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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139804
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】レンズ鏡筒モジュール及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/08 20210101AFI20230927BHJP
   G02B 7/04 20210101ALI20230927BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20230927BHJP
   G03B 30/00 20210101ALI20230927BHJP
   G03B 17/04 20210101ALI20230927BHJP
【FI】
G02B7/08 Z
G02B7/04 D
G02B7/04 E
G03B17/02
G03B30/00
G03B17/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045520
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】ニデックプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】臼田 祐一朗
(72)【発明者】
【氏名】村山 武久
【テーマコード(参考)】
2H044
2H100
2H101
【Fターム(参考)】
2H044BD06
2H044BD14
2H044BE02
2H044BE06
2H044DA01
2H044DB02
2H044DC00
2H044DD03
2H044DD08
2H044DD09
2H044DD11
2H044DD19
2H100EE02
2H101BB07
(57)【要約】
【課題】回転筒に衝撃が加えられた場合においても破損しにくいレンズ鏡筒モジュールを提供する。
【解決手段】レンズ鏡筒モジュール2は、螺旋状に延びる螺旋溝33Aと螺旋溝33Aの前端で周方向に延びる前端溝33Cとを含むカム溝33が内周面に形成された固定筒30と、固定筒30の半径方向内側に配置される回転筒40と、回転筒40を回転させるモータ21を含む駆動ユニット20とを有する。回転筒40は、半径方向外側に突出して固定筒30のカム溝33に係合する突出部45と、周方向に沿って形成された従動ギア46とを有する。スマートフォン1の制御部4は、所定のタイミングでモータ21を逆方向に回転させて回転筒40の突出部45を固定筒30のカム溝33の前端溝33Cから螺旋溝33Aに移動させる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺旋状に延びる螺旋溝と、前記螺旋溝の前端から周方向に延びる前端溝とを含むカム溝が内周面に形成された固定筒と、
前記固定筒の半径方向内側に配置される回転筒であって、
少なくとも1枚のレンズと、
半径方向外側に突出して前記固定筒の前記カム溝に係合する突出部と、
周方向に沿って形成された従動ギアと
を有する回転筒と、
前記回転筒を回転させる駆動ユニットであって、
モータと、
前記回転筒の従動ギアと噛合する駆動ギアと、
前記モータの回転を前記駆動ギアに伝達可能な回転伝達機構であって、所定のトルクを超えるトルクが作用した場合に前記駆動ギアと前記モータとの間における回転の伝達を遮断可能なトルクリミッタを含む回転伝達機構と
を有する駆動ユニットと
を備える、レンズ鏡筒モジュール。
【請求項2】
前記トルクリミッタは、
前記モータの回転に連動して形成する回転する第1のギアと、
前記駆動ギアの回転に連動して回転する第2のギアと、
前記第1のギアと前記第2のギアとの間に配置されるワッシャと、
前記ワッシャを前記第1のギア及び前記第2のギアのうち一方に向けて付勢するとともに、前記第1のギア及び前記第2のギアのうち他方と一体的に回転する付勢部材と
を含む、請求項1に記載のレンズ鏡筒モジュール。
【請求項3】
少なくとも1枚のレンズを含むレンズ鏡筒モジュールと、
前記レンズ鏡筒モジュールの前記少なくとも1枚のレンズの光軸上に配置される撮像素子と、
前記レンズ鏡筒モジュールの駆動を制御可能な制御部と
を備え、
前記レンズ鏡筒モジュールは、
