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特開2023-139793入退館管理システム、入退館管理装置及び入退館管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139793
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】入退館管理システム、入退館管理装置及び入退館管理方法
(51)【国際特許分類】
   G08B 25/04 20060101AFI20230927BHJP
   G07C 9/27 20200101ALI20230927BHJP
【FI】
G08B25/04 F
G07C9/27
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045504
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000202361
【氏名又は名称】綜合警備保障株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114306
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 史郎
(72)【発明者】
【氏名】西内 善信
(72)【発明者】
【氏名】須藤 千晴
(72)【発明者】
【氏名】土谷 尚賢
(72)【発明者】
【氏名】中津 大介
【テーマコード(参考)】
3E138
5C087
【Fターム(参考)】
3E138AA01
3E138JA01
3E138JA03
3E138JB14
3E138JC05
3E138JD03
3E138JD09
5C087AA05
5C087AA09
5C087AA10
5C087AA25
5C087AA37
5C087AA44
5C087BB74
5C087DD20
5C087EE20
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF04
5C087GG59
(57)【要約】      (修正有)
【課題】施設等からの単独退出を認めない運用を行う場合に、施設等に残留した最後の退出者を退出可能とする、入退館管理システム、入退館管理装置及び入退館管理方法を提供する。
【解決手段】入退館管理システムにおいて、入退館管理装置10、立会モードから遠隔立会モードに移行した場合、社員Aが最終退館時に翳した社員カードA1のデータに基づいて社員カードA1の認証を行うとともに、遠隔立会装置80を介して取得した遠隔立会センタの遠隔立会人Rが翳した遠隔立会用カードR1のデータに基づいて遠隔立会用カードR1の認証を行い、社員カードA1と遠隔立会用カードR1とが正当であるとき、電子錠30を開錠制御する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の施設内に所在する利用者が前記施設から退館する場合に、前記利用者により所持された第1の媒体と、前記利用者による前記施設からの退館に立ち会う立会人により所持された第2の媒体の双方が正当に認証されたことを条件として、前記施設の扉に配設された錠を開錠して前記利用者の前記施設からの退館を可能とする入退館管理装置を有する入退館管理システムであって、
前記入退館管理装置は、
前記立会人が立ち会う立会モードから所定の遠隔立会人による遠隔立会モードに切替制御する切替制御手段と、
前記第1の媒体、前記第2の媒体又は前記遠隔立会人により所持された第3の媒体が正当であるか否かを認証する認証手段と、
前記切替制御手段により前記遠隔立会モードに切替制御された場合に、少なくとも前記認証手段による前記第1の媒体及び前記第3の媒体の認証結果に基づいて、最終退館者となる前記利用者が退館可能であるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記利用者が退館可能であると判定された場合に、前記施設の扉に配設された錠を開錠するよう制御する制御手段と
を備えたことを特徴とする入退館管理システム。
【請求項2】
前記入退館管理装置と通信可能に接続された遠隔立会装置を有し、
前記遠隔立会装置は、
前記遠隔立会モードに切替制御された場合に、前記施設内の前記利用者との通話を可能とする通話手段と、
前記入退館管理装置に対して前記第3の媒体の認証要求を行う認証要求手段と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の入退館管理システム。
【請求項3】
前記切替制御手段は、
前記立会人による所定の操作を受け付けた場合に、前記立会モードから前記遠隔立会モードに切替制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の入退館管理システム。
【請求項4】
前記切替制御手段は、
前記利用者が前記施設からの最終退館者となり、かつ、他の利用者が前記施設に所在しない場合に、前記立会モードから前記遠隔立会モードに切替制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の入退館管理システム。
【請求項5】
前記切替制御手段は、
前記施設に前記立会人が入館した場合に、前記遠隔立会モードから前記立会モードに切替制御することを特徴とする請求項4に記載の入退館管理システム。
【請求項6】
前記入退館管理装置は、
前記遠隔立会人による遠隔立会を行うスケジュールを管理するスケジュール管理手段をさらに備え、
前記切替制御手段は、
前記スケジュール管理手段により管理されたスケジュールに基づいて、前記立会モードから前記遠隔立会モードに切替制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の入退館管理システム。
【請求項7】
前記切替制御手段は、
前記利用者から前記立会人へ立会要求がされてから所定の期間を経過した時点で、前記立会人からの応答がされない場合に、前記立会モードから前記遠隔立会モードに切替制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の入退館管理システム。
【請求項8】
前記遠隔立会装置は、
前記利用者の画像を取得する画像取得手段と、
前記画像取得手段により取得された前記利用者の画像を所定の学習済モデルに入力し、前記学習済モデルから出力される出力値に基づいて、前記利用者を退館させる場合に生ずるリスクスコアを算定する算定手段と、
前記算定手段により算定されたリスクスコアを所定の表示部に表示制御する表示制御手段と
をさらに備えたことを特徴とする請求項2に記載の入退館管理システム。
【請求項9】
前記学習済モデルは、
前記利用者の正当な行動及び不正な行動をそれぞれ撮像した複数の画像と正当又は不正の正解データとを教師データとして用い、所定の多層ニューラルネットワークに教師有り学習を行うことにより得られた学習済モデルであることを特徴とする請求項8に記載の入退館管理システム。
【請求項10】
