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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139794
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】経路生成システム
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/10 20060101AFI20230927BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20230927BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
B60W30/10
B60W60/00
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045505
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(74)【代理人】
【識別番号】100153040
【弁理士】
【氏名又は名称】川井 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】濱口 裕
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA11
3D241BC01
3D241BC02
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC17
3D241CE04
3D241CE05
3D241DB02Z
3D241DB20Z
3D241DC35Z
3D241DC43Z
3D241DC50Z
5H181AA01
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181CC24
5H181FF04
5H181FF14
5H181FF22
5H181FF27
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】車両全体が車線内に収まることを条件とした経路を生成できないことにより通行不可能である道路に対して、当該条件の緩和により経路の生成が可能である場合に、当該道路の通行が可能となるような経路を生成する。
【解決手段】経路生成装置10は、車線を表す車線情報及び物標を表す物標情報を含む道路情報を取得する道路情報取得部11と、道路情報に基づいて、車線の幅方向端部を画する車線境界及び所与の高さ以上の空間に存在する物標により画される道路の幅方向の触車境界を含む走行可能領域地図を生成する走行可能領域地図生成部12と、走行可能領域地図に基づいて、車両の車両全体が触車境界内に収まり、且つ、車両の全ての車輪が車線境界内に収まるような経路を生成する経路生成部14と、経路生成部により生成された経路を表す経路情報を出力する出力部15と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を走行させるための経路を生成する経路生成システムであって、
道路上に設けられた車線を表す車線情報、及び、道路上及び道路近傍に存在する物標を表す物標情報を含む道路情報を取得する道路情報取得部と、
前記道路情報に基づいて、走行可能領域地図を生成する走行可能領域地図生成部であって、前記走行可能領域地図は、前記車線の幅方向端部を画する境界である車線境界及び所与の高さ以上の空間に存在する物標により画される道路の幅方向の境界である触車境界を含む、走行可能領域地図生成部と、
前記走行可能領域地図に基づいて、前記車両の車両全体が前記触車境界内に収まり、且つ、前記車両の全ての車輪が前記車線境界内に収まるような経路を生成する経路生成部と、
前記経路生成部により生成された経路を表す経路情報を出力する出力部と、
を備える経路生成システム。
【請求項2】
前記車両が走行する道路が、車両の通行の困難さに関する所定の通行困難条件に該当するか否かを判定する判定部、をさらに備え、
前記経路生成部は、前記車両が通行する道路が前記通行困難条件に該当する場合に、前記車両の車両全体が前記触車境界内に収まり、且つ、前記車両の全ての車輪が前記車線境界内に収まるような経路を生成し、
前記車両が通行する道路が前記通行困難条件に該当しない場合には、前記車両の車両全体が前記車線境界内に収まるような経路を生成する、
請求項1に記載の経路生成システム。
【請求項3】
前記通行困難条件は、前記道路が所定の曲率以上であること、前記道路の幅が所定の長さ以下であること、及び、前記車両の車速が所定の速度以下であること、の少なくともいずれか一つを含む、
