(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139799
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】露光装置および配線パターンの作成方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20230927BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
G03F7/20 521
H01L23/12 501P
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045514
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000128496
【氏名又は名称】株式会社オーク製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】奥山 隆志
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 徹
【テーマコード(参考)】
2H197
【Fターム(参考)】
2H197AA28
2H197AA29
2H197CC05
2H197CC11
2H197DA04
2H197DA09
2H197HA02
2H197HA03
2H197HA10
(57)【要約】
【課題】半導体パッケージ製造プロセス等において、スループット低下を抑えることが可能な配線のパターニングを行う。
【解決手段】FO-WLPの露光プロセスにおいて、仮の基板Bに配置された半導体チップSC間の基準位置に対する位置ずれ量を測定する。領域内配線パターンADの形成位置補正に応じて、領域外配線パターンBDに対する形成位置の補正およびスケーリング補正を行うとともに、円弧状の補充配線パターンCDを生成する。そして、補正後の領域内配線パターンAD、領域外配線パターンBD、生成された円弧状の補充配線パターンCDをラスタデータとして合成する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板に配置されるダイのサイズまたは前記ダイより大きいサイズの配線領域に形成される領域内配線パターンと、該領域内配線パターンと設計上繋がっていて、前記ダイと隣り合うダイまたは電子コンポーネントと接続する領域外配線パターンとを、ラスタデータに変換し、露光データを生成する露光データ生成部と、
前記ダイの基準位置に対する位置ずれを計測する位置ずれ計測部とを備え、
前記露光データ生成部が、前記ダイの位置ずれに応じて領域内配線パターンの形成位置が補正されたことによって端部同士が離れた状態にある、領域内配線パターンと領域外配線パターンとを接続させる補充配線パターンを生成し、
領域内配線パターン、領域外配線パターン、補充配線パターンを合成した露光データに基づいて、露光動作を実行することを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記露光データ生成部が、補充配線パターンとして円弧状パターンを生成することを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記露光データ生成部が、円状パターンの一部を抽出することにより、円弧状の補充配線パターンを生成することを特徴とする請求項1または2に記載の露光装置。
【請求項4】
前記露光データ生成部が、マスキング処理によって、円弧状の補充配線パターンを生成することを特徴とする請求項3に記載の露光装置。
【請求項5】
前記露光データ生成部が、領域外配線パターンに対し、形成位置が補正された領域内配線パターンに応じて、パターン形成位置の補正およびスケーリング補正を行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の露光装置。
【請求項6】
領域内配線パターンおよび領域外配線パターンが、複数の配線を並べた配線群として構成されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の露光装置。
【請求項7】
FO(Fan-Out)-WLP(Wafer-Level Package)における露光プロセスに用いられることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の露光装置。
【請求項8】
支持基板に配置されるダイのサイズまたは前記ダイより大きいサイズの配線領域に形成される領域内配線パターンと、該領域内配線パターンと設計上繋がっていて、前記ダイと隣り合うダイまたは電子コンポーネントと接続する領域外配線パターンとを、ラスタデータに変換し、露光データを生成し、