所定の施設内に所在する利用者が前記施設から退館する場合に、前記利用者により所持された第1の媒体と、前記利用者による前記施設からの退館に立ち会う立会人により所持された第2の媒体の双方が正当に認証されたことを条件として、前記施設の扉に配設された錠を開錠して前記利用者の前記施設からの退館を可能とする入退館管理装置であって、
前記立会人が立ち会う立会モードから所定の遠隔立会人による遠隔立会モードに切替制御する切替制御手段と、
前記第1の媒体、前記第2の媒体又は前記遠隔立会人により所持された第3の媒体が正当であるか否かを認証する認証手段と、
前記切替制御手段により前記遠隔立会モードに切替制御された場合に、少なくとも前記認証手段による前記第1の媒体及び前記第3の媒体の認証結果に基づいて、最終退館者となる前記利用者が退館可能であるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記利用者が退館可能であると判定された場合に、前記施設の扉に配設された錠を開錠するよう制御する制御手段と
を備えたことを特徴とする入退館管理装置。
【請求項11】
所定の施設内に所在する利用者が前記施設から退館する場合に、前記利用者により所持された第1の媒体と、前記利用者による前記施設からの退館に立ち会う立会人により所持された第2の媒体の双方が正当に認証されたことを条件として、前記施設の扉に配設された錠を開錠して前記利用者の前記施設からの退館を可能とする入退館管理装置を有する入退館管理システムにおける入退館管理方法であって、
前記入退館管理装置が、前記立会人が立ち会う立会モードから所定の遠隔立会人による遠隔立会モードに切替制御する切替制御工程と、
前記入退館管理装置が、前記第1の媒体、前記第2の媒体又は前記遠隔立会人により所持された第3の媒体が正当であるか否かを認証する認証工程と、
前記入退館管理装置が、前記切替制御工程により前記遠隔立会モードに切替制御された場合に、少なくとも前記認証工程による前記第1の媒体及び前記第3の媒体の認証結果に基づいて、最終退館者となる前記利用者が退館可能であるか否かを判定する判定工程と、
前記入退館管理装置が、前記判定工程により前記利用者が退館可能であると判定された場合に、前記施設の扉に配設された錠を開錠するよう制御する制御工程と
を含むことを特徴とする入退館管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施設等からの単独退出を認めない運用を行う場合に、施設等に残留した最後の退出者を退出可能とする入退館管理システム、入退館管理装置及び入退館管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、データセンターや開発実験室などの極めて厳重なセキュリティが要求される施設では、厳重な入退館管理がなされている。例えば、特許文献1には、施設における第1領域から第2領域に人が移動する場合に、この人を認証するための認証処理と、人が所持する荷物を検査する検査処理とを行うゲート管理システムが開示されている。
【0003】
この際、特に厳重なセキュリティが要求される施設では、人が入退館するときに、他の人の認証を必要とする2名照合を採用する場合がある。例えば、A氏が施設から退出しようとした場合にA氏に付与されたカードをリーダに翳すだけではなく、他のB氏に付与されたカードをリーダに翳さなければ、扉が開錠されないシステムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-129235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、かかる従来のシステムでは、最後の1名が施設内に残った場合に、この者が施設に取り残され、施設に閉じ込められてしまう場合がある。特に、施設内の残人数状況が把握できない環境である場合や、業務の都合上1名が残留せざるを得ないような場合に、かかる状況が生じ得る。
【0006】
このため、施設からの単独退出を認めない運用を行う場合に、施設内に残留した最後の退出者をいかに退出させるかが重要な課題となっている。なお、かかる課題は、各種施設から退出する場合だけではなく、移動体等から退出する場合にも同様に生ずる課題である。
【0007】
本発明は、上記従来技術による問題点(課題)を解決するためになされたものであって、施設等からの単独退出を認めない運用を行う場合に、施設等に残留した最後の退出者を退出可能とする入退館管理システム、入退館管理装置及び入退館管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明は、所定の施設内に所在する利用者が前記施設から退館する場合に、前記利用者により所持された第1の媒体と、前記利用者による前記施設からの退館に立ち会う立会人により所持された第2の媒体の双方が正当に認証されたことを条件として、前記施設の扉に配設された錠を開錠して前記利用者の前記施設からの退館を可能とする入退館管理装置を有する入退館管理システムであって、前記入退館管理装置は、前記立会人が立ち会う立会モードから所定の遠隔立会人による遠隔立会モードに切替制御する切替制御手段と、前記第1の媒体、前記第2の媒体又は前記遠隔立会人により所持された第3の媒体が正当であるか否かを認証する認証手段と、前記切替制御手段により前記遠隔立会モードに切替制御された場合に、少なくとも前記認証手段による前記第1の媒体及び前記第3の媒体の認証結果に基づいて、最終退館者となる前記利用者が退館可能であるか否かを判定する判定手段と、前記判定手段により前記利用者が退館可能であると判定された場合に、前記施設の扉に配設された錠を開錠するよう制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記発明において、前記入退館管理装置と通信可能に接続された遠隔立会装置を有し、前記遠隔立会装置は、前記遠隔立会モードに切替制御された場合に、前記施設内の前記利用者との通話を可能とする通話手段と、前記入退館管理装置に対して前記第3の媒体の認証要求を行う認証要求手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記発明において、前記切替制御手段は、前記立会人による所定の操作を受け付けた場合に、前記立会モードから前記遠隔立会モードに切替制御することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記発明において、前記切替制御手段は、前記利用者が前記施設からの最終退館者となり、かつ、他の利用者が前記施設に所在しない場合に、前記立会モードから前記遠隔立会モードに切替制御することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記発明において、前記切替制御手段は、前記施設に前記立会人が入館した場合に、前記遠隔立会モードから前記立会モードに切替制御することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記発明において、前記入退館管理装置は、前記遠隔立会人による遠隔立会を行うスケジュールを管理するスケジュール管理手段をさらに備え、前記切替制御手段は、前記スケジュール管理手