請求項2に記載の経路生成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を走行させるための経路を生成する経路生成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動運転のために、車線内に車両が走行するような経路を生成し、生成した経路内を走行するように、操舵、アクセル、ブレーキ等を制御する技術が知られている。また、特許文献1には、車両が曲がりながら道路の所定部分を通過するための経路を、車両の属性情報、所定部分の進入位置及び退出位置等の情報に基づいて生成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2020/100868号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常の自動運転制御では、車両全体が車線内に収まるように経路が生成される。車線の幅が狭い道路等の通行が困難な道路を通行させる場合において、例えば小型車及び中型車程度の乗用車では通行可能であっても、大型車では車両全体を車線内に収めることができない場合には、経路を生成できず通行不可能である場合があった。しかしながら、実際には、オーバーハング部分等の車両の一部が車線内に収まらないような経路を走行させることにより、通行可能である場合があった。
【0005】
そこで、本発明は、車両全体が車線内に収まることを条件とした経路を生成できないことにより通行不可能である道路に対して、当該条件の緩和により経路の生成が可能である場合に、当該道路の通行が可能となるような経路を生成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る経路生成システムは、車両を走行させるための経路を生成する経路生成システムであって、道路上に設けられた車線を表す車線情報、及び、道路上及び道路近傍に存在する物標を表す物標情報を含む道路情報を取得する道路情報取得部と、道路情報に基づいて、走行可能領域地図を生成する走行可能領域地図生成部であって、走行可能領域地図は、車線の幅方向端部を画する境界である車線境界及び所与の高さ以上の空間に存在する物標により画される道路の幅方向の境界である触車境界を含む、走行可能領域地図生成部と、走行可能領域地図に基づいて、車両の車両全体が触車境界内に収まり、且つ、車両の全ての車輪が車線境界内に収まるような経路を生成する経路生成部と、経路生成部により生成された経路を表す経路情報を出力する出力部と、を備える。
【0007】
このような側面においては、車線情報に基づき設定された車線境界、及び、物標情報に基づき設定された触車境界を含む走行可能領域地図が生成される。道路の通行時において、車両の車輪は常に車線境界内に位置することを要するが、車両における、例えばオーバーハング部分のような、所与の高さ以上に構成される部分(車両を接地面に対し垂直方向から見たときに、所与の高さ未満に構造物がない部分)は、触車境界を限度として車線境界外に位置することができる。そして、走行可能領域地図に基づいて、車両の車両全体が触車境界内に収まり、且つ、車両の全ての車輪が車線境界内に収まるような経路が生成及び出力される。従って、車両全体が車線内に収まることを条件とした経路の生成が不可能である場合であっても、車両における所与の高さ以上のみに構成される部分が、車線境界を越えて車線外に位置することを許容する経路が生成されることにより、当該道路の通行が可能となる。
【0008】
他の側面に係る経路生成システムでは、車両が走行する道路が、車両の通行の困難さに関する所定の通行困難条件に該当するか否かを判定する判定部、をさらに備え、経路生成部は、車両が通行する道路が通行困難条件に該当する場合に、車両の車両全体が触車境界内に収まり、且つ、車両の全ての車輪が車線境界内に収まるような経路を生成し、車両が通行する道路が通行困難条件に該当しない場合には、車両の車両全体が車線境界内に収まるような経路を生成することとしてもよい。
【0009】
このような側面によれば、通行困難条件に該当する道路を通行する場合にのみ、車両の車両全体が触車境界内に収まり、且つ、車両の全ての車輪が車線境界内に収まるような経路が生成され、通行困難条件に該当しない道路を通行する場合には、車両の車両全体が車線境界内に収まるような経路の生成のみが行われるので、システムにおける計算負荷が軽減される。
【0010】
他の側面に係る経路生成システムでは、通行困難条件は、道路が所定の曲率以上であること、道路の幅が所定の長さ以下であること、及び、車両の車速が所定の速度以下であること、の少なくともいずれか一つを含むこととしてもよい。
【0011】
このような側面によれば、車両が通行する道路における、車両の通行の困難さが適切に判定される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一側面によれば、車両全体が車線内に収まることを条件とした経路を生成できないことにより通行不可能である道路に対して、当該条件の緩和により経路の生成が可能である場合に、当該道路の通行が可能となるような経路を生成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る経路生成装置を含む経路生成システムの機能的構成を示すブロック図である。
図2】車両を模式的に示す図である。
図3】走行可能領域地図の生成の例を示す図である。
図4】経路生成の例を示す図である。
図5】本実施形態の経路生成システムによる経路生成処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る経路生成装置を含む経路生成システムの機能的構成を示すブロック図である。経路生成システム1は、車両を走行させるための経路を生成するシステムである。生成された経路は、例えば、自動運転制御等に供される。
【0016】
