般用語を用いて報告文を作成するので、非技術部門の担当者であっても事故報告を迅速、かつ、容易に理解することができる。したがって、事故についての広報活動に早期に開始することができ、需要家などの不安を解消することが可能である。
【0100】
さらに、本実施の形態にかかる電力系統事故報告システム1によれば、報告先および報告事項の決定に、過去の実績データに基づいて機械学習された報告先決定モデル165を利用するので、精度よく、かつ、迅速に電力系統事故の種類に応じた報告先および報告事項を決定することができる。これにより、より早期に供給支障、発電支障を解消することが可能である。
【0101】
また、本実施の形態にかかる電力系統事故報告システム1によれば、事故報告の作成に、過去の実績データに基づいて機械学習された事故報告作成モデル166を利用するので、精度よく、かつ、迅速に電力系統事故の種類に応じた事故報告を作成することができる。これにより、より早期に供給支障、発電支障を解消することが可能である。
【0102】
さらに、本実施の形態にかかる電力系統事故報告システム1によれば、集約された各種情報に基づいて、所定の報告事項を備えた事故報告書22を自動で作成して送信するので、事故報告書22を迅速に関係各所に送信することができ、電力系統事故への対応を早めることが可能である。また、事故報告書22の報告先の選択、事故報告書22の作成、送信などに人員を割く必要がなくなるので、事故復旧への対応に集中することができ、より早期に供給支障、発電支障を解消することが可能である。さらに、事故報告書22の作成・送信を手作業によって行う際のリスクとなっていた、報告時間、報告内容のばらつき、報告先への報告漏れや報告忘れ、報告事項や報告内容の漏れなどを防ぐことが可能である。
【0103】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、報告先決定モデル165と、事故報告作成モデル166という2つの学習済みモデルを用いたが、1つの学習済みモデルを利用して、報告先および報告事項の決定と、事故報告の作成とを行うようにしてもよい。
【0104】
また、事故報告などが電話やFAX、メールなどを利用して送信される報告先は、上記の実施の形態において挙げられたものに限定されない。すなわち、本発明においては、電力系統事故の種類や内容に応じて、様々な関連各所(電力会社の各所の他、所轄官庁、自治体などを含む)、関連部署などへ自動送信できるようにすることが可能である。
【符号の説明】
【0105】
1 電力記当事故報告システム
2 電気所
3 中央給電指令所
4 基幹給電制御所
5 制御所
6 運転制御センタ
7 変電課
8 送電課
9 水力電気課
10 土木課
11 広報
161 電力記当事故報告プログラム
162 設備データベース
163 事故情報データベース
164 実績データベース
165 報告先決定モデル
166 事故報告作成モデル
191 動作情報取得タスク(動作情報取得手段)
192 事故特定タスク(事故特定手段)
193 事故情報収集タスク(事故情報収集手段)
194 報告先決定タスク(報告先決定手段)
195 事故報告作成タスク(事故報告作成手段)
196 事故報告書作成タスク(事故報告書作成手段)
197 事故報告送信タスク(事故報告送信手段)
198 学習タスク