段により管理されたスケジュールに基づいて、前記立会モードから前記遠隔立会モードに切替制御することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、上記発明において、前記切替制御手段は、前記利用者から前記立会人へ立会要求がされてから所定の期間を経過した時点で、前記立会人からの応答がされない場合に、前記立会モードから前記遠隔立会モードに切替制御することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、上記発明において、前記遠隔立会装置は、前記利用者の画像を取得する画像取得手段と、前記画像取得手段により取得された前記利用者の画像を所定の学習済モデルに入力し、前記学習済モデルから出力される出力値に基づいて、前記利用者を退館させる場合に生ずるリスクスコアを算定する算定手段と、前記算定手段により算定されたリスクスコアを所定の表示部に表示制御する表示制御手段とをさらに備えたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、上記発明において、前記学習済モデルは、前記利用者の正当な行動及び不正な行動をそれぞれ撮像した複数の画像と正当又は不正の正解データとを教師データとして用い、所定の多層ニューラルネットワークに教師有り学習を行うことにより得られた学習済モデルであることを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、所定の施設内に所在する利用者が前記施設から退館する場合に、前記利用者により所持された第1の媒体と、前記利用者による前記施設からの退館に立ち会う立会人により所持された第2の媒体の双方が正当に認証されたことを条件として、前記施設の扉に配設された錠を開錠して前記利用者の前記施設からの退館を可能とする入退館管理装置であって、前記立会人が立ち会う立会モードから所定の遠隔立会人による遠隔立会モードに切替制御する切替制御手段と、前記第1の媒体、前記第2の媒体又は前記遠隔立会人により所持された第3の媒体が正当であるか否かを認証する認証手段と、前記切替制御手段により前記遠隔立会モードに切替制御された場合に、少なくとも前記認証手段による前記第1の媒体及び前記第3の媒体の認証結果に基づいて、最終退館者となる前記利用者が退館可能であるか否かを判定する判定手段と、前記判定手段により前記利用者が退館可能であると判定された場合に、前記施設の扉に配設された錠を開錠するよう制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、所定の施設内に所在する利用者が前記施設から退館する場合に、前記利用者により所持された第1の媒体と、前記利用者による前記施設からの退館に立ち会う立会人により所持された第2の媒体の双方が正当に認証されたことを条件として、前記施設の扉に配設された錠を開錠して前記利用者の前記施設からの退館を可能とする入退館管理装置を有する入退館管理システムにおける入退館管理方法であって、前記入退館管理装置が、前記立会人が立ち会う立会モードから所定の遠隔立会人による遠隔立会モードに切替制御する切替制御工程と、前記入退館管理装置が、前記第1の媒体、前記第2の媒体又は前記遠隔立会人により所持された第3の媒体が正当であるか否かを認証する認証工程と、前記入退館管理装置が、前記切替制御工程により前記遠隔立会モードに切替制御された場合に、少なくとも前記認証工程による前記第1の媒体及び前記第3の媒体の認証結果に基づいて、最終退館者となる前記利用者が退館可能であるか否かを判定する判定工程と、前記入退館管理装置が、前記判定工程により前記利用者が退館可能であると判定された場合に、前記施設の扉に配設された錠を開錠するよう制御する制御工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、施設等からの単独退出を認めない運用を行う場合に、施設等に残留した最後の退出者を退出可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、実施形態1に係る入退館管理システムにおいて2名認証を行いつつ社員が退館する状況を説明するための説明図である。
図2図2は、実施形態1に係る入退館管理システムにおいて最終退館者が退館する状況を説明するための説明図である。
図3図3は、入退館管理装置の構成を示す機能ブロック図である。
図4図4は、図3に示した社員カードデータ及び遠隔立会用カードデータのデータ構造の一例を示す図である。
図5図5は、遠隔立会装置の構成を示す機能ブロック図である。
図6図6は、図2に示した入退館管理システムによる遠隔立会用カードR1を用いた退館処理手順を示すシーケンス図(その1)である。
図7図7は、図2に示した入退館管理システムによる遠隔立会用カードR1を用いた退館処理手順を示すシーケンス図(その2)である。
図8図8は、実施形態2に係る入退館管理システムの概要を説明するための説明図である。
図9図9は、図8に示した遠隔立会装置の構成を示す機能ブロック図である。
図10図10は、図9に示した学習済モデルの一例を示す図である。
図11図11は、リスクスコアの算定を説明するための説明図である。
図12図12は、図8に示した入退館管理システムの処理手順を示すシーケンス図(その1)である。
図13図13は、図8に示した入退館管理システムの処理手順を示すシーケンス図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明に係る入退館管理システム、入退館管理装置及び入退館管理方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態では、作業エリアに所在する社員A及び監視エリアに所在する社員Bの2名認証を行うことを条件として、社員Aが退館する場合を示すこととする。以下では、作業エリアに所在する社員Aが立会人(社員B)の立会いの下に退館するモードを「立会モード」と言い、社員Aが遠隔立会センタの遠隔立会人(遠隔立会人R)の立会いの下に退館するモードを「遠隔立会モード」と言うこととする。
【0022】
[実施形態1]
<入退館管理システムの概要>
まず、本実施形態1に係る入退館管理システムについて説明する。図1は、実施形態1に係る入退館管理システムにおいて2名認証を行いつつ社員が退館する状況を説明するための説明図である。図1に示すように、この建物には、入退口エリアと、作業エリアと、監視エリアとが設けられている。作業エリアには社員Aが所在し、監視エリアには社員Bが所在する。
【0023】
入退口エリアには、カードリーダ21が配設され、作業エリアにはカードリーダ20、所持品カメラ60及びインターフォン61が配設され、監視エリアには入退館管理装置10、カードリーダ15が配設される。入退口エリアと作業エリアの間には扉31が設けられ、この扉31は電子錠30により施開錠される。
【0024】