経路生成システム1は、経路生成装置10を含んで構成される。経路生成システム1は、センサ20を含んでもよい。経路生成装置10は、センサ20により検出された情報を取得する。センサ20は、車両の周囲(特に前方)の画像及び物標を検出するための装置であって、例えば、カメラ、Lidar(Light Detection and Ranging又はLaser Imaging Detection and Ranging)及びミリ波レーダ等により構成される。
【0017】
経路生成装置10は、センサ20により検出及び送出された検出情報に基づいて、車両を走行させるための経路を生成し、生成した経路を表す経路情報を走行制御ECUに送出する。
【0018】
経路生成装置10は、例えば、ECU(Electronic Control Unit)により構成される。ECUにより構成される経路生成装置10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、CAN(Controller Area Network)通信回路等を有する電子制御ユニットとして構成されてもよい。経路生成装置10は、例えば、CAN通信回路を介してROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより各種の機能を実現する。経路生成装置10は、複数の電子制御ユニットから構成されていてもよく、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、マイクロプロセッサ(マイクロコンピュータ)、DSP(Digital Signal Processor)等を含んで構成されてもよい。
【0019】
経路生成装置10は、機能的には、道路情報取得部11、走行可能領域地図生成部12、判定部13、経路生成部14及び出力部15を備える。経路生成装置10の機能の詳細については後に詳述する。
【0020】
走行制御ECU30は、経路情報に基づいて、操舵アクチュエータ40等を制御することにより、車両の自動運転制御処理を実行する。走行制御ECU30は、CPU、RAM、ROM及び入出力インターフェース等により構成されている。走行制御ECU30は、追従制御部31を含む。
【0021】
具体的には、追従制御部31は、経路情報に従って、操舵アクチュエータ40等を制御することにより、車両を経路に沿って走行させる。操舵アクチュエータ40は、車両の操舵角を制御するアクチュエータである。追従制御部31は、アクセル/ブレーキアクチュエータ(図示せず)を更に制御することとしてもよい。追従制御部31は、経路情報に従って、操舵アクチュエータ40に加えてアクセル/ブレーキアクチュエータを制御することにより、車両を経路に沿って走行させる。
【0022】
具体的には、追従制御部31は、例えば、車両を経路に沿って走行させるための操舵角等のデータ系列に従って、操舵等のフィードフォワード制御を行う。また、追従制御部31は、経路情報により表される経路と、各種センサ等により検出された車両の現在位置とに基づいて、操舵等のフィードバック制御を行う。
【0023】
続いて、経路生成装置10の各機能部について説明する。道路情報取得部11は、道路情報を取得する。道路情報は、車両が通行する道路に関する情報であって、車線情報及び物標情報を含む。車線情報は、道路上に設けられた車線を表す情報である。物標情報は、道路上及び道路近傍に存在する物標を表す情報である。
【0024】
道路情報取得部11は、例えば、カメラ、Lidar等により構成されるセンサ20により検出された検出情報に基づいて道路情報を取得してもよい。道路情報取得部11は、センサ20を介して、道路上の白線及び縁石等の存在及び位置を車線情報として取得してもよい。白線及び縁石は、車線の幅方向端部を規定する。
【0025】
また、道路情報取得部11は、センサ20を介して、道路上及び道路近傍の、壁、植え込み、電柱等の物標の存在並びに位置及び形状を取得してもよい。道路上及び道路近傍の物標は、車両が道路を通行する場合において接触しないように通行すべきものであって、後述される触車境界を規定する。
【0026】
道路情報取得部11は、周知の画像処理技術等を用いて、カメラ等により取得された画像に基づいて、車線情報を認識できる。また、道路情報取得部11は、周知の解析技術を用いて、Lidar及びその他のセンサ等により取得された情報に基づいて、車線情報及び物標情報を認識できる。
【0027】
また、道路情報取得部11は、車両が通行する道路を含む地図情報に基づいて道路情報を取得してもよい。地図情報が、道路の車線を規定する白線及び縁石等の情報を含む場合には、道路情報取得部11は、地図情報に基づいて車線情報を取得してもよい。また、地図情報が、道路上及び道路近傍の物標の位置及び形状を示す3次元の情報を含む場合には、道路情報取得部11は、地図情報に基づいて物標情報を取得してもよい。
【0028】
なお、道路情報取得部11は、所定の通信手段を介して地図情報を取得してもよいし、予め地図情報が記憶された経路生成装置10が有する記憶手段(図示せず)から地図情報を取得してもよい。
【0029】
ここで、本実施形態の走行制御の対象である車両の形状の特徴について説明する。図2は、車両を模式的に示す図である。図2に示されるように、車両Vは、車輪tにより道路面に接地する。そして、車両Vは、オーバーハング部OHを有する。