前記ダイの基準位置に対する位置ずれを計測し、
前記ダイの位置ずれに応じて領域内配線パターンの形成位置が補正されたことによって端部同士が離れた状態にある、領域内配線パターンと領域外配線パターンとを接続させる補充配線パターンを生成することを特徴とする配線パターンの作成方法。
【請求項9】
FO(Fan-Out)-WLP(Wafer-Level Package)における露光プロセスにおいて、請求項8に記載された配線パターンの作成方法に基づいて作成された配線パターンによって露光動作を実行することを特徴とする露光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体パッケージの製造プロセスにおける配線のパターニングに関し、特に、ウェハレベルで半導体をパッケージングする技術(Wafer-Level-Package、以下WLP)における配線のパターニングに関する。
【背景技術】
【0002】
WLPでは、仮の支持基板に半導体チップ(以下、IC、ダイともいう)や受動部品などの電子コンポーネントを配置し、樹脂で封止した後、RDL(Re Distribution Layer)配線を行う。その後、ダイシングによって半導体パッケージを得る(このようなプロセスを、モールドファースト(チップファースト)型WLPという)。
【0003】
例えば、チップサイズの範囲内で、ダイのI/O端子をマザーボード搭載可能なBGA(Ball Grid Array)の配置箇所まで配線するFI(Fan-In)-WLP、ダイ周囲を樹脂で疑似的に拡張してRDL配線を行うFO(Fan-Out)-WLPが知られている。FO-WLPでは、複数の半導体チップをパッケージ化する(Multi Chip FO-WLP)ことによって、半導体チップ、受動部品など様々な電子デバイスを集積してモジュール化させたSiP(System in Package)を実現することができる。
【0004】
モールドファースト型WLPでは、個々の半導体チップなどにおいて、基準となる設計上の位置に対してランダムな位置ずれが生じている。そのため、CAD/CAMフォーマットによって作成された配線パターンデータを、位置ずれに応じて補正する必要がある。
【0005】
例えば、位置ずれした半導体チップに合わせて外部電極と接続させる配線パターンを、設計情報に含まれるネットリストに基づいて求め、配線パターンデータを生成する(特許文献1参照)。また、半導体チップサイズなどに応じて定められた領域(ゾーン)に対して定められる配線パターンを、再変換(再サンプリング)する(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許5779145号公報
【特許文献2】特許5767255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
個々の半導体チップの位置ずれは、露光前に行われるカメラ撮影などによって計測する必要がある。そのため、計測後に配線パターンを再設計する作業は、時間を要する。特に、基板の多層化、FO-WLPによるSiPの要求が高まっていくことに伴い、配線パターンのデータ補正処理に多大な時間を要し、スループットに影響を与える。
【0008】
したがって、半導体パッケージ製造プロセス等において、スループット低下を抑えることが可能な配線のパターニングが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の露光装置は、WLPなど半導体パッケージ製造プロセスにおいて、RDL配線などの配線のパターニングを実現可能である。例えば、FI-WLP、FO-WLP、マルチチップFO-WLPなどによるSiPでの露光プロセスに対して適用することができる。RDL配線のパターニングとしては、一層、あるいは多層のRDLに対して配線のパターニングも可能である。
【0010】
本発明の露光装置は、支持基板に配置されるダイ(半導体チップ)のサイズまたはダイより大きいサイズの配線領域に形成される領域内配線パターンと、該領域内配線パターンと設計上繋がっていて、ダイと隣り合うダイまたは電子コンポーネントと接続する領域外配線パターンとに基づいて、配線パターニングを行うことができる。配線パターンは、例えば、CAD/CAMフォーマット形式によってあらかじめベクタデータとして作成され、露光装置に入力される。
【0011】