螺旋状に延びる螺旋溝と、前記螺旋溝の前端で周方向に延びる前端溝とを含むカム溝が内周面に形成された固定筒と、
前記固定筒の半径方向内側に配置される回転筒であって、
半径方向外側に突出して前記固定筒の前記カム溝に係合する突出部と、
周方向に沿って形成された従動ギアと
を有する回転筒と、
前記回転筒を回転させる駆動ユニットであって、
モータと、
前記回転筒の上記従動ギアと噛合する駆動ギアと、
前記モータの回転を前記駆動ギアに伝達可能な回転伝達機構と
を有する駆動ユニットと
を有し、
前記制御部は、前記レンズ鏡筒モジュールの前記回転筒の前記突出部が前記固定筒の前記カム溝の前記前端溝に位置しているときに、所定のタイミングで前記モータを逆方向に回転させて前記回転筒の前記突出部を前記固定筒の前記カム溝の前記螺旋溝に移動させるように構成される、
電子機器。
【請求項4】
加速度を検出可能な加速度センサをさらに備え、
前記制御部は、前記加速度センサからの検出信号に基づいて、前記モータを逆方向に回転させて前記レンズ鏡筒モジュールの前記回転筒の前記突出部を前記固定筒の前記カム溝の前記螺旋溝に移動させるように構成される、請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記レンズ鏡筒モジュールの前記回転伝達機構は、所定のトルクを超えるトルクが作用した場合に前記モータと前記駆動ギアとの間における回転の伝達を遮断可能なトルクリミッタを含む、請求項3に記載の電子機器。
【請求項6】
前記レンズ鏡筒モジュールの前記トルクリミッタは、
前記モータの回転に連動して形成する回転する第1のギアと、
前記駆動ギアの回転に連動して回転する第2のギアと、
前記第1のギアと前記第2のギアとの間に配置されるワッシャと、
前記ワッシャを前記第1のギア及び前記第2のギアのうち一方に向けて付勢するとともに、前記第1のギア及び前記第2のギアのうち他方と一体的に回転する付勢部材と
を含む、請求項5に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ鏡筒モジュール及び電子機器に係り、特にレンズ鏡筒を光軸方向に沿って前方に繰り出すことが可能なレンズ鏡筒モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンなどの小型の電子機器に組み込まれるカメラは、限られたスペースに収容しなければならないことから、撮影時以外はレンズ鏡筒を本体に収容し、撮影時にレンズ鏡筒を繰り出す機構を有するものが多い(例えば、特許文献1参照)。このような繰出機構は、径方向外側に突出するピンを有する回転筒と、このピンが係合する螺旋状のカム溝が形成された固定筒とを含んでおり、回転筒が固定筒に対して回転すると、回転筒のピンが固定筒のカム溝に沿って移動することで回転筒が繰り出すようになっている。このような固定筒に形成されるカム溝の前端部は、回転筒の軸方向の位置合わせのために周方向に延びるように形成されるのが一般的である。
【0003】
例えば撮影時に回転筒が繰り出された状態で電子機器が落下などすると、固定筒から繰り出された回転筒に衝撃が加わって、回転筒を固定筒の内部に押し戻すような力がかかることが考えられる。このとき、回転筒のピンが固定筒のカム溝の周方向に延びる前端部に位置していると、回転筒を固定筒の内部に押し戻す力の逃げ場がなく、ピンに過度の力が作用してピンが固定筒のカム溝から外れてしまったり、ピンが破損してしまったりしてカメラが修復不能になってしまうことが考えられる。また、回転筒のピンが固定筒のカム溝の前端部に位置していなくても、回転筒に加わった衝撃が駆動側のモータなどに伝達され、これらの構成要素が破損してしまうことが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5328249号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、衝撃が加えられた場合においても破損しにくいレンズ鏡筒モジュール及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、衝撃が加えられた場合においても破損しにくいレンズ鏡筒モジュールが提供される。このレンズ鏡筒モジュールは、螺旋状に延びる螺旋溝と、上記螺旋溝の前端から周方向に延びる前端溝とを含むカム溝が内周面に形成された固定筒と、上記固定筒の半径方向内側に配置される回転筒と、上記回転筒を回転させる駆動ユニットとを備える。上記回転筒は、少なくとも1枚のレンズと、半径方向外側に突出して上記固定筒の上記カム溝に係合する突出部と、周方向に沿って形成された従動ギアとを有する。上記駆動ユニットは、モータと、上記回転筒の従動ギアと噛合する駆動ギアと、上記モータの回転を上記駆動ギアに伝達可能な回転伝達機構とを有する。上記回転伝達機構は、所定のトルクを超えるトルクが作用した場合に上記駆動ギアと上記モータとの間における回転の伝達を遮断可能なトルクリミッタを含む。