オーバーハング部OHは、車両Vを接地面に対し垂直方向から見たときに、前後左右の最外殻の車輪から外側にはみ出した車体の部分である。
なお、車両Vには、前車軸中心から車両最前部、後車軸中心から車両最後部、及びトレッドから左右両方の外側までのそれぞれに、前・後・左・右に4部位のオーバーハング部分が存在するが、本実施形態では、車両前部及び車両後部のオーバーハング部分を例示して説明する。
【0030】
図示されるように、オーバーハング部OHは、最低地上高hを有する。車線を規定するために道路上に描かれた白線は実質的に高さを有さないので、車両Vは、オーバーハング部OHが白線の上を跨いで車線外を通過するような経路を走行できる。また、車線を規定する縁石の高さがオーバーハング部OHの最低地上高h未満である場合には、車両Vは、オーバーハング部OHが縁石の上を跨いで車線外を通過するような経路を走行できる。
【0031】
車両Vの接地面上に物標が存在する場合であっても、その物標の高さがオーバーハング部OHの最低地上高h未満である場合には、車両Vは、オーバーハング部OHが物標の上方を通過するような経路を走行できる。
【0032】
本実施形態の経路生成システム1では、車両全体が車線内に収まることを条件とした経路を生成できないことにより通行不可能である道路に対して、車両Vの一部(例えばオーバーハング部OH)が車線外を通過するような経路を走行することを許容することにより経路を生成し、車両の通行を可能とする。
【0033】
再び図1を参照して、走行可能領域地図生成部12は、道路情報に基づいて、走行可能領域地図を生成する。走行可能領域地図は、車線境界及び触車境界を含む。車線境界は、車線の幅方向端部を画する境界である。触車境界は、所与の高さ以上の空間に存在する物標により画される道路の幅方向の境界である。
【0034】
図3は、走行可能領域地図の生成の例を模式的に示す図である。走行可能領域地図dmは、車線境界lb1,lb2及び触車境界tb1,tb2を含む。また、図3に示す例では、走行可能領域地図dmの生成の前段階において、白線wl及び縁石csに関する情報が車線情報として道路情報取得部11により取得され、物標t1,t2,t3に関する情報が物標情報として道路情報取得部11により取得されている。
【0035】
走行可能領域地図生成部12は、車線情報に基づいて車線境界を生成する。具体的には、走行可能領域地図生成部12は、車線情報に含まれる白線wlの位置を示す情報に基づいて、車線境界lb1を生成する。また、走行可能領域地図生成部12は、車線情報に含まれる縁石csの位置を示す情報に基づいて、車線境界lb2を生成する。
【0036】
また、走行可能領域地図生成部12は、物標情報及び車線情報に基づいて、触車境界を生成する。走行可能領域地図生成部12は、例えば車両Vのオーバーハング部OHの最低地上高h以上の空間に存在する物標に基づいて触車境界を生成する。
【0037】
なお、本実施形態では、触車境界が、一例として、車両Vのオーバーハング部OHの最低地上高h以上の空間に存在する物標により画される道路の幅方向の境界として設定されるが、この例には限定されない。例えば、触車境界が、予め設定された所定の高さ以上の空間に存在する物標により画される道路の幅方向の境界として設定されてもよい。触車境界の設定のための所定の高さは、車両Vのドライバ及びその他の管理者等により入力された値であってもよいし、車両Vが有する記憶手段に記憶されている当該車両Vの属性情報が参照されてもよい。
【0038】
具体的には、物標t1が最低地上高h以上の空間に位置する場合には、物標t1が空間に占める部分が、オーバーハング部OHが車線境界lb1を越えて位置することが可能な限界位置を規定するので、走行可能領域地図生成部12は、物標情報に基づいて、物標t1の位置及び形状を示す情報に基づいて、触車境界tb1を生成する。
【0039】
なお、図3に示される例では、触車境界tb1は、物標t1及びその他の物標等に基づいて設定された境界線として表されているが、物標t1の位置及び形状に基づく一定範囲の領域の境界が触車境界として生成されてもよい。
【0040】
また、同様に、走行可能領域地図生成部12は、物標t2,t3の位置及び形状を示す情報に基づいて、触車境界tb2を生成する。なお、縁石csの高さが、オーバーハング部OHの最低地上高h未満である場合には、縁石csは、触車境界tb2の生成に寄与しない。
【0041】
再び図1を参照して、経路生成装置10の機能部の説明を続ける。なお、判定部13の説明に先立って、経路生成部14を説明する。経路生成部14は、走行可能領域地図dmに基づいて、車両Vの車両全体が触車境界内に収まり、且つ、車両の全ての車輪が車線境界内に収まるような経路を生成する。
【0042】
図4は、経路生成の例を示す図である。経路生成部14は、車両Vの車両全体が触車境界tb1,tb2内に収まることを経路生成の条件の一つとする。車両全体とは、車両Vを道路面に対して垂直方向から見たときの、最前部及び最後部の両端点vcを四隅とする領域である。また、経路生成部14は、車両Vの全ての車輪tが車線境界lb1,lb2内に収まることを経路生成のもう一つの条件とする。このように生成された経路では、オーバーハング部OHが、触車境界tb1,tb2を限度として車線境界lb1,lb2を超えることが許容されている。
【0043】