入退館管理装置10は、社員の入退館を管理する管理装置であり、この入退館管理装置10を用いて社員カード及び後述する遠隔立会用カードが発行される。具体的には、入退館管理装置10を用いて、あらかじめ準備した未登録カードのカードIDに対してカード情報を対応付けて登録する。その結果、社員証又は遠隔立会用カードが発行される。なお、社員自身が退館する場合には、この社員の社員証を遠隔立会用カードとはできないように条件設定することもできる。
【0025】
カードリーダ15、20及び21は、非接触ICカードである社員カードに記憶されたデータを読み取るリーダである。インターフォン61は、入退館管理装置10に接続されており、作業エリアと監視エリアの間の通話を行うためのインターフォンである。インターフォン61は、作業エリアに所在する社員Aが退館する場合に、監視エリアの社員Bに対して退館の意思を通知するために使用される。所持品カメラ60は、作業エリアから退館する社員Aが所持する所持品を撮像するカメラである。
【0026】
入退館管理装置10は、カードリーダ15にて読み取った社員カードB1の認証処理を行うとともに、カードリーダ20にて読み取った社員カードA1の認証処理を行い、社員カードB1及び社員カードA1が正当である場合に、電子錠30を開錠制御して扉31を開閉可能とし、社員Aの退館を可能とする。
【0027】
具体的には、社員Aがインターフォン61aを介して社員Bに退館の意向を通知する(1)。社員Bは、所持品カメラ60により撮像された社員Aの所持品の画像を確認し、問題がなければ、社員Bは社員カードB1をカードリーダ15に翳す。カードリーダ15は、社員カードB1に記憶されたデータを読み取り、入退館管理装置10に通知する(2)。入退館管理装置10は、社員カードB1に記憶されたデータに基づいて、社員Bが正当な社員であるか否かを認証する(3)。
【0028】
そして、社員Aが社員カードA1をカードリーダ20に翳す。これにより、カードリーダ20は社員カードA1に記憶されたデータを読み取り(4)、入退館管理装置10に出力する。入退館管理装置10は、社員カードA1に記憶されたデータに基づいて社員Aが正当な社員であることを認証する(5)。そして、入退館管理装置10は、社員A及びBがともに正当な社員であると認証したならば、電子錠30を開錠するよう制御し(6)、社員Aの退館を可能とする。
【0029】
ここで、監視エリアに所在する社員Bが、定時である17時で退館する場合には、監視エリア内の社員が不在となる。このような場合に、作業エリアに複数の社員が所在する場合には、一人の社員が監視エリアに移動して社員Bを代行することにより、作業エリアの社員を退館させることができる。その一方で、作業エリアに社員Aしか所在せず、作業エリアに他の社員が所在しない場合には、社員Aは退館できなくなるという問題がある。このため、本実施形態1に係る入退館管理システムでは、社員Aだけが作業エリアに所在し、監視エリアに人がいない場合であっても、遠隔立会エリアの遠隔立会人Rが社員Bを代行することにより、社員Aが退館できるよう構成している。
【0030】
図2は、本実施形態1に係る入退館管理システムにおいて最終退館者が退館する状況を説明するための説明図である。図2に示すように、最終退館者が一人で退館できるようにするために、監視エリア内の人が不在になる場合に、社員Bは所定の操作を行い、入退館管理装置10を立会モードから遠隔立会モードに切り替える。
【0031】
入退館管理装置10が遠隔立会モードに切り替えられたならば、インターフォン61は、入退館管理装置10を介して遠隔立会装置80に接続される。インターフォン61は、作業エリアに所在する社員Aが退館する場合に、遠隔立会エリアの遠隔立会人Rに対して退館の旨を通知するために使用される。
【0032】
その後、入退館管理装置10は、遠隔立会装置80に配設されたカードリーダ85にて読み取った遠隔立会用カードR1の認証処理を行うとともに、カードリーダ20にて読み取った社員カードA1の認証処理を行い、遠隔立会用カードR1及び社員カードA1が正当である場合に、電子錠30を開錠制御して扉31を開閉可能とし、社員Aの退館を可能とする。
【0033】
具体的には、監視エリアの社員Bが退館する場合に、社員Bは、所定の操作を行い、入退館管理装置10を遠隔立会モードへ切り替える(11)。その後、社員Aが1名で退館しようとする場合には、社員Aがインターフォン61を介して遠隔立会人Rに退館の旨を通知する(12)。
【0034】
そして、所持品カメラ60により撮像された社員Aの所持品の画像を遠隔立会人Rが確認し、問題がなければ、遠隔立会装置80に接続されたカードリーダ85に、遠隔立会用カードR1を翳す。カードリーダ85は、遠隔立会用カードR1に記憶されたデータを読み取り(13)、遠隔立会装置80を介して入退館管理装置10に出力する。入退館管理装置10は、遠隔立会用カードR1に記憶されたデータに基づいて、遠隔立会用カードR1が正当なものであるか否かを認証する(14)。
【0035】
そして、社員Aが社員カードA1をカードリーダ20に翳したならば、カードリーダ20が社員カードA1に記憶されたデータを読み取り(15)、入退館管理装置10に出力する。入退館管理装置10は、社員カードA1に記憶されたデータに基づいて、社員カードA1が正当なものであるか否かを認証する(16)。
【0036】
その結果、社員カードA1が正当なものであり、かつ、遠隔立会用カードR1が正当なものである場合には、電子錠30を開錠制御し(17)、社員Aの退館を可能とする。このように、本実施形態1に係る入退館管理システムでは、遠隔立会センタにおいて遠隔立会用カードR1を読み取ることにより、監視エリアに社員Bが不在の場合でも、作業エリアに所在する社員Aが退館することができる。
【0037】
<入退館管理装置10の構成>
次に、入退館管理装置10の構成について説明する。図3は、入退館管理装置10の構成を示す機能ブロック図である。図3に示すように、入退館管理装置10は、表示部11、入力部12、マイク13、スピーカ14及びカードリーダ15が接続され、通信I/F部16、記憶部17及び制御部18を有する。
【0038】
表示部11は、各種情報を表示する液晶ディスプレイなどの表示デバイスである。入力部12は、マウスやキーボードなどの入力デバイスである。マイク13は、音を電気信号に変換するデバイスであり、スピーカ14は、電気信号を音に変換するデバイスである。カードリーダ15は、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信により、社員カードB1に記憶されたデータを読み取るデバイスである。通信I/F部16は、カードリーダ20及び21、電子錠30、所持品カメラ60及び遠隔立会装置80等と通信を行うためのインターフェース部である。
【0039】
記憶部17は、ハードディスク装置や不揮発性メモリ等の記憶デバイスであり、社員カードデータ17aと、遠隔立会用カードデータ17bと、退館データ17cと、入館データ17dと、画像データ17eとを記憶する。
【0040】
社員カードデータ17aは、社員カードのカードIDと社員の氏名、所属、連絡先等を対応付けたデータである。遠隔立会用カードデータ17bは、遠隔立会用カードのカードIDと遠隔立会人の氏名、所属、連絡先等を対応付けたデータである。
【0041】