【0007】
本発明の第2の態様によれば、レンズ鏡筒モジュールの衝撃が加えられた場合においても破損しにくい電子機器が提供される。この電子機器は、少なくとも1枚のレンズを含むレンズ鏡筒モジュールと、上記レンズ鏡筒モジュールの上記少なくとも1枚のレンズの光軸上に配置される撮像素子と、上記レンズ鏡筒モジュールの駆動を制御可能な制御部とを備える。上記レンズ鏡筒モジュールは、螺旋状に延びる螺旋溝と、上記螺旋溝の前端で周方向に延びる前端溝とを含むカム溝が内周面に形成された固定筒と、上記固定筒の半径方向内側に配置される回転筒と、上記回転筒を回転させる駆動ユニットとを有する。上記回転筒は、半径方向外側に突出して上記固定筒の上記カム溝に係合する突出部と、周方向に沿って形成された従動ギアとを有する。上記駆動ユニットは、モータと、上記回転筒の上記従動ギアと噛合する駆動ギアと、上記モータの回転を上記駆動ギアに伝達可能な回転伝達機構とを有する。上記制御部は、上記レンズ鏡筒モジュールの上記回転筒の上記突出部が上記固定筒の上記カム溝の上記前端溝に位置しているときに、所定のタイミングで上記モータを逆方向に回転させて上記回転筒の上記突出部を上記固定筒の上記カム溝の上記螺旋溝に移動させるように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の一実施形態におけるレンズ鏡筒モジュールを内蔵したスマートフォンを示す斜視図である。
図2図2は、図1に示すスマートフォンの機能的構成を示す模式図である。
図3図3は、図1に示すレンズ鏡筒モジュールを示す斜視図である。
図4図4は、図3に示すレンズ鏡筒モジュールの分解斜視図である。
図5図5は、図3に示すレンズ鏡筒モジュールにおける固定筒を示す斜視図である。
図6図6は、図3に示すレンズ鏡筒モジュールにおける駆動ユニットの分解斜視図である。
図7図7は、図6に示すカバーを取り外した状態の駆動ユニットの正面図である。
図8図8は、図1に示すレンズ鏡筒モジュールが沈胴状態にあるときを模式的に示す左側面図である。
図9図9は、図8に示すレンズ鏡筒モジュールが繰出状態になったときを模式的に示す左側面図である。
図10図10は、図9に示すレンズ鏡筒モジュールが退避状態になったときを模式的に示す左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係るレンズ鏡筒モジュールを備えた電子機器の実施形態について図1から図10を参照して詳細に説明する。図1から図10において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、図1から図10においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や一部の構成要素が省略されている場合がある。以下の説明では、特に言及がない場合には、「第1」や「第2」などの用語は、構成要素を互いに区別するために使用されているだけであり、特定の順位や順番を表すものではない。
【0010】
図1は、本発明に係る電子機器の一例としてのスマートフォン1を示す斜視図であり、このスマートフォン1の内部には、本発明に係るレンズ鏡筒モジュール2を含むカメラ3が組み込まれている。図1に示すように、このスマートフォン1は、スマートフォン1内の電気的構成要素を制御する制御部4と、スマートフォン1の加速度を検出可能な加速度センサ5とを備えている。カメラ3及び加速度センサ5はそれぞれ制御部4に接続されている。なお、本発明に係る電子機器は、本実施形態で述べるようなスマートフォンに限られるものではなく、タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ、ドローンなど各種の電子機器に対しても本発明を適用することができる。
【0011】