支持基板は、仮の基板として構成することが可能であればよく、ウェハ状(矩形状パネルもここでは含む)などその形状は限定されず、ダイを配列可能であればよい。例えば、モールドでダイを封止した疑似ウェハなどを、仮の支持基板として構成することが可能である。また、ダイサイズより大きい配線領域として、ダイの矩形形状に合わせてスケーリング(拡大)させた矩形領域として定めることが可能であり、あるいはそれ以外の形状領域にすることも可能であり、ダイを包含する領域の構成であればよい。電子コンポーネントとしては、外部電極、受動部品などが含まれ、ダイと電気的に接続可能な要素として定義することができる。
【0012】
領域内配線パターンとしては、例えば、FO-WLPにおいて樹脂などにより拡張され領域に対するRDL配線、FI-WLPにおけるRDL配線などが含まれる。領域外配線パターンとして、例えば、FO-WLPの場合、隣り合うダイそれぞれにおいて拡張領域に形成された領域内配線パターンを接続させる配線パターンが含まれる。また、拡張領域に形成された領域内配線パターンを、外部電極などの電子コンポーネントと接続させる配線パターンも含まれる。一方、配線パターンとしては、1本の配線、あるいは複数の配線から成るパターンいずれも構成可能である。例えば、FO-WLPの場合、隣り合うダイ間を接続する配線パターンとして、領域内配線パターンおよび領域外配線パターンが、複数の配線を並べた配線群として構成可能である。
【0013】
本発明の露光装置は、このような領域内配線パターンと領域外配線パターンとを、ラスタデータに変換し、露光データに生成する露光データ生成部を備える。露光データは、露光装置の光変調素子を駆動することが可能なデータとして構成すればよい。例えば、DMDなど光変調素子アレイを備えた露光装置である場合、マイクロミラーなどの光変調素子をON/OFF制御する露光データを生成可能である。露光データ生成部は、領域内配線パターンと領域外配線パターンを、他のパターン(他の配線パターン、配線以外のパターンなど)と含めた全体的なパターンデータをラスタデータに変換し、露光データとして生成することが可能である。あるいは、露光データ生成部は、領域内配線パターンと領域外配線パターンを他のパターンと区別し、ラスタ変換して露光データを生成することも可能であり、領域内配線パターンを他のパターンに含める一方、領域外配線パターンを別データとしてラスタデータに変換することも可能である。
【0014】
また、本発明の露光装置は、ダイの基準位置に対する位置ずれを計測する位置ずれ計測部を備える。基準位置は、例えば設計上定められたダイの代表的な位置(例えば中心位置)などを基準位置として設定することが可能である。計測部は、例えば、位置ずれの程度(位置ずれ量)を測定可能である。位置ずれ量としては、支持基板をステージなどに設置したとき測定される座標と設計上と座標とのずれを測定可能であり、また、ダイの中心位置に対する回転ずれなどを位置ずれとして測定することが可能である。
【0015】
本発明では、露光データ生成部が、ダイの位置ずれに応じて領域内配線パターンの形成位置が補正されたことによって端部同士が離れた状態にある、領域内配線パターンと領域外配線パターンとを接続させる補充配線パターンを生成する。領域外配線パターンは、ダイの位置ずれに応じて形成位置、配線形状等を補正してもよく、形成位置を補正しなくてもよい。補充配線パターンは、領域内配線パターンの補正された形成位置に応じてその形状、長さ、線幅などを定めることが可能である。
【0016】
露光データ生成部は、例えばラスタ変換回路を含む回路として構成することが可能であり、位置ずれ補正処理などを行う回路、データ合成処理を行う回路などを含めるようにしてもよい。また、露光データ生成部は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアなどその仕様、態様などに限定されない。領域内配線パターン、領域外配線パターン、補充配線パターンの生成処理の仕方は、様々である。例えば、露光データ生成部は、形成位置を補正した領域内配線パターン、領域外配線パターンを、CAD/CAMフォーマットのデータ(ベクタデータ)からラスタデータへ別々に変換する一方、補充配線パターンをラスタデータとして生成することが可能である。あるいは、補充配線パターンをベクタデータとして生成し、ラスタデータへ変換してもよい。
【0017】
領域内配線パターンの形成位置補正、および、補正された領域内配線パターン、領域外配線パターンのラスタデータへの変換、補充配線パターンの生成は、ダイの位置ずれの計測に応じて実行すればよい。また、領域内配線パターンのラスタデータ変換処理は、あらかじめ露光開始前に定型の露光用ラスタデータとして作成し、補正処理を伴ってラスタ変換することができる。例えば、露光データ生成部は、領域内配線パターンを包含するブロックを定め、入力されるブロックの位置座標データに基づいた定型の露光用ラスタデータを作成することが可能である。