退館データ17cは、退館した社員のカードIDと退館時間を対応付けたデータであり、入館データ17dは、入館した社員のカードIDと入館時間を対応付けたデータである。なお、退館データ17cは、退館した社員のカードIDと、退館の立会いを行った社員B、あるいは、遠隔立会人Rのカード情報とを対応付けてもよい。画像データ17eは、所持品カメラ60により撮像された画像(静止画像あるいは動画像)のデータである。
【0042】
制御部18は、入退館管理装置10の全体を制御する制御部であり、遠隔立会モード切替処理部18aと、カードデータ取得部18bと、認証処理部18cと、判定部18dと、電子錠制御部18eと、撮像制御部18fと、インターフォン制御部18gと、画像データ転送部18hとを有する。実際には、これらプログラムをCPUにロードして実行することにより、遠隔立会モード切替処理部18aと、カードデータ取得部18bと、認証処理部18cと、判定部18dと、電子錠制御部18eと、撮像制御部18fと、インターフォン制御部18gと、画像データ転送部18hとにそれぞれ対応するプロセスを実行させることになる。
【0043】
遠隔立会モード切替処理部18aは、作業エリアに所在する社員Aが監視エリアに所在する社員Bが所在しない場合に退館可能とするために、社員Bの所定の操作に応答して立会モードから遠隔立会モードに切り替える。この遠隔立会モードに切り替えられたならば、インターフォン61が入退館管理装置10を介して遠隔立会装置80に接続される。なお、遠隔立会モードに切り替えられたならば、監視エリアに配設されたカードリーダ15に翳されたカードの認証処理を行わず、遠隔立会センタに配設されたカードリーダ85に翳されたカードの認証処理を行う。
【0044】
カードデータ取得部18bは、カードリーダ15、20、21及び85に翳されたカードに記憶されたデータを取得する処理部である。
【0045】
認証処理部18cは、作業エリアに所在する社員A及び監視エリアに所在する社員Bの2名認証を行う場合には、カードリーダ15及びカードリーダ20から取得したカードに記憶されたデータに基づいて社員カードA1及び社員カードB1が正当であるか否かを認証し、認証結果を判定部18dに出力する。
【0046】
また、認証処理部18cは、作業エリアに所在する社員A及び遠隔立会センタに所在する遠隔立会人Rの2名認証を行う場合には、カードリーダ20及びカードリーダ85から取得したカードに記憶されたデータに基づいて社員カードA1及び遠隔立会用カードR1が正当であるか否かを認証し、認証結果を判定部18dに出力する。
【0047】
判定部18dは、作業エリアに所在する社員A及び監視エリアに所在する社員Bの2名認証を行う場合に、社員カードA1及び社員カードB1が正当であるならば、社員Aの退館が可能であると判定し、判定結果を電子錠制御部18eに出力する。
【0048】
また、判定部18dは、作業エリアに所在する社員A及び遠隔立会センタの所在する遠隔立会人Rが所持する遠隔立会用カードR1を用いた認証を行う場合に、社員カードA1及び遠隔立会用カードR1が正当であるならば、社員Aの退館が可能であると判定し、判定結果を電子錠制御部18eに出力する。
【0049】
電子錠制御部18eは、判定部18dから社員Aの退館が可能であるとの判定結果を受け取ったならば、電子錠30を開錠するよう制御する。また、開錠後所定の時間が経過したならば電子錠30に施錠制御する。
【0050】
撮像制御部18fは、所持品カメラ60の撮像を制御し、画像を取得するとともに画像データ17eとして記憶部17に記憶する処理を行う。
【0051】
インターフォン制御部18gは、立会モードではインターフォン61と入退館管理装置10との間で通話制御を行い、遠隔立会モードではインターフォン61と遠隔立会装置80との間で通話制御を行う。なお、上記のインターフォン61をインターフォンカメラとし、インターフォンカメラの映像を入退館管理装置10から遠隔立会装置80に転送するよう構成することもできる。画像データ転送部18hは、遠隔立会モードに切り替えられた場合に、所持品カメラ60から撮像した画像データを遠隔立会装置80に転送する処理を行う。
【0052】
次に、入退館管理装置10の社員カードデータ17a及び遠隔立会用カードデータ17bについて説明する。図4は、図3に示した社員カードデータ17a及び遠隔立会用カードデータ17bのデータ構造の一例を示す図である。図4(a)に示すように、社員カードデータ17aは、社員カードID、氏名、所属、連絡先等を対応付けたデータである。
【0053】
ここでは、社員カードID「A0001」に対して、氏名「佐藤 △子」、所属「経理部」、連絡先「090-xxxx-yyyy」が対応付けられた状況を示している。また、社員カードID「A0002」に対して、氏名「田中 □男」、所属「技術部」、連絡先「080-aaaa-cccc」が対応付けられた状況を示し、社員カードID「A0003」に対して、氏名「山田 ×介」、所属「技術部」、連絡先「080-dddd-ffff」が対応付けられた状況を示している。
【0054】
また、図4(b)に示すように、遠隔立会用カードデータ17bは、カードID「R0001」に対して、氏名「山本 △太郎」、所属「A警備」、連絡先「090-dddd-hhhh」が対応付けられた状況を示している。
【0055】
<遠隔立会装置80の構成>
次に、遠隔立会装置80の構成について説明する。図5は、遠隔立会装置80の構成を示す機能ブロック図である。図5に示すように、遠隔立会装置80は、表示部81、入力部12、マイク83、スピーカ84及びカードリーダ85が接続され、通信I/F86、記憶部87及び制御部88を有する。
【0056】
表示部81は、各種情報を表示する液晶ディスプレイなどの表示デバイスである。入力部82は、マウスやキーボードなどの入力デバイスである。マイク83は、音を電気信号に変換するデバイスであり、スピーカ84は、電気信号を音に変換するデバイスである。カードリーダ85は、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信により、遠隔立会用カードR1に記憶されたデータを読み取るデバイスである。通信I/F部16は、入退館管理装置10等と通信を行うためのインターフェース部である。
【0057】
記憶部87は、ハードディスク装置や不揮発性メモリ等の記憶デバイスであり、制御部88の各機能に対応するプログラムを記憶する。
【0058】
制御部88は、遠隔立会装置80の全体を制御する制御部であり、切替処理部88aと、画像データ受信処理部88bと、通話制御部88cと、認証要求通知部88dとを有する。実際には、これらプログラムをCPUにロードして実行することにより、切替処理部88aと、画像データ受信処理部88bと、通話制御部88cと、認証要求通知部88dとにそれぞれ対応するプロセスを実行させることになる。
【0059】
切替処理部88aは、入退館管理装置10より遠隔立会モードの切替通知を受け取ったならば、カメラ画像の受信及びインターフォンの通話制御が行えるように処理をする。画像データ受信処理部88bは、入退館管理装置10から転送された所持品カメラ60により撮像された画像データを受信し、表示部81に表示制御する。
【0060】