経路生成部14は、上記2条件を満たす経路を周知技術により生成できる。経路生成部14は、例えば、車線境界lb1,lb2及び触車境界tb1,tb2のそれぞれに、仮想的な斥力場(リスクポテンシャル)を設定して、車両全体(車両四隅の端点vc)の通行軌跡における、触車境界tb1,tb2に基づくリスクポテンシャルが最も低くなり、且つ、車輪tの通行軌跡における、車線境界lb1,lb2に基づくリスクポテンシャルが最も低くなる経路を生成してもよい。
【0044】
再び図1を参照して、出力部15は、経路生成部14により生成された経路を表す経路情報を出力する。本実施形態では、出力部15は、例えば、経路情報を走行制御ECU30に送出する。
【0045】
再び図1を参照して、経路生成装置10は、判定部13を更に備えてもよい。判定部13は、車両Vが走行する道路が、車両Vの通行の困難さに関する所定の通行困難条件に該当するか否かを判定する。
【0046】
通行困難条件は、例えば、車両Vが通行する道路が所定の曲率以上であることであってもよい。また、通行困難条件は、道路の幅が所定の長さ以下であることであってもよい。通行困難条件が道路の属性により規定される場合には、判定部13は、センサ20を介して、道路の曲率及び幅等の情報を取得してもよい。また、判定部13は、所定の通信手段により取得した地図情報または経路生成装置10が有する記憶手段に予め記憶された地図情報等に基づいて、道路の曲率及び幅等の情報を取得してもよい。
【0047】
また、通行困難条件は、車両Vの車速が所定の速度以下であることであってもよい。この場合には、判定部13は、車両Vが備える車速センサにより検出された車速情報を、通信回路を介して取得してもよい。
【0048】
経路生成部14は、車両Vが通行する道路が通行困難条件に該当する場合に、車両Vの車両全体が触車境界内に収まり、且つ、車両Vの全ての車輪が車線境界内に収まるような経路を生成し、車両Vが通行する道路が通行困難条件に該当しない場合には、車両Vの車両全体が車線境界内に収まるような経路を生成してもよい。
【0049】
このように、通行困難条件に該当する道路を通行する場合にのみ、車両Vの車両全体が触車境界内に収まり、且つ、車両の全ての車輪が車線境界内に収まるような経路が生成され、通行困難条件に該当しない道路を通行する場合には、車両の車両全体が車線境界内に収まるような経路の生成のみが行われることにより、経路生成システム1における計算負荷が軽減される。
【0050】
次に、図5を参照して、経路生成装置10による経路生成方法を説明する。図5は、経路生成装置10による経路生成方法の処理内容を示すフローチャートである。
【0051】
ステップS1において、道路情報取得部11は、車線情報及び物標情報を含む道路情報を取得する。
【0052】
ステップS2において、走行可能領域地図生成部12は、ステップS1において取得された道路情報に基づいて、車線境界及び触車境界を含む走行可能領域地図を生成する。
【0053】
ステップS3において、判定部13は、車両Vが走行する道路が、車両Vの通行の困難さに関する通行困難条件に該当するか否かを判定する。
【0054】
ステップS4において、処理が分岐される。車両が通行する道路が通行困難条件に該当すると判定された場合には、処理はステップS5に進む。一方、車両が通行する道路が通行困難条件に該当すると判定されなかった場合には、処理はステップS6に進む。
【0055】
ステップS5において、経路生成部14は、車両Vの車両全体が触車境界内に収まり、且つ、車両Vの全ての車輪が車線境界内に収まるような経路を生成する。
【0056】
ステップS6において、経路生成部14は、車両Vの車両全体が車線境界内に収まるような経路を生成する。
【0057】
ステップS7において、出力部15は、ステップS5またはステップS6において経路生成部14により生成された経路を表す経路情報を出力する。
【0058】
以上説明したように、本実施形態の経路生成装置10及び経路生成方法では、車線情報に基づき設定された車線境界、及び、物標情報に基づき設定された触車境界を含む走行可能領域地図が生成される。道路の通行時において、車両の車輪は常に車線境界内に位置することを要するが、車両における、例えばオーバーハング部分のような、所与の高さ以上の位置に構成される部分(車両を接地面に対し垂直方向から見たときに、所与の高さ未満の位置に構造物がない部分)は、触車境界を限度として車線境界外に位置することができる。そして、走行可能領域地図に基づいて、車両の車両全体が触車境界内に収まり、且つ、車両の全ての車輪が車線境界内に収まるような経路が生成及び出力される。従って、車両全体が車線内に収まることを条件とした経路の生成が不可能である場合であっても、車両における所与の高さ以上のみに構成される部分が、車線境界を越えて車線外に位置することを許容する経路が生成されることにより、当該道路の通行が可能となる。
【0059】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0060】
1…経路生成システム、10…経路生成装置、11…道路情報取得部、12…走行可能領域地図生成部、13…判定部、14…経路生成部、15…出力部、20…センサ、30…走行制御ECU、31…追従制御部、40…操舵アクチュエータ、lb1,lb2…車線境界、tb1,tb2…触車境界、V…車両。
図1
図2
図3
図4
図5