【0018】
領域外配線パターンに関しても、同様にラスタ変換処理を行うことができる。例えば、露光データ生成部は、領域外配線パターンに対し、形成位置が補正された領域内配線パターンに応じて、パターン形成位置の補正およびスケーリング補正を行うことができる。ここでのスケーリング補正には、配線長さ方向に沿ったスケーリング(縮小または拡大)が含まれる。そして、露光装置は、補充配線パターンの生成に従い、領域内配線パターン、領域外配線パターン、補充配線パターンを合成した露光データに基づいて、露光動作を実行する。
【0019】
補充配線パターンの配線幅、形状などは様々である。例えば、露光データ生成部は、円弧状パターンを補充配線パターンとして形成することが可能である。ここでの円弧状パターンには、厳密に曲率半径が一定である円弧だけでなく、およそ円弧状であるパターンも含まれる。例えば、領域内配線パターンおよび領域外配線パターンが、複数の配線を並べた配線群として構成される場合、配線幅、配線間隔、全体の配線幅などを全体的に変化なく維持されることを考慮した場合、露光データ生成部は、円弧状パターンを生成することができる。
【0020】
露光データ生成部は、円状パターンの一部を抽出することにより、円弧状の補充配線パターンを生成することができる。例えば、円状パターンのデータを、ロットが変わるときなどのタイミングでメモリに保存することが可能であり、露光データ生成部は、マスキング処理によって、円状パターンから円弧状の補充配線パターンを生成することが可能である。例えば、隣り合うダイ間を接続する配線パターンとして、領域内配線パターンおよび領域外配線パターンが、複数の配線を並べた配線群として構成される場合、配線幅、配線間間隔が領域内配線パターンおよび領域外配線パターンと同じ同心円状の配線パターンを、あらかじめ作成して露光開始前にメモリへ保存することが可能である。
【0021】
本発明の他の態様である配線パターンの作成方法は、支持基板に配置されるダイのサイズまたはダイより大きいサイズの配線領域に形成される領域内配線パターンと、該領域内配線パターンと設計上繋がっていて、ダイと隣り合うダイまたは電子コンポーネントと接続する領域外配線パターンとを、ラスタデータに変換し、露光データを生成し、ダイの基準位置に対する位置ずれを計測し、ダイの位置ずれに応じて領域内配線パターンの形成位置が補正されたことによって端部同士が離れた状態にある、領域内配線パターンと領域外配線パターンとを接続させる補充配線パターンを生成する。ダイの基準位置に対する位置ずれは、露光装置で測定することが可能である。また、補充配線パターンは、ベクタデータあるいはラスタデータとして生成することが可能である。例えば、FO(Fan-Out)-WLP(Wafer-Level Package)における露光プロセスにおいて、本発明の配線パターンの作成方法によって作成された配線パターンに基づき、露光装置による露光動作を実行することが可能である。ラスタデータへの変、露光データの生成に関しては、上述したように、様々なデータ処理手法を適用することが可能である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、半導体パッケージ製造プロセス等において、スループット低下を抑えることが可能な配線のパターニングを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本実施形態である露光装置のブロック図である。
【
図2】モールドファースト型のFO-WLPにおいて支持基板(仮の基板)に搭載された半導体チップの一部を示した図である。
【
図3】半導体チップの位置ずれに基づいた配線パターンの形成を示した図である。
【
図4】ウェハレベルでの露光プロセスにおいて、アライメント調整を伴う配線パターンのデータ処理のフローを示した図である。
【
図5】領域内配線パターン、領域外配線パターン、補充配線パターン、テンプレートパターンを示した図である。
【
図6】基板における領域内配線パターンのパターン形成位置を示した図である
【
図7】補充配線パターンCDの生成手法の一部を示した図である。
【
図8】補充配線パターンCDの生成手法の一部を示した図である。
【
図9】領域外配線パターンBDに対するパターン形成位置の補正およびスケーリング補正を示した図である。
【
図10】領域内配線パターン、領域外配線パターン、補充配線パターンを合成した配線パターンを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0025】
図1は、本実施形態である露光装置のブロック図である。
【0026】