通話制御部88cは、入退館管理装置10から転送されたインターフォン61からの信号を受信し、スピーカ84で音声を再生するとともに、マイク83から取得した音声データを、入退館管理装置10を介してインターフォン61に送信する。
【0061】
認証要求通知部88dは、カードリーダ85から遠隔立会用カードR1に記憶されたデータを受け付けたならば、このカードのカードデータを含む認証依頼を入退館管理装置10に対して行う。
【0062】
<入退館管理システムの処理手順>
次に、遠隔立会用カードR1を用いた退館処理手順について説明する。図6及び図7は、入退館管理システムによる遠隔立会用カードR1を用いた退館処理手順を示すシーケンス図である。
【0063】
図6に示すように、監視エリアに所在の社員Bは、監視エリアから退館する場合に、入退館管理装置10に所定の遠隔立会モードへの切替操作を行う。そして、入退館管理装置10は、遠隔立会モードへの切替操作を受け付けたならば(ステップS101)、立会モードから遠隔立会モードに切替制御し、その旨を遠隔立会装置80に出力する(ステップS102)。遠隔立会装置80は、遠隔立会モードに移行した旨の出力を受け取ったならば(S103)、入退館管理装置10から送信される各データを受信可能とする。
【0064】
社員Aは、作業エリアから退館する場合には、インターフォン61を操作して退館する旨を遠隔立会人Rに出力する(ステップS104)。その後、入退館管理装置10は、所持品カメラ60により撮像された画像データを遠隔立会装置80に転送する(ステップS105)。遠隔立会装置80は、所持品カメラ60により撮像された画像を受信したならば(ステップS106)、受信した画像データを遠隔立会装置80に接続された表示部81に表示制御する(ステップS107)。
【0065】
そして、カードリーダ85は、遠隔立会人Rにより翳された遠隔立会用カードR1に記憶されたデータを読み取り、遠隔立会装置80に出力する。遠隔立会装置80は、カードリーダ85から遠隔立会用カードR1に記載されたデータを受け取ったならば(ステップS108)、該データを含む認証要求を入退館管理装置10に出力する(ステップS109)。
【0066】
入退館管理装置10は、遠隔立会装置80から遠隔立会用カードR1に記憶されたデータを含む認証要求を受け付けたならば(ステップS110)、遠隔立会用カードR1に記憶されたデータに基づいて遠隔立会用カードR1が正当であるか否かを認証する(ステップS111)。その結果、遠隔立会用カードR1が正当でない場合には(ステップS111;No)、遠隔立会装置80を介してカードリーダ85に認証NGを出力し(ステップS112)、ステップS102に移行する。
【0067】
これに対して、遠隔立会用カードR1が正当である場合には(ステップS111;Yes)、カードリーダ20が社員Aの社員カードA1に記憶されたデータを読み取り(ステップS113)、入退館管理装置10がデータを受け付けたならば、該データに基づいて社員カードA1が正当であるか否かの認証を行う(ステップS114)。その結果、社員カードA1が正当でない場合には(ステップS114;No)、認証NGをカードリーダ20に出力し(ステップS115)、ステップS102に移行する。
【0068】
これに対して、社員カードA1が正当である場合には(ステップS114;Yes)、電子錠30を開錠するよう制御し(ステップS116)、社員の退館を可能にして、上記一連の処理を終了する。
【0069】
このように、本実施形態1に係る入退館管理システムは、入退館管理装置10において立会モードから遠隔立会モードに移行したならば、入退館管理装置10は、社員Aが最終退館時に翳した社員カードA1のデータに基づいて社員カードA1の認証を行うとともに、遠隔立会装置80を介して取得した遠隔立会センタの遠隔立会人Rが翳した遠隔立会用カードR1のデータに基づいて遠隔立会用カードR1の認証を行う。入退館管理装置10は、社員カードA1と遠隔立会用カードR1とが正当である場合に、電子錠30を開錠制御するよう構成したので、監視エリアに社員Bが不在である場合でも、社員Aが退館することができる。
【0070】
なお、本実施形態1では、遠隔立会人Rを遠隔立会用カードR1により認証する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ID及びパスワード、顔などの生体情報等を用いて遠隔立会人Rの認証を行うこともできる。また、遠隔立会人Rに認証を省略することもできる。
【0071】
[実施形態2]
<入退館管理システムの概要>
本実施形態2では、作業エリアに所在する社員Aが退館する場合に、全景カメラの画像データに基づいて社員Aのリスクスコアを算定し、該リスクスコアに基づいて遠隔立会人Rが遠隔立会用カードR1を翳すべきか否か(退出を認めるべきか否か)の判断を支援する場合について説明する。
【0072】
本実施形態2に係る入退館管理システムの概要を説明する。図8は、実施形態2に係る入退館管理システムの概要を説明するための説明図である。なお、実施形態1と同様の箇所には、同一の符号を付すこととして、その詳細な説明を省略する。
【0073】
図8に示すように、作業エリアには、社員Aの退館時の挙動を撮像できる全景カメラ70が配設されている。また、遠隔立会センタには、全景カメラ70により撮像された画像データに基づいて、リスクスコアを算定する学習済モデルを有する遠隔立会装置90が配設されている。
【0074】
具体的には、監視エリアの社員Bが退館する場合に、入退館管理装置10を立会モードから遠隔立会モードへ切り替える(21)。その後、社員Aが1名で退館しようとする場合には、インターフォン61を操作して退館する旨を遠隔立会人Rに通知する(22)。そして、遠隔立会装置90は、転送された全景カメラ70により撮像された画像データを入退館管理装置10から受信したならば、該画像データを学習済モデルに入力し、学習済モデルから出力されるリスク確率に基づいてリスクスコアを算定する(23)。
【0075】
遠隔立会人Rは、所持品カメラ60により撮像された社員Aの所持品の画像及び表示されたリスクスコアを補助的な指標として用いて、遠隔立会装置90に接続されたカードリーダ85に遠隔立会用カードR1を翳すか否かを判断する。具体的には、遠隔立会人Rは、所持品カメラ60により撮像された社員Aの所持品の画像に問題がなく、表示されたリスクスコアが所定の値未満である場合に、遠隔立会装置90に接続されたカードリーダ85に遠隔立会用カードR1を翳す。カードリーダ85は、遠隔立会用カードR1に記憶されたデータを読み取り(25)、遠隔立会装置90が、遠隔立会用カードR1に記憶されたデータを含む認証要求を入退館管理装置10に対して行う。
【0076】
入退館管理装置10は、遠隔立会用カードR1に記憶されたデータに基づいて、遠隔立会用カードR1が正当なものであるか否かを認証する(25)。その後、カードリーダ20が社員カードA1に記憶されたデータを読み取り(26)、入退館管理装置10に出力する。入退館管理装置10は、社員カードA1に記憶されたデータに基づいて、社員カードA1が正当なものであるか否かを認証する(27)。
【0077】