図2は、図1に示すスマートフォン1の機能的構成を示す模式図である。図2に示すように、スマートフォン1は、レンズ鏡筒モジュール2及び撮像素子6を含むカメラ3と、スマートフォン1の加速度を検出可能な加速度センサ5と、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどにより構成されるディスプレイ7と、ROMやRAM、フラッシュメモリなどを含む記憶部8と、ネットワークに接続してデータ通信を行うための通信部9と、各構成要素の動作を制御する制御部4とを備えている。
【0012】
記憶部8には、OS(Operating System)やスマートフォン1を制御するためのプログラム、以下に述べるステップを実行するためのプログラム、その他各種データなどが格納されている。制御部4は、プロセッサ(CPU)、ROM、RAMなどを備えており、記憶部8に格納されたプログラムをRAMにロードしてこれをプロセッサにより実行することにより様々な機能を実現している。
【0013】
図3はレンズ鏡筒モジュール2を示す斜視図、図4は分解斜視図である。図3及び図4に示すように、レンズ鏡筒モジュール2は、円環状のベース板10と、モータ21を有する駆動ユニット20と、ネジ(図示せず)によりベース板10に固定される固定筒30と、固定筒30の半径方向内側に配置される回転筒40と、回転筒40の内側に収容される直動筒50と、円筒部31の前端部に取り付けられるカバーリング60と、カバーリング60と円筒部31との間に挟み込まれる防塵防滴シート62とを備えている。なお、本実施形態では、便宜的に、図3における+Z方向を「前」又は「前方」、-Z方向を「後」又は「後方」ということとする。
【0014】
図5は、固定筒30を示す斜視図である。図3から図5に示すように、固定筒30は、例えば樹脂などにより形成され、円筒部31と、円筒部61の外周部に取り付けられたフォトインタラプタ32とを含んでいる。フォトインタラプタ32は、検出信号を制御部4に送信できるようなっており、円筒部31に形成された開口部38を介して円筒部31の内側空間に面している。円筒部31の内周面には、複数のカム溝33と、円筒部31の後縁から軸方向(Z方向)に延びる軸方向溝34,35とが形成されている。それぞれのカム溝33は、螺旋状に延びる螺旋溝33Aと、螺旋溝33Aの後端から周方向に延びる後端溝33Bと、螺旋溝33Aの前端から周方向に延びる前端溝33Cとを含んでいる。また、円筒部31には、駆動ユニット20との接続部に切欠き39が形成されている。本明細書においては、「螺旋状に延びる」とは、軸方向に沿って周方向の位置が変化するように延びている形態を意味する。
【0015】
図4に示すように、ベース板10は、外周部に取り付けられたフォトインタラプタ11と、固定筒30の円筒部31の内周面の軸方向溝35に挿入される挿入片12とを有している。ベース板10のフォトインタラプタ11は、固定筒30のフォトインタラプタ32の-Z方向側に位置しており、フォトインタラプタ32と同様に開口部38を介して円筒部31の内側空間に面するようになっている。このフォトインタラプタ11もフォトインタラプタ32と同様に検出信号を制御部4に送信できるようなっている。
【0016】
回転筒40は、固定筒30に対して回転可能かつ軸方向に移動可能に構成されている。この回転筒40は、図4に示すように、円筒部41と、円筒部41の内部に収容される少なくとも1枚のレンズ42と、レンズ42の前方に配置されたカバーガラス43と、円筒部41の前端部に取り付けられるリング部材44とを含んでいる。この回転筒40は、図1に示すように、スマートフォン1の背面パネル1Aに形成された開口1Bから露出するように配置されている。スマートフォン1のカメラ3の撮像素子6は、このレンズ42を透過した光が結像する撮像面に配置される。
【0017】
また、回転筒40は、円筒部41の後端外周部から半径方向外側に突出する複数の突出部45と、円筒部41の後端外周部に周方向に沿って形成された従動ギア46とを有している。それぞれの突出部45の外径は、固定筒30のカム溝33の周方向に沿った幅(以下、周方向幅という)よりもわずかに小さい程度であり、それぞれの突出部45は、固定筒30のカム溝33に係合してカム溝33の内部をカム溝33に沿って移動できるようになっている。この回転筒40の突出部45と固定筒30のカム溝33の螺旋溝33Aとの係合により、回転筒40が固定筒30に対して回転すると、回転筒40が固定筒30のカム溝33の形状に沿って固定筒30に対してZ方向に移動するようになっている。
【0018】