露光装置10は、基板Bへ光を照射することによって回路パターンを形成可能であり、ここでは、複数の露光ヘッド15を備えたマスクレス露光装置として構成されている(
図1では、1つの露光ヘッドのみ図示)。基板Bは、描画テーブル12に搭載され、テーブル駆動機構13によって主走査方向(X方向)、副走査方向(Y方向)に移動可能である。描画テーブル12上には、X-Y座標系が規定される。
【0027】
露光ヘッド15は、DMD(Digital Micro-mirror Device)16とともに、照明光学系および結像光学系(図示せず)を備える。露光装置10に備えられた光源20(レーザ、放電ランプなど)から放射された光は、照明光学系を介してDMD16へ導かれる。
【0028】
DMD16は、微小の矩形状マイクロミラー(ここでは数μm~数十μm)をマトリクス状に2次元配列させた光変調素子アレイであり、各マイクロミラーは、露光データに応じて、光源20からのビームを基板Bの方向へ反射させる第1の姿勢(ON状態)、露光面外の方向へ反射させる第2の姿勢(OFF状態)いずれかの姿勢に選択的に位置決めされる。
【0029】
すべてのマイクロミラーがON状態である場合に規定される矩形状投影エリア(以下、露光エリアという)は、描画テーブル12の主走査方向(X方向)に沿った移動に伴い、基板Bを相対移動していく。ただし、ここでは露光エリアが主走査方向(X方向)に対して所定の微小角度だけ傾くように、露光ヘッド15が設置されている。
【0030】
ON状態のマイクロミラーによって反射した光は、基板B上での露光エリアの相対位置に応じたパターン光として、基板Bの露光面上に結像する。描画テーブル12が一定速度で移動しながらパターン光を投影する露光動作を行うことによって、基板B全体への描画が行われる。ここでは、所定のピッチで多重露光(オーバラップ露光)が行われる。
【0031】
外部のワークステーションやサーバ(図示せず)などと接続するコントローラ30は、露光装置10の動作を制御し、光源駆動部21など各回路へ制御信号を出力する。露光装置10の動作を制御するプログラムは、あらかじめコントローラ30内のROM(図示せず)に格納されている。ワークステーション等から露光装置10に入力される描画データ(パターンデータ)は、CAD/CAMフォーマットとして構成されるベクタデータ(座標データ)であり、ベクタデータ処理回路31へ入力される。
【0032】
露光装置10では、ベクタデータ処理回路31に入力される描画データに対し、一部の定型パターンに対してはラスタデータ(以下、露光用定型ラスタデータという)が作成され、露光開始前にメモリ39に格納される。それ以外の描画データ(ベクタデータ)は、ラスタ変換回路26によってラスタデータに変換された後、合成回路40へ送られる。
【0033】
補正回路33は、アライメント調整した上でラスタデータへの変換を必要とする定型パターンデータを対象とするラスタデータ変換処理回路であり、メモリ39に格納されている露光用定型ラスタデータに基づいたラスタデータを、合成回路40へ出力する。マスク処理回路34は、後述するように、メモリ41に格納されているテンプレートデータに対してマスク処理を施した後、ラスタデータ(以下、以下補充ラスタデータという)を合成回路40へ出力する。
【0034】
合成回路40は、補正回路33から出力されるラスタデータをラスタ変換回路26から出力されるラスタデータと合成するとともに、マスク処理回路34から出力される補充ラスタデータを合成する。定型ラスタデータおよび補充ラスタデータは、露光動作時の露光エリアの位置に応じて合成される。DMD駆動回路35は、合成によって得られた露光データに基づいてDMD16を駆動制御し、これによって多重露光動作が実行される。
【0035】
カメラ38は、描画テーブル12上に設置された基板Bを撮像できるように設置され、アライメント調整時に使用される。カメラ38における像倍率、AF処理、絞り調整などの露出制御は、カメラ制御部36によって実行される。計測回路37は、カメラ38によって撮像された画像データに基づいて、アライメントマークなど特徴点の位置を検出する。コントローラ30は、検出された特徴点の位置と、設計上の基準位置との差である位置ずれ量に基づいて、描画データに対するアライメント調整を行う。
【0036】
図2は、モールドファースト型のFO-WLPにおいて支持基板(仮の基板)Bに搭載された半導体チップの一部を示した図である。
図2では、半導体チップSCの設計上での配置(ここでは4つ)と、樹脂に埋設された状態で支持基板Bに配置された半導体チップSCとを比較して示している。
【0037】