その結果、社員カードA1が正当であり、かつ、遠隔立会用カードR1が正当である場合には、電子錠30を開錠するよう制御し(28)、社員Aの退館を可能とする。
【0078】
<遠隔立会装置90の構成>
次に、遠隔立会装置90の構成を説明する。図9は、図8に示した遠隔立会装置90の構成を示す機能ブロック図である。なお、実施形態1と同様の箇所には、同一の符号を付すこととして、その詳細な説明を省略する。図9に示すように、遠隔立会装置90は、記憶部97及び制御部98を有する。
【0079】
記憶部97は、教師有り学習に用いる学習用画像データ97a及び学習済モデル97bを記憶する。学習用画像データ97aは、作業エリアから退館する人物を撮像した学習用画像である。学習済モデル97bは、多層ニューラルネットワーク(CNN;Convolutional Neural Network)を深層学習により学習させることにより得られる学習済モデルである。
【0080】
ここで、学習済モデル97bの層構造について説明する。図10に示す学習済モデル97bは、学習済モデル97bの層構造の一例を示す図であり、ここではコンボリューション層(Convolution layer)100、コンボリューション層(Convolution layer)101、アベレージプーリング層(Average Pooling layer)102、コンボリューション層(Convolution layer)103、アベレージプーリング層(Average Pooling Layer)104、全結合層(Fully Connected Layer)105、全結合層(Fully Connected Layer)106及び出力層(Output layer)107を有するものとする。ただし、CNNの層構造は、これに限定されるものではない。
【0081】
コンボリューション層100,101,103は、局所的な特徴を抽出するために、前層で近くにあるノードにフィルタを畳み込んで特徴マップを生成する。アベレージプーリング層102,104は、局所的な特徴をまとめあげるために、前層であるコンボリューション層から出力された特徴マップをさらに縮小して新たな特徴マップとする。このように、CNNの隠れ層は、コンボリューション層とアベレージプーリング層により形成される。
【0082】
全結合層105,106は、特徴部分が取り出された特徴マップを一つのノードに結合し、所定の活性化関数によって変換された値を出力する。この活性化関数には、周知技術であるReLU(Rectified Linear Unit)等を用いることができる。出力層107は、全結合層106からの出力(特徴変数)をソフトマックス関数により確率に変換し、それぞれ正しく分類される確率を出力する。なお、オーバーフィッティングを避けるためにドロップアウト層を追加することもできる。なお、CNNの基本構造は公知技術であるため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0083】
図9に戻り、制御部98は、学習処理部98a、リスクスコア算定部98b及び表示制御部98cを有する。学習処理部98aは、学習用画像データ97a及び正解データを用いて深層学習の教師有り学習を行う処理部であり、具体的には、学習用画像データ97aをCNNデータに入力するとともに、正解データに基づいてバックプロパゲーションを行わせ、各バスの重みを決定する教師有り学習処理を繰り返して、学習済モデル97bを生成する。
【0084】
リスクスコア算定部98bは、入退館管理装置10より転送された全景カメラ70の画像データを学習済モデル97bに入力してリスクスコアを算定する処理部である。具体的には、図11に示すように、全景カメラの画像データを学習済モデル97bに入力し、学習済モデル97bから出力されるリスク確率(0.00~1.00)を取得し、このリスク確率を0~10に正規化してリスクスコアとする。このようにして得られたリスクスコアを表示制御部98cに出力する。表示制御部98cは、リスクスコア算定部98bで算定されたリスクスコアを表示部81に表示制御する。
【0085】
<入退館管理システムの処理手順>
次に、図8に示した入退館管理システムの処理手順について説明する。図12及び図13は、図8に示した入退館管理システムの処理手順を示すシーケンス図である。
【0086】
図12に示すように、監視エリアに所在する社員Bは、監視エリアから退館する場合に、入退館管理装置10に対して立会モードから遠隔立会モードに移行する所定の移行操作を行う。入退館管理装置10は、かかる所定の移行操作を受け付けたならば(ステップS201)、立会モードから遠隔立会モードに移行制御する。入退館管理装置10は、遠隔立会モードに移行制御された旨を遠隔立会装置90に出力する(ステップS202)。遠隔立会装置80は、遠隔立会モードに移行制御された旨の出力を受け取ったならば(S203)、入退館管理装置10から送信される各データを受信可能にする。
【0087】
社員Aが退館する場合には、社員Aは、インターフォン61を操作して退館する旨を遠隔立会人Rに出力する(ステップS204)。そして、入退館管理装置10は、所持品カメラ60により社員Aの所持品の画像を撮像し、遠隔立会装置90に転送するとともに、全景カメラ70により撮像された画像データを遠隔立会装置90に転送する(ステップS205)。遠隔立会装置90は、入退館管理装置10から送信された全景カメラ70の画像データを受信し(ステップS206)、受信した該画像データを学習済モデル97bに入力し、リスクスコアを算定する(ステップS207)。そして、遠隔立会装置90は、算定されたリスクスコアを表示部81に表示制御する(ステップS208)。
【0088】
その後、遠隔立会人Rは、所持品カメラ60にて撮像された社員Aの所持品の画像に問題がなく、表示されたリスクスコアが所定の値未満である場合に、遠隔立会人Rは、カードリーダ85に遠隔立会用カードR1を翳す。カードリーダ85は、遠隔立会用カードR1に記憶されたデータを読み取り、遠隔立会装置90に出力する。遠隔立会装置90は、遠隔立会用カードR1に記憶されたデータを受け取ったならば(ステップS209)、該データを含む認証要求を入退館管理装置10に出力する(ステップS210)。
【0089】
入退館管理装置10は、遠隔立会装置90から遠隔立会用カードR1に記憶されたデータを含む認証要求を受け付けたならば(ステップS211)、遠隔立会用カードR1に記憶されたデータに基づいて遠隔立会用カードR1が正当であるか否かを認証する(ステップS212)。その結果、遠隔立会用カードR1が正当でない場合には(ステップS212;No)、認証NGを遠隔立会装置80を介してカードリーダ85に出力し(ステップS213)、ステップS202に移行する。
【0090】
これに対して、遠隔立会用カードR1が正当である場合には(ステップS212;Yes)、カードリーダ20が社員Aの社員カードA1に記憶されたデータを読み取り、入退館管理装置10がデータを受け付けたならば(ステップS214)、このデータに基づいて社員カードA1が正当であるか否かを認証する(ステップS215)。その結果、社員カードA1が正当でない場合には(ステップS215;No)、認証NGをカードリーダ20に出力し(ステップS216)、ステップS202に移行する。