直動筒50は、円筒部51と、円筒部51から半径方向外側に突出する複数の突起52と、円筒部51の後端から半径方向外側に延びるフランジ部53と、フランジ部53から半径方向外側に延出する複数の係合部54と、同じくフランジ部53から半径方向外側に延出する検出片55とを有している。直動筒50のそれぞれの突起52は、回転筒40の円筒部41の内周面に形成された周方向に延びる溝(図示せず)に係合している。また、直動筒50のそれぞれの係合部54の周方向幅は、固定筒30の軸方向溝34の周方向幅よりわずかに小さい程度であり、それぞれの係合部54は、固定筒30の軸方向溝34に係合して軸方向溝34の内部を軸方向溝34に沿ってZ方向に移動できるようになっている。このような構成によって、直動筒50は、固定筒30に対して回転はせずに、回転筒40に対して回転しつつ、回転筒40とともに軸方向に移動できるようになっている。
【0019】
直動筒50の検出片55は、固定筒30の開口部38を通って外側に延びており、この開口部38に隣接するベース板10のフォトインタラプタ11及び固定筒30のフォトインタラプタ32は、直動筒50の検出片55を検出できるようになっている。
【0020】
図6は、駆動ユニット20の分解斜視図である。図6に示すように、駆動ユニット20は、上述した制御部4により駆動されるモータ21と、ベース板10に取り付けられるギアケース22と、ネジ91によりギアケース22に取り付けられるギアカバー23と、回転筒40の従動ギア46と噛合する駆動ギア24と、モータ21の回転を駆動ギア24に伝達可能な回転伝達機構25とを有している。
【0021】
図7は、ギアカバー23を取り外した状態の駆動ユニット20の正面図である。図6及び図7に示すように、回転伝達機構25は、モータ21の出力軸に取り付けられたウォーム250と、ウォーム250に噛合するウォームホイール251Aとウォームホイール251Aの-Z方向側に配置されるギア251Bとを含む2段ギア251と、2段ギア251のギア251Bと噛合するギア252(第1のギア)と、ギア252と同軸上に配置されるギア253(第2のギア)と、ギア253及び駆動ギア24の両方に噛合するギア254と、ギア252の中央部に収容される付勢部材としてのコイルバネ255と、このコイルバネ255とギア253の本体253Aとの間に配置されるワッシャ256とを含んでいる。
【0022】
2段ギア251は、ギアケース22から+Z方向に延びるギアシャフト221に取り付けられ、このギアシャフト221を中心として回転可能となっている。また、ギア252は、ギアケース22から+Z方向に延びるギアシャフト222に取り付けられており、このギアシャフト222を中心として回転可能となっている。ギア253の軸部253Bもギアシャフト222に取り付けられており、ギア253がギアシャフト222を中心として回転可能となっている。ギア254は、ギアケース22から+Z方向に突出したギアシャフト223に取り付けられており、ギアシャフト223を中心として回転可能となっている。駆動ギア24は、ギアケース22から+Z方向に延びるギアシャフト224に取り付けられており、このギアシャフト224を中心として回転可能となっている。
【0023】
回転伝達機構25のコイルバネ255は、ギア252の中央部に圧縮された状態で収容されており、ワッシャ256をギア253の本体253Aに向けて所定の力で付勢している。また、コイルバネ255の一端部は、ギア252の中央部に形成された溝252Aに係合しており、コイルバネ255がギア252とともに回転するようになっている。コイルバネ255により付勢されるワッシャ256もギア252とともに回転し、ギア252が回転すると、ワッシャ256とギア253の本体253Aとの間に生じる摩擦力によってギア253がギア252とともに回転するようになっている。一方、この摩擦力を超えるトルクがワッシャ256に作用すると、ワッシャ256とギア253の本体253Aとが滑って空回りをしてギア252とギア253との間における回転の伝達が遮断されるようになっている。このように、本実施形態においては、ギア252、コイルバネ255、ワッシャ256、及びギア253は、所定のトルクを超えるトルクが作用した場合にギア252とギア253との間における回転の伝達を遮断するトルクリミッタとして機能する。
【0024】