FO-WLPでは、半導体チップSCのチップサイズより大きい配線領域Dを規定し、半導体チップSC周囲に樹脂によって疑似的に拡張されたチップ領域(以下、拡張領域という)MDに対し、チップ端子と接続する配線パターンを形成することが可能である。これによって、小型化の半導体チップSCに対してもBGAのI/O端子ピッチと同様のピッチを実現可能となる。また、配線設計ルールに制限されない高密度の配線パターンを半導体チップSC間に形成可能となり、マルチチップ搭載でより小型化されたSiPを実現することができる。
【0038】
半導体チップSCは、樹脂の延展性のため、設計上の基準位置に対し、個々にランダムな位置ずれ量をもつ。したがって、樹脂部分Mに対して設計上の配線パターンデータを補正しないと、隣接する半導体チップSC間において非接続状態や短絡状態などが生じる。そのため、露光動作前にアライメント調整を行って描画データの補正が行われる。
【0039】
図3は、半導体チップの位置ずれに基づいた配線パターンの形成を示した図である。本実施形態では、FO-WLPプロセスにおけるウェハレベルでのRDL配線において、隣り合う半導体チップ間を接続させる配線パターンを、半導体チップSCと拡張領域MD内に形成される配線パターン(ファンアウト配線パターンとも呼ばれる。以下、領域内配線パターンという)ADと、配線領域Dの外部に形成される配線パターン(以下、領域外配線パターンという)BDの2つにグループ分けする。
【0040】
拡張領域MD内の領域内配線パターンADに関しては、半導体チップSCの位置ずれに応じてパターン形成位置を補正する(符号P’参照)。そして、領域外配線パターンBDに対し、領域内配線パターンADの補正後の形成位置に基づき、形成位置などを補正する(符号P”参照)。
【0041】
さらに、形成位置補正によって端部が互いに離間する状態になった領域内配線パターンAD、領域外配線パターンBDの端部同士を接続させる配線パターン(以下、補充配線パターンという)CDを生成し、埋め合わせる。このような配線パターンの合成が、半導体チップと外部電極、受動部品などの電子コンポーネントとの間の接続に対しても行われる。以下、
図4~
図10を用いて詳述する。
【0042】
図4は、ウェハレベルでの露光プロセスにおいて、アライメント調整を伴う配線パターンのデータ処理のフローを示した図である。
図5は、領域内配線パターンAD、領域外配線パターンBD、補充配線パターンCD、テンプレートパターンC0を示した図である。以下では、説明を容易にするため、ある特定の半導体チップ間を接続させる配線パターンのデータ処理について主に説明する。
【0043】
CAD/CAMフォーマットデータの描画データがワークステーション等から露光装置10に対して入力されると、領域内配線パターンADのデータと、領域外配線パターンBDのデータが特定され、抽出される(S101)。領域内配線パターンADは、設計データとして、端子から延びて等間隔に平行に並ぶ配線群として構成され、各配線の線幅W、隣り合う配線間の距離間隔(ピッチ)Mが等しい。ここでは、5本の配線パターンとして構成されている。
【0044】
領域外配線パターンBDは、設計上データとして、領域内配線パターンADと同じ線幅W、互いの配線距離間隔M、全体の配線幅L、同じ配線数(5本)の配線群として構成されている。設計上での領域内配線パターンADおよび領域外配線パターンBDは、FO-WLPで規定される配線領域Dを跨いで一直線状に延びる配線群として構成される(
図3参照)。
【0045】
ここでは、領域内配線パターンADおよび領域外配線パターンBDをそれぞれ包囲するブロックBL1、BL2を規定する。露光プロセスにおいて露光装置10に対して入力される基板全体の描画データには、領域内配線パターンADを包囲するブロックBL1のパターンデータが含まれる。一方、領域外配線パターンBDを包囲するブロックB2のパターンデータは、描画データとは別に入力される。また、ブロックBL1、ブロックBL2の座標データ(ここでは、ブロック端点の位置座標データ)が別途入力される。
【0046】
一方、露光装置10のメモリ41には、上述した補充配線パターン(
図3参照)を形成するための原型となるテンプレートパターンC0が、ラスタデータとしてメモリ39に保存、登録されている。テンプレートパターンC0は、領域内配線パターンADおよび領域外配線パターンBDの配線数(5本)に合わせて、5つの同心円状の配線パターンとして構成される。
【0047】
テンプレートパターンC0の全体の配線幅l、各配線幅w、配線距離間隔mは、領域内配線パターンADおよび領域外配線パターンBDに対し定められた全体の配線幅L、各配線幅W、配線距離間隔Mと等しい。テンプレートパターンC0のデータは、例えばロットごとに露光装置10に入力、保存される。
【0048】