【0091】
これに対して、社員カードA1が正当である場合には(ステップS215;Yes)、電子錠30を開錠するよう制御し(ステップS217)、社員の退館を可能にして、上記一連の処理を終了する。
【0092】
このように、上記実施形態2では、入退館管理装置10において遠隔立会モードに移行したならば、入退館管理装置10は、社員Aが最終退館時に翳した社員カードA1のデータに基づいて認証を行う。遠隔立会装置90は、入退館管理装置10を介して受信した全景カメラの画像データを学習済モデル97bに入力してリスクスコアを算定し、表示する。遠隔立会人Rは、このリスクスコアが所定の値未満であれば、遠隔立会用カードR1をカードリーダ85に翳す。入退館管理装置10は、翳した遠隔立会用カードR1のデータに基づいて認証を行う。入退館管理装置10は、社員カードA1の認証と遠隔立会用カードR1の認証を行うことにより電子錠30を開錠制御するよう構成したので、監視エリアに社員Bが不在であっても、社員Aが退館することができる。
【0093】
なお、上記の実施形態2では、深層学習により学習済モデルを生成する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各種の機械学習により学習済モデルを生成することもできる。また、上記の実施形態2では、学習済モデルから出力されるリスク確率を正規化したリスクスコアを算定する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、学習済モデルから出力されたリスク確率に社員の属性(管理職か否か)に基づく係数を掛けた値を正規化してリスクスコアを算出することもできる。例えば、社員の属性が管理職である場合は、退館時の不正のリスクが低くなるため係数を小さくする。
【0094】
また、上記実施形態2では、事前の教師有り学習により学習済モデルを生成する場合を示したが、撮像された画像データが一定数増えた時点で、これらの画像データを加えて再度教師有り学習を行って学習済モデルを再構成することもできる。また、強化学習又は深層強化学習により試行錯誤による学習を繰り返し、状態に応じて報酬を最大化するよう学習することもできる。
【0095】
また、上記実施形態1及び実施形態2では、入退館管理を行う媒体として社員カード(非接触ICカード)を用いる場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、接触式のICカード、バーコード付きのICカード、スマートフォン、モバイル端末等を媒体として用いることもできる。接触式のICカードを用いる場合には、カードリーダのカード挿入口にICカードを挿入することになる。
【0096】
また、遠隔立会モードへの移行は、監視エリアの社員Bの操作による場合を説明したが、定期的なスケジュールを管理するスケジュール管理部を入退館管理装置10に配設し、管理されたスケジュールに従って自動的に遠隔立会モードへ移行してもよい。例えば、平日(月曜日から金曜日まで)は、17時30分に自動的に立会モードから遠隔立会モードへ移行するよう構成することができる。また、平日の12時に自動的に立会モードから遠隔立会モードへ移行させ、13時に遠隔立会モードから立会モードに自動復帰させるよう構成することもできる。
【0097】
また、社員Aがインターフォン61にて退館する旨を通知し、入退館管理装置10から所定の時間内に応答をしなかった場合に、遠隔立会モードに自動に切り替わるようにしてもよい。かかる切り替え後は、立会モードによる立会は行われず、完全に立会モードから遠隔立会モードへ自動切替を行うことになる。ただし、立会人が休憩のために一時的に離席するような場合も、立会モードから遠隔立会モードへ自動切替が行われる。このため、一時的に離席する場合に備え、立会人が離席から戻った際に該立会人が入退館管理装置10に対して所定の操作を行うことにより、遠隔立会モードから立会モードに切り替えられるよう構成することもできる。立会人に所定の操作を行わせず、立会人の顔認証を行って遠隔立会モードから立会モードに自動切替するよう構成することもできる。
【0098】
また、入退館管理装置10の退館データ17c及び入館データ17dに基づいて、在館者が1名となった場合に、自動的に遠隔立会モードに移行するようにしてもよい。
【0099】
また、遠隔立会モードへの移行は、入退館管理装置10で切り替えていたが、遠隔立会装置80及び90に切替機能を持たせてもよい。また、監視エリアの社員B(立会人)が入館した場合に、遠隔立会モードから立会モードに切替てもよい。
【0100】
また、遠隔立会人Rの遠隔立会用カードR1の認証を入退館管理装置10で行う場合を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、遠隔立会装置80及び遠隔立会装置90にて認証を行うようにしてもよい。また、あらかじめ遠隔立会装置に登録されている遠隔立会人RのユーザID及びパスワードで認証を行ってもよい。なお、この場合は、遠隔立会装置80、90は、遠隔立会人Rの認証が完了し、社員Aの退館を許可する旨を入退館管理装置10に通知を行う。
【0101】
上記の各実施形態で図示した各構成は機能概略的なものであり、必ずしも物理的に図示の構成をされていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明に係る入退館管理システム、入退館管理装置及び入退館管理方法は、施設等からの単独退出を認めない運用を行う場合に、施設等に残留した最後の退出者を退出可能とする場合に適している。
【符号の説明】
【0103】
10 入退館管理装置
11 表示部
12 入力部
13 マイク
14 スピーカ
15、20、21 カードリーダ
16 通信I/F部
17 記憶部
17a 社員カードデータ
17b 遠隔立会用カードデータ
17c 退館データ
17d 入館データ
17e 画像データ
18 制御部
18a 遠隔立会モード切替処理部
18b カードデータ取得部
18c 認証処理部
18d 判定部
18e 電子錠制御部
18f 撮像制御部
18g インターフォン制御部
18h 画像データ転送部
30 電子錠
31 扉
60 所持品カメラ
61 インターフォン
70 全景カメラ
80 遠隔立会装置
81 表示部
82 入力部
83 マイク
84 スピーカ
85 カードリーダ
86 通信I/F部
87 記憶部
88 制御部
88a 切替処理部
88b 画像データ受信処理部
88c 通話制御部
88d 認証要求通知部
90 遠隔立会装置
97 制御部
97a 学習用画像データ
97b 学習済モデル
98 制御部
98a 学習処理部
98b リスクスコア算定部
98c 表示制御部
100、101,103 コンボリューション層
102、104 アベレージプーリング層
105、106 全結合層
107 出力層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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図13