スマートフォン1においてカメラ機能がオフになっているときは、図3に示すように、レンズ鏡筒モジュール2の固定筒30の半径方向内側に回転筒40が収容された状態となっており、回転筒40はスマートフォン1の背面パネル1Aの内部に収容されている。このときのレンズ鏡筒モジュール2の状態を「沈胴状態」ということとする。
【0025】
図8は、このときのレンズ鏡筒モジュール2を模式的に示す左側面図である。図8に示すように、沈胴状態では、回転筒40の突出部45が固定筒30のカム溝33の後端溝33B内に位置している。なお、ベース板10に取り付けられたフォトインタラプタ11が直動筒50の検出片55を検出すると、その検出信号が制御部4に送られ、制御部4は回転筒40が固定筒30の内側に収容されていることを検出できる。
【0026】
ユーザがスマートフォン1のディスプレイ7上のタッチパネルなどの入力手段を用いてカメラ機能をオンにする指示を制御部4に与えると、制御部4はレンズ鏡筒モジュール2の駆動ユニット20のモータ21に制御信号を送信し、モータ21を回転させる。このモータ21の回転は上述した回転伝達機構25により駆動ギア24に伝達され、駆動ギア24が回転する。この駆動ギア24には回転筒40の従動ギア46が噛合しているため、駆動ギア24の回転に伴って回転筒40が回転する。回転筒40が回転すると、上述したように、回転筒40の突出部45と固定筒30のカム溝33との係合により、回転筒40が固定筒30のカム溝33の形状に沿って固定筒30に対してZ方向に移動し、最終的には図9に示すように、回転筒40の突出部45が固定筒30のカム溝33の前端溝33Cまで移動する。このように、制御部4によりレンズ鏡筒モジュール2のモータ21が駆動され、回転筒40が+Z方向に繰り出される。固定筒30に取り付けられたフォトインタラプタ32が直動筒50の検出片55を検出すると、その検出信号が制御部4に送られ、制御部4は回転筒40が繰り出されたことを検出し、カメラ機能をオンにする。このときのレンズ鏡筒モジュール2の状態を「繰出状態」ということとする。
【0027】
以下では、上記のように回転筒40を沈胴状態から繰出状態にするときにモータ21が回転する方向、回転伝達機構25のウォーム250、2段ギア251、及びギア252,253,254のそれぞれが回転する方向、駆動ギア24が回転する方向、及び回転筒40が回転する方向をそれぞれ「順方向」といい、これとは逆の回転方向を「逆方向」ということとする。
【0028】
このようにして回転筒40が繰り出されると、繰り出された回転筒40がスマートフォン1の背面パネル1A(図1参照)から突出する。この状態でスマートフォン1が落下などすると、背面パネル1Aから突出した回転筒40に衝撃が加わり、レンズ鏡筒モジュール2が破損してしまうことが考えられる。このため、本実施形態では、加速度センサ5によりスマートフォン1の加速度を検出することで、スマートフォン1が落下し始めたことを検出するようにしている。
【0029】
制御部4は、加速度センサ5からの検出信号を受け、加速度が増加したことを検出すると、スマートフォン1が落下し始めたものと判断し、レンズ鏡筒モジュール2の駆動ユニット20のモータ21に制御信号を送信し、モータ21を逆方向に回転させる。このモータ21の逆方向の回転は上述した回転伝達機構25により駆動ギア24に伝達され、駆動ギア24が逆方向に回転する。これによって回転筒40が逆方向に回転する。このとき、図10に示すように、回転筒40の突出部45が固定筒30のカム溝33の前端溝33Cから脱出して螺旋溝33Aの領域に入るまで回転筒40を逆方向に回転させる。回転筒40の突出部45を前端溝33Cから螺旋溝33Aの領域に入れるまでに必要な時間としては例えば0.2秒~0.3秒程度であり、この時間の間モータ21を逆方向に回転させる。このときのレンズ鏡筒モジュール2の状態を「退避状態」ということとする。
【0030】
このような退避状態では、スマートフォン1の落下などにより回転筒40に衝撃が加えられて回転筒40を-Z方向に押し戻すような力が作用したとしても、回転筒40の突出部45は固定筒30の螺旋溝33Aに沿って-Z方向に移動することが可能であるため、衝撃により回転筒40の突出部45に作用する力が低減される。したがって、スマートフォン1の落下などで回転筒40に衝撃が加えられることによりレンズ鏡筒モジュール2が破損してしまうことが抑制され、スマートフォン1の故障を防ぐことができる。
【0031】