図5には、テンプレートパターンC0の一部を抽出して補充配線パターンCDを生成するためのマスクパターンMDを示している。マスクパターンMDは、中心DをテンプレートパターンC0の中心Cへ一致させたときにテンプレートパターンC0全体をカバーするサイズを有し、中心Dから所定の角度αで囲まれる領域以外の領域MAをマスキングする、すなわちデータ無効とするラスタデータとして構成される。
【0049】
露光装置10では、上述した入力される描画データに対するデータ処理と平行して、カメラ走査によるアライメント計測が行われる。これにより、基板Bにおける各半導体チップの(設計上での)基準位置に対する位置ずれ量が測定される(S102)。
【0050】
位置ずれ量の算出手法として、例えば、半導体チップの端子(接続パッド)などを特徴点として画像処理により抽出し、テンプレートマッチングによって行うことが可能である。あるいは、半導体チップに設けられたアライメントマークを計測してもよい。半導体チップの位置ずれ量は、主走査方向(X方向)、副走査方向(Y方向)の基準位置に対するずれ量、およびチップ中心位置に対する回転ずれ量(角度(θ))として求められる。
【0051】
図6は、基板Bにおける領域内配線パターンADのパターン形成位置を示した図である。
図6に示すように、領域内配線パターンADのパターン形成位置は、検出された各半導体チップSCの位置ずれ量に基づいて補正される。半導体チップSC自身は変形しないため、基板B上で配線領域Dの境界ラインD’Lを規定した場合、その境界ラインD’Lに対して領域内配線パターンADの配線群が垂直である状態を維持するように、X、Yの位置および回転角度を補正する処理が実行される(S104)。
【0052】
ここでは、領域内配線パターンADを包囲するブロックBL1のパターンデータが、繰り返し露光に使用される定型パターンとして扱われ、上述した各半導体チップSCの位置ずれ量に基づいて、補正された露光用定型ラスタデータが合成回路40へ出力される。
【0053】
ところで、ブロックBL2に含まれる領域外配線パターンBDと、ブロックBL1に含まれる領域内配線パターンADとの間では、線幅W、全体の配線幅L、配線距離間隔Mが等しい。また、テンプレートパターンC0の全体の配線幅l、各配線幅w、配線距離間隔mも、全体の配線幅L、各配線幅W、配線距離間隔Mと等しい。
【0054】
そこで、
図5に示すテンプレートパターンC0の一部を抽出することによって、円弧状の補充配線パターンCD(
図3参照)を生成するとともに、ブロックBL2の領域外配線パターンBDの形成位置を補正し、長さ方向に沿ってスケーリング補正する。これによって、各々位置ずれのある半導体チップ間を接続させる配線パターンを形成する。
【0055】
まず、
図7~
図8を用いて、補充配線パターンCDの生成手法について説明する。一方の半導体チップSCの接続ブロックB1の端点をA1、B1、隣り合う半導体チップの接続ブロックB1の端点をA2、B2とした場合、ブロック端点の距離間隔が最短となる2点を求める。
図7では、最短距離間隔Kを作り出す端点として端点A1、A2が特定される。これら端点A1、A2を、配置基準点とする。
【0056】
そして、配置基準点A1、A2の中点A0を中心とする円(円弧)CAと、配置基準点A1、A2を中心としてブロック端点B1、B2をそれぞれ通過する円(円弧)CB1、CB2を規定し、交点C1、C2を求める。ブロック端点A1、交点C1、ブロック端点A2、交点C2を結ぶことによって規定される矩形領域Gが、領域外配線パターンBDを形成するための領域として与えられる。矩形領域Gは、隣り合う半導体チップの配線領域それぞれに対し一点で接する領域となる。
【0057】
図8では、テンプレートパターンC0、マスクデータMDを配置基準点(A1、A2)に重ねた図を示している。マスクデータMDの中心Dをブロック端点A1に重ねたとき、ブロック端点A1とブロック端点B1とを結ぶ直線G1、ブロック端点A1と交点C1とを結ぶ直線G2で囲まれる、挟角αの領域MG以外の領域MAを、マスキング領域MAとして定める。
【0058】
そして、マスクキング処理を行うことにより、挟角αの領域MGに収まる補充配線パターンCDが生成される(S104)。具体的は、ラスタデータであるテンプレートパターンC0の領域MAのデータを無効にし、補充配線パターンCDのラスタデータを合成回路40へ出力する。
【0059】
補充配線パターンCDは、領域内配線パターンADの補正された形成位置と連続的に繋がる位置に形成される。テンプレートパターンC0の最内側配線までの径方向距離間隔t(
図5参照)は、領域内配線パターンADから補充配線パターンCDへのつなぎが直線から円への連続的な繋がりとなるように、定められている。
【0060】