また、本実施形態では、加速度センサ5からの検出信号を用いることにより、スマートフォン1の落下に伴う急激な位置変化が始まったことを検出することができる。したがって、スマートフォン1が落下した結果として回転筒40に衝撃が加えられる前に、制御部4により回転筒40を逆方向に回転させてレンズ鏡筒モジュール2を退避状態にすることができる。なお、レンズ鏡筒モジュール2を退避状態にするタイミングは、このように加速度センサ5により急激な位置変化が始まったことが検出されたときに限られるものではなく、繰り出した回転筒40に衝撃が加わることが予想される任意のタイミング(例えばユーザからの入力がない状態が一定時間続いたときなど)でレンズ鏡筒モジュール2を退避状態にしてもよい。
【0032】
ここで、レンズ鏡筒モジュール2を退避状態にした後に、回転筒40に加えられる衝撃が非常に大きいと、許容範囲を超えるトルクが回転伝達機構25やモータ21に作用して回転伝達機構25の構成要素やモータ21が破損してしまうことも考えられるが、本実施形態では、回転伝達機構25に上述したトルクリミッタが含まれているため、回転筒40に加えられる衝撃によるトルクが所定のトルクを超えると、トルクリミッタを構成するギア252と253とが滑って空回りするため、回転伝達機構25やモータ21の破損を防ぐことができる。
【0033】
このようなトルクリミッタは、上述したような回転筒40を逆方向に回転させてレンズ鏡筒モジュール2を退避状態にする場合に限らず、回転筒に衝撃が加えられて回転筒が意図しない方向に回転するような場合には有効なものである。そのような場合にも、トルクリミッタに作用するトルクが所定のトルクを超えると、トルクリミッタによって駆動ギア24とモータ21との間における回転の伝達が遮断されるため、回転伝達機構25やモータ21の破損を防ぐことができる。
【0034】
また、本実施形態では、ギア252とギア253との間に配置したワッシャ256をコイルバネ255で付勢することでトルクリミッタを構成しているが、このような構成に限られることなく、任意の構成のトルクリミッタを回転伝達機構25において用いることができる。
【0035】
以上述べたように、本発明の第1の態様によれば、衝撃が加えられた場合においても破損しにくいレンズ鏡筒モジュールが提供される。このレンズ鏡筒モジュールは、螺旋状に延びる螺旋溝と、上記螺旋溝の前端から周方向に延びる前端溝とを含むカム溝が内周面に形成された固定筒と、上記固定筒の半径方向内側に配置される回転筒と、上記回転筒を回転させる駆動ユニットとを備える。上記回転筒は、少なくとも1枚のレンズと、半径方向外側に突出して上記固定筒の上記カム溝に係合する突出部と、周方向に沿って形成された従動ギアとを有する。上記駆動ユニットは、モータと、上記回転筒の従動ギアと噛合する駆動ギアと、上記モータの回転を上記駆動ギアに伝達可能な回転伝達機構とを有する。上記回転伝達機構は、所定のトルクを超えるトルクが作用した場合に上記駆動ギアと上記モータとの間における回転の伝達を遮断可能なトルクリミッタを含む。
【0036】
このような構成によれば、回転筒に衝撃が加えられて回転筒が意図しない方向に回転した場合であっても、トルクリミッタに作用するトルクが所定のトルクを超えると、トルクリミッタによって駆動ギアとモータとの間における回転の伝達が遮断される。したがって、モータの出力軸に過度の力が作用することを防止することができ、モータの破損を防ぐことができる。
【0037】
上記トルクリミッタは、上記モータの回転に連動して形成する回転する第1のギアと、上記駆動ギアの回転に連動して回転する第2のギアと、上記第1のギアと上記第2のギアとの間に配置されるワッシャと、上記ワッシャを上記第1のギア及び上記第2のギアのうち一方に向けて付勢するとともに、上記第1のギア及び上記第2のギアのうち他方と一体的に回転する付勢部材とを含んでいてもよい。このような構成によれば、所定のトルクを超えるトルクが作用すると第1のギアと第2のギアとが滑って空回りするため、回転伝達機構の構成要素に過度の力が作用することを防止することができ、これらの構成要素の破損を防ぐことができる。
【0038】
本発明の第2の態様によれば、レンズ鏡筒モジュールの衝撃が加えられた場合においても破損しにくい電子機器が提供される。この電子機器は、少なくとも1枚のレンズを含むレンズ鏡筒モジュールと、上記レンズ鏡筒モジュールの上記少なくとも1枚のレンズの光軸上に配置される撮像素子と、上記レンズ鏡筒モジュールの駆動を制御可能な制御部とを備える。上記レンズ鏡筒モジュールは、螺旋状に延びる螺旋溝と、上記螺旋溝の前端で周方向に延びる前端溝とを含むカム溝が内周面に形成された固定筒と、上記固定筒の半径方向内側に配置される回転筒と、上記回転筒を回転させる駆動ユニットとを有する。上記回転筒は、半径方向外側に突出して上記固定筒の上記カム溝に係合する突出部と、周方向に沿って形成された従動ギアとを有する。上記駆動ユニットは、モータと、上記回転筒の上記従動ギアと噛合する駆動ギアと、上記モータの回転を上記駆動ギアに伝達可能な回転伝達機構とを有する。上記制御部は、上記レンズ鏡筒モジュールの上記回転筒の上記突出部が上記固定筒の上記カム溝の上記前端溝に位置しているときに、所定のタイミングで上記モータを逆方向に回転させて上記回転筒の上記突出部を上記固定筒の上記カム溝の上記螺旋溝に移動させるように構成される。
【0039】
このような構成によれば、例えば電子機器が落下する直前のタイミングなどでモータを逆方向に回転させることで、回転筒の突出部を固定筒のカム溝の螺旋溝に移動させてレンズ鏡筒モジュールを退避状態にすることができる。この退避状態では、電子機器の落下などにより回転筒に衝撃が加えられても、回転筒の突出部は固定筒の螺旋溝に沿って軸方向に移動することが可能であるため、衝撃により回転筒の突出部に作用する力が低減される。したがって、回転筒に衝撃が加えられることによりレンズ鏡筒モジュールが破損してしまうことが抑制され、電子機器の故障を防ぐことができる。
【0040】
この場合において、上記電子機器は、加速度を検出可能な加速度センサをさらに備えていてもよく、上記制御部は、上記加速度センサからの検出信号に基づいて、上記モータを逆方向に駆動させて上記レンズ鏡筒モジュールの上記回転筒の上記突出部を上記固定筒の上記カム溝の上記螺旋溝に移動させるように構成されていてもよい。このような加速度センサからの検出信号を用いることにより、例えば電子機器の落下などの急激な位置変化が始まったことを検出することができるので、この急激な位置変化の結果として回転筒に衝撃が加えられる前に、制御部により回転筒を逆方向に回転させてレンズ鏡筒モジュールを退避状態にすることができる。したがって、その後に回転筒に衝撃が加えられても回転筒の突出部に作用する力が低減されるため、レンズ鏡筒モジュールが破損してしまうことが抑制され、電子機器の故障を防ぐことができる。
【0041】
上記レンズ鏡筒モジュールの上記回転伝達機構は、所定のトルクを超えるトルクが作用した場合に上記モータと上記駆動ギアとの間における回転の伝達を遮断可能なトルクリミッタを含んでいてもよい。このような構成によれば、回転筒に衝撃が加えられて回転筒が逆方向に回転した場合であっても、トルクリミッタに作用するトルクが所定のトルクを超えると、トルクリミッタによって駆動ギアとモータとの間における回転の伝達が遮断される。したがって、モータの出力軸に過度の力が作用することを防止することができ、モータの破損を防ぐことができる。
【0042】
上記レンズ鏡筒モジュールの上記トルクリミッタは、上記モータの回転に連動して形成する回転する第1のギアと、上記駆動ギアの回転に連動して回転する第2のギアと、上記第1のギアと上記第2のギアとの間に配置されるワッシャと、上記ワッシャを上記第1のギア及び上記第2のギアのうち一方に向けて付勢するとともに、上記第1のギア及び上記第2のギアのうち他方と一体的に回転する付勢部材とを含んでいてもよい。このような構成によれば、所定のトルクを超えるトルクが作用すると第1のギアと第2のギアとが滑って空回りするため、回転伝達機構の構成要素に過度の力が作用することを防止することができ、これらの構成要素の破損を防ぐことができる。
【0043】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0044】
1 スマートフォン
2 レンズ鏡筒モジュール
3 カメラ
4 制御部
5 加速度センサ
6 撮像素子
10 ベース板
11,32 フォトインタラプタ
20 駆動ユニット
21 モータ
24 駆動ギア
25 回転伝達機構
30 固定筒
31 円筒部
33 カム溝
33A 螺旋溝
33B 後端溝
33C 前端溝
40 回転筒
41 円筒部
42 レンズ
45 突出部
46 従動ギア
50 直動筒
60 カバーリング
61 円筒部
62 防塵防滴シート
250 ウォーム
251 2段ギア
252~254 ギア
255 コイルバネ
256 ワッシャ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10