他方の半導体チップSC側に関しても、ブロック端点A2を配置基準点とし、同様のマスキング処理を行うことにより、補充配線パターンCDが抽出される。補充配線パターンCDの形状は、マスキング処理されない領域MGの範囲、すなわち配置基準位置A1、A2の位置に従う。
【0061】
図9は、領域外配線パターンBDに対するパターン形成位置の補正およびスケーリング補正を示した図である。ブロック端点A1、交点C1、ブロック端点A2、交点C2を結ぶことによって規定される矩形領域Gに合わせて、ブロックBL2(
図5参照)のパターンデータの形成位置が補正されるとともに、スケーリング補正が行われる(S105)。
【0062】
具体的には、
図5に示すブロックBL2の2つの端点b1、b3が、ブロックBL1、BL1’の端点A1、A2と一致するように、パターン形成位置を回転させるとともに、ブロック長さEをE’に変更するスケーリング補正を行う。これらの補正処理は、ベクタデータで行われる。以上の領域内配線パターンAD、領域外配線パターンBDに対する補正、および補充配線パターンCDの生成は、半導体チップ同士を接続させる配線パターンそれぞれに対して行われる。
【0063】
領域内配線パターンAD、領域外配線パターンBDは、それぞれの補正処理を経てラスタデータに変換され、ラスタデータに変換された基板全体の描画データに合成される。そして、マスキング処理によって生成された補充配線パターンのラスタデータが描画データに合成される(S106)。データ合成によって得られた露光データにより、露光動作が行われる(S107)。
【0064】
図10は、領域内配線パターンAD、領域外配線パターンBD、補充配線パターンCDを合成した配線パターンを示した図である。
図10に示すように、隣り合う半導体チップSCに渡って、線幅W、全体の配線幅L、配線距離間隔Mが変化しない配線パターンDDが形成される。
【0065】
このように本実施形態によれば、FO-WLPの露光プロセスにおいて、仮の基板Bに配置された半導体チップSC間の基準位置に対する位置ずれ量を測定する。入力された描画データに基づき、チップサイズより大きい配線領域Dの中でチップ周囲の拡張領域MDに形成される、ファンアウト配線の領域内配線パターンADと、配線領域Dとの間の樹脂に形成される領域外配線パターンBDとに分類する。
【0066】
領域内配線パターンADの形成位置補正に応じて、領域外配線パターンBDに対する形成位置の補正およびスケーリング補正を行うとともに、円弧状の補充配線パターンCDを生成する。そして、補正後の領域内配線パターンAD、領域外配線パターンBD、生成された円弧状の補充配線パターンCDをラスタデータとして合成する。
【0067】
本実施形態では、ベクタデータである描画データの入力からラスタデータへの変換処理、そして露光動作という一連の露光プロセスに沿って、RDL配線パターンの補正を行っている。ベクタデータにおいて配線パターンを再設計していないため、スループットの影響を抑えることができる。
【0068】
特に、円弧状の補充配線パターンCDを生成することによって、パターン形成位置の補正により離れ離れになった状態になってしまう領域内配線パターンAD、領域外配線パターンBDを連続的に繋げることができる。特に、線幅W、全体の配線幅L、配線距離間隔Mが変わることなく両チップ間を接続させるため、インピーダンスの変化など電気的特性が変化するのを抑制することができる。
【0069】
補充配線パターンCDを同心円状のテンプレートパターンC0に基づいて作成するため、位置ずれ量が個々に異なる半導体チップSCに対して適切な補充配線パターンCDを生成することができる。また、FO-WLPの露光プロセスにおいて、半導体チップ間を接続させる配線パターンは、通常、複数の配線パターンが並ぶ配線群となるが、マスキング処理だけで配線両端部を滑らかに繋げ、埋め合わせることができる。また、マスキング処理自体は処理速度が速いため、スループット低下の大きな影響とならない。
【0070】
円弧状以外の補充配線パターンを生成する構成にしてもよく、様々な形状の補充配線パターンをあらかじめ用意、保存し、適切な形状の補充配線パターンを当てはめ、離れた状態になってしまう配線端部を繋ぎ合わせるようにしてもよい。また、領域外配線パターンBDについては、形成位置を回転させず、スケーリング補正のみ行うようにしてもよい。FO-WLPの露光プロセスだけでなく、FI-WLPの露光プロセスに適用してもよい。さらに、レーザスキャンによる露光装置に対して上述した露光プロセスを適用してもよい。
【符号の説明】
【0071】
10 露光装置
26 ラスタ変換回路
33 補正回路
37 計測回路
38 カメラ
40 合成回路
AD 領域内配線パターン
BD 領域外配線パターン
CD 補充